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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2017年12月15日 (金)

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」⇒週末日本映画劇場

81
佐藤健と土屋太鳳が共演した、良質のラブ・ストーリー

「セカチュウ」に勝るとも劣らない仕上げぶり

http://www.8nengoshi.jp

12月16日の土曜日から、松竹の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 映画「8年越しの花嫁」製作委員会

88
実話ホラー映画「エクソシスト」(1973年製作・アメリカ映画)と同じ、

実在のビョーキを描いた、外国映画「彼女が目覚めるその日まで」(弊ブログ12月13日付けで分析済み)と、シンクロする、

実話ベースの日本映画です。

病名は「抗NMDA受容体脳炎」。

てっとり早く言えば、脳の障害により、イロイロあって、やがては、こん睡状態になってまうとゆう難病です。

そんな病気によって、8年間も眠りに落ちたヒロイン(土屋太鳳)。

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ヒロインの婚約者(佐藤健)は、ヒロインのオトン・オカン(杉本哲太・薬師丸ひろ子)と共に、

いつ覚醒するか分からない、ヒロインを待ち続けます。

そして、覚醒した時、新たな問題が発生する。

ボクはこの展開は、交通事故で記憶喪失になった、

ヨメを描いた「君への誓い」(2012年・アメリカ・弊ブログ分析済み)と、全くの相似形に、なっているところに驚きました。

共に、実話を映画化したものです。

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さてはて、土屋太鳳と佐藤健共に、新境地を示す演技となりました。

初のビョーキ演技となった、太鳳ちゃん、

初の誠実演技となった佐藤健。

共に、好感あふれる演技ぶりでした。

そんな2人に合わせるように、バイ・プレーヤーたちも、いい人たちを演じます。

北村一輝や中村ゆりなど、これまでにない、いい人ぶりを見せてくれます。

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瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督の新作です。

世界3大映画祭の1つ、ベルリン国際映画祭で受賞した、

長尺映画「ヘヴンズ ストーリー」(2010年・ブログ分析済み)で

映画作家性を示した瀬々監督。

一方では、「64(ロクヨン)」(2016年・ブログ分析済み)などの、

エンタなヒット作もメガホンを執ってる。

いわゆる、2面性をバランスよく、

監督できはる監督はん、なんでおます。

今年も、年間ベストテン級映画「最低。」(ブログ分析済み)と、

ヒット確実の「セカチュウ」こと、

「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)的本作を、

撮ったわけであります。

83
そんな中でも、瀬々監督は、映画作家性を忘れない作りを、本作に施してはります。

2分割カットや、ヒロインの幻覚シーンのダーク感、

デート・シーンや時間経過の、ダイジェスト・シーンのタイト感、

軽快な洋楽ポピュラー・ミュージックや、癒やしのフィメール・スロー・ナンバーを流して、

シーンに合わせた、ドラマティックを作るサントラ使いなど、多彩に盛り込んだ。

特に、ラストロールで流れる、「back number」の感動的な「瞬き」には、グッときました。

84
そんでもって、本作は広島ロケを始めとした、瀬戸内の地方ロケ映画となっています。

瀬戸内ロケ映画は、これまでに、かなりのタイトル数がありますが、

良質の映画として、山田洋次監督の「故郷」(1972年)にも、通じるような仕上げぶり。

お正月映画としても、ふさわしい作品だと思います。

2017年12月13日 (水)

「Mr.Long ミスター・ロン」

1
ビジターとアウェイの、見事なキズナ映画だ

SABU監督作品の中で、最も感動的なヒューマニズム・ドラマ

http://mr-long.jp/

12月16日の土曜日から、新宿武蔵野館ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2017年製作の、日本&台湾&香港&ドイツ合作の、本編129分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 LIVEMAX FILM/HIGH BROW CINEMA

殺人請け負いアウトローが、

思いがけない優しき人たちとの、出会いとキズナで、

人間性に目覚めてゆく物語。

映画的には、最もドラマティックな展開を、有した素材であり、

ヒューマニズムを、ストレートに描く映画とは、また違って、

感動のドラマ足り得るのです。

2
人と人のつながりとキズナにおいて、

さまざまな映画のフレイバーが、多彩に盛り込まれています。

チャップリンの「キッド」(1921年製作・モノクロ)や、

アカデミー作品賞受賞の「我が道を往く」(1944年・モノクロ)、「カッコーの巣の上で」(1975年)、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(1990年)など、

