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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2017年9月の記事

2017年9月30日 (土)

9月に見た、マイ年間ベストテン候補映画

●アトミック・ブロンド(シャーリーズ・セロン主演/アメリカ映画/10月20日公開)

http://atomic-blonde.jp/

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●ロキシー(ゾーイ・クラヴィッツ主演/アメリカ映画/10月21日公開)

http://www.roxxy.jp/

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●密偵(ソン・ガンホ、コン・ユ、イ・ビョンホン、ハン・ジミン、鶴見辰吾共演/キム・ジウン監督/韓国映画/11月11日公開)http://www.mittei.ayapro.ne.jp/

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●ヒトラーに屈しなかった国王(ノルウェー映画/12月公開)

http://www.kings-choice-jp.com

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■9月は洋画を4作選んだ。

全ては後日に分析批評いたしますが、いつものように、コピー的に一言コメントをすると…。

ヒロイン・アクションの傑作が、アメリカから2作登場する。

女スパイ・アクションの、最新型を示す「アトミック・ブロンド」。

「キル・ビル」ほどハデではないけど、女リベンジャーを静謐に美しく描いた「ロキシー」。

朝鮮が日本に支配されていた頃の、抵抗運動を描いた「密偵」は、スパイものとしても秀逸。

そして、第二次世界大戦下の、ノルウェーを描いた「ヒトラーに屈しなかった国王」。

タイトルがイマイチだが、戦時の重厚な作りが良かった。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

2017年9月29日 (金)

「パーフェクト・レボリューション」⇒週末日本映画劇場

1
身体障害者と人格障害者の、ラブ・ストーリーだ

リリー・フランキーと、清野菜名の恋愛映画だ

http://www.perfect-revolution.jp/

9月29日の金曜日から、東北新社の配給により、全国ロードショー。

本作は、2017年製作の、日本映画117分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会

11
リリー・フランキーの演技が、リアル感あふれて、傑作ラブ・ストーリーとなった本作。

とゆうことで、ここで、リリー・フランキー主演・出演映画の、

マイ・ベスト・スリー(順位通り)をば、披露いたしますと…。

2
①ぐるりのこと。(2008年製作)②本作③そして父になる(2013年)

●彼は、途轍もない演技派だと思う。

多岐にわたって、多彩な演技を披露してきたけど、中でもラブ・ストーリーとゆうのは、さほど多くはない。

そんな中でも、夫婦愛を描く①と、身体障害者と人格障害者の愛を描いた本作が、

双璧とも言うべき、絶妙!最高クラスな演技ぶり。

③のヒネクレ・ユーモラスな演技もまた、彼の持ち味でありましょう。

3
でもって、本作は身障者が主人公の映画であります。

とゆうことで、障害者が巧妙な演技で、魅せる日本映画の、

マイ・ベスト・スリー(順不同)をば、披露いたしますと…。

4
①本作②どですかでん(1970年)③AIKI(2002年)

●知能遅れな若者を配した、黒澤明監督の②は、映画史にも残る傑作ですが、

でもしか、本作は恋愛映画に、フォーカスした点において、

邦画でも画期的な、障害者ラブものになっています。

身障者のスポ根を描いた③と共に、名作になっても、何ら不思議じゃない、

ココロに深く残る作品を、クリエイトいたしました。

5
さてはて、そんな傑作の本作を、さらに分析してみましょう。

身障者同士の夫妻映画の名作「名もなく貧しく美しく」(1961年)のような、静謐なカンジのラブに対して、

本作は感情の波が激しい、動的な作りになっています。

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何はともあれ、リリー・フランキーの演技が、映画を推進させていきますが、

一方、リリーのお相手役の、清野菜名ちゃんの、個性ある演技ぶりも見逃せない。

元気系かと思いきや、突如ブルージーになり、リリーと心中しようなんて、ホンマにヤッてまう。

でも、どこかコドモっぽくてカワイイ。印象深い演技ぶりでした。

9
そして、リリーを介護する小池栄子の、誠実さ。

菜名ちゃんの、実のオカンやない保護者役の、余貴美子のシブミある演技など、

脇役陣の、ドラマティックに貢献する、ナイス・プレイぶりにも注目。

7
サントラもまた、ドラマを高揚させていまっせ。

銀杏BOYZのロックンロール・ナンバー「BABY BABY」から、

男2人紅3点な5人組「チーナ」が、奏し歌うポップロック「世界が全部嘘だとしても」など。

8
とにもかくにも、これまでにないような恋愛映画。

本作は、そこに尽きるかもしれません。

10
デート・ムービーとしても、OKでしょう。

ぜひとも、みなさん、劇場へ足をお運びください。

2017年9月28日 (木)

「ポルト」⇒アッと驚くヤラシーさ

1_2
特筆のセックス・シーンに、メッチャ驚かされた!

いわゆるコレが、大人のセクシャル映画だ

http://www.mermaidfilms.co.jp/porto

9月30日のサタデーから、コピアポア・フィルムの配給により、新宿武蔵野館やらで、全国順次のロードショー。

本作は、ポルトガル・フランス・アメリカ・ポーランド合作映画の、本編76分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 Bando a Parte - Double Play Films - Gladys Glover - Madants

8
メッチャヤラシー映画は、これまでにひっそりと、10代の少年・少女を刺激せんようにと、いくつか紹介してきました。

けども、本作は、大人にとって、説得力あるヤラシーがある、渋い作品になっとります。

いろんな国との合作映画やけど、いちおう、映画の背景を含めても、ポーランド映画になるでしょうか。

ヨーロッパ映画は、「エマニエル夫人」(1974年製作・フランス映画)を輩出しているだけに、

そのヤラシー感は、アメリカ映画や日本のポルノ映画と比べても、

リアリティーある、生々しいものになっています。

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ポイントはセックス・シーンかもしれない。

けども、いちおう本作は、ラブ・ストーリーでおます。

偶然であれ必然であれ、男と女が出会い、セックスして、

そして、その後は…とゆう、

これまでに、あまりにも多く、出てきた映画なんやけど、

本作は、そいつを大真面目に、オーソドックスにやりながら、

いろんなとこで、新味を見せようとしています。

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その1つが、セックス・シーンの造形です。

いくとかいかないとかが、問題になったりしたり、立つとか立たないとか、ぬれるかぬれないかとか、ビミョーにイロイロあるけど、

本作のセックス・シーンの作りは、チョイとかつてないもんになっとります。

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ベッドインしての、見つめ合っての長回し撮影とか、

愛に関するプルーストの言葉とか、「忘れられた事柄は失われない」のセリフとか、

ラブ・ストーリーのための、多彩な因子が、胸をときめかせます

恋愛映画の、マニュアル的セオリーを踏襲しながらも、

ここかしこで何やら、崩してゆくような作りが、ある意味で心地よかった。

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主人公役の、ロシア出身アントン・イェルチンの、クールイズムもエエけど、

ナンチューても、フランス女優ルシー・ルーカスの、

説得力ある脱ぎっぷりと、悶えぶりが、メッチャ良かった。

フツーに、ヤラシーんじゃない。映画的演技としてのヤラシー感が、素晴らしいのだ。

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時間的に、薄ブルーとセピアなシーンを、ビミョーに使い分けた作りも渋かった。

そんな色遣いに加え、ポルトの自然描写も、挿入していて美しい。

10
さらに、サントラ使いも特注だった。

冒頭で、オールド・ロック・ナンバーから、ジャジーなピアノ・ソロへと転換したり、

タイトにピアノを流し、バイオリンなんかも入れてゆく。

ラストロールでは、ココロに残るピアノ・ソロが披露される。

9
「ラストタンゴ・イン・パリ」(1972年・イタリア&フランス)やらとは違い、あくまで誠実なラブが描かれております。

でも、ヤラシーな感触は、おんなじですやろか。

7
とゆうことで、セクシーなラブ・ストーリーの、

在り方を問うような作品でした。

「ブラッド・スローン」

1
刑務所映画の、泥臭い骨太作品だ

アウトローたちの、ベタベタな闘いが展開

http://www.bloodthrone.jp

9月30日のサタデーから、松竹メディア事業部の配給により、新宿シネマカリテほかで、全国順次のロードショー。

関西やったら、10月7日から、MOVIXあまがさきで上映。

本作は、2016年製作の、アメリカ映画121分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2015 Shot Caller Films, LLC. All Rights Reserved.

