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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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2020年5月の記事

2020年5月28日 (木)

「許された子どもたち」

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いじめ殺人事件を描いた映画
 
被害者家族と加害者家族の軋轢
 
 
6月1日から、ユーロスペース、テアトル梅田ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2020年製作の、日本映画131分。

文=映画分析評論家・宮城正樹
2020「許された子どもたち」製作委員会

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いじめによる殺人事件が発生。

少年が逮捕され、

家庭裁判での裁判となり、

加害者家族と被害者家族が

裁判に臨む。

裁判でも、この対立する

2家族の関係を描いた

映画はあまりない。

少年犯罪というところでだろうか。

しかも、少年は自白している

にも関わらず、無処分となり、

加害者家族と被告の少年のその後が、

ピリピリした感じで描かれていく。

そして、無表情で不機嫌な、

少年の無謀な行動が、

とんでもないところへと…。

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いじめを捉えた日本映画は数多い。

ボク的には、

どちらも見たあとの鑑賞後感は、

決してよくないが、

「リリイ・シュシュのすべて」

(2001年製作)と

「告白」(2010年・弊ブログ分析済み)が、

ベスト・ツーだと見ていた。

いじめ裁判を独自でやる

「ソロモンの偽証」

(2015年・ブログ分析済み)も悪くない。

ただ、本作のように、

リアリティーある裁判や、

実話をヒントにした作りとなれば、

フィクションとしてのリアルを、

ある意味超えているといえようか。

それが、インディーズ映画として

提示されたことに、

ボクは本気印、

本物のリアルを覚えたのだ。

メジャー系の映画も撮ったことがある、

内藤瑛亮(えいすけ)監督作品。

映画評論家筋で評価の高かった

「先生を流産させる会」

(2012年・ブログ分析済み)など、

実話に基づいた

インディーズの問題作に、

鋭さを見せる監督だが、

本作はその鋭利さが最大になり、

監督の最高傑作となった作品であろう。

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名のある役者は、

ほぼ1人も出ていない。

それだけで、なんやと

残念がる人がいるかもしれない。

だが、流れに乗って見ていけば、

そんなことは

どうでもよくなってくる。

映画的に斬新なカットが頻出する。

キレるロングショット、

ガラスでモザイクなカット、

転倒カット、

クイック・モーションと

スローモーのバランス、

タイトな打ち込み系のサントラ、

今どきのSNSの

文字の字幕羅列など。

映画を見せるための

映画的作りは万全。

有名人が誰もいなくても、

映画として傑作になる

典型的作品だと言えるだろう。
 

2020年5月27日 (水)

中国映画「在りし日の歌」

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中国の夫妻ドラマ映画

 

大河ドラマ系のノリで展開

 

http://www.bitters.co.jp/arishihi

 

5月29日の金曜日から、テアトル梅田、京都シネマで、全国順次のロードショー。


本作は2019年製作の中国映画185分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⒸDongchun Films Production

 

中国の実際の社会背景を


バックにした、


30年にわたる


中国の夫妻ドラマ映画。


2組の夫妻子供の


3人家族が描かれるが、


メインは、


「一人っ子政策」の元に


生まれた子供を、


亡くした夫妻


(ワン・ジンチュン、ヨン・メイ)


