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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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2019年9月の記事

2019年9月27日 (金)

「宮本から君へ」⇒池松壮亮・蒼井優共演

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池松壮亮の熱血と蒼井優の激烈が絡む

男のプライドを懸けたラブストーリーだ

9月27日の金曜日から、全国ロードショー。

本作は、2019年製作の日本映画129分。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019「宮本から君へ」製作委員会

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本作は今や日本映画界のトレンドになっている、テレビドラマの劇場版にしてコミック原作映画だ。

しかし、その種のどちらにもない、過激かつ熱血、そして激烈ぶりが、胸を激しく打つ作品になっている。

そして、コミック原作にしても、20世紀に発表された(完結したのが21世紀も含む)コミックだということ。

「釣りバカ日誌」や「ALWAYS」など、コミック原作映画には、続編やシリーズ化がよくあるが、

そういうのを除いて、20世紀コミック原作映画・日本映画の、単体作品マイ・ベスト・ファイブを、順不同にて披露してみよう。

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①本作②翔んだカップル(1980年)③少年時代(1990年)④プーサン(1953年)⑤ピンポン(2002年)

●スポ根ものからは⑤、ラブコメからは②、シリアスな少年少女ものからは③。

でもって、サラリーマンものでは、ペーソスな④と熱血な①と、正反対のベクトルになった作品を選んだ。

コミック原作に映える②⑤もそうだが、リアリティーを重視した③④以外は、キャラクター設定が大きな見どころとなっている。

アメコミとは違う、人間臭い性格付けで、しかも、そのへんにはあんましいない、異能なタイプのキャラクターだ。

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本作の大注目は、主演の池松壮亮と蒼井優だ。

「24時間戦えますか」などのCMコピーもあった時代の、熱血サラリーマン宮本役の池松は、

宮本キャラのファンで「デ・ニーロ」アプローチ(ロバート・デ・ニーロの手法)並みに、宮本を徹底研究、なり切り型のハンパない演技で魅せる。

今回は営業マンとしてではない。

蒼井優に恋する男の、究極のプライドが試されるのだ。

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取引先の部長(ピエール瀧)の息子(一ノ瀬ワタル)に、男のプライドを痛く傷つけられた宮本・池松。

池松は一大決意し、リベンジと男の矜持を胸に、させに蒼井優の信頼を得るために、一ノ瀬に闘いを挑む。

現実では、一ノ瀬はプロの格闘家だった。だから、どうあがいても勝てる相手じゃない。

しかし、宮本は「絶対勝たなければならないケンカ」と位置付け、無謀な闘いに挑んでゆく。

歯を、指を、折られようが、 悲愴でがむしゃらで、熱量全開の池松の演技は、凄まじい限りだ。

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片や、蒼井優。

異様なエキセントリックとは違う、真っ当な感情の流れからくる激白・激烈ぶり演技は、

いつ見ても席から前のめりになり、クギ付けになる。

濡れ場シーンも、これまで以上にあっと言わせる。

「長いお別れ」(2019年・弊ブログ分析済み)とは対極にある、汚れ演技と言っていいだろう。

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宮本が主人公だからではないだろうが、宮本浩次の熱唱ストレート・ロック「Do you remember?」がラストロールで流れる。

本作の結末にピッタリの、シメのナンバーだった。

真利子哲也監督の新作。

とことんな暴力・野蛮人間を創出した「ディストラクション・ベイビーズ」(2016年・弊ブログ分析済み)に続き、

本作のリーマンの、未知なる闘争心を引き出した。

凡百のラブストーリーを超えた、男のプライドの示し方、愛の示し方に酔える。

言うまでもなく、今年のマイ・ベストスリー級の日本映画だ。

2019年9月25日 (水)

「ヘルボーイ」⇒アメコミ原作映画

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アメコミ原作のダーク・ヒーローの再登場

「バイオハザード」ミラ・ジョヴォヴィッチとの対決だ
9月27日のフライデーから、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条ほか、全国ロードショー。
本作は、2019年製作のアメリカ映画120分。「R-15+」指定映画。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2019 HB PRODUCTIONS, INC.

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アメコミ原作映画とくれば、

「アベンジャーズ」を始め、「スーパーマン」「スパイダーマン」「バットマン」など、

変身系ヒロイズムをポイントに、今や映画の一ジャンルになった。

そんな中で、ビジュアル見栄えが野獣な、ダークヒーローも存在する。

「アベンジャーズ」のハルクなんかも、その好例だけど、

本作の「ヘルボーイ」は、ハルク以上に、異彩と化け物感を際立たせている。


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ヘルボーイ主演の映画は、本作より以前に2作作られている。

ギレルモ・デル・トロ監督の「ヘルボーイ」(2004年・2008年・アメリカ)2作だ。

本作はその2作以降に作られた、新たな「ヘルボーイ」主演の映画である。

前作はヘルボーイとは何者ぞな、紹介編なところがあったが、

本作はそのままストレートに、超常現象捜査官としての、

ヘルボーイの世界へと入っていく作りだ。

主人公と敵対する相手と、1対1対決へと持っていく、

オーソドックスだけどスリルに満ちた、対決アクション映画になった。


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彼の相手は、ミラ・ジョヴォヴィッチ。

アメコミ映画と同様に1ジャンルになってる、ゲーム原作映画の、

最高作とも取れる「バイオハザード」(シリーズ第1弾は2002年)で、

正義派のヒロインを演じ続けた彼女だが、

今作では、ダークヒーロー以上にダークな悪役を、強烈に演じてみせた。

冒頭での魔女役のミラだけをカラーにした、モノクロ・カットから、


ディープなインパクトを見せる。

何しろ彼女は、首を斬られるのだから。

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ヘルボーイ(デヴィッド・ハーバー)は、いろんな命がけのミッションを経て、