刑務所もの映画となれば、ボク的には、洋画より邦画の方が、目立つ娯楽作品が多いように思う。

けども、洋画でも、スゴイ作品が、時おり出現している。

そのスタイルを見てみると、

おおむね3つの内容に、

区分されるようだ。

「パピヨン」(1973年製作・アメリカ&フランス合作)、

「暴力脱獄」(1967年・アメリカ)のような、

脱獄をポイントにしたもの。

2
「ミッドナイト・エクスプレス」(1978年・アメリカ)のように、不当な監獄生活を描くもの。

そして、「ショーシャンクの空に」(1994年・アメリカ)のように、刑務所内での、人間ドラマやアクションが展開するもの。

でもって、本作は、主人公のムショ内の生活と、出所後の話が、

カットバック的につづられる、構成と内容になっています。

つまり、ムショでの話が半分、出てからの行動が、半分といったカンジで展開。

6
出所を前にして、主人公のナレーション入りで、

主人公が息子への手紙を、書いてるところから、物語は始まります。

そして、主人公が飲酒運転で、友人を死なせてしまい、罪に問われて、ムショ入りした過去が描かれ、

でもしか、ムショ内では、全く違った悪人・ギャングたちとの絡みで、新たな犯罪に巻き込まれるとゆうか、

殺人までやらされ、さらに出所後にも、犯罪をやらなければならないようになってゆくのです。

しかも、家族を傷つけるぞと脅されて、別れてるけど家族を守るために、

否応ことなしに、ヤラんといかんわけなんです。

4
刑務所内での、2派に分かれてのバーサスと、出所後の犯罪がリンクし、

また、ヨメと息子との相克もありで、悩み深き主人公の姿が、濃密に描かれて、

ボクらも、身につまされるような気分になります。

3
ピアノ、バイオリンなどの弦楽、重たいシンセなどのサントラを、巧みに織り込んで、

泥臭い男たちの、骨太のドラマを、重厚に包みます。

ベタベタなカンジがある。

いわば、ヒップホップをバックにした、ブラック・ムービーの犯罪映画の、ノリみたいと言えばいいだろうか。

ボクはあんまし、そういう映画は好きじゃないけど、

でも、本作は、最後の主人公のバトルまで、スリリングに見られた。

5
よく知らない役者さんが出てはるけど、まあ、そんなのはヨコに置いといて、映画を見てみてくだされ。

刑務所に入って、人間がどう変わるかのドラマでもあり、

その意味でも、ムショ映画の新味を、見せていると思いました。

2017年9月27日 (水)

「僕のワンダフル・ライフ」

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洋画では過去最高の、感動的なイヌ映画だ

映画史上初! 生まれ変わるイヌの、輪廻転生映画

http://www.boku-wonderful.jp

9月29日のフライデーから、東宝東和の配給により、全国ロードショー。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画100分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

2
感動的な泣けるイヌ映画は、ボク的には、これまでは日本映画にしか見られなかった。

でもしか、ここに洋画として、初の感動のイヌ映画を、見させてもらったぞい。

名犬ラッシー、ベンジー、ベートーベン、ディズニーものなど、洋画のイヌ主演映画は、いっぱいあれども、

決してココロに残る感動は、ボクは得られなかった。

だが、本作を見て、ガラリと一変したのだ。

3
さて、ここで、洋画のイヌ映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順位通り)を披露する。

●ベスト⇒①本作

②犬の生活(1918年製作・アメリカ・モノクロ・サイレント)

③マイ・ドッグ・スキップ(2000年・アメリカ)

●カルト⇒①ターナー&フーチ/すてきな相棒(1989年・アメリカ)

②クジョー(1983年・アメリカ)

③フランダースの犬(1998年・アメリカ)

4
●チャップリン主演・監督のベスト②が、イヌ映画のルーツだと思うが、

あくまでイヌは、感動の基にはなかった。

本作でも一部あるが、コドモと犬の交流を描いたベスト③や、

感動の泣ける話のある、名作の映画化カルト③なども、

いわゆる人とイヌの想起される、定番系の決着へと進んで、感動は深くはなかった。

むしろ、刑事の相棒映画系で捉えた、コメディのカルト①や、

パニック系で描いたカルト②の方が、映画的ダイナミズムがあった。

5
そして、本作だ。

イヌが何度も輪廻転生(りんねてんしょう)して、イヌ魂が生き返るとゆうスタイルで、イヌ映画を構築した。

人間はあったかもしれないが、イヌが転生やなんて、かつてありません。

イヌを転生さしてどないやねん、と思われる方もいるでしょうが、

これが愛する最初の飼い主を、求めてとゆうスタイルならば、

実に大きなドラマティックを、呼ぶんであります。

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イヌのナレーションで、お話が進むとゆうとこもいい。

生まれ変わって、最初の飼い主とは違う主人に、でもしか必死につかえてゆくイヌの姿さえも、

感動編が続くのであります。

警察犬になって、殉死したり、飼い主の恋を成就させる、キューピッドになったり、

でもって、一時は飼われたけど、捨てられたり…。

7
捨てられた時。彼はさすらい、そして、懐かしき風景と、最初の主人(デニス・クエイド)にたどり着く。

そして、そして、感動のシークエンスへ。

最初の飼い主の、男の子とのエピソードが、本編の前半で、かなり濃いめに描かれております。

さらに、男の子の成長と恋愛とその破局を、イヌは見守るのでした。

そしてそして今、中年の大人になった、デニス・クエイドだけじゃない。

破局した恋愛相手の、ペギー・リプトンとも、再会するのでありました。

そして、そして…。

8
いずれにしても、イヌ映画の洋画で、初めてボクは感動したのでありました。

「ハチ公物語」(1987年)、「さよなら、クロ」(2003年)、「南極物語」(1983年)「クイール」(2003年)など、

泣けるイヌ映画の宝庫とも言える、日本映画群をも超える、映画的ミラクルな作りは、

永く記憶に残る傑作になったと言えましょう。

ぜひ、家族一同で、ご覧になってください。

2017年9月26日 (火)

「スイス・アーミー・マン」

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死体になっても、ハリー・ポッターはマジカルやー

世界初の、死体との相棒ロードムービー、登場中!

http://www.sam-movie.jp/

9月22日から、ポニー・キャニオンの配給で、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作のアメリカ映画97分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 Ironworks Productions, LLC.

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2人組ユニット「ダニエルズ」が、監督した映画だが、

映画作りを、狂気の沙汰と考えているだけに、リアリティー無視、ハチャメチャ破天荒ながらも、

これまでの映画にないような、トンデル作品を作ってきたでー。

相棒映画、ロードムービー、サバイバル映画など、いろんな映画の要素を含みながらも、

死体が何と、生きてる主人公の、相棒となるとゆうだけで、

もってのほかの奇天烈(きてれつ)映画を、ボクは期待した。

そして、その期待度合いは、100パーセント達成されたんと違うかな。

10
孤島に主人公(ポール・ダノ)が1人、漂流したなんてのは、ロビンソン・クルーソーまがいだけど、

でもしか、主人公のそばに死体(ダニエル・ラドクリフ)が横たわり、

その死体が、主人公を、写真上から1、2枚目のように、

人間ボートになって、島から陸まで運んでくれるんですわ。

そんなバカな~なんやけど、このイントロからして、意表を衝き、荒唐無稽ぶりを開陳。

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ここで、何やねん、そらー、と席を立てば、何もかもおしまいやけど、

実はでんな、おもろいのは、陸に戻ってからですねん。

森の中を、主人公と死体が、さまよいロードムービーするんであります。

このエピソードこそが、本作の大きな見どころとなっているんですわ。

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主人公が死体と共にゆく、ロードムービーとなれば、

サム・ペキンパー監督の「ガルシアの首」(1974年製作・アメリカ映画)なんかを思い出すけど、

でもしか、死体がホンマの相棒に、なるなんて設定は、本作のユニークな、オリジナル・ポイントであり、

また、逼迫度の高かった「ガルシアの首」とは違い、ユーモラスで、

友情ものとしての、質度もあって、アメリカン・ニューシネマの、現代的変形型にも見えてくるのです。

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下ネタ連発の会話も、アホらしいけどニヤニヤできるし、

最後には、死体が主人公を背負うなんちゅう、究極の展開もあり、

でもって、ホンマの最後には、どんでん返しも、ちゃんと用意してはりまんねん。

あらまー、なんじゃそら、ポテチン(ビックリ)ですわ。

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悩ましき主人公役が似合う、ポール・ダノ。

そして、彼を救う死体役には、「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフが、

「ハリー・ポッター」とはまた違う、マジカル演技を披露する。

しかも、微妙で微細な演技が要求される役柄で、演技派的を存分に発揮できる設定。

それに、十二分に応える演技をば、見せてはりまっせー。

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歌ものサントラをメインにした、サントラ使いもカッコイイ。

