無料ブログはココログ

新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


« 2017年5月 | トップページ | 2017年7月 »

2017年6月の記事

2017年6月30日 (金)

6月に見た、マイ年間ベストテン候補映画

今月は、ヨーロッパ映画の2本!

●ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦(キリアン・マーフィ、ジェイミー・ドーナン共演/ショーン・エリス監督/チェコ&イギリス&フランス合作/8月12日順次公開)

http://shoot-heydrich.com

Photo
●あさがくるまえに(タハール・ラヒム、エマニュエル・セニエ出演/カテル・キレヴェレ監督/フランス&ベルギー合作/9月16日順次公開)

http://www.reallylikefilms.com/asakuru

Photo_2
●この6月は、邦画・洋画共、年間ベストテン級と思えるような作品に、なかなか巡り会えなかった。

映画興行の夏休みとゆうのは、娯楽作品の一般受けするような映画が、大ヒットする時期でもある。

「美女と野獣」はいまだに大ヒットしてるし、シリーズものからアニメまで、これからもいっぱい出てきます。

ミニマムな単館系映画には、厳しい季節かもしれない。

それでも、そんな単館系のユーロ映画の傑作を、何とか2本見させてもらうことができた。

スリリングで最後まで手に汗握った「ハイドリヒを撃て!」は、

以前にも作られたテーマとストーリーですが、今回が最も緊張感にあふれていた。

心臓移植の過程を、映画史上初めて詳細に描いた「あさがくるまえに」。

医師サイド、提供側とドナー側の人間ドラマも、リリカルに描かれて感動的だった。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

「忍びの国」⇒週末日本映画劇場

1
時代考証に裏打ちされた、破天荒なスーパー忍者時代劇

大野智・伊勢谷友介・鈴木亮平らが男の戦いで魅せる

http://www.shinobinokuni.jp

7月1日の土曜日から、東宝の配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 映画「忍びの国」製作委員会

2
忍者映画の時代劇と言えば、

かつての日本映画界の、時代劇全盛の時代には、

いわゆる正統派時代劇の、ウラ・バージョンのように見られていました。

しかし、何はともあれヒットした。

とゆうことで、ここで、忍者時代劇の、マイ・ベスト&カルト・スリーを、披露しますと…。

9
●ベスト⇒①忍びの者(1962年製作・モノクロ)②梟の城(1999年)③忍者武芸帳(1967年・モノクロ・アニメ)

●カルト⇒①本作②伊賀忍法帖(1982年)③SHINOBI(2005年)

●ベスト①、本作、ベスト②のように、

戦国時代の織田信長・豊臣秀吉にまつわる、忍者の活躍・暗躍が、忍者映画のベースにあるようだ。

でもしか、アニメの大島渚監督ベスト③などは、

室町時代を背景に、かなりと異彩を放っているけども…。

8
歴史的には忍者は、三重県・伊賀と滋賀県・甲賀に、分かれていたとされるが、

映画では、伊賀忍者がケッコー、カッコよくクローズアップされとります。

そんな中でも、21世紀になって、伊賀と甲賀の恋と戦いを、「ロミオ&ジュリエット」的に描いたカルト③など、

映画的出来は別にして、ユニークで面白すぎる作品が出てきました。

そして、本作の登場です。

4
伊賀忍者たちが、織田信長軍に1度は勝ったとゆう、歴史的事実をベースに、

そのエピソードを、大胆不敵に展開したのが、本作なのです。

この逸話をメインにした映画は、これまでは作られていませんでした。

1度は勝っても結局は、数年後にはやられてしまうので、

ヒロイズムを旨とする時代劇としては、余り映画映えしないと思われたのでしょうか。

5
伊賀崩壊後の生き残り忍者を描いて、壮絶な作りだった、ベスト①のヒロイズムもエエけども、

伊賀が絶頂だった時代を捉えた本作の、コミカルなノリを随所に配しつつも、

スーパー忍者劇のアクションぶりは、見どころ満載でした。

3
さらに、時代考証に裏打ちされた、当時の忍者たちのリアル感ある生活感描写は、

かつて描かれなかったところのもんです。

織田信長の支配下に入って、給料はもらえるのかとか、

ヨメ(石原ひとみ)から生活難を責められる、

普段は農民だけど、伊賀のNo.1忍者(大野智)の、トホホぶりとか。

7
でもしか、大いなる見どころは、伊賀忍者軍対織田軍の戦いであり、

クライマックスの1対1(大野智VS鈴木亮平)による、忍者バーサスのインパクトであります。

織田軍の武将(伊勢谷友介)も、カッコイイとこが、いくつも見られますよ。

6
夕景・茜色の部屋への取り込みや、照明なしのダークブルーなどの時代感ある色合いや、

大仰なCG使いも、リアルを考えて、構築されてる点が良かった。

ナレーションを務めた山崎努が、何者なのか、最後に分かる着地ぶりもいい。

とゆうことで、これまでにない忍者映画を、創り上げています。

後日、「銀魂」(7月14日公開)の分析で披露しますが、

「トンデモ時代劇マイ・ベストテン」で、果たして本作をボクは、何位に入れるやろか。

とゆうか、みなさんも、トンデモ時代劇について、本作を見に行って、考えとってください。

2017年6月29日 (木)

「身体を売ったらサヨウナラ」

1_2
AV女優と東大生の、2面を生きたサイコなヒロインの、

クールな快楽と愛の実話物語

http://www.exf.info/karasayo/

7月1日の土曜日から、エクセレントフィルムズの配給により、新宿K's cinemaほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2017年製作の日本映画88分。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 東映ビデオ/エクセレントフィルムズ

2_2
一流大学出身で、政治部の新聞記者なんてゆうヒロインが、

かつてAV女優だったとゆう実話を、映画化した作品。

AV業界を描くと言えば、飯島愛とか「みひろ」とか、

AV女優の実話による人間ドラマを、ベースにした映画が作られてきたけども、

本作は根本的に違う。

とゆうのは、昼と夜の顔が違う、二面性を描く人間ドラマは、

よりドラマティックかつミステリアスとなり、面白いのだ。

8

ヒロイン(柴田千紘)のナレーションにより、ヒロインの行動が描かれるのだけれど、

AV女優始め、いろんなAV業界関係者の談話を入れて、ドキュメンタリー色と、

ドラマをミキシングした、いわゆるドキュ・ドラマの手法を、本作は採っています。

3_2
快楽や愛に関するヒロインの考察・分析が、もっともらしくナレートされ、

さらに、ヒロインを使った臨床実験シーンの、妄想シーンを入れて、

ヒロインの複雑な心理を、浮き彫りにしていきます。

つまり、なんで彼女がAVやってんのなとこが、感覚的に分かるような作りにしているので、

分からない人には、分からないかもしれない。

9
実は、ボクは残念ながら、よく分からなかった口なのですが、

ヒロインの、下北系のアマチュア・ミュージシャンへの、恋ゴコロなどはよく分かりました。

また、オカン(筒井真理子)に、出演AVを見られてしまったあとの、母娘の会話であるとか、

街中でのAVスカウトマンと、ヒロインのやりとりとか、なるへそな~なとこもありました。

4_2
「恋の渦」(2013年・弊ブログ分析済み)でも強気だった柴田千紘が、本作でも、終始強気なヒロインを、演技してはります。

エロいシーンもあるけども、決して自分を見失うことはない。

常に冷静かつ客観視し、分析するようなとこがありまんねん。

写真のほとんどに映ってはりますので、その表情とかから、想像してみておくんなまし。

5_2
監督は内田英治。

スロー・モーションの使い方とかも上手いし、

ベタやった「下衆の愛」(2016年・弊ブログ分析済み)の色合いもありつつ、

変型ヒロインものに食い込んだ力量は、相当なものやと見ましたし、

飯島愛の「プラトニック・セックス」(2001年)とは違う、女のサガの在り方に、ウ~ンと考えさせられてしまった。

6
オカン役の筒井真理子、

先輩AV女優役の内田慈(たつき)らの、渋演技ぶりにも注目。

7
ブルー・フィルムやらAV業界を描いた映画では、

ボクは「ブギーナイツ」(1997年・アメリカ)以外に、エエ映画はないと断じておりましたが、

本作を見て、チョイ考えが変わりました。

モチ「ブギーナイツ」は孤高の存在ですが、

AV女優をやった人間の、これまでにない、心理的在り方に迫った本作には、しばらくココロを騒がせられそうだ。

いつまで記憶に残るかは分かりませんが、

みなさんも、映画館でココロ揺るがせられてください。

「夏の娘たち~ひめごと~」⇒官能の日本映画

1
2人の男と3人の女たちの、セックス模様

異能とも言える地方の、人間関係に驚きが…

7月1日の土曜日から、インターフィルムの配給によりまして、ポレポレ東中野で、全国順次のロードショー。

本作は、2017年製作の日本映画75分。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒインターフィルム.V☆パラダイス.KOKUEI

5
日本のインディーズ映画は、毎年数多く作られるけど、その大半がお蔵入りの憂き目に遭っとります。

でもしか、ピンク映画、もしくはピンクチックな映画は、お蔵入りが少ない。

そんなこんななピンクチックを取り入れて、映画作家性を示す映画監督が、実はケッコーいる。

そんな1人が、本作の監督、堀禎一です。

弊ブログでも紹介した「魔法少女を忘れない」(2011年製作)のような、アイドル映画ノリの作品があるかと思えば、

本作のような、ピンク映画を意識した、異能のヒロイン映画などを撮ってくる、

その段差にも、驚かされる映画監督ぶりです。

3

さてはて、本作は、この種の映画では珍しい、地方ロケを敢行した。

場所は信州。季節は夏。

主舞台は、ヒロインの実家である温泉宿。遊ぶ場所と言えば、川くらいしかない。

そんなところで一体、どんなドラマを紡ごうとゆうのか。

ひと言で言えば、地方のセックス事情と申しますか、

2人の男と3人の女の、エッチ模様が、地方特有の異能の家族関係の中で、展開するのです。

4
ヒロインの父が死亡し、葬式が執り行われる。

そこへ、集った独身の人たちの間で、肉体関係が生じます。

ヒロインと義弟を中心に、幼なじみの男と、ヒロインの妹や女友達の三角関係など、

ちょっと乱れた濡れ場模様が、点綴されとります。

一方で、女2人だけのお座敷ダンスや、三味線をバックに、ヒロインが扇子を持って歌い踊ったり、

そして、みんなで川遊びなど、

フツーの映画では見られないようなシーンが、ケッコーあります。

不協和音的なピアノ使いもそそられた。

2
何人かを会わせて、人間関係を紹介し合うようなシーンだったり、

重要なヒロインと、オカンの話し合いシーンなどで、

1分以上の固定長回し撮影が使われて、説明的だけど、分かりやすさをキモにした、撮り方が良かったかな。

「R-15」指定なので、ピンク映画ファンには、少々もの足りないかもしれないけど、

でも、濡れ場は本気印にあふれています。

ただ、ピンク的なとこよりも、地方の家族の在り方とか、男女関係とかがポイントなので、

そのあたりの描写・演出にも、注目してほしい映画でした。

2017年6月28日 (水)

「ありがとう、トニ・エルドマン」⇒ドイツ・オーストリア合作

Photo
父娘の在り方が、これまでの映画とは、エライ違うぞ!

