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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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2019年11月の記事

2019年11月30日 (土)

2019年キネマ旬報ベストテン予想&マイ・ベストテン

キネマ旬報2019年


年間ベストテン予想

と結果報告

☆予想


●日本映画

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①天気の子

②宮本から君へ

③新聞記者

④長いお別れ

 

⑤町田くんの世界

⑥愛がなんだ

⑦蜜蜂と遠雷

⑧タロウのバカ

⑨ひとよ

⑩半世界

次点:火口のふたり

 

●外国映画

 

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①ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(アメリカ)

②運び屋(アメリカ)

③女王陛下のお気にいり(イギリス)

 

④ジョーカー(アメリカ)

⑤グリーンブック(アメリカ)

⑥バーニング 劇場版(韓国)

⑦存在のない子供たち(レバノン)

⑧ROMA/ローマ(アメリカ)

⑨私のちいさなお葬式(ロシア)

 

⑩希望の灯り(ドイツ)

次点:真実(フランス)

●試写室での試写といえば、2019年の分は大がい終わっとりますんで、


ほな、毎年恒例なのか悪評なのかよう分かりまへんけど、


キネ旬ベストテンを予想してみましょか。


ちゅうことで、とりあえず、選んでみました。


いろいろ講釈垂れるよりは、そのまま提示いたします。


あと、試写室での試写のないNetflix作品には、注意が必要かも。


2020年アカデミー賞で、注目される「アイリッシュマン」などは、


2019年公開作品なので、ボクの予想からは外してるけど、


キネ旬に応募される方は、入れておいた方がよろしいかも。



●2020年2月5日付け

 

キネマ旬報2019年年間ベストテン


☆結果と分析

 

●日本映画

 

①火口のふたり

 

②半世界

 

③宮本から君へ

 

④よこがお

 

⑤蜜蜂と遠雷

 

⑥さよならくちびる

 

⑦ひとよ

 

⑧愛がなんだ

 

⑨嵐電

 

⑩旅のおわり世界のはじまり

 

●外国映画

 

①ジョーカー

 

②ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

 

③アイリッシュマン

 

④運び屋

 

⑤グリーンブック

 

⑥家族を想うとき

 

⑦COLD WAR  あの歌、2つの心

 

⑧ROMA/ローマ

 

⑨象は静かに座っている

 

⑩バーニング 劇場版

 

●講評・分析

 

順位は別にして、


邦画5本・洋画6本を当てた
とゆう


的中率約50パーセントとゆう結果。


まあ、大たいこんなもんでしょ。


新人クラスの監督作品の、


邦画⑤洋画⑨は別にして、


従来通りと言えばそうだけど、


洋画でもそうだけど、


かつてベストテンに入った


ことのある監督の作品が、


主流で選択される結果となった。


監督で選ぶとゆうとこもあるんだけど、

 

洋画①や邦画⑧⑨の監督作品は、


キネ旬初ランクインとなった。


もちろん作品勝負ではある。


邦画では、


作品賞全5作中


⑤しかノミネートされなかった、


日本アカデミー賞との大いなる違い、


洋画では、試写の少ない映画への投票が、


今年は、やけに少なかったのが気になった。


試写回数の多いハリウッド映画、


一方でハリウッド映画でも、


試写のない、Netflix作品が2作も入るなど、


ベストテン選択の複雑系を感じた。


すべての作品は、絶対に見られない。


試写の少ない傑作が


投票者の全員に見られることはない。

 


そこに、ベストテンの難しさがあるように、


ボクは思った。

 

 

2019年日本映画・外国映


マイ年間ベストテン

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●日本映画

①宮本から君へ

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②男はつらいよ50 お帰り寅さん

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③長いお別れ

④町田くんの世界

 

⑤半世界

⑥愛がなんだ

⑦盆唄

⑧解放区

⑨ひとよ

⑩よこがお

次点:火口のふたり

 

●外国映画

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①イエスタデイ(アメリカ)

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②運び屋(アメリカ)

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③バーニング 劇場版(韓国)

 

④女王陛下のお気に入り(イギリス)

⑤存在のない子供たち(レバノン)

⑥アマンダと僕(フランス)

⑦幸福路のチー(台湾)

⑧ハッピー・デス・デイ(アメリカ)

⑨希望の灯り(ドイツ)

 

⑩ジョーカー(アメリカ)

次点:エセルとアーネスト(イギリス)

●邦画・洋画に分けた、2019年のマイ年間ベストテンです。


キネ旬のベストテン予想とは、ちょいというか、かなり違います。


むしろキネ旬ベストテンと全く同じような、


ベストテンなんかを出す映画評論家や映画ライターは、


皆無といってよろしいかと思います。


もしキネ旬ベストテン予想に応募される場合は、


いろんな評論家の意見を総合した上で、


自らのこだわりを入れてみれば、当たる確率は高いかと。


とゆうことで、マイ・ベストの詳細は、各作品のマイ・ブログ分析をご参照ください。


さて、2020年のベスト候補


については

マイ・ベストとは関係なく


随時報告いたします。


●年間ベストテン級作品(3月5日時点)

★邦画

○ラストレター

○海辺の映画館

 

★洋画

○パラサイト 半地下の家族

○ロングデイズ・ジャーニー この世の涯てへ

○リチャード・ジュエル

○レ・ミゼラブル

 

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

 

 

2019年11月29日 (金)

台湾アニメ「幸福路のチー」

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台湾から登場したヒロイン・アニメだ

スタジオジブリ・アニメの影響は?

11月29日の金曜日から、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、京都シネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2017年製作の台湾映画111分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒHappiness Road Productions Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

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スタジオジブリを始めとしたジャパニメーションや、

大昔からのディズニー・アニメや、ハリウッド産のアニメ以外に、

みなさん、見てハッとしてグーだった、アニメ作品なんてあるだろうか。

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2009年年末から始めたこのブログでは、

日本・アメリカ以外にはこれまでに、韓国、フランス、フィンランド、イギリスなど、

アジアや欧州のアニメを紹介分析してきたけど、

台湾アニメは初めてとなる。

とゆうか、日米作品以外は、日本で公開されるアニメは、その機会も少なく、

必然的にその他の国の隠れた傑作を、なかなか紹介できないでいるのが現状だ。

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ちなみにボクは、本作で台湾アニメ映画を初めて見た。

少女を描いている点から、宮崎駿アニメの影響があるのかなと思ったが、

大人になったヒロインが、少女時代以降の過去を、

カットバック的に振り返るとゆう構成は、ジブリにもあまりないスタイルだ。

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ヒロインが生きる、1975年から現代までの長い半生の中で、

台湾の国情やらをバックにしながら、彼女の生き方や家族とのキズナが、深々と描かれていく。

今年公開されたイギリス・アニメの「エセルとアーネスト」(2018年)もまた、

国情が主人公たち夫婦の生き方に反映された、いわゆる大河系のノリがあった。

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冒頭のヒロインの少女時代の描写。

運河と夕日に魅かれゆく少女の姿には、

高度経済成長を目前に控えた「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)が見せてくれたような、

ワクワクするような郷愁感があった。

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子供時代の風景も、ボクの時代とオーバーラップしていった。

金髪の少女との付き合い。大人になっての再会など、

ドラマティックを視野に入れた作品作りもいい。

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でもって、特注は家族とのキズナ部だ。

ヒロインはアメリカで結婚していたのだが、祖母の死で祖国・台湾に帰るのだが、

そんな祖母の幻がヒロインの前に現れて、いろいろと指南するのだ。

こういうノリはよくあるけど、決してわざとらしいカンジはしない。

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ジブリやディズニーとは違って、ノスタルジックを表出するためだろうか、

薄イロ配色で終始統一され、目に優しく淡くにじむような色使いになっている。

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グイ・ルンメイが、大人のヒロインの声を吹き込んだ。

グイ・ルンメイ作品は「GF・BF」(2012年)や「薄氷の殺人」(2014年)などを、弊ブログで紹介したけど、

実写で見えるところと、イメージの違うところがないのは、良い点だと思った。

ラストロールで流れる、台湾の人気歌手ジョリン・ツァイが歌う、ギター・スロー・ナンバー「幸福路上/On Happiness Road」は、

しっとりうっとりとして、映画の余韻を深めていた。

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今年の洋画のベストテン級と、いってもいいような仕上がり具合だ。

既に見ただろう、ジブリアニメや「天気の子」なんかと、比較しもって見てみてくだされ。

2019年11月28日 (木)

「THE INFORMER 三秒間の死角」

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潜入捜査の新たなタッチの犯罪映画

北欧舞台がアメリカ舞台へと変換

11月29日のフライデーから、ショウゲートの配給により、TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんばほかで全国ロードショー。

