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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2016年10月の記事

2016年10月31日 (月)

10月に見た年間マイ・ベストテン候補映画

●日本映画

☆「この世界の片隅に」(声優:のん/監督:片渕須直/11月12日ロードショー)

http://www.konosekai.jp/

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●外国映画

☆「ジュリエッタ」(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン映画/11月5日ロードショー)

http://www.julieta.jp

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☆「母の残像」(出演:ガブリエル・バーン、ジェシー・アイゼンバーグ、イザベル・ユペール/ヨアキム・トリアー監督/ノルウェー&フランス&デンマーク&アメリカ合作/11月26日ロードショー)

http://www.hahanozanzou.com

Photo
●いつもの月より少なめですが、今月は3作をピックアップしました。

公開日も近いので、ほとんどが近日中に分析しますが、各作品につき、ひと言コメントを述べますと…。

家族・親子・夫婦の絆を描く、ペドロ・アルモドバル監督作でも、アート系のノリを控えめに、一般普及版となった「ジュリエッタ」。

ストレートな描き方が心地よく、そして意外性があった。

「母の残像」は、ラース・フォン・トリアー監督の甥が撮り上げた、死んだ母の物語。

家族各人の過去の記憶を混在させた、複雑系の仕上げながら、母もの映画の新しさを打ち出した作品。

そして、ジャパニメーション「この世界の片隅に」。戦争ものアニメとしては、スタジオジブリの「火垂るの墓」(1988年製作)にも迫る仕上がり。

ということで、後日の分析をご覧ください。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

2016年10月30日 (日)

斎藤工・高梨臨共演「種まく旅人~夢のつぎ木~」⇒日曜邦画劇場

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佐々部清監督の最新作は、ヒロイン・ドラマの傑作

桃太郎伝説ある、岡山県ロケーション映画だ

http://www.tanemaku-tabibito.com/

10月22日から、アークエンタテインメントの配給により、岡山県で先行公開中。11月5日の土曜日からは、有楽町スバル座やらで、全国順次のロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016「種まく旅人」製作委員会

今も昔もいっぱいある、地方ロケによる日本映画です。

本作は、農林水産省の役人(斎藤工)が、地方の第一次産業(農業や漁業)を視察する、シリーズの第3弾です。

振り返りますと、第1弾が、大分ロケの陣内孝則・田中麗奈主演「種まく旅人~みのりの茶~」(2012年製作・弊ブログ分析済み)。

第2弾が、兵庫県・淡路島ロケの桐谷健太・栗山千明主演「種まく旅人~くにうみの郷~」(2015年)でした。

そして、本作は岡山県赤磐市ロケで、

市役所に勤めながら、桃を栽培する、高梨臨ちゃんの、

NHKの朝ドラにも通じるような、好感度あるヒロイン・ドラマであります。

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さてはて、ボクはかつて、47都道府県の各ロケ映画の、比較対照と仕上がりについて、

高校野球的な映画甲子園を、書こうと思ったりもしました。

岡山ロケ映画もケッコーあり、「秋津温泉」(1962年)や「けんかえれじい」(1966年)などの名作もありますが、

21世紀公開作品にだけ限定すると、本作はマイ・ベスト・スリーに入ります。

そして、本作は佐々部清監督の新作でして、

出身の山口ロケ3部作「チルソクの夏」(2003年)「四日間の奇蹟」(2005年)「カーテンコール」(2005年)など、

地方ロケ映画の、日本映画史に残る作品も撮っています。

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本シリーズの役者陣は、いつも元気はつらつです。

前述したヒロインの高梨臨ちゃんが、冒頭からの夢オチ・シーンで、ヘタッピーな「川の流れのように」を歌います。

この「男はつらいよ」ばりのイントロは、笑いを誘い、肩の凝るような映画ではないことが示されます。

そして、その流れに乗って、高梨臨ちゃんが、朝ドラチック・アイドルチックに演技していきます。

実際、臨ちゃんは美人系なので、メッチャドラマ映えします。

以前弊ブログで分析した、故アッバス・キアロスタミ監督の「ライク・サムワン・イン・ラブ」(2012年・日本&イラン)や、

辻仁成監督の「醒めながら見る夢」(2014年)などで、魅せたアイドル性は、今作でも変わりません。

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そんな彼女の美しさに魅かれてか、斎藤工のアニキはいつになく、テンションの高い演技ぶりを見せます。

