無料ブログはココログ

新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

  • ">

« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »

2019年6月の記事

2019年6月29日 (土)

香取慎吾主演「凪待ち」

2_20190627011701
香取クンが初の汚れ役に扮した
白石和彌監督とのコラボレート
6月28日から全国ロードショー。
ⓒ2018「凪待ち」FILM PARTNERS
1_20190627012601
汚れ役とゆうのは、イロイロあります。
どんなに汚れてるのかで、映画の出来が違ってくる場合もあります。
香取クンこと香取慎吾が、初の汚れ役に扮しました。
どこまで汚れてるのかが、ある意味ではポイントになってきます。
イメージ・ダウンするものなのか、それとも、アウトロー役としてカッコイイのか。
そのあたりを見てみましょう。
7_20190627012801
シングルマザーの女(西田尚美)と、その娘(恒松祐里)と一緒に、東京で暮らしている香取クン。
香取クンは、工場勤めをしてるけど、ギャンブル依存症の男だった。
震災に遭った、女の実家のある石巻に移住しても、変わりばえしなかった。
そのギャンブル・ジャンルは競輪です。
競馬・パチンコ・競艇など、イロイロあるギャンブルだけど、そんな中で、彼は競輪を選び、依存症としてハマリ込んでゆくのでありました。
 
3_20190627012801
映画史を振り返れば、アルコール依存症ものは多いけど、ギャンブル依存症の主人公・ヒロインを描くヒューマン映画は、意外にも少ない。
ましてや、競輪なんてのは、まずありません。
それでも、ギャンブルによって堕ちてゆく男の姿を、香取クンは精一杯に演じてみせたのです。
その姿は、まさに自然体演技でサポートする、リリー・フランキーらの演技によって、なるほどなと思える作り・演出になっていました。
6_20190627012901
マージャンにハマる男を描いた、「麻雀放浪記」(1984年)のようなノリが、本作にはありました。
その最新版リメイク・バージョンを監督したのは、本作の監督・白石和彌ですが、
何やら本作とシンクロナイズするような、男のギャンブルイズム・エゴイズム・どうにでもなれイズムが、演出された映画になっとります。
4_20190627012901
カード・ギャンブル「シンシナティ・キッド」(1965年)のスティーブ・マックィーンや、
ビリヤードの「ハスラー」(1961年・モノクロ)のポール・ニューマンのような、
シブミには及ばずとも、香取クンのただ堕ちる姿には、唖然として見守るしかないのでありました。
でも、ギャンブル依存症の人間の実態とは、きれいごととかではなく、本作の香取クンの演技ぶりこそが本物なのでしょう。
5_20190627013001
但し、謎解きのミステリー部が、少し弱く感じました。
防犯カメラやDNA鑑定があるのに、初動捜査で香取クンが疑われるのは、いかがなものでしょうか。
真犯人の動機も、あんましよく分からなかった。
しかし、ミステリー部の弱さを、香取クンの汚れ役のアナーキーさが、十二分にカバーしていたように思います。
でもって、「孤狼の血」(2018年)で示した、白石和彌監督流のバイオレンスイズムが、そこはかとなく反映されている映画でした。

2019年6月27日 (木)

「ハッピー・デス・デイ」「ハッピー・デス・デイ 2U」

3_20190626012801
理屈抜きにメッチャ面白い!
タイムスリップ映画の新次元だ
東宝東和の配給により、6月28日のフライデーから、「ハッピー・デス・デイ」(画像上から6枚目まで)が、7月12日のフライデーから、「ハッピー・デス・デイ 2U」(画像上から7枚目から)が、2作連続公開。
第1弾は1時間36分、第2弾は1時間40分となるアメリカ映画。
ⓒUniversal Pictures
Photo_20190626013901
いやはやとんでもないくらい痛快な、エンターテインメントが誕生した。
過去の作品とシンクロさせつつ、分析するなんてことが、全く意味がないくらいに思えるほどの、理屈抜きにメッチャ面白い作品だ!
それでも、何とか分析しなきゃね。
ちゅうことで、まずは、本作の中で引用される映画について。
1_20190626014101
誰かに殺される日が、リフレインされる点は、同じ日が繰り返される点で「恋はデジャ・ブ」(1993年製作)。
タイムスリップ系では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(全3弾の第1弾は1985年)。
タイムマシーン的カーの、造形ぶりにもシンクロする。
夢のまた夢とゆう、多層次元構図では、「インセプション」(2010年・弊ブログ分析済み)もセリフで言及される。
5_20190626014201
ヒロイン(ジェシカ・ロース)が、仮面を付けた何者かに、殺される月曜日が、果てしなくリフレインされる。
殺されたと思ったら、ナンパされた男の部屋で、月曜の朝に生きて目覚めて、
寮に朝帰るその道程に加え、帰ってからの人物関係の絡みも、ほとんど同じなのだ。
4_20190626014301
しかし、ヒロインは繰り返されるたびに、考えてゆく。
一体、誰が私を殺そうとしているのかを。
つまり、ミステリーとしての犯人探しの面白さが、繰り返されるたびに増してくるのだ。
そして、毎朝起きては会う男の協力を得て、繰り返し繰り返し推理していくのだ。
こんなカンジの映画は今までにない。
徹底的に繰り返されるこのスゴサには、もはや言葉さえなくなってくる。
2_20190626014501
日本の推理小説で「七回死んだ男」(西澤保彦・著/講談社文庫)とかがあるけれど、映画としては、あまり思い出せない設定だ。
トキカケこと「時をかける少女」(1983年)とかもあるけれど、本作は執拗さと徹底度合いでは、はるかに上だ。
第1弾は最後には、とりあえずの決着は見るものの、第2弾では、さらなる新次元を見せてくれる。
6_20190626014601
第1弾でヒロインに起きたことが、別の男性に移るとゆう冒頭だが、
結局はヒロインに、その悩ましき繰り返しが戻ってくるのだ。
第2弾はSF系ハットトリッキーに、シフトした作りになっている。
1_20190626014601
量子力学に基づいた、実験器がとんでもない世界を構築する。
パラレルな6世界がある方向性とか、SFパラレル・ワールドが展開していくのだ。
量子力学を採り入れた映画はかつてない。
推理小説では、「数学的にありえない」(アダム・ファウラー著/文春文庫)などがあるが、大胆極まりない設定だ。
2_20190626014701
その結果、ヒロインが2界のどちらかに戻るか戻らないかの、二者択一に迫られる。
母が生きてる世界か、彼氏と恋する世界か。
その2界は共存できない設定なので、ヒロインはどちらかを選ばねばならない。
3_20190626014901
家族のキズナか、彼とのラブか。
この選択に迷うヒロインの、心境や行動ぶりも大いなる見どころだ。
4_20190626014901
ヒロイン役のジェシカ・ロースが、カメレオン演技的に鮮烈な印象を残す。
ホラー映画的ノリにふさわしきところでは、スクリームな叫びを始め、怖がるヒロインを演技。
アクション的には、正義派のヒロイズムを発揮。
正統派推理系では、論理的探偵ぶりを示し、
ラブストーリー部では、胸キュンなシーンを演技する。
何はともあれ、大忙しです。
5_20190626015001
ドラマのノリは、はっきり言って「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年)の、イケイケなディスコ・ノリのスピード感がある。
ラストロールでは、そのサントラの歌の一曲「ステイン・アライブ」の、カヴァー・ナンバーが流れてくるからね。
さらに、第3弾への期待シーンもあって、胸ワクワクのままに映画は終わる。
オモロ過ぎるこの映画は、何かの間違いだとしても、ベストテン級の映画になるに違いないぞ。
評論家よりも、一般の映画ファンの支持を集めそうだ。
とゆうことで、大ヒットする予感に、満ちあふれた快作品だ。