の物語にある。


実の子亡きあと、


夫婦は工場の仕事を辞めて、


別の土地へ転居し、


養子を迎えた。


そんな養子との生活ぶりから


本作は始まる。

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1980年代から


2010年代までの話で、


大河ドラマ系のノリだが、


時制通りには話は進まない。


時代を交錯させる


モンタージュと構成で、


多様性のある作りを施している。


中国版「喜びも悲しみも幾年月」


(1957年・日本)と言えるかもしれない。

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ベルリン国際映画祭で


夫妻役主演の2人が、


最優秀男優賞と最優秀女優賞を


W受賞した。


夫役ワン・ジンチュンの


素朴で、のほほんとした


フツーのおやじぶりは、


巧みの演技とは思わないが、


浮気もしていたりと、


ところどころの


隠し味演技がうまい。


一方、妻役ヨン・メイは、


リアルで自然体の落ち着いた演技。


エキセントリックに


激することもない。


中国の雛型とも言える


妻役ぶりだろう。

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胡弓による「蛍の光」や、


劇中で歌われる


「友情はとこしえに」に加え、


ピアノやバイオリンの


サントラなど、


タイトルにふさわしい


音楽の使い方が、


ドラマを映えさせていた。

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本作はまさに、


中国ならではの、


夫妻映画であり、家族映画だ。


息子の死の真相や、


養子と夫妻の関係性など、


謎や感動も盛り込まれた。


コロナ禍で、


多くの作品が


公開延期になっている中、


今年のベストテンの行方は


分からないけども、しかし、


本作はベストテン級の作品だと


言ってもいい傑作だ。


関西は遅れての公開となったが、


映画館にてその出来具合を


ご確認ください。

 

 

 

2020年5月19日 (火)

「春を告げる町」⇒災難復興ドキュメンタリー

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春は必ずやってくる!!
 
新しい未来へ向けて⇒
 
 
5月30日の土曜日から、東風の配給により、第七藝術劇場で、再開上映。

その後、全国順次のロードショー。

「仮設の映画館」でも、配信中。

本作は、2019年製作の、日本映画130分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⒸJyaJya Films

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東日本大震災、

新型コロナ・ウイルスなど、

21世紀以降も

日本を襲う大災難は、

従来の災難より、

より激しさを増して

容赦なく襲い掛かってきている。

それでも、

不幸・不運から立ち直り、

ハッピーエンドへと向かう映画は、

ドキュであれドラマであれ、

今も昔も変わらず

癒やしをくれる。

大衆はもちろん、

安直なハッピー・エンド映画を、

毛嫌いしていた人たちにとっても、

今こそ見るべき映画は、

そういう映画ではないだろうか。

春は必ずやってくる。

この希望の格言こそ、

今の我々にとって必要なものだ。

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本作は、発生以降これまでに、

数多く作られてきた、

2011年3.11東日本大震災映画の、

ドキュメンタリー部門の映画である。

しかし、

その復興を捉えた映画は数少ない。

本作はドキュだけに、

復興への厳しさを、

シビアに見せていくが、

そんな中でも、何とか踏ん張り、

前を向き、
新しい未来へ向けて、

進もうとする人たちの話が、

胸を打ち、

共感を呼ぶ作りになっている。

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福島県双葉郡広野町。

震災の原発事故で

全町避難指示をされた町。
 
農業を営む三世代家族、

震災復興演劇を

上演しようとする高校生たち、

祭りの復活を願う人たち…。

震災によって、

時の止まった人たちが、

少しずつ希望の明かりを

見出そうとする。

群像ドキュのキモである、

自然体を見せながら、

ゆっくりゆっくり

それぞれが光を見つけていくのだ。

高校生たちは

時に熱い想いを込め、

老人たちは

マイペースでゆったり。

そして、家族は、

家族の絆を、

そこはかとなく見せながら、

前を向いてゆく。

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田園風景など

自然風景の美しさ、

ロングショットの

遠近感による映画的な撮り方、

バイオリン、チェロ、ピアノ

などのサントラの優しさ、

ヤマ場で

ダイジェストで映される

高校演劇の感動。

とゆうことで、

ドキュ映画としての、

映画的骨格を備えた快作。
 
オンラインもいいけど、

ぜひ劇場の大スクリーンで

見てみたい作品だ。
 

2020年5月18日 (月)

「精神0」

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シブミある

ヒューマン・ドキュメンタリー
 
恬淡とした

シニア夫婦映画

http://www.seishin0.com

5月23日の土曜日から、第七藝術劇場ほかで、全国順次の公開。
 
「仮設の映画館」でも配信中。

本作は、2020年製作の日本・アメリカ合作の128分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

2020 Laboratory X,Inc.

想田和弘(そうだ・かずひろ)