臨ちゃんに気に入られたいために行動し、ええかっこしいする、主人公に見合った演技でした。

臨ちゃんのおネーさん役、海老瀬はなネーさん。お久しぶりです。

臨ちゃんのアニキ役の、池内博之のアニキ。骨太なたくましさが相変わらず。

みんな、臨ちゃんを盛り上げようとしてるところが、よおく分かります。

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映画的照明をあまり入れずに、自然光を中心に岡山の地方の色を、できるだけ反映した作りでして、

薄色の穏やかで柔らかいトーンの、癒やしある画面が、展開していきます。

自然描写も目に優しい。

先行公開の岡山では、既に大ヒット中です。

さわやかで、癒やしも元気ももらえる、地方映画の心地よさに、浸ってみてください。

2016年10月28日 (金)

「インフェルノ」⇒トム・ハンクス主演

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「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ第3弾

中世の作品の暗号解読は、今作も健在だ

http://www.inferno-movie.jp

10月28日のフライデーから、ソニー・ピクチャーズの配給により、全国ロードショー。

本作は、2016年製作のアメリカ映画121分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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21世紀に出た、ミステリー映画の、大ヒット作「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年製作・アメリカ映画)シリーズの、

「天使と悪魔」(2009年・アメリカ)に続く第3弾です。

刑事ものもありますが、探偵役がいて、事件を追うタイプの映画が、シリーズ化されるのは、最近では稀です。

日本では、テレビドラマからスライドした、刑事ものとかがありますが、洋画はなかなかありません。

「シャーロック・ホームズ」なんかもありますが、

ホームズはミステリー草創期の探偵でして、21世紀的な探偵像とは違います。

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さらに、本作の素晴らしいところは、本格ミステリーである点です。

トリックはもはや、出尽くしたと言われて、久しい中において、

過去のアート作品や文学から、暗号化されたアナグラムを解読するとゆう、暗号トリックを、ミステリーのポイントにしています。

今作では、詩人ダンテの「神曲」と、ルネッサンスの画家ボッティチェリの絵画が、俎上に上がりました。

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さてはて、結末を知った上で振り返った場合、

なぜにダンテの作品に、アナグラムを、すり込む必要があったのかとか、

んなことをするより、誰にも知らせずに、もったいぶらずに、ちゃっちゃと犯罪をやればいいのに…なんて思うのですが、

そこはそれ、謎解きの面白さに加え、犯人を追いつめていく過程こそ、ミステリー映画の醍醐味なんで、

こうでなければ、フツーの犯罪映画か、テロ映画になってしまいます。

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そして、本作は意外性ある冒頭から始まります。

シリーズの主人公役トム・ハンクスが、病院のベッドに横たわり、記憶障害にあえいでいるという状況。

で、フラッシュ映像的に、退廃的なシーンや、街を血が流れるパニック・シーンなどが映されてゆきます。

一体、何がどうなってんの? というこの状況から、グラグラ感が襲ってきます。

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さらに、そんなとこへ女暗殺者が現れて、ハンクスを殺そうと、銃撃するんですよ。

そこを看護士(フェリシティ・ジョーンズ)の機転で逃れ、2人で一緒に逃亡するんです。

さらにさらに、2人でとことん逃げまくっちゃう。

なんかよう分からんけど、闇会社やらWHOやらから、追われる羽目になっていきます。

でもしか、看護士まで一緒に、逃げなくてもエエのになんて思いますが、

第1弾「ダ・ヴィンチ・コード」以来、主人公と女が逃げるのはお約束のようになってまして、

しかも、今回はトンデモなカウンターが、仕込まれております。

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逃げる点に関しては、主人公に記憶障害がある点においても

「ジェイソン・ボーン」(2016年・アメリカ・弊ブログ分析済み)シリーズを、チョイ意識したでしょうか。

それに、フィレンツェ、ヴェネチア、イスタンブールというロケ地は、一部「ジェイソン・ボーン」ともかぶっているし…。

けども、有名美術館からの逃げ方など、誰にもできない主人公の、ハットトリックは、今回も健在でした。

ということで、クライマックスの水中アクション・シーンまで、目が離せません。

2016年10月27日 (木)

宮沢りえ主演「湯を沸かすほどの熱い愛」⇒日本映画の今4

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日本の家族映画が変わってきたぞ

変型家族映画の、新たな一面を示した逸品

http://www.atsui-ai.com

10月29日の土曜日から、クロックワークスの配給により、新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、梅田ブルク7、なんばパークスシネマやらで、全国ロードショー。