異彩・異能・異端に満ちた、キズナ映画の会心作

http://www.bitters.co.jp/tonierdmann/

シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋など、全国順次の上映中。

本作は、2016年製作の、ドイツ&オーストリア合作の162分。

ⓒKomplizen Film

1_2
父娘のキズナを描く映画なんてゆうたら、ある程度その作りは、予想できますよね。

けども、本作はそんなセオリーをば、大いに覆えされてしもたがな。

両親と子供たちの、1対1の関係性を描いた映画は、これまでに、モノゴッツーなタイトル数がありました。

もしか、本作は、とんでもなくトンデいたぞ。

ある意味で、こおゆう父娘の関係性を描いた映画は、かつてないと言ってもええくらいやねん。

3_2
なんで、そう思うのか。

キズナを標榜してるワケやないけども、むしろキズナとゆうよりも、

オトンと、大人になってる娘はんの、生き方の違いを、

表層的にキズナを、チラつかせつつ、描いてみた作品だと思うのですわ。

8_2
ドイツで一人暮らしのオトンが、

オーストリアでバリバリのキャリアウーマンを、やってはる娘はんヒロインのとこへ、

旅行がてら行かはりまんねん。

娘はんの営業の場にも、オトンが入って(写真上から5枚目)、イロイロ問題を起こしたりしはります。

でも、娘はんは、あくまで自然体。

4_2
ところがどっこい、オトンは娘のことが、エライ心配になってしもた。

そこで、別の人間のように変相して、娘の前に現れて、

娘のために、イロイロやってまうとゆう、ストーリー的流れなんですが…。

2_2
父娘なのに、とんでもなくその関係性を飛び越えた、ボケとツッコミ、

無意味のようで無意味やない、異質さ・違和感が、

アラマ・ポテチン(ビックリ)を連発したくなるくらい、クセになるよな作りなんですわ。

7_2

1分強の長回し撮影から始まるんやけど、

長回しの多い芸術映画かと思いきや、そうではなく、

長回しより長い間(ま)をポイントにしてはるようで、

その間(ま)が冗漫なようでありながら、

ゆったりした、のほほんな映画リズムを、作っていることに、

はたと気づいたんですよ。

5_3
さてはて、ボクが一番印象的やったシーンは、

ホイットニー・ヒューストンのバラードを、オトンのピアノをバックに、ヒロインが歌い上げるシーンです。

父娘の生き方のミスマッチ、そして、でもしか2人は…とゆうようなとこが、素晴らしく映えとりました。

6_2

言い古された、親子のキズナを描く映画に対し、“もの申す”みたいな作りが、挑戦的で衝撃的だった本作。

2時間40分とゆう長尺をカンジさせない、

とゆうか、その作りのスロー・テンポな流れに、身を任せて見てみたい作品。

新しい親子の在り方・描き方に魅せられてしもた、

ドッキリのマイ年間ベストテン級作品です。

「世界にひとつの金メダル」⇒フランス・カナダ合作

1
人と馬のキズナを描く、感動のオリンピック・ドラマだ

「シービスケット」「戦火の馬」並みにスリリング

http://www.sekakin.com/

6月24日のサタデーから、第七藝術劇場やらで、全国順繰りのロードショー。

本作は、2013年製作の、フランス・カナダ合作の130分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2013 - ACAJOJ FILMS - PATHE PRODUCTION - ORANGE STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION - CANEO FILMS - SCOPE PICTURES - CD FILMS JAPPELOUP INC.

2
フランスで国民的大ヒットとなったオリンピック映画。

系譜でいくと、オリンピック映画的分析が正統やろうけど、

人間以外に、馬も主役の映画とゆうことで、その種の映画の、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)をば、手前勝手に披露させてもらいます。

3
●ベスト⇒①シービスケット(2003年製作・アメリカ映画)②戦火の馬(2012年・アメリカ)③優駿(1988年・日本)

●カルト⇒①本作②本命(1976年・イギリス)③夢駆ける馬ドリーマー(2005年・アメリカ)

●馬と言えば、誰もがまず思い出すのは、競馬のサラブレッド。

JRAが唯一JRAの競馬場ロケを、許可したベスト③、

競走馬とコドモオーナーの、キズナを描くカルト③、

競馬にまつわるミステリーのカルト②、

そして、世界初とも言える、本格的な競馬映画のベスト①。

北海道の「ばんえい競馬」を描いた「雪に願うこと」(2008年・日本)も、記憶に残っております。

9
でもしか、馬を主役にするとなれば、サラブレッド以外の選択肢が、キチンとあります。

戦場に駆り出された馬を描く、スピルバーグ監督のベスト②であったり、

本作のように、オリンピック競技にある乗馬。

そして、本作は、その乗馬競技を、ドラマ映画史上初めて、採り上げた作品なのです。

4
ベスト①と同様、実話がベース。

馬のキモチと、金メダルを目指す主人公(ギョーム・カネ)の気概が、そこはかとなく、一体となった作品でして、

そこんとこが大いなる感動を、呼ぶようになっとるんです。

7
ロサンゼルス五輪では落馬。

でもしか、捲土重来を期し、ソウル五輪で金メダルへ。

まさに絵に描いたような、ドラマティックな実話やけど、

五輪映画としては、「炎のランナー」(1981年・イギリス)の内省的描写ではなく、

がむしゃらに熱いハートでいったとこが、映画的出来はともかくも、

みんなの胸を焦がすような、そんな作りになっているなと思いました。

6
ポップ・ミュージックを流しての、リズミックでノリのいい、調教のダイジェスト・シーンやら、

スロー・モーションのタイトな使い方など、

映画リズムの心地よさも、特記事項でしょうか。

5
映画監督もやる役者で、本作では脚本も担当した主演ギョーム・カネの、さわやかなド根性ぶりも、モチええけど、

厩務員役のルーデ・ラージュ(写真上から4枚目)の、アイドルチックなたたずまいも、なんやしらん良かったわ~。

8
オリンピック映画は、記録映画だけやない。

実話以外でもいくらでも、感動的な作品を作れるハズ。

そんな可能性を示した快作でした。

2017年6月27日 (火)

「残像」⇒アンジェイ・ワイダ監督の遺作

Photo
ワイダ監督作品の中で、一番泣ける作品になった

最後の抵抗節映画は、仙人のような穏やかな作り

http://www.zanzou-movie.com

6月24日からシネ・リーブル梅田で、7月1日からシネ・リーブル神戸で、7月22日から京都シネマでなど、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作のポーランド映画99分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 Akson Studio Sp. z o. o, Telewizia Polska S.A, EC 1 - Lodz Misato Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage - Fundacja Tumult All Rights Reserved.

5
アンジェイ・ワイダ監督の遺作と言っても、

一般の人には、かなり分からないだろうし、

若い人にはさっぱりかもしれない。

なぜなら、ワイダ監督の作品の一部は、

DVD化されているけど、レンタルはほとんどなく、

さらに、配信もない。

映画は映画館で見るべきの、雛形的な監督の1人なので、

本作も、ぜひとも映画館へ行って、見なければなりません。

2
ツタヤで借りて見れないし、鑑賞するチャンスは少ないけども、

それでも敢えて、ワイダ監督の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順位通り)を、披露いたしますと…。

●ベスト⇒①灰とダイヤモンド(1958年製作)②地下水道(1957年)③本作

●カルト⇒①大理石の男(1977年)②菖蒲(2009年)③ワレサ 連帯の男(2013年・弊ブログ分析済み)

8
ワイダ監督は、ポーランド社会の反体制派の社会運動を、ベースにした作品を、いくつも作ってきました。

ベスト①②などは、モノクロのシブミに加えて、

抵抗運動のペシミズムと、やる瀬なさに徹して、衝撃的な作品になっています。

また、カルト①などは、この種のヒューマン映画としては、

静謐な描写に徹した、ものすごい作品になっていました。

暗い映画は嫌だとゆう人は、退くかもしれないけど、

でもしか、見れば、何かが変わるかもしれない。

4
でもしか、21世紀のワイダ監督は、何やら丸~くなりました。

悪い意味ではありません。

分かりやすい作品が、多くなったとゆうことです。

ポーランドの代表的運動家を、捉えたカルト③でも、

決して小難しい理屈を見せずに、エンタな方向性があったし、

アート系映画のカルト②さえ、ミステリー的な謎があり、面白く見られました。

3
そして、遺作となった本作。

芸術家への政府当局の弾圧に、耐え続けてゆく主人公のストイックに、

ボク的には、完璧に魅せられた作品となりました。

これこそ、ワイダ監督節です。

しかも、今までの暗みは控えめに、しかも、分かりやすく伝える作りで、

いやはや、これこそが監督が、映画人生の最後に、

伝えたかった映画なんだ、とゆうことが分かって、ボクは泣きました。

6
第2次世界大戦後の1948年から、1952年くらいまでの、ポーランドが舞台。

褪せた色合いをベースに、

体制に抵抗を露骨に示すことのない画家が、作品性で当局に目を付けられ、

生活的にも追いつめられてゆく過程が、

ゆっくり静かに描かれてまいります。

7
主人公と幼い娘との関わりなど、キズナ描写はあっさりですが、

でもしか、いつしか涙を絞らせる。

そんな作りが、今までの監督の、情緒を排した映画作りとは、少し違っていたかと思います。

監督が遺作で初めて到達した、人口に膾炙する、普遍的な作品だと、ボクは見ました。

年間ベストテン入りは、確実の傑作です。

2017年6月24日 (土)

「結婚」⇒週末日本映画劇場

1
こんな結婚サギ映画ってありですか?