スロー・ナンバーの、大人しめのバンド・ロックが多いけど、

ノリノリの歌が多い、この種の映画での、使い方としては異例。

そのあたりの妙味も、お楽しみくだされ。

「おクジラさま ふたつの正義の物語」

1
「ザ・コーブ」へ、もの申すようなドキュメンタリー

アンチなのか、アンサーなのか、見る人次第だ

http://okujirasama.com/

エレファントハウスの配給により、渋谷・ユーロスペースで上映中。

9月30日の土曜日から、第七藝術劇場など、全国順次のロードショー。

本作は2017年製作の、日本・アメリカ合作の本編97分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ「おクジラさま」プロジェクトチーム

2
文化映画・記録映画とも言われる、ドキュメンタリーだが、

今や多岐にわたり展開しております。

社会問題ドキュ始め、セレブ含む人間ドキュ、

音楽ドキュ、バレエ・アートなどの特定のジャンルに、特化したドキュなど、多彩です。

でもしか、本作の立ち位置は、どうなのかとゆうと、

ある作品、ここでは「ザ・コーブ」(2009年製作・アメリカ映画・弊ブログ分析済み)に対して、

もの申すな反論、もしくは、反論的を監督の意見を入れずに、淡々と記録した映画となるでしょうか。

6
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、話題になった「ザ・コーブ」を、

まず見ないことには、本作を見れない、とゆう内容になっています。

レンタルやらで「ザ・コーブ」を見てから、見に行くべきでしょうか。

イルカ・クジラ漁で生活している、日本のちっちゃな漁村・和歌山・太地町の、そのイルカ漁の実態を、淡々と紡ぎ、

そして、イルカ・クジラ保護を訴える団体の、ストレートな抗議を伝えて、

パッと見では、衝撃的な作品だった。

3
但し、そこには、イルカ・クジラ漁でしか生活できない、漁村の人々の意見や反論は全くなかった。

いわば、漁村の人たちがワルのような、また、勧善懲悪なノリが、映画のバランスシートを失くしていた。

でもしか、本作では、そこが大きく解消された作りになっています。

4
漁民たちの話を聞くべく、1人の外国人ジャーナリストが、

太地町に住み付き、地元の人たちと交流してゆくのです。

でもって、地元民のキモチへと、食い入っていく。

フツーなら、監督自らが、その役目をやるもんですが、

本作では、特殊な方にその役目をやってもらった。

偶然か、ヤラセかは、分かりませんが、

いわば、「ゆきゆきて、神軍」(1987年・日本)の、主人公役を、あえてのように設定したのです。

7
漁民の忌憚なき意見や感想。

日本各地の土地ごとに、ユニークな食があること。

クジラ供養碑や、クジラまつりの様子。

敵対する2派の公開討論など、いろんな角度から、

太地町のスタンスを、支持するとゆうのではなく、また、押しつけもなく、ありのままに採り上げています。

だから、見る人によって、意見や感想が変わってくるような、フレキシブルな仕上がりになっているのです。

「ザ・コーブ」へのアンチなのか、アンサーなのか、

それは見る人に、ゆだねられているわけ。

5
監督は女性監督の、佐々木芽生(めぐみ)。

初監督作となった、アメリカで撮った、夫妻ドキュ「ハーブ&ドロシー」(2009年・アメリカ)が、

オスカーの長編ドキュ賞に、ノミニーされた。

「ザ・コーブ」とは違って受賞は逸したけど、人のキモチへと肉迫する人間ドキュぶりは、ココロ揺さぶられたし、

それは本作にも反映されています。

「ザ・コーブ」で衝撃を覚えた方は、本作では、

その衝撃をゆるめて、逆に癒やされるような作りになっているので、ご安心ください。

2017年9月22日 (金)

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」⇒日本映画特選4

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スリリングでハットトリックな、群像劇が展開

東野圭吾原作映画の最高傑作だ

http://namiya-movie.jp

9月23日の秋分の日から、松竹の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会

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本作は、東野圭吾原作映画です。とゆうことで、東野原作ものマイ・ベスト・スリーを、順位通りに言いますと…。

①本作②秘密(1989年製作)③容疑者Xの献身(2008年)。

東野圭吾と言えば、モチ、持ち味は本格ミステリーであります。

1984年のデビュー以来、本格ミステリーへ、ほとんど常にアプローチしてきたけども、

時には、ちょっと趣向の違った、ファンタジーとか、ラブ・ストーリーとかを披露するけども、

でもしか、それでも、ミステリーであることを、忘れない作りを、常に心がけています。

そんな中でも、②③とは違い、本作は、SF系ファンタジーを取り入れてるんだけど、

でも、ミステリー的ハットトリックを維持しながらも、

群像劇人間ドラマとしての、キズナ系に着地する傑作となった。

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キズナ的に、泣かせるような役者さんが、そろってはります。

まずは、西田敏行。

悩み相談に答える、雑貨屋店主とゆう役柄は、

「釣りバカ日誌」ハマちゃんの、スチャラカとは違うけど、人情味あふれるキャラクター。渋い。

一方で、現代編の、若手役者たちの演技も良かった。

「Hey! Say! JUMP」のメンバー山田涼介や、村上虹郎ら、

硬軟両用の演技で、過去の謎と向き合う姿勢、

そして、サプライズへと、まっすぐに向き合う、ラスト・シークエンスなど、

印象深いシーンに関わっています。

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西田敏行に相談する役の、尾野真千子や林遣都らもまた、

ドラマティックな渦中に放り込まれて、感動的な演技を披露してはります。

ミュージシャンを目指す林遣都の、泣けるエピソードは、前半の見どころ。

でもって、後半部では、尾野真千子ネーさんが、現代までつながるエピソードを、ドラマティックに体現。

グッとくる、サプライズ・ラストシーンに、大いに貢献してはります。

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監督は廣木隆一。

イロイロイッパイ撮ってはるけど、本作がキャリア史上一番トリッキーになった作品でしょうか。

そして、山下達郎が、作曲者の林遣都や、門脇麦が歌う曲を提供。

ラストロールでは、練り上げられたその曲が、山下達郎自身のボーカルで披露されます。ココロ震えました。

ラストロールのウタだけで、ベストテン級やなんて思うなんて、おかしいけども、ボクは強くそれをば、カンジてまいました。

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とゆうことで、感動の群像劇映画の、在り方を示した傑作の本作。

はっきり言います。永くココロに残る作品でした。

みなさんも、ぜひとも、劇場へ見に行って、ご確認ください。

「ハー・マザー 娘を殺した死刑囚との対話」⇒日本映画特選3

1

被告人と被害者オカンの、壮絶な静かなる対決

インディーズ映画の粋と心意気を示した傑作

http://www.hermother-movie.com

渋谷プロダクションの配給により、10月6日の金曜日まで、東京・新宿K's cinemaで上映中。

9月23日から名古屋シネマスコーレ、その後、大阪シネヌーヴォなど、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、日本映画95分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

4
インディーズ映画の今は、どうだろうか。

ATG映画などは、日本映画の在り方を変えた、大きな波になったけども、

今は、インディーズはインディーズのまま、

時代を撃つことも、ヒットすることもさらになく、沈下していくであろうと言われている。

インディーズ映画はもはや、趣味や自己満足の世界でしかないのか。

しかし、もの申したい。

時に、ディープ・インパクトな、作家性のある映画が、突然変異のように現れてくる。

「キネマ旬報」の年間ベストテンでは、そんな映画が毎年、必ずベストテン入りしています。

5
インディーズ映画らしさとは何か。

それは、ATG映画でほとんどすべての、ファクターが披露されたけども、

まだまだ革新的な素材はあります。

普通のような物語はいりません。

でもって、本作を見てみると…。

被害者と加害者の、ある意味タブーな、迫真的ドラマが展開するのです。

その突き詰めた、究極系は、メジャーの裁判映画や、冤罪系の映画では、

決して描き切れないような、危ない領界に入っています。

2
結婚した娘が、そのダンナに殺された娘のオカン。

事件の鍵を握る、娘のスマホを密かに手に入れるが、暗証番号が分からず、開くことができない。

裁判で、被告のダンナは、自分の罪を軽くするハズの、妻のスマホについて言及するけど、結局1審で死刑判決になる。

でもって、控訴。

一方、娘のオカンは、オトンと揉めて、別れてしまう。

それから、6年後へ。

この6年後からの展開が、フツーじゃなく、

そして、相反しますが、スリリングかつハラドキに、静かな緊張ドラマが、紡がれるのであります。

6
別れた夫の、娘のオトンは、宗教に救いを求め、なおかつ被告のとこに面会して、被告を許そうと思い、

その気持ちを、別れた妻・娘のオカンに伝えた。

そしてその後、オカンとヨメ婿死刑囚の、拘置所での対面シーンが、

何回も緊張感に満ちて、展開することと相なります。

3
有名な男優・女優は、1人も出ていない。

けども、魅せる。

ハラハラドキドキ、サスペンスがある。

2時間ドラマなんかより、よっぽど印象深い、ドラマツルギーと衝撃がある。

ラストロールを中心に流れくる、バイオリンなどの弦楽と、ピアノのサントラ使いも、クールで良かった。

被害者家族視点の、新たな問題を提示した本作。

正直言って、マイ年間ベストテン級の映画です。

インディーズ映画なので、ベストテンに投票するような、どれだけの映画評論家・映画ライターが、見るかどうか分からないしビミョーだけど、

それでも、ベストテンに入るべき作品だと思いました。

2017年9月21日 (木)