3人(あとの2人は、ダニエル・デイ・キムとアリス・モナハン)でチームを組んで、悪と対決していく。

ヘルボーイに指示する教授(イアン・マクシェーン)のエエ加減さに、ホンマいろんな危機に遭っていたけど、

何とかかんとかクリアーし、3人との共同で、ミラとの対決へと、挑んでゆくのでありました。

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アーサー王最後の子孫とか、悪魔とナチスのコドモとか、ヘルボーイの予想外の出自を見せながらも、

主人公が敵と対決するやむなき姿勢や、アクションぶりには、好感や爽快感があった。

ブサイクでワイルドな主人公だけど、キャラクターの特異性は、アメコミ随一の仕上がりぶりだろう。

「アベンジャーズ」シリーズに突如出演したら、メッチャオモロイかもね。

しかし、本作そのものも、次へ続くような終わり方をしているので、シリーズ化が期待できそうだ。

2019年9月20日 (金)

京都舞台アニメ「HELLO WORLD」

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京都アニメーションへのリスペクトある作品

京都舞台映画初の近未来型だ

9月20日の金曜日から、全国ロードショー。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2019「HELLO WORLD」製作委員会

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ヒロインを救うとゆう、過去改ざん系リセットなアニメ映画。

過去を変える映画と言えば、21世紀になって以降、イロイロ出てきたけど、

アニメで有名なのは、大ヒットした「君の名は。」(2016年・弊ブログ分析済み)だろう。

アニメ版「時をかける少女」(2006年)にも、そんなスパイスがあったよね。

そして、本作は「君の名は。」と同じく、ラブストーリーが、大きなキー・ポイントを握っている。

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京都が舞台だ。

それだけで、京都アニメーションを想起させるが、

京アニの代表傑作「けいおん!」の、堀口悠紀子がキャラクター・デザインを担当していたりと、

スタッフ的にも京アニへのリスペクトがある。

しかも、京都舞台でも、2027年を現在位置にして、10年後の2037年の未来も描くとゆう、近未来型のSF映画になっている。

ボクの記憶では、京都舞台映画多しといえど、現在や過去より、未来を舞台にした映画は、見たことがない。

しかも、イロイロあるけれど、最終的には、希望に満ちた映画になっている。

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2027年。内省的な主人公・直実(声:北村匠海)は、通う高校で、2人の女生徒にどぎまぎしてるけど、

ある日、10年後の未来からやって来たとゆう、自分自身・ナオミ(声:松坂桃李)が現れて、

彼女になるのは、みんなにモテそうな方じゃなく、知的でツッパリな瑠璃(声:渡辺美波)だと伝え、

彼女が花火デートの際に、落雷事故で死んでしまうのだと言う。

ナオミは、そんな瑠璃の過去を阻止するために、10年前にタイムスリップしたのだと。

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でもって、直実にしか見えないナオミとの、彼女を救うための、共同作戦が始まるのであった。

未来の未来形を引用し、過去を変えたいとゆうこのアニメは、明らかに京アニ事件がなかったことにしたいを、意識したものだと、ボクは思うのだ。

もちろん、因果関係においては、結果的にそうなったのかもしれないし、

製作陣も誰一人そんなことは、一言も口にはしていない。

それでも、ボクはこのアニメ映画に、京アニへの力強いエールとリスペクトを感じた。

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「ソードアート・オンライン」(2017年)を、大ヒットさせた伊藤智彦監督作品。

京アニともシンクロする、原色さわやか系の色合いや、学園ドラマのキャラクター設定など、

そこはかとなく見え隠れしていて、つい涙が出た。

2019年9月18日 (水)

「初恋ロスタイム」

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時が止まった中でのラブストーリー
泣ける映画系のアイドル映画

9月20日の金曜日から、KADOKAWAの配給により、全国ロードショー。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2019「初恋ロスタイム」製作委員会

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初々しい新人のアクター・アクトレスが、特殊設定の中で恋をする、アイドル映画の王道作品。

福士蒼汰的な相葉孝司(あいばこうじ)と、高畑充希チックな篠宮時音(しのみやときね)。

2人と同じく、時の止まった時に、活動していた経験を持つ医師役で、先輩アイドル俳優の竹内涼真が出演。

監督はアイドル映画監督の雄で、近作「かぐや様は告らせたい」(9月5日付けで分析)がヒット中の河合勇人。
などと、表層上の情報を写した上において、チョイ分析を始めてみようか。

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時が止まり、みんながストップ・モーションの中で、相葉と篠宮だけが、自由に動ける状態だ。

そして、2人は出会い、時の止まるロスタイムに、デートしたり、とある交通事故を阻止したりする。

時止まりとゆう状況は、「ビッグ・フィッシュ」(2003年製作・アメリカ映画)などで、ワン・シークエンスで使われたことはあったが、本格的・全面的に使われるのは珍しい。

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しかも、ロスタイム系の本作だが、タイムスリップ系のSF映画と似た感触がある。

時を行き来して過去矯正するパターンも、時が止まって、時が動いた時のために、人を救う場合も、人の命を救うという善良の意味では、おんなじというとこもあるしね。

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但し、本作のポイントは、あくまでラブストーリーにある。

ロスタイムに2人は恋をし、そして、後半では、「セカチュウ」的な、病系の泣ける映画へとシフトしていく。

ある意味で、チョイ欲張りな映画と言えば、そんな映画かもしれない。

とはいえ、やはり、SFラブストーリーが、泣ける映画へと転じてゆく、ハットトリッキーを楽しんでもらいたい。

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山口百恵・三浦友和映画などを輩出したホリプロと、アイドル映画で一時代を築いた角川映画のコラボレーション。

何はともあれ、21世紀の新しいアイドル映画の在り方とは何かを、追求したような作りが、ココロにきたね。

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「セカチュウ」以降に出た、病系映画との違いもはっきりしていて、

見たあとさわやかに、前向きになる映画だった。

2019年9月15日 (日)

「記憶にございません!」⇒日曜邦画劇場

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三谷幸喜ブランドな群像コメディだ

中井貴一コミカル演技は最高潮だ

9月13日のフライデーから、全国ロードショー。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019 フジテレビ・東宝

