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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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カテゴリー「映画・テレビ」の記事

2019年11月21日 (木)

「決算!忠臣蔵」⇒週末日本映画劇場

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「忠臣蔵」にかかった予算は、なんぼやねん?

時代劇の定番を揺るがす、トンデモなノリが嬉しいネ

11月22日の金曜日から、松竹の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

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前世紀20世紀の、日本映画の話になるけど、

時代劇映画は、ゴールデンウイークの言葉を作った、日本映画興行界において、大ヒット間違いなしのドル箱であった。

その3大を言えば、本作の「忠臣蔵」もの、戦国時代の合戦もの、あとは赤胴鈴之介・丹下左膳などの剣士ものであろうか。

中でも忠臣蔵は、最も重宝されヒットした、時代劇エピソードである。

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しかし、そんな忠臣蔵だが、金太郎アメのように、おんなじもんをキャストを変えて、作り続けていても仕方がない。

いつの頃からか、飽きられたかは定かではないけども、ちょいと趣向を変えてみようかとゆう作品が、チビチビ出てきた。

その最初は、四谷怪談エピソードを入れた忠臣蔵もの、深作欣二監督が撮った
「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994年製作・松竹映画)だと思うが、

それ以降は、忠臣蔵を変えたろかいなとゆう映画は、なんでか出てこなかった。

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久々にそんな作品が出てきた。
「忠臣蔵」にかかった予算とは? 

どれぐらいかかったんかというよりも、莫大な金がかかるんで、そんな討ち入りなんて、最初はやめとこかちゅう話やったらしいです。

お家お潰しの際も、退職金が減ってまう。何のメリットもなく、忠義という名のプライドだけしかない。

そんなアホらしいのん、やめとこ、やめとこ。

カッコイイヒロイズムな忠臣蔵話が、そんな話へと堕していくなんて、なんちゅうことやねんと、嘆く方もいるだろう。

けど、現実としては、討ち入りはなされとります。

とゆうことで、そこへ行くまでの、スッタモンダやバカバカしさ、丁々発止やらヒロイズム・忠義の在り方やらが、

コミカルに、でもしか、資金の問題もあるので、シビアに描かれていくのであった。

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ここで、かつてもやったけど、日本映画のコミカル時代劇の、マイ・ベスト&カルト・スリーをば、披露してみよりますと…。

●ベスト⇒①幕末太陽傳(1967年・モノクロ)②股旅(1973年)③ジャズ大名(1986年・弊ブログ分析済み)

●カルト⇒①本作②清須会議(2013年・ブログ分析済み)③超高速!参勤交代(2016年・ブログ分析済み)

●時代劇が映画興行の中心になっていた時代は、今や昔だけど、

変型バージョンとなれば、アクション少なく、殺陣演出がない作品が多くなる。

殺陣なしにどう時代劇を魅せるのか。

ベスト・カルトに関わらず、この6作はそれに十二分に応えた上で、時代劇としてのオリジナリティーを示す快作・名作である。

それは、6作を見てもらった上で、それぞれの作品熱に、あおられてほしいと思う。

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「忠臣蔵」映画ファンに対しても、説得力をもたせる作りだし、

「忠臣蔵」初めて体験の人も、面白く楽しく見れるようになっとります。

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変型時代劇は、21世紀以降は、松竹映画が積極的にやってはります。

「武士の家計簿」(2010年・ブログ分析済み)は衝撃的やったけど、

カルト③など、そのベースにあるのは、参勤交代にいくらかかるとか、城の引っ越しにいくらかかるとかの、これまでの時代劇には、全くなかった経済的視点である。

でも、それらの予算の問題を超えたところに、映画のミソがある点など、

この種
の映画には、まだまだネタが潜んでいるように思われる。

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従来の「忠臣蔵」映画と変わらない、オールスター映画にもなっていた。

大石内蔵助役の堤真一の、悩み深きヒロイズムもいいけど、

予算勘定方の岡村隆史の、コミカル抜きのシビアさにも、ウーンと唸れた。

単にコミカルではない。

間違いなく、忠臣蔵映画の本当のところを、示した作品である。

ベトナムのヒロイン映画「第三夫人と髪飾り」

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第三夫人がヒロインの女性映画

19世紀のベトナムの実話がベースに

11月22日の金曜日から、テアトル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作の、ベトナム映画93分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒcopyright Mayfair Pictures.

