無料ブログはココログ

新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

  • ">

« 2020年7月 | トップページ | 2020年9月 »

2020年8月の記事

2020年8月28日 (金)

「青くて痛くて脆い」

2_20200826223901
主人公視点で描かれる


青春ミステリー
 
フェアーかアンフェアーか
 
それが問題だ!
 
 
8月28日の金曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2020「青くて痛くて脆い」製作委員会

1_20200826224801

泣ける映画だった「キミスイ」

こと「君の膵臓をたべたい」。

その原作者「住野よる」

の新作が映画化された。

柳の下のどじょうを狙った

作品かと思いきや、

何と予測に反し、

映像化不能のミステリーであった。

そんなミステリーも、過去には

「死の接吻」や「ドグラマグラ」

「イニシエーションラブ」など、

不能を逆手に取って映像化されたが、

仕上がり具合は、

見る人によって違うけど、

さほど評価は高くはなかった。

さて、本作はどうだろうか。

見てみよう。

3_20200826224901

主人公(吉沢亮)の

ナレーションによる、

主人公視点で描かれる。

世界は変えられると言う

ヒロイン(杉咲花)の

熱心なアプローチで、

吉沢クンは2人で大学で

「世界を変える」サークル

「モアイ」を作った。

でもって、数年後、

そのサークルは

大人気サークルになっていた。

友人(岡山天音)に吉沢亮は、

「モアイ」を作った女は

既に死んだと言い、一緒に

「モアイ」をぶっ潰そうと

持ち掛ける。かくして、

吉沢と岡山の「モアイ」を潰す

潜入作戦が始まる。そして、

「モアイ」の過去も

プレイバックされていく。

4_20200826225001

吉沢亮視点で映画は進行するので、

冒頭30分で示される、

明朗快活前向きな杉咲花が、

死んだとなるならば、

その死は

どんなものだったのかに、

「キミスイ」のように、

目が行ってしまうだろう。

しかし、

描かれる過去のどこにも、

死の影はない。

見ていくにつれ

謎は深まっていくのだ。そして、

明かされるアッと驚く結末編。

伏線は確かに、

過去のシーンには

あったかもしれない。

もしこれが心理ミステリーの

ラインにあるとしたなら、

ミステリーとしては、

かなりのアンフェアーだと

ボクは思う。

5_20200826225001

ただ思うに、

本作はミステリーとして、

描こうとしたのではないのではないか。

心地よいラブストーリー的流れが、

途中で一変し、

主人公を探偵とした

ミステリーへと転じ、

でもって、後半で、

とんでもないイヤな

結末へと流れていく。とはいえ、

片思いラブストーリーを、

ミステリー・タッチで描いた本作は、

ラブストーリーの新たな側面を

見せた作品かもしれないね。

いずれにしても、

賛否両論飛び交う

問題作になったのは間違いない。
 

「zk/頭脳警察50 未来への鼓動」

1_20200826002501
頭脳警察って何だ?
 
シブミある音楽ドキュメンタリー
 
 
8月29日の土曜日から、第七藝術劇場ほかで、全国順次のロードショー。

2_20200826010201

頭脳警察というバンドについて、

本作は2度目となる紹介である。

以前にもドキュが作られており、

今回は結成50周年に

合わせた製作・公開となる。

日本の音楽ドキュメンタリーについては、

今までにイロイロ書いてきた。

そのマイ・ベストやカルトについても書いた。

ドキュとは申せ、

頭脳警察が2度も映画化されるとは、

ボクは少々だが驚いた。

そもそも頭脳警察って何だ?

簡単だ。バンドだ。

1969年12月に結成し、

1975年に解散。

1990年に再結成し、

さらに紆余曲折を経て、

コロナ禍の今に至る。

4_20200826010201

本作はリーダーにしてフロントマン・

ギター&リードボーカルのPANTAの、

音楽人間ドキュメンタリーである。

さらに、盟友のTOSHIとの

つながりも描かれる。

加藤登紀子、大槻ケンジ、

宮藤官九郎、高嶋政宏などの

談話を取り込みつつ、

頭脳警察の音楽性に加え、

ライブ模様が撮られるのだけど、

そもそも頭脳警察って何だ?

な疑問に、頭脳警察を

知らない人には、

答えなければならないだろう。

本作を見る前に、

頭脳警察のアルバムを、

音楽を聴く必要はあるのか。

当然だろうけど、

僕はそんなことは

しなくてもいいと言いたい。

映画を見て

何か感じるところがあれば、

あとで聴けばいい。

3_20200826010301

売れ線のキャッチーな、

ニューミュージックに背を向けて、

おのが道を邁進した。

そんな音楽性が、

2019年の京都や福岡の

ライブハウスのライヴから、

PANTAのギター弾き語りによる

2018年ロシアでのライヴまで、

21世紀の現在形が示されていく。

今は、メンバーも若作りで

刷新されているが、PANTAの

音楽への情熱ぶりに変わりはない。

コロナ禍にレコーディングされた、

本作の主題歌「絶景かな」の

インパクトはどうだ!

ストレートで正統な

ミュージシャンのドキュだけど、

シブミや奥深さをカンジさせて、

ココロにきた

音楽人間ドキュだった。
 

2020年8月27日 (木)

「事故物件 恐い間取り」

8_20200825210901
危険なうちにいてください


で起こるホラー映画

密閉・密接二密で


幽霊と対峙だぜ

8月28日の金曜日から全国ロードショー。

映画公式ホームページにはアクセスできませんので、要注意!

