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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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2021年1月の記事

2021年1月28日 (木)

「ヤクザと家族 The Family」

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綾野剛&舘ひろし共演の

ヤクザ映画だ
 
家族映画系をコンパイル
 
 
1月29日の金曜日から、スターサンズとKADOKAWAの配給により、全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

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ヤクザ映画を、

大河系の家族ドラマの、

ノリで描いた作品。つまり、

非情なヤクザ映画に、

家族映画の感動を、

いかに取り入れるかに腐心し、

挑戦した作品である。ここで、

ヤクザ映画のスタデイをしてみよう。

「花と龍」(1954年製作)を

ルーツとした、「昭和残侠伝」

(1965年~1972年)などの

任侠映画が、「仁義なき戦い」

(第1弾は1973年・弊ブログ分析済み)

シリーズの登場によって、

ヤクザ映画へと転化した。

それ以来、ヤクザ映画とは

長らく「仁義なき戦い」

シリーズを指していた。ちなみに、

「極道の女(おんな)たち」シリーズは

ヤクザ映画とは呼ばれていない。

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しかし、21世紀になると、

正確には、「仁義なき戦い」を

監督した深作欣二監督の死後、

北野武監督の「アウトレイジ」

3部作シリーズ(2010年・2012年

・2017年・弊ブログ分析済み)

などが登場し、そして、

藤井道人監督の本作が

登場するのである。

抗争系のヤクザ映画の、

タッチはそのままに、

ヤクザ主人公(綾野剛)と

組長(舘ひろし)ら

組員たちとの関係性を縦糸に、

主人公とホステス(尾野真千子)

との恋愛を横糸に、

物語は1999年から2019年まで、

14年間の主人公が

ムショ入りしていた期間を

外した上で描かれる。

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「仁義なき戦い」のラストシーンは、

葬式シーンだったが、本作は

1999年の葬式シーンから始まる。

そしてほどなく、

舘ひろしが襲われるところを、

綾野剛が助けるとゆう、

重要なシーンがおとずれる。

綾野剛は組員となり、

兄貴分(北村有起哉)らとの関係性で、

イロイロヤバイ目に遭うのだ。

そのあたりは、非情で容赦ない

シーンが繰り出されている。

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2005年。

綾野剛は尾野真千子と出会う。

最初は彼女に嫌がられていたが、

写真にあるドライブでの海デートなど、

印象的なシーンがある。

煙突のある街のセピアな夕景など、

ココロ和むシーンが持続するが、

やはり銃撃シーンなどの

アクション・シーンが挟まれてゆく。

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でもって、14年後の2019年。

綾野剛は出所し、

2人の間にできた娘と暮らす、

尾野真千子と再会するのだ。

ヤクザとしての生き方と、

家族と穏やかに暮らす生活の、

矛盾と亀裂が、緻密に描かれる。

「竜二」(1983年)のような、

悩ましきに観客も、

身につまされるんじゃないかな。

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ラストシーンの衝撃も胸にクル。

とゆうことで、今年の邦画の

ベストテン級の仕上がりになっている。
 

2021年1月27日 (水)

中国映画「羊飼いと風船」

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「赤い風船」へのオマージュか
 
牧場系中国映画のフレキシブル
 
 
1月29日のフライデーから、ビターズ・エンドの配給により、シネ・リーブル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は2019年製作の中国映画102分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

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21世紀も20年代に入った今、

それでも世界のどこかでは、

素朴で前近代的な生活に、

いそしむ人たちがいる。

チベットもそんな国だろうか。

ブラピが主演した、

ハリウッド映画の

「セブン・イヤーズ・イン・チベット」

(1997年製作・アメリカ映画)