2019年6月26日 (水)

サイコスリラー「ピアッシング」

4_20190625225101
村上龍原作のアメリカン・サイコスリラー
室内劇サスペンスのキレある快作
6月28日のフライデーから、新宿・シネマカリテ、渋谷・シネクイント、大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都ほかで、全国順次のロードショー。
本作は、2018年製作のアメリカ映画81分。
ⓒ2018 BY PIERCING FILM. LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
2_20190625230101
10_20190625230201
村上龍の小説を原作とした、アメリカン・インディペンデント映画。
日本の小説を洋画として映画化した作品の、独断と偏見で、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を披露してみると…。
●ベスト⇒①バーニング 劇場版(2018年製作・韓国映画・弊ブログ分析済み)②沈黙 サイレンス(2016年・アメリカ)③午後の曳航(1976年・イギリス)
●カルト⇒①本作②ザ・リング(2002年・アメリカ)③眠れる美女(2005年・ドイツ)
1_20190625230301
●カルト②の鈴木光司のホラー小説原作以外は、文学畑からの作品になった。
遠藤周作のベスト②、三島由紀夫のベスト③、川端康成のカルト③。
そして、W村上として一時期トレンドになった、村上春樹のベスト①と、村上龍のカルト①。
この2作が今年公開されたのには、何か因縁めいたものを感じた。
どちらも、ミステリアスな人間たちの、サイコチックなドラマ映画である点も興味深い。
3_20190625230301
さて、村上龍といえば、文壇デビュー作の「限りなく透明に近いブルー」を自身で監督したりと、映画へのアプローチは、作家業並みに凄かった。
その想いがインディペンデント映画とはいえ、アメリカ映画で開眼したのには、自身も感極まっただろう。
でもって、本作は、村上龍の純文学系とは違った、ミステリー・サスペンス小説系列を取りあげた。
5_20190625230501
女が男を監禁SMしていった村上龍原作映画「オーディション」(1999年・日本)のように、本作も男と女の密室サスペンス劇となった。
誰でもいい、人を殺したい衝動が抑えられない男(クリストファー・アボット)と、自傷行為を当たり前のようにやっちゃう、自殺願望の強いSM嬢(ミア・ワシコウスカ)の、2人だけの室内劇だ。
戸外へ出るシーンはいくつかあるけど、室内劇をメインにしたサスペンス・サイコスリラーとして、
室内から最後まで一歩も出ない、裁判映画「十二人の怒れる男」(1957年・アメリカ・モノクロ)や、
室内設定がキーとなる、シチュエーション・スリラー「ソウ」(2004年・アメリカ)などとも、シンクロナイズする作品となった。
9_20190625230601
脱色したような薄色を基調に、ストーリーは展開する。
ファンキーなサントラによる、イントロからココロざわつき、
二分割カットや陽光を駆使したカットでつないでゆき、ハラハラドキドキをクリエイトしていく。
6_20190625230601
クリストファー・アボットのクソマジメ系の殺人者ぶり。
ミワ・ワシコウスカの、ヒロイズムな「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年・アメリカ・弊ブログ分析済み)とは真逆の、弱者演技のはかなさの妙味。
この2者のやり取りとゆうか、駆け引きとゆうか、2人の絡み具合が、本作の大いなる見どころとなっている。
8_20190625230701
アメリカン・インディペンデント・スピリッツに満ち溢れた、サイコスリラー。
「ユージュアル・サスペクツ」(1995年・アメリカ)のような、どんでん返しが待っているよ。

2019年6月24日 (月)