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

4_20200825212001

本作は館ホラーの流れを

汲んだ映画である。

館・家・部屋など、

誰かが「うちにいてください」

と言ってたけど、

そんな密閉空間でのホラー映画は、

1970年代頃から現れた。

傑作とは言えないけど、

文字通りの「家」

(1976年製作・アメリカ映画)

あたりが、この種のホラーの、

ルーツになるんじゃないかな。

その後に登場した作品では、

ボク的に、ええやんと思ったのは、

スティーブン・キング原作

スタンリー・キューブリック監督の

「シャイニング」

(1980年・アメリカ)であったり、

日本映画なら「呪怨」

(2002年)であったりした。

そういえば、部屋ホラーとしては、

部屋にいてる霊たちを癒やす

「ルームロンダリング」

(2017年・弊ブログ分析済み)

なんて映画もあったよな~。

でもって、本作は、

ジャニーズの亀梨和也を主演に、

「リング」(1978年)の

中田秀夫監督が撮り上げた

館=密閉空間ホラーだが、

監督的にも、

団地の「クロユリ団地」

(2013年・ブログ分析済み)や、

マンションの「仄暗い水の底から」

(2001年)などの

ホラーを撮っていて、

どちらかといえば、

お手のものな素材と

言えるのではないかな。

5_20200825212101

売れずに、相方(瀬戸康史・

写真上から3枚目)との

漫才コンビを、解消した亀梨だが、

殺人・自殺・火災等の

死亡事故があった部屋に、

1人であえて住んで、

亡霊・死霊たちとの

コンタクトや対峙を狙い、

それがテレビで

オンエアされることで、

話題になっていく。

意図的に実験的に、

ホラーな世界に入っていくとゆう、

お化け屋敷的試みは、

正統派のホラーとしては

どうかとは思うけど、

興味深くは見られた。

6_20200825212101

実話らしいが、

幽霊と対峙するなんて

まずないだろう。但し、

怖がる女は

この種のホラーには必須で、

亀梨の漫才ファンとして、

奈緒ちゃんが出演して、

大げさじゃない自然体の

怖がり具合を披露する。

クライマックスの

亀梨・奈緒の2人と、

生霊との対決シークエンスは、

見ごたえあるアクション

・シーンになっていたかな。

ボク的には「マニトウ」

(1978年・アメリカ)の、

B級とゆうか、

カルト・
ホラー的に

痺れてまう
シーンに、

ウーンときてしまったがな。

亀梨ファンよりも、

ホラー映画ファンにこそ

見てもらって、賛否両論を

かもしてもらいたい作品だったね。

2020年8月26日 (水)

「シチリアーノ 裏切りの美学」

1_20200825001601
かつてないマフィアの裁判劇

実話ベースの


ギャング人間ドラマ

8月28日のフライデーから、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほかで、全国ロードショー。

本作は、2019年製作の、イタリア映画145分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸIBC MOVIE/KAVAC FILM/GULLANE ENTRETENIMIENTO/MATCH FACTORY PRODUCTIONS/ADVITAM

2_20200825003401

本作は、イタリアン・マフィアの

実話を捉えたギャング映画。

ギャング映画のルーツは、

アル・カポネをモデルにした、

ハリウッド映画「暗黒街の顔役」

(1932年製作・モノクロ)だが、

最も売れたのは、

3部作のシリーズ化された

「ゴッドファーザー」第1弾

(1972年・アメリカ映画)である。

2作共アメリカン・ギャングを

描いているが、カポネもそうだが、

実はイタリアから

アメリカにやって来た奴が、

一大マフィアを築くとゆう

構図になっている。

3_20200825003601

つまり、ギャングのルーツは、

イタリアにありとも言えるのだ。

そんなイタリアン・マフィアを

登場させた映画は、

「コーザ・ノストラ」

(1973年・イタリア)など、

これまでにもそれなりに存在した。

しかし、本作のように本格的かつ、

強烈なインパクトを与える映画は、

かつてないのではないか。

小説を原作とした

「ゴッドファーザー」並みの

レベル・ラインにあり、

しかも、こちらは実話がベースで

生々しい迫力に満ちている。

さらに、悪の組織の

裏切り者を描くという図式だ。

5_20200825003701

フツーのギャング映画なら、

内部の裏切り者なんか

すぐに粛清・抹殺だ。だが、

本作の主人公は違っていた。

まずは、

「ゴッドファーザー」と同じく、

マフィア・ファミリーの様子や

人間模様が描かれ、

続いてギャング同士の

仁義なき抗争が、これでもか

という感じで撮られていく。

やがて、麻薬捜査で

ブラジルで捕まった主人公は、

刑事との取引で、

ファミリーを裏切る決断をする。

家族をアメリカへ隠れさせるが、

息子などの何人かが殺されてしまう。

4_20200825003701

そして、大きな見どころは、

メチャメチャな裁判と、

その後の主人公の

組織との戦いぶりだ。

何はともあれ、最後の最後まで、

目が離せない

仕上がりとなっている。

カポネの裁判劇も描いた

「アンタッチャブル」

(1987年・アメリカ)にも似た

スリリングがある。ということで、

イタリアの巨匠監督

マルコ・ベロッキオの

最高傑作となった大作だ。
 

2020年8月25日 (火)

「オフィシャル・シークレット」

2_20200519023701
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の
 
キーラ・ナイトレイ主演
 
 
8月28日のフライデーより、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマほか、全国順次の公開。

本作は、2018年製作のイギリス映画112分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2018 OFFICIAL SECRETS HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

1_20200520224701

国家機密漏洩、内部告発など、

機密リークもの映画の最新版。

この種の映画であなたが、

思い出す映画って何?