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一夫多妻制があった、19世紀のベトナムを舞台に、

第一から第三までの夫人の中で、14歳の第三夫人をヒロインにした、哀しき女の物語。

とはいえ、それを悲哀あるカンジでは描いてはいない。

むしろ前向き、かつ抒情的ですらある。

女が虐げられるような映画は、これまでにかなりのタイトル数があるけど、

本作は虐げ系はまるでなく、子作りが重要視され、女たちの争いもほとんどない。

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不思議な映画だ。

しかも、癒し系のノリもある。

美しい自然描写を、まずはポイントとして挙げたい。

花や虫たちのアップや、満月ある空の描写に加え、森や清流など、ココロ洗われるシーンが頻出する。

グリーン・トーンを基調とした色使いや、自然光の使い方など、

欧米の映画では決して見られない、自然を活かした癒やしに、ホッと和めるのだ。

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ベトナム映画とくれば、カンヌやヴェネチアで受賞した、トラン・アン・ユン監督作品など、

世界的に有名になった映画作家がいる。

彼の作品は、やはり自然が豊富なベトナムを活かし、ゆったりした作りになっている。

ヴェネチアで最高賞をゲットした、「シクロ」(1995年製作・フランス&ベトナム&香港合作)は、トンがってはいたけど、最後には静謐や穏和が訪れた。

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そして、本作は、ニューヨーク大学で映画製作を学んで、本作のオリジナル脚本が、教授でもあったスパイク・リー監督の推薦を受け、

映画界に颯爽と登場した、女性監督アッシュ・メイフェア監督作品である。

しかも、前述のトラン・アン・ユン監督が、美術監修を務めている。

加えて、北ベトナムのロケーション場所は、世界遺産に登録された桃源郷のようなところである。

やはり、自然の美しさが際立っているわけだが、

しかし、3人の夫人に扮した女優による、ソフト・タッチのアンサンブル演技もまた、癒やしの領界へといざなうのである。

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ヒロインの出産シーンなどのインパクトもあり、ヒロイン映画の粋で魅せていく。

この種の映画がベトナムから出てきたことは、映画史的にもボクは画期的だと思った。

また、ヒロイン映画の前向き系を、ストレートな「風と共に去りぬ」(1939年・アメリカ)などのスカーレット・オハラとは、

趣きを異にする作りは、斬新以外の何ものでもない。

「愛人/ラマン」(1992年・フランス&イギリス
)の衝撃を、緩和するような、胸がスーッとなるような作品だった。

2019年11月20日 (水)

横山秀夫ミステリー「影踏み」

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山崎まさよしと篠原哲雄監督のコラボレーション
 
横山秀夫ミステリーに挑む!
 
11月15日の金曜日から、テアトル新宿ほかで全国順次のロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「影踏み」製作委員会

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ラブストーリー「月とキャベツ」(1996年製作)以来の、コラボレートとなった、山崎まさよし主演・篠原哲雄監督作品だ。

今回はミステリー映画である。

山崎まさよしは今作で、3度目の映画出演にして主演。

モチ主題歌を提供するというスタイルも、前2作と同様だ。

しかし、ミステリーとゆうのは、想定外ではなかったか。

しかも、横山秀夫原作映画だ。

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横山秀夫原作映画と言えば、本作を含めて、これまでに6作しか映画化されていないが、

「半落ち」(2003年)「クライマーズ・ハイ」(2007年)「64 ロクヨン」(2017年・弊ブログ分析済み)などと、評論家受けの高い傑作がある。

そんな中での、山崎まさよし、探偵役主演である。

ミステリーとなれば、フツーの映画以上に、謎解きを追求するという意味において、

映画的ではなく、ある意味において、難易度は高いと言えるだろう。

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篠原哲雄監督のフィルム・ディスコグラフィーには、ミステリー映画もある。