「ある町の高い煙突」

1_20190624230001
環境汚染への抵抗運動実話映画だ
泣ける映画系のラブストーリーもあり!
6月22日から、アポロシネマ、イオンシネマ茨木・四条畷・りんくう泉南・桂川・久御山・高の原・加古川ほか、全国順次の上映中。
本作は、2019年製作の日本映画130分。
ⓒ2019 Kムーブ
2_20190624231701
足尾銅山などでもあった話だけど、炭坑の環境汚染と、その抗議行動と対策を、真摯に丁寧に描いた実話映画。
足尾の場合は過激だったけど、本作はもっとずっと話し合いによる、柔軟な和解の路線が濃い。
でも、ドラマティックではあるよ。
明治の時代が背景だ。
日立鉱山と、鉱山からの煙で作物被害を蒙る、茨城県の一農村とのやり取り。
「八甲田山」(1977年)「剣岳 点の記」(2012年・弊ブログ分析済み)など、
山に関する実話もの原作が有名な、直木賞作家の巨匠・新田次郎小説の映画化だ。
3_20190624231801
「八甲田山」ほどの大作感はない。
また、煙突を建設するという実話だが、「黒部の太陽」(1968年)のダムや「超高層のあけぼの」(1969年)の高層ビル(霞が関ビル)のような、高度経済成長時代の大掛かりなものではない。
しかし、こういったインディーズ作品が、抵抗運動の地道さをジでいくように、作り上げられるところにこそ、ボクは拍手を送りたいと思うのだ。
4_20190624232001
有名でない役者たちが並ぶ中で、仲代達矢や吉川晃司らが、威厳ある演技ぶりを見せているのも好感があった。
但し、主役は抵抗運動のリーダーである井手麻渡(いで・あさと)であり、
イチバンの助演格は、日立側の交渉人・渡辺大である。
5_20190624232101
敵対する者の友情節とも取れる、この2人のやり取りに加え、
渡辺大の妹役の小島梨里杏(こじま・りりあ)と、主人公の淡い恋模様が、
実話のメイン・ネタ以上に、明治の「セカチュウ」なんてくらいに、泣ける映画ポイントになっている。
7_20190624232101
アップ少なめで、映画的ロングショットにキレがあったと思う。
特に、2人のデート・シーンの造形ぶりに、映画らしさを感じた。
8_20190624232201
レコード大賞を受賞した名曲「いつでも夢を」の、オーケストラ・インストゥルメンタル・バージョン・サントラに、温かみがあったし、
映画のシメで披露される、阿川佐和子のナレーションも良かった。

「神と共に 第二章:因と縁」

3_43
ハリウッド映画級の韓国映画最新作
スペクタクルからミステリーまで、極上のエンターテイメントだ
6月28日のフライデーから、ツインの配給により、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都ほかでロードショー。
本作は2018年製作の、韓国映画141分。
ⓒ2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.
4_36
本作の前作となる、公開中の「神と共に 第一章:罪と罰」(画像・上から2枚目と4枚目)はみなさん、もう見られましたか。
本作とリレー公開なのかは分かりませんが、未見ならば見ておくべきかもしれません。
この二章の本作だけを見ても、分かることは分かるのですが、
「神と共に」の主演となる、冥界(映画を見る限りにおいては、天国ではなく地獄か。というより、天国と地獄をいっしょくたにした、冥界とゆう新味ある世界)の
3人の使者(ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ)の、過去がクローズアップされるからです。
2_44
死んだ人間が冥界に来ると、使者の3人の導きで、7つの地獄巡りと人生の罪に関する各地での裁判を、受けなければならない設定になっています。
うまくクリアーすれば、閻魔大王(イ・ジョンジェ)の采配で、新しい人間として生き返らせてもらえるのですよ。
でもって、「第一章」では、消火中に死んだ消防士役のチャ・テヒョンが、冥界の被告人として裁かれるんです。
死後の世界を描いた映画はこれまでにもありましたが、こちらはメッチャハンパじゃないんです。
巡る地獄のロードムービーぶりはスペクタクルにあふれ、「ジュラシック・パーク」(シリーズ第1弾は1993年製作)な恐竜も多数出てきて、驚きのシーンもあります。
1_44
天国や地獄を、ハリウッド映画なノリで描いた映画は稀少で、本場にもあんましないのでは…。
また、冥界の裁判劇もそれなりにあったけど、ここまで本格的で大げさなのはまあ、ないでしょう。
多彩なCG使いといい、ジョン・ウイリアムズばりの勇壮なオーケストラ・サントラといい、ハリウッドをかなり意識。
宇宙と冥界とゆう点で、シンクロはないように思われるけど、CG使いやキャラクター設定において、
本作は「スター・ウォーズ」シリーズに、影響を受けたものかと、ボクは分析しています。
7_17
49人の使者を生き返らせれば、1000年前に死んだとゆう3人の使者たちは、現世に生まれ変われるとゆう設定になっていまして、
その49人目にまつわるお話が、第二章なのです。
元冥界の神で現世に生き返ったおじさん(マ・ドンソク)は、3人の使者の過去を知っています。
そのおじさんとの絡みに加え、49人目とのやりとりなどで、3人の過去が浮かび上がってきます。
5_34
韓国映画の時代劇的に振り返られる過去シーンは、謎解きに満ちあふれたシークエンスになっています。
意外な結末に加え、どんでん返しもあります。
いわば第一章がスペクタクル映画ならば、第二章は時代ミステリーと言えるでしょうか。
6_24
何はともあれ、韓国映画エンターテイメントの「今」を示す大作です。
ハリウッド映画に負けない、スケール感をお楽しみください。

2019年6月21日 (金)