衝撃の結末を、あなたはどう見るか?

http://KEKKON-MOVIE.JP

6月24日の土曜日から、KADOKAWAの配給によりまして、テアトル梅田やらで、全国順グリのロードショー。

本作は、2017年製作の日本映画118分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「結婚」製作委員会

3
騙しのコン・ゲーム映画と言えば、いくつかあるかもしれない。

でもって、本作は、結婚サギをテーマにしています。

でもしか、本作のように、何人(約3人)もが、結婚サギに遭うような映画は、そうそうない。

あまりないだけに、その作りに妙に疑問を覚えてしまう。

つまり、何かのカラクリがあるのではないかと、勘繰ってしまうわけです。

2
(貫地谷しほり、と)結婚してる男(ディーン・フジオカ)が、

結婚サギに失敗してしもた女(柊子)と吊るんで、

三人の女(中村映里子・安藤玉恵・松本若菜)を、次々に結婚サギッてみせるのですが、

その方法論には、確かにミステリー的に、カモリの面白さとか妙味とかが、あるにはある。

6
そして、探偵(古舘寛治)のとこへ駈け込んで、犯人を捜してとゆう女がいる。

カモる人間とカモられる人間の、スリリングなお話とゆうのが、

こういう映画の、パターン化されたところなのでしょうが、

但し、本作は、そういう定番的流れを、覆してしまうのであります。

5
そもそも、主人公役のディーン・フジオカには、謎めき要素が多すぎるのであります。

貫地谷しほりとの結婚生活を描きながら、カモリのシーンがあり、

また、謎めいた幼少の頃の写真の謎を、主人公自身が、悩みながら、追及しようとしたりと、

結婚生活とサギが分断しているように、謎めきも乖離している。

そのこと自体が確かに謎だ。

しかし、一体、この映画のカラクリ、トリックは、どこにあるのか。

8
マトモに見れば、疑問はない。

結婚サギを、どうあざやかに達成してゆくのか、そのお手並みを見ればいいわけだ。

けども、違和感は鳴り響く。

そのあたりが、本作の怪しい度合いを増してゆき、

ほんでもって、ええ!? そんなバカな!? な結末へと導いてまいるのです。

7
過去を振り返るカットの挿入が、近過去含めて、タイトに行われます。

そして、主人公の幼少期にまつわるカットも、確かにタイトに挿入されている。

けども…、見終わって振り返るに、伏線は? イロイロある違和感は? 長~く考えました。

いわば、そういう不思議なところが、本作の見どころだと、言えるのでは…。

4
登場人物が歌う劇中歌や、サントラ使いに、謎解きのヒントがあるかも!? 

ディーン・フジオカが、冒頭から口ずさむ、大正時代の歌謡曲「浜辺の歌」(1913年)しかり、

ワルツやピアノ・チェロを、シーンに合わせてかけて、

でもって、ラストロールでは、フジオカが歌うデジポップを、ドカーンと流したりと、

変幻自在の音楽使いの魔法に、騙されてしまうかもな。

くれぐれも、ご注意くだされませ。

2017年6月23日 (金)

「ハクソー・リッジ」⇒大作戦争映画だ!

Photo
「プライベート・ライアン」と変わらない、臨場感が鳥肌ものだ!

歴代戦争映画のベストテンに入るべくな傑作だ!

http://www.hacksawridge.jp

6月24日のサタデーから、キノフィルムズの配給によりまして、全国ロードショー。

本作は、2016年製作の、アメリカ&オーストラリア合作映画139分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒCosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

1
戦争映画は、ここで言うまでもなく、モノゴッツーなタイトル数があります。

戦争映画全体として、ベスト&カルトは、いくらでもランキングできるだろうけど、

本作は戦争としては、第二次世界大戦の太平洋戦争に、フォーカスしております。

とゆうことで、日米戦の太平洋戦争洋画の、アメリカ映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(ベスト・カルト共に順位通り)を、披露いたしますと…。

ちなみに、日本映画編は、後日、披露いたします。

7
●ベスト⇒①硫黄島からの手紙(2006年製作)②本作③シン・レッド・ライン(1998年)

●カルト⇒①トラ・トラ・トラ!(1970年)②パール・ハーバー(2001年)③ウインドトーカーズ(2001年)

●歴史の教科書を反芻するまでもなく、太平洋戦争は、日本軍の真珠湾(パール・ハーバー)攻撃から始まっております。

それゆえに、カルト①②などのように、真珠湾をポイントにした映画が、まずは主流となりました。

カルト②もそうだけど、恋愛映画と戦争をミキシングした

「地上(ここ)より永遠(とわ)に」(1953年・アカデミー作品賞受賞・モノクロ・弊ブログ分析済み)などの、

ベストには、残念ながら入れませんでしたが、名作も生まれています。

4
でもって、その後、太平洋戦争にまつわる、アジア戦線や収容所ものなどの名作も、生まれ落ちましたが、

日米戦の島攻防戦とゆうのが、ある意味では、島とゆう狭量的な世界における、戦闘とゆうことで、

集中的かつ、タイトに見せられる点やら、サバイバル的作りで、

ベスト①や、静謐な展開が凄かった、ガダルカナル島のベスト③、ド派手なサイパン島のカルト③などが、誕生したのです。

5
そして、本作は、アメリカ映画としては初めて、沖縄戦にアプローチした作品となりました。

しかも、日本映画でかしましく描かれてきたような、沖縄戦ではなく、

隠れポイントとも言える、沖縄の断崖(ハクソー・リッジ)上での、米軍が大苦戦した戦いを描いております。

その凄まじい戦いぶりは、「プライベート・ライアン」(1998年)に迫る、臨場感に満ちあふれておりました。

前へ前への米軍側の視点と、迎撃する日本軍の隠れまくる、忍者的戦いぶり。

スロー・モーションの使い方なども含め、とにかくビビッドに展開します。

6
何はともあれ、実話とは申せ、武器を決して持とうとしない主人公の、

仲間を救うべくの、必死のパッチの衛生兵の在り方などは、

戦争映画では、かつて描かれなかった素材です。

それだけに、戦場の動的描写と、前半に描かれる、恋愛映画的や裁判映画的な、静なる描写の対比が、

映画をよりダイナミックな、感動的なものにしています。

3
メル・ギブソン監督の新作。

アカデミー作品賞をゲットした、スコットランドVSイギリスの「ブレイブハート」(1996年)や、

自ら主演して、南北戦争を描いた「パトリオット」(2000年)など、骨太の戦争映画を撮ってきましたが、

本作は、骨太と柔軟をミキシングして、彼の最高傑作になった作品でありましょう。

2
かつてないスタイルで描いた、アンチ戦争映画でもあり、

戦争映画としても、永らくココロに残るべくな傑作となりました。

でもって、モチ、マイ年間ベストに入る作品です。

2017年6月21日 (水)

「フィフティ・シェイズ・ダーカー」⇒トンデモヤラシー映画だ

1
変態セックス・シーンのオン・パレード

ダコタ・ジョンソンの、露出狂的脱ぎっぷりが強烈

http://www.fiftyshadesmovie.jp

6月23日のフライデーから、東宝東和の配給によりまして、全国ロードショー。

本作は、2016年製作のアメリカ映画1時間58分。「R-18+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 UNIVERSAL STUDIOS

8
「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」(2015年製作・アメリカ映画)に続く、セクシー恋愛映画の第2弾。

全国公開系の洋画においては、久しぶりに見た、メッチャなヤラシー映画だった。

その衝撃度合いは、「エマニエル夫人」シリーズ(第1弾は1974年製作・フランス)以来かもしれない。

しかも、アメリカ映画で、このような映画の本邦上陸は、

メッチャ珍奇と言わざるを得ないでしょう。

3
さらに、ヨーロッパの、例えば「ラストタンゴ・イン・パリ」(1972年・イタリア&フランス)や、

「愛人/ラマン」(1992年・フランス&イギリス)などとは違って、

退廃や暗さのない、どちらかと言えば、明るい系の前向きな、セクシー恋愛なのであります。

加えて、ヤラシーかなと期待(!?)して、見に行かれたかもしれない

「セックス・アンド・ザ・シティ」(2008年・アメリカ)みたいに、タイトルで騙される(!?)こともありません。

2
何はともあれ、ヒップ90くらいの八頭身美人女優、アナスタシア役のダコタ・ジョンソンが、

当たり前のように、平気で脱ぎまくり、裸身をさらし、彼氏の要求に、なんぼでも応えるとゆう、

すがすがしいほどの、100パーセントなエロエロ度合いを、披露しまんねん。

7
描かれるのは、上流階級のCEO(ジェイミー・ドーナン)との恋ですが、

「プリティ・ウーマン」(1990年・アメリカ)ほどの格差はないけども、

格差を感じさせないのは、このCEOが変態キャラだからやないかな。

6
この男、フツーのセックスじゃない、変態系のセックスを、常にヒロインに強要し、

ほんでもって、ヒロインもそれに、応じるんであります。

約8シーンにわたり、胸ワクワクのあそこドキドキの、濡れ場シークエンスが、繰り広げられるんだす。

4
女が触ってはいけない部分を、男が体に赤線で示した上で、

前後から、抱き合いながら、器具・拘束具を駆使しもって、仮面・コスプレ系で、

はたまた時には、満員のエレベーター内でとか、

最後までマトモなセックス・シーンは、ないと言ってもよろしいかと…。

9
2人のラブ部以外の、人間関係部では、演技派女優が参加してはります。

マーシャ・ゲイ・ハーデンとキム・ベイシンガー。

2人のヤラシーさとは、妙にミスマッチやけど、

男が変態になったところに、まつわるところの役柄なので、

そのシリアス演技には、謎めきとサスペンスを付加していると言える。

5
3部作仕様の第3弾が、2018年にバレンタイン・デーの週末に、全米公開されるそうです。

本作第2弾の、セックスと恋の行方については、モチ、ネタバレになるので言えませんが、

この種の映画としては、予想外の第2弾の結末が、待っています。

すると、第3弾は、めくるめくの濡れ場が果てしなく…いやはや、それ以上は…。

10
とゆうことで、予復習どちらでもいいですが、第1弾をDVDで鑑賞して、

本作を見に行ってくだされ。

2017年6月20日 (火)

野際陽子の遺作「いつまた、君と~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」

1
向井理と尾野真千子が贈る、昭和の夫婦映画だ

大河系昭和映画のベタがたまりません

http://www.itsukimi.jp

6月24日の土曜日から、ショウゲートの配給によりまして、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会