監督流儀の

「観察映画」なる

ドキュメンタリーの第9弾。

その手法は、

アメリカのドキュメンタリーの

巨匠フレデリック・ワイズマン監督の

スタイルと似ている。

つまり、編集やモンタージュはするけど、

撮ったままそのままを

映すというタッチだ。

だから説明するナレーションもなく、

ドラマ効果を高めるサントラもない。

そもそも台本さえない。

ドキュだから、

計算された台本がないのは、

当たり前といえば当たり前だろう。

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ドキュのドキュらしさを

備えた映画で、

本作で部門賞ながら、

ベルリン国際映画祭で

初めて受賞した。

高齢の精神科医・山本昌知らを、

モノクロで描いた

ヒューマン・ドキュメンタリー

「精神」(2008年)の続編だ。

82歳で引退を決めた山本が、

患者たちと対面する前半。

そして、後半は、

引退した山本と認知症の妻との、

岡山での日々の生活が、

淡々と撮られてゆく。

撮ってる側の想田監督も、

夫妻とのやり取りで、

声だけの出演もしているが、

社会ドキュのようなシビアさはなく、

あくまでゆったりしていて、

観察者の立場を堅持している。
 

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上の画像のように、

猫をよく撮るところなど、

監督らしい余裕なとこも取り入れて、

流れによって

ずっと撮るべきところは、

長回し撮影を施す。

また、「精神」のモノクロ・カットも

時おり挿入し、

今と10年前を対比させる。

長回しや淡々とした撮影に加え、

言葉が聞こえにくかったりすると、

ドラマ映画でもドキュでも、

時に退屈さや眠気を

催させるものだが、

私見かもしれないが、

本作では意外にも、

そこんところは緩和されていた。

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入り込めるか入り込めないかは、

観察するとゆう流れや見方に、

乗れるかどうかに

かかっているのかもしれない。

ゼエゼエ息をつきながら、

墓参り作業をする山本の姿など、

近接撮影やアップの、

効果的な配置も

リアル感があって、

よかったと思う。
 

2020年5月13日 (水)

「記憶にございません!」⇒レンタルDVD現在No1

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コロナ禍非常事態宣言のなか、

新作映画の公開は

中断しているけど、

新作DVDは

着々とリリースされ、

ステイホームの

一大エンタになっている。

そこで、現在

レンタル・チャートNo1の

「記憶にございません!」を、

映画公開時に弊ブログで

分析したものを

再録いたします。
 
三谷幸喜ブランドな

群像コメディだ

中井貴一コミカル演技は

最高潮だ

 
9月13日のフライデーから、全国ロードショー。
 
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
 
ⓒ2019 フジテレビ・東宝

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三谷幸喜の

群像コメディ映画も、

本作で第8弾だ。

その8作の出来具合を、

マイ・ベストとして、

1位から8位まで

披露しようかなと思ったけど、

あえてやりません。

監督デビュー作

「ラヂオの時間」(1997年)が

1位ではあると思う。

しかし、

2位以降を順位付けするには、

その7作はほとんど差がなく、
どの作品にも、

三谷ブランドここにあり!

になっているからだ。
 

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そして、毎回コメディとはいえ、

ジャンルをビミョーに

変えていることにも気付く。

ラジオ・メイキングや

映画メイキングに加え、

一軒家建築メイキング、

ホテル映画、裁判劇、

時代劇、SFなどと続き、

それぞれの映画において、

トンデモ・コミカルな

オリジナル・ポイントを加えている。
 
作品名は書かないけど、

大たいはピーンとくるでしょう。

いやはや、ケッコー凄いと思う。

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でもって、本作であります。

ジャンル的には、

これまでの三谷幸喜作品

にはなかった、政治映画。

日本の政治に関する映画ではあるが、

モチ、群像コメディである点に

変わりはない。

但し、政治コメディ

「国会へ行こう!」(1993年)などとは、

面白さの質度が違う。

時に三谷作品の主人公には、

意外性・特殊設定を

施されている場合がある。

だから、総理大臣役主人公

(中井貴一)は、フツーじゃない。
 

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総理は利権絡みで

莫大な献金に執着し、

国民に対し

開き直るような政治家だった。

支持率はメッチャ低い。

なのに、政権を維持しているのはなぜ?