「きみと、波にのれたら」⇒恋愛アニメの快作

2_20190620231301
感動が待っているラブストーリー・アニメだ
波乗り気分で心地よく見てみよう!
6月21日の金曜日から、東宝の配給により、全国ロードショー。
ⓒ2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
8_20190620231901
ラブラブの展開から、泣ける系へと急転換する、ラブストーリー・アニメ映画。
とゆうことで、ここで、ジャパニメーションのラブストーリー映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を披露すると…。
●ベスト⇒①君の名は。(2016年製作)
②耳をすませば(1995年)
③風立ちぬ(2013年)
●カルト⇒①本作
②うる星やつら オンリー・ユー(1983年)
③劇場版タッチ(1986年)
4_20190620232001
●チョイスをしてた時、実写版も撮られてる作品がケッコーあったし、選ぶかどうか悩んだ。
でも、入れたのはカルト③だけになった。
テレビアニメの劇場版からも、カルト②③の2作。
それら以外は、映画オリジナル・アニメになった。
世界に誇るスタジオジブリのベスト②③や、大ヒットしたベスト①を別格とすれば、
本作は新たなアニメ映画の、オリジナルの可能性を示した作品とも言えるだろうか。
5_20190620232101
実写の「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)以来、
「泣ける映画」がトレンドになったが、そんな作品のテイストも入れつつも、
ヒロイン・ひな子(声は川栄李奈)を守ろうとする、主人公・港(声は片寄涼太)の決死の想いと行動を、クライマックスに据えた。
さらに、その後は、前向きに生きるヒロインの姿が描かれる。
7_20190620232101
ヒロインがサーフィンをするシーンから始まるので、最初はサーフィンをする男女の、ラブストーリーなのかと思いきや…、
確かに最初の方は、そんなノリでダイジェスト・シーンを含めて、アツアツデレデレが続き、このまま最後まで、いってしまうのかなと思うけど、
ある事件でガラリと、物語の流れが変わるのだ。
6_20190620232201
でもって、フツーのラブじゃない、ラブストーリーへと様変わりしていく。
さらに、女⇒男⇒女⇒男と言う風に、4人の男女が、三角ならぬ四角関係になっていく。
3_20190620232301
また、ある歌がヒロインと主人公を、結びつけるキーワードとなる。
そして、水中シーンなどの水色の色使いが、映画の色を代表する。
ビルの上へ上へ向けて、水が束になって流れていくシーンは、圧巻だった。
1_20190620232301
ラストロールで流れる主題歌は、主人公の声を担当する片寄涼太が、メンバーの一員である、
「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の「Brand New Story」。
本作の内容にピッタリのナンバーで、映画と共にココロに残る。

2019年6月20日 (木)

インドネシア映画「マルリナの明日」

2_43
インドネシア産の反撃ヒロイン・アクションだ
マカロニ・ウエスタンを意識した作りにも注目
6月22日のサタデーから、パンドラの配給により、シネ・ヌーヴォほかで、全国順次の上映。
本作は2017年製作の、フランス・マレーシア・タイとの合作によるインドネシア映画で本編95分。
ⓒ2017 CINESURYA - KANINGA PICTURES - SHASHA & CO PRODUCTION - ASTRO SHAW ALL RIGHTS RESERVED
4_35
未亡人ヒロイン(マーシャ・ティモシー)が活躍する、インドネシアのアクション映画。
荒野を馬に乗ってロードしたり、冒頭のマカロニ・ウエスタン的サントラ使いなどから、いわゆる西部劇的な興趣もある。
但し、銃撃戦はない。ヒロインが男たちの暴力に、反撃するというタイプの映画だ。
その種の映画は、これまでにもケッコー出てきたが、歴代マイ・ナンバーワンは、「ウィークエンド/デッドエンド・ホリデイ」(1976年製作・カナダ映画)だ。
別荘を舞台に、女がたった一人で、襲い掛かる男4人を、正攻法ではない方法で、返り討ちにする映画だったが、
実は本作も「スーパーウーマン」なわけはなく、あくまで男たちに対して、女にやれる方法で倒してゆく。
3_42
冒頭からさっそく、その手法が披露される。
夫に死なれ未亡人になったヒロインを狙って、男たち7人が金と家畜と体を奪うべく、ヒロインの荒野の一軒家に襲来する。
ヒロインは食のおもてなしをし、毒を食事に仕込んで食った者を殺し、
ボスに襲われても、ベッド脇にあったナタで反撃し、首を斬り取る。
そして、その首を手にして、警察署へ出頭しようと、トラック・バスに乗って、町へと向かうのであった。
知り合いの妊娠女も同乗。彼女はだんなのとこへ行く。
だが、7人組の何人かが生き残っていて、ヒロインだけでなく、妊娠女にも魔の手が伸びるとゆう展開だ。
5_33
これが女性監督(モーリー・スリヤ)による映画なのに驚いた。
バイオレンスな描写も臆することなく演出していく。
映画的ロングショットをメインに、部屋内シーンでも、センターラインを強調し奥行感を示す。
特に、空と地のロングショットを頻出させて、インドネシアの西部劇的荒野風景を映すところは、映画作家的の本領発揮といったところ。
ラストロールで流れる、マンドリンとインドネシアの民族楽器を使った、フィメール・ナンバーにも魅せられた。
 

2019年6月19日 (水)

岡田准一「ザ・ファブル」

岡田准一のクールイズム現代アクション
暗殺者映画の定石を覆す仕上がり
6月21日の金曜日から、松竹の配給により全国ロードショー。
本作は2019年製作の日本映画123分。
ⓒ2019「ザ・ファブル」製作委員会
6_23
今回は大阪が主舞台なんで、主に関西弁で進行していきまっさ。
暗殺者役に扮した、岡田准一主演アクション映画でおます。
時代劇は別にして、現代劇としては、映画版「SP」(2010年)と並んでやね、ハリウッド映画ばりのアクションの、双璧の仕上がりとなっとる本作やねん。
但し、本作の岡田准一のアニキは、コミカルなオモロイとこも、コメディ・リリーフ的に披露してはります。
そしてでんな、暗殺者映画の、かつてない設定を施した映画になっとるでー。
2_42
暗殺者が1年間普通の庶民として、生きることを課せられまんねん。
しかも、誰も殺さずにそんなことが、ホンマにできまんのかいなとゆう設定や。
まあ、マトモな暗殺者映画には、かつてないところやろな。
親方(佐藤浩市)の依頼で、暗殺者がどえらい悪の虐殺・銃殺を、東京でやってしもた。
この冒頭のミッション・シーン、銃撃シーンは、あっと言う間に、遂行してまうようなミラクルがあって、鮮烈や。
でもって、今回のんはメッチャ激ヤバなんで、親方から1年間どっか(大阪)に潜ってじっとしとけと命じられ、
大阪の親方の知り合いのヤクザ組織の元へ、相棒のネーやん(木村文乃)と共に行かされま。
ほんでもって、殺人は1年間ご法度で、もし犯したら、親方から抹殺されるやなんてことになっとりまんねん。
3_41
この表はマットーな会社組織(会長役=光石研・社長役=安田顕)やけど、裏は本格的ヤクザ組織が、社員組員の向井理と柳楽優弥の間で争っとって、
岡田准一が知り合った素人女の山本美月が、そんな抗争に巻き込まれてしもて、
美月ちゃんを救うために、否応ことなしにその中に入らんことには、どないもならんようになりまんねん。
加えて、東京のライバル暗殺者(福士蒼汰)も、大阪にやって来よって…。
4_34
原作はコミックやけど、コミックにはない大胆なアクション・シーンがクリエイトされとります。特にクライマックスの救出劇は、「ダイ・ハード」(1988年・アメリカ)ばりの、ハットトリックなハリウッド映画チックなアクションが、ドッカーンとやってきよるんで、こら、たまりまへんな~。
5_32
クールイズムな岡田准一と、のほほんな木村文乃ネーやんのコンビぶりも、ミスマッチ感があってオモロイワー。
また、ヤクザ映画ばりの演技でいってまう、柳楽優弥、向井理らの演技ぶりなども、エエ感じでおます。
最後のタイトルロールで流れる、レディー・ガガの世界的に大ヒットした、キャッチーなダンス・ミュージック「ボーン・ディス・ウェイ」が、ドラマを締めるのもカッコエエわ~。
胸キュンやねん!