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三谷幸喜の群像コメディ映画も、本作で第8弾だ。

その8作の出来具合を、マイ・ベストとして、1位から8位まで披露しようかなと思ったけど、あえてやりません。

監督デビュー作「ラヂオの時間」(1997年)が1位ではあると思う。

しかし、2位以降を順位付けするには、その7作はほとんど差がなく、
どの作品にも、三谷ブランドここにあり!になっているからだ。
 

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そして、毎回コメディとはいえ、ジャンルを変えていることにも気付く。

ラジオ・メイキングや映画メイキングに加え、一軒家建築メイキング、ホテル映画、裁判劇、時代劇、SFなどと続き、

それぞれの映画において、トンデモ・コミカル・オリジナル・ポイントを加えている。
作品名は書かないけど、大たいはピーンとくるでしょう。

いやはや、ケッコー凄いと思う。

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でもって、本作であります。

ジャンル的には、これまでの三谷幸喜作品にはなかった、政治映画。

日本の政治に関する映画ではあるが、モチ、群像コメディである点に変わりはない。

但し、政治コメディ「国会へ行こう!」(1993年)などとは、面白さの質が違う。

時に三谷作品の主人公には、意外性・特殊設定を施されている場合がある。

だから、総理大臣役主人公(中井貴一)は、フツーじゃない。
 

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総理は利権絡みで莫大な献金に執着し、国民に対し開き直るような政治家だった。

支持率はメッチャ低い。

なのに、政権を維持しているのはなぜ?

とゆうとこは、とりあえずスルーして、

そんな総理が、聴衆の1人から石を投げつけられて、記憶喪失になってしまう。

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つまり、記憶喪失をキーワードにしたのだ。

記憶喪失映画を、チョイアイロニカルに逆手に取って、採り入れてみせたのだ。

記憶喪失になった総理は、喪失前とは全く真逆の人間になっていた。

この設定により、周囲の人間たちとの関係が、まったくもって、ひっくり返ることになる。

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誠実になった総理が、政治の在り方を変えていくところは、大きな見どころだ。

加えて、ドラマ映えしやすい、不倫系の三角関係の、ラブストーリーなところもある。

このあたりのシチュエートも、あり得ないくらいに、新しい設定だ。

影武者大統領を描いた「デーヴ」(1993年・アメリカ)以上に、画期的な作りだった。

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コメディアンとしてのイロもあるけど、ボクたちの世代では、シリアス演技がココロに響いた中井貴一が、本作ではオオマジでコメディアンしている。

三谷幸喜のWOWOWのドラマ演出作品「short cut」(2012年4月に弊ブログ分析)でも、コメディ演技を披露していたし、

最近ではシリアスものには、あんまし出ていないけど…。

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だが、本作では、最後には、シリアスを見せる。

とことんのコメディは、中井貴一キイッちゃんには似合わない。

けど、そこがキイッちゃんらしいとこだろう。

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かつてのロッキード事件裁判(現役の田中角栄総理が、収賄容疑で逮捕された事件で、証人尋問での証人の発言「記憶にございません」が、流行語になった)を、

思い出させるタイトル付けに、三谷幸喜監督らしい遊びゴコロが、見え隠れする。

そんなところにも、ボクは密かにグッときた!

2019年9月13日 (金)

「人間失格 太宰治と3人の女たち」

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太宰治役小栗旬が、3人の女優と絡む
宮沢りえ・沢尻エリカ・二階堂ふみ
あなたのベスト見どころは、3人の誰?
9月13日の金曜日から、全国ロードショー。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019「人間失格」製作委員会

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ボクが見た3作目となる、太宰治原作「人間失格」映画。
最初は、河村隆一主演「ピカレスク・人間失格」(2002年)。
2作目は、生田斗真主演「人間失格」(2009年・弊ブログ分析済み)。
そして、3度目が、小栗旬主演の本作。
主人公に焦点を当てた前2作に対し、本作は、女3人たちとの絡みや人間関係を、詳細に描いた映画になった。
しかも、前2作とは微妙に違うところがある。

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太宰治役を演じた3人だが、モチ全員イケメンだけど、
前2作の2人が意識的に、自ら太宰が堕落系に意図された演出ぶりだったのに対し、本作は全く違っていた。
本人は全く気だるくはなく、女たちとの絡みはあくまで、小説を創作するための手段や経験だったというのだ。
この解釈は、前2作にはなかったオリジナルなものだ。

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「斜陽」は、2人目の女・太田静子(沢尻エリカ)との関係の中で、共同執筆したものであったりとかの裏話が披露される。
その時、太宰は1人目の女・津島美知子(宮沢りえ)と結婚し、2人の子供まで儲けていた。
しかし、静子・エリカは堂々と太宰の家庭を訪れて、太宰を伊豆の自分の家に誘い、子供までほしいと訴えて、その願望を叶えるのだ。
妻の美知子・宮沢りえは、夫のやりたい放題に放任している。夫の言い訳を受け入れながら。
この関係性からして、既に太宰の異質な男女関係が、披露されていくのだ。

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編集者や作家が集う、飲み屋というものがある。
3人目の山崎富栄(二階堂ふみ)とはそこで出会った。
富栄との関係は、実際心中することもあり、かなりディープな作りになっている。

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3人の女と絡む小栗旬は、3人に対して演技性を変えることなく、自然体とゆうか、飄々とこなしている。
妻との間では、オーソドックスな夫役を演じたりするけども、それに対し、控えめに気丈に応じる宮沢りえの演技は、
奔放になりがちなエリカやふみの演技より、ハードルは高いんじゃないかと思った。

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3人の女たちのアンサンブル。
太宰治の生き方以上に、本作の大きな見どころである。