5
昭和を象徴する役者がまた、一人逝去した。

女優・野際陽子。

映画ではなく、テレビドラマの方で、若い頃は刑事アクションや、

中高年過ぎには、マザコンのマザー兼継母役で、国民的衝撃女優を演じたりと、みんなのアイドル(!?)だった。

ただ、映画では地味な役が多かったけど、そのバイ・プレーヤーぶりは、ある時フッと思い出させるような、滋味があった。

そして、映画の遺作となった本作も、そういう役柄を、マイ・ペースで演じていて、グッとくる。

3
さてはて、野際さんのことばかりゆうてますが、

本作は尾野真千子と向井理主演・共演による、昭和の時代の大河系夫婦・家族ドラマ映画です。

野際さんは、尾野真千子の晩年を演じてはるのですが、

本作そのものが、昭和をバックにした映画なだけに、

野際さんの活躍した時代と共に、50代以上の昭和世代には、懐かしく見られる映画になっています。

4
みなさん、昭和映画を見たことはあるでしょうか。

若い世代はどうなんだろうか。

家族の大河映画となれば、日本映画だけでなく、これまでに多数の映画が出てきております。

永遠の名作なんてのも、思い出せるテーマですが、本作は、もっともっと昭和のベタさに、特化した作りでして、

昭和ドラマのNHK朝ドラに主演した、尾野真千子や向井理の起用は、まさにピッタリフィット。

うまいことゆかんけど、夫婦で一緒にガンバローみたいなこの映画は、

まさに昭和節満載の映画でした。

6
妻役・尾野真千子のナレーションが、タイトでドラマティックに進みつつ、

戦前に尾野と向井が結婚し、中国の南京・上海、向井の実家・愛媛、茨城、福島、大阪と、向井が職を転々としながら、

妻のサポートもありつつも、しかし、世の中、うまくいかない現実を、描いてゆきます。

8
夫を支える妻役の尾野真千子のキャラは、まさに昭和を代表する雛形的女房役でしょう。

職替えしてゆく向井理も、高度成長時代と、その後のリーマンの生き様とは違い、

負け組になるまいと、必死のパッチを見せる、昭和世代の男の、もう一つの生き方を見せてくれます。

7
向井のおばあちゃんの、半生記を原作にした本作。

向井が映画化を熱望し、推進した映画なだけに、その演技はこれまでとはどこか違っていました。

向井は、自分の祖父の人生を演じるのです。

いつものようでありながら、いつものようでない、その熱意ある演技ぶりに、

見終わってしばらく経ってから、ウーンとうなった。

どこか温厚ながらも、気合の入った演技を、見ていただきたい

2
コドモたちがいる「夫婦善哉」(1955年)の大河版。本作を、ボクはそう見ました。

ペシミズムも少々あるけど、「夫婦善哉」や「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)の明るさもある、昭和の家族ドラマ

ほんでもって、高畑充希ちゃんが歌う主題歌も、しっとり癒やしをくれました。

2017年6月16日 (金)

「キング・アーサー」

1
「シャーロック・ホームズ」と変わらない、ヒロイズムがシュートする!

古代もの映画が、21世紀的ゲーム感覚で生まれ変わる

http://king-arthur.jp

6月17日のサタデーから、ワーナー・ブラザース映画の配給により、3D・2D同時上映で、全国ロードショー。

本作は、2017年製作の、アメリカ映画126分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 WARNER BROS. ENT. INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED AND PATPAC-DUNE ENT. LLC

2
ガイ・リッチー監督の新作です。

監督のマイ・カルト&ベストでゆけば、本作はカルトになるかもしれないけど、

監督の破天荒かつ、自由な作風が吹くままに、かつてなく思いっきし披露された作品ではないか。

4
かつての古代ものにはなかった、ゲーム感覚、VFX・CGの多用などは、現代では当たり前ではあるけれど、

それらを見せてゆくスリルある流れの中に、今までにない新しさを見た。

6
ちなみに、古代もの映画のマイ・ベスト&カルト・スリーを、思いつくままにゆうと、

●ベスト⇒①ベン・ハー(1959年製作・以下の引用は、指定以外は全てアメリカ映画)②イントレランス(1916年)③十戒(1956年)

●カルト⇒①本作②トロイ(2004年)③300<スリーハンドレッド>(2007年・アメリカ)、

なんてカンジやけど、ボク的古代ものの基本は、スペクタクルやら、戦闘シーンのダイナミズムやらですが、

でもしか、本作やカルト③は、21世紀ものらしく、VFX・CG主流ながら、大作感あるエンタイズムがあります。

8
さてはて、アーサー王の話とゆうのは、ある程度みんな知ってるやろけど、

シェークスピアが「ハムレット」でヒントにした、エピソードでして、

アーサーの父をクーデターして、叔父が王になったけど、

のちに大人になったアーサーが、叔父を倒して王になる、なんて話やけど、

本作は、原作とゆうか、言い伝えられた話を、そのまま描いたのではありません。

9
黒澤明の「七人の侍」(1954年・日本)以来、定番化した7人メンバー。

そんなアーサーを含む7人組が、叔父王とその軍兵と戦うわけですが、

はともあれ、ストレートには描かれません。

一方、コンドルを始めとした動物たちも、敵や味方として使われます。

7
子供のアーサーが大人になるまでを、タイトなサウンドでダイジェストで描いたり、

作戦行動を、想定を入れて短カットで示したり、

いわゆる、映像編集的スピードフルが、ドラマ・リズムを作ってゆきます。

これは間違いなく、監督のセンスやろな。

オーケストラ・サントラから、バンド・サウンド、シンセやドラムなどで、シーンをリズミックに魅せるところも、秀逸でノリノリ。

3
少人数と多勢対決ではありますが、

最終的には、アーサー役主人公チャーリー・ハナムと、ジュード・ロウの1対1対決へ。

主人公の過去の切れ切れの追憶を、謎めきポイントにしながら、

主人公がその気になっていく過程描写も、面白いかと思います。

5
「シャーロック・ホームズ」(2009年・)あたりから確立された、

ガイ・リッチー監督チックな、ヒーロー描写・ヒロイズム描写の、トリッキーに魅せられてください。

2017年6月15日 (木)

「心に吹く風」⇒日本映画劇場

1_2
「冬のソナタ」のユン・ソクホの、初映画監督作品

不倫愛が北海道をバックに、静かに展開

http://www.kokoronifukukaze.com

6月17日の土曜日から、松竹ブロードキャスティングとアーク・フィルムズの配給によりまして、新宿武蔵野館ほかで、全国順次のロードショー。

関西では、7月8日からテアトル梅田やらで上映。

ロケ地の北海道では、6月10日から、札幌シネマフロンティアほかで上映中。

本作は、2017年製作の、日本映画107分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ松竹ブロードキャスティング

2_2
韓流を日本に築いた、韓国の連続テレビドラマ「冬のソナタ」。みんな、知ってはりますよね。

そのドラマを演出した、ユン・ソクホ監督が、何と初めて映画監督のメガホンを採った。

なぜにこれまで映画監督をしなかったのか、そのあたりは置いといて、

初の映画監督作品が韓国映画ではなく、日本映画だった点も、興味をそそられるんやけど、

作品性は、モチ「冬ソナ」チックを、ベースにした作品になっとります。

4_2
「冬ソナ」にあった初恋・純愛なんかを、1つのキーにしてるようやけども、

それも入れつつ、「冬ソナ」の今一つのキー・記憶喪失とゆう、ドラマツルギー・セッティングをはずして、

今作の映画では、不倫がテーマになっているようどすえ~。

3_2
不倫映画の在り方みたいなんは、日本映画「昼顔」(弊ブログ6月9日付けで分析)の項で、分析いたしとりますが、

本作は、男は独身・女はダンナと子持ちとゆうことで、いわゆるW不倫やありませんが、

「昼顔」にあった、ベタベタやない、純な愛の交歓ぶりは、共通しとりまして、

その愛のつつましさに、ウーンとくるような、仕上げぶりなんどすえ~。

5_2
しかも、本作は静謐な、ストーリーの流れが、目立つ作品になっとります。

間合いの長さ、あまりにも静かな展開。

フロントからの車内の、2人のツーショット・カットなど、2人のツー・ショットは、当たり前のように頻出。

2人のためだけの静かなる世界が、全編のほとんどを覆っているんだす。

9
でもって、北海道ロケ作品だけに、美しき自然風景描写をバックに、展開させる作りでおます。

北海道ロケの日本映画は、これまでに100作以上にわたっておりますが、

自然描写を、かなりと打ち出す映画は、なぜかそうそうありませんねん。

桜やら蝶々。大地と空の風景やら。

2人の愛と自然風景が、絶妙にリンクした作品として、

本作は記憶に残るべくな、1本になっとります。

7
日照のテカリ・反射感を、取り入れたカットが頻出し、

風の音・香りを、カンジさせる効果音だったり、

自然を取り入れたカットやシーンが、

2人の愛の行方は別にして、

ある意味で、本作の見どころにも、なっているようにも思えました。

6_2
観客によっては、「冬ソナ」との既視感を、見たい方もいてるかもしれません。

とゆうワケではないとは思いますが、

主演の2人には、「冬ソナ」の2人に見合ったような、キャスティングが施されているようで…。

10
ペ・ヨンジュンは、眞島秀和。

共にメガネを掛けているとこは別にして、ナイーブでストイックなキャラはよく似とりますし、

また、チェ・ジウと真田麻垂美。

こちらも、ナイーブ、ストイック共に、特注やねん。

特に、つつましき人妻ヒロイン役として、真田麻垂美は、

往年の日本映画の名作にあった、人妻役に通じるものがありましたで。

8
静かな展開を続けながらも、ラスト近くで示される女の衝動と、ラスト・シークエンスのサプライズ。

静かに静かに、しっとりしっとり、そして最後には、滋味ある哀愁を示す作品。

「冬ソナ」ファンだけでなく、大人の恋愛映画を見てみたい方に、ピッタリの作品でした。

スペイン映画「オリーブの樹は呼んでいる」

1
おじいちゃんと孫娘のキズナが、純粋で美しい

スペインから登場する、前向きヒロイン映画の快作だ

http://www.olive-tree-jp.com

6月17日のサタデーから、アット エンタテインメントの配給によりまして、テアトル梅田ほか、全国順次のロードショー。

本作は2016年製作のスペイン映画99分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒMorena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Pelicula A.I.E.