2019年6月18日 (火)

「ガラスの城の約束」

1_42
アメリカン家族ドラマの傑作
いがみ合いながらも最後には、父娘のキズナがグッとくる仕上がり
6月14日から、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋ほか、全国ロードショー中。シネ・リーブル神戸は6月21日から上映。
本作は、2017年製作のアメリカ映画127分。
ⓒ2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Photo_14
アメリカン家族ドラマ映画は、日本映画の家族ドラマとは違って、お涙ちょうだいなキズナ節へと、帰着することはあまり目立たない。
アカデミー作品賞を受賞した「普通の人々」(1980年)や「アメリカン・ビューティー」(1999年)など、悲劇的な結末へと着地したりすることもある。
の因子の一つには、家族の誰かの死というのがあるみたいだ。
しかし、本作にも誰かの死がある。いがみ合う家族の姿がある。
それでも、最後には家族のキズナへと着地するが、泣ける映画へとは機能していない。
けれど、滋味深い余韻がある。見たあとにウーンとうなれる映画なのだ。
2_41
親子のキズナをメインに捉えた「エデンの東」(1954年)や、「怒りの葡萄」(1940年・モノクロ)などで描かれてきたような、アメリカン家族ドラマ映画の伝統が本作にはある。
その設定の一つとして、家族に問題の人がいるパターンがある。
その家族を軸にして、家族ドラマが展開していく。その人は本作の場合は父親(ウディ・ハレルソン)だ。
4_33
アル中で仕事をしない。借金取立屋を逃れて、家族ともども夜逃げ。
住まいを次から次へと移し、時には野宿生活もする。
本作は、そんな家族の娘が家出して、立派な大人(ブリー・ラーソン)になり、そんな現在地点と過去が、交錯していく構成が採られ、娘ヒロイン視点からの作りになっている。
そして現在、両親(母親役はナオミ・ワッツ)や弟・妹たちは、NYに住む成功したヒロインの近くの、空き家に住んでいるという状況。
でもって、ヒロインには婚約者がいて、仕方なく両親に合わせる羽目になる。
5_31
幼い頃に、エエ加減だった父でも、父との想い出が胸に刻まれているヒロインが、
大人になっても父といがみ合いながらも、最後には…とゆうところが、本作のクライマックスである。
いがみ合う者が和解するというスタイルは、家族ドラマを抜きにしても、
セオリー的ではあるけど、ドラマティックを魅せるドラマツルギーのミソでもある。
3_40
ヒロイン役のブリー・ラーソン。
アカデミー賞主演女優賞をゲットした「ルーム」(2015年・弊ブログ分析済み)の、ヤバイ時にも冷静沈着な演技節が、今回にもよりキリリとなって反映された。
チョー・クセモノの父を演じた、ウディ・ハレルソンとのいくつかのやり取りは、本作の重要な見どころとなっている。

2019年6月14日 (金)

泣ける日本映画「泣くな赤鬼」

1_40
今年の日本映画の、マイ・ベストテン級作品
柳楽優弥と堤真一が、魅せるキズナ・ドラマ
6月14日の金曜日から、KADOKAWAの配給により、全国ロードショー。
ⓒ2019「泣くな赤鬼」製作委員会
今年の日本映画の、マイ・ベストテン級作品となりそうな映画。
高校野球絡みの映画だが、その種の歴代日本映画ではマイ最高傑作だろうか。
何しろ元来、高校野球を素材とした映画には、ヒットしたからといって、ココロに深く残るような作品は少なかったように思う。
これはモチ、ボクの意見なので、「ルーキーズ~卒業~」(2009年)や「タッチ」(2005年)やらがあるじゃないかと反論されても、本作を見てくださいと言うしかない。
とゆうことで、ここでは、高校野球に限定しない、日本の野球映画のマイ・ベスト・スリーを、順不同で言ってみよう。
①瀬戸内少年野球団(1984年)②本作③ダイナマイトどんどん(1978年)
●実は、この3作は、試合シーンをクライマックスに据えた作品ではない。
確かに③などは、ヤクザがトンデモ野球をするコミカル・ノリがポイントだが、大真面目に野球するシーンが、クライマックスにはないとゆう意味だ。
Photo_13
試合の行方が、映画ドラマの行方を左右するのではない。
①と本作は、教師と生徒たちのキズナへと、着地する映画だ。
中でも、本作は、お涙ちょうだい映画を嫌う偏屈者(ボクもそうゆう鑑賞者だった)が存在する中で、
「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)で、クローズアップされた“泣ける映画”にアプローチした作品。不治の病系が取り上げられている。
病気になった、当時「ゴルゴ13」と呼ばれた、OBの野球部選手(柳楽優弥)と、「赤鬼」と呼ばれた監督(堤真一)。
この2人の間で展開する、いわゆる師弟設定の、熱いキズナ・ドラマが根幹にある。
そして、柳楽優弥の妻役となった、元AKB48の川栄李奈などが、泣きのサポート演技を披露し、
そんな登場人物たちを勇気づける、竹原ピストルの主題歌「おーい! おーい!!」がラストロールで流れ来る。
「確かに僕はここにいるんだろう」の力強い歌詞がココロにクル。
2_39
さて、ここで、堤真一と柳楽優弥のそれぞれの、マイ・ベスト・スリーを同率でゆうてみると…。
●堤⇒①ポストマン・ブルース(1997年)②本作③孤高のメス(2010年)
●柳楽⇒①誰も知らない(2004年)②ディストラクション・ベイビーズ(2016年)③本作
●危なげヤワなコミカル①と、マジ医師ヒロイズム③を行き来する堤の中で、本作は絆もの演技の最高作だろう。
無表情な戸惑い①と冷酷非情な②を行き来する柳楽にとって、本作はキャリア最大の人間味あふれる演技ぶり。
いずれにしても、2人と川栄李奈が演じる、クライマックスの泣ける感動系シークエンスには、ぜひとも酔ってもらいたい。

