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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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2020年4月の記事

2020年4月23日 (木)

「白い暴動」⇒音楽ドキュメンタリー

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1970年代のイギリスの

音楽ドキュメンタリー
 
ザ・クラッシュらが熱演・熱唱
 
 
ツインの配給により、ネット配信公開中。

本作は、2019年製作の、イギリス映画84分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

photograph by Syd Shelton

音楽ドキュメンタリー映画は、

これまでに多数作られ続けてきた。

そんな中でも、社会問題に絡めた

音楽ドキュは意外と少ない。

アーティストの音楽性や、

コンサート・ライブを、

ポイントにした映画が多い。

本作はライブ披露部は、

クライマックス以外は少ない。

しかし、
コンサートを

メインにしながらも、

ベトナム反戦とゆう社会問題を

取りあげた名作

「ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間」

(1970年製作・アメリカ映画)と、

本作を比べても、

決して遜色のない仕上がりに

なったとボクは思う。

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1970年代当時のイギリスが背景。

排他主義の白人至上主義者たちと、

黒人差別を排し、

黒人も白人も関係ない、

平等だとする派が、

いがみ合っていた時代だ。

そんな時代のいろんなとこを、

モノクロ映像や写真やらに加え、

当時の関係者への

インタビューを絡めて、

展開するとゆう、

まさにドキュメンタリーらしい作りだが、

しかし、それがアレアレいつの間にか、

パンクやレゲエなどの

新興ミュージックとリンクしていく。

いやはや、チョイ不思議快感な作りだった。
 

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パンク・バンドのザ・クラッシュの

衝撃的な登場。

但し、そこんとこは

刺激的なカンジでは伝えられない。

彼らが、平等主義に賛同し、

クライマックスの

排他主義の敵地での

公園イベント・コンサートに参加する。

トム・ロビンソン、

レゲエのスティール・パルス、

シャム69らが参加。

10万人の観客を集めた、

そのコンサート模様が、

ビビッドに撮られている。

ドラマ映画だったが、

1980年代のバンド・エイドに

参加したクイーンを描いた

「ボヘミアン・ラプソディー」

(2018年・アメリカ・弊ブログ分析済み)の

クライマックス・シーンと比較しても、

遜色ない感じがした。

こちらは、ドキュだけに、

映画的演出がない分、

よりリアル感があった。

映画タイトル・ナンバーの

「白い暴動」のパンク・ロックの衝撃。

セックス・ピストルズが

パンクのルーツ・アーティストとされるが、

ザ・クラッシュ「ロンドン・コーリング」で、

パンクに目覚めたボクにとっては、

実に興味深い作品だった。
 

2020年4月15日 (水)

香港・中国合作「新喜劇王」

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アリエネーな

チャウ・シンチー監督の新作
 
ヒロインの

コメディエンヌぶりが強烈
 
 
4月10日より、ツインの配給により、全国順次公開中。

本作は、2019年製作の香港・中国合作の、本編90分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2019 The Star Overseas Limited All Rights Reserved.

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チャウ・シンチー監督といえば、

アクションが主流の

香港映画界において、

トンデモ・コメディで、

ズズズイーッと

作り続けてきた監督だ。

常にコメディとしての

新しさにアプローチしている。

「アリエネー」のコピーが

有名になり、

人口に膾炙した

「カンフーハッスル」(2004年製作)は、

ブルース・リーをポイントにした、

香港映画直系の、

カンフーへの、

アプローチだったが、

本作はチョイとゆうか

ダイブ違う。

カンフーとサッカーを融合した

「少林サッカー」(2001年)など、

カンフーとの関係性はなく、

また「西遊記~はじまりのはじまり~」

(2013年・弊ブログ分析済み)や

「人魚姫」(2016年・ブログ分析済み)など、

定番ものを、

ひっくり返すようなとこもない。

コミカル食対決のルーツとも言える

「食神」(1996年)のように、

新鮮味あふれるコメディになった。
 

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主演を張るような、

映画女優を目指す、

万年エキストラのヒロイン

(エ・ジンウェン)の話で、

加えて、映画業界もの映画にもなっている。

従来のその種の映画は、

マジなシリアスものが多いのだが、

監督の采配にかかると、

大仰なコメディになる。

そして、セリフや役柄の中で、

名作へのオマージュや

パロディを取り入れている。

「キングコング」と間違えられて、

整形をしたヒロインが

「白雪姫」のオーディションへ行ったり、

「サイコ」的シャワー・シーンで

NGになったり…。

また、「ゴッドファーザー」の

マーロン・ブランドなども

セリフで引用されている。

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監督に見いだされ、

スクリーン・デビューを、

果たしたヒロイン役のエ・ジンウェン。

父には反対され、彼氏に裏切られても、

エキストラをやりながら、

オーディションを受け続ける彼女の姿。

さらに、男優(ワン・バオチャン)との、

心温まる交流。

コメディエンヌとしての、

トンデルところを強調した

演出ぶりがよかった。

それゆえに、対照される

チョイ・マジ部分も、映えていた。

「白鳥の湖」の大げさ感、

ラストロールで流れる

ボサノバ・ポップに加え、

日向大介の

コメディにふさわしい

的を射たサントラ使いにも注目だ。
 

2020年4月 2日 (木)