スペインから、家族のキズナ入り、ロードムービー仕様の、

前向きヒロイン映画の、元気がもらえる映画が、登場いたしました。

2
まず、家族のキズナ系は、おじいちゃんと孫娘のキズナがメインです。

オジンと孫のキズナ映画といえば、イロイロあるけど、

ボク的には、菅原文太と石原ひとみの「わたしのグランパ」(2003年製作・日本映画)が、大好きでした。

「わたしのグランパ」は、オジンが孫を守るとゆう設定でしたが、

本作は、その逆でして、

オジンとの過去の追想に浸りつつも、

アルツハイマーになったかのようなオジンの、一番大切だったものを取り戻そうと、

大人になった孫娘ヒロインが、必死のパッチで、奮闘努力する映画でおます。

4
オジン・オバンの想い出を、孫が現在形から辿ってゆくとゆうスタイル映画も、それなりにあるけども、

本作は、孫娘の熱意と行動ぶりにおいて、

ココロ揺るがせる、映画になったのではないかと思います。

5
さて、ロードムービー的には、オジンの大切なもの・オリーブの樹木へと向かう道行ですが、

目的地がはっきりしているロードとゆうのは、

結末がなんとなく見えてしまって、チョイオモロないとこがあるけども、

本作は、ヒロインの熱意がポイントになって、感動的でもありましたやろか。

6
かつて弊ブログで、ロードムービー映画の、マイ・ベスト&カルトを披露したり、

ソロを含む、ロードの組み合わせについて、考察したりしましたが、

本作の組み合わせは、ヒロイン・叔父さん・男友達の3人です。

ほんでもって、ヒロインが2人を、引っ張るとゆうカタチで展開します。

7
強気なヒロインの、前向きな映画として、グイグイとドラマを推進してゆきます。

その真っ直ぐな生き方は、名作ヒロインものに多かった、

それでもガンバッテ、前を向いて生きてゆくみたいな、ヒロイン映画の在り方に、通じていると思います。

3
スペイン出身の女性監督、イシアル・ボジャインのキモチも、入った作品でありましょうか。

オーケストラ・サウンドも使った、ドラマティックを意識した作りも、胸にきました。

8
大企業ビルのロビーにあった、オジンのオリーブの樹。

果たしてヒロインは、この樹をオジンのために、取り戻せるのか。

ハラハラドキドキしながらも、ヒロインに感情移入して見られる、ヒロイン映画の快作です。

2017年6月14日 (水)

「レイルロード・タイガー」

1
戦時下でのジャッキー・チェンを、見たことありますか?

ジャッキー初がいくつもあるアクション映画だ

http://railroadtiger-movie.jp/

6月16日のフライデーから、プレシディオの配給により、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー。

本作は、2016年製作の中国映画124分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 BEIJING SPARKLE ROLL MEDIA CORPORATION SHANGHAI FILM GROUP CO., LTD. BEIJING GOING ZOOM MEDIA CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

かつてジャッキー・チェン主演作の、

マイ・ベスト&カルト・スリーを、弊ブログで2度ばかり披露しましたが、

本作はどちらかと言えば、カルトに入るかもしれません。

但し、カルトに入るとはいえ、第二次大戦下の日本軍統治の中国を舞台に、

ジャッキーが、やったりヤラレたりの、丁々発止の活躍をするなんてのは、

ジャッキー映画史上初めての、舞台設定であります。

2
ジャッキーが、戦争絡みの映画に出るのも初でしょう。

中国を舞台にした、戦争時の抗日絡みの映画は、これまでに結構出てきておりますが、

総じて、ペシミズムある悲劇的な作品になりがちでした。

確かに、本作も悲劇と言えば悲劇ですけども、

でもしか、ジャッキーのキャラクターが、そこんとこを緩和しています。

6
さらに、ジャッキーらしいアクションもあるのですが、

今回は鉄道絡みの、列車アクションが特注。

日本軍の列車での、物資輸送を阻止するために、鉄橋爆破を、ジャッキーたちは画策するのです。

冒頭から、列車を使ったアクションが披露されます。

もしかして、ジャッキー初の列車アクト。そして、ジャッキー初の自己犠牲(!?)。

でもって、作戦行動をするメンバーは7人。

3
列車アクトの原点作「大列車強盗」(1903年・アメリカ・サイレント&モノクロ)、

黒澤明の「七人の侍」(1954年製作・日本映画・モノクロ)を、嚆矢としたメンバー数に加え、

鉄橋爆破作戦は「戦場にかける橋」(1957年・アメリカ)を思い出したり、

冒頭とラストで示される、スピルバーグ監督の少年もの風など、

過去の名作へとインスパイアーした、隠し味にも注目したいところ。

5
さてはて、メンバーたち一人一人を、実像から劇画に変換して、紹介するユニークさです。

ジャッキーと共に、日本軍に捕まる、ファン・ズータオ(K-POPグループEXOのメンバー)の真摯な演技や、

ジャッキーの息子ジェイシー・チャンとの、兄弟設定の親子共演だったり、

アンディ・ラウのチョイ出演など、

ジャッキー以外の役者陣にも、見とれてほしい。

7
そして、日本からは池内博之が参戦。

クライマックスでの、ジャッキーとの1対1対決は、ジャッキー対決シーン十傑にも入るべき、

印象的かつコミカル、で、シリアスがありますよ。

4
「ポリス・ストーリー/レジェンド」(2013年・香港&中国・弊ブログ分析済み)に続き、

ジャッキーとタッグを組んだ、本作のディン・シェン監督。

前作のビルの内と外でのスリリングな攻防が、本作では、爆破を巡る攻防に転換し、

コミカル・モードがありつつも、男たちの泥臭い対決ぶりに、グッと魅せられる作りになっています。

何はともあれ、映画館へ行ってご確認くだされ。

「コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝」

1_2
勧善懲悪の正義の味方な、香港アクションだ

黒澤明やセルジオ・レオーネにはない、アクション・シーンがバクハツ

http://sammohungisback.com/

6月10日のサタデーから、ツインの配給により、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほかで、全国順次の上映中。

本作は2016年製作の、中国・香港合作120分。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 Universe Entertainment Limited. All Rights Reserved.

何はともあれ、メッチャ派手で、スピードフルで、

スロー・モーションもあるけど、観客の動体視力が試されるような、アクション・シークエンス続き。

そして、善悪をクッキリ分け、弱者のために、正義の味方が、悪を懲らしめるとゆう、

ストレートかつオーソドックスな、勧善懲悪映画。

2_2
ジャッキー・チェン主演の「香港国際警察/NEW POLICE STORY」(2004年製作・香港&中国合作)でも、

ド派手なアクションを撮った、ベニー・チャン監督の新作。

監督は黒澤明やセルジオ・レオーネに、影響を受けたらしいのですが、

こんなド派手・スピードフルなアクトは、両監督作品にはありませんで。

たぶんアクションの派手さではなく、その舞台設定なんかをゆうてはるのかな。

3_2
例えば、黒澤明の「用心棒」(1961年・日本)、

でもって、それをリメイクした、セルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」(1964年・イタリア&西ドイツ&スペイン)を見てみると、

食堂やらの造形はよく似てる。

でも、両巨匠は、食堂・居酒屋でのアクションなんかは披露してません。

むしろ、本作では、そこでスリリングな立ち回りを演じさせることで、

両巨匠とは違うところを、見せているようなカンジがしました。

4_2
本作にちょっと出演もしてはりますが、サモ・ハンがアクション監督でして、

ベニー・チャン監督とは、初顔合わせらしいです。

香港アクション映画の、大ベテラン役者サモ・ハンは、

本作公開前に公開された「おじいちゃんはデブゴン」(2016年・香港&中国・弊ブログ5月25日付けで分析)では、

主演・監督・アクション監督を兼任し、気焔を吐いた。

でもって、本作では、新しいアクションを造形すべく、

多彩でハデハデの、アクションを演出してはるのです。

5_2
昼寝をジャマされたと、食堂内で多人数の敵を蹴散らす、エディ・ポンのシーンから、アクションは始まるのですが、

これがまさに、ベニー・チャンとサモ・ハンのアクション演出の、ミキシングとゆうカンジ。

宿泊所の食堂での、1人対多勢の対決ぶりしかり、

湖での柵を活かした対決ぶりなど、

黒澤やレオーネも考えなかった、アクト・シーンがクリエイトされています。

6_2
両巨匠監督の演出威力は、群像アクトより、1対1対決に発揮されていたかと思いますが、

本作でもモチ、写真の一番下にありますように、1対1対決シーンがあります。

そのアクトの造形ぶりは、両巨匠には関係なく、オリジナリティーあふれるものでした。

とゆうことで、映画館にて、ご確認くだされ。

2017年6月13日 (火)

「パトリオット・デイ」

1_2
テロ事件の群像劇ドラマ

マーク・ウォールバーグのヒロイズムが光る

http://www.PATRIOTSDAY.JP

6月9日のフライデーから、キノフィルムズの配給により、全国ロードショー。

本作は、2016年製作のアメリカ映画2時間13分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

8
本作は、2013年にボストン・マラソンで発生した、爆弾テロ事件を描いた、実話ベースの群像劇です。

実話のテロを描くとなれば、9.11テロものがありますが、

9.11以前と以降では、この種のテロもの映画は、

実話・フィクションに関係なく、変わってきています。

2_2
以前はまず、1970年代くらいから始まった、アメリカン・パニック・ムービーな、群像劇のノリがありました。

当時上映中止になった「ブラック・サンデー」(1977年製作)や、

「パニック・イン・スタジアム」(1976年)などに加え、乗り物ジャックものでしょうか。

一方において、テロに対して1人で立ち向かう「ダイ・ハード」(1988年)など、

アメリカン・ヒロイズムを示す映画も、売れ線にありました。

また、ヒーローとテロリストを善悪とした、1対1対決ものや、

アウトローを、主人公にした映画もあります。

6_2

でもしか、現実に9.11テロが起こると、そういう映画の描き方に、慎重さやリアリティーが求められるようになります。

リアルな実話もの、

そして、ヒーロー像も、決してスーパー・ミラクルじゃない、人間臭さが必要になってきたわけです。

3_2
その意味では、マーク・ウォールバーグの、ヒロイズム演技はうまかった。

21世紀映画的アメリカン・ヒロイズムでゆうと、

「ボーン」シリーズのマット・デイモンと、180度好対照な演技ぶりでしょうか。

4_2
銃撃戦などのアクション・シーンも、スタイリッシュでもなく、カッコヨサもなく、

現実のリアルに則した雑然とした、ぶきっちょなカンジになってまして、スーパー・ヒーローなんて、どこにもいません。

それゆえに、感情移入度は、非常に高いと言えましょう。

つまり、俺にだってできるぜ、なんてノリだから。

5_2
事件の前日から、時間通りに描くスタイルも、安易にカットバックに頼らない点で、リアル感を覚えましたし、

爆破シーンと、その後の短カットの連続なども、現実の現場の臨場感がありました。

犯人を特定し、追い込んでゆくところの、スリルやサスペンス感も秀逸。

でもって、ラストロールでは、事件に関わった実在の人たちが、演劇のカーテンコールみたいに、登場してきます。

7_2
前2作も共に実話ベースの、アフガン戦争映画「ローン・サバイバー」(2013年・弊ブログ分析済み)、

海底油田火災のパニック映画「バーニング・オーシャン」(2016年・ブログ分析済み)だった、ピーター・バーグ監督の新作。

ウォールバーグとのタッグも、3作連続で続いておりまして、

新しきリアル・アメリカン・ヒロイズムの、在り方を追求しています。

とゆうことで、主人公になり切ってみて、映画をお楽しみください。

「世界でいちばん美しい村」「トトとふたりの姉」

ネパールから、ルーマニアから、

家族ドキュメンタリーの、癒やしと波乱の、快作2作が登場!