本作は、2016年製作の、日本映画125分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016「湯を沸かすほどの熱い夏」製作委員会

「日本映画の今」を分析するシリーズの最後は、日本的家族映画の今です。

日本の家族映画と言えば、邦画ジャンルでは、タイトル数が最も多い映画でありましょう。

家族映画の、マイ・ベストやカルトのスリーを、以前も披露したことがありましたが、

本作は21世紀的に変節してきた、家族映画の1本です。

表面上は、正統の家族映画のように見えて、実は変型家族映画なんです。

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写真上から4枚目を見ますれば、銭湯を経営する4人家族の、アットホームな物語のように見えます。

「銭湯」=「寅屋」と見れば、「男はつらいよ」のような人情節、あるいは喜劇調かと言えば、チョイ違います。

家族の母親役の宮沢りえネーさんが、末期ガンに罹って余命いくばくもなし。

家族の誰かが、ビョーキに罹ってる映画もまた、日本の家族映画には、多くの例が見られます。

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映画的流れとしては、お涙チョーダイ節に進まざるを得ないのですが、それがそんなに泣けない。

これは宮沢りえの、気高さでしょうか、どうでしょうか。

夫役のオダギリジョーは、パチンコ屋に行くと言って家出し、

別の女と、その女が、オダギリとの間にできたと言う、娘(伊東蒼)と生活してました。

代々の銭湯も休業。

でも、そのまま放置してたりえネーやけど、思わず末期ガンを告知され、1人娘(杉咲花)の将来も案じて、

夫オダギリの行方を、興信所を使って探すのであります。

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見つけた夫を、りえネーは恐る恐る訪ねてゆきます。

でも、オダギリは女に逃げられて、ホンマに実娘かどうか、分からない娘と、2人で暮らしていました。

かくして、オダギリと娘が、りえネーと杉咲花の、母娘のとこに戻ってきて、4人の家族生活が始まるのです。

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死期迫るりえネーのことは、夫オダギリしか知らない状況の中で、

りえネーと2人の娘や、夫との間に、キズナな物語が展開していきます。

母娘、夫妻のホロリなキズナではあるのですが、実は設定に、変型家族のポイントとなるところがあります。

ネタバレにつながりそうなんで、詳しいことはモチ言えないけど、

日本映画古来の、血族的家族ドラマ映画を、大いに外しているとだけ、言っておきましょうか。

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娘2人や夫のエピソードをはじめ、りえネーが死ぬまでのいろんなエピソードが、日本映画に伝統的な人情節で包まれています。

りえネーが、娘たちとの旅で出会った、松坂桃李との話もまた、人情節に着地するのです。

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自らの映画キャリア史上、初めての母役をこなした宮沢りえ。

自分の母への想いも、込めているのではないか、といったところも見え隠れし、穏やかにしてどこまでも優しい。

全くブレや激昂がない演技ぶり。これが宮沢りえだと言うべきなのでしょうか。

弱々しい病演技も含めて、宮沢りえは明らかに、本作でガラリと変わったと、ボクは思いました。


オダギリジョーのぶっきらな茫洋系演技や、

花ちゃん・蒼ちゃんの2人の娘の、ナイーブ演技などと、絶妙に溶け合っていました。

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変型ではありますが、家族映画の着地度合いとしては、宮沢りえは死ぬけども、

従来の家族映画の心地よさと、さして変わりませんので、

家族一同で、安心して見に行ってください。

「うつろいの標本箱」⇒日本映画の今2

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1人の男性の死を巡る、女性6人の群像劇

「桐島、部活やめるってよ」のノリがある、トリッキーな作品だ

http://www.hyohonbako.com

10月29日の土曜日から、タイムフライズの配給によりまして、ユーロスペースで、全国順次のロードショー。

本作は、2015年製作の日本映画95分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ2015 タイムフライズ

「日本映画の今」を見るシリーズ。

群像劇というのも、日本映画の今を、象徴する映画だと、ボクは思う。

例えば、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)などから登場した、21世紀日本の若い監督は、トリッキーな群像劇を、志向する向きもある。

内田けんじの「アフタースクール」(2008年製作)や、李相日の「怒り」(2016年・弊ブログ分析済み)などは、

騙しのミステリー映画としても機能していた。

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そして、女性監督・鶴岡蕙子監督は、女性らしい群像劇を撮り上げてきた。