「木曜組曲」(2002年)は、本格ミステリーの粋を、見せた快作だったが、但し、本作の場合はどうか。

山崎まさよし探偵は、いわゆる聴取部分では、説明セリフもあるので、論理的ではあるけども、少々ぎこちなくも見えた。

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北村匠海を相棒にして聴き込む中で、

刑事役の竹原ピストルとの、相克あるやり取りや、

彼女役の尾野真千子との、静かなやり取り、

事件のキーを握る、中村ゆりへの聴き込みなど、

ハードボイルド調から、足の捜査的刑事調まで、粘っこく魅せてくれている。

母親役・大竹しのぶとの回想部も悪くない。

ただ、やはり、ミステリーとしては、うまく運んでいないように見受けられた。

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「月とキャベツ」に続き、群馬県ロケーション映画である。

上毛新聞の社会部の記者だった、横山秀夫も群馬県とは、大いに関わりがあるし、

関東ながら、本作で背景となる群馬は、全国の地方都市にある問題を、

代表し内包したカンジで、見栄えのする舞台であったかと思う。

「月とキャベツ」とは色合いが違う、山崎まさよしと篠原哲雄監督の、新たな第2弾。

山崎まさよしの、渋いヒューマニズムに酔いたい映画だ。

2019年11月19日 (火)

「ザ・ヒストリー・オブ・シカゴ ナウ・モア・ザン・エヴァー」

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ブラスロックバンドの50年の軌跡

ロックバンド・ドキュの、お手本的仕上がり

11月22日のフライデーから、テアトル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、アメリカ映画114分。

文=音楽分析評論家・宮城正樹

Package Design & Supplementary Material Compilation TM & ⓒ 2016 Fisher Klingenstrin Ventures, LLC. All Rights Reserved.

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1982年、喫茶店の洋楽有線から、突然流れてきたバラードに、ボクは思わず鳥肌が立った。

ピアノをバックにした、メロディアスでキャッチーで感動的なナンバー。

ビートルズの「レット・イット・ビー」に勝るとも劣らない、ウットリの聴きごたえ。

誰の何という歌なのか分からなかったので、ボクはその歌を、レコード店を中心に探し続けた。

いろんな洋楽のアルバムを買ったが、その歌はそれらのレコードには見つけられなかった。

しかし、ビルボードのその年のナンバーワンの軌跡を、テレビで見た時に、遂にその歌を発見した。

衝撃の初聴
より、3カ月くらいかかったかと思う。

その歌とは、シカゴの「素直になれなくて」である。

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収録アルバムは、16枚目の「シカゴ16」。

シカゴについて、ボクは過去を漁った。

ロックにブラスサウンドを、採り入れたブラスロックバンドとして、ウッドストック・シンドロームの、1969年にメジャー・デビュー。

その代表ナンバーの、アップテンポ・ナンバー「長い夜」や「サタデイ・イン・ザ・パーク」が、全米で大ヒット。

「素直になれなくて」のような、メロディアス・バラードではない。

しかし、メンバーたちは、ブラスが弾けるワイルド・ロックこそ、シカゴの持ち味であるとし、これまでの50年を生き抜いてきたと言う。

だが、1976年に、グラミー賞最優秀レコード賞(レコード・オブ・ジ・イヤー)に輝いた「愛ある別れ」は、バラードであった。

そして、その曲や「素直になれなくて」を作曲した、バンドのリード・ボーカルのピーター・セテラは、

バンドの中でも浮いた存在で、1980年代にはバンドを去って、ソロ・アーティストになった。

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そのあたりの経緯は、シカゴのキャリアを描く本作においては、さほど重要ではないみたいだったけど、

でも、ボクはそこがイチバン衝撃的だった。

つまり、ボクが魅かれたナンバーが、シカゴの本領ではなかったとゆう点だ。

当時の時代のトレンドであった「TOTOサウンド」(バンド・サウンドの混成をオーケストラ並みに、スムーズに聴かせたサウンド・プロダクツ)の仕掛け人、

プロデューサーのデヴィッド・フォスターによって、シカゴは1980年代に復活したが、

「シカゴ16」は、シカゴの意に反して、そんなサウンドのオンパレードだった。

シカゴの軌跡を知るとゆう本作は、シカゴ・ファンにしか機能しないように思われるけど、

ロック・サウンドに対する、メンバーそれぞれの想い・考えから、浮かび上がってくるのは、ロックの自在性・自由・フレキシブルである。

ポピュラー・ミュージックで、イチバン人気のあるロックの、気風を普遍的に捉えた本作は、1アーティスト1バンドの、単なるドキュではない。

そのあたりをじっくり見て、自らロックを解き明かしてほしい作品だ。

「殺さない彼と死なない彼女」

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アイドル学園ドラマ映画の変格系の登場

セオリー外す、2パターンのラブストーリー

11月15日の金曜日から、新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019 映画「殺さない彼と死なない彼女」製作委員会