乃木坂46の「あさひなぐ」⇒日本映画特選2

1
アイドル映画の、醍醐味あふれる快作だ

みんなでやってみような、チーム・プレーぶりも爽快

http://www.asahinagu-proj.com

9月22日の金曜日から、東宝映像事業部の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 映画「あさひなぐ」製作委員会

ⓒ2011 こざき亜衣/小学館

2
アイドル映画といえば、

アイドルの言葉が一般化した、1970年代前半から、これまで綿々と、作られ続けてきました。

1人のアイドル主演ものが多かったけど、

アイドル・グループの、群像劇的スタイルは、

SMAPの「シュート!」(1994年製作)以来、イロイロと作られてきました。

4
ジャニーズのグループものに対し、

こちらは、AKB48グループ・ファミリーの、女子グループもの。

そして、高校学園ものとして、

みんなで何かに、ガンバってみような、チーム・プレーな作品になっています。

6
「スウィングガールズ」(2004年)や、「がんばっていきまっしょい」(1998年)のような、

さわやかな見ごたえのある、快作になっています。

9
乃木坂46のメンバーたちが、主導権を握って、物語は展開します。

でもって、2高校の対決へと、フォーカスしてゆく。

8
描かれるスポ根ジャンルは、「なぎなた」であります。

モチ、なぎなたを採り上げた映画は、かつてありません。

映画史上初となる、なぎなた映画なのです。

7
そんななぎなたのために、みんなで寺に合宿しての、特訓シーンもあります。

スパルタ特訓をするのは、江口のりこ。

その猛稽古ぶりは、すさまじい作りになっています。

対して、顧問の先生役・中村倫也(ともや)の、

のほほんなスチャラカぶりは、江口のりこと、見事な対比演技になっていました。

10
さてはて、本作は、今やトレンドになっている、コミック原作の映画です。

コミックらしい、ユニークなキャラが、目白押しなのですが、

どの女の子も、魅力的なキャラを示していて、

彼女たちの、演技アンサンブルやカルテットによって、

アイドル映画らしい、胸ドキドキが止まりません。

14
最後に強烈な戦いをする、メガネをかけた西野七瀬。

ヤンキーなツンツン系の桜井玲香。

のほほん元気系の松村沙友理。

最後まで、シビア・シリアスを貫く白石麻衣。

頼りないリーダーの、伊藤万理華や、好敵手となる、生田絵梨花など、

彼女たちの、熱血の演技ぶりに魅了されます。

17
アイドル映画を撮り続けている、英勉(はなぶさ・つとむ)監督作品です。

これまでを振り返りますれば、

北川景子の「ハンサム★スーツ」(2008年)から、

桐谷美玲の「ヒロイン失格」(2015年・弊ブログ分析済み)、

土屋太鳳の「トリガール」(2017年・ブログ分析済み)まで、

主にヒロイン・アイドル映画が、メインだったけど、

本作で初めて、グループものにチャレンジ。新境地を拓いています。

15
何はともあれ、なぎなた対決シーンのクリエイトぶりは、

血わき肉躍るような、仕上げになっています。

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アイドル映画の、新たな次元へと、踏み込んだ本作。

乃木坂46ファン以外にも、十二分に通じる作品でした。

2017年9月20日 (水)

「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」⇒日本映画特選1

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妻夫木聡が奥田民生目指して、ガンバるラブ・ストーリー

でもって、水原希子ちゃんの悪女映画でもあります

http://tamioboy-kuruwasegirl.jp/

東宝の配給で全国ロードショー中。

本作は、2017年製作の、日本映画1時間40分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「奥民ボーイと狂わせガール」製作委員会

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特選日本映画と表記してますが、

これからの邦画の方向性や、ヒットの在り方を示すような映画を、

4作にわたって採り上げてみます。

第1弾の本作。

コメディのようでコメディじゃない、ラブ・ストーリーのようでそうじゃない、

異彩で異能で、なんじゃそらな、スチャラカな作品です。

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あれはれ、とにもかくにも、やられました。

実名の人入りの映画では、「マルコヴィッチの穴」(1999年製作・アメリカ映画)に迫るような怪作やけど、

ジョン・マルコヴィッチが出演した、その作品とは違い、本作では、奥田民生は出てきません。

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私事で振り返りますれば、民生=タミオがホンマに出てきた映画「カスタムメイド10.30」(2005年)を、

「別冊宝島 音楽誌が書かないJポップ批評 奥田民生」で、音楽映画として、マジで批評いたしましたが、

本作はその映画を、遥かに超えたトンデモナサで、披露した映画であります。

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音楽映画やなく、まあ、あえてゆうなら、ラブ・ストーリー。

三角だけやなく、多角関係のラブ。

ラブラブ・シーンもあるけど、男と女、それぞれのスタンスと生き方を、

ある意味で、ストレートに描いた作品であります

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奥田民生に魅せられて、彼になりたいと思いつつ、編集者の仕事を、直球勝負のストレートに、こなしてゆく主人公。

妻夫木聡が、絶妙なカンジで、演じ抜いています。

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でもって、妻夫木クンの恋のお相手役は、水原希子ちゃん。

何人もの男を、手玉に取る悪女な役ながら、

そんなワルぶりを、カンジさせずに、演技していくとゆうのは、ある意味でスゴかった。

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脇役たちも、強烈かつエキセントリックな役者たちが、揃い踏みであります。

ファッションライター役のリリー・フランキー、

女社長役の天海祐希、

マンガ・コラムニスト役の安藤サクラ、

水原希子ちゃんに操られる、編集者役の新井浩文、

編集長役の松尾スズキら。

特異なドラマに、より特異なキャラで、みなさん演技していました。

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でもって、本作は大根仁監督作品です。

ミュージカル「モテキ」(2011年・弊ブログ分析済み)、

群像ラブ・ストーリー「恋の渦」(2013年・分析済み)、

いろんな編集者たちやライターを、多彩に採り上げた「バクマン。」(2015年・分析済み)、

福山雅治主演の「SCOOP」(2016年・分析済み)など、

これまでの日本映画にはないような、ユニークな切り口とテーマが、常に斬新な感触があります。

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そして、本作は編集者もの映画の中でも、三角関係ラブ・ストーリーの最新型を、示す快作品となりました。

ぜひとも、映画館へ見に行ってください。

2017年9月19日 (火)

「オン・ザ・ミルキー・ロード」

11
今年の洋画の、ベストテン級作品だ

エミール・クストリッツァ監督最高の、エンターテイメント作品だ

http://www.onthemilkyroad.jp

公開中。本作は、2016年製作の、セルビア・イギリス・アメリカ合作の125分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒLove and War LLC 2016