ボク的には、

国家機密じゃなく

社内告発ものだけど、

「インサイダー」

(1999年製作・アメリカ映画)

が良かった。

マスコミ側役のアル・パチーノと、

告発者役ラッセル・クロウの、

シブミあるタッグが心を打った。

この種の映画で

ポイントとなるのは、

漏洩までのプロセスにおける

サスペンスやアクション、

漏洩後に裁判沙汰になり、

そのリーガル・サスペンスな

丁々発止ぶりだろうか。

そして、実話がベースに

なっていることが多い。

本作も基本ラインは

そうしたところを骨格としている。

アメリカがイラク戦争を

するための機密文書を見た、

イギリスの諜報部門の女翻訳者

(キーラ・ナイトレイ)が、

ある者を介して

新聞社へリークし、

裏付けを取った記者

(マット・スミス)の記事が

一面を飾り、その真偽に加え、

誰がリークしたのかが問題になる。

やがて、告発者が特定され、

裁判沙汰へと発展。

告発者キーラ・ナイトレイ、

弁護士(レイフ・ファインズ)のタッグで、

告発の行方の是非を問う。

イラク戦は、イラクに核が

あったかなかったかを

新聞記者の視点で、

スリリングにとらえた

映画があったが、

本作もまた

イラク戦前の状況とはいえ、

同じようなスリリングがある。

妨害応戦のアクション部は

ほとんどないけど、

「インサイダー」と同じく、

室内会話劇をメインにしつつも、

サスペンスを構築していく作りは、

見ごたえのあるものだった。

アカデミー作品賞を受賞した

「イングリッシュ・ペイシェント」

(1996年・アメリカ)の演技に、

すっかりハマった

レイフ・ファインズの、

熟成の演技ぶりも良かったけど、

何といっても

「パイレーツ・オブ・カリビアン」の、

キーラ・ナイトレイの、

アクションはないけど、

正攻法の正義の誠実な演技だ。

「ツォツィ」(2005年・南アメリカ)で

アカデミー賞外国語映画賞を

ゲットした

ギャヴィン・フッド監督による、

社会派映画の迫真性やリアルに、

キーラは見事にこたえていた。
 

2020年8月20日 (木)

実写版「弱虫ペダル」

4_20200814231701
コミック原作

学園スポ根映画の最新版

アイドル映画としての

ノリもOKだ

8月14日から、松竹の配給で全国公開中。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2020映画「弱虫ペダル」製作委員会

Ⓒ渡辺航(秋田書店)2008

5_20200814233101

本作と同日公開の

「思い、思われ、ふり、ふられ」

(弊ブログ8月11日付けで分析)

の項で、コミック原作の

学園ラブストーリーについて、

私見を披露したが、では、

見出しの映画

(邦画/コミック原作/実写

/学園もの/スポ根もの)

についてはどうだろうか。

これはかなり限定されるので、

ラブストーリーより

タイトル数は少ない。

それでも、

マイ・ベスト・ファイブを

順不同で披露してみよう。

()内に競技を記載。

①本作(自転車競技)

②ピンポン(2002年製作・卓球)

③シュート!(1994年・サッカー)

④タッチ(2005年・野球)

⑤バタアシ金魚(1990年・水泳)

●④はほのかにあるけど、

⑤を除いて、基本的に

ラブストーリーな恋絡みがなく、

スポ根に徹している映画だ。

そして、本作と④は、

アニメの劇場版が

まず公開されている。

ゆえに、原作・アニメと

比較されてしまう

運命を担っている。だが、

本作はアニメ・イメージを

超えるものを披露してみせる。

本作は自転車の

ロードレースを見せるが、

「シャカリキ!」(2008年)や

アニメ映画「茄子 アンダルシアの夏」

(2003年)とは違って、

主人公(「King & Prince」の

永瀬廉)の

「みんなのために走る」とゆう、

チームプレーぶりが、

好感を呼ぶ作りになっている。

チームワークなキズナが

2作よりも強い仕上がりなのだ。

各メンバーの家族たちを、

サポーター的に描かない

とゆうスタイルも、

チームワークぶりに集中する点

ではよかったと思う。

アイドル映画としてのノリもある。

主人公はもちろん、

主人公のライバルであり

相棒となる伊藤健太郎

(写真2枚目)や、

マネージャー役の

橋本環奈(写真1枚目)ら、

旬な映画アイドルたちの

共演が胸をときめかせる。

スポ根ものの定番ではあるけど、

弱者が強くなっていく流れ、

さらに、自分でも気づかない

才能ある者が、どのようにして

見いだされてゆくのかに、

魅せられる快い作品だった。

「フェイクプラスティックプラネット」

1_20200818002901
海外の国際映画祭で


主演女優賞ゲット


ヒロイン・ムービーのユニーク作


 
8月15日より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォXで、全国順次の公開。

本作は、2018年製作の日本映画73分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸKenichi Sono