「スノー・ロワイヤル」

5_30
「96時間」を超えたリーアム・ニーソンの頭脳的アクションだ
復讐映画の複雑系を描いた会心作
6月7日から、KADOKAWAの配給でロードショー。
本作は、2019年製作のアメリカ映画119分。
ⓒ2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHT RESERVED
1_39
リベンジ・アクション映画。
ボクが初めて見た復讐映画は、チャールズ・ブロンソン主演の「狼よさらば」(1974年製作・アメリカ映画)だった。
復讐映画の嚆矢ではないが、本作の主演リーアム・ニーソンは、どこかチャールズ・ブロンソンのシブミと被るようだ。
アクション的には、復讐映画ではないが、わが娘を救う自身の傑作「96時間」(2008年)「96時間/リベンジ」(2012年・弊ブログ分析済み)と比肩するものになった。
但し、3部作となった「96時間」シリーズの、ストレートかつミラクルなアクションよりも、頭脳を駆使したヒネリ系アクションになった。
最初の方では、息子殺しに関わったらしい者を、1人ずつ始末しては、死体を断崖から川に落とすとゆう、リフレイン・シーンがあるが、
ストレートな復讐ものというより、複雑系の復讐ものになっている。
3_38
2派に分かれた麻薬犯罪組織の抗争に、主人公が介入するスタイルを採り入れている。
つまり、2組織の抗争に、復讐とは関係なしに介入した、黒澤明監督の「用心棒」(1961年・日本・モノクロ)のようなテイストが、織り込まれているのだ。
2_38
さらに、その抗争図式に刑事たちが参入。
「ダーティハリー」(シリーズ第1弾は1971年)を目指す女刑事だったり、「トップガン」(1986年)のセリフが引用されたりと、ハリウッド映画のヒット作がチラチラと出てくる。
その意味でも、ハリウッド作品を意識した作品と言えるかもしれない。
除雪車を使ったアクションなどにも、新味が見られる。
4_31
リーアム・ニーソンのアクション映画のマイ・ベスト・スリーは、50歳代後半から還暦過ぎの高齢期に製作・公開された、本作、「96時間」、「ラン・オールナイト」(2015年)だ。
「シンドラーのリスト」(1993年)のヒューマニズム演技や、大ヒットした「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(1999年)のアクト演技もいいけれど、
還暦過ぎても娘や息子のためにアクションするなんて、メッチャステキじゃないか。
ということで、本作をリーアム・ニーソン・アクション映画の、マイ・ナンバーワンに選択します。

 

2019年6月13日 (木)

「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」

3_37
父娘がセッションする音楽ムービーだ
父娘のキズナへと着地する感動作
ヒューマントラストシネマ渋谷、シネリーブル梅田などで、全国順次の公開中。
本作は、2018年製作のアメリカ映画97分。
音楽ムービーの新しいカタチを示した快作。
その新味は、音楽を父娘で一緒に披露するとゆう、親子コラボとゆうスタイル。
現実の音楽界では、かつてないスタイルだと思う。
さらにレコード店にまつわる映画としても、大手なレコード店を描くものが多かったけど、
本作は閉店しなければならないくらいの、小レコード店の話だ。
インディペンデント映画らしいスピリッツに満ちた、設定に挑戦的な新しさが見られるのだ。
1_38
元バンドマンの、ちっちゃなレコード店主のオトン(ニック・オファーマン)と、高校生のその娘はん(カーシー・クレモンズ)が、
店の地下で、オトンのギターと娘のボーカルで、時おりジャム・セッションをしている。
ある日、自宅録音したオリジナル・ナンバーを、ネットにアップロードした。
ネット・アップとゆう、現代のトレンドとなっている音楽界の潮流も、見事に反映してみせたのだ。
そして、その曲が、レコード会社からスカウトがくるくらいの反響を呼ぶ。
2人はどうするのかといえば、医大への進学が決まっている娘は、このスカウトに躊躇するのだ。
 
2_37
これまで数多く背景において描かれてきた、NY・ブルックリンを舞台に、
シングルファーザーであるオトンと、女性テナント・オーナー(トニ・コレット)や、レズビアンの娘の恋も描かれて、ドラマにヒューマンな厚みを加えた。
でもって、当然最後は、父娘のキズナへと向かう作りになっている。
2人で作ったバラード・ナンバーを、2人でライヴ披露するシーンは感動的だ。

2019年6月12日 (水)