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コミック原作の学園ラブストーリーにして、角川映画的アイドル映画となれば、

ある程度の期待感を持って見られるし、安心して楽しめる。

しかし、本作は大いに違っていた。

いわばアンチアイドル映画とか、アンチ学園ドラマ映画とかのノリが、そこはかとなく感じられる映画になった。

相米慎二監督の学園もの「台風クラブ」(1984年製作)などを、チョイ意識した作品ではなかろうか。

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アイドル学園ドラマらしい、いわゆるラブストーリーは、2パターンで披露されるが、問題なのは、その描き方のフツーじゃないスタイルである。

死にたいと言う彼女(桜井日奈子)と、死にたいなら、俺が殺してやるよと言う彼(間宮祥太朗)のラブ。

そして、片想いだけど、特定の男子生徒に好きだと、言い続ける女子生徒のエピソード。

さらに、女子生徒同士の付き合い(ラブ!?)もある。

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邦画の学園ドラマは、21世紀に入って、かなり変局してきたところがある。

もちろん、ストレートでフツーの学園ラブストーリーは、恒常的に作られているが、

その狭間で、変型にして強烈なインパクトを残すものが作られている。

例えば今年で言えば、年間マイ・ベストテン級だとジャッジした「町田くんの世界」(弊ブログ分析済み)など、

特異なキャラクターを主人公にした、今までにはなかったような学園ラブがある。

でもって、本作もまた、これまでにない、おいおいなキャラが、ラブッてくれる映画となった。

「町田くんの世界」との違いは、そのヒネクレ系のキャラが、前向きか前向きでないかだけで、

一般受けの共感なら、町田くんだろうけど、こちらは少々選ぶかもしれないけど、

しかし、最終的には前向きなんだから、これはこれでOKだよね。

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間宮と桜井のやり取りやセリフは、フツーじゃないけど、

また、間合いの多さや、二人のツーショットに則した長回し撮影など、映画作家的企み演出や撮り方が、少しウーンとなるかもしれないけど、

2人のキャラに合わせた演出で、2人の消極的!?ラブを示すならば、ボクは決して悪くないと思う。

陽光の使い方も柔らかくて、映画に優しい感触をもたらしていた。

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コミック原作映画やアイドル映画や、学園ラブストーリー映画の変格系ながら、

フツーのその種の映画と比べてみると、とっつきにくいかもしれないけど、

んやフツーで大したことないやんと言われるより、こちらの方が映画的に進化していて面白いはずだ。

公開中なんで、今すぐ見に行って確認してみよう。

2019年11月17日 (日)

「いのちスケッチ」⇒日曜邦画劇場

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福岡の“いのちの動物園”を撮り上げた
 
動物たちに関わる人たちの群像劇
 
 
11月15日の金曜日から、全国公開。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「いのちスケッチ」製作委員会

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地方ロケーション映画にして、動物園、そこで働く人々を描いた群像劇である。

その種の映画といえば、「旭山動物園物語」(2008年)とか、

イルカを調教する「ドルフィンブルー」(2007年)などがある。

地方の美しい風景と、動物たちの癒やし。

見ていて和み、いいなーと思える映画なのは間違いないけど、

但しアプローチやコンセプトが、例に上げた2作とは、ビミョーに違う。

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フツーの動物園を描いた「旭山…」とは違い、

本作で描かれる動物園は、動物の健康管理に、気を配る動物園だ。

ライオンから、健康管理のための、血液採取なども行われる。
また、「ドルフィン…」とは違って、昔からある人と動物の交流ではなく、

動物との関わりの中で、関係者がいかに動物たちを、生きながらえさせるのかに、深くこだわった作りになっている。

主演のパート飼育員役・佐藤寛太と、獣医役の藤本泉の間で、

愛や恋やのドラマが展開してもいいのに、あえてそれをやらない作りが、その深みを証明していると言えるだろう。

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東京で漫画家になる夢に、破れた佐藤寛太は、故郷の福岡・大牟田に帰ってくる。