しかも、あまり出てこない、1人の男の死を巡って、女たち6人がシンクロナイズしていくドラマで、

男の死の謎に、迫っていくようなミステリー・タッチで、物語が展開していくのだ。

タイトルの桐島が全く出なかった「桐島、部活やめるってよ」(2012年・弊ブログ分析済み)のノリが、そこはかとなくあった。

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女性ミュージシャンの黒木渚の、ファースト・アルバム「標本箱」にインスパイアーされて、鶴岡監督は本作を作ったらしい。

音楽に触発されて、映画にするというのは、ケッコーあるけれど、

本作は丸ごと1枚のアルバムを、映画化した点では、珍しいタイプだ。

彼女の歌を、出演者にアカペラで歌わせ、ラストロールでは、彼女のキャッチーなポップロックで締めるし、

また、彼女の歌詞の世界をポイントに、物語を作っていくスタイル。

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彼女のアルバムのPRではない。

アルバムをベースにしつつも、鶴岡監督は、オリジナルなストーリーを構築している。

でもって、女優陣が、フツーっぽい自然体で、演技を披露。

ミステリー的逼迫度で、グイグイ引っ張るような映画とは違い、

もっとあっさり味の、ユルリとしたタッチで、ストーリーは進行していく。

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アイドル・グループ「ゆるめるモ!」を卒業した、櫻木百の、アイドルに見合った、片想い演技。

美人女優もいてる、多彩な女優たちが、いろんな男たちとも絡みながら、

松島という死んだ1人の男を、狂言回しに、どうみんながつながっていくのか、

どうストーリーがつながっていくのか、興味津々で見ることができた。

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アップは少なめで、ロングショットとミディアム・ショットを巧みに織り込んだ、映画的な作りに加え、

長回し撮影も、随時挿入している。

風吹くところで、女友達2人が立ち話をする長回しカットは、ボク的には特に印象的だった。

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トリッキーなだけじゃない。

1人の男を巡る、愛とか恋とかじゃなく、ビミョーな女性心理を交錯させてゆく作りは、

ワンランク上の作術劇だと見ました。

心理の彩織りにも、注目して見よう。

2016年10月26日 (水)

「函館珈琲」⇒日本映画の今1

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日本映画の地方ロケ映画は、まだまだ続くのです

愛とか恋とかじゃない、共同生活もの映画の爽快感あり

http://www.hakodatecoffee.com

10月29日の土曜日から、太秦の配給によりまして、シネ・リーブル梅田などで、全国順次のロードショー。

本作は2016年製作の日本映画90分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒHAKODATEproject2016

大手の映画会社の作品が、独占的にヒットしている中で、

単館系のインディーズな、マイナー系の良質の日本映画は、どうなっていくのか。

その在り方や行方を、見ていきたいと思います。

マイナー系の日本映画は、毎年いっぱい作られるのですが、

一方では、資金難による製作中断、完成してもお蔵入りの映画が、毎年いっぱいあります。

そんな現状の中で、単館系とはいえ、公開される映画は、売れる売れないは別にして、幸運と言わねばなりません。

そして、もちろん、作品の仕上がり具合もいいわけです。

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さて、そんな単館系の邦画には、いくつかの特徴があります。

本作の場合は、地方ロケ映画なのですが、

映画を活性化させようと、地方ではいろんな映画祭やコンテストなどが、いくつも開催されています。

「函館港イルミナシオン映画祭」という映画祭があり、その映画祭では公募の「シナリオ大賞」もやっています。

本作は、その賞を受賞した映画脚本が、映画化されたものです。

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これまでに、宮崎あおい主演の、変てこな少女もの「パコダテ人」(2001年製作)、

岸谷五朗主演の、酒と恋にまつわるお話「オー・ド・ヴィ」(2002年)、

夏帆主演の、音楽コーラスの学園映画「うた魂」(2007年)、

岡田准一主演の、隣人との交流もの「おと・な・り」(2009年)など、

単純なラブ・ストーリーなどの、ストレートな作品は一つもなく、考え抜かれた、ユニークなオリジンある作品が多い。

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そして、本作は共同生活ものにして、男女の友情をベースに、