などの、偉人の生き方とは違い、

チベット庶民は、牧畜業を中心に、

地味な暮らしを営んでいる。

その生活ぶりと1家族の日常を、

淡々と描いた映画が本作だ。

チベット舞台の中国映画だが、

チベットの監督

ペマ・ツェテン監督が、

映画作家的手法を

イロイロ駆使しながら、

地味な話を壮大に見せている。

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四囲をぼかした映像、

近接撮影による

種羊を巡る長回し撮影、

柱をセンターラインにした、

避妊に関する女医と患者の長回し、

コドモたちがはしゃぐ

スロー・モーション、

広大な草原・大地に加え、

厚い雲が広がる空の描写など、

自然描写の映画的取り込み具合など、

随所にシブミを感じさせる

シーンが続出する。

ラストロールでは、

チベット仏教風の、

フィメール・スロー・ナンバーが

流れ、しみじみと胸にクル。

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そして、何といっても

目を瞠るのは、母親役を演じる、

チベットの舞台女優

ソナム・ワンモの、

複雑な心理演技の妙味だろう。

尼になった妹や、

妹の彼氏との対峙など、

重要なシーンで見事な演技で魅せる。

でもって、おじんが死亡し、

転生するかもとゆうところで、

妹が妊娠するなど、

輪廻転生の世界観も、

きっちりと描かれている点が、

興味深い内容となっている。

コンドームを風船にする

コドモたちとゆうシーンも

ユニークで、最後には

本当の風船を飛ばすところなど、

名作短編「赤い風船」

(1956年・
フランス)への、

オマージュかとも取れる、

シーンもあって、

個人的には嬉しかった。
 
コロナ禍を忘れさせてくれる、

朴訥とした癒やし感に

ぜひ浸ってみてください。
 

2021年1月26日 (火)

パレスチナ映画「天国にちがいない」

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サイレント映画のオマージュある
 
映画監督役主人公の試行錯誤
 
 
1月19日より、アルバトロス・フィルムとクロックワークスの配給により、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか、全国順次のロードショー。

本作は2019年製作の、フランス・カタール・ドイツ・カナダ・トルコ・パレスチナ合作の、
本編102分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2019 RECTANGLE PRODUCTIONS-PALLAS FILM-POSSIBLES MEDIA II-ZEYNO FILM-ZDF-TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION

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パレスチナ系イスラエル人の

映画監督、

エリア・スレイマン監督の、

10年ぶりの新作。

自ら映画監督役となり、

自身の企画を売り込んでゆくが、

うまくはいかない、映画監督の

苦悩ぶりを描く映画。

メイキングを含む、

映画監督・主人公の話といえば、

ボク的には、

イの一番に思い出すのは、

フェデリコ・フェリーニ監督の

「8/1/2」(はっかにぶんのいち・

1963年・イタリア)だが、

本作は、それに近いニュアンスを

持った作品となった。

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製作中の現場での悩みではない。

企画段階で、自らが映画化を目指し、

パリやニューヨークへと赴き

売り込みをする。でもしか、

主人公・監督の設定は、

言葉なきプレゼンテーションを

する人なのだ。主人公を

セリフなしのサイレントにし、

何やら傍観者めいた作りに

するとなれば、間違いなく、

チャップリン作品ら、

サイレント映画への意識と、

さりげない主張があり、いわゆる

無声映画へのオマージュ

であると取れる。

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サイレント映画へと

オマージュした映画は数多い。

中でも、主人公をその設定にした

映画となれば、フランスの

ジャック・タチ監督が、

自ら主演し監督した、

1950年代の一連の作品が

思い出される。但し、本作の

監督主人公は、タチ監督ほど

行動的じゃなく、もっとずっと

傍観者の立場を堅持する。

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タチ監督のコミカルなタッチは、

それなりにあるものの、

もっとかなりクールイズムだ。

ニューヨーク編では、

ガエル・ガルシア・ベルナルが、

実名で登場し、

監督主人公とやり取りする。

いわゆる、ドキュ・タッチも

取り入れながら、物語は

進行していくのだ。

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映画監督の売り込みの実際を

見せながら、何やら哀愁ある

映画だとゆう印象があった。

アート映画のノリはあるけど、

あくまでサイレント映画への

オマージュ映画である点が

際立っていたように思う。

ディスコティークな

ダンサブルなナンバーから、

フィメール・ポップスまで、

サイレント映画にはなかった、

歌ものサントラの

使い方も印象的だった。
 
 

2021年1月21日 (木)

「花束みたいな恋をした」菅田将暉・有村架純主演

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菅田将暉と有村架純が

恋に落ちて
 
21世紀の日本的

ラブストーリーの在り方とは
 
 
1月29日の金曜日から、東京テアトルとリトルモアの配給により、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