1
戦時のラブ・ストーリー映画とくれば、これまでに、多数のタイトル数があります。

名作と言われる映画で言えば、

君の瞳に乾杯!、ナンチューキザなセリフが、オイオイな「カサブランカ」(1942年製作・アメリカ映画・モノクロ)など、

これまでは、シリアス・シビアな展開の映画が多かった。

2
コメディ調もあるけど、本作は、フツーに描けばコメディだろうけど、

戦時のリアリズムを構築した上で、映画的大仰さを取り込んで、

「カサブランカ」をドッカーンと、はずしてはずしてはずしまくった、トンデモ大怪作となった作品だ。

3

本作は、ユーゴスラビア・サラエボ出身の、エミール・クストリッツァ監督の作品で、本人が主演もしてはります。

ゴリゴリの映画ファンなら、知ってはるやろけど、大衆的にはどうかですが、

いずれにしても、映画史に残るであろう監督の、最新作であります。

5
共に監督作品ですが、

反戦映画として戦時を、防空壕的地下世界の異空間で描いた「アンダーグラウンド」(1995年・フランス&ドイツ&ハンガリー)と、

戦時のラブ・ストーリー「ライフ・イズ・ミラクル」(2004年・フランス&セルビア)。

その両作がミキシングされて、

いわば、フツーな言い方で申しわけありませんが、

監督の集大成的な作品となりました。

10
①生き物・動物の、ディープ・インパクトな使い方。

②印象深いサントラ使い。

③トンデモないモンの出現。

④特異でミラクルな女優の演出ぶり。

などが、際立っております。

4
①について。

イヌやロバなんかは、フツーな使い方かもしれへんけど、

本作では、ヘビやハヤブサの、これまでに使われたことがないような、

また、本作にしかできないような、ユニークで異彩な起用ぶりが、強烈至極でありま。

見てのおかえりなんやけど、

いわゆる、主人公の味方的な、エエ使い方なんであります。

9
②のサントラ使いやけど、

監督の作品は、ブラス・サウンドを中心に、前向きで躍動的なサントラ使いが、いつもココロにきます。

本作では、ダンサブルなビッグバンド的歌ものから、

スローで抒情的な曲まで、シーンに合わせた、絶妙な流し方をしてはります。

8
③。戦場へミルクを届ける仕事をする、主人公クストリッツァの設定は、特殊でオリジンある設定だと思う。

戦場らしいビビッド感と、スリリングも取り込んで、ハラハラドキドキがあった。

最初の方に出てくる、人を傷つけるトンデモ時計塔の存在など、意表をつく設定が、随所にあります。

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そして④。

監督主人公の、お相手となる女優、モニカ・ベルッチのネーさん。

このところ、ハリウッドに背を向けて、各国の名匠監督との、コラボレーションが続いていますが、

ハリウッドではできない、演技の機微の絶妙が、本作でも滋味深く発揮されています。

7
後半の、愛の逃避行の、川から滝へ、牧羊に地雷など、

ロードムービー的ハラハラ・血わき肉躍るに、目が点になることでありましょう。

クストリッツァ監督的には、キャリア最高のエンタ作品にして、

作家性的にも、マイ最高傑作の「アンダーグラウンド」に、迫るような傑作でした。

2017年9月15日 (金)

「あさがくるまえに」⇒フランス映画特選4

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心臓移植を、詳細に描いた衝撃作品だ

提供する側と提供される側の、熱いドラマがシンクロナイズ

http://www.reallylikefilms.com/asakuru

9月16日の土曜日から、ヒューマントラスト渋谷、シネ・リーブル梅田ほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、ベルギーとの合作となった、フランス映画104分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒLes Films Pelldas, Les Films du Belier, Films Distribution / ReallyLikeFilms

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映画が続く限り、これからもフランス映画を、分析批評していくわけですけども、

近々公開となった作品に、焦点を当てた、分析第4弾です。

フランス映画は時に、シリアスで重たいテーマを、真摯に描く映画が作られます。

本作もそんな1作となった。

臓器移植の中でも、最も厳しい心臓移植を、映画として初めて、詳細に描いた映画でありましょうか。

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女性監督(カテル・キレヴェレ)による作品。

最近、特集上映された、ヌーヴェル・バーグ派に近い、アニエス・ヴァルダや、小説家マルグリット・デュラスなど、

1960年代頃から、フランスの女性監督ムーブは、静かに潜行するように出てきましたが、

今やいつの間にか、当たり前のように、女性監督作品が公開されています。

今年日本公開された作品では、ボク的には本作は、

ミア・ハンセン=ラブ女優監督の「未来からこんにちは」(弊ブログ分析済み)と、

甲乙付けがたき作品となっています。

7
確かに心臓移植なら、「HEART」(1998年製作・イギリス映画)なる映画などがあるけども、

移植手術の詳細は描かれずに、移植した側された側の、ミステリー・サスペンスな、ドラマになったりしてましたが、

本作は、あくまで、移植手術をクライマックスにして、

2家族のドラマを、対比的に描き、

また、関わる医者たちのドラマも入れて、

移植にまつわる、群像劇的ドラマを、

ドラスティックかつ、ドラマティックに、描いてゆくのです。

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交通事故で息子が脳死状態になり、

ある医師から臓器提供を、お願いされる、父母のドラマにおいては、

まずは、息子の青春ドラマが、軽快に紡がれます。

ガールズ・ポップに乗っての、サーフィン・シーンや、追想シーンの、ラブ・ストーリー部など、

戦争で両手両足を失くした、主人公を描く「ジョニーは戦場へ行った」(1971年・アメリカ)の、

過去の甘やかなシーン描写と、リンクしていくようでした。

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片や、提供される側のドラマも、同等に展開しますが、

心臓病のオカンと、2人の大人になった、兄弟息子のお話です。

「E.T.」(1982年・アメリカ)のパロディー映画を、見たりのシーンのほかに、

マザコンなんと違うのん?なんてゆうシーンが、いくつかあるけども、

オカンのレズ・シーンなんかもあって、ケッコー複雑系で展開しております。

でもしか、提供する側される側のドラマは、

従来のこの種のドラマの、セオリー通りで、シンクロはなく、モチ2家族の交流はありません。

でも、むしろシンクロさした方が、オモロなるんとちゃうのん、とゆう声もあるかもしれへんけども、

もしそうしていたら、新しい次元が、あったかもしれないけど、

ボクは、あくまでリアリズムに徹した、本作の流れは、正解だったと思います。

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背後からの移動撮影の頻出、

ピアノ・ソロ・サントラの、ひっそりな使い方など、

ドラマを盛り上げるとゆうより、むしろ紛うことなき真実に、向き合うための、フック的作りに、

妙に、ココロ打たれた作品でした。

女性監督による、とことん真摯な作品です。

みなさんも、ぜひ向き合って、見てみてください。

2017年9月14日 (木)

「汚れたダイヤモンド」⇒フランス映画特選3

121世紀のフィルム・ノワール的映画を、問うような問題作だ

リベンジ映画と、犯罪ものがブレンディー

http://www.diamantnoir-jp.com/

9月16日のサタデーから、エタンチェの配給により、渋谷ユーロスペースほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、ベルギーとの合作による、フランス映画115分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒLFP - Les Films Pelleas / Savage Film / Frakas Productions / France 2 cinema / Jouror Productions

5
フランス映画を、オオマジで分析する第3弾です。

第1弾の「追想」もそうだったけど、本作は、リベンジが1つの、キーになった作品。

但し、フランス映画が嚆矢となる、フィルム・ノワール、いわゆる犯罪映画のノリを、

濃厚なタッチで、リベンジものに、付加したような作品となった。

主人公が、盗人犯罪をやっていた、そのボスとの関係性など、

かつてのジャン・ギャバンとアラン・ドロンの、ノワール映画のノリがあり、ボク的にはググッときました。

6
フィルム・ノワールといえば、とことんクールに犯罪をやってゆく、ダークな作りが、徹底されていましたが、

本作も、その伝統的作りを、踏襲したものとなっています。

3
何はともあれ、主人公役のニールス・シュネデールの、

独特な、ネクラ・クールイズムな、キャラクターぶりが、

本作のあやういサスペンスチックな、ドラマツルギーに、見事に見合っていました。

ダイヤモンドの原石を、カットする細工師(カッター)として、

主人公はイロイロと、職人的仕事をやるのですが、

主人公の目の、特大クローズアップや、幻想的シーンなどで、不安感をあおってゆきます。

4
そして、ダイヤを昔の仲間たちで、盗もうとするシークエンスで、

本作はクライマックスを、迎えるはずだったのですが…。

ストーリーを言いますと、

パリで主人公は、強盗団のエースとして、暗躍していましたが、

ある日、ダイヤ一族から見離され、一人孤独死した実のオトンの死体と会い、

一族へのリベンジを胸に、一族のいるベルギーの、アントワープへ行きます。

そこで、オトンを見殺しにしたオジの、息子と出会い、

そのイトコの息子から、ダイヤの加工職人の仕事を、依頼されることに。

でもって、それにかこつけて、パリの仲間を呼びよせて、

ダイヤ奪取作戦へと、静かに侵攻するのです。

2
ある意味においては、フランス映画らしさが詰まった本作。

21世紀現代のフランス映画の、在り方を問いかけるような、作りになっているかと思いました。

みなさんが見た、フランス映画のイメージとは、

見合ったり、見合わなかったりする、賛否両論的な作りかもしれませんが、

でもしか、決してブラック・ユーモア的ではない、ユニークなサプライズには、思わず目を瞠(みは)る映画でありました。

フィルム・ノワール的映画の、サプライズチックでもあった本作は、

今後のフランス映画を占う、運命的な作品のようにも思えました。

とゆうことで、みなさん、劇場にて、ご確認ください。

2017年9月13日 (水)