2_20200818232201

日本のインディーズ映画界は

今、どうなっているのか。

「カメラを止めるな!」

(2018年製作)の大ヒットで、

突然炎のごとく、

注目を集めた自主製作映画だが、

それまでもお蔵入りは多いけど、

毎年何百本も作られていた。

コロナ禍の中でも、

公開を望む待機作はいっぱいある。

そして、本作は非常事態宣言前に、

東京で公開された作品である。

それが、解除後、

今夏大阪で遂に公開された。

5_20200818232301

めでたく公開に到るのには、

いろんな理由や大人の事情がある。

しかし、本作の理由は明らかだ。

主演女優の山谷花純が、

スペインのマドリード国際映画祭で、

最優秀外国語映画主演女優賞

を受賞したのだ。

いろんな国際映画祭が

世界各地で開催され、

権威の大小が問題にされるが、

それでもインディーズ映画が

賞を獲るのは、

その映画が普遍的な、

映画は国境を超えるような、

素晴らしきポイントがあるからだ。

6_20200818232401

山谷花純が演じるヒロインは、

両親は既になく

ネット・カフェに住み、

風俗で働いて

糊口をしのいでる女だ。

そんなヒロインに瓜二つの女優が、

25年前に失踪していた。

2人はクローン人間なのか、

それとも、ひょっとして親子…。

その謎を追って、ヒロインは、

自分をインタビューしてきた

雑誌記者と共に、

イロイロ探ってゆくが…。

3_20200818232401

山谷花純の演技は、

抑えの演技を中心に、

ココロの微妙な機微を見せている。

ある意味で難しい役どころだし、

見る人によっては、

そんなにスゴイのかなあ

とゆう控えめ系だが、

ボクはうまいと思った。

最初と最後にある、

占いおばさんとの絡みも面白い。

4_20200818232501

モノクロから、カラーへとゆう

クライマックスの流れや、

スローモーションや

ナレーションの使い方など、

映画作家としての

こだわりも見せる。

偶然をポイントにした

ミステリーのように見えるが、

最後までハラハラドキドキで

見られた映画だった。

2020年8月19日 (水)

「2分の1の魔法」

24
「アナ雪」と同じ

ロードムービー冒険スタイルで
 
父子のキズナを描く
 
 
8月21日のフライデーから、ウォルト・ディズニー・ジャパンの配給で、字幕版・日本語吹き替え版の2バージョンにて、全国ロードショー。

本作は2020年製作のアメリカ映画103分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2020 Disney.co.jp/movie/onehalf-magic

21

父子のキズナ、

兄弟のキズナを描く、

ディズニー&ピクサー・

アニメの最新作。

ピクサ
ーとしては、

人間の家族のキズナを描くのは、

これまでに4作ほどあるが、

父子・兄弟のキズナは、

初めてじゃないかな。しかも、

その描き方が

フツーの父子の描き方じゃない。

父は何と既に死んでるのだ。

しかし、魔法が封印された世の中で、

魔法の才能を持つ弟が、

魔法の杖で父を、

24時間限定でこの世に蘇らせた。

2_20200818002301

でも、ここからが、

ピクサーらしい

斬新な設定が展開する。

封印されていただけに

魔法は完全じゃない。

だから、弟の魔法は、

父を下半身しか

蘇らせられなかった。そこで、

完全なる父と再会するために、

24時間とゆうタイムリミットの中、

兄弟は2分の1の父を連れて、

父を完全再生させる、

冒険の旅に出るのであった。

23

いわゆるロードムービーの、

冒険ものとゆうスタイルで、

物語は転がってゆくのだ。

「アナと雪の女王」(2013年製作・

アメリカ映画・弊ブログ分析済み)と

同じタッチだが、

こちらの方が波乱万丈度は高く、

「ロード・オブ・ザ・リング」

(2001年~2003年・アメリカ)のような、

途中に危険が潜み、

前へ進むための綱渡り展開があり、

そして、クライマックスでは、

怪獣と兄弟の対決シーン

まであるのだ。

25

フツーの冒険ものの

定番を外した作りで、

親子のキズナを描くなんて、

さすがピクサーらしい

ハットトリックに

満ちた作品だった。

日本語吹き替え版では、

石田ひかりの

ナビゲーション・ナレーションで、

志尊淳が弟の声を、

城田優が兄の声を担当。

気弱な弟、力強い兄の声を、

それぞれ見事にアフレコしてみせた。

26

最後の最後に流れくる、

主題歌もメッチャお楽しみだ。

字幕版では洋画の

フィメール・バラードが美しく流れるが、

日本語吹き替え版では、

スキマスイッチの大ヒット曲

「全力少年」が掛かる。

ポジティブなアップ・チューンで、

映画と共に勇気がもらえるよ。
 

中国映画「凱里ブルース」(かいりぶるーす)

3_20200602215501
第七芸術・映画芸術の

在り方を見せる1作
 
ワケの分からなさの

向こうにあるものとは?
 
 
8月22日のサタデーから、大阪・九条のシネ・ヌーヴォほか、全国順次のロードショー。

本作は、2015年製作の、中国映画110分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⒸBlackfin(Beijing)Culture & MediaCo., Ltd - Heaven Picture(Beijing)The Movie Co., - LtdEdward DING - BI Gan / ReallyLikeFilms