いっぱいあります。

3

台湾のナイフ使いの達人(チャン・チェン)が、殺人依頼を受けて、

日本の東京へ行き、ターゲットを殺そうとするけど、

殺しそこねて、逆にターゲット側に拘束されてしまう。

けども、何とか逃げて、北関東の田舎へと逃れてゆく。

そこで、いろんな人たちとの交流が、始まるのでありました。

4
ヤクチュウの台湾人のオカンと、コドモ息子との交流。

さらに、チャン・チェンが料理の腕が、上手いとのことで、

その地方の人たちと、料理を通して、はからずも交流が生まれる。

加えて、チェンが作る台湾の牛肉麺が、余りにもうまくて、

彼に屋台をやらせようと、みんながおせっかいしてくる。

でも、チェンは、とことん素直にこれを受け入れ、コドモに手伝ってもらいながら、屋台を引いて、大繁盛となります。

だが、彼が祖国台湾へ帰るためには、横浜から出奔する、依頼人が用意した船に、乗らなければならない。

みんなとのキズナが深まった時に、その日を迎えるとゆう、

二者択一のハラドキの展開が、待っています。

5
少年の台湾オカンの、過去のシーンでは、青柳翔とのエピソードが映されます。

青柳のコドモをはらんで産む。

シャブ漬けにされたけど、それでもオカンは、しぶとく強しのタッチが、

チェンのドラマに、アクセントを加えている。

でもって、みんなのために、チェンがヤクザたちを相手に、クライマックスで見せる、シークエンスは圧巻だった。

シンセの打ち込み・バイオリンやチェロ・ピアノなど、シーンに合わせたサントラ使いも、印象的。

SABU監督作品としては、かつてない感動的な作りになっています。

ハッピー・エンドなラストシーンが、心地よすぎる快作品でした。

「彼女が目覚めるその日まで」

1_2
ビョーキ系映画の、新たな次元に入った作品

ホラー映画「エクソシスト」の、ヒューマン・ドラマ・バージョンだ

http://kanojo-mezame.jp

12月16日のサタデーから、KADOKAWAの配給によりまして、テアトル梅田、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸などで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、カナダとアイルランド合作による、本編89分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 ON FIRE PRODUCTIONS INC.