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1980年代末から1990年代、

2000年代前半くらいまで、

連続テレビドラマの

要として機能していた、

ラブストーリーを主に核とした

トレンディー・ドラマ(以下TDと略記)。

それは今や過去の栄光(!?)となり、

形骸化・変異している状況にある。

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映画との関連でいえば、

確かに1990年代には、

ドラマの劇場版としてリンクし、

ラブストーリーじゃないけど、

「踊る大捜査線」などの

傑作を生み出した。その後、

テレビドラマの劇場版が、

次々に輩出されてきたのも、

「踊る大捜査線」の大ヒットを

ピークとした、TDの

隠し裏ポイントが

あるように思われる。

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では今、TDはどこにあるのか。

テレビドラマはモチ、

試行錯誤を繰り返しつつも、

いちおうのラブストーリー・

ドラマを、常に作り続けている。

しかし、1990年代にあった、

「僕は死にません」みたいな、

ストレートで、誰にでも

分かりやすくて、共鳴できる

ラブストーリーは、あんましない。

また、そういう愛の在り方が、

つまらないと思われがちだ。

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そんな中、TDの代表傑作

「東京ラブストーリー」の、

オリジナル脚本を書いた坂本裕二が、

久々に映画の脚本、しかも

オリジナルを書き上げた。そして、

昨年のベストテン級傑作「罪の声」

(弊ブログ分析済み)や、泣ける映画の

「いま、会いにゆきます」

(2004年製作)を撮った、

土井裕泰監督が、

本作のメガホンを執った。

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それぞれ同じような行為や、

感想を覚える、スマホ世代の2人

(有村架純・
菅田将暉)が、

ちょっとしたことから出会う。

この“同じような”は、

わざとらしく見えるが、

作術的にはラブストーリーの

伏線的には、巧妙な

仕込み具合だと思う。2人は

最初は恋に落ちてる

カンジはなかったんだけど、

やがて両想いだと気付き、

途端にラブラブの

展開になってゆくんだ。

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2015年からコロナ禍直前の

2020年まで、いかにも、

21世紀10年代の日本的

ラブストーリーの在り方を、

顕現しているような作りなのだが、

このカップルは同棲はするけども、

結婚はしない。でも、

2人の心の動きの描写は、

緻密で繊細だった。

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そんな役柄を演じたのは、

有村架純と菅田将暉の2人。

まとめて自然体の演技と

評すればいいのだろうけど、

しかし、2人のそれぞれの演技には、

心に刻まれるサムシングがあった。

恋人同士の微妙な距離感や

行き違いを自然体ながら

絶妙に演じてるんだ。

そのあたりを、今どきの

恋愛映画を見る中で、

ジワッと感じてもらいたい。

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何はともあれ、

TDの21世紀的映画移植が、

見事にハマった作品だろう。

TDが次の世代に伝えられるとしたら、

本作を通してではないか。

そこまで考えさせられるくらい、

TD遺伝子がギュッとクル映画だった。

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コロナ禍で制約のある今だけど、

「鬼滅の刃」が大ヒットしたならば、

本作もそれくらいヒットしても、

おかしくない仕上がりだ。

コドモには分からないかもしれないけど、

家族や恋人と一緒に見てほしい1作。

不要不急じゃない、

みんなで楽しむための劇場鑑賞です。

そして、胸に染みる何かを

ぜひ感得してください。

今年イチバンヤーのおすすめです。
 

2021年1月20日 (水)

実録映画「陶王子 2万年の旅」

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「のん」ちゃんの

声に乗って展開
 
陶磁器の系譜を壮大に辿る
 
 
1月16日から第七藝術劇場ほか、1月29日からMOVIX京都ほか、プロダクション・エイシアの配給により、全国順次のロードショー。

本作は、2021年製作の日本・中国合作の本編110分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒプロダクション・エイシア/NED

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アニメ「この世界の片隅に」

(2016年製作・弊ブログ分析済み)の、

ヒロインの抑制ある声で

有名な「のん」ちゃんの

ナレーションに乗って展開する、

陶器ドキュメンタリー。

縄文時代などの前世紀から

始まる、陶磁器の系譜なんて、

まあ、かつてない

ドキュではあるんだけど、

さまざまな事物に関する

俯瞰映画の、系列に

入る映画である。

「のん」ちゃんの

全くもって自然体な声が、

まずは目を引く。

陶磁器なんて、

みんな、興味あるかい? 