1_20200602221101

ボクの今年の洋画の

マイ・ベストワンは、

「ロングデイズ・ジャーニー 

この夜の涯てへ」

(8月22日~9月18日まで、

シネ・ヌーヴォで上映・

弊ブログ分析済み・写真一番下)だ。

主人公の内なる世界を、

映画内映画の長回し撮影で

撮りあげてみせた後半の作りは、

映画芸術の一つの

到達点を示していた。

本作は、その監督ビー・ガンの

デビュー作。

映画はいちおうは

娯楽なんだけど、

第七芸術と呼ばれるくらい

だから芸術でもある。

そして、本作は

バリバリの芸術性を有し、

時にワケの分からなさへと

流れる映画でもある。

4_20200602221301

純文学や哲学のように、

一読・一見しても

よく分からないものは、

これまでにも多数あったかと思う。

読んですぐには、

スッと頭の中に入ってこない

哲学的なナレーションや字幕など、

ウーンと唸ってしまうところが

多々ある本作。

ストーリーは

チラシにも書かれているから

いちおうは分かる。

目的を持って旅立った主人公が、

途中で変な街に入ってから、

40分にわたる

ワンカット長回しも開始されて、

視点も一時転換し、

不可思議な世界へと

入っていくことになる。

5_20200602221401

物語には、
 
夢落ちとゆう着地点があるが、

アートとしての夢落ちには、

不思議な感覚と余韻が深い。

監督の故郷である

中国・凱里をロケーションに選び、

出演者は監督の友人・親戚の

素人役者にゆだねるなど、

いわゆる経費削減の

インディーズ映画ノリなのだが、

そのあたりのぎこちなさは

あまりない。

むしろ監督の描きたかったものとは、

一体何だったのかの、

謎の方が際立っていた。

2_20200602221401

とはいえ、

写真に写る女性の視点に、

移ってから以降は、

物語は主人公の内面だけに停滞せずに、

動いているんだとの展開に変わり、

ワケの分からないままにも、

ワケの分かってくるような

流れへとなってくるのだ。

不思議快感な映画芸術の

一面を見せられて、

不思議なキモチのままに

映画館をあとにすることになるだろう。

ラストロールでは、

ストリングス入りの、

男女デュエット中華ポップスが

流れて、何だか心地いいよ。

Photo_20200819000201
 

2020年8月16日 (日)

菅田将暉・小松菜奈共演「糸」

3_20200407234801

21世紀の日本映画

歌原作映画の最高傑作だ

8月21日・金曜日に全国公開
 
 
文=映画・音楽分析評論家・宮城正樹
 
Ⓒ2010映画『糸』製作委員会

1_20200408000401

日本映画の

歌原作映画については、

「雪の華」

(2018年・弊ブログ分析済み)

の分析のところで書いた。

そこんとこと、かぶったり

チョイ違ったりが、

あるかもしれないけど、

歌原作邦画の、

21世紀と20世紀の、

マイ・ベスト・スリーと、

その種の洋画の歴代

マイ・ベスト・スリーを記しつつ、

本作の魅力に迫ってみたい。

順位通りで、

歌うミュージシャンも表記。

4_20200408000701

●20世紀ベスト⇒

①帰らざる日々(1978年・アリス)

②少年時代(1990年・井上陽水)

③赤ちょうちん(1974年・かぐや姫)

●21世紀ベスト⇒

①本作(中島みゆき)

②なごり雪(2002年・イルカ)

③涙そうそう(2006年・夏川りみ)
 
洋画の歴代ベスト⇒

①スタンド・バイ・ミー

(1986年/ベン・E・キング)

②ボヘミアン・ラプソディー

(2018年/クイーン)

③プリティ・ウーマン

(1990年/ロイ・オービソン)

5_20200408000801

主題歌でもある、

オリジナル・ナンバーが

流れてきた時の、

インパクトや感動をポイントに、

ランク付けをした。

もちろん、映画的な

仕上がり具合も考慮している。

曲は主に、ラストロールで

流れるのが通例だが、

本作は2回流れる。

それも的を射た流し方だった。

6_20200408000801

「糸」が収録された、

中島みゆきの1998年発表の

ベスト・アルバム『大銀幕』を、

当時音楽評論家の立場から、

ボクは聴いた。

みゆきの歌には、

自己卑下するような暗い曲が、

メインにありがちと思われているが、

実は神の視点から、

普遍的なことを歌い込む歌も、

結構作っている。

デビュー曲「時代」も、

ドラマ「金八先生」の

主題歌になった「世情」も、

そして本作の

「糸」もそうである。

10_20200408000901

本作は、

まさに神の視点ともいえる、

見えない赤い糸でつながった、

運命の恋愛を、

往年の大ヒット作

「君の名は」

(1953~1954年)のような、

すれ違い恋愛の

もどかしいところを取り入れつつ、

平成とゆう時代を、

バックに撮り上げた作品である。

なんでこうなるんだ?

なんてとこを多々取り入れて、

最後の最後までひっぱり続ける、

もどかし恋愛の

画期的な作品になっている。

7_20200408001001

菅田将暉と小松菜奈が

「ディストラクション・ベイビーズ」

(2018年・弊ブログ分析済み)

に続き共演したが、

その作品のヤナ奴・ヤナ女と比べて、

共に正反対の演技ぶりを示している。

メッチャ好感度の高い演技に

堂々と変貌しているのだ。

クセの強い演技派の、

演技に対する柔軟性に驚かされた。

8_20200408001001

平成元年に生まれた2人が、

北海道の少年・少女時代に、

出会って両想いになったけど、

虐待含む家庭環境の違いから、

2人は引き裂かれ、

別々の道を歩んでゆく。

何度か再会するけれど、

その2人の半生が、

平成最後の年2019年まで、

時には過去をカットバックしつつ、

ほぼ年代順に紡がれてゆく。

9_20200408001101

それぞれの人生が、

波乱に満ちた展開となっているのも、

すごく面白かったし、

ドラマティックでもあった。

友に裏切られ

シンガポールの日本食堂で

カツどんを食べながら、

小松菜奈は泣く。

その2分の長回し撮影シーンに、

「糸」が流れるが、

ボク的には、小松菜奈サイドで

最も印象的なシーンだった。


Photo_20200816125601


菅田将暉サイドでは、

東日本大震災のトラウマある、

幼なじみの成田凌と

その妻役・二階堂ふみとの、

北海道のカラオケ・
バーでのシーン。

「そんなにおっきなことは

望んでいないのに…」と呟いて、

暗い歌だと言う

中島みゆきの「ファイト!」を

ガナる成田凌の姿に加え、

それを見守る菅田将暉。

いわゆる自己卑下の名曲

「ファイト!」と共に、

人生半ばの逆風に耐える、

シークエンスの凄み。

2人のラブストーリーが、

モチ主眼だけど、

グッと胸にクルシーンが、

いくつかあって、

なんともこたえられない

作品になっている。
 
大ヒットすること

間違いなしだろう
 

2020年8月15日 (土)