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本作の監督は、「Diner ダイナー」(弊ブログ7月5日付けで分析)に続き、今年2作目の公開となる、女性監督・蜷川実花。
色遣いの鮮やかさに、いつも引き込まれる監督だ。
桜や夕景や雪の自然シーンも巧みに織り込まれ、そのうえで、オリジナルな色彩設計を見せる。
とゆうことで、太宰治映画に、一石を投じる映画だった。

2019年9月12日 (木)

「王様になれ」

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ロック・ムービーと泣ける映画のミキシング
ハードルの高みに、どこまで迫れたのか?
9月13日の金曜日から、シネマート新宿ほか、全国順次の公開。
関西なら、9月20日シネマート心斎橋、9月21日京都シネマなどで上映。
本作は2019年製作の日本映画115分。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2019『王様になれ』フィルムパートナーズ

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日本のロック・バンド「the pillows」の、結成30周年記念プロジェクトとして映画化されたドラマ映画。
そのトリオ・バンドのリーダー・フロントマン・ボーカルの山中さわおが、原案を作った。
ボクはかつて山中さわおに、大阪で2度インタビューしたことがある。
その時に感じたのは、自らのロックへの激しい想いだった。
映画を見れば、細かいところで、主人公(岡山天音)に対し、イチャモン・難癖をつける。
チョイ見すれば、ヤナ奴とゆうイメージもある。
でも、そんな決してプラスにはならない、負の視点も入れつつ、この映画に山中が込めた想いとは何か。

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「クリープハイプ」や「神聖かまってちゃん」など、グループ・バンドを狂言回しにしながら、
映画としてのラブストーリーやら、ヒューマン・ドラマを構築する、邦画の低予算映画は、実はケッコーある。
予算は別にして、最近では洋画ではあるが、ビートルズを回した「イエスタデイ」(2019年製作・イギリス&アメリカ映画・10月11日公開・弊ブログ後日分析予定)は、
その種の映画の、映画史に残る傑作だと見たが、では、本作はどんなものなのだろう?

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the pillowsたちミュージシャンを撮る、カメラマンが主人公だが、スクープを狙うカメラマンじゃないのに、その何たるかのノウハウややり取りに少々疑問があったし、ボクの経験上においても、そんなに大げさなものじゃないと思う。
それをあえて一大事のように撮ろうとしたのは、山中さわおの意図なのか、分からないが、
そんな見習いカメラマンの恋愛に、フォーカスするのも、どうなんだろう。
しかも、その恋愛相手がthe pillowsのファンで、「セカチュウ」並みに不治の病に侵されてるとなれば、何やら付け焼刃的にも見えやしないか。
それでは、泣ける映画にはならないように見えたのだが…。

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山中はこの映画で何を目指そうとしたのか。
考えるに、ライヴ・シーンで魅せる自らのロック魂と、泣ける恋愛映画をシンクロナイズさせることだろうか。
それぞれの方向性は正しい。
どちらも中途半端になりかねないところを、何とか踏ん張った。
そんなカンジの映画に見える。
こおゆう映画はこれまでにもあった。
それでも、山中や岡山の熱量は高かった。
評論家筋の評価は低いかもしれない。
ただ、評論家の評価が今は昔で、今の時代には、その映画が売れる売れないに、左右はされないように思う。
この熱量が、みなさんにどう見られるのか。ボクは見てみたいと思う。
恋愛ドラマやミュージシャン・ドラマの在り方は、決して悪くはないのだから。
そのあたりを視野に入れつつ、鑑賞してほしい映画だった。

「Tommy/トミー」⇒ロック・オペラ再降臨

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ロック・オペラとは何ぞや?
エルトン・ジョンらが爽快パフォーマンス
9月13日のフライデーから、シネ・リーブル梅田で1週間の限定公開。本作は、1975年製作のイギリス映画106分。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ1975 THE ROBERT STIGWOOD ORGANIZATION LTD. All Rights Reserved.

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1975年に製作されたロック・オペレッタが、HDリマスター版にて上映される。
1969年にザ・フーが発表した、2枚組のロック・オペラ・アルバム『トミー』を、ケン・ラッセル監督が映画化したもので、アルバム発売50周年も兼ねた映画となっている。
まずは事実関係を述べたけど、ドイツ映画「会議は踊る」(1931年製作・モノクロ)をルーツとするオペレッタ映画。
それを含むミュージカル映画の系譜でいけば、本作は、英語圏ミュージカルの、ターニング・ポイントとなった作品である。

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1960年代の「ウエスト・サイド物語」(1961年)「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年)などの名作をピークに、
映画史的には、アメリカン正統系ミュージカルは、終わりを告げたと言われた。
しかし、1970年代以降、正統系ミュージカルも時おり作られたけど、今までとは違うタイプのミュージカル、例えば、ロック・オペラ&ミュージカルが登場した。
その転換点となったのが、「ジーザス・クライスト・スーパースター」(1973年・アメリカ)であり、本作だった。
ブロードウェイ・ミュージカル原作映画が多かった中で、
ロック・グループのアルバムが映画化されたのは、画期的な試みだったと言えるだろう。

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夫が戦死。戦争に勝った日に、未亡人(アン・マーグレット)が産んだコドモは、聾唖で盲目だった。
しかし、彼は大人になって、喋れるようになり、ピンボールの魔術師になり、多くのオーディエンスを獲得し…。
そんな数奇な人生を、数多くのミュージシャンのパフォーマンスで彩ってゆく。

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エリック・クラプトン(写真上から3枚目)は、ビョーキの人たちが集う教会で、ブルース・ロックを披露する。
ビョーキの人たちの中には、オカンに連れられた主人公(ザ・フーのロジャー・ダルトリー)もいる。
マリリン・モンローの「七年目の浮気」(1965年・アメリカ)の像などの、アイロニカルな使い方に衝撃があるシークエンスだ。
続く麻薬の女王役のティナ・ターナー(写真上から4枚目)編も、ソウルフルでエキセントリックで、強烈な印象を残した。
そして、ピンボールの天才主人公をたたえる、エルトン・ジョン(写真上から2枚目)のノリノリのパフォーマンスへと。
エルトンを描いた、ヒット中の「ロケットマン」(弊ブログ8月21日付けで分析済み)とも、シンクロするライヴ・シーンだ。