本作は、2019年製作の、イギリス&アメリカ&カナダ合作の113分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒWild Wag films Productions 2018

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潜入捜査・おとり捜査する刑事映画・

犯罪映画・サスペンス・ミステリー映画というのは、

これまでに多数のタイトル数がある。

その種の映画のマイ・ベスト&カルト・スリーを、

その種の新作に合わせて、かつて弊ブログで披露したこともあった。

但し、20世紀後半から21世紀以降は、

単に潜入捜査するだけでは面白くないからか、

いろんな変型バージョンが出てきた。

潜入側と犯罪側が偽りのキズナを結んだけど、

捜査側ジョニー・デップの、最後のアップにグッときた「フェイク」(1997年製作・アメリカ)や、

警察側と犯罪側のおとりがいて、クライマックスで2者が対峙した「インファナル・アフェア」(2002年・香港)は、

マーティン・スコセッシ監督により、ハリウッド・リメイクされ、アカデミー作品賞までを獲得するに到った。

潜入もののピークを示したが、その後も考え抜かれた作品は、

それなりに輩出されたものの、大ヒットや高評価は得られずにいた。

そんな中での、本作の登場である。

二重潜入を描いている。

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アメリカ地方州の女刑事(ロザムンド・パイク)が、

麻薬組織のボスを逮捕するために、

上司(クライヴ・オーウェン)の許可を得て、

密売組織の囚人にして、警察側の情報屋(ジョエル・キナマン)を、

一時釈放して、密売組織に潜入させるのだ。

しかし、ニューヨーク市警も別に潜入捜査で、密かに動いていて、

その潜入刑事が、情報屋のいるところでの、密売現場で敵側に射殺されてしまう。

ニューヨーク市警は黙っちゃいない。

事件の真相を探るべく、新たに刑事に捜査させる。

地方警察と市警が勝手に動いて、未コンタクトというのは、

検挙率世界ナンバーワンの日本でもあり得る話だ。

「グリコ・森永事件」などでは、それが大いに問題視された。

そして、本作はその2つの警察の齟齬具合を含んで、

釈放を約束された主人公が、どのように対応し、敵と向かい合うのか。

しかも、大切な愛しの妻子がいる中で。

ドラマティックで感動的な因子もある。

それをどう活用し、撮っていくのか。

監督・スタッフ・演技陣の魅せどころである。

後半は、刑務所内の麻薬問題へとなる展開。

ロザムンド・パイクは、

代表作「ゴーン・ガール」(2014年・アメリカ・弊ブログ分析済み)チックに、

いつもながらにクールで、あ
んまし好感度はないけど、

まあ、好感を得ようとしているわけじゃないけど、ガンバッテル方やろか。

責任転嫁を図るクライヴ・オーウェンは、悪役側と言っていい。

でもって、ヤッパ一番カッコイイのは、ジョエル・キナマンやろね。

リメイク版「ロボコップ」(2014年・アメリカ・弊ブログ分析済み)もそうだけど、

悲愴感あるヒロイズム役柄を、

あまり感情を示さない、抑制された演技で示していく妙が、素晴らしいと思う。

北欧作家の原作らしいけど、

ミステリー小説で映画化もされた、「ミレニアム」にも似た、

心地よい着地はあるけど、

クールイズムな冷えた感覚が良かった。

2019年11月26日 (火)

「シティハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」

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日本のアニメがフランスで実写化

声優も音楽もノリノリのハイテンション

11月29日のフライデーから、全国ロードショー。

本作は、2019年製作のフランス映画93分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒAxel Films Production - BAF PROD - M6 FILMS

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本作は、日本のアニメが実写化されたフランス映画。

洋画で日本のアニメが、実写化リメイクされるのは、非常に珍しい。

そう、例えば思い出されるのは、今年公開されたポケモンのハリウッド版「名探偵ピカチュウ」(弊ブログ4月30日付けで分析)くらいだ。

しかも、ゲーム原作ではなく、コミック原作のテレビアニメなのだ。

1980年代から1990年代にかけて、高視聴率をマークしたアニメで、劇場版が1989年から1990年にかけて、3作公開されている。

そして、今年、「劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ」が公開されて、オールド・ファンを中心に大ヒットした。
 

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事件屋稼業の冴羽リョウと、何者かに殺されたリョウの友人の妹、槙村香。

この男女コンビが、華麗なアクションで事件を解決するのだが、

本作では、自らに振り掛けると、人を惚れさせるとゆう香水を、探すとゆうトンデモナイお話になっている。

まずは、リョウの好敵手の海坊主との、病院での対決アクションから始まる。

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でもって、海坊主も巻き込みながら、間違って誰かに持っていかれた香水を探して、その調査に加え、

二人は次々に予定外のアクションに、見舞われる羽目になる。

そのアクションも、かなりユニークで斬新な撮り方やら、設定やらをしているのだ。

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敵たちに拘束されたリョウの視点での、敵とのバーサスなどは、

主人公になりきったような、シミュレーション的アクションがシュートする。

3Dなら、もっともっと凄いんじゃないかな。

プロの2人に、素人の2人が加わった、クライマックスの銃撃戦、カーチェイス、カーアクション、逃亡劇など、

アクション・エンタの王道を往く仕上がりだ。

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さらに、リョウと香の間で何度も披露される、ボケとツッコミな会話に加え、

2人の愛もまた、ラブコメ仕様で展開する。

また、R指定はないけど、セクシー・シーンもあったりしてたまらんよ。

加えて、オリジナル・アニメの日本の人気声優陣が、日本語吹替えで参加しているのも面白く、笑いもって見られるスパイスになっている。

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ポップ・ナンバーの、シーンに合わせた使い方も印象的だ。

特に、「トップガン」(1986年・アメリカ)で使われ、全米ナンバーワン・ヒットになった、

女性ボーカル・バンド「ベルリン」の、ため息もののバラード「愛は吐息のように」の流し方は、特筆ものだった。

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ラストロールでは、小室哲哉がリーダーだった3人組「TMネットワーク」の、

紅白歌合戦でも披露した、彼らの最大ヒット曲の、アップビート・ナンバー「GET WILD」が流れてくる。

オリジナル・アニメの主題歌だったんだけど、「愛は吐息のように」に続くこの曲に、アニメを知らない世代の方も、ググッとくるものがあるはず。

何はともあれ、最後の最後まで、ノンストップで楽しめる作品だ。

「ゾンビ[日本初公開復元版]」

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ゾンビ映画の大普及版がリバイバル!

ホラー映画史に残る金字塔だ

11月29日のフライデーから、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作(オリジナル版は1978年製作)の、アメリカ&イタリア合作の115分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.

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ジョージ・A・ロメロ監督が発明したゾンビ映画。

1968年に製作された「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生」(アメリカ映画・モノクロ)が、

監督が撮ったゾンビ映画のルーツ作だが、

その作品は当時未公開だったが、2001年に日本公開され、DVD化もされた。

だから、キャリアにおいては、本作がゾンビ映画第2弾であり、初めてゾンビ映画が日本公開されたのだ。

その公開時のバージョンが、復元されてリバイバルする。

そして、本作こそゾンビ映画の、パブリック・イメージを構築した普及版であり、

映画史に残る怪作なのだ。

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公開年当時、僕は京都の大学生で、本作を2番館・祇園会館の3本立てで見た。

ホラー映画の3本立てで、本作以外には、「サスペリア」(1977年・イタリア)と「エクソシスト」(1973年・アメリカ)だったかと思う。

ゾンビと言っても、次々に銃殺されてしまうんで、怖さとゆう点では、他の2本とは劣っていたけど、

動きがスローリーな人の蘇えりとゆう点で、ユニークで斬新。

吸血鬼ものの変種だと見た。

一方では悲哀度もあった。

滑稽だったけど、何かすぐにやられてまうんで、何やらかわいそうに思われたのだ。

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化け物が出てくるホラーとしては、フランケンシュタイン、オオカミ男、吸血鬼などと比べて見ると、

全ては元人間だけど、ゾンビは最も哀愁感が高いと思う。

モチ、
ホラー映画史に残る金字塔ではあるが、その後の影響度を考えると、吸血鬼と同等、もしくは超えたのではないだろうか。

ゾンビを単に模倣するだけじゃない。

例えば、仕掛けとして機能する、クローズド・サークル・ミステリー映画「屍人荘の殺人」(12月13日全国公開)などへの影響は、すこぶる高い。

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生き残った者たちが、いきなりゾンビ対策を強いられる冒頭から、ノンストップのゾンビ映画アクション、サスペンス、スリリングが展開。

怖さ以上に、そのテンポの良さに、あれよあれよと言う間に、最後までいってしまう。

ドラム・シンセ・パーカッション・ピアノなどで、サイレンのような不協和音が鳴り響き、

最後の方では、バンド・サウンドに乗った暴走族まで登場。

一大決戦が到来する。

ブツ切りカットや、スピードフルなカット割りなど、

怖さまでの不気味な静けさが重宝される、それまでのホラーの概念を覆した作品だ。

2019年11月21日 (木)

「決算!忠臣蔵」⇒週末日本映画劇場

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「忠臣蔵」にかかった予算は、なんぼやねん?