フランス映画「この世の果て、数多の終焉」

2_20200812235401
映画で描かれなかった戦争映画
 
「シン・レッド・ライン」的静けさ
 
 
8月15日のサタデーから、キノフィルムズ・木下グループの配給により、シアター・イメージフォーラムほか、全国順次のロードショー。

本作は2018年製作の、フランス映画103分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2017 Les films du Worso - Les Armateurs - Orange Studio - Scope Pictures - Rectangle Productions - Arena Films - Arches Films - Cinefeel 1 - Same Player - Pan Europeenne - Move Movie - Ce Qui Me Meut

1_20200814003601

太平洋戦争含む

第二次世界大戦は、

1945年で終結した

ことになっているが、

実は、1946年まで、

フランス領インドシナ内の

ベトナムでは、戦時下にあった。

敗戦後の日本でも、

樺太でソ連との戦闘があったが、

本作では、

フランスとベトナム・ゲリラの、

いわゆる内戦が続いたのだ。

これまで映画では描かれなかった

戦争を取り上げた。

3_20200814003701

主人公のフランス兵士

(ギャスパー・ウリエル)は、

1945年に日本軍の攻撃で

兄夫婦を殺された。

命からがら逃げてきたが、

主人公が恨むのは、

日本軍よりも、兄が殺されるのを、

見て見ぬ振りをした、

ベトナムの中尉だった。

中尉への復讐を期して、

主人公は部隊に戻り、

日本軍撤退後も、

ベトナム・ゲリラとの戦いの中へ。

いわゆる、国対国ではなく、

私怨絡みの戦争とゆう、

個人的な戦いだ。

4_20200814003701

ベトナム戦争映画は数多いが、

それより20年ほど以前に

戦われたものとなれば、

もちろんかつてない。

ジャングルでの戦闘シーンが

撮られてゆく。

激しい戦闘シーンもあるけど、

どちらかといえば、静かな戦闘が多い。

同じく密林内の静かな戦いを、

映画作家的にクリエイトした、

テレンス・マリック監督の

「シン・レッド・ライン」

(1998年製作・アメリカ映画)を、

思い出させるような仕上がりだ。

5_20200814003801

主人公とベトナム娼婦との濡れ場や、

主人公を諭す作家役の

名優ジェラール・ドパルデューの存在、

同僚兵士ギョーム・グイとの関係性など、

復讐劇を取り囲む

ラブや友情などの因子もまた、

見どころとなっている。

6_20200814003801

ロングショットを中心にした、

映画的撮り方が目立つ。

スロー・モーションや

長回し撮影もあるが、

それらの手法は効果的に使われていた。

何はともあれ、

冒頭とラストの

マジック・イマジネーション的

シーン作りは、特筆ものだ。

映画作家的に戦争を描いた映画として、

記憶に残る作品となった。

昨日分析した「赤い闇」に続き、

洋画年間ベストテン級映画だ。

2020年8月14日 (金)

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」

1_20200812233801
ジャーナリスト魂に満ちた

命懸けの告発系社会派ドラマ

8月14日のフライデーから、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル神戸、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作のポーランド・ウクライナ・イギリス合作による、ポーランド映画118分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸFILM PRODUKCIA - PARKHURST - KINOROB - JONES BOY FILM - KRAKOW FESTIVAL OFFICE - STUDIO PRODUKCYJNE ORKA - KINO SWIAT - SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE

2_20200812234901

本作は実話ベースにした、

歴史の暗部を伝える映画である。

スターリンのインタビューを

目的に、ソ連へ行った

ジャーナリスト

(ジェームズ・ノートン)が、

世界から隠されたソ連の、

恐るべき現状を目の当たりにし、

おまけに体現する羽目になる。

そして彼は一体どうなる、

どうする…なんてゆう映画。

「大統領の陰謀」

(1976年製作・アメリカ映画)や

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

(2017年・アメリカ・弊ブログ分析済み)

などの、スクープ系の実話映画とも

シンクロする映画だ。

3_20200812235001

1933年。

世界恐慌のただ中、

スターリン統治のソ連だけが

繁栄しているのに

疑問を抱いた主人公は、

モスクワへ取材に行った。

そこで、ニューヨーク・タイムズの

モスクワ支局長

(ピーター・サースガード)から、

主人公の友人の記者が

何者かに殺されたことを知る。

探ってはいけないことを探り、

当局から抹殺されたのではと

考えた主人公は、

支局長のもとで働く女記者

(ヴァネッサ・カービー)から、

その死の謎を探り、

ウクライナにヒントがあると考える。

スターリンへの

インタビューがかなわない中、

外人記者に対して規制する

当局の目を盗んで、ウクライナヘ。

4_20200812235001

サスペンス・タッチで

ストーリーは展開し、

クライマックスの

ダークなトーンによる、

ウクライナ・サイドでは、

衝撃的なシーンが露呈されるのだ。

その実態を「動物農場」

として小説にした、

「1984」のジョージ・オーウェルと、

主人公の出会いや、

名作「市民ケーン」

(1941年・アメリカ・モノクロ)

のモデルとなった、

新聞王ハーストへの

主人公のアプローチなども

挿入されている。

5_20200812235101

社会派の巨匠、

故アンジェイ・ワイダ監督作品に、

脚本家として携わった、

ポーランドの女性監督

アグニェシュカ・ホランドの新作。

偉人伝から戦争ものまで、

多彩な作品を作り続けているが、

ボクは本作が、

彼女の最高傑作だと思う。

とゆうことで、

今年のベストテン級の映画だ。

2020年8月12日 (水)

「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」

3_20200811010501
スマホ・オタクと

AIスマホ彼女の

トンデモ相棒おバカコメディ


8月14日のフライデーから、ショウゲートの配給により、シネ・リーブル梅田ほか、全国ロードショー。

本作は、2019年製作のアメリカ・カナダ合作の84分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2019 CBS Films Inc. All Rights Reserved.