2_2
みなさん、ホラー映画の名作「エクソシスト」(1973年製作・アメリカ映画)は、モチ、見られていますよね。

但し、あの「エクソシスト」が、実話をベースにしていたことは、あんまし知られていない。

エクソシストも現実に存在するし、主演のリンダ・ブレアーの、悪魔憑きのビョーキも、実際にあるビョーキなのです。

3_2
本作は、そんなビョーキに侵された、ヒロイン(クロエ・グレース・モレッツ)の、いわゆる闘病記映画です。

「抗NMDA受容体脳炎」という病名なのですが、

奇しくも日本映画でも、そのビョーキを採り上げた映画「8年越しの花嫁」(今週末に分析)という映画が、

本作と同日に公開されます。

そして、どちらも、実話をベースにしています。

4_2

さてはて、本作はニューヨークを、舞台にしたヒロイン映画。

NYヒロインものは、ラブコメを始め、多様なタッチとスタイルで、描かれてきたジャンルですが、

本作のような病系の映画は、さほどありません。

5_2
NYの一流新聞社に、記者として就職したヒロイン。

しかし、奇行が目立ち始め、

遂には、重要人物へのインタビューで、暴言を吐きまくって、

エライ醜態を、さらしてしまうのです。

6_2
幻覚、妄想を見て、ワケの分からん言葉を吐き、

ブレイン・オン・ファイアーとゆう、脳が燃えてるような状態になり、暴れて、

さらに、進行すれば、意識不明の重体に陥る。

まさに、「エクソシスト」な、異常なとこが、むき出しになるのでした。

7_2
病院に行って、脳を細かく見る脳生検しても、異常なし。

双極性障害、いわゆる躁うつ病でもなく、

精神分裂病こと統合失調症でもない。

一体、どんな病気なのか。

特定されなければ、治療もできない。

そんな状況の中で、ヒロインのオトンは、強制入院を願い、ヒロインは入院。

8_2
ヒロイン役のクロエ・グレース・モレッツが、

ビョーキになる過程を、緻密に演技してゆきます。

アクション映画やホラー映画で、ヒロイン役をこなしてきた彼女ですが、

本作は、彼女の代表作となり得る作品でしょう。

何よりも、リアル感あふれる、ビョーキ演技が強烈でした。

豊富なアップの表情演技、

不安を語るナレーションぶりなども、巧みだったと思う。

9_2
「エクソシスト」のメリン神父のような、医者ヒーローが、最後の方で登場してきます。

このドラマティックな展開は、本作の大いなる見どころになるべきですが、

深掘りせず、省略的に描かれていたところが、少し物足りない感じはしましたが、

ヒロインものとしての、全体の流れとしては、悪くはないのかもしれません。

10
「エクソシスト」ヒロインの、心の内に目を向けた、快作だと申せましょうか。

11
いずれにしても、病系映画の新たなステージへと、踏み込んだ本作。

「エクソシスト」と共に、永くココロに残る作品と、なることでしょう。

2017年12月12日 (火)

「ヒトラーに屈しなかった国王」⇒ノルウェー映画

Photo
戦争映画における、ヒロイズムを描いた快作

映画史上初の、ノルウェーの戦争映画だ

http://www.kings-choice-jp.com

12月16日のサタデーから、アット エンタテインメントの配給によりまして、シネスイッチ銀座ほかで、全国順次のロードショー。

関西やったら、2018年1月13日から、テアトル梅田ほかで上映。

本作は、2016年製作の、ノルウェー映画136分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Vasl/Zenlropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures

1
第二次世界大戦の、ナチもの映画となれば、

これまでに大量の作品が、作られてきました。

そんな中で、ノルウェーではどうだったかを捉えた、

ノルウェー映画初の、ナチズム抵抗ものです。

2
「史上最大の作戦」(1962年製作・モノクロ)や、「プライベート・ライアン」(1998年)など、

この種の戦争映画のハリウッド映画は、モノゴッツーな迫力を示しとりますが、

但し、本作も空襲とか逃亡とかの、いろんな場面で、

アクション映画としての、戦争映画の醍醐味を示してくれてます。

3
戦争映画となれば、みなさんは、やはり戦場場面の凄さに、魅了されるのでしょうが、

でも、アクションの抑揚と動静を、示して描く映画もまた、

その段差によって、胸にくる映画となり得ます。

4
そして、本作の場合、室内劇となる、その静かなるシーンこそが、

大いなる見どころとなっているのです。

なぜなら、ナチに対する、主人公のノルウェー国王の対応が、

どうなっていくのかを、ハラハラドキドキの心理劇的に、描写されるからです。

5
ナチが攻め入ってきた。それに、反抗した。

ナチはどおゆうことやねんと、服従するんか、それとも…と、政府筋に迫ってくる。

一方で、国王一家らが、田舎へ逃亡する。

ヒトラーの命を受けた人情派の公使が、国王の意向を聞かんと、国王との接触を計っていく。

6
ナチ側と国王側を、カットバック的に描きつつ、

王・軍・政府の動きも、交錯させつつも、

時間通りに進行してゆく映画でして、

過去と現在を、カットバックさせつつの映画よりも、

よりストレートに、ある種のダイナミズムも感じさせながら、映画が展開してゆきます。

7
戦争映画の在り方の新側面が、あると感じられた映画でした。

逃亡に終始した「戦場のピアニスト」(2002年・ポーランド&フランス合作)の国王版であり、

「日本のいちばん長い日」(1967年・日本・モノクロ)のノルウェー版。

でも、その作りのハラドキは、一連の名作と変わらない。

当時のノルウェーの様子を、初めて描いた映画としても、記憶に残るべくな作品でした。

8
本編での重々しいサントラ使いも、インパクトがあった。

弦楽オーケストラを駆使しながら、スリリングなシーンに、ビビッドに胸に迫りくる音楽。

しかし、ラストロールでは、ピースフルなコーラス曲を流してゆく。

ウ~ン、余韻深きサントラ使いでしたね。

9
戦争映画ファンを始め、いろんな映画ファンに、遡及する傑作です。

「ビジランテ」⇒大森南朋・桐谷健太・鈴木浩介共演

1
「サイタマノラッパー」が、より複雑化したドラマ映画

原作のない、映画オリジナルが新鮮

http://vigilante-movie.com

12月9日から、東京テアトルの配給により、テアトル新宿ほかで、全国順次のロードショー中。

本作は、2017年製作の、日本映画126分。

「R-15+」指定映画。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「ビジランテ」製作委員会

2
埼玉地方ロケによる、兄弟たちの相克を描いた映画です。

地方映画らしからぬ、かなりの暴力的な内容で、

ゾーッと背筋が、凍るようなとこはあったけど、

安直に兄弟のキズナなんかに、着地するような映画とは違って、

人間のエゴイズムのグロサを、容赦なく描いて鮮烈だった。

4
地方の現実とゆうか、政治家とマスコミ、財界の癒着に加え、

地方ヤクザの冷酷さなども挿入しつつ、

3兄弟のいがみ合いが、描かれていくわけであります。

3
ボク的には、同じく埼玉ロケだった、社会派監督・山本薩夫の「暴力の街」(1950年製作・モノクロ)を思い出したけど、

かし、本作は「暴力の街」のような、安易なとゆうか、大衆受けするような、正義なる解決には着地しません。

もっとずっと、波乱に満ちています。

5
「SR サイタマノラッパー」(2009年)などで、若者たちの衝動を撮り続けてきた入江悠監督の、映画オリジナル脚本による映画だ。

映画オリジナルが、稀少な邦画界において、まさに撮りたい映画を撮り上げた逸品。

この間に作った、メジャー作品のヒットが、ホントに撮りたかった映画を、現実化できたのでしょう。

6
3人兄弟の幼い頃の、暴力オヤジからの、虐待ぶりエピソードから、物語は始まります。

その時、長男(大人になると、大森南朋)が家出した。

30年後。次男(鈴木浩介)は政治家になり、

三男(桐谷健太)は、ヤクザに雇われるデリヘル店主になっていた。

この格差がちょっと気になったけど、地方では、そういうことは、まま、あるんだろうなと思った。

8
オヤジが死に、オヤジ所有の土地を、議員の次男を手なずけて、

政治家たち(嶋田久作ら)が、アウトレットモールの設置場所にしようとしたが、

そんな時に長男が帰ってきて、公正証書を手に、土地はオレのもんだと、言い張るのでした。

13
嶋田久作は、闇組織に長男を何とかしろと依頼。

でもって、利権を巡る、ヤクザや兄弟を巻き込んだ、暗躍のドラマが、スタートするのであります。

7
ヤクザから、手の甲をテーブルに、キリで刺し抜かれる桐谷健太のシーンやら、

クライマックスの、残虐極まりない、バイオレンス・シークエンスなど、

「R-15」に指定されたらしい、コドモには見せられないシーンが続く。

9
アクションがストレートだった、広島地方ロケの「仁義なき戦い」(1973年)などとは違って、

真綿で首を締めるような、屈曲のアクト・シーンや、拷問シーンが、

オオッと胸を、エグってくる作品でした

10
大森南朋の、ぶっきら棒感、

桐谷健太の、主人公にふさわしい誠実な感じ、

鈴木浩介の、かしこまりな退き。

3者3様の演技アンサンブルが、アンサンブルどころか、

不協和音を奏でるとこなんか、ドラマツルギーを盛り上げてゆきます。

12
ダーク感を表現するためか、夜のシーンを、かなり採り上げた作りです。

対して、明るめの朝昼シーンとの対比効果も、目立たないけど、効果的だったと思います。

11
キャッチーなダンス・ミュージック、劇中でみんなで斉唱する労働歌、チェロをベースにしたインスト・サントラなど、

シーンに合わせた音楽の使い方もまた、効果的だった。

地方映画のダーク感や、イビツやしがらみを映した作品でありまして、

地方の島ものではありましたが、今村昌平監督の「神々の深き欲望」(1968年)などに、迫るような作品でした。

2017年12月 8日 (金)