「嵐電」

2_40
東京ロケに続き多い、京都ロケ映画の中でも、
その真骨頂と手触りのあったかさを示す傑作だ
京都シネマ、テアトル梅田、シネ・リーブル梅田(6月21日~)などで公開中。
本作は2019年製作の日本映画114分。
ⓒMigrant Birds/Omuro/Kyoto University of Art and Design
雷電(らんでん)とは、京都の嵐山をバックに走る嵐山電鉄のことだ。
関西の電鉄を取りあげた映画となれば、「阪急電車 片道15分の奇跡」(2011年製作・当ブログ分析済み)がチョイヒットして有名だが、
その種の映画は「RAILWAYS 49歳で運転士になった男の物語」(2010年・ブログ分析済み)などの、運転手らのヒューマニズム・ドラマや、
「地下鉄(メトロ)に乗って」(2006年)など、電車がタイムマシーンなどにならない限り、
群像劇もしくは、オムニバス・ドラマで展開するのが正解だろう。
そして、本作もそのセオリーに、則ったドラマとなった。
3_39
3話のラブ・ストーリーが展開する。
①中学生たちの青春ラブ・ストーリー。
②売れない映画俳優とウエイトレス(大西礼芳=おおにし・あやか)の恋。
③死んだ妻との恋をファンタジックに描く夫(井浦新)妻もの。
いろんな恋を描いて、そのミキシングで恋の何かを伝える作りは、ユニークだと思う。
しかも、嵐電のキツネ・タヌキのカップル車掌伝説を、ファンタジックに取り入れて、それぞれの恋愛ドラマを弾ませ収斂させてゆく。
1_41
これまでこのブログでも紹介してきた、プロのスタッフたちと京都の大学生たちとの、コラボレーションによる「北白川派映画」の第6弾。
俳優コースの卒業生で、世界3大映画祭のベルリン国際映画祭で、主演映画賞を獲った黒木華らの逸材を輩出する「京都造形芸術大学」の学生たちが参加。
いろんな映画に出まくっている井浦新も 学生たちとの仕事をメッチャ楽しむようで、イキイキしているし、水上竜士や鈴木卓璽監督にとっても、それはおんなじだろう。
現場に出向いたかは分からないけど、暗みある「あがた森魚」の主題歌フォークも、いつになく明るくてポジティブだった。
4_32
京都ロケ映画は、東京ロケ映画に続いて多いロケーション映画だ。
撮影所があるのは、京都と東京だけなんで当然なんだけど、それでもモノゴッツーある京都ロケ映画の中でも、
21世紀のデジタル時代を舞台にしているにも関わらず、京都らしいアナクロニズムと伝統にこだわった作りになっている。
人と人のつながりの中で生まれる、手触りな感覚と絆が、本作には見事に表現されていた。

2019年6月11日 (火)

「町田くんの世界」

4_30
驚きある学園ラブの、かつてない純情作品
大林信彦監督の尾道三部作を、超越した快作だ
6月7日の金曜日から、ワーナーブラザース映画の配給により、全国ロードショー中。
ⓒ安藤ゆき/集英社ⓒ2019映画「町田くんの世界」製作委員会
Photo_12
コミック原作映画の学園ラブストーリーとしては、過去最高の傑作になったと思える作品。
ちなみにそこで、恋愛映画にこだわらずに、学園ドラマ映画のマイ・ベスト・ファイブを順位通りに披露してみよう。
①台風クラブ(1984年)②青い山脈(1949年・モノクロ)③本作④転校生(1982年)⑤桐島部活やめるってよ。(2011年・弊ブログ分析済み)
8_10
●主人公やヒロイン視点で見てみると、視点さまざまな高校生の群像劇となった①②⑤などは、フツーの高校生活をポイントに、ドラマを展開していた。
一方、④などは、男女が入れ替わる特殊設定で、ユニークなストーリーを展開。
けど、主人公・ヒロインのキャラクターに、特異性や面白さがある作品ではない。
採り上げなかった「時をかける少女」(1983年)などは、タイム・ワープできるヒロインとゆう特殊設定があった。
しかし、本作は日常性のあるフツーの世界の中で、特殊設定の主人公を描いている。
あり得ないと思うのは、「時かけ」とおんなじだけど、本作はもっとキャラクターに集中した作品となっている。
8_10
その主人公のキャラは、現代のキリストを描いたような、善意に満ちあふれた、高校生キャラを設定した。
かつてない高校生キャラである。
悪意ある人たちがいる現代の中で、高校生「町田くん」は、バスの中で老人に席を譲るのは当たり前、異性に対しても、「僕の大切な人」などと言って守る立場をとる。
誤解を呼びかねないキャラなのだけど、そんな八方美人な男版とも取れる高校生を、映画はコミカル・モードも入れて描いていく。
6_22
キリストがもし恋愛したなら、どんな風になるんだろうか。
それを、学園ドラマの中で設定し繰り広げてみせた本作は、
今までの学園ドラマ映画の枠を、大きく超越した作品となった。
5_29
キリスト的主人公(細田佳央太)がヒロイン(関水渚)にコクルまでの、ストーリー展開だが、そんな2人は無名の新人が演じ、
有名役者たちがサポートに回るなんてのも、かつてない設定。
そして、この2人の恋愛模様は、もどかしくてハラハラドキドキ。最後まで釘付けだった。
7_16
大林信彦監督の尾道三部作「転校生」「時かけ」「さびしんぼう」(1985年)を上回る、純情恋愛映画を構築した。
監督は石井裕也。
ああ、そうか。
十二分に、納得できる傑作である。
3_36
現時点で、邦画マイ・ベスト2位に入っとります。
言うまでもなく、年間ベストテン級の映画なのは、間違いない映画やねん。

2019年6月 5日 (水)