「悲しみより、もっと悲しい物語」⇒台湾映画

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韓国映画の

台湾映画リメイクだ
 
オリジナルの

謎めきラブストーリーはキープ
 
 
4月3日の金曜日から、シネマート心斎橋ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作の、台湾映画106分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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クォン・サンウ主演の

泣けるラブストーリーな

韓国映画

「悲しみより、もっと悲しい物語」

(2009製作・弊ブログ分析済み)の、

台湾映画リメイク・バージョンだ。

率直に言うと、

本作は、オリジナルに近い形で

リメイクされていて、

元ネタのイメージを

損なうことなく作られている。
 

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ひとりぼっちの男女2人が

高校で出会い、

大学も同じで仲良く卒業。

2人は家族として同棲し、

男はプロデューサー、

女は作詞家として、

共に音楽業界の仕事に携わっている。

数年後、

そんな2人が作った未発表曲に、

魅せられた歌手

(現役の歌姫A-Linが演じる)が、

2人を知る者に会いに行ったところ、

2人は既に死んだことを知らされる。

でもって、そこから、

2人のラブストーリーが、

過去回想的ノリで描かれていく。

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クライマックスまで、

男のナレーションと視点から描かれ、

クライマックスから女の視点へ転換し、

それまでぎこちなかった2人の、

ラブの在り方が示される。

オリジナルを見た時にも感じたことだが、

それまで順調だった婚約カップルを

巻き込んで(別れさせて)まで、

なぜ2人の愛を描こうとしたのか。

本作を見ても、

ここのところが不可解だった。

2人の愛をまっとうするための、

完全なるエゴじゃないか。

つまり、それはオリジナルに

問題があるわけだけど、

そのあたりの不満の解消を

分析してみた。

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韓国の映像界では、

病系の泣ける映画やドラマが、

何作も作られてきた。

そんな中で、主人公やヒロインが、

病にかかって、

家族や恋人に心配されながら、

死んでゆくとゆうような、

よくあるタイプの映画では、

もはや涙涸れ観客を

泣かせることはできない。

よって、本作のような

変型タイプの映画が

作られることになったのだろう。

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本作をストレートに描けば、

フツーのお涙ちょうだい

映画になってしまう。

しかし、男視点のストレートと

女視点の意外性で、

ミステリーなラブストーリーになった。

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婚約カップルを巻き込んだ点も、

男女2人の2視点によって、

ある程度は解消される。

この巻き込みは、オリジナリティーを

表現するためのエピソードであり、

偶然性や齟齬は感じるけど、

決して致命的ではない。

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悲しみより、もっと悲しいから、

あの結末は分かるんだけど、

ホンマに悲しいお話です。

とはいえ、よく考えてみれば、

「ロミオ&ジュリエット」な普遍性も、

感じるラブストーリーだった。
 

2020年4月 1日 (水)

イギリス映画「シェイクスピアの庭」

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シェイクスピアの家族の物語
 
実話に基づいた人間ドラマ
 
 
4月3日の金曜日から、シネ・リーブル神戸ほかで上映。

シネ・リーブル梅田、京都シネマなどでは上映中。

本作は2018年製作の、イギリス映画101分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.

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イギリスの俳優監督の、

ケネス・ブラナー監督作品。

本作では、同じくイギリスの、

シェイクスピア(以下シェイクと表記)

役で主演も兼ねた。

ブラナー監督と言えば、

シェイクの作品を

何作も映画で撮った監督だ。

そんな監督が、

今度は原作者シェイクの

実話を映画化した。

シェイクが実際に

出てくる映画としては、

アカデミー賞作品賞を受賞した

「恋におちたシェイクスピア」

(1998年製作・アメリカ)などがあるが、

そちらは実話ではなく、
 
シェイクじゃなく

主演女優にフォーカスした作品だった。

だが、本作はシェイクの実話に

アプローチした珍しい作品である。

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ロンドンの演劇公演で、

ブレイクしていたシェイク。

しかし、自ら筆を折って、

故郷の田舎に帰ってきた。

長らく家に帰らなかったシェイクだが、

その間に、息子は死亡していた。

家族構成は、既婚の娘と未婚の娘と

年上の妻(ジュディ・デンチ)。

だが、シェイクの突然の帰省に、

みんな戸惑っていた。

未婚の娘は、シェイクに反抗的。

妻は彼の心が見えない。

そんな中で、シェイクは

淡々と庭造りにいそしむのだ。

亡き息子への想いや

家族との関係性などでの演技でも、

熱することなく、静謐を心掛けている。

その演技スタイルは、

一言でいえばシブミだ。

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シェイクの作品を、

撮り続けてきた男にしか、

表現できないサムシングがあった。

シェイクの家族ドラマ映画

とゆう意味でも、

また、シェイクの実話ものでも、

かつてないシェイク映画となった。

17世紀とゆう

電気のない時代を反映した撮り方。

キレルロングショットに加え、

印象に残る長回し撮影の、

シェイク役ブラナーの

クローズアップ・ショットもある。

目も冴える、

田舎の美しき風景描写も

心癒やされるし、

ピアノに乗る

フィメール・ナンバーも優しい。

シェイクのヒューマンドラマ、

そして、家族ドラマとして、

長く記憶に残るような

作品になったと思う。

悲劇や喜劇のシェイク作品との

大いなる違いにも

驚いてもらいたい。
 

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