1_20200811012101

おバカも大げさも

下ネタも入った、

アメリカン・コメディの快作。

日本人には分かりにくい

アメリカン・ジョーク入りも

あったりで、未公開フィルムも

多いアメコメだが、

本作は違っていた。

今どきのスマホを、

ライフコーチ機能を持った

女AI「ジェクシー」として

人格化し、持ち主の主人公に

いろいろ指導するのだ。

主人公の行動によっては、

反抗したり、

主人公の狙う彼女に

嫉妬したりする、とんでもない

設定にしてみせたのだ。しかも、

気に入らずに

スマホを変えようとしても、

クラウド経由で彼女は再生する。

2_20200811012301

スマホ時代を反映した、

ユニークなコメディだ。

スマホを使った映画としては、

タイトルの翻訳で

文字りで入れているが

(原題にはない言葉)、

日本のミステリー映画

「スマホを落としただけなのに」シリーズ

(2018年・2020年製作・

弊ブログ分析済み)があるが、

コメディとしては、本作が初めてだろう。

しかも、スマホが主人公並みに、

大きな位置づけにあるのは、

バカバカしいと思う人も

いるかもしれないが、

コメディとしては、

画期的なものだとボクは思う。

4_20200811012401

もちろん、スマホが

メイン・ソースだが、

ちっちゃな頃から

スマホ・オタクの主人公が、

入社したサンフランシスコ新聞社の、

リスト部やコメント部での仕事とか、

キックボールを同僚で興じたりとか、

これまでのアメコメには

なかったような、新味を

付加している点にも注目。

それでいて、

アメコメ特有の下ネタが、

チョコチョコ挿入されるのも、

アメコメらしさを誇示。

主人公が新聞社をクビになる

エピソードなどは、

アメコメならではのもの。

5_20200811012401

アメコメのボク的最高傑作は、

3部作「ハングオーバー!」

シリーズの第1弾

(2009年・アメリカ)だが、

その原案と脚本を手がけた

ジョン・ルーカスと

スコット・ムーアが、

本作では脚本だけでなく、

メガホンを執った。

酔っ払って記憶をなくした

その夜に何があったのかを、

ハットトリックに描いた

「ハングオーバー!」第1弾の

衝撃的笑いが、

確かに本作にもあった。

おバカの向こうにある、

斬新なコミカリズムを

感得してもらいたい。

2020年8月11日 (火)

「思い、思われ、ふり、ふられ」

3_20200806001801
コミック原作学園ラブストーリー

コクリコクラレの

恋の原点回帰した作品

8月14日の金曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

本作は、2020年製作の日本映画124分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2020「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会

Ⓒ咲坂伊緒/集英社

6_20200806002901

コミック原作の

学園ラブストーリーな日本映画は、

これまでにかなりのタイトル数がある。

20世紀には、

「翔んだカップル」(1980年製作)や

「バタアシ金魚」(1990年)など、

映画作家性の濃厚な

名作が生まれたが、21世紀には、

少女コミック原作映画が

多数作られて、

百花繚乱の状況となった。

ここで、21世紀に限定した、

マイ・ベスト・ファイブを、

順不同で披露してみると…。

4_20200806003001

①本作

②町田くんの世界

(2019年・ブログ分析済み)

③天然コケッコー(2007年)

④僕等がいた(2012年・分析済み)

⑤ヒロイン失格(2015年・分析済み)

●基本的に2人の恋愛に収束する

パターンものが主流だが、

そこに三角関係を取り込んだ

本作や⑤などが、

ドラマをより緊張感をもって、

ワクワクさせるところとなっている。

特に2カップルを描く本作は、

「翔んだカップル」への

オマージュと共に、

その分かりやすい進化系とも

取れる快作となっている。

5_20200806003101

何はともあれ、

4人4様のコクリ・コクラレとゆう、

恋愛映画の原点を

ストレートに描き、しかも

両想いだった時の感動が、

グッとくる作品となった。

三角関係のしがらみや

マイナス・トーンな悲恋部も、

クライマックスへの感動を

対比的に呼び込む

作りになっていた。

1_20200806003101

さあ、コクリ・コクラレて、

両想いになるはずだった男女

(北村匠海・浜辺美波)だが、

それぞれの片親が

再婚することになり、

恋愛を封印する羽目に。

そんな時、美波ちゃんの友達

(福本莉子)に好きな男の子ができ、

その彼は何と北村匠海クン。

そこに、男の同級生(赤楚衛二)

が絡んで、4つ巴の展開へ。

4人は同じ高校に通い、偶然にも

同じマンションに住んでいた。

7_20200806003201

泣ける系の映画

「君の膵臓をたべたい」

(2017年・分析済み)で共演した、

浜辺美波と北村匠海が、

同じくシリアスで誠実な演技を見せる。

純情可憐な「東宝シンデレラ」

グランプリの福本莉子や、

映画版・仮面ライダーに

出演した赤楚衛二も、

さわやかな演技で魅せて

好感度は高い。

2_20200806003301

1組のカップルの仲を取り持つ、

群像恋愛映画

「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」

(2013年・イギリス・分析済み)

の使い方もよかった。そして、

最後に流れる、

ヒゲダン(Official 髭男 dism)の、

キャッチーな

「115万キロのフィルム」が、

映画の余韻を深めていた。

さて、本作のアニメ版は

9月18日に全国公開される。

2作を見比べてみるのも面白い。

2020年8月 5日 (水)