時代劇の定番を揺るがす、トンデモなノリが嬉しいネ

11月22日の金曜日から、松竹の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

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前世紀20世紀の、日本映画の話になるけど、

時代劇映画は、ゴールデンウイークの言葉を作った、日本映画興行界において、大ヒット間違いなしのドル箱であった。

その3大を言えば、本作の「忠臣蔵」もの、戦国時代の合戦もの、あとは赤胴鈴之介・丹下左膳などの剣士ものであろうか。

中でも忠臣蔵は、最も重宝されヒットした、時代劇エピソードである。

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しかし、そんな忠臣蔵だが、金太郎アメのように、おんなじもんをキャストを変えて、作り続けていても仕方がない。

いつの頃からか、飽きられたかは定かではないけども、ちょいと趣向を変えてみようかとゆう作品が、チビチビ出てきた。

その最初は、四谷怪談エピソードを入れた忠臣蔵もの、深作欣二監督が撮った
「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994年製作・松竹映画)だと思うが、

それ以降は、忠臣蔵を変えたろかいなとゆう映画は、なんでか出てこなかった。

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久々にそんな作品が出てきた。
「忠臣蔵」にかかった予算とは? 

どれぐらいかかったんかというよりも、莫大な金がかかるんで、そんな討ち入りなんて、最初はやめとこかちゅう話やったらしいです。

お家お潰しの際も、退職金が減ってまう。何のメリットもなく、忠義という名のプライドだけしかない。

そんなアホらしいのん、やめとこ、やめとこ。

カッコイイヒロイズムな忠臣蔵話が、そんな話へと堕していくなんて、なんちゅうことやねんと、嘆く方もいるだろう。

けど、現実としては、討ち入りはなされとります。

とゆうことで、そこへ行くまでの、スッタモンダやバカバカしさ、丁々発止やらヒロイズム・忠義の在り方やらが、

コミカルに、でもしか、資金の問題もあるので、シビアに描かれていくのであった。

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ここで、かつてもやったけど、日本映画のコミカル時代劇の、マイ・ベスト&カルト・スリーをば、披露してみよりますと…。

●ベスト⇒①幕末太陽傳(1967年・モノクロ)②股旅(1973年)③ジャズ大名(1986年・弊ブログ分析済み)

●カルト⇒①本作②清須会議(2013年・ブログ分析済み)③超高速!参勤交代(2016年・ブログ分析済み)

●時代劇が映画興行の中心になっていた時代は、今や昔だけど、

変型バージョンとなれば、アクション少なく、殺陣演出がない作品が多くなる。

殺陣なしにどう時代劇を魅せるのか。

ベスト・カルトに関わらず、この6作はそれに十二分に応えた上で、時代劇としてのオリジナリティーを示す快作・名作である。

それは、6作を見てもらった上で、それぞれの作品熱に、あおられてほしいと思う。

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「忠臣蔵」映画ファンに対しても、説得力をもたせる作りだし、

「忠臣蔵」初めて体験の人も、面白く楽しく見れるようになっとります。

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変型時代劇は、21世紀以降は、松竹映画が積極的にやってはります。

「武士の家計簿」(2010年・ブログ分析済み)は衝撃的やったけど、

カルト③など、そのベースにあるのは、参勤交代にいくらかかるとか、城の引っ越しにいくらかかるとかの、これまでの時代劇には、全くなかった経済的視点である。

でも、それらの予算の問題を超えたところに、映画のミソがある点など、

この種
の映画には、まだまだネタが潜んでいるように思われる。

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従来の「忠臣蔵」映画と変わらない、オールスター映画にもなっていた。

大石内蔵助役の堤真一の、悩み深きヒロイズムもいいけど、

予算勘定方の岡村隆史の、コミカル抜きのシビアさにも、ウーンと唸れた。

単にコミカルではない。

間違いなく、忠臣蔵映画の本当のところを、示した作品である。

ベトナムのヒロイン映画「第三夫人と髪飾り」

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第三夫人がヒロインの女性映画

19世紀のベトナムの実話がベースに

11月22日の金曜日から、テアトル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作の、ベトナム映画93分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒcopyright Mayfair Pictures.

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一夫多妻制があった、19世紀のベトナムを舞台に、

第一から第三までの夫人の中で、14歳の第三夫人をヒロインにした、哀しき女の物語。

とはいえ、それを悲哀あるカンジでは描いてはいない。

むしろ前向き、かつ抒情的ですらある。

女が虐げられるような映画は、これまでにかなりのタイトル数があるけど、

本作は虐げ系はまるでなく、子作りが重要視され、女たちの争いもほとんどない。

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不思議な映画だ。

しかも、癒し系のノリもある。

美しい自然描写を、まずはポイントとして挙げたい。

花や虫たちのアップや、満月ある空の描写に加え、森や清流など、ココロ洗われるシーンが頻出する。

グリーン・トーンを基調とした色使いや、自然光の使い方など、

欧米の映画では決して見られない、自然を活かした癒やしに、ホッと和めるのだ。

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ベトナム映画とくれば、カンヌやヴェネチアで受賞した、トラン・アン・ユン監督作品など、

世界的に有名になった映画作家がいる。

彼の作品は、やはり自然が豊富なベトナムを活かし、ゆったりした作りになっている。

ヴェネチアで最高賞をゲットした、「シクロ」(1995年製作・フランス&ベトナム&香港合作)は、トンがってはいたけど、最後には静謐や穏和が訪れた。

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そして、本作は、ニューヨーク大学で映画製作を学んで、本作のオリジナル脚本が、教授でもあったスパイク・リー監督の推薦を受け、

映画界に颯爽と登場した、女性監督アッシュ・メイフェア監督作品である。

しかも、前述のトラン・アン・ユン監督が、美術監修を務めている。

加えて、北ベトナムのロケーション場所は、世界遺産に登録された桃源郷のようなところである。

やはり、自然の美しさが際立っているわけだが、

しかし、3人の夫人に扮した女優による、ソフト・タッチのアンサンブル演技もまた、癒やしの領界へといざなうのである。

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ヒロインの出産シーンなどのインパクトもあり、ヒロイン映画の粋で魅せていく。

この種の映画がベトナムから出てきたことは、映画史的にもボクは画期的だと思った。

また、ヒロイン映画の前向き系を、ストレートな「風と共に去りぬ」(1939年・アメリカ)などのスカーレット・オハラとは、

趣きを異にする作りは、斬新以外の何ものでもない。

「愛人/ラマン」(1992年・フランス&イギリス
)の衝撃を、緩和するような、胸がスーッとなるような作品だった。

2019年11月20日 (水)

横山秀夫ミステリー「影踏み」

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山崎まさよしと篠原哲雄監督のコラボレーション
 
横山秀夫ミステリーに挑む!
 
11月15日の金曜日から、テアトル新宿ほかで全国順次のロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「影踏み」製作委員会

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ラブストーリー「月とキャベツ」(1996年製作)以来の、コラボレートとなった、山崎まさよし主演・篠原哲雄監督作品だ。

今回はミステリー映画である。

山崎まさよしは今作で、3度目の映画出演にして主演。

モチ主題歌を提供するというスタイルも、前2作と同様だ。

しかし、ミステリーとゆうのは、想定外ではなかったか。

しかも、横山秀夫原作映画だ。

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横山秀夫原作映画と言えば、本作を含めて、これまでに6作しか映画化されていないが、

「半落ち」(2003年)「クライマーズ・ハイ」(2007年)「64 ロクヨン」(2017年・弊ブログ分析済み)などと、評論家受けの高い傑作がある。

そんな中での、山崎まさよし、探偵役主演である。

ミステリーとなれば、フツーの映画以上に、謎解きを追求するという意味において、

映画的ではなく、ある意味において、難易度は高いと言えるだろう。

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篠原哲雄監督のフィルム・ディスコグラフィーには、ミステリー映画もある。