ベタや押しつけではなく、人生やアーティストとしての在り方を、それとなく描いていく映画です。

多彩なアーティストたちが集う、函館の寮「翡翠(ひすい)館」。

多彩と言っても、4人くらいなんですが、

古本屋を目指す、デビュー作以降書けない、作家崩れの青年(黄川田将也)が、翡翠館にやってきて、

片岡礼子や、中島トニーや、Azumiらと関わります。

片岡礼子には、共同生活ものの傑作「ハッシュ!」(2001年)があり、

今作でもキー・ポイントとなる、みんなをリーディングするような役柄を演じています。

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黄川田の淹れるコーヒーが、これがまたメッチャおいしくて、みんなのココロを癒やしてゆきます。

単なるラブではなく、微妙な心理やココロの交流が、稠密に描かれて、

黄川田が言う「函館は時間の流れ方が違う」などが、ドラマに説得力を持たせていきます。

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ミュージシャンとして、「愛は愛とて、なんになる」と歌った「赤色エレジー」のインパクトが、あがた森魚の、ボクのイメージから抜けないんだけど、

ここでのあがたは、演技者として実に、落ち着いた熟成の演技ぶり。

そして、翡翠館のオーナー役の夏樹陽子。

久々に見たけど、この方も熟成してました。

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主人公が作家として、再びスタートを切る映画でもあるのですが、

「苦役列車」(2010年・弊ブログ分析済み)や、「秋の理由」(本作の次に弊ブログで分析)などへも通じる、テイストがあって面白い。

トランペットやブラバン、アコーディオンやパーカッションのサントラ使いも、シーンに合わせて、リズミックでノリが良く、

また、最後に流れる、ソロ・シンガーでもあるAzumiの、ギター・バンドサウンドによる、ポップロックが心地よかった。

いい映画を見たな~度は、ケッコー高い映画でありました。

2016年10月25日 (火)

「THE GIFT ザ・ギフト」⇒アメリカン・サスペンス

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ヒッチコック遺伝子が、濃厚に示された快作

不安感をあおり続けて…そして…

http://www.movie-thegift.com

10月28日のフライデーから、ロングライドとバップの配給によりまして、TOHOシネマズ 新宿ほかで、全国ロードショー。

本作は、2015年製作のアメリカ映画108分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ2015 STX Productions, LLC and Blumhouse Productions, LLC. All Rights Reserved.

サスペンス映画の巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督作品に、影響を受けた作品は、

これまでに、モノゴッツー輩出されてきました。

そんな中でも本作は、家族・夫妻の中に、他人が入ってくることで、

徐々に不気味なサスペンスが増してゆき、遂にはエライことに、なってしまうとゆう映画です。

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この種のタイプは、日本映画では、サスペンスよりは、家族映画的に、家族の問題に帰納する場合が多いのですが、

洋画では、特にアメリカ映画では、サスペンス的あるいは、ミステリー的に、謎めき度の高い作品へと、なってゆくケースが多いように思います。

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パッと思いつくところでは、謎めいた隣人と対決の構図へと向かう「隣人は静かに笑う」(1998年製作・アメリカ映画)、

ストレートに応戦が展開する「不法侵入」(1992年・アメリカ)などがありました。

日本でも最近では、「クリーピー」(2016年・弊ブログ分析済み)などの、怪しき隣人のミステリー映画があります。

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そんな中で、本作は、夫妻と夫妻の間に、入ってくる男との関係性を、

最後近くまで明かさずに、引っ張っていくタイプの映画でして、

男の影に脅える妻とゆうあたりは、ヒッチコックの「断崖」(1941年・アメリカ)や「レベッカ」(1940年・アメリカ)などの、

不安に満ちた、ヒロイン・サスペンスのフレイバーを、濃厚にカンジました。

緊張感ある間の使い方や、不安感をあおるカメラ・ワークなども、ヒッチコック映画的妙味があります。

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都心から郊外に引っ越してきた夫妻(ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール)が、近所のスーパーで買い物をしてる時に、

夫の高校時代の友人(ジョエル・エドガートン=監督兼出演)と出会います。

「うちに(遊びに)来いよ」と、気軽に夫が言って、訪ねてきた友人と夫妻の食卓シーンへと移行し、

酒を飲んで、饒舌になっていく友人の姿が描かれる。このあたりまではフツーでした。

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でもしか、その後、その友人が、夫が仕事でいない間に、妻1人しかいない自宅へ、しょっちゅう訪ねてきて、