「おかあさんの被爆ピアノ」

1_20200804215701
被爆ピアノの今を描く

親子3世代の家族ドラマだ

8月8日の土曜日から、新宿K's cinema、横浜シネマリン、テアトル梅田、京都シネマほか、全国順次のロードショー。
本作は2020年製作の日本映画113分。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
Ⓒ2020映画「被爆ピアノ」製作委員会

2_20200804220901

広島と長崎に原爆を落とされ、

太平洋戦争が終戦を迎えて以来、

75年となる今夏、

広島原爆の今を描く

映画が公開される。

「原爆の子」

(1952年製作・モノクロ)以来、

当時の悲惨さを伝える原爆映画は、

多数作られてきた。しかし、

そんな原爆悲劇の

“今”を描く映画は、

実は意外と少ない。

ボク的には、

そんな映画の最高傑作は、

今年逝去した佐々部清監督の

「夕凪の街 桜の国」(2007年)だが、

被爆ピアノの“今”を描く

本作もまた、

広島原爆の新視点ある映画だ。

4_20200804221001

佐々部清監督に続き、

今年逝去した大林宣彦監督も

遺作「海辺の映画館」

(弊ブログ7月24日付けで分析)で、

広島原爆を一部描いた。

本作を含めた3作に共通するのは、

原爆投下の惨状は描かずに、

原爆の恐怖を伝える点であろうか。

余りにも悲惨だと、

R指定が入ったりするし、

今の若い人たちには

戦争や原爆は未知の世界だが、

彼らにも分かりやすく

伝わるように作られている。

それは、役者の演技であったり、

狂言回しのポイントであったりする。

3_20200804221101

被爆したおばあちゃんのピアノを、

東京のおかあさん(森口瑤子)が、

広島のピアノ調律師

(佐野史郎)に寄贈した。

その情報を知った娘ヒロイン

(AKB48の武藤十夢)は、

トラックに乗って全国で

佐野史郎が開催する、

コンサートに参加し、

佐野のトラックに乗せてもらって、

誰も住んでいない広島の実家に帰り、

そのピアノの経緯を探ろうとする。

やがて、森口瑤子も娘を心配して

実家に戻って来て…。

6_20200804221101

ライヴで歌われる歌や演奏も、

過去の謎の解明と共に、

見どころとなっている。

「アベ・マリア」

「ゴンドラの唄」

「赤とんぼ」ほか、

広島原爆への想いを

込めて歌われる。そして、

母と娘がピアノを弾く

クライマックスへ。

家族のキズナが深まる

シーンの感動。

5_20200804221201

武藤十夢のひたむきさを、

柔軟に受け止め、

あるべきところへと、

さりげなく導いていく、

佐野史郎の演技が、

ボク的にはよかった。

映画そのものも、

押しつけがましくなく描かれて、

好感度の高い作品だった。

2020年8月 4日 (火)

韓国映画「鬼手」(きしゅ)

4_20200803224201
クォン・サンウ主演の

リベンジ・アクション
 
囲碁映画の常識を覆す活劇だ
 
 
8月7日のフライデーから、ツインの配給により、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作の韓国映画106分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2019 CJ ENM CORPORATION, MAYS ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED

1_20200803225101

本作は、身内の復讐を期す

リベンジ・アクションである。

しかし、その道筋や背景、

方法論が、これまでの

リベンジ映画とは全く違う。

背景にあるのは、何と囲碁だ。

賭け囲碁の世界を描くとなれば、

マージャンの「麻雀放浪記」

(1984年製作・日本映画・モノクロ)とか

トランプの「シンシナティ・キッド」

(1965年・アメリカ)など、

賭けのスリルとサスペンスに

満ちていたが、本作は

静かなる囲碁の世界が、

突然のように

アクション・バイオレンス・

シーンにすり替わるとゆう、

ハットトリッキーに満ちた作品だ。

2_20200803225101

しかも、女優含めて、

仲村菫ちゃんみたいな

かわいい子は一切出ず、

むさ苦しい男たちの熱気に

満ちた世界となっている。

そんな世界を体現するのは、

恋愛映画のイケメン・

イメージが強い、

主演のクォン・サンウだ。

「戦火の中へ」

(2010年・韓国)などでは、

アクションも披露したけど、

しかし、本格的な

格闘アクションの観点では、

本作がキャリア史上

最も過激なものとなった。

3_20200803225201

1988年。

囲碁のプロに妹を犯され、

妹は自死。

弟はリベンジを期して、

囲碁修行に励み、

賭け囲碁の世界で勝ち続け、

いくつかの荒波を乗り越えて、

遂にターゲットへと挑む。

簡単に言えばそういうことだけど、

その流れは

波乱に満ちた展開で進行する。

6_20200803225301

線路での囲碁対決とアクション、

溶鉱炉でのクォン・サンウを

追う好敵手との対決など、

多彩なアクション・シーンを

織り込みながら、最終対決へ。

5_20200803225301

1人対100人の囲碁対局が、

ド派手なアクションへと、

突然変異してゆくシークエンスは、

本作の大いなる見どころだと言えよう。

将棋や囲碁の静謐なる緊張が、

ドカーンと大爆発する、

アクションと混成されるのは、

違和感もあるかもしれないが、

今までに見たことがないような、

映画の一面もまた、

感じられる映画だろうと思う。

ストレートなアクションも、

スカッとするけど、

変局系の本作の爽快感も

見逃せない仕上がりになっている。
 

« 2020年7月 | トップページ | 2020年9月 »