「木曜組曲」(2002年)は、本格ミステリーの粋を、見せた快作だったが、但し、本作の場合はどうか。

山崎まさよし探偵は、いわゆる聴取部分では、説明セリフもあるので、論理的ではあるけども、少々ぎこちなくも見えた。

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北村匠海を相棒にして聴き込む中で、

刑事役の竹原ピストルとの、相克あるやり取りや、

彼女役の尾野真千子との、静かなやり取り、

事件のキーを握る、中村ゆりへの聴き込みなど、

ハードボイルド調から、足の捜査的刑事調まで、粘っこく魅せてくれている。

母親役・大竹しのぶとの回想部も悪くない。

ただ、やはり、ミステリーとしては、うまく運んでいないように見受けられた。

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「月とキャベツ」に続き、群馬県ロケーション映画である。

上毛新聞の社会部の記者だった、横山秀夫も群馬県とは、大いに関わりがあるし、

関東ながら、本作で背景となる群馬は、全国の地方都市にある問題を、

代表し内包したカンジで、見栄えのする舞台であったかと思う。

「月とキャベツ」とは色合いが違う、山崎まさよしと篠原哲雄監督の、新たな第2弾。

山崎まさよしの、渋いヒューマニズムに酔いたい映画だ。

2019年11月19日 (火)

「ザ・ヒストリー・オブ・シカゴ ナウ・モア・ザン・エヴァー」

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ブラスロックバンドの50年の軌跡

ロックバンド・ドキュの、お手本的仕上がり

11月22日のフライデーから、テアトル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、アメリカ映画114分。

文=音楽分析評論家・宮城正樹

Package Design & Supplementary Material Compilation TM & ⓒ 2016 Fisher Klingenstrin Ventures, LLC. All Rights Reserved.

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1982年、喫茶店の洋楽有線から、突然流れてきたバラードに、ボクは思わず鳥肌が立った。

ピアノをバックにした、メロディアスでキャッチーで感動的なナンバー。

ビートルズの「レット・イット・ビー」に勝るとも劣らない、ウットリの聴きごたえ。

誰の何という歌なのか分からなかったので、ボクはその歌を、レコード店を中心に探し続けた。

いろんな洋楽のアルバムを買ったが、その歌はそれらのレコードには見つけられなかった。

しかし、ビルボードのその年のナンバーワンの軌跡を、テレビで見た時に、遂にその歌を発見した。

衝撃の初聴
より、3カ月くらいかかったかと思う。

その歌とは、シカゴの「素直になれなくて」である。

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収録アルバムは、16枚目の「シカゴ16」。

シカゴについて、ボクは過去を漁った。

ロックにブラスサウンドを、採り入れたブラスロックバンドとして、ウッドストック・シンドロームの、1969年にメジャー・デビュー。

その代表ナンバーの、アップテンポ・ナンバー「長い夜」や「サタデイ・イン・ザ・パーク」が、全米で大ヒット。

「素直になれなくて」のような、メロディアス・バラードではない。

しかし、メンバーたちは、ブラスが弾けるワイルド・ロックこそ、シカゴの持ち味であるとし、これまでの50年を生き抜いてきたと言う。

だが、1976年に、グラミー賞最優秀レコード賞(レコード・オブ・ジ・イヤー)に輝いた「愛ある別れ」は、バラードであった。

そして、その曲や「素直になれなくて」を作曲した、バンドのリード・ボーカルのピーター・セテラは、

バンドの中でも浮いた存在で、1980年代にはバンドを去って、ソロ・アーティストになった。

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そのあたりの経緯は、シカゴのキャリアを描く本作においては、さほど重要ではないみたいだったけど、

でも、ボクはそこがイチバン衝撃的だった。

つまり、ボクが魅かれたナンバーが、シカゴの本領ではなかったとゆう点だ。

当時の時代のトレンドであった「TOTOサウンド」(バンド・サウンドの混成をオーケストラ並みに、スムーズに聴かせたサウンド・プロダクツ)の仕掛け人、

プロデューサーのデヴィッド・フォスターによって、シカゴは1980年代に復活したが、

「シカゴ16」は、シカゴの意に反して、そんなサウンドのオンパレードだった。

シカゴの軌跡を知るとゆう本作は、シカゴ・ファンにしか機能しないように思われるけど、

ロック・サウンドに対する、メンバーそれぞれの想い・考えから、浮かび上がってくるのは、ロックの自在性・自由・フレキシブルである。

ポピュラー・ミュージックで、イチバン人気のあるロックの、気風を普遍的に捉えた本作は、1アーティスト1バンドの、単なるドキュではない。

そのあたりをじっくり見て、自らロックを解き明かしてほしい作品だ。

「殺さない彼と死なない彼女」

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アイドル学園ドラマ映画の変格系の登場

セオリー外す、2パターンのラブストーリー

11月15日の金曜日から、新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019 映画「殺さない彼と死なない彼女」製作委員会

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コミック原作の学園ラブストーリーにして、角川映画的アイドル映画となれば、

ある程度の期待感を持って見られるし、安心して楽しめる。

しかし、本作は大いに違っていた。

いわばアンチアイドル映画とか、アンチ学園ドラマ映画とかのノリが、そこはかとなく感じられる映画になった。

相米慎二監督の学園もの「台風クラブ」(1984年製作)などを、チョイ意識した作品ではなかろうか。

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アイドル学園ドラマらしい、いわゆるラブストーリーは、2パターンで披露されるが、問題なのは、その描き方のフツーじゃないスタイルである。

死にたいと言う彼女(桜井日奈子)と、死にたいなら、俺が殺してやるよと言う彼(間宮祥太朗)のラブ。

そして、片想いだけど、特定の男子生徒に好きだと、言い続ける女子生徒のエピソード。

さらに、女子生徒同士の付き合い(ラブ!?)もある。

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邦画の学園ドラマは、21世紀に入って、かなり変局してきたところがある。

もちろん、ストレートでフツーの学園ラブストーリーは、恒常的に作られているが、

その狭間で、変型にして強烈なインパクトを残すものが作られている。

例えば今年で言えば、年間マイ・ベストテン級だとジャッジした「町田くんの世界」(弊ブログ分析済み)など、

特異なキャラクターを主人公にした、今までにはなかったような学園ラブがある。

でもって、本作もまた、これまでにない、おいおいなキャラが、ラブッてくれる映画となった。

「町田くんの世界」との違いは、そのヒネクレ系のキャラが、前向きか前向きでないかだけで、

一般受けの共感なら、町田くんだろうけど、こちらは少々選ぶかもしれないけど、

しかし、最終的には前向きなんだから、これはこれでOKだよね。

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間宮と桜井のやり取りやセリフは、フツーじゃないけど、

また、間合いの多さや、二人のツーショットに則した長回し撮影など、映画作家的企み演出や撮り方が、少しウーンとなるかもしれないけど、

2人のキャラに合わせた演出で、2人の消極的!?ラブを示すならば、ボクは決して悪くないと思う。

陽光の使い方も柔らかくて、映画に優しい感触をもたらしていた。

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コミック原作映画やアイドル映画や、学園ラブストーリー映画の変格系ながら、

フツーのその種の映画と比べてみると、とっつきにくいかもしれないけど、

んやフツーで大したことないやんと言われるより、こちらの方が映画的に進化していて面白いはずだ。

公開中なんで、今すぐ見に行って確認してみよう。

2019年11月17日 (日)

「いのちスケッチ」⇒日曜邦画劇場

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福岡の“いのちの動物園”を撮り上げた
 
動物たちに関わる人たちの群像劇
 
 
11月15日の金曜日から、全国公開。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「いのちスケッチ」製作委員会

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地方ロケーション映画にして、動物園、そこで働く人々を描いた群像劇である。

その種の映画といえば、「旭山動物園物語」(2008年)とか、

イルカを調教する「ドルフィンブルー」(2007年)などがある。

地方の美しい風景と、動物たちの癒やし。

見ていて和み、いいなーと思える映画なのは間違いないけど、

但しアプローチやコンセプトが、例に上げた2作とは、ビミョーに違う。

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フツーの動物園を描いた「旭山…」とは違い、

本作で描かれる動物園は、動物の健康管理に、気を配る動物園だ。

ライオンから、健康管理のための、血液採取なども行われる。
また、「ドルフィン…」とは違って、昔からある人と動物の交流ではなく、

動物との関わりの中で、関係者がいかに動物たちを、生きながらえさせるのかに、深くこだわった作りになっている。

主演のパート飼育員役・佐藤寛太と、獣医役の藤本泉の間で、

愛や恋やのドラマが展開してもいいのに、あえてそれをやらない作りが、その深みを証明していると言えるだろう。

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東京で漫画家になる夢に、破れた佐藤寛太は、故郷の福岡・大牟田に帰ってくる。

そんな彼は、市の動物園にパート従業員として働き始め、動物園のスタッフらと関わることとなる。

この佐藤寛太の自然体とゆうか、迷いつつも動物たちにハマッてゆくところが、なんか好感があった。

そして、彼にイロイロ言ってくる藤本泉。

獣医としてのスタンスが、きっちりした彼女だが、

その誠実な演技に加え、チョイ乙女コゴロを見せるシーンなんかがあったりして、いいカンジだよ。

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そんな若手二人を支える役には、ベテラン陣がキャスティングされた。

主人公の優しい母役・浅田美代子、

主人公の認知症のオバン役の渡辺美佐子。

でもって、動物園の園長役には、武田鉄矢が配された。

人柄キャラがにじみ出る長ゼリフなど、好感あふれる演技ぶりを披露し、主人公らを勇気づける。

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地方ロケ映画の話題作が、最近はあんましヒットしないけど、

安直なラブストーリーを外したこおゆう映画に、一つの光が射すのかもしれないし、射してほしいとボクは思う。

動物園ドラマの、一つの到達点を示す作品だった。

2019年11月16日 (土)

「ベル・カント~とらわれのアリア~」

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ジュリアン・ムーア・渡辺謙・加瀬亮共演のアメリカ映画
 
テロリストたちと人質たちの交流
 
 
11月15日のフライデーから、TOHOシネマズ梅田ほか、全国公開。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画101分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 BC Pictures LLC All rights reserved.