「あしたは最高のはじまり」⇒フランス映画特選2

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父娘のキズナを描く、感動作品だ

「最強のふたり」と、甲乙つけがたいキズナ映画だ!

http://ashita-saikou.jp

9月9日から、KADOKAWAの配給により、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマなどで上映中。

本作は、2016年製作の、フランス映画117分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 - MARS FILMS - VENDOME PRODUCTION - POISSON ROUGE PICTURES - TF1 FILMS PRODUCTION - KOROKORO 

PHOTO:Julien PANIE

2
フランス映画を分析する第2弾。

キズナ映画についてはどうだろうか。

21世紀のフランス映画で、人口に膾炙した重要作となれば、

ボクとしては、ヒロイン映画「アメリ」(2001年製作)、

ラブ・ストーリー「アーティスト」(2011年・弊ブログ分析済み)、

男の友情もの「最強のふたり」(2011年・ブログ分析済み)が、ベスト・スリーだけど、

本作は、家族のキズナものとして、スリーに迫るような、仕上がりぶりを示しています。

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南フランスの主人公(オマール・シー)のとこに、あなたのコドモよと、娘赤ん坊を預けて女が立ち去った。

主人公は、イギリス・ロンドンまで、赤ん坊を連れて女を追うが、女は行方不明で、立ち往生。

そこへ、ゲイのTVプロデューサーが、救いの手を差し伸べ、

スタントマンの仕事を世話し、3人が一緒に住むことと相なる。

そして、8年の時が経ち…とゆう流れの映画。

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オトンと娘はすっかり、相棒並みに意気投合。

プロデューサーもまた、義理のオトン並みに、娘が慕っています。

そんなとこへ、スパイをやっているので、家には長らくいないと、

オトンが娘に、嘘をつき続けたオカンが、娘を引き取りたいと現れて…。

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そうして、オトンとオカンの、娘を巡る、スリリングな駆け引きドラマへと、展開してゆきます。

娘はオトンとオカンの、どちらを選ぶのか、ハラドキのドラマが繰り広げられるのです。

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サプライズが、2パターンで披露されます。

オトンが病気のように見せて実は…とか、

なかなか練り上げられた、サプライズでした。

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「最強のふたり」で、男の友情ドラマを、感動的に演じたオマール・シーが、

今度は、父娘のキズナ・ドラマを、見事に快演。

今やフランスの国民的俳優らしい、好感あふれる演技で、魅せてくれています。

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そして、歌ものサントラを多数流して、心地よい映画リズムを構築し、

最後の最後まで、目が離せない仕上がりとなりました。

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とゆうことで、父娘のキズナを描く傑作。

過去のその種の映画と比較しても、

最高ラインの感動がある作品です。

2017年9月12日 (火)

「追想」⇒フランス映画特選1

1
1970年代のフランス映画の名作が

デジタル・リマスターしてリバイバルだ

http://www.tsuisou.com

9月9日から新宿シネマカリテほかで、全国順次ロードショー。

本作は、1975年製作の、フランス映画102分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2011 - LCJ Editions et Productions, ALL RIGHTS RESERVED.

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みなさん、フランス映画は何作か、見てはるかと思いますが、そのイメージって、どないなもんでしょうか。

さてはて、今回は4回にわたり、フランス映画の、フランス映画らしさを示す、公開中・公開前の映画を、分析いたします。

まずは、反戦・戦争映画。

第二次世界大戦ものを始めとした、反戦・戦争映画は、これまでに、モノゴッツーなタイトル数があります

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戦争アクションが、確かにみなさんのココロを、高揚させくすぐるかもしれない。

けども、戦場シーンのない、収容所ものを中心に、反戦映画もまた、感動と興奮にあふれています。

本作は中でも、リベンジに焦点を当てた、独特な反戦映画となった名作。

個人のリベンジ映画は、本作の公開当時には、「狼よさらば」(1974年製作・アメリカ映画)などが、ヒットしていましたが、

本作は、ナチもの反戦映画とからめた、オリジンあふれる、復讐映画となっています。

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1944年の戦時下が背景。

妻子がフランスの田舎に、疎開したんやけど、そこにナチ軍が来て、虐殺・レイプを繰り返した。

妻子を殺されたダンナは、ナチに復讐すべく、1人で立ち向かっていく。

ストーリー展開は、そんなとこなんやけど、

細部では、オリジナリティーある作りをしています。

4
一番のポイントは、主人公が、ヨメとの過去の追想をしもって、ナチ軍の1小隊と、対決してゆくとゆう展開。

モチ、カットバック手法が使われていますが、

過去の追想部の、ロマンチックなラブ・ストーリー部と、

「ダイ・ハード」(1988年・アメリカ)的な、1人バーサス・アクション部の対比描写に、

強烈な段差があり、ディープ・インパクトでした。

3
陽気なアコーディオンや、メローなピアノをサントラとして使い、

その対比ぶりを、強調したりしています。

8
ボク的には、主人公のヨメ役、ロミー・シュナイダーの、ラブ・ストーリー映えする演技に魅せられた。

主演した「離愁」(1973年)の切なさと、「ルートヴィヒ/神々の黄昏」(1972年)の危うさが、ブレンドされた快演ぶり。

やられるところの、残酷さとも対比されて、ココロえぐられます。

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そして、「ダイハード」のブルース・ウィリスほど、エキセントリックやないけども、

クールに静かに、復讐アクトをやってゆく、フィリップ・ノワレに、グッときた。

「地下鉄のザジ」(1960年・フランス)の、少女ザジに翻弄される、コミカルな演技とは、真逆の演技ぶりでした。

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監督は、ロベール・アンリコ。

紅一点3人組の、友情を描いた「冒険者たち」(1967年・フランス)が、最高傑作と言われてるけど、

本作も出来は「冒険者たち」に、決してヒケを取らない。

いや、むしろ上だと、見る方もいるだろう。

ジャンル的には、2作は違うけども、ボクは「ダイハード」に、影響を与えたと思われる本作を、上だと見ます。

とゆうことで、傑作です。

2017年9月 8日 (金)

「散歩する侵略者」⇒長澤まさみ・松田龍平共演

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黒沢清監督が描く、不条理SF映画の傑作

今年の日本映画の、マイ・ベスト・スリーだ!

http://sanpo-movie.jp

9月9日の土曜日から、松竹と日活の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「散歩する侵略者」製作委員会

3
不条理ドラマや、不条理SFとなれば、黒沢清監督の十八番の一つ。

本作は、「回路」(2000年製作)や、「ドッペルゲンガー」(2002年)などを、超えた傑作で、

ボク的には、今のところ、今年の日本映画の、ベスト・スリーとなりました。

2
安部公房原作・勅使河原宏監督の諸作名作、

例えば、「砂の女」(1964年・モノクロ)とか、「他人の顔」(1966年・モノクロ)とかの、

あやうさ・不定形・サスペンスとゆうより、いつどないなるか、わからへん、不安感の持続などが、通底しております。

本作を見て、SFのイメージは全くないけど、

黒澤明監督の「生きものの記録」(1955年・モノクロ)なんかも思い出した。

4
実は、本作は、演劇原作映画です。

アメリカのブロードウェイの、ミュージカル原作と同じく、演劇原作映画は、日本でもケッコーあります。

不条理演劇原作や、不条理ものに限定して、2010年代の、順位通りの、マイ・ベスト・スリーをゆうと、

1位が本作、2位「さようなら」(2015年・弊ブログ分析済み)、

3位「生きてるものはいないのか」(2012年・ブログ分析済み)となるでしょうか。

8
エイリアンと言えばいいのか、宇宙からの侵略者が、人間になって、いろんな人を操るのですが、

そのやり方が、かつてなくユニークで、オリジンな方法になっています。

指1本で、概念を人から奪って、その人が不能に陥るとゆうものだが、

ややこしそうだけど、本編を見れば、大たい分かるようになっとります。

9
夫妻役の、松田龍平・長澤まさみサイドと、

2人の若い侵略者(高杉真宙・恒松祐里)と、彼らに密着する記者(長谷川博己)サイドが、

大たい交互に、カットバック的に、描かれてゆきます。

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でもって、松田龍平が、宇宙からの、隠れ侵略者とゆう設定。