1

1_2
●ネパール大地震の、その後の家族と土地を捉えた

「世界でいちばん美しい村」

http://www.himalaya-laprak.com

6月17日の土曜日から、太秦の配給により、第七藝術劇場ほかで、全国順次のロードショー。その後、京都みなみ会館などで上映。

本作は、2016年製作の日本映画108分。

ⓒBon Ishikawa

東日本大震災のドキュメンタリーは、これまでに多数作られてきました。

ただ、東日本大震災級の大地震は、世界各国で起こっています。

特に、第三世界で起こる地震は、あまり採り上げられていませんが、

本作は2015年のネパール大地震を、

東日本大震災で被災した、写真家・石川梵が撮り上げたもの。

2
その撮り方がとても優しい、癒やしの作りでした。

被災地の惨状を、スクープ的に撮るのではなく、

震源地に近い村に住む家族や人々、そして、その土地の美しさを伝える姿勢に徹していて、

地震後の現状よりも、前向きに生きようとする人々の姿に、心打たれる作りになっています。

3
家族で唯一ケガをしたけど、全然その後遺症がない、女の子のかわいさだったり、

寅さんの妹役さくらチックに、優しく励ますような、倍賞千恵子のナレーションぶりだったり、

俯瞰撮影やロングショットなどで撮られる、村の全景や自然風景のしっとり感だったり、

柔和と和みにあふれた作りに、ホッと癒やされました。

第一章の家族ドキュの愛らしさは、特注だったと思います。

神仏踊りの舞いや儀式、民族楽器のサントラ、民族的ダンス・シーンなど、ネパール的なとこも入れつつ、

地上の楽園を、見事に捉えた逸品です。

●ルーマニアの姉妹弟をドラマティックに捉えた

「トトとふたりの姉」

http://www.totosisters.com

6月10日から、東風とgnomeの配給により、第七藝術劇場で上映中。その後、神戸アートビレッジセンターやらで、順次上映。

本作は、2014年製作のルーマニア映画93分。

ⓒHBO Europe Programming/Strada Film

こちらは、ドキュメンタリーとは思えない、ドラマティックな作りで、ドキュ・ドラマならぬ、ドラマ・ドキュと呼びたい映画だった。

しかも、ルーマニアからのドキュなんて、あんまし本邦に上陸し得ない作品。

2_2
異端の作品かと思いきや、

とんでもなくオーソドックスで、分かりやすい、普遍的な家族の在り方が捉えられていて、

そこがある意味でサプライズだった。

3_2
オカンが麻薬売買で服役中。

その間、姉妹弟のコドモたちは、一体どうしていたのか。

その途中経過から、本作は始まります。

麻薬に溺れる姉。

妹は弟の面倒をみながら、前を向いて生きていこうとする。

そして、弟には、ヒップホップ・ダンスを通して、希望の光が訪れて…。

4
モチ、ドラマティックを意図したわけやありません。

家族を撮り続けていたら、結果的に、ドラマティックな展開とサプライズな結末が、待っていたとゆう、

ドキュ映画作家的にも、サプライズになった作品でありましょう。

その意味では、撮っていて、何が起こるか分からなかった「ゆきゆきて、神軍」(1987年製作・日本映画)に近い驚きが…。

家族のキズナとは何か。

描写で示されるラスト・シーンが、ココロに深く突き刺さる。

波乱に満ちた、家族ドキュの傑作です。

(文=映画分析評論家・宮城正樹)

2017年6月 9日 (金)

「昼顔」⇒上戸彩・斎藤工共演

1
W不倫映画の進化型を示す問題作

「失楽園」より、ナイーブ・シャイな展開が面白い

http://www.hirugao.jp

6月10日の土曜日から、東宝の配給により、全国東宝系でロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社

2
不倫恋愛映画とゆうのは、欧米では往年より、恋愛映画の1つのジャンルを、構築していたように思います。

ボク的には、「逢びき」(1945年製作・イギリス映画/デヴィッド・リーン監督)などが、好きでした。

もちろん、各国や日本でも、不倫映画は、大人の恋愛映画として、確固たるスタンスがあります。

9
日本の不倫映画もまた、昔からイロイロありましたが、

一般大衆的に、不倫ものとして遡及したのは、テレビドラマからでした。

昼メロドラマもありましたが、おそらく、キンツマと当時呼ばれた、連続ドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983年・TBS)あたりからでありましょうか。

本作が、テレビドラマの映画版であるのも、

テレビから不倫ドラマが人気を得、ジャンル化したかと、分析できるのでは…。

6
テレビドラマにもなりましたが、映画が先行した「失楽園」(1997年)は、

それまでは男か女のどちらかの、不倫ものが主流だったのに、W不倫とゆうところを、テーマ的に大開陳しました。

「失楽園」以前と以降では、不倫ものの在り方・見方が一変したのであります。

4
そして、W不倫もフツーじゃ面白くない。

とゆうことで、本作のような変型・進化型が登場してきた。

連続テレビドラマの、ダイジェスト・シーンはありませんが、

ドラマの結末から3年後を描く、続編とゆうカタチで、映画は始まります。

北野先生(斎藤工)と紗和(上戸彩)は結局別れ、裁判所の命令で二度と会わないことになった。

妻(伊藤歩)の元に戻った北野は、高校教師を辞めて大学講師になり、

一方、紗和は夫と子供と別れて、静岡の見知らぬ土地で、1人暮らしを始める。

10
そんな2人が再会し、

裁判所命令を気にしながら、2人だけしかいないのに、話さずの距離を置いた、変なデートを皮切りに、

徐々に接近し、そして遂には…。

基本、2人はナイーブかつシャイ。思春期の高校生のような恋愛調なのです。

5
でもしか、北野の妻が2人が会ってることを知り、メッチャな作戦行動に、出るなんてゆう展開が続きます。

静かながらも狂気に満ちた、伊藤歩の演技は、

斎藤工と上戸彩がマトモなだけに、2人と見事なコントラスト演技を見せ、物語をトンがらせてまいります。

13
テレビドラマでも使われていた、金井克子の歌謡曲「他人の関係」が、劇場版でも。

パッパ、パパパー。会う時にはいつでも他人のふたり…

なんてフレーズが、妙にドラマに合っていたし、

14
一方で、LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)の「Place Of Love」は、

キャッチーなアメリカン・ポップス・タッチで、ノリよく聴き入ったりと、

サントラ使いの変幻自在にも、注目したい作品です。

12
さてはて、タイトルの「昼顔」ですが、

カトリーヌ・ドヌーヴが、主婦と娼婦の二面性を演じた「昼顔」(1968年・フランス)から、きてるんでしょうか。

分かりませんが、その「昼顔」のけだるい感は、上戸彩のキャラにはないかもしれませんが、

でも、哀切深いとこもあるけれど、上戸彩らしい明るさが、最後には射すので、ご期待ください。

イラン映画「セールスマン」⇒アカデミー賞外国語映画賞受賞

Photo
イランのヒッチコックが示す、心理サスペンスの傑作

「めまい」にも似たミステリアスが…

http://www.thesalesman.jp

6月10日のサタデーから、スターサンズの配給によりまして、Bunkamura ル・シネマほかで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、フランスとの合作によるイラン映画124分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒMEMENT OFILMS PRODUCTIONS - ASGHAR FARHADI PRODUCTIONS - ARTE FRANCE CINEMA 2016

1_2
イラン映画でサスペンス映画とゆうのは、かなりと珍しいのですが、

本作のアスガー・ファルハディ監督は、そんな傑作をいくつもものしています。

しかも、本作で、2度目のアカデミー賞外国語映画賞をゲット。

1955年から始まった、オスカー外国語映画賞で、かつて2回以上受賞した監督は、

4回のフェデリコ・フェリーニ(イタリア)、3回のイングマール・ベルイマン(スウェーデン)、2回のヴィットリオ・デ・シーカ(イタリア)と、

いずれも、映画史に残る巨匠監督です。

2_2
それも1983年のベルイマン監督の受賞以来、おかわり受賞は出ていなかったのですが、

イランの監督が今年達成するとは、意外も意外。

しかし、作品を見ていただければ、納得できるハズです。

そして、ヨーロッパの巨匠監督の3人が、ある意味では、芸術映画としての括りができるのに対し、

本作は、娯楽映画としても機能するサスペンス。

5_2
しかも、欧米のサスペンスとは、ひと味違うスタイルを構築しています。

アルフレッド・ヒッチコック監督的センスもあるのですが、ビミョーに違うかもしれません。

消えた女の行方を描いた「彼女が消えた浜辺」(2009年製作)が、ボクが初めて見た、ファルハディ監督作品ですが、

ミステリアス度を高めてゆく演出ぶりが、スリリングで興奮しました。

3
そして、オスカーを受賞した「別離」(2011年・弊ブログ分析済み)と本作は、

イランの生活状況をバックに、夫婦を軸にして、身近にある問題や恐怖を、静かなサスペンスで捉えました。

ヒッチコックの、ヒロイン・サスペンス。

例えば「めまい」(1958年・アメリカ)とか、「レベッカ」(1940年・アメリカ)とか、サスペンス映画として、映画的設計で作り出された映画を、

より日常生活レベルの、フィルターを通して描いて、ヒッチコック作品へと通じる、作品にしているかと思います。

6_2
冒頭から、3分くらいの長回し撮影で魅せる、マンション破壊のスッタモンダ。

住まいを追われた夫婦は、賃貸マンションへ引っ越します。

でもしか、その部屋には、娼婦だったらしい前住人の、持ち物が残されていた。

でもって、女がまだいると、勘違いした常連客がやって来て、妻を襲うのです。

そこで、ヒッチの「サイコ」(1960年・アメリカ)チックなシャワー・シーンが、あるかと思いきや、

そのあたりは謎めいたカンジの、含みある描き方。

7
警察にはゆわずに、夫が犯人探しをやります。

一方、夫婦は共に役者として、地元の演劇に参加してまして、そのシークエンスが、逐一描かれてまいります。

その演劇は、1955年にアメリカで映画化もされた「セールスマンの死」です。

事件、犯人探し、演劇が、どのようにシンクロし、どのように決着するのか。

胸ワクワクドッキリの展開が、待っていますので、お楽しみください。

4_2
5月31日付けでも書きましたように、今年の洋画の、マイ・ベストテン級映画です。

欧米型のサスペンスに、慣れ親しんだ方こそ、新しいサスペンスの面白さを、見出されることでありましょう。

ぜひ劇場へ⇒

2017年6月 8日 (木)