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1996年に発生した「ペルー日本大使公邸占拠事件」にヒントを得た、アン・パチェットの原作小説の映画化。

なぜこの人質を取ったテロ事件が、小説に書かれ映画になったのか。

それは、テロリストたちと人質たちが、ジュリアン・ムーア演じる、世界的オペラ歌手の歌披露をきっかけに、

2派が交流し、何とカップルまでできたからだろうか。

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テロ映画と相反するラブストーリーが、どのように融合し調和していくのか、そのマジカルなところを楽しみたい作品だ。

戦争し合う者たち始め、収容所や刑務所などのいろんなとこで、敵対する者たちが交流する映画というのは、ドラマティックだし心地いい。

そういう良質の部分が、クローズアップされている

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異国の政府誘致で、雇用促進の工場を作る、日本の実業家(渡辺謙)が、

オペラ歌手のファンだったことから、日本大使公邸でサロン・コンサートが開かれる。

通訳(加瀬亮)も同席した。

そこへ、テロリストたちが襲いかかるのだ。

だが、彼らの標的であった、その国の大統領は直前に欠席していた。

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ここに到り、政府とテロ・グループとの駆け引きが始まる。

さて、ラブストーリーだけど、ジュリアン・ムーアと渡辺謙、加瀬亮と女テロ兵士の間で展開する。

吹替えだけど、ジュリアン・ムーアが歌うスロー・ナンバーは、うっとりしっとり、みんなを癒やす。

伴奏者が銃殺されたので、代打でクリストファー・ランバートが、ピアノをプレイする。

そして、ここから、2組の愛のドラマと、2派の交流が始まるのだ。

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渡辺謙や加瀬亮だが、アカデミー賞女優ジュリアンと、堂々と渡り合っていた。

渡辺謙の剛イメージは柔らいだが、渋くコクある演技ぶりだし、

加瀬亮は、おぼこい素朴なタッチで魅せてくれる。

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ポール・ワイツ監督作品。

「アメリカン・パイ」(1999年製作・アメリカ映画)など、コメディ映画専門系だったのに、

本作では、シリアス・ドラマにアプローチ。

傑作「ジョーカー」(2019年・アメリカ・弊ブログ10月4日付けで分析)の監督が、

それまではコミカル作品で大ヒットを飛ばしていたのに、急変したようなカンジに似ている。

笑えるコメディ快作が撮れる監督は、シビアな作品でも、同じく力を発揮する。

本作は、それを証明した傑作だった。

2019年11月15日 (金)

「i-新聞記者ドキュメント-」

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新聞記者魂とは何なのか?

遊軍の女性記者・望月衣塑子の場合

11月15日の金曜日から、新宿ピカデリー、11月16日の土曜日から、第七藝術劇場、京都シネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2019年製作のドキュメンタリー日本映画114分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「i-新聞記者ドキュメント-」

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新聞記者が主人公の映画は、これまでに多数のタイトル数がある。

ボクなんか、「ローマの休日」(1953年製作・アメリカ映画・モノクロ)の、新聞記者役グレゴリー・ペックに魅せられて、

今はフリーだけど、大卒後、新聞記者になった口だった。

しかし、ボクの就職した新聞社は、まずは新人は校閲・整理部から始まり、

その後適材適所に合わせて、編集部の各部署に人事異動される。

ボクは文化部で映画や音楽を担当し、本作ヒロインの社会部の遊軍記者には、残念ながらなれなかった。

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ヒロインの記者は、東京新聞の社会部記者である。

東京新聞は労働組合が、新聞労働組合連合に加盟している。

組合で青婦部長だったボクの勤める新聞社が、労働争議になった時、新聞労連の三役がいち早く駆けつけてくれた。

それだけではない。傘下の全国の労働組合に、カンパを呼びかけて、一週間で二千万円を集めてくれた。

しかも、三役の書記長が、東京新聞の印刷労働者だった。

本作でも、ヒロインが窮地に陥った時、支援してくれたのは、まず新聞労連だった。

新聞労連と、その支援を受ける東京新聞の記者。

まさに、それだけの因子だけで、ボクはこの映画に没入し、夢中になることとなった。
記者の正義や真実の報道よりも、ボクは「ローマの休日」を見て以来、カッコヨサやヒロイズムに目がいってしまう。

しかし、ドキュ映画の伝えることが、たとえ政治悪・社会悪を暴くことであったとしても、

やはり映画らしいカッコヨサを、少しでも見てみたい。

この女性記者のヒロインぶりには、ゆるぎないヒロイズムがあった。

それは弱きを助け強きをくじく、ヒーローイズムだ。

そのあたりは、辺野古基地移設問題の取材やら、伊藤詩織強姦事件などで、遺憾なく発揮される。

籠池夫妻をインタビューする森友学園問題や、加計学園問題なども取材模様が披露される。

その一方において、ヒーローに似合わない、人間臭いところも、ケッコー披露される。
 
これがこおゆう映画のエエところだす。

ボクらとおんなじ人間なんだと思わせて、みんなに好感を覚えさせるのだ。

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官邸定例記者会見での、彼女の菅官房長官への厳しい質問が、官邸で問題視される事件など、

シビアに突っ込む記者の少なさに、少々残念に思うところもあった。

加えて、本作の森達也監督が、官邸取材に入れない縛りの問題。

表現や報道の自由はあっても、取材の自由はない。

そのへんにも食い入っている点が、ボクは良かったと思う。

2019年11月13日 (水)

イタリア映画「LORO 欲望のイタリア」

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エロおやじ首相の「甘い生活」
 
ダンスとポップでノリノリの映像マジックだ
 
 
11月15日のフライデーから、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都シネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作の、イタリア映画157分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2018 INDIGO FILM PATHE FILMS FRANCE 2 CINEMA

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スキャンダル始め問題が多発していた、実在のイタリアの首相ベルルスコーニを、

華麗なる映像マジックで、ディープインパクトに撮り上げた、政治家ヒューマン・ドラマ。
 
国家のTOPを描いた映画は多数ある。

最近では、コメディ・モードだったが、総理を主人公にした「記憶にございません!」(2019年製作・日本映画・弊ブログ9月15日付けで分析済み)が大ヒットした。

しかし、本作はコミカルじゃなく、またシリアスでもなく、

あくまで映画として、エロおやじ首相をどう描くかにこだわった、映画作家性の高い作品だ。

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首相サイドからは映画は始まらない。

スキャンダルへと導いた、政界外部の者たちが、いかに政治家を掌中に入れて、金儲けしのし上がるのか。

その手法がまずは描かれるのだ。

大統領や首相だけの物語を、ストレートに描く映画がほとんどであるが、

この迂回的アプローチは、映画の内容に裏付けと説得力を、持たせる効果をもたらしている。

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首相役のトニ・セルヴィッロが主役だけども、

政界に取り入ろうと画策する、青年実業家役のリッカルド・スカマルチョが、前半のキーを握っている。

クールでシビア、そしてエロエロ美女たちの利用ぶりの、徹頭徹尾さに目が点になる。

そのエロイズムな波が、首相に襲い掛かってくるわけだ。

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首相の豪邸には、首相夫人がいる。

この役にエレナ・ソフィア・リッチが扮した。

首相以上に特異でクセモノな役柄で、

そこんところを、エロと論理の硬軟両用を駆使しながら、首相をコントロールしていく。

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だが、旅行好きの妻がカンボジアへ行ってる間に、エロおやじ首相はやりたい放題の、放し飼い状態になってしまう。