2人の侵略者と、松田龍平が通じた時、

エライことが勃発してしまう、とゆう流れであります。

5
ぎくしゃくしていく夫婦関係。

2人に翻弄されながらも、アイデンティティーを失わない記者。

あやうい夫婦ドラマと、スリリングな犯罪ドラマが、カチ合った時、

トンデモない世界が、現出してくるのです。

12
松田龍平の、無表情な不気味感、

長澤まさみの、オロオロうろたえ感、

2人の若手役者の、無軌道を抑制する、長谷川博己の平然冷静感。

これらの演技が、アンサンブルして、奇妙かつ奇怪な、人類滅亡の、大仰なドラマが展開していく。

11
そして、2つのドラマを紡ぐ、不穏な因子や人物描写も、フック的にきて、

最後の最後に驚きを提示する、ディープ・インパクトな映画でした。

6
黒沢清監督が描いた不条理でも、最高に不条理で、非論理的な映画であろう。

7
感動的な結末が、待っているわけじゃない。

けども、激しくココロ揺さぶる作品だった。

とゆうことで、とにかく、映画館へ行って見てくだされ。

「ナインイレヴン 運命を分けた日」

1

9.11映画の、パニック・ムービー群像劇だ

停止したエレベーターからの、ハラドキの脱出劇だ

http://www.nineveleven.jp

9月9日のサタデーから、シンカの配給により、テアトル梅田、T・ジョイ京都やらで、全国順次のロードショー。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画90分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 Nine Eleven Movie, LLC

2
9.11もの映画といえば、これまでにケッコー出てきましたし、今も本作のように、作られ続けています。

とゆうことで、かつても披露しましたが、9.11もの21世紀製洋画の、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同・指定国以外は、全てアメリカ映画)を、披露してみますと…。

7
●ベスト⇒①ユナイテッド93(2006年製作)

②11'09''11/セプテンバー11(2002年・フランス映画)

③華氏911(2004年)

●カルト⇒①本作

②ワールド・トレード・センター(2006年)

③ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011年・弊ブログ分析済み)

4
●上記以外にも傑作はあるかと思いますが、あくまでボクが見た中からの選択です。

パニック映画的・群像劇的作りの、ベスト①と本作。

その時に遭った主人公の、物語を紡ぐタイプのカルト②③。

多数の監督による、短編オムニバスとなったベスト②。

ブッシュ大統領の、9.11への在り方を問う、ドキュのベスト③。

ドキュ的社会派的作りが、モチ多いのですが、

実話をベースにしているのかもしれないけど、

ボク的にはやはり、映画的ドラマに、徹した作品に魅了されてしまいます。

5
9.11をパニック映画的に捉えるのは、良識派からすれば不謹慎かもしれない。

でもしか、パニック映画にとって、重要な要素が、9.11にあったことも事実としてあります。

ベスト①と本作を、ベストとカルトに分断したけど、

共に、パニック映画としての、ハラドキ・スリリング・粋で、魅せる傑作となっています。

3
そして、共に密室パニック劇になっている点や、

ハリウッドの70年代発パニック映画の、進化型になっているとこにも注目したい。

ベスト①は乗っ取られた、航空機内の航空パニック。

対して本作は、超高層タワー・ビルの、停止したエレベーター内で展開する、狭量パニック。

こちらは、高層ビル火災パニックのかの名作を、エレベーター内に、集約したような作りになっています。

さらに、言えば、パニック映画で幅広さを増した、群像劇タッチ。

共に、群像劇としての、面白さも見逃せない。

6
エレベーターに閉じ込められる5人(離婚調停中の夫婦役の、チャーリー・シーン、ジーナ・ガーションら)。

その5人を助けようとする、エレベーターを管理するおばさん(ウーピー・ゴールドバーグ)。

徐々に緊張感が増し、ヒートアップしていく作りなのですが、

何はともあれ、ボクは、キャスティングの妙に魅かれました。

9.11テロに遭ったニューヨークを、舞台にした映画が、代表作になっている役者陣が、起用されているのです。

8
中でも、娘の安否を案じるオカン役の、ジャクリーン・ビセットの起用には驚いた。

航空パニック映画の嚆矢「大空港」(1970年)にも出演し、

パニック映画が量産された1970年代に、活躍した国際派女優さん。

海中サスペンスのヒット作「ザ・ディープ」(1977年)なんか、セクシーで快感だった。

とゆうことで、老若男女みんなで、楽しめる娯楽作品になっています。

2017年9月 7日 (木)

戦争映画「ダンケルク」

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戦争映画の新たなスタイルを、示したハリウッド大作だ

クリストファー・ノーラン監督の、意欲的挑戦的な新作

http://www.dunkirk.jp

9月9日のサタデーより、ワーナー・ブラザース映画の配給により、全国ロードショー。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画106分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

4
来年のアカデミー賞対象の、2017年製作作品として、

初めて「アカデミー賞最有力」の、コピーが入った戦争映画です。

とゆうことで、アカデミー作品賞をゲットした、戦争映画との絡みによるところで、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同・指定以外は全てアメリカ映画)を、披露してみますと…。

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●ベスト⇒①アラビアのロレンス(1962年製作・イギリス映画)②ディア・ハンター(1978年)③西部戦線異状なし(1930年・モノクロ)

●カルト⇒①本作②ブレイブハート(1995年)③パットン大戦車軍団(1970年)

1
●戦争映画は、ベスト③を嚆矢として、

映画の1ジャンルと言えるくらい、これまでに多種多彩に、作られ続けてきました。

太平洋戦争含む、第二次世界大戦ものが、圧倒的に多いのですが、

第一次世界大戦のベスト③、ベトナム戦争のベスト②、スコッチVSイギリスのカルト②など、イロイロあります。

3
戦火のヒロイズムであったり、反戦映画であったり、

その中身は、とてつもなく映画映えするものが多いのですが、

でもしか、本作は、これまでの戦争映画のセオリーとは、ビミョーに違った感触のある作品です。

言うなら、撤退・逃亡の退きの戦争映画。

攻撃型ではなく、防御型の戦争映画なのであります。

7
ダンケルク戦場と言えば、第二次大戦の初期に、イギリス軍がドイツ軍にやられまくり、

フランスの海岸町ダンケルクに、追いつめられた実話です。

この戦いで敗れた場合、とゆうか、逃げ切れなかった場合、

第二次大戦の勝敗の行方は、ナチ・ドイツに大きく傾いたと言われています。

戦争映画としては、撤退とゆうマイナス・イメージではあるのですが、

本作は、スピルバーグの「プライベート・ライアン」(1998年)と比べても、勝るとも劣らない、

ビビッド臨場感あふれる、戦闘シーンをクリエイトし、

ボクらを、身も凍る戦場へと、放り込んでくれます。

5
ダンケルクの戦いを描いた映画としては、フランス映画「ダンケルク」(1964年)がありますが、

本作は、その作品を最新鋭の撮影技術を駆使して、モノゴッツーな作品へと、転化した作品となりました。

しかも、陸・海・空の3場にわたり、カットバックを駆使して、また、3場のシンクロナイズもあって展開し、

戦争映画の粋を、存分に魅せるものとなっております。

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海での、若き兵士たちのサバイバルや、救援に向かう人たちのヒューマニズム。

空の戦闘機の、アクロバティックでハラハラの空中戦。

そして、陸上では、サバイバルかつ逼迫した、群像劇が展開。

戦争映画としてだけでなく、ハラドキ・ヒロイズム・必死のパッチ・アクションの連続など、

次々に、映画的ダイナミズムが、繰り広げられるのでありました。

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今年、日本公開される戦争映画としては、

カルト②のメル・ギブソン監督が作った「ハクソー・リッジ」(2016年・弊ブログ分析済み)と、

甲乙つけがたい仕上がりぶり。

当然、来年のアカデミー賞でも、充二分に期待できる作品です。

2017年9月 5日 (火)

韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」

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ハリウッド流ゾンビ映画の、韓国流複合進化型だ

パニック映画流の、犠牲精神ヒロイズムもあり!

http://www.SHIN-KANSEN.COM

9月1日の金曜日から、ツインの配給により、新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の韓国映画118分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

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韓国映画の今は?なんて聞かれれば、あなたはどう答えるでしょうか?