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オカン役アン・マーグレット(写真上から6枚目)の、ドロドロの中での歌うたいパフォームやら、
医者役ジャック・ニコルソンの演技ぶり、
主人公の「時計じかけのオレンジ」(1971年・イギリス)を思い出す、洗脳・治療ぶり(写真上から5枚目)など、
異彩・異能・異質なシーンに、おいおいなんじゃこらーと、思わず唸ってしまうのでありました。
幻惑され眩暈も催しかねない中でも、見たあと何とも言えない境地に達する映画。
これはマジカル映画の、代表作だと断言できる作品です。

2019年9月11日 (水)

「フリーソロ」⇒メッチャ・ヤバイ・ドキュ

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米英のアカデミー賞ドキュメンタリー賞W受賞
ロック・クライミング映画の最もヤバイ映画だ
9月6日より、新宿ピカデリー、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマほか、全国順次のロードショー。
本作は、2018年製作のアメリカ映画100分。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2018 NGC Network US, LLC and NGC Network International, LLC. All rights reserved.
ⓒ2018 National Geographic Partners, LLC. All rights reserved.

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山岳・登山系のドキュメンタリーと言えば、ボクはあんまし見ていない。
10本もいくかどうか…。ドラマ映画ならケッコーあるんだけど、
数少ない鑑賞キャリアの中では、「エべレスト征服」(1953年製作・イギリス映画)が、その種のドキュのベストかなと思っていたけど、
本作はそれを遥かに上回った。
事実をそのまま映す記録映画のノリだった「エベレスト征服」に対し、
本作は記録ではあるけど、その、見ていられないくらいの、ハラハラドキドキがある、メッチャヤバイ映画で、
ドラマ映画を超越するような、ドラマティック・サスペンスとなった作品だ。

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「フリーソロ」はロック・クライミングでも、安全確保のロープ付きではなく、
身柄ひとつでよじのぼりに挑むとゆう、最も危険なクライミングだ。
落下すれば、死が待っている。
そんな命がけの登頂に、挑む姿が撮られている。
練習の時はロープ付きだ。
でも、本番の時は安全装置は何もない。
その難攻不落の約975メートルの岸壁エル・キャピタンに、主人公アレックス・オノルドが挑んでゆく。

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練習だけではない。緻密な調査と、危険なところをどう攻略するかを、考えなければならない。
命を落としたプロは何人もいる。
一方で、彼には身の危険を案じる恋人がいる。そんな彼女とのやりとりも、挑む日が近づくにつれムムム…な状況が到来する。
一度は挑んで、途中棄権。
でもって、再チャレンジがクライマックスとなる。
撮影するカメラマンが監督に対し、「よく見ていられるな」と苦言を発する。
監督は何と女性監督(エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ)だ。
日本公開された「MERU/メルー」(2016年)も、ロック・クライマーの姿を捉えたが、
今回の方が、ヤバイ度は遥かに高い。

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何はともあれ、ラスト20分のクライマックス・クライミングは、作られたドラマ映画では決して味わえない、スリリングが待ち受けている。
「生きていくか死ぬかそれが問題だ」と言った、シェークスピアのハムレットの言葉が、ボクの脳裏に思わず浮かんだ。
君たちも、鳥肌立ってください。
 

2019年9月 9日 (月)

「ラスト・ムービースター」

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バート・レイノルズ最後の主演作
映画スターの晩年を描くシブミ
9月6日のフライデーから、ブロードウェイの配給により、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田ほか、全国順次公開。
本作は、2017年製作のアメリカ映画104分。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC

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バート・レイノルズって、みんな知ってるかい? 
1970年代から1980年代にかけて、ハリウッドのドル箱スターだった。
2018年9月6日82歳で永眠・逝去したが、本作が最後の主演作となった(遺作ではない。遺作は日本公開されるのかどうか…)けれど、
彼の主演・出演作のマイ・ベスト&カルト・スリーを、各順不同で披露してみると…。
●ベスト⇒①ロンゲスト・ヤード(1974年)②脱出(1972年)③ブギーナイツ(1997年)
●カルト⇒①本作②トランザム7000(1977年)③ハッスル(1975年)
●本作にも名前は出てくるが、クリント・イーストウッド、ジャック・ニコルソン、ロバート・デ・ニーロらと、当時は決してヒケを取らなかった彼だ。
カルト②のカーアクションやら、ベスト①の刑務所内の脱出アメフト・アクション、同じく敵からの脱出サスペンスとなった、ベスト②に加え、
刑事ものカルト③など、男のアクションや男たちのスリリング・ドラマが、代表作となるハリウッド・スターであった。
 

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しかし、本作はそんなバート・レイノルズの、パブリック・イメージとは大いに違う作品となっている。
カルト②と現在形をダブらせた、パロディ・シーンを含め、
コミカル・スタイルにして、晩年のラブも見せる感動。
コメディやラブストーリーにも出ていたけど、イメージには合わない。
けれど、本作は、コメディ仕様かもしれないけど、
バート・レイノルズ初のヒューマン・ドラマ映画と言っても、過言ではない仕上がりになった。

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ムービースターの晩年を描くのだけれど、引退した俳優・女優の老人ホームを描いた「旅路の果て」(1941年・フランス・モノクロ)とは真逆で、
バート・レイノルズ扮する主人公は、いたってポジティブだ。
ミニマムなナッシュビルの映画祭で、賞を与えられるとゆうことで、イーストウッドやニコルソンも受賞したということで、
招待を受けたレイノルズだけど、その待遇ぶりにおカンムリになる。
やがて、過去の女優たちとの幻想に幻惑されつつも、次第に彼は、過去と向かい合おうとする。