ないと答える人が

多いかもしれない。

でも、彼女の声に乗って見ていくと、

ドキュながら、あれあれ、

なんかダイナミックで

ドラマティックな物語へと

展開していくのでした。

摩訶不思議!

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陶器を王子に見立て、

擬人化された「陶王子」

とゆう架空の視点を時おり挿入し、

ゆっくり陶磁器の

世界の中へ入っていく。

日本各地の陶磁器のルーツを

たどるシークエンスから、

徐々に世界各地へと

紡いでゆくスタイルが、

没入度合いを深めているみたい。

粘土の話や陶芸家の探査などの、

ゆったりした話から、

ゆっくりゆっくりと

物語の中へ入り込める。

さらに、スカーレットや緋色など、

自然界のイロイロな色を

焼き込んでゆくところなど、

映画のイロ使いへのスタイルとも

共鳴するようなところが

興味深かった。

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映画全体に通底するのは、

ポジティブ。

陶磁器・陶王子は、

これからも前向きに生きてゆく。

そんなノリが鑑賞後感を

さわやかにしている。

コロナ禍が蔓延する今こそ、

明日への希望が重要だ。

そんなキモチになれる

絶好の映画です。
 

2021年1月14日 (木)

「越年 Lovers」⇒台湾・日本合作

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日本・台湾・マレーシアの

3場オムニバス
 
控えめ渋みな

ラブストーリーが展開
 
 
1月15日の金曜日から、ギグリーボックスの配給により、新宿バルト9ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作の台湾・日本合作映画116分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2019映画「越年」パートナーズ

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「運命の饗宴」(1946年製作・

アメリカ映画・モノクロ)などを

ルーツとした、オムニバス映画は、

これまでに多数の

作品が作られてきた。

その作り方はさまざまだ。

何かを狂言回しにして、

多彩なドラマを構築したりする、

ドラマ映画以上に

ドラマティックなものもあるが、

本作はラブストーリーに特化した、

3話オムニバスである。

恋愛オムニバスも、かなりの

タイトル数があるが、単に

恋愛ものを並列させるのでは

面白くない。例えば

いくつかの話が、

最終的に一つに収斂したり、

一つのキーワードの元に

着地したりと、工夫が凝らされて、

多様な恋愛が一つのテーマに

様式化されている。

本作もそんな1作になった。

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「映画の中にいるみたい」な、

派手で熱烈、

ドラマティックな恋愛ではない。

自分のキモチを、相手に

ストレートに伝えられない人たちの、

恋愛とはどういったものかと、

台湾・日本・マレーシアの

3場3パターンで、

展開してみせるのだ。それも、

できるだけ変型を意図して

描こうとする。第一話の台湾編は、

好きな女性社員を会社を辞める男が、

殴るシーンから始まる。

好きな女の子を

いじめたいという想いは、

男の方なら経験した方もいる

かもしれない。それに対して

女が取る行動はどうだったか。

ユニークでホッとハッピーになれる

ような結末が待っている。

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第二話は、山形県ロケによる日本編。

久々に故郷に帰って来た男

(峯田和伸)が、幼なじみの女

(橋本マナミ)と、再会するというもの。

幼なじみが何年振りかに会い、

恋に陥るというのは、

使い古された手法

のように見えるけど、でも、

日本的不器用感から、

ゆっくりココロを通わせる流れが、

ありきたりとはいえ、

見ていてココロ和む作りだった。

峯田和伸、橋本マナミ共に、

そういう演技性に見合った演技を、

誰にでも分かりやすくこなしていた。

最後のマレーシア編も、

家を売ろうとする女と

リフォームする男の、

地味恋愛だけど、

渋く胸にクル作りだった。
 

2021年1月13日 (水)

「43年後のアイ・ラヴ・ユー」

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記憶喪失アルツハイマー系の

ラブストーリーだ
 
シニア映画ラブの代表的快作
 
 
1月15日のフライデーから、松竹の配給により、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマほか、全国ロードショー。

本作は、2019年製作の、スペイン・アメリカ・フランス合作の本編89分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE. FCOMME FILM. All rights reserved.