豪邸でのダンス・パーティーで、その乱痴気騒ぎのピークを迎え、それが暴露されていくのだ。

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ノリノリのポップ・ナンバーがかかりまくってる。

コカイン・パーティーでは、気だるいスローを流したりと、シーンに合わせたサントラ使い。

「イタリア万歳」と歌う女たちのシーンは、ある種の狂気が垣間見えた。

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パオロ・ソレンティーノ監督の新作だ。

「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(2013年・イタリア)でアカデミー賞外国語映画賞に輝いた彼だが、

本作では、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督へのオマージュが、色濃くなった作り。

「甘い生活」(1960年・イタリア&フランス・モノクロ・弊ブログ分析済み)の政界版だし、

ラストシーンでは「8 1/2」(1963年・イタリア・モノクロ・ブログ分析済み)と、シンクロするところもある。

いずれにしても、今年のベストテン級にして、彼の最高傑作となった作品だと、ボクはジャッジしたい。
 
 

2019年11月10日 (日)

「一夜 ひとよ」⇒日曜邦画劇場

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家族ドラマの新次元が描かれる

佐藤健・鈴木亮平・松岡茉優・田中裕子の4人だ

11月8日の金曜日から、ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019「ひとよ」製作委員会

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先週の日曜邦画劇場「最初の晩餐」(2019年製作)のところでも書いたんだけど、

日本映画の古来より存在する家族映画とは、違ったタイプの家族映画が、21世紀以降にかしましく出てきている。

この種の変型家族映画は、「家族ゲーム」(1983年製作)とか「逆噴射家族」(1984年)とか、「木村家の人びと」(1988年)とか、

松竹系のマットーな家族映画に背を向けた、映画作家陣たちが、意図的に作り出してきたものである。

と、ボクは分析する。

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その変型家族ものの最新傑作「万引き家族」(2018年)を始め、

それ以降もイロイロと出てきているが、本作は中でも出色の作りを施した、新次元の家族映画である。

疑似家族とかではなく、全員血族の家族である。

両親とコドモたち兄姉弟の、家族映画である。

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3人のコドモたちに虐待を繰り返す夫を、ある日、妻(田中裕子)は、コドモたちを守るために殺してしまう。

で、幼いコドモらにそのことを報告し、自首するのである。

このイントロから、複雑にして難渋な、家族のドラマが展開していく。

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大人になって3人のコドモは?

吃音の長兄役の鈴木亮平は、家業のタクシー会社を引き継ぎ、

小説家志望だった次男役の佐藤健は、東京に出てライターに、

長女役の松岡茉優は、美容師の夢を見つつも、スナックでバイトしていた。

そんなところへ、母が刑期を終えて出所し、彼らの元に帰ってきた。

3人の母への接し方がかなり違ってくる。

そのあたりの演出や演技ぶりが、見事な説得力を有していた。

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モチ、母なる田中裕子の演技は、最も難易度が高い。

素直に泣いて喜ぶ松岡茉優は、ストレートだけど、2人の兄弟の対応に悩む。

特に、母のことを記事にする佐藤健の演技は、複雑さとビミョーさが要求される。

そして、鈴木亮平の素朴さは、家族間を融和させる効果があり、茉優以上に、癒やしやキズナを示していたかと思う。

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そんな中で、ドラマ映えする対立ポイントは、やはり佐藤健と田中裕子の母と子の問題だ。

さらに、家族の関係性の中に、佐々木蔵之介が関わることで、

物語はより輻湊化していくこととなる。

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白石和彌監督初の家族映画である。

しかし、初ものから、先鋭化した家族のキズナが描かれた。

問題のある家族のキズナを、映画的に捉えるためには?

その指標を見せられたような作品だった。

2019年11月 8日 (金)

貫地谷しほり主演「夕陽のあと」

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貫地谷しほり・山田真歩の母なる対決だ
 
地方ロケ映画の熟成ぶりを示す快作
 
 
11月8日の金曜日から、新宿シネマカリテ、ほか全国順次のロードショー。

本作は2019年製作の日本映画133分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019 長島大陸映画実行委員会

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母は強しなんて映画は、「母」(1926年製作・ソ連映画)「大地」(1937年・アメリカ)などの戦前から、

母映画とゆうくらい、洋画・邦画関わらず綿々と作られ続けている。

そんな中で、産みの母役(貫地谷しほり)と、育ての母役(山田真歩)の、母なる対決がストレートに、描かれるのが本作である。

この種の映画は、よくありそうでなさそうな映画設定だと思う。
 

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その場合、重要になってくるのは、2人の母の演技だけではなく、

子役(松原豊和)の演技ぶりに加え、義父役(永井大)義祖母役(木内みどり)らの、サポート演技だと思う。

越川道夫監督はスキだけども、役者陣の演技ぶりが、映画の出来を左右する作品であろうか。

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冒頭から、貫地谷しほりの黙々の横顔アップが披露される。

子役がジャカジャカやったあとのこの沈黙演技は、作品的にも意味深だ。

そこんところを淡々と演じたあと、実の母はゆっくりと、実の母の本性を露わにしてゆく。

そのあたりの演技ぶりは、監督の演出によるものか、役者の演技作りによるものかは定かではないが、

作品性において、見事な演技ぶりであった。

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本当の母になる申請をしてる、山田真歩の複雑な演技ぶりも、ドラマの行方を左右する重要な演技だ。

貫地谷しほりよりも、よりハードルの高い演技ではなかろうか。

そこんとこを気負いなく、感情を爆発させそうになるとこもあるけど、

抑制の効かせた演技ぶりで、ウーンと渋くうならせてくれた。今年の邦画の演技賞ものかもしれない。

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鹿児島ロケ映画である。

地方ロケ映画は20世紀にも、いっぱいあったんだけど、地方ロケーション・システムが整った21世紀以降は、

邦画の一ジャンルを形成するものとして、大衆から歓迎されたかと思う。

しかし、むしろ整いました以降の方が、逆にプレッシャーとなったのか、地方ロケ映画は多作されつつも、傑作はあまり出ず、

完成したけど公開することなく、お蔵入りする映画も、かなり出てきていた。

地方らしい風景描写がいいとか、本作のように頻出する、夕景シーンとかは、もはや形骸化もしくは、そんなんフツーやんとゆう風に思われている。

そおゆうところには、もはや観客の目はゆかない。

但し、本作はそおゆう地方映画色を取り込みつつも、よくありそうであまりなさそうな新世界へと、踏み込んだ作品なのである。そこんところは間違いない。

とゆうことで、地方映画の熟成を示す快作だ。

サイコ・サスペンス「グレタ GRETA」

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オトロシーおばはんの狂気節だ

ストーカー系のサイコ・サスペンス

11月8日のフライデーから、大阪ステーションシティシネマほかでロードショー。

本作は、2018年製作の、アイルランド・アメリカ合作の98分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒWidow Movie, LLC and Showbox 2018. All Rights Reserved.

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おばはん(イザベル・ユペール)が、対象者(クロエ・グレース・モレッツ)をストーカーして、

遂には拉致監禁へと悪化するタイプの、オトロシー映画である。

これまでに出てきたその種の、怖~いストーク監禁洋画の、マイ・ベスト・ファイブを順不同で披露してみると…。

全てアメリカ映画になってしもた。

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①危険な情事(1987年製作)

②ミザリー(1990年)

③ルーム(2014年)

④コレクター(1965年)

⑤本作

●③④など、男が女を監禁タイプはオーソドックスだけど、やはりサスペンス度は高い。

むしろ女がストーカーで監禁する側に回ると、サスペンス・スリラーよりも、よりホラー系の危ない度合いが増すようだ。

オトロシーさは、男よりもメッチャ高いのだ。

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不倫相手にしつこく付きまとう①、

好きな男性小説家を監禁する②、

そして、本作は擬似娘を、仮想母のおばはんがストークし、やがては監禁するとゆうお話だ。

男に付きまとうのはよくあるけど、女が同性をストークするのは珍しく、

しかも、おばはんとゆうのが強烈な印象があり、ほんでまた異常に恐ろしいものがある。

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夫と娘を亡くして独り身の、そんなおばはん役に、名女優イザベル・ユペールが演じた。

「ピアニスト」(2001年・フランス&オーストリア)以来、狂気を見せる演技には、定評がある彼女。

ホラー映画なんかでそ
れをやったら、そらもう、背筋が寒々しくなること、間違いなしやろけど、本作ではそこんところが、実現したと言っていい。

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彼女のエジキになる気の毒な女優は、「キック・アス」(2010年)のアクションぶりとは真逆の、ヤワなクロエ・グレース・モレッツ。

恐ろしい目に遭う彼女の演技ぶりは、ホラー映画の怖がるヒロインの理想像に近い。

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リストのクラシック・ピアノ曲が、大きなイントネーションとなる。

スタンダードなジャズ・ボーカル・ナンバーを、流しての冒頭なども、意味深な伏線シーンとなっている。

ドラマとサントラ使いが、巧妙にマッチングした映画だった。

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監督は、ヒューマン・サスペンスの傑作「クライング・ゲーム」(1992年・イギリス)が、代表作のニール・ジョーダン。

「クライング…」では、暗殺者女子(!?)の存在感が、ドラマを揺るがしたが、

本作では、やはりイザベルおばはんが、突出して目立つキャラだ。

彼女には今後も、こうしたエンタ作品で、観客が凍りつくような、冷え冷えとしたキャラクターを、見せてほしいと思う。

2019年11月 6日 (水)

「アルツハイマーと僕~グレン・キャンベル 音楽の奇跡~」

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グレン・キャンベルの音楽スピリッツを描く
音楽映画ドキュにして家族映画ドキュだ

11月8日のフライデーから、テアトル梅田で、11月16日から京都シネマで、全国順次のロードショー。

本作は、2014年製作のアメリカ映画104分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2014 GC Documentary, LLC. All Rights Reserved.