逃亡劇「逆行」

1
ストレートに逃げる、逃亡サスペンスだ

ラオスを舞台にした、カナダ映画とゆう異色ぶり

http://gyakko.espace-sarou.com

6月10日のサタデーから、エスパース・サロウの配給により、テアトル梅田などで、全国順次のロードショー。

本作は、2015年製作の、カナダ・ラオス合作の88分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2015 APOCALYPSE LAOS PRODUCTIONS LTD.

4
これまでイロイロ出てきた、逃亡映画の1本です。

かつて逃亡映画の、マイ・ベスト&カルト・スリーなんぞを、弊ブログで披露したけど、

本作は、どちらかと言えば、カルトに入る部類の映画でしょうか。

2
逃亡しながら、真犯人探しもする「逃亡者」(1993年製作・アメリカ映画)や、

記憶喪失ゆえに、なぜ追われているのか分からないまま、逃亡応戦する「ボーン」シリーズなどの、

アメリカ映画のような、ドラマティックやヒロイズムはなく、

本作のカナダ映画は、「エッセンシャル・キリング」(2010年・ポーランドほか)のように、

ひたすら逃げる・逃げる・逃げまくるのであります。

3
いわゆる、逃亡映画の原質とゆうか、小細工なしに逃げてゆく映画でして、

どのように逃げるのかとゆう、そのロードの見せ方が、大いなる見どころとなります。

5
ラオスが舞台とゆうのも、異能でカルティック。

アメリカ人が異郷の地で、エライ目に遭う映画としては、

何十年も冤罪で、ムショに入れられてまう「ミッドナイト・エクスプレス」(1978年・アメリカ)ほど、

ムチャクチャで重々しくはありませんが、感情移入度は高かった。

6
フツーの人間が休暇でリゾート地へ行き、そこで、事件に遭遇するとゆう展開。

主人公はレイプ事件を目撃し、見て見ぬふりをせずに、その犯人を思わず殴って殺してしまう。

酔っ払っていたので、本当に殺したのかは分からない。けども、殺したカンジはある。

でもって、警察に追われて逃亡するワケです。

異国の地では、何が起こるやら分からない。

そういう恐怖感を、感じさせる映画でもありました。

7
船で逃亡したり、川を渡ったりと、原始的な逃亡のやり方も、シンプルでストレートでいいと思う。

さてはて、最後にサプライズはモチ、あるのですが、それは賛否を呼ぶかもしれません。

直球の逃亡劇が、グラリと揺れる、変化球に転じる結末に、驚いてウーンとうなってみてください。

2017年6月 7日 (水)

「22年目の告白-私が殺人犯です-」

221

事件の真相を、当ててみろ!

藤原竜也や伊藤英明らが、みなさんに挑戦します!

http://www.22-kokuhaku.jp

6月10日の土曜日から、ワーナー・ブラザース映画の配給により、全国ロードショー。

本作は2017年製作の日本映画117分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2017 映画「22年目の告白 私が殺人犯です」製作委員会

223

推理小説、ミステリー小説を原作としない、映画オリジナル脚本によるミステリー映画です。

映画オリジナルのミステリー、広げてサスペンスとなれば、

巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督作品など、洋画では多数のタイトル数があるけど、日本映画はどうか。

ボクはあんまし記憶にないのですが、さほどないのでは…。

228
かつて犯人当てに、懸賞金を出したテレビ・ドラマなどがありましたが、

映画では、そおゆうのは稀有です。

そおゆう映画があっても、エエやんとは思うけど、

でもしか、本作の犯人(藤原竜也)は冒頭の数分で、堂々と登場してくるのであります。

おいおい、なのですが、実は本作こそ、真犯人は? に懸賞金を懸けて、上映してみたら、

大ヒットするのでは、とゆうとこがある映画なのでは、と思いました。

藤原が犯人かもしれないし、そうじゃないかもしれない。

そのへんも含めて、謎めいて展開できるのです。

229
原作小説があれば、見る前に読まれてしまう。

原作と違う犯人(これまでは例がありません)に変えても、ある程度予想されてしまう。

でも、オリジナルなら、事前に分かることはない。

ただ、本作の場合、ミスリード(読者・観客を間違った方向へゆかせる素因)のための容疑者候補が、

少なすぎるところがあり、そこに穴があるかもしれませんが、

イロイロとサプライズや、どんでん返しのどんでん返しを経て、示される真犯人は、

ミスリードの網を張りまくれば、なかなか当たらない犯人だと思いました。

犯人の名前だけじゃなく、

動機なども当てるとゆうカンジならば、さらに当たる人は少ないことでありましょう。

227
阪神大震災と地下鉄サリン事件があった、1995年に起こった連続殺人事件が、時効を迎えるのですが、

死刑に相当する犯罪の15年の時効が、2010年に時効廃止になったこと。

その直前に時効を迎えるとゆう設定で、ドラマが展開します。

226
事件は、なぜ迷宮に入ってしまったのか。

そのあたりの詳細は描かれていませんが、そこを描くと長尺になってしまう。

ハショリは、こおゆうドラマでは重要です。

本来なら、「64(ロクヨン)」(2016年製作)のように、前後編に分けて、じっくり描くべき素材なのかもしれませんが、

225
一方、時効成立の7年後の2017年に、なぜ直後ではなく、7年後なのかは不明ですが、

「私が犯人です」と、藤原竜也が登場し、その事件の詳細を描いた実録本を出して、

ベストセラーになるなんてゆう、あり得ない設定が紡がれます。

いや、あり得ないわけじゃないけど、あってほしくない展開と申しますか…。

224
そして、藤原竜也は、当時の捜査員刑事役の伊藤英明を挑発し、

やがては2人が、テレビの生中継の報道番組に出演して、

騒動はさらに、トンデモない方向へと、ねじれてゆくのでありました。

222
犯人当てとゆうより、真相当てをポイントに、

懸賞金公募を懸ければ、ますます面白くなるに違いない作品でありましょう。

とゆうことで、賞金稼ぎはできませんけども、

みなさん、真相当て・犯人当てに、挑戦してみてはいかがでしょうか。

2017年6月 6日 (火)

「マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白」

1
異能の脱北を描く、ドキュメンタリー映画

最初から最後まで、不安感とスリリングある作品だ

http://www.mrsb-movie.com

6月10日の土曜日から、[シアター]イメージフォーラムなどで、全国順次の公開。

本作は、2016年製作の韓国・フランス合作映画72分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒZorba Production, Su:m

2
北朝鮮を、韓国側からは北韓国、韓国を、北朝鮮側からは南朝鮮と呼ぶ、朝鮮半島の2国。

そして、現代。

西洋のイスラム国に対し、東洋の北朝鮮とゆうカンジで、

双璧(この言い方は皮肉的に使ってます)で世界的問題国になってる。

なんでやねん、なんやけど、教科書なんかで、表面的なことが書かれて、

その「なんで」は、みんな分かってるようなカンジになってるような、なっていないような…。

そんな状況の中において、脱北をテーマにした、本作ドキュが本邦公開されます。

4
脱北

(フツーに言えば、北朝鮮から韓国へ移住するだけのこと。しかしながら、かつてのソ連からの、他国への亡命に近いような、リスキーがある)をテーマとゆうか、

設定にした映画とゆうのは、脱北がクローズアップされて以降、韓国では映画で、イロイロ作られてきました。

でもって、いろんな形で、ドラマティックが作られてきたけど、

但し、本作はドラマではなく、ドキュメンタリーです。

6
映画批評的立場から、社会問題を論じたり、脱北背景の映画を論じることは、

まま、いろんな媒体の、需要に応じてありましょうが、

また、ジャーナリスティックな観点からは、重要ではあるやろけど、

弊ブログではあくまで、映画として本作を、映画的分析をしたい。

けども、それを許さないのが、この映画でありました。

7
見ていて、ヒロインは2つの家庭に、引き裂かれるようで悩み深いようだ。

けども、ボクとしては、ヒロインは、メッチャしたたかなカンジがした。

脱北どうのこうのよりも、ヒロインの生き方には、クエスチョンが付きまとうのです。

みなさんは、果たしてヒロインに、同調・同感・感情移入できるのだろうか。

5
但し、ドキュだけに、もちろん事実を、脚色なく描いてとゆうか、そのまま映しています。

その流れは、フツーの脱北ものとは、大いに違っている。

そこんところは、見ていてドッキリがある。

でもって、けども…があり…。

3
でもしか、前へ前へのカットや近接カット、俯瞰撮影など、サスペンス感をあおる、映画的カットが頻出。

ドキュとはいえ、波乱ある展開で見られる映画でした。

予期せずに、脱北者扱いされてしもた主人公を描く、

キム・ギドク監督の「The NET 網に囚われた男」(2016年製作・韓国映画・弊ブログ分析済み)と、

比較して見たら面白いかも。

意図して脱北する映画との、違いが共にあり、ココロ揺さぶられました。

一番下の写真の、カラオケを歌うヒロインの、ラストシークエンス。

ネタバレではありませんが、印象深いラストでありました。

2017年6月 2日 (金)