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そして、手配役・アリエル・ウィンターとゆく、彼の故郷へのロード・想いと、老人ホームに入ってる元妻との、キズナ描写には、グッときたね。
過去の彼の作品にはなかった、感動と泣きがあった。

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ムービースターの生涯ではなく、晩年を描いた映画としては、イロイロ詰め込んだ本作は、この種の映画のお手本的作品に、なったのではないだろうか。
シリアスやコミカルに徹するのではない、
それでいて、万人に分かりやすい本作は、人間バート・レイノルズの最高傑作だと、言ってもいい作品なのだ。

「Us アス」⇒ホラー・バイオレンスな1作

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変型ホラーの在り方とは?
ドッペルゲンガーの家族版とは何ぞや
9月6日のフライデーから、東宝東和の配給により全国ロードショー。
本作は、2019年製作のアメリカ映画116分。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒUniversal Pictures

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ホラー映画の系譜をたどるとなると、多岐にわたるけれど、アメリカン・ホラーに限定すると、筋道は確かになり分かりやすくなる。
「吸血鬼」「狼男」「フランケンシュタイン」などの、ユニバーサル映画の戦前から、
戦後十数年に到り登場した悪魔系ホラー「エクソシスト」(1973年製作)があり、
心理ホラー「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年)などの、特殊系ホラーが誕生してきた。
気一本は悪魔系だけど、「ローズマリー…」な変種系ホラーは、時々現れて、ボクたちを脅かし震えさせた。
アメリカン・ホラーとしてリメイクされた、ジャパニーズ・ホラー「リング」(1998年)が魅せた、VHSネタは画期的だったが、
その後はコレはとゆう怖がらせるツールは、なかなか見いだされずにいたけど、
本作は分身系で一つの答えを示した。

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とりあえず本作は、そんなカテゴライズされない、変型ホラーとなった作品である。
ジョーダン・ピール監督は、本作の前作で「ゲット・アウト」(2017年・弊ブログ分析済み)を撮った。
監督は黒人監督である。
黒人監督と言えば、今年も新作が日本公開された、スパイク・リーなんかを思い出すが、メインとしては、どちらも黒人たちの話である。
白人との絡みで展開するのがうまいスパイク・リーだけど、
本作は、「ゲット・アウト」の黒人優位性も反映したのか、黒人家族のドラマを、分身的に描いて見せる。

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分身・ドッペルゲンガー映画は、1人が基本だった。
しかし、本作は何と家族一同が、ドッペルゲンガーなのだ。
そして、その分身たちは、とんでもなくバイオレンスな野獣なのだ。
この凄まじさには何とも恐れ入った。
でも、そんな狂的野蛮人たちに、家族は果敢に応戦していく。
ということで、ホラーよりも、アクションやバイオレンスに、シフトした仕上がりとなっている。
彼らの存在の意味とは何なのか。最後の方で明かされるが、その中味は賛否を呼ぶことだろう。

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夏の海辺にふさわしい、ビーチボーイズの「グッド・バイブレーション」が、残虐なシーンに流されたり、
オーケストラなドラマティック・サウンドトラックの、ミスマッチな使い方など、
定番を外した上で、怖がらせる系の新機軸を、打ち出している点も面白い。

2019年9月 6日 (金)

「タロウのバカ」⇒菅田将暉・太賀・YOSHI共演

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青春とは、時に厄介でやるせない代物だ
それを具現化した映画オリジナル作品
9月6日の金曜日から、東京テアトルの配給により、テアトル新宿ほかで全国ロードショー。
本作は2019年製作の日本映画119分。
「R-15+」指定映画。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019映画「タロウのバカ」製作委員会

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3人の男子ティーンエイジャーたち(菅田将暉・太賀・YOSHI)の青春を描く映画。
なんて書けば、キーワードはさわやかだったり、友情だったり、力を合わせて何かに挑んでる、なんてイメージがあるけど、本作はそうじゃありまへん。
みんな何かに迷っていたり、自暴自棄になったり、時にそれぞれ、あるいは一緒に、敵対する者たちと闘ったりするけども、
そこには報復のやり合いがあるだけで、青春にとって実のあるものは何もない。
そんなやるせない青春ぶりを、3人がつるんで刹那的、あるいは無軌道にやってまうのである。
YOSHIの身も心もハダカな演技。
菅田将暉のワイルドというか、どうだっていい、どうにでもなれっていうような倦怠節。
太賀の素朴・純情から抜け切れない演技。
この3人の演技アンサンブルは、どないしょーもない、けだるい感を助長している。

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YOSHIはオカン(豊田エリー)と2人暮らしだが、学校にも行かず毎日ブラブラ。
菅田将暉は柔道で高校進学したけど、高校にも柔道部にもほとんど行っていない。
太賀も高校生。
そんな3人が出会い、放置されたままの建設現場を隠れ家にしながら、イロイロ話し合う。
身障者たちを食いものにしている、チンピラたち(奥野瑛太ら)を襲ったり、
その報復に対し、灯油を撒いて、彼らの倉庫に火を付けたりする。かなりヤバイ。
太賀の好きな女子高生(植田紗々)が、娼婦まがいをやってるけど、彼女と寝た男を襲ったり…。

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刹那的なだけに、いろんな疑問が生じる。
大人のチンピラを、3人で襲って拳銃を奪った。
けど、圧倒的に力の差があるチンピラが、拳銃を返せと言わないのか。
YOSHIの場合、オカンに対し、福祉局は今まで何をやっていたのか。
その建設現場はなぜ放置されたままなのか。家を作っているにしても、電気まで通っているのに。
この種の映画では、お約束のようになっているが、警察に通報するとゆう選択肢は、まず採らない。警察も出てこない。
フツーに見ていて、いくつかの疑問点が脳裏をかすめることだろう。
しかし、それらはスルーして見続けていただきたい。
肝心なのはリアリティーではない。
ムチャクチャやろうぜな彼らの言葉から、破滅へと向かう、青春の気まぐれと非情さを描いているのだから。
いわば、アメリカン・ニューシネマの代表映画「イージーライダー」(1969年製作・アメリカ映画)の、カタルシスと本作は通じているのだから。