そんな彼は、市の動物園にパート従業員として働き始め、動物園のスタッフらと関わることとなる。

この佐藤寛太の自然体とゆうか、迷いつつも動物たちにハマッてゆくところが、なんか好感があった。

そして、彼にイロイロ言ってくる藤本泉。

獣医としてのスタンスが、きっちりした彼女だが、

その誠実な演技に加え、チョイ乙女コゴロを見せるシーンなんかがあったりして、いいカンジだよ。

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そんな若手二人を支える役には、ベテラン陣がキャスティングされた。

主人公の優しい母役・浅田美代子、

主人公の認知症のオバン役の渡辺美佐子。

でもって、動物園の園長役には、武田鉄矢が配された。

人柄キャラがにじみ出る長ゼリフなど、好感あふれる演技ぶりを披露し、主人公らを勇気づける。

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地方ロケ映画の話題作が、最近はあんましヒットしないけど、

安直なラブストーリーを外したこおゆう映画に、一つの光が射すのかもしれないし、射してほしいとボクは思う。

動物園ドラマの、一つの到達点を示す作品だった。

2019年11月16日 (土)

「ベル・カント~とらわれのアリア~」

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ジュリアン・ムーア・渡辺謙・加瀬亮共演のアメリカ映画
 
テロリストたちと人質たちの交流
 
 
11月15日のフライデーから、TOHOシネマズ梅田ほか、全国公開。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画101分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 BC Pictures LLC All rights reserved.

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1996年に発生した「ペルー日本大使公邸占拠事件」にヒントを得た、アン・パチェットの原作小説の映画化。

なぜこの人質を取ったテロ事件が、小説に書かれ映画になったのか。

それは、テロリストたちと人質たちが、ジュリアン・ムーア演じる、世界的オペラ歌手の歌披露をきっかけに、

2派が交流し、何とカップルまでできたからだろうか。

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テロ映画と相反するラブストーリーが、どのように融合し調和していくのか、そのマジカルなところを楽しみたい作品だ。

戦争し合う者たち始め、収容所や刑務所などのいろんなとこで、敵対する者たちが交流する映画というのは、ドラマティックだし心地いい。

そういう良質の部分が、クローズアップされている

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異国の政府誘致で、雇用促進の工場を作る、日本の実業家(渡辺謙)が、

オペラ歌手のファンだったことから、日本大使公邸でサロン・コンサートが開かれる。

通訳(加瀬亮)も同席した。

そこへ、テロリストたちが襲いかかるのだ。

だが、彼らの標的であった、その国の大統領は直前に欠席していた。

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ここに到り、政府とテロ・グループとの駆け引きが始まる。

さて、ラブストーリーだけど、ジュリアン・ムーアと渡辺謙、加瀬亮と女テロ兵士の間で展開する。

吹替えだけど、ジュリアン・ムーアが歌うスロー・ナンバーは、うっとりしっとり、みんなを癒やす。

伴奏者が銃殺されたので、代打でクリストファー・ランバートが、ピアノをプレイする。

そして、ここから、2組の愛のドラマと、2派の交流が始まるのだ。

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渡辺謙や加瀬亮だが、アカデミー賞女優ジュリアンと、堂々と渡り合っていた。

渡辺謙の剛イメージは柔らいだが、渋くコクある演技ぶりだし、

加瀬亮は、おぼこい素朴なタッチで魅せてくれる。

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ポール・ワイツ監督作品。

「アメリカン・パイ」(1999年製作・アメリカ映画)など、コメディ映画専門系だったのに、

本作では、シリアス・ドラマにアプローチ。

傑作「ジョーカー」(2019年・アメリカ・弊ブログ10月4日付けで分析)の監督が、

それまではコミカル作品で大ヒットを飛ばしていたのに、急変したようなカンジに似ている。

笑えるコメディ快作が撮れる監督は、シビアな作品でも、同じく力を発揮する。

本作は、それを証明した傑作だった。

2019年11月15日 (金)

「i-新聞記者ドキュメント-」

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新聞記者魂とは何なのか?