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グレン・キャンベルの音楽ジャンルは、カントリーである。

ボクが音楽雑誌の編集長をしていた頃の話だが、

彼を紹介する時には、カントリーではなくロックだと書いてくれと、レコード会社から言われたことがあった。

当時も今も、カントリー・ミュージックは、アメリカの国家的・国民的ポピュラー音楽であるが、

但し日本では、ほとんど売れなかった。日本では、ロックは売れるがカントリーは売れないとゆう事情が、レコード会社に、そんな風に言わせたのである。

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しかし、アメリカでは、日本で何と言われようと、メガヒットを飛ばし続けている、グレン・キャンベル。

カントリーでも、バラードやブルース・フレイバーなど、ココロの琴線に触れてくるところが多々あり、ボクはカントリーの言葉を書き連ねながら、そこのところを強調した。

グレンはアメリカの国民的ミュージシャンである。

そのジャンルを変えて紹介することは、彼を冒涜するに等しい。

ボクのレコード評は、決して良くなかったかもしれない。

レコ評とかよりも以前に、彼の歌は日本ではさっぱりだったとしても、アメリカ国内では大ヒットした。

彼は偉大なるミスター・アメリカンと、言えるくらいのアーティストなのである。

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そんなグレンが、アルツハイマー病を公表した。

しかし、それでもレコーディングし、全国ツアーにまで出たのである。

驚き以外の何ものでもない。

何度目かの妻をマネージャーに、異母の3人の子供たちをバックに従えて、堂々たるギターとボーカルを披露するのである。

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そのツアー模様を中心に伝える、音楽ドキュメンタリーが本作だ。

時々危ないなとゆうとこはあるけども、アルツハイマーなのに、正確無比な演奏テクとボーカル表現力は、もはや体が完璧に覚えているとしか言えないだろう。

まさにディープ・インパクトものだ。

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シェリル・クロウ、ブルース・スプリングスティーン、テイラー・スフィフトらのリスペクトある発言シーンのほかに、

グラミー賞の楽屋裏に、ポール・マッカートニーが訪れたりの、シーンが挿入される。

認知症公表後のみんなの発言だけに、よりリアリスティック度や説得度合いの高いものとなっている。

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加えて、家族たちへのインタビューによって、さらに、グレンの音楽スピリッツの深層度が、分かるようになっている。

そして、家族のキズナだ。

音楽ドキュで家族の絆を描くのは、並み大抵のことではない。

だが、シチュエーションが功を奏したのだろう。

本作は家族映画としても秀逸な、ドキュになっているとボクは思う。

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夫婦の語らいの妙味、娘さんとの共演など、

ココロに残るシークエンス多々の映画であった。

2019年11月 5日 (火)

「マイ・フーリッシュ・ハート」⇒音楽ミステリー

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実在のミュージシャンの謎に挑む

ジャズトランぺッター、チェット・ベイカーの死

11月8日のフライデーから、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、テアトル梅田ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2018年製作のオランダ映画87分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2018 (PUPKIN)-VPRO

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実在のミュージシャン、ジャズトランぺッター、チェット・ベイカーの、自殺の謎に迫ったドラマ映画。

実在のミュージシャン・ドラマは、ケッコータイトル数がある。

最近では、エルトン・ジョンの「ロケットマン」(弊ブログ8月21日付けで分析)などが公開された。

ビートルズの曲の素晴らしさと、ラブ・コメディを合体させた「イエスタデイ」(10月10日付け)など、進化型の音楽映画もある。

ドキュメンタリーを含むと毎年、ミュージシャン映画は10本近く公開される。

そんな1本が本作である。

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ミュージシャンのキャリアや人生を、描く映画ではない。

自殺したらしいチャット・ベイカーの死の謎に、刑事が挑むとゆうミステリー・タッチで、映画は進行していく。

チェットの近過去と刑事の捜査が、カットバック的に織り込まれていく。

刑事映画やミステリー映画に特有の、謎解きの面白さやサスペンスある映画となった。

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チェットのライヴやレコーディング・シーンなど、音楽映画に欠かせないシーンを取り込みつつ、チェットの人間性に食い入っていく。

特に、負の部分の描写が圧巻だ。

総じてダークな撮り方を、意識的にしていて、主人公の孤独やネクラぶりが、胸にクルような作りになっている。

薬物の過剰摂取やら、借金がかさんで取り立て屋に追われたり、彼女との仲が破局へと進んだりと、問題が山積。

身につまされるようなシーンが続く。

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チェット役になったスティーヴ・ウォール。

アイルランドのロックバンド「The Walls」のリードボーカルだ。

ロッカーでもある彼の、その暗みある演技性は、特筆すべきものを示している。

チェットと同化して、刑事が真相に到達するシーンは、ある種のサプライズがあった。

ミステリーとしての粋を見せていくのだ。

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とはいえ、音楽映画としての側面もある。

ジャズ・トランペットの哀愁、チェットの若い頃の演奏ぶり、歌もののトランペット・ナンバー、

トランペットが流れる中での、彼女とのキス・シーンなど、

トランペットをメインにしたサントラ使いが、ドラマの陰影と深みを創り出していた。

久々に見たオランダ映画のシブミに、ボクは酔った。

韓国映画「国家が破産する日」

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国家の経済危機を描く映画

破たん危機から、いかに脱却したのか

11月8日のフライデーから、ツインの配給により、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかで、全国順次のロードショー。

本作は2018年製作の韓国映画114分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2018 ZIP CINEMA. CJ ENM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED

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ラブストーリーから始まった韓流ブームが、今や様変わりしている。

韓国映画的には、「シュリ」(1999年製作)「JSA」(2000年)など、韓国特有の国家的・社会的問題を描いた作品が、

韓流ブーム前から、日本でヒットしていたけども、その当時の危機管理なイメージのシリアス映画が、このところ登場してきている。

そして、映画ファンを興奮させている。

実話をベースにした映画が、多いのも特徴的だ。

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本作は1997年の、韓国の経済危機・破綻を、もたらしかねない通貨危機を、真っ向から描いた映画である。

冒頭からセリフの中に、経済専門用語が頻出。

ハンパない経済映画の在り方を提示する。

ここでチンプンカンプンになりかねないけど、ググッと我慢して、じっくり見ていってもらいたい。

経済に無知でも、銀行破綻を回避する「金融腐蝕列島 呪縛」(1999年・日本映画)とか、

「ウォール街」(1987年・アメリカ)などを、見るノリで見ていくと、だんだんと面白くなっていくハズだよ。

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通貨危機に対応する、韓国銀行の通貨政策チーム長ヒロイン役に、キム・ヘスが扮する。

政府とのやり取りで秘書だとなめられるが、彼女の、堂々たる理論派行動ぶりや発言ぶりは、本作をピリッとさせ、

アップも多く、アクションとは違う、ヒロイン映画の理知的映画の粋を見せていく。

経済危機で金儲けをたくらむ、金融コンサルタント役のユ・アイン。

金融危機で倒産する百貨店と、取引する工場経営者役のホ・ジュノ。

この3人3場を、短カットでスリリングにカットバックし、やがてキム・ヘス・サイドへとフォーカスしていく作りが、サスペンスに満ちている。

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ヒロインらが交渉するIMF専務理事役には、フランスの名優、ヴァンサン・カッセルが演じた。

クールなシブミに魅せられ、
ヒロインとの交渉ぶりは、見どころの一つとなっている。

室内シーンが多いが、退屈感は全くなく、薄グリーン・トーンの色彩感も、渋くて良かった。

加えて、サプライズも用意されている。

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恋愛絡みや、家族などの絆ものが、いっさいないとゆう韓国映画だが、

ドラマとは全く違う、韓国映画のシリアスに魅せられてください。

とゆうか、韓国映画の傑作・名作は、ほとんどがシリアス・モードだけどね。

南北問題入りの作品を含め、これが韓国映画の韓国映画たるところでしょう。

必見!