「THE CROSSING」PartⅠ PartⅡ⇒チャン・ツィイー、金城武、長澤まさみ、ソン・ヘギョの共演

Webthe-crossing-part
「レッドクリフ」以上の感動あふれる、ジョン・ウー監督の大傑作
遂に日本公開される!
6月7日から「Part1」、6月14日から「Part2」が、シネマート心斎橋ほかで公開。
本作は2014年製作の中国映画。「PartⅠ=129分」「PartⅡ=126分」
ⓒBeijing Galloping Horse. All Rights Reserved.
1_37
中国女優チャン・チィイー、台湾俳優・金城武、韓国女優ソン・ヘギョ。
そして、日本からは、長澤まさみが出演した中国映画の大作が、遂に日本公開される。
当時、なかなか公開されず、お蔵入りしていた理由はなんだったのかと思って、この作品をボクは見たのだが、そんなところは全く見当たらなかった。
逆にむしろ、なぜすぐに公開されなかったのかと、首をひねった。
過去の回想でしか登場しない、正面クローズアップがほとんどない、長澤まさみのシーンが問題だったのだろうか。
確かに長澤まさみにとっては、少々不満なとこがあったかもしれないけど、見る側の我々にとっては、何の問題もない。
2_36
何はともあれ、大作感がスゴかった。
Part1はスティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(1998年製作・アメリカ映画)並みの、臨場感あふれる戦争映画のノリ。
そして、後編のPart2は、あの「タイタニック」(1997年・アメリカ)を髣髴させる、パニック・ムービー、さらにラブストーリーとしての泣ける展開のある作品。
ハラドキウルウルが止まらない作品になっている。
3_34
台湾の医者役・金城武の、かつての記憶として、日本での恋人となる長澤まさみ。
中国で娼婦もやってる看護婦役のチャン・ツィイー。
内乱の戦場に夫を送り出し、その帰りを台湾で待つソン・ヘギョ。
こおゆう設定の中で、中国から台湾行きの船「太平号」で、
「タイタニック」的クライマックスを迎えるとゆうのが、本作の大いなる見どころだ。
5_28
初共演となる、チャン・ツィイーと金城武の物語が、メインになっていくが、
2人共に、自然体の演技で、ヤバイとこがあると、それなりにアクション見せて乗り越えちゃう。
何もアクションせずに待ってるのは、ソン・ヘギョだけど、夫とのダンス・シーンなど、ケッコーアクション・シーンはあるのだ。
4_29
オーケストラ・サウンドをメインに、泣きのソロもあるけど、総体的にはドラマティックを旨としたサントラ使い。
加えて、夕景シーンをタイトに繰り出し、クローズアップ&アップを、タイトに挿入していく。
3_35
ジョン・ウー監督作品。
彼の作品の順不同のマイ・ベスト・スリーは、①本作②レッドクリフ(2008年・2010年)③フェイス/オフ(1997年)だ。
③のトリッキーも凄いけど、2部作となる本作や②もまた、大河ドラマ感ある傑作となっている。

2019年6月 1日 (土)

「長いお別れ」だけど、蒼井優ちゃん、結婚おめでとう!

2_34
今年のナンバーワン級の日本映画だ
山崎努・蒼井優・竹内結子・松原智恵子それぞれが
キャリア最高演技の家族映画
5月31日の金曜日から、全国ロードショー。
ⓒ2019「長いお別れ」製作委員会
Photo_7
家族映画は、日本映画の粋とも言えるジャンルだ。
その数は日本映画ジャンルでは、最も多いと思われる。
そんなモノゴッツーなタイトル数の中で、家族映画の、マイ昭和・平成・令和のベスト・スリーを披露とゆうか、
令和は始まったばかりなんだけど、思い切ってやってみると…
●昭和⇒①東京物語(1953年製作・モノクロ)②家族(1970年)③木村家の人びと(1988年)
●平成⇒①万引き家族(2018年)②あ、春(1999年)③ALWAYS 三丁目の夕日(2005年)
●令和⇒①本作②凪待ち(6月28日公開・後日分析予定)③こはく(7月6日公開・後日分析予定)
1_35
●本作と絡めて見てみると、家族映画は、いつの時代にも変わらないことが分かる。
老夫婦と独立したコドモたちとの関係性を描く昭和①では、
本作では、認知症の父(山崎努)に、娘たち(蒼井優・竹内結子)が相談するシーンなどとリンクしていく。
アルツハイマーの親に、フツーはそんなん相談なんてしないよね。
しかし、そこを設けることで、キズナの深みや綾を描いているのだ。
7_15
昭和②は、松竹家族映画の粋を示す、山田洋次監督作だが、
本作ではモチ、家族のキズナ節へと着地する。
平成の②③にも通じるものだ。
血のつながらない家族系は、当然平成①があり、香取慎吾が主演した令和②もある。
それもまた、感動的なキズナものに、着地していくのは変わりない。
3_32
一方において、異能な家族ドラマ、例えば昭和③とか、ワケありの令和③とかがあるけれど、
本作もまた、アルツハイマーの家族がいる映画としては、異能系とも取れる。
しかし、認知症ものの名作「恍惚の人」(1973年)と比べても、随分進化した作りだった。
何はともあれ、山崎努のアルツハイマーを逆手に取ったような、挙動・表情演技のスゴサである。
9_4
山崎努は、ボク的には「天国と地獄」(1963年・モノクロ)の誘拐犯人役や、「マルサの女」(1987年)の不敵なバブル前不動産社長役など、
どちらかというと、エキセントリックな役に魅せられてきたんだけど、本作では、それらを完全に覆す弱々しい繊細な演技を見せる。
「ユーなんだよ」なんて次女役・蒼井優に、アドバイスするとこなんか、絶妙極まりなかったね。
そして、彼に絡む、姉妹役の蒼井優と竹内結子の、恐ろしいくらいに好感溢れる演技ぶりだ。
モチ、オカン役の松原智恵子も、自然体の演技が、日活時代以上に映えていた。
6_20
蒼井優、竹内結子共に、キャリアにおける最高傑作の演技だと見ていい。
例えば、冒頭の遊園地シーンを、ポイントに本編半ばでリフレインして、感動系へともっていく、
中野量太監督の演出ぶりも、ハイレベルのものだ。
同じく家族映画でもあった、宮沢りえ主演のメジャー監督デビュー作「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年・弊ブログ分析済み)のセンスを持続させ、
さらに進化させたそのお手並みは、見事としか言いようがない。
5_26
映画のラストロールで流れる主題歌は、優河の「めぐる」。
優河は、共に役者である石橋凌と原田美枝子の娘さん。
映画にふさわしい癒やし系のナンバーを提供して、映画の余韻と感動を深める。
4_27
とゆうことで、見出しにも書きましたが、今年のナンバーワン級の映画だと思う。
昨年のベストは「万引き家族」だったけど、今年はコレだ。

« 2019年5月 | トップページ | 2019年7月 »