遊軍の女性記者・望月衣塑子の場合

11月15日の金曜日から、新宿ピカデリー、11月16日の土曜日から、第七藝術劇場、京都シネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作のドキュメンタリー日本映画114分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「i-新聞記者ドキュメント-」

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新聞記者が主人公の映画は、これまでに多数のタイトル数がある。

ボクなんか、「ローマの休日」(1953年製作・アメリカ映画・モノクロ)の、新聞記者役グレゴリー・ペックに魅せられて、

今はフリーだけど、大卒後、新聞記者になった口だった。

しかし、ボクの就職した新聞社は、まずは新人は校閲・整理部から始まり、

その後適材適所に合わせて、編集部の各部署に人事異動される。

ボクは文化部で映画や音楽を担当し、本作ヒロインの社会部の遊軍記者には、残念ながらなれなかった。

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ヒロインの記者は、東京新聞の社会部記者である。

東京新聞は労働組合が、新聞労働組合連合に加盟している。

組合で青婦部長だったボクの勤める新聞社が、労働争議になった時、新聞労連の三役がいち早く駆けつけてくれた。

それだけではない。傘下の全国の労働組合に、カンパを呼びかけて、一週間で二千万円を集めてくれた。

しかも、三役の書記長が、東京新聞の印刷労働者だった。

本作でも、ヒロインが窮地に陥った時、支援してくれたのは、まず新聞労連だった。

新聞労連と、その支援を受ける東京新聞の記者。

まさに、それだけの因子だけで、ボクはこの映画に没入し、夢中になることとなった。
記者の正義や真実の報道よりも、ボクは「ローマの休日」を見て以来、カッコヨサやヒロイズムに目がいってしまう。

しかし、ドキュ映画の伝えることが、たとえ政治悪・社会悪を暴くことであったとしても、

やはり映画らしいカッコヨサを、少しでも見てみたい。

この女性記者のヒロインぶりには、ゆるぎないヒロイズムがあった。

それは弱きを助け強きをくじく、ヒーローイズムだ。

そのあたりは、辺野古基地移設問題の取材やら、伊藤詩織強姦事件などで、遺憾なく発揮される。

籠池夫妻をインタビューする森友学園問題や、加計学園問題なども取材模様が披露される。

その一方において、ヒーローに似合わない、人間臭いところも、ケッコー披露される。
 
これがこおゆう映画のエエところだす。

ボクらとおんなじ人間なんだと思わせて、みんなに好感を覚えさせるのだ。

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官邸定例記者会見での、彼女の菅官房長官への厳しい質問が、官邸で問題視される事件など、

シビアに突っ込む記者の少なさに、少々残念に思うところもあった。

加えて、本作の森達也監督が、官邸取材に入れない縛りの問題。

表現や報道の自由はあっても、取材の自由はない。

そのへんにも食い入っている点が、ボクは良かったと思う。

2019年11月13日 (水)

イタリア映画「LORO 欲望のイタリア」

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エロおやじ首相の「甘い生活」
 
ダンスとポップでノリノリの映像マジックだ
 
 
11月15日のフライデーから、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都シネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作の、イタリア映画157分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2018 INDIGO FILM PATHE FILMS FRANCE 2 CINEMA

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スキャンダル始め問題が多発していた、実在のイタリアの首相ベルルスコーニを、

華麗なる映像マジックで、ディープインパクトに撮り上げた、政治家ヒューマン・ドラマ。
 
国家のTOPを描いた映画は多数ある。

最近では、コメディ・モードだったが、総理を主人公にした「記憶にございません!」(2019年製作・日本映画・弊ブログ9月15日付けで分析済み)が大ヒットした。

しかし、本作はコミカルじゃなく、またシリアスでもなく、

あくまで映画として、エロおやじ首相をどう描くかにこだわった、映画作家性の高い作品だ。

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首相サイドからは映画は始まらない。

スキャンダルへと導いた、政界外部の者たちが、いかに政治家を掌中に入れて、金儲けしのし上がるのか。

その手法がまずは描かれるのだ。

大統領や首相だけの物語を、ストレートに描く映画がほとんどであるが、

この迂回的アプローチは、映画の内容に裏付けと説得力を、持たせる効果をもたらしている。

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首相役のトニ・セルヴィッロが主役だけども、

政界に取り入ろうと画策する、青年実業家役のリッカルド・スカマルチョが、前半のキーを握っている。

クールでシビア、そしてエロエロ美女たちの利用ぶりの、徹頭徹尾さに目が点になる。

そのエロイズムな波が、首相に襲い掛かってくるわけだ。

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首相の豪邸には、首相夫人がいる。

この役にエレナ・ソフィア・リッチが扮した。

首相以上に特異でクセモノな役柄で、

そこんところを、エロと論理の硬軟両用を駆使しながら、首相をコントロールしていく。

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だが、旅行好きの妻がカンボジアへ行ってる間に、エロおやじ首相はやりたい放題の、放し飼い状態になってしまう。