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アルツハイマー系の映画は、

これまでに多数のタイトル数がある。

また、記憶喪失イコール

アルツハイマーとするならば、

こちらは「心の旅路」

(1942年製作・アメリカ・モノクロ)、

「かくも長き不在」

(1960年・フランス・モノクロ)

などの名作がある。また、

シニアがアルツ系の映画ならば、

パターン化するけどイロイロある。

しかし、シニア・アルツなのに、

ラブストーリーに特化する映画は、

さほどない。シニア映画で

恋愛ものはあるけれど、そこに

アルツを加えた映画は

稀少だと言える。

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記者と女優の関係で、

若い頃に恋愛関係に落ちた男女。

ロサンゼルス郊外で

1人住む年老いた男は、

女が施設に入りアルツで

記憶をなくしたことを知り、

アルツを装って施設に入り、

彼女の記憶を取り戻そうとする。

いわゆる、記憶喪失系にある

ラブの在り方を、アルツに

持ち込んだタイプの映画である。

男には近くに住む友人に加え、

別居になるが娘夫妻に

孫娘もいるという設定。

自分1人でやるのではなく、

友人、孫娘らの協力を得て、

彼女への愛へと突き進むのだ。

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主演はブルース・ダーン。

ボク的想い出としては、

何回も見た「帰郷」

(1978年・アメリカ)での、

ベトナム戦争のトラウマに悩み、

海へ泳ぎ出でて自殺する、

あのストイックな演技性が、

脳裏にこびりついているけど、

本作ではメッチャ丸くなって、

好々爺にして、でも、

一途に彼女を想う姿に、

グッとくる演技で魅せた。

年齢を重ねたシブミは、

クリント・イーストウッドとも

カブる演技ぶりだった。

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お相手役は、

フランスの舞台女優のベテラン、

カロリーヌ・シロル。

アルツなもうろうとした

演技性は素晴らしく、それだけに、

結末部で魅せる演技には

爽快感さえあった。

女優時代に演じた

シェークスピアの「冬物語」を、

主人公の孫娘たちが演じて、

過去を思い出す起因に

なるところなども、

なるほどなと思えた。

ピアノ・ソロを中心にした

サントラ使いも、

ドラマに合っていた。
 

2021年1月12日 (火)

「パリの調香師 しあわせの香りを探して」

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香水作りのノウハウを魅せる
 
調香師ヒロインの

ヒューマン・ドラマ
 
 
1月15日のフライデーから、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田ほかで、全国順次のロードショー。

本作は2019年製作の、フランス映画101分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⒸLES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINEMA

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フランスの調香師の

ヒューマン・ドラマ映画。

香水で有名になった

人たちの
ドラマは、

「ココ・アヴァン・シャネル」

(2009年製作・フランス)など、

実話を含めてそれなりにあるけど、

人間性に肉迫する描写はあっても、

香水作りの詳細部については、

ほとんど明らかにされなかった。

本作は、香水を作る調香師の、

おそらく映画史上初めての

人間ドラマである。

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嗅覚に異状をきたして

業界から身を引き、

エージェントの取ってくる

臭いにまつわる仕事、

例えば嫌な臭いを消すためには

どうするかとか、そんな仕事を

やってる
ヒロイン

(エマニュエル・ドゥヴォス)。

でも、彼女の描写からは、

ドラマは始まらない。

彼女を仕事場へと運ぶ、

専用タクシードライバー

(グレゴリー・モンテル)の

話から始まるのだ。

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とゆうか、ヒロインと

このタクドラとの関係性によって、

ドラマがビビッドに

動いていくのだ。その関係性は

アカデミー作品賞受賞の

「ドライビング・ミス・デイジー」

(1989年・アメリカ)の、

女主人と黒人お抱えドライバーとの

関係性に似ているが、向こうが

黒人差別の社会性の中で捉えたが、

本作にはそういうところはない。

そして、男と女のラブ抜きの

ドラマに徹した作りになっている。

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男と女の友情

といったドラマでもない。

もっと、シンプルで

お互いの行方を見守るような

対等の関係で、それぞれの

個人的なところに、深く

介入していくようなことはない。

しかし、そんなシンプルさが徐々に、

胸を突くようなドラマになっていく。

共にフランス映画だけど、

男と男のベタな「最強のふたり」

(2012年・弊ブログ分析済み)や、

女と女のベタな

「アデル、ブルーは熱い色」

(2014年・ブログ分析済み)とは違う、

ソーシャル・ディスタンスな、

適度な距離を保った関係性。

それでいて、しみじみと

胸にクルような関係性だ。

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自然体と言っていいのか、

ヒロインと主人公は、

激することもなく、

スムーズな演技性で、

ドラマを演じ抜いていた。

エキセントリックな演技が、

ドラマの鍵を握ったりするけど、

本作は大人の冷静さが、

最後まで統一された作品だった。

香水作りの実際にも踏み込み、

2人の相棒ぶりをさりげなく示す。

地味が滋味になる、

あと味のいい作品だった。
 

2021年1月 6日 (水)

フランス映画「ハッピー・バースデー 家族のいる時間」

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母の誕生日に集まる家族映画
 
日米にはないタイプの家族ドラマだ
 
 
1月8日のフライデーから、YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作の、フランス映画101分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸLes Films du Worso

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母(カトリーヌ・ドヌーヴ)

のバースデーに、実家へ

娘(エマニュエル・ベルコ)・

息子たち(兼監督の

セドリック・カーン、

ヴァンサン・マケーニュ)が、

恋人や家族を連れて集まって、

祝うとゆうタイプの家族映画。

まあ、日本なら、冠婚葬祭や

遺産相続争いで集まったり、

アメリカならクリスマスや

ニューイヤーなんかに、

などがあるけど、 これは

フランス式の、独特な

家族の集いなんだろうか。

そういえば、

女優ジュリー・テルビーが

監督したフランス映画に、

誕生日集いの家族ドラマがあった。

但し、その作品と比べると、

本作は家族間の緊張度や、

逼迫度合いが全く違っている。

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一番マットーなのは、

子供2人と妻を連れて帰って来る、

監督もやってる長男役の

セドリック・カーンだ。もちろん、

監督が煽情的な壊れ役を

やってもいいんだけど、

作品のシンメトリーを取るためには、

冷静沈着な役じゃなけりゃと、

思ったのかも。彼女と来る、

次男役のヴァンサン・マケーニュは、

ドラマ内で自身の家族映画を、

ドキュメント・タッチで

撮ろうとする監督役だ。

いや、彼はチョイおかしなカンジ。

ローアングルの

小津安二郎監督手法でなんて、

フランスの映画界で

小津監督が神聖化されてるのは

いいんだけど、同時に

小津的家族ドラマへの

アンチ・テーゼも、

隠されているようで、

興味深かった。

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そして、家族の

トラブルメーカーとなるのが、

3年前に姿を消して戻って来た、

長女役エマニュエル・ベルコである。

喜怒哀楽の怒哀をメインに、

ともすると狂気を垣間見せる。

最も難しい役柄を演じ抜いている。

もちろん目が引かれるのは、

母役のカトリーヌ・ドヌーヴだ。

どこまでも、穏和でゆったり。

「昼顔」(1966年・フランス)や

「反撥」(1965年・イギリス)の

若い頃の妖しい女とは
違う、

大女優の渋~いケレン

を感じてください。

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「ラ・ムール」など、

ポップス・サントラ使いも、

ノリがいい。

緊迫の家族ドラマが

どう収斂し着地していくのか、

お楽しみに。
 

インド映画「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」

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インド映画に

かつてなかったタイプだ
 
火星へロケットを打ち上げよう!
 
 
1月8日のフライデーから、アット エンタテインメントの配給により、新宿ピカデリーほか全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作のインド映画130分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.