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手持ちカメラによる近接撮影と、映画的ロングショットのバランスに加え、
長回し撮影シーンもいくつかあるが、
シタールをバックに、死の仮面を付けた人たちの、野外不条理劇に、3人が並んで歩くところを取り込んだり(画像上)、
身障者が歌う歌をバックに、雨中で太賀が好きな女子高生を襲ったりなど、
映画作家的企みに、満ちたカットに魅せられた。

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大森立嗣監督の、オリジナル脚本による新作。
映画オリジナルによる日本映画は、今や稀少価値があるが、
第七芸術としての映画作家性を、見せる意味においては、重要なところだ。
イロイロ疑問はあるけれど、役者陣の熱量の濃さなども考慮して、
本作を、ボクは年間ベストテン級映画に指名したい。

2019年9月 5日 (木)

「かぐや様は告らせたい-天才たちの恋愛頭脳戦-」

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「King & Prince」平野紫耀と橋本環奈共演
コミック原作の学園ラブコメ
9月6日の金曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019映画「かぐや様は告らせたい」製作委員会ⓒ赤坂アカ/集英社

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コミック原作の学園ラブストーリーの実写日本映画。
21世紀になってかしましくなってきた、コミック原作映画だが、弊ブログでは、そのベスト&カルトとかを披露した。
時には学園ラブに限定したりもした。
ひどい時には、コミック原作の高校生学園もの、特にラブストーリーには、傑作はないなどと、暴言を吐いたりもした。
ここで、冷静になってしばし考えてみる。
そして、その種の高校学園ものの、邦画マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)なるものを、あくまで独断と偏見で披露してみると…。
●ベスト⇒①町田くんの世界(2019年)②天然コケッコー(2007年)③翔んだカップル(1980年)
●カルト⇒①本作②ヒロイン失格(2015年)③きょうのキラ君(2017年)
●教師と生徒のラブものにも、特筆すべきものはあるけれど、今回ははずした。
基本的には、ベストとカルトもシリアスなものより、ラブコメ主体の選択になったのは、コミック原作の作品性によるものだろうか。
しかし、コミカルからシリアス・モードへと、変換するカルト②などが、21世紀になって以降はケッコーある。
但し、最後までラブコメ・モードを貫いた作品が、今年公開されたベスト①や本作である点が、何やら面白くおくゆかしく(!?)感じた。
どちらも、ベスト・カルトに関わらず、学園恋愛ドラマの新境地を、切り拓いた快作である。

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「町田くんの世界」は主人公の造形がユニークだった。
一方、こちらは、両思いなのに、どちらかがコクッた者が負けになるとゆう、ユニークな設定の元、恋愛ゲームが展開する。
恋愛して愛し合えばええやんとは思うけど、それじゃあまりにもフツー過ぎておもろない。
三角関係はなし。1対1の心理対決だ。
おいおい、こんな恋愛ものはまあ、かつてないよね。
キンプリこと「King & Prince」の平野紫耀と、橋本環奈が、
それぞれの思惑を、ココロの呟きとしてナレーションしながら、
ハラハラドキドキ(!?)の、恋の駆け引きが繰り返されるのだ。
バカバカしいと思うなかれ。これが本作のオリジンなのだ。
よくある身分違いの恋も、このコミカル・モードでは、すっかりスルーしてしまう。
2人のやり取りに集中し、素直にハマッてみよう。

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学園もの映画を撮り続けている、河合勇人監督の新作。
アイドル映画やラブストーリーとしての、監督ぶりにも才がある。
9月20日公開の「初恋ロスタイム」(後日分析)にも注目!

「SHADOW/影武者」⇒チャン・イーモウ監督の新作

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「HERO」「LOVERS」以上にバイオレンス

光と影のグラデーションが渋い

9月6日のフライデーから、ショウゲートの配給により、全国ロードショー。
関西なら、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ なんば、ほかで上映。
本作は、2018年製作の中国映画116分。
文=映画分析評論家・宮城正樹
ⓒ2018 Perfect Village Entertainment HK Limited Le Vision Pictures(Beijiig)Co., LTD Shanghai Tencent Pictures Culture Media Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

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チャン・イーモウ監督の新作。

監督の作品をザッと2つに分けると、ヒューマン・ドラマと武侠アクションになるだろうか。
本作は、武侠アクションの最新版となった。

その代表作「HERO」(2002年)や「LOVERS」(2004年)など、ある種華麗なスタイリッシュさや様式美は堅持しつつも、

「王妃の紋章」(2006年)以降のアクションでは、より過激でバイオレントな作りになった。

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スローモーションやローアングルに加え、主軸のワイヤー・アクションは健在だが、

まさかりが何本もある、回転鉄傘での集団移動攻撃なんか、
全く新しいダイナミックな、アクション・シークエンスを構築。

1対1の対決シーンも、すぐに決まるようなことはなく、徹底的に闘い抜く、凄惨極まりなさを、躊躇することなく見せてゆく。

一方で、強烈なアクション・シーンを緩和するように、琴の夫妻合奏シーンとカットバックさせたりして、ドラマティック度合いを高めている。

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影武者が登場する時代劇とくれば、黒澤明監督の「影武者」(1980年)を思い出すが、
これまでの中国時代劇にはなかった、影武者主人公の時代劇を、撮りたかったらしいイーモウ監督。