「DESTINY 鎌倉ものがたり」⇒週末日本映画劇場

1
堺雅人と高畑充希が扮する、ユニークな夫妻映画

黄泉(よみ)の国・天国の造形が、アッと驚く仕上げぶり

http://kamakura-movie.jp

12月9日の土曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会

2
堺雅人と高畑充希共演の夫婦映画。

ここで、21世紀の日本映画の、夫妻映画マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、

思いつくままに披露しますと…。

●ベスト⇒①ぐるりのこと。(2007年製作)②阿弥陀堂だより(2002年)③本作

●カルト⇒①さよなら渓谷(2014年・弊ブログ分析済み)②彼女がその名を知らない鳥たち(2017年・ブログ分析済み)③岸辺の旅(2016年・ブログ分析済み)

12

●本作は、夫妻のどちらかが病系の、ベスト①②とは違い、

夫妻の仲の良さを、とことんストレートに追求し、エンターテイメントした作品だ。

カルトには、異質な夫妻関係ものを選んだが、

カルト③は、ダンナは既に死んでいるけど、生きているように見せたものだが、

本作も、その種のユニークなシチュエーションが、夫妻共に施されるのです。

3
幽霊であるとか、天国(本作では黄泉の国)とか、

その種の設定は、これまでの映画で、多彩なカタチで、リフレインされてきました。

しかし、本作は、その2つの設定において、かつてないユニークな設定を施しています。

死んでも、天国へ行くまでに、中継地があるなんてゆう映画が、いくつかありましたが、

本作では、死神(安藤サクラ)が、死んだ人の事情に合わせ、

生人パワーを供給させ、生身の人間として生き返るようにするんですよ。

だから、死んでも生きてる人がいるとゆう、おいおいな設定が待っています。

4
さらに、天国の造形の、オリジナリティーに驚かされた。

しかも、ネタになる設定部では、スゴイウルトラワザが、披露されます。

それを体現するのは、天国へ、ヨメ役の高畑充希を、取り戻しに行った、ダンナ役の堺雅人であり、

そして、高畑充希も。

7
脇役陣の設定も、サプライズの連続です。

死んだけど、生き返らせてもらって、カエル人間になる堤真一とか、

貧乏神役の田中泯とか、

人情派コメディエンヌぶりを、示す中村玉緒とか、

バラエティーな驚きに富んでいます。

9
堺雅人はミステリー作家役でして、警察の捜査にも協力する設定になっていますが、

アリバイトリックを、鮮やかに破るなんてゆうとこも、

メインのところとは違うところで、楽しませてくれます。

8
さてはて、本作は、奇妙奇天烈な設定からして、コミック原作に見合っているのですが、

但し、もっとずっとリアル感日常感があった「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)の、西岸良平原作でして、

しかも、監督は「ALWAYS」と同じく、山崎貴監督。

現実と非現実を、二律背反のように作り上げられ、撮り上げられた、2作品とゆうことになるでしょうか。

5
でもって、鎌倉ロケーションの美しさ。

さらに、CG・VFXでクリエイトされた、黄泉の国の造形ぶりは、

「ALWAYS」の東京駅と匹敵する、目が点になる素晴らしさです。

そして、ラストロールで流れ来る、宇多田ヒカルの、

メロディックなヒッキー節バラード「あなた」に、酔わされてしまった。

10
ボク的には、山田洋次監督の新シリーズ「家族はつらいよ」(2016年・2017年・ブログ分析済み)の、

祖父母役の、橋爪功と吉行和子が、

幽霊夫婦役で出てるとこに、何やら妙味やシブミを感じて嬉しかった。

シリーズ化されそうな、そんな期待もある作品です。

2017年12月 6日 (水)

アメリカ・イギリス合作「否定と肯定」

1_2
リーガル・裁判ドラマ映画の、ニュー・スタイルだ

レイチェル・ワイズや、トム・ウィルキンソンらが魅せる

http://www.hitei-koutei.com

12月8日の金曜日から、ツインの配給により、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、ほかで全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、イギリス&アメリカ合作の、本編110分。