2019年11月 3日 (日)

「最初の晩餐」⇒日曜邦画劇場

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父のお葬式に集う家族映画

染谷将太・戸田恵梨香・窪塚洋介・斉藤由貴・永瀬正敏

5人家族の今

11月1日の金曜日から、KADOKAWAの配給により、全国ロードショー。

本作は2019年製作の日本映画127分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019『最初の晩餐』製作委員会

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冠婚葬祭のお葬式映画は、外国映画にもあるにはあるが、本格的なのはあんましない。

そんなお葬式入り日本映画の、マイ・ベスト・ファイブを、順不同で披露してみよう。

①お葬式(1984年製作)

②おくりびと(2009年)

③寝ずの番(2007年)

④本作

⑤蛇イチゴ(2002年)

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●葬式のノウハウを含めた家族ドラマ①は、この種の映画の雛型になったし、

②などは世界に通用する、葬式人間ドラマ映画として名作になった。

以下は、コミカル・モードで描いた③、

④⑤は、お葬式以上に家族ドラマにシフトした、家族のキズナを問う映画である。

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子持ちの再婚同士で、2つの家族が一つになった家族の、その父親(永瀬正敏)の葬式に、親戚一同が集うとゆう設定だ。

染谷将太・戸田恵梨香(父方の姉・弟)、窪塚洋介(母方の息子・3人の中では長兄に当たる)、母役・斉藤由貴らが、大人になった家族である。

長兄は早くに家を出て、今は所在不明。

染谷はカメラマンとして自立。

戸田は嫁いで、今は両親2人が家を守っていた。

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過去の家族の回想シーンを、タイトに挿入しながら、奇妙なお葬式が進行していく。

その奇妙さとは、通夜ぶるまいの弁当をやめて、亡き父の遺言により、何と母の自家製で食を提供するとゆうのだ。

そして、最初にふるまわれたのが、何とまあ、目玉焼きだ。

意表を衝くこのシーンから、風変わりだけど、食やらを通じて、過去に家族が一つにまとまっていく過程が、出される料理と共に紡がれていくのだ。

ウーン、このあたりの展開は、鎮魂映画としての新味を示す、流れと言えるだろうか。

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ココロの呟きをナレーションする、染谷将太のガイダンスのもと、

家族のキズナの物語は展開していく。

朝ドラ主演で今や旬の女優、戸田恵梨香の好感、

久々に見た窪塚洋介の毅然、

謎めきを見せる斉藤由貴・永瀬正敏の演技など、

静かな中に、家族のキズナのもろさやゆるさ、でも、それでもとゆうところが、見え隠れしていく。

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最近は「万引き家族」(2018年)など、従来の日本映画のフォーマットな家族映画とは、違ったタイプが作られている。

しかし、いかに変型とはいえ、その底にあるのは、憎しみ合ったとしても、わずかであっても、キズナであってほしい。

そこにこだわった本作を、ボクは支持したいと思う。

2019年11月 2日 (土)

11月1日時点の暫定年間マイ・ベストテン


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●「男はつらいよ 50 お帰り 寅さん」

(渥美清・吉岡秀隆・倍賞智恵子・後藤久美子・前田吟・池脇千鶴・夏木マリ・浅丘ルリ子・桜田ひより・ほか出演/監督:山田洋次/12月27日公開)


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●「LORO(ローロ)欲望のイタリア」(トニ・セルヴィッロ主演/パオロ・ソレンティーノ監督/11月15日全国順次公開)

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●「幸福路のチー」(グイ・ルンメイ声の出演/ソン・シンイン監督/11月29日全国順次公開)

●日本映画

①長いお別れ

②宮本から君へ

③町田くんの世界

④男はつらいよ 50 お帰り 寅さん

 

⑤半世界

⑥愛がなんだ

⑦盆唄

⑧タロウのバカ

⑨火口のふたり

⑩ワイルドツアー

 

●外国映画

①バーニング 劇場版(韓国)

②運び屋(アメリカ)

③イエスタデイ(アメリカ)

 

④女王陛下のお気にいり(イギリス)

⑤LORO(ローロ) 欲望のイタリア(イタリア)

⑥ブラック・クランズマン(アメリカ)

⑦存在のない子供たち(レバノン)

⑧アマンダと僕(フランス)

⑧ホームステイ ボクと僕の100日間(タイ・10月6日公開)

 

⑧幸福路のチー(台湾)

⑧ジョーカー(アメリカ/ホアキン・フェニックス主演/10月4日・日米同時公開)

⑧ハッピー・デス・デイ(アメリカ)

⑧希望の灯り(ドイツ)

●暫定年間マイ・ベストテンです。

チラシ画像と情報と青文字で入れた3作が、この10月に見たベストテン級作品です。


洋画の下位作品は8位同率になってますが、決してその位置にある作品ではなく、上がったり下がったりすると、フレキシブルに見てくだされ。


「男はつらいよ」は、寅さんのシーンが、過去のものであることは明らかなのですが、


主人公役・吉岡秀隆の回想シーンの中で、感動的なプレイバックがなされ、ドラマティックな作りになっています。


この調子でいけば、シリーズはまだまだ続くかも。

 

洋画に移りますと、「LORO欲望のイタリア」は、エロ好き政治家のヒューマン・ドラマで「甘い生活」(1960年製作・イタリア&フランス・モノクロ)の総理大臣版。


変幻自在の魔力的な映像に魅せられます。


台湾アニメの「幸福路のチー」。


宮崎駿アニメによく出てくるような少女ヒロインが、大人になってとゆうようなスタイルですが、あくまで現実に根ざした作りが心地よい。


3作共、後日に紹介分析いたします。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

2019年11月 1日 (金)

ジャニーズ映画「ブラック校則」

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ジャニーズの2人が主演した学園ドラマ

Sexy Zoneの佐藤勝利と、King & Princeの高橋海人

 
11月1日の金曜日から、松竹の配給により全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019日本テレビ/ジェイ・ストーム

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ジャニーズ俳優主演映画とゆうのは、今や日本映画の1ジャンルになったと言えるのではないか。
とゆうか、邦画ヒットのトレンドになっている。

これまで、そんなジャニーズ映画の、歴代マイ・ベスト&カルト・スリーなるものを、何度か披露してきた。

ここで新たにやってみるか。

でも、キムタク・岡田准一、元ジャニーズの郷ひろみやらの傑作は、ソロ作としてそれだけで、ベスト&カルトができてまうので省いとります。

●ベスト⇒①ロックよ、静かに流れよ(1988年製作)

②シュート!(1994年)

③黄色い涙(2007年)

●カルト⇒①本作

②少年たち(2019年・弊ブログ分析済み)

③ハイティーン・ブギ(1982年)

●ベストはグループ全員出演ものにした。

男闘呼組の友情映画①、SMAPのサッカー・スポ根映画②、嵐の共同生活友情もの③。

グループ・メンバー総出演は、仲間のキズナが大きなポイントになっている。

けれど、ジャニーズ・アイドルを、映画界に進出させようとする、カルト作品もまた、キズナが重要なテーマになっている。

たのきんトリオのカルト③、故ジャニーズ喜多川氏が、ミュージカルへの想いを込め続けた②では、ジャニーズの新進アイドルたちが勢ぞろいし、思いのたけを踊って歌った。

そして、本作だ。

Sexy Zoneの佐藤勝利と、King & Princeの高橋海人。

ジャニーズ所属の違うグループの2人が共演し、学園ドラマの好感度ある正義派側として登場。

悪役とも言える、教師・校長・追随する生徒たちと対峙するのだ。

でもって、校則違反と出席日数不足で、退学させられそうになるヒロイン(モトーラ世理奈)のために、頑張るのであった。

学園ラブもあり、コミカル・モードもある。

カルト③の近藤真彦・田原俊彦・野村義男のイメージもある、2人の演技ぶりこそが、大いなる見どころとなる映画である。

元アイドル女優の薬師丸ひろ子、マジ・のほほんな成海璃子、ワル教師ぶりを思う存分披露する星田英利、ビミョーなワル校長ぶりをぶっきら披露するでんでんら。

ベテラン陣の脇役ぶりもまた、2人を盛り立てていたように思う。

何はともあれ、たのきんトリオの3人と、遜色ない2人の演技に注目して、デレデレになってもらいたい。

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