仲代達矢主演「海辺のリア」

Photo
仲代達矢が、阿部寛・黒木華らのサポートを得て、演技的集大成を披露

わが道を往く、トンデモ1人芝居が強烈だ

http://umibenolear.com/

6月3日の土曜日から、東京テアトルの配給によりまして、テアトル新宿やらで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、日本映画105分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ「海辺のリア」製作委員会

6_2
まずは、仲代達矢・御大の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同/主演・助演に関わらず)を、披露いたしますと…。

●ベスト⇒①人間の條件(1959年~1961年製作)②華麗なる一族(1974年)③影武者(1980年)

●カルト⇒①本作②吾輩は猫である(1975年)③約束(2013年)

3_2
モノゴッツーなタイトル数の映画に出てはるので、メッチャ悩みましたが、

でも、ベストはすんなりとゆうカンジ。

ベスト①は、仲代ヒロイズムの最高傑作だし、

巨匠・山本薩夫監督&原作・山崎豊子の、現代劇ベスト②。

そして、黒澤明監督とのベスト③。

黒澤監督との作品には、助演が多いけど、ボク的には名作が多いと、勝手に思っております。

4_2
本作をカルトにするのは、どうかとは思いましたが、

ある意味では、ベストに入れるべき作品なのかもしれないですね。

かつての素晴らしき作品が、目白押しの中で、異能とはいえ、

仲代御大の緻密な演技力が見られるのは、実は本作のような作品なのです。

飄逸な市川崑監督とのカルト②、実話の死刑囚を演じたカルト③の、真摯かつストイックもいいのですが、

演劇の巨匠としては、

本作のような、相手なんか関係なし、ボケ老人のわが道を、ひたすらゆくようなカンジの1人芝居的は、

まさに真骨頂を示すべき、演技ぶりだと申せましょう。

2_2
仲代とシーン的にかなり関わる、阿部寛と黒木華。

現代的高級老人ホームを、脱走した仲代を、仲代の娘(原田美枝子)婿で元弟子(阿部寛)が探し、

仲代の愛人の娘(黒木華)が、さまよう仲代を最初に発見し、つれそってゆくとゆう展開。

仲代は、阿部も黒木も、誰なのか分からず、そのスタイルを最後の最後まで通してまうんです。

その徹底した演技ぶりは、わざとらしくも見えながらも、

仲代の演技に対する、鬼気が入っているようで、ちょっと寒気がしたりしました。

5_2
一方で、その鬼気に対抗すべく、2人も快演・好演ぶりを示します。

これまでは抑制された演技が、多かった黒木華ですが、

発作的にキレる激演技ぶりを披露。

仲代のわが道演技に、素晴らしいノリで対抗いたします。

7_2
そして、阿部寛も、激は控えめながら、嘆き節・ボヤキ節をメインに、いつも以上の、阿部寛調に徹していました。

原田美枝子と、その愛人役の小林薫も、出番は少なめだけど、おのれのあざとさを、心憎くも演じています。

8_3
本編の後半に多投されますが、

小林政広監督タッチとも言える、カメラ固定の長回し撮影は健在。

演劇的でもあるその長回しは、仲代が海辺で演じる、シェークスピアの「リア王」の、

本作のクライマックスにも、機能していました。

映画と演劇がシンクロし融合してゆく、本作の1つの見どころがココにあります。

1_3
確かに、仲代のための映画かもしれない。

主人公・仲代が口にする、「素晴らしき哉、人生!」(1946年・アメリカ映画)など、仲代自身の人生・趣味とも、シンクロしていそうだ。

でもしか、仲代の集大成とも言える演技ぶりに、ひれ伏す内容に、なっていることは間違いない。

記憶に残るべくの、仲代達矢の、渾身の演技に、魅了されてください。

綾野剛主演「武曲 MUKOKU」

1
綾野剛のアクション映画の最高傑作だ

現代の武士道・剣の道とは何かを、感じさせる快作

http://www.mukoku.com

6月3日の土曜日から、キノフィルムズの配給によりまして、新宿武蔵野館、ユーロスペース、シネ・リーブル梅田、京都シネマやらで、ロードショー。

本作は、2017年製作の、日本映画125分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

8
現代における、武士道魂・剣道ゴコロを描いた映画。

時代劇では、当たり前のように披露されますが、それを現代に敷衍させるとゆうのは、

かなり先鋭的・挑戦的な作品だと言えるでしょう。

4
1対1の剣戟対決を、クライマックスにもってきた日本映画となりますれば、

ボク的にはですが、まず、思い出すのは黒澤明監督の「椿三十郎」(1962年製作)です。

次に紹介する「海辺のリア」主演の仲代達矢と、三船敏郎が対決してました。

黒澤映画には、真剣決戦時代劇の傑作が、目白押しですが、

山田洋次監督の藤沢周平原作ものでも、

キムタク主演「武士の一分」(2006年)や「たそがれ清兵衛」(2002年)などもあります。

2
但し、真っ向な真剣勝負としては、

相手の心を読みながら、1分以内で雌雄が決する、静かなる決闘「椿三十郎」とは真逆で、

本作は、真剣対決ではモチありませんが、竹刀と木刀による、必死の戦いぶり。

「決戦の日は雨だった」が有名な、黒澤の「七人の侍」(1954年)と同様に、ゲリラ豪雨の中での決戦です。

でもしか、「椿三十郎」的戦いは、ラストシーンでも披露されますよ。

5
主演は綾野剛。

彼は「そこのみにて光輝く」(2014年・弊ブログ分析済み)の、ぶっきら棒な恋愛節とか、

「新宿スワン」(2015年・ブログ分析済み)のスカウト役など、

泥臭いカンジの、ワイルド感が強烈だと思いますが、

本作では、そこんところが、ストレートに小細工なしに、シュートするのであります。

7
その綾野剛に対するは、村上虹郎。

デビュー以来、大人しい演技が続いていたけど、ここでバクハツします。

バイ・プレーヤーにも注目。

綾野のオトン役の小林薫(この次に紹介する「海辺のリア」にも出演)。

そして、小林薫とかつて不倫関係にあったらしい、スナックのママ役に、風吹ジュン。

この2人、不倫愛でもあった「コキーユ・貝殻」(1998年)の再演、もしくは続編を、演技しているようで面白かった。

また、前田敦子アッチーも出てます。

3
熊切和嘉監督の新作です。

傑作・快作を何作もものしている監督ですが、

これほどアクショナブルな作品は、初めてでありましょう。

1_2
切れ味鋭い長回し撮影でも、魅せてくれます。

綾野剛と風吹ジュンの、スナックでの微妙なやり取りとか、

オトン小林薫の手紙を読んで、男泣きする綾野剛の感動のアップとかが、

印象的でありました。

6
現代には全く似合わない、現代の真剣道を、突き詰めた、かつてない作品。

武骨で粗野に見えますが、何はともあれ、その男たちの戦いぶりに、グッとくる作品でありました。

2017年6月 1日 (木)

「20センチュリー・ウーマン」

20
20世紀的女性の生きざま・スタンスを捉えた作品

母子のキズナが、新たな表情を見せる快作だ

http://www.20cw.net

6月3日のサタデーから、ロングライドの配給により、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、アメリカ映画119分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

201
1979年を主舞台にした、20世紀ウーマンの在り方を捉えた作品です。

20世紀人間とゆうよりは、

むしろ1970年代的人間を、描いているようなカンジが、ボク的にはしました。

202
フリー・コミュニティーから逸脱した、1970年代キャラを多彩に描いています。

そんな中で、主人公のオカン(アネット・ベニング)は、ある意味ではオーディナリー・ピープル。

みんなを前にしての、他人の赤裸々な下ネタ告白には躊躇し、それでも、控えめながらも、自分の言いたいことは言い、

一方で、ミーハー的には、「カサブランカ」(1942年製作・アメリカ映画)のボギーこと、ハンフリー・ボガートに憧れてはります。

203
オトンと離婚したオカンと、息子のキズナを、ある種異能なカンジで描かれる映画なので、

見る方は少しオッとくるかもしれませんが、

オカンだけでは、思春期の息子を見切れへん。

そこで、息子より年上のネーさん(エル・ファニング)や、

だいぶと年上(でも、20代半ば)のネーさん(グレタ・ガーウィグ)に、

息子への社会的教育を、頼んでしまうのでありました。

206
エル・ファニングは、セックスはしないけど、主人公の部屋に夜な夜な通いつめて添い寝。

女性の命・子宮の病気に悩むグレタやけど、出入りするいろんな遊び場へ、主人公を連れていって、

やりたい放題にやってチョー、なんて言わはりまんねん。

つまり、2人共、オカンにとっては、主人公の教育には、とんでも適さない、適当でエエ加減な人なのでありました。

けども、主人公はそれらに対し、決して溺れることなく、クールに対応してゆきます。

そして、優等生やない、スイも甘いもな、いろんな人生、いろんな人間関係対応型の、

フレキシブルな大人になってゆくのでありました。

208
映画や音楽など、当時の流行やトレンドが、時代設定として組み込まれおりまして、

パンクやニューウェイブや、

アカデミー賞作品賞を受賞した「カッコーの巣の上で」(1975年・アメリカ・弊ブログ分析済み)なんかも、セリフに出てきます。

204
それらが、登場人物たちのキャラに合わせて、

なるへそな~なカンジで出てくるので、ウーンとうなるようになっています。

207
登場人物たちの各人の半生を、ダイジェスト的に紹介してゆくところなんかも、ユニークで面白く見られ、

そして、ドラマ的効果としても、機能しているようでした。

特に、オカン含む3人の女キャラの解説は、ノリノリでタイトに展開し、

この映画にのめり込む、重要な因子になっていたかと思います。

205
オカンは20世紀最後の年・1999年に死んだとゆう設定になっとりまして、

それゆえに、20世紀ウーマンとはなんぞや? になってるワケやけど、

決してそれだけではありませんねんで。

オトンを描いた「人生はビギナーズ」(2010年・アメリカ・弊ブログ分析済み)に続き、

今度は自身のオカンを描いたとゆう、マイク・ミルズ監督の自叙伝的映画。

母子のキズナを、ベタやなく、かつてない変型で描いた本作やけども、

そのキズナの在り方は、普遍的なものです。

でもって、監督のこれまでの最高傑作! と言うべき作品になっていることも、付け加えておきます。

« 2017年5月 | トップページ | 2017年7月 »