テキスト=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒDENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016

2_2
本作は、裁判映画の新機軸を、示す1作です。

そこで、ここで、リーガル・法廷映画のアメリカ映画の、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままに披露しますと…。

●ベスト⇒①十二人の怒れる男(1957年製作・モノクロ)②評決(1982年)③情婦(1957年・モノクロ)

●カルト⇒①本作②アミスタッド(1997年)③評決のとき(1996年)

3_2
●裁く・裁かれるの裁判映画にも、いろんなパターンがあります。

陪審員たちの、密室ドラマベスト①、

弁護士の手腕を、採り上げたベスト②、

証人の重要性を描く、アメリカの裁判映画の、ルーツ作ベスト③、

検事と弁護士が、丁々発止するカルト③。

これらは裁判映画の王道編でしょう。

対して、本作やカルト②などは、裁判劇に、かつてない視点を、取り込んだ作品です。

4_2
奴隷制度とゆう、アメリカの根源的問題を、裁判ドラマ化したカルト②。

そして、本作は、ナチ問題の現在形と共に、

イギリスとアメリカの裁判の違いを、捉えたスリリングな問題作となりました。

6_2
ホロコースト・アウシュビッツ収容所には、ユダヤ人を殺すガス室はなく、

ナチはユダヤ人を、虐待していなかったとする、

イギリスの学者(ティモシー・スポール)が、

自分の説を、非難したとゆうことで、名誉棄損で、

アメリカの女歴史学者(レイチェル・ワイズ)を訴えた。

レイチェルはそれに応じて、被告人として裁判に挑みます。

しかし、イギリスの裁判制度は、アメリカと大いに違っていた。

7_2
弁護士たちの戦略の、面白さに魅せられました。

ホロコーストの生存者は、証人として呼ばない。

被告のレイチェルは、反論をせず黙り続けること。

弁護士(トム・ウィルキンソン)が、何といっても渋かった。

実話がベースの、作品であるとこにも、驚かされました。

いろんなサプライズがある、裁判劇の傑作です。

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本作は、ミック・ジョンソン監督の新作です。

ケヴィン・コスナー&ホイットニー・ヒューストン共演の「ボディガード」(1992年)が、世界的に

大ヒットした監督さんです。

本作までにも、

いくつものヒットした、

ハリウッド作品を、

監督してきました。

そして、本作にたどり着いた。

レンタルで「ボディガード」を味わって、

本作を、映画館にてご堪能ください。

2017年12月 5日 (火)

チリ映画「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」

1
ガエル・ガルシア・ベルナルが、詩的刑事を熱演

追う追われる追逃劇の、新たな次元を提示する

http://www.neruda-movie.jp

12月9日のサタデーから、東北新社 STAR CHANNEL MOVIESの配給で、シネ・リーブル梅田ほかで、全国順次のロードショー。

本作は2016年製作の、チリ&アルゼンチン&フランス&スペイン合作の、本編108分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒFabula, FunnyBalloons, AZ Films, Setembro Cine, Willies Movies, A.I.E. Santiago de Chile, 2016

2
かつて弊ブログで、ロードムービーのマイ・ベスト&カルトを披露しましたが、

今回は、追う者・追われる者の、追逃劇的ロードムービーの、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままに披露しますと…。

●ベスト⇒①ノーカントリー(2007年製作・アメリカ映画)②ロード・トゥ・パーディション(2002年・アメリカ)③バニシング・ポイント(1971年・アメリカ)

●カルト⇒①本作②チェイサー(2008年・韓国)③バンディッツ(1997年・ドイツ)