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インド映画といえば、

ボクらのパブリック・イメージは

ミュージカルだった。

あの21世紀も10年代に

大ブレイクした「バーフバリ」

(弊ブログ分析済み)でさえ、

ミュージカル・シークエンスは

挿入されていた。だから、

ヒューマン映画を

ポイントにした映画は、

さほど輩出されていないように

見えていた。けれども、

ハリウッド映画になぞらえて、

ボリウッドと言われるくらいの、

映画大国とゆうインドだけに、

金太郎飴なミュージカル

一辺倒じゃないんだ。

サタジット・ライ監督の

家族の大河ドラマを始め、

人情もの、ラブストーリーなど、

ミュージカル抜きの

多彩な映画がある。

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そして、本作は

その種の傑作だけど、

その種の目立たない

インド映画の中でも、

ひときわの異彩を放ち、

かつてないインド映画の、

普遍的かつ分かりやすい

群像劇を作り出した。しかも、

実話がベースになった、

宇宙への冒険ものである。

アメリカ映画なら、

NASAものとか、

日本なら「はやぶさ」関連映画や、

テレビドラマなら「下町ロケット」

なんてのもあるけど、本作は

火星探査機をインドが

打ち上げるとゆう話なので、

「はやぶさ」ものと

リンクするところ大だろうか。

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2010年。

家事も当然こなす、

だんな子持ちの家庭の

主婦・科学者ヒロインが、

インドの宇宙計画に中心で、

参画しているところを、

家庭内の様子から、

シリアスな職場へと転じて、

そのつながる連続シーンの中で、

まずは驚きと

意外性をもって描き出す。

リーダーやスタッフとの連携で、

事は準備されるのだけど、

最初のロケット打ち上げは

失敗に終わってしまう。

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ところが、主婦ヒロインの発案で、

若い理系工学系女子から、

お年寄りの専門家までを集めて、

再アタックへとアプローチしていく。

本作の見どころは、

そんな専門家集団が見せる、

成功へ導くためのイロイロと、

いわゆる仕事仲間としての、

チームワークとキズナぶりだ。

群像劇としての面白さを

魅せるところが、

カッチリしていた映画だった。

その種の映画はイロイロあるけど、

メンバーのユニークぶりは、

実話だけど、映画では

あまりないものだった。

加えて感動もある。

「バーフバリ」に近い

映画的爽快感が味わえる会心作だ。
 

2021年1月 1日 (金)

2021年のベストテン級映画

●花束みたいな恋をした


(菅田将暉・有村架純共演


/土井裕泰監督


/1月29日公開)

http://www.hana-koi.jp

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●痛くない死に方

(柄本佑主演

/高橋伴明監督

/2月18日全国順次公開)

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●ヤクザと家族

The Family

(綾野剛・舘ひろし共演

/藤井道人監督

/1月29日公開)

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●2021年

明けましておめでとうございます。

12年目を迎えた弊ブログを

今年もよろしくお願いいたします。

さて、表題の今年の

早くも年間ベストテン級作品

ですが、2020年に公開されず、

2021年に延期された作品を含め、

前もって見させてもらえるのは、

邦画が多く、邦画を取り上げる

選択となりました。全ては

後日分析いたしますが、

上記3作品ついて

少々コメントを述べますと…。

90年代のテレビの

トレンディー・ドラマの代表作

「東京ラブストーリー」の

原作・脚本を書いた坂本裕二が、

21世紀も20年代に、

そんなトレンディーの

現在形を示した

「花束みたいな恋をした」。

コロナ禍直前までを描いた

ラブストーリーで、

ラブラブな恋の行方を、

説得力ある展開で描き抜いた快作。

トレンディー・ドラマ世代

だけでなく、若者世代にも

遡及する作品で、

大ヒットが期待される。

「痛くない死に方」は、

ドキュではあったが、

在宅医療をドラマ的に

初めて描いた作品。

医者ヒューマニズム映画の

新たなリリシズムが展開する。

「ヤクザと家族」は

21世紀のヤクザ映画の

在り方を示した作品。

「仁義なき戦い」や

「アウトレイジ」などとは違い、

ヤクザの家族も

クローズアップした。

昨年公開予定だった

延期映画からは、

既に分析紹介した

「街の上で」(4月9日公開)や、

大作「
モルエラニの霧の中」

(2月6日公開)などが、

ベストテン候補だろうか。

洋画では「天国にちがいない」

(2019年・パレスチナ・

1月29日より全国順次公開)、

「わたしの叔父さん」

(2019年・デンマーク・

1月29日より順次)

なんかが良かった。

選=映画分析研究所

所長 宮城正樹
 

 

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