とゆうとこは、

とりあえずスルーして、

そんな総理が、

聴衆の1人から石を投げつけられて、

記憶喪失になってしまう。

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つまり、記憶喪失を

キーワードにしたのだ。

記憶喪失映画を、

チョイアイロニカルに

逆手に取って、

採り入れてみせたのだ。

記憶喪失になった総理は、

喪失前とは全く

真逆の人間になっていた。

この設定により、

周囲の人間たちとの関係が、

まったくもって、

ひっくり返ることになる。

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誠実になった総理が、

政治の在り方を

変えていくところは、

大きな見どころだ。

加えて、ドラマ映えしやすい、

不倫系の三角関係の、

ラブストーリーなところもある。

このあたりのシチュエートも、

あり得ないくらいに、新しい設定だ。

影武者大統領を描いた「デーヴ」

(1993年・アメリカ)以上に、

画期的な作りだった。

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コメディアンとしての

イロもあるけど、

ボクたちの世代では、

シリアス演技が

ココロに響いた中井貴一が、

本作ではオオマジで

コメディアンしている。

三谷幸喜のWOWOWの

ドラマ演出作品「short cut」

(2012年4月に弊ブログ分析)でも、

コメディ演技を披露していたし、

最近ではシリアスものには、

あんまし出ていないけど…。

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だが、本作では、

最後には、シリアスを見せる。

 
とことんのコメディは、

中井貴一キイッちゃん

には似合わない。

けど、そこがキイッちゃん

らしいとこだろう。

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かつてのロッキード事件裁判

(現役の田中角栄総理が、

収賄容疑で逮捕された事件で、

証人尋問での証人の発言

「記憶にございません」が、

流行語になった)を、

思い出させるタイトル付けに、

三谷幸喜監督らしい

遊びゴコロが、見え隠れする。

そんなところにも、

ボクは密かにグッときた!
 

2020年5月 8日 (金)

「島にて」⇒「仮設の映画館」で配信中

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究極の島ドキュメンタリーの登場

ドラマ映画「裸の島」に迫る
 
5月8日から、「仮説の映画館」にて、配信中。
 
6月20日の土曜日から、第七藝術劇場で上映。
 
その後、京都シネマ、元町映画館などで順次公開。

本作は、2019年製作の日本映画99分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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島舞台映画で

みなさんが思い出す映画は何? 

ロビンソン・クルーソーを

思い出す孤独映画だったり、

男と女2人だけで島にとか、

コドモたちだけの「蠅の王」

(1990年製作・イギリス映画)とか、

無人島ものが多いだろうか。

しかし、ドキュながら

本作で撮られた島は、

無人島ではなく、

140人が住む離島である。

有人島のドラマティックと言えば、

例えば小豆島の

「二十四の瞳」

(1954年・モノクロ)だったり、

ミステリーの「獄門島」(1977年)や、

みなさんおなじみの

アドベンチャーな「宝島」

「ジュラシック・パーク」などに加え、

種子島や沖縄の離島ものなど、

ある意味観光スポット的

島であったりする。

また、医療や「二十四の瞳」も

そうだけど学校などを、

ポイントにした映画もある。

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だが、本作は暮らしや生活を

重視した上で、

過疎化問題に食い入った、

シビアな島もの

ドキュメンタリーとなった。

山形県の日本海の

離島・飛島が舞台。

故・新藤兼人監督が撮った、

サイレント映画ノリの、

島で農作業に営む夫婦を捉えた

「裸の島」(1960年)

のノリがあった。

いわゆる、淡々と黙々と、

おのが仕事にいそしむ

人たちの描写だ。
 

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一方で、親からこんな島には

戻ってくるなと

言われた人たちが、

島にUターンする。

この島出身の

今は起業家が戻ってきて、

さまざまな可能性を

探っていったり、

廃校の小学校に来て

過去を思い出す女だったり、

前向きと後ろ向きが交錯していく。

美しき自然風景も映されながら、

希望への道筋を

模索していくような撮り方は、

廃(すた)れの美学が、

映画映えするような映画とは、

一線を画していた。

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アコーディオンや

ギター・フォークなど、

あったか~い

アコースティック・サウンドに乗る、

いろんな人の日常生活描写も、

淡々としていながらも、

むしろそこんとこが

胸にクルものがある。

究極の島ドキュメンタリーの

登場にして、

島に住む人たち

それぞれの想いを描く、

群像ヒューマン・ドキュであった。
 

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