3
●西部劇や、アメリカン・ニューシネマのベスト③など、

追逃劇は、アメリカ映画がルーツとなるでしょう。

その応用バージョンとして、ベスト①②などがあります。

でもって、カルトでは、アメリカ以外の国製作の作品を、採り上げたわけですが、

犯人対警察とゆう、オーソドックスなスタイルこそ、

温故知新的に新しいことが、なんとなく分かります。

4
本作も、基本ラインはそうなんだけど、

実話にも関わらず、よりドラスティックかつ、フィクショナルな作りを見せています。

1948年のチリが舞台。

逃げるのは、1971年にノーベル文学賞を受賞する、詩人パブロ・ネルーダ(ルイス・ニェッコ)と、その妻(メルセデス・モラーン)。

追いかけるのは、ネルーダを国家の反乱分子と見た、大統領の命を受けた警官(ガエル・ガルシア・ベルナル)だ。

5
打つはないけど、飲む・買うに、目がないネルーダは、逃亡中も、酒を飲み女を買う。

その姿も、ユニークだと思うけど、もっと斬新なのは、追う側のベルナルでした。

6
ベルナルの、ココロの呟きとなるナレーションが、しょっちゅう流れるのですが、

コレがネルーダ的な詩的な、韻を踏むような言葉になっているのです。

7
ネルーダを追う警官は実在したでしょうが、

その人物を、映画的オリジナル・キャラクターとして、描いているのです。

やがて、ベルナル自らが、フィクションの中のキャラだと、気づくとこなんか、オッとくるシーンでしょう。

8
チリ南部での雪原追逃劇が、

クライマックスになる。

個人的には、高倉健主演の

「網走番外地」シリーズ第1弾

(1965年・モノクロ・日本)の、

クライマックス・シークエンスを、

思い出したりして、

ちょっと震えました。

9
そんでもって、ラストロールでは、ハリウッド映画的オーケストラ・サントラを、派手に流してくれます。

ハリウッド映画的を意識していたことが、最後に分かる仕掛けだ。

何はともあれ、製作本数も少ないチリ映画が、日本上陸するのは、久々じゃないかな。

でも、その久々をカンジさせない、サスペンスフルな快作でした。

フィリピン映画「立ち去った女」

1
4時間近いモノクロ映画・固定長回し撮影多投

あなたは、どこまで、耐えられるか、試してみてみ

http://www.magichour.co.jp/thewoman/

12月9日の土曜日から、マジックアワーの配給で、第七藝術劇場ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、フィリピン映画モノクロ228分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

2
11月30日付けのマイ年間ベストテン候補作で、採り上げた作品です。

4時間近い長尺。

モノクロ映画。

移動撮影なしの、画面固定の5分前後の、長回し撮影の多投。

ほとんど日本上陸しない、フィリピン映画。

身を退きそうな感じだが、

ベネチア国際映画祭では、最高賞の金獅子賞をゲット。

果たして、あなたは、この映画を見に行きたいと、思うでしょうか。

どないや?