しかも、ジョン・ウー監督「レッドクリフ」(2008年)などが、日本で大ヒットした「三国志」からのエピソードに、インスパイアーされたようだ。

史実に基づいた中国歴史劇・時代劇が多い中で、オリジナリティーある、シェークスピア悲劇タッチの時代劇を撮り上げてみせた。

黒澤明時代劇では、「影武者」よりも、シェークスピア悲劇を採り入れた「蜘蛛巣城」(1957年・モノクロ)のような壮絶さを感じる。

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そして、これまでは組んだことがない俳優・女優を起用。

影武者役と2役をする、ダン・チャオのクール。

女優では、肝っ玉コン・リーや、繊細チャン・ツィイーとはまた違った、クール・ビューティーなスン・リーらをキャスティング。

抑揚を効かせた監督の演出ぶりが際立つ。

さらに、「第三の男」(1949年・イギリス映画・モノクロ)や水墨画のように、カラーながら、光と影を巧みに織り込んだ、チャオ・シャオティンの撮影ぶりも光る。

影武者映画にふさわしい撮り方だった。

ということで、チャン・イーモウ監督久々の、年間ベストテン級作品だと、ボクはジャッジいたします。

2019年9月 4日 (水)

「いなくなれ、群青」⇒コレはつまりは、恋愛映画なのだ!

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ニュータイプの学園ラブストーリー
「時をかける少女」的SF不思議設定がいいね
9月6日の金曜日から、KADOKAWAとエイベックス・ピクチャーズの共同配給により、ロードショー。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019映画『いなくなれ、群青』製作委員会

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クローズドサークル(閉じられた場所=ここでは島)の中で、主に高校生たちがドラマの核を握る映画だ。
ちなみに、クローズドはクローズドでも、中学生たちが島で殺し合う「バトル・ロワイアル」(2000年製作)とは真逆の作り。
島に住む人たちは、ある日突然居場所トリップして島に来て、そこから逃げ出せないでいる。
脱出するためには、失くしたものを見つけなければならないらしい。
そして、島は誰も知らない魔女に支配されている。ナンチュー特殊設定により、ストーリーが進行する、シチュエーション・ドラマ。
なぜかこの島にやってきた主人公の僕(横浜流星)の、ナレーションで、冒頭で島の実情が知らされる。

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次のシーンでは、彼の幼なじみのヒロイン真辺(飯豊まりえ)が、島に現れて…。
学園の同級生たちとの、イロイロが始まるのであった。
フツーの学園青春ドラマ仕様ながら、この特殊設定によってフツーじゃなくなる。
また、ラブストーリーを展開しようにも、当然フツーじゃなくなるわけで、僕と真辺の間での心理の掛け合いが始まる。
この島から出たい真辺と、この島に居残ってもいいなと思う僕との間で、ビミョーな恋とゆうか、友情とゆうか、なんてのが静かに描かれていくのだ。

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見ていてどうなってんだとゆう、もどかしいラブストーリーな展開は、
1990年代に一世風靡した、テレビのトレンディー・ドラマのスタイルを思い出させるが、
ベースは1980年代の角川映画・アイドル映画にあると、ボクは見た。
アイドル映画かどうかは微妙なところだが、「時をかける少女」(1983年)のようなテイストを、ボクは本作に感じた。
「時かけ」の主人公とヒロインが、なんとなく似通っているカンジもある。

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横浜流星の冷静さもいいけど、「きょうのキラ君」(2017年・弊ブログ分析済み)とは正反対とも取れる、シリアス系を披露する飯豊まりえが、キラキラ光っていた。
「人に合わせているばかりだと、自分のやりたいことが見えなくなる」とか、
「嘘は見破られた方が楽。ずっと苦しいままだから」とかなど、説得力ある大人なセリフを連発する。
自然光を活かしたピアノとバイオリンのコンサート・シーンなど、いいカンジのところで、好感ある演技を披露している。
でもって、僕とのサプライズあるやり取りへ。
あまたある学園ラブとは、ひと味違うセンスに、注目あれ!

2019年9月 3日 (火)

令和元年9月3日時点の暫定マイ年間ベストテン

●「宮本から君へ」(池松壮亮・蒼井優共演/真利子哲也監督/9月27日公開)

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ⓒ2019『宮本から君へ』フィルムパートナーズ
●「エンテベ空港の7日間」(ダニエル・ブリュール、ロザムンド・パイク共演/イギリス&アメリカ合作/10月4日公開)

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ⓒ2017 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

●日本映画

①長いお別れ

 

②宮本から君へ

③町田くんの世界

④半世界

⑤愛がなんだ

⑥盆唄

⑦タロウのバカ(9月6日公開)

⑧火口のふたり

⑨ワイルドツアー

⑩泣くな赤鬼

●外国映画

①バーニング 劇場版(韓国)

①運び屋(アメリカ)

 

③女王陛下のお気にいり(イギリス)

④SHADOW 影武者(中国・9月6日公開)

⑤ブラック・クランズマン(アメリカ)

⑥ハッピー・デス・デイ(アメリカ)

⑥ホームステイ ボクと僕の100日間(タイ・10月6日公開)

⑥存在のない子供たち(レバノン)

エンテベ空港の7日間

⑨アマンダと僕(フランス)

⑨希望の灯り(ドイツ)

⑨COLD WAR あの歌、2つの心(ポーランド)

⑨金子文子とパクヨル(韓国)

⑨アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場(フィンランド)

 

●暫定年間マイ・ベストテンです。8月は邦画と洋画で新たに1作入れました。

洋画では先月に続き、同率順位で新たな作品というカタチですが、最終的にはキチンと10作にいたします。

既に鑑賞後の作品でベストテン外の作品でも、気ままにベストテンに入れることがありますので、ご了承ください。

とゆうことで、新たに入れた青色で示した2作についてですが、2作共公開直前の後日にご紹介ご分析いたします。ちょいさわりについて申し述べますと…。

「宮本から君へ」は「長いお別れ」に続き、蒼井優の演技と、池松壮亮の男ど根性の演技が素晴らしい。蒼井優的には、初の●●●演技が強烈。

「エンテベ空港の7日間」は、過去に3度映画化されたらしい実話テロ映画だが、その1作を見たボク的には、本作はバージョン・アップとゆうか、よりリアルに徹した仕上がりぶりだった。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)


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