豪邸でのダンス・パーティーで、その乱痴気騒ぎのピークを迎え、それが暴露されていくのだ。

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ノリノリのポップ・ナンバーがかかりまくってる。

コカイン・パーティーでは、気だるいスローを流したりと、シーンに合わせたサントラ使い。

「イタリア万歳」と歌う女たちのシーンは、ある種の狂気が垣間見えた。

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パオロ・ソレンティーノ監督の新作だ。

「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年・イタリア)でアカデミー賞外国語映画賞に輝いた彼だが、

本作では、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督へのオマージュが、色濃くなった作り。

「甘い生活」(1960年・イタリア&フランス・モノクロ・弊ブログ分析済み)の政界版だし、

ラストシーンでは「8 1/2」(1963年・イタリア・モノクロ・ブログ分析済み)と、シンクロするところもある。

いずれにしても、今年のベストテン級にして、彼の最高傑作となった作品だと、ボクはジャッジしたい。
 
 

2019年11月10日 (日)

「一夜 ひとよ」⇒日曜邦画劇場

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家族ドラマの新次元が描かれる

佐藤健・鈴木亮平・松岡茉優・田中裕子の4人だ

11月8日の金曜日から、ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019「ひとよ」製作委員会

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先週の日曜邦画劇場「最初の晩餐」(2019年製作)のところでも書いたんだけど、

日本映画の古来より存在する家族映画とは、違ったタイプの家族映画が、21世紀以降にかしましく出てきている。

この種の変型家族映画は、「家族ゲーム」(1983年製作)とか「逆噴射家族」(1984年)とか、「木村家の人びと」(1988年)とか、

松竹系のマットーな家族映画に背を向けた、映画作家陣たちが、意図的に作り出してきたものである。

と、ボクは分析する。

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その変型家族ものの最新傑作「万引き家族」(2018年)を始め、

それ以降もイロイロと出てきているが、本作は中でも出色の作りを施した、新次元の家族映画である。

疑似家族とかではなく、全員血族の家族である。

両親とコドモたち兄姉弟の、家族映画である。

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3人のコドモたちに虐待を繰り返す夫を、ある日、妻(田中裕子)は、コドモたちを守るために殺してしまう。

で、幼いコドモらにそのことを報告し、自首するのである。

このイントロから、複雑にして難渋な、家族のドラマが展開していく。

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大人になって3人のコドモは?

吃音の長兄役の鈴木亮平は、家業のタクシー会社を引き継ぎ、

小説家志望だった次男役の佐藤健は、東京に出てライターに、

長女役の松岡茉優は、美容師の夢を見つつも、スナックでバイトしていた。

そんなところへ、母が刑期を終えて出所し、彼らの元に帰ってきた。

3人の母への接し方がかなり違ってくる。

そのあたりの演出や演技ぶりが、見事な説得力を有していた。

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モチ、母なる田中裕子の演技は、最も難易度が高い。

素直に泣いて喜ぶ松岡茉優は、ストレートだけど、2人の兄弟の対応に悩む。

特に、母のことを記事にする佐藤健の演技は、複雑さとビミョーさが要求される。

そして、鈴木亮平の素朴さは、家族間を融和させる効果があり、茉優以上に、癒やしやキズナを示していたかと思う。

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そんな中で、ドラマ映えする対立ポイントは、やはり佐藤健と田中裕子の母と子の問題だ。

さらに、家族の関係性の中に、佐々木蔵之介が関わることで、

物語はより輻湊化していくこととなる。

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白石和彌監督初の家族映画である。

しかし、初ものから、先鋭化した家族のキズナが描かれた。

問題のある家族のキズナを、映画的に捉えるためには?

その指標を見せられたような作品だった。

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