5
いちおう、復讐の映画だけど、

「キル・ビル」(2003年製作・アメリカ映画)やら、

「狼よさらば」(1974年・アメリカ)みたいに、

アクション場面を、バチバチにやってくることもない。

4
オカンの行動を、省略もサントラも説明もなく、ひたすら映してゆくとゆう映画。

交流もある。

卵売りのオジン、ホームレス女、いじめられるオカマら。

フィリピンの低・低・低辺に生きる、貧しき人たちと交流しながら、

自分をハメた、元恋人を殺そうとする展開。

3
ハメられて刑務所に30年も入り、真犯人が現れたってことで釈放。

その真犯人は、発覚後自殺。

30年の間に、ダンナは死に、大人になった息子は、行方不明、娘は結婚して、子持ちで実家を出てる。

ヒロインは、娘と30年ぶりに再会し、息子を探す目的と同時に、復讐のため、元恋人のいる島へ行く。

そして、現地で、元恋人の動向を探りながら、上記の貧しい人たちと、キズナってゆくのでした。

9
オカンは強しとゆうタイプの、ヒロイン映画だけど、

長回し撮影部が、時に眠たくさせるようなところが、あるにはあった。これはホンネです。

映画評論家受け、映画賞受けを狙って、作ってきている映画であることは、見ていてよく分かるんだけど、

その耐えて見た末に、何がココロに残るのかとゆうと、

サプライズが、いくつかあったとしても、何もない場合がある。

6
でもって、本作の場合も、残るのは、ボク的には、はっきり言って、空洞でした。

とゆうか、それはラヴ・ディアス監督の、狙いでもあったのではないかと思うんです。

7
あえて敵との対決を、クライマックスにせずに、

ヒロイン・オカンの言動を、静かに見せてゆくところは、渋いと言えば渋い。

けども、何か心残りや不満がある。

実は、それもまた、監督の掌中にあるのです。

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3時間48分を見たあとに、何があるのか。

それは見た人にしか、分からない映画でしょう。

でも、こおゆう映画こそが、ホントの映画芸術なのかもしれない。

芸術性を狙って映画を作ることの意味を、改めて考えさせてくれた。

定番的な言い方をすると、年間ベストテンに入るような作品でしょう。

ボクはどないするか。

迷っているけど、いずれにしても、ココロに重たく残るような映画ではありました。

何はともあれ、ココロして、見に行ってください。

2017年12月 1日 (金)

「鋼の錬金術師」⇒週末日本映画劇場

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ヒットし続ける、コミック原作映画の波は、止まらない!

特殊設定ながら、正義対悪のドラマ構図は不滅だ!

http://www.hagarenmovie.jp

12月1日の金曜日から、ワーナー・ブラザース映画の配給で、全国ロードショー。

本作は2017年製作の、日本映画133分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 荒川弘/SQUARE ENIX 

ⓒ2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

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コミック原作映画は今や、多彩に花開いています。

映画・TVに関係なく、アニメ化もされ、実写化もされる。

さて、ここで、コミック原作らしい、リアリズムから離れた、トンデモナイ感を示した、

実写日本映画の、21世紀に製作された、マイ・ベスト・ファイブを、順不同で披露しますと…。

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①本作②ピンポン(2002年)③寄生獣(2013年・弊ブログ分析済み)④GANTZ(2011年・ブログ分析済み)⑤銀魂(2017年・分析済み)

☆プラスワン⇒DESTINY 鎌倉ものがたり(2017年12月9日公開・後日分析)

●大ヒットした「るろうに剣心」(2015年)などは、時代劇なだけに、時代考証のリアル感が、それなりにありましたが、

採り上げた5本プラスワンは、

②の卓球スポ根ものでさえも、トンデル感じで、

SFとも呼べない、チョー現実離れしたお話が、

メインにありま

す。

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但し、この作品。しかし、「ブレードランナー」(1982年・アメリカ)などの名作に、影響を受けたところがあります。

そして、正義と悪の対決構図なのですが、

コミック原作の正統系のヒロイズム映画に、回帰した作りになっています。

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正義側は、山田涼介、本田翼、ロボット・アルら。

悪にも見える、体制側には、小日向文世、ディーン・フジオカら。

半分悪かな!?には、大泉洋やら佐藤隆太ら。

でもって、人造人間として、紛うことなき悪となる、松雪泰子、本郷奏多ら。

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かなり異能な設定で、展開する映画なので、

前もっていろんな情報を、収集しておいた方がいいかもしれません。

それでも、ややこしいとこは抜きにして、正義と悪の図は、誰にでも分かりやすい。

それは、正義は正義としての矜持が、

悪は悪としての非情さが、はっきりしているからでありましょう。

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ボク的には、人造人間アクションに、インパクトがあった。

特に、松雪泰子の、「ブレードランナー」の、ダリル・ハンナに劣らない、怪演技ぶりが、

これまでの彼女の、役柄との段差もあって、強烈な印象があった。

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母を蘇えらせようとして失敗し、ロボ化してしまった弟を、元の姿に戻そうとする山田涼介。

そのためには、「賢者の石」が必要らしい。

そこで、彼はそれを探している。

一方で彼は、国家の危機を救う、国家錬金術師でもある。

弟を救おうとする熱意など、ともすると過剰演技なとこもあるけど、

トラウマある熱血主人公ぶりは、女性ファンのココロを、間違いなくくすぐるはずです。

7

片や、イケメン役者のディーン・フジオカにも、謎めきも含めて、魅かれることでしょう。

そして、主人公兄弟と幼なじみの設定の本田翼。

2人を慰めたり、励ましたりする、癒やしの演技が好感を呼ぶ。

8
善と悪とその中間が、分かれている中において、

最後の最後に、驚きのサプライズが待っています。

シリーズ化されそうな終わり方のあとには、

エンドロールで、MISIAのバラード「君のそばにいるよ」が、余韻深く流れ来る。

今後が、楽しみになってきました。

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