興味ないと答えるか、テレビドラマで十分と答えるか、それとも…。

パブリック・イメージの韓国映画は、韓国・北朝鮮の南北相克ものと、

ドラマ「冬のソナタ」派生のラブ・ストーリーものが、日本においては、主流でありました。

でもしか、韓国映画は、それらだけの金太郎アメ(ワン・パターン)じゃない。

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そんな1作として、本作があります。

大作韓国映画に見られる傾向ですが、ハリウッド映画的へと、アプローチしてゆくとゆう在り方です。

ハリウッド映画のおいしいところが、イロイロ、マネとゆうより、マネの進化でオリジナル化されてゆく。

確かに一般的には、マネかもしれないけど、そんなモノマネも、

新味を加え、あるいはジャンル複合型で、オリジンしてゆくのです。

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本作は、混成複合型となりました。

ベースにあるのは、ゾンビ映画ですが、

ハリウッド・パニック映画の、ノン・ストップもの、列車パニックもの、群像劇調やらの要素を振り掛けて、

フツーのゾンビ映画じゃないぞーなとこを、必死に主張するのであります。

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話は到って、シンプルとゆうか、単純ではあります。

原因があいまいだけど、すこぶる分かりやすい。

1人のゾンビから、次々に噛まれて、ゾンビ化する人々の、特急電車内における、ゾンビ対人間の攻防戦が展開し、

そして、主人公たちは、どうサバイバル対決して、安全地帯へと逃げ切るのか。

そんな映画です。

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モンスター・パニック、火災パニック、ディザスター・パニック、列車などの乗り物パニックなど、

ハリウッドの代表作が、すぐに思い出されるような、

その種のパニック映画は、ほとんど韓国で映画化されていますが、

本作は、中でも複合型として、特異な位置づけができるかと思います。

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でもって、この種の映画で、重要なのは、群像劇としての、ヒューマニズムな面白さです。

自らが犠牲になって、みんなを救う、なんてゆうタッチも、当然あるし、

各人の絡みで、サバイバルしてゆくタッチも、ハリウッド流儀でもあります。

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確かに、何人が、ゾンビにならずに、生き残るのかとゆう興味はある。

けども、その過程こそが、本作の大いなる見どころなのです。

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「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年製作・アメリカ映画)の醍醐味がある、なんて申しませんが、

少なくとも、その名作に迫るべくのハラドキが、本作にはあります。

何はともあれ、最後まで、目が離せない映画でありました。

「きらめく拍手の音」⇒韓国映画の家族ドキュメンタリー

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「名もなく貧しく美しく」描かれた、聾唖家族映画

愛と優しさにあふれた快作

http://kirameku-hakusyu.com

9月2日より、第七藝術劇場で公開中。以降、神戸アートビレッジセンター、京都シネマなどで公開。

本作は、2014年製作の韓国映画80分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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韓国の家族ドキュメンタリーと言えば、思い出されるのは…。

日本と北朝鮮に家族が分断されたものや、抑圧された北朝鮮家族を描く作品など、

何かと問題の、北朝鮮絡みのものが目立ちますが、

ごくフツーの家庭を描くドキュ映画も、それなりに作られております

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本作は、共に聾唖の両親から生まれた娘(イギル・ボラ)が、家族の姿を描こうと、撮り上げた家族ドキュメンタリー。

フツーでないのは、両親が聾唖。でも、生まれた姉弟は健常者。

そんな中で、両親はどう2人を育てたのか。育てられた2人はどうなったのか。

現在形をメインに、アットホームな温かい家族の在り方が、捉えられております。

3
聾唖夫妻となれば、思い出すのは、ドラマ映画だけども、日本映画の「名もなく貧しく美しく」(1961年製作)。

でもって、本作は、夫妻のコミュニケーションが、手話を中心に描かれると同時に、

成人した娘・息子とのやり取りなど、「名もなく…」では描かれなかったところへと、入り込んだ作品。

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素晴らしい映画を撮ろうとして、撮った映画ではありません。

本編でも出てきますが、娘監督は、両親の映画を撮るのが夢だったらしい。

そんなプライベートなとこが、あざとく甘く見えつつも、

でもしか、最後の最後まで、ハートウォームな仕上がりは、

北朝鮮絡みの、ギスギスしたドキュとは真逆で、ホッとして感動もできる。

5
沈黙の世界なだけに、音を字幕で表したり、監督のナレーションがカバーしたりと、

イロイロ工夫されとりますが、見ていてスムーズに進行していきます。

違和感は、全くもってありませんでした。

8
また、家族4人によるカラオケ・シーンなど、え!?、聾唖なのに、カラオケ!?、なんてゆう驚きもあり、

ゆるやかで優しいサプライズもあります。

4
両親の姿だけでなく、自立していく姉、そして弟の姿も、きちんと描かれて、好感があった。

手の平で示される、コミュニケーションが、ある意味で本作の、オリジナル・ポイントかと思います。

つまりは、あったかーい手触りのある作品です。

単なるプライベート・フィルムの領域を超えて、心温まる普遍性ある快作でありました。

2017年9月 1日 (金)

「禅と骨」⇒今年のマイ・ベスト・スリーの日本映画だ

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久々に見た、人間ドキュメンタリーの大傑作だ

ドラマ部を取り入れて、より強烈なインパクトへと導く

http://www.transformer.co.jp/m/zenandbones/

9月2日の土曜日から、トランスフォーマーの配給により、

ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルやらで、全国順次のロードショー。

本作は2016年製作の、日本映画127分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ大丈夫・人人 FILMS

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人間ドキュメンタリーと言えば、セレブや偉人を描く映画がケッコー多いけど、

あんまし有名じゃない人や、セレブでも異質な特殊人間を描く映画の方が、ディープ・インパクトに出会えます。

そんな人間たちを描く、邦画ドキュのマイ・ベスト・ファイブ(順位通り)を、披露いたします。

3
①ゆきゆきて、神軍(1987年)②ある映画監督の生涯 溝口健二の記録(1975年)③全身小説家(1994年)④本作⑤ヨコハマメリー(2006年)

●②の映画監督や③の小説家は、マニアック的には有名だけど、

その人間性を超越した、変格偏屈ぶりの描き方が強烈でした。

そして、あんまし有名じゃない人でも、モノホンエキセントリックな①だったり、

ドラマ映画の「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年)に迫る、娼婦の人生の深掘り⑤だったり、

でもって、本作は、太平洋戦争によって、日本人かアメリカ人かの、

ハムレット的命題を、迫られた日系人の、破天荒な生き方を、描いた作品なのであります。

6
冒頭から異彩だった。

京都で禅宗の僧になった、日米ハーフのヘンリ・ミトワのお話なのに、

いきなり横浜の逸話から始まるのです。

“赤い靴履いてた女の子”から始まる、童謡「赤い靴の少女」が流れくるのです。

そして、世界遺産でもある、主人公が禅僧になった、天龍寺へと場面転換。

この冒頭の意表が、のちのちに母子のキズナに、妄執してゆく主人公のキモチへと、リンクしていくのです。

5
ドキュの中に、ドラマ部がかなり、挿入されています。

調べても分からないところを、ドラマで補うことは、時にありますが、

但し、本作は、演技のプロを使って、ホンマならば、

ドラマ映画化した方が、エエんとちゃうのんくらいに、本気な真剣モード。

しかも、そのドラマ部もきちんとしていて、ドラマティックでもあるのです。

7
ウエンツ瑛士が、ヘンリ・ミトワの若い頃を演じています。

好感ある誠実な演技でした。

一方で、ヘンリの母役・余貴美子も、この映画のキーを握るくらいの渋演技。

謎めいて思わせぶりなタッチの、ナレーションは仲村トオル。

そのほかにも、有名女優・男優が、そこかしこで顔を出しています。

ドラマ部をミキシングしたドキュ映画は、さほどありませんし、映画的巧拙も何とも計れませんが、

でもしか、本作は全く違和感なし。融和していたと思います。

さらに、実話部での、家族ドキュへも、波乱と感動を及ぼしているようでした。

8
サントラ部も、ドラマ部と勝るとも劣らずに、強烈で印象深かった。

渚ゆうこのカヨー曲「京都慕情」に、乗ったシーンの京都の時代感描写、

スウィングジャズ、バイオリン、三味線、ハーモニカなどを、シーンに合わせて駆使。

そして、ラストロールでは、クレイジーケンバンドの横山剣と、コモエスタ八重樫が、

ブルージーにムーディーに歌う「骨まで愛して」(1960年代に、城卓也なる歌手が歌って、ミリオンセラー以上を売った曲)が流れ来る。

ここで、ボクは、完全に、ヤラレてしもた。

4
何はともあれ、ドラマ部をスムーズに取り込み、異能のハーフの一生を、骨になるまで描き抜いた作品。

いやはや、目が点になってもうた。

驚きだけじゃない。

1人の男の、深掘りされた人間映画の妙味が、ココロに深くしがみついてくるような作品なのだ。

⑤と本作を撮った、中村高寛監督の、執念深さにも恐れ入った。

文句なしの年間ベストテン級映画であります。

ボク的には、今のところ、ベスト・スリーです。

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