おまけに訪ねるたびに、プレゼントを持ってきます。

このあたりまでも、フツーのような展開だったのですが、

お返しの意味で、友人が自宅に夫妻を招待するあたりから、少しグラグラとなり、

そして、そのグラグラは、夫と友人の高校時代の逸話が明らかになると、一気にグラグラ度合いが、急上昇してまいります。

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静かな展開から、徐々にサスペンス度合いを増し、遂には、トンデモナイところへと、向かうスタイルは、ヒッチコック直系の映画作りです。

但し、結末は、ヒッチコック節とは、大いに違っています。

そのあたりが、本作のオリジンなところかも。

イヤミス(嫌な終わり方のミステリー)を、地でいくようなところは、

“ドッカーンなんてね”な、復讐ミステリーとなった「告白」(2010年・日本・弊ブログ分析済み)と、リンクするようなところがありました。

皮肉なラストが効いた、イヤミス・サスペンスの会心作です。

2016年10月24日 (月)

「人間の値打ち」⇒トリッキーなミステリー映画

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久々のイタリア映画エンターテインメント

ミステリー群像劇の快作だ

http://www.neuchi-movie.com

10月29日のサタデーから、シンカの配給により、テアトル梅田、T・ジョイ京都などで、全国順次のロードショー。

本作は、2013年製作のイタリア映画109分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ2013 Indiana Production Company Srl / Manny Films

イタリア映画の群像劇というのは、イタリアン・ネオリアリズム(ネオ・レアリスモ)の頃から、ずーっと続いております。

ロベルト・ロッセリーニ監督による戦争映画「無防備都市」(1945年製作)や、「戦火のかなた」(1946年)などは、今に残る名作です。

ところが、最近はイタリア映画が、特別上映のイタリア映画祭などを除いて、

日本ではあまり単館系でも、上映されない実情があります。

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なぜかと言えば、いわば営業面的に、採算が取れないゆえにがあります。

でもしか、本作のように、メッチャオモロイ群像劇、

しかもミステリー・タッチで、トリッキーな作品となれば、話は違うとは思うのですが…。

この種のタイプでは、最近では、「イレブン・ミニッツ」(弊ブログ分析済み)があり、

また、ハリウッド映画では、クエンティン・タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」(1994年・アメリカ)などと、シンクロナイズするでしょうか。

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1話完結のオムニバスではなく、3人の視点による、4章に分かれたお話です。

ひき逃げ事件で人が死に、一体誰がひき逃げしたのかが、同じ時間軸のシーンを、視点違いでリフレインさせ、

交錯させた上で、最後には、アッと言わせる決着があります。

構成の妙といい、各演技者の、観客をかく乱するような演技ぶりといい、

ミステリー的騙しのテクニックの巧妙さに、うなるしかない仕上げになっています。

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そして、各演技者が逼迫していく、プロセスの巧みのワザにこそ、本作の見どころがあると思いました。

特に、ヴァレニア・ブルーニ・テデスキが、最もミステリアスにして、

高揚と抑制のバランスも素晴らしい、演技を披露しています。

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ヌードも披露する、マティルデ・ジョリも、騙しに貢献する重要な役柄。

ストーリーについては、上記公式ホームページを、参照にしていただきたい。

描かれる事件は、大した事件ではないんだけど、それを多視点で複雑化していく手法というのは、

例えば、宮部みゆき原作・大林信彦監督の「理由」(2004年・日本)にもつながるものです。

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ある意味、イタリア映画では珍しい、トリッキーな作品かもしれません。

イタリア映画を見たことのない人にこそ、衝撃を与える作品ではないかな。

ということで、劇場へ足を運んで、ご確認ください。

2016年10月22日 (土)

チェ・ジウ主演「ハッピーログイン」

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SNS時代の現代のラブ・ストーリー

3組カップル男女6人の、群像劇スタイルで

http://www.happylogin.jp

10月15日から、CJ Entertainment Japanの配給で、新宿バルト9、T・ジョイPRINCE品川ほかで、限定公開中。

本作は、2016年製作の韓国映画123分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

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久々に見ましたが、現代21世紀の韓国映画の、ラブ・ストーリーの爽快ぶりは健在でした。

3組のカップルの話が、オムニバス的に同時進行するのですが、

人間関係部で、いくつかシンクロナイズさせ、細かいすれ違いもはさんで、最終的にはどの話も、心地よいハッピー・エンドへと向かう作りは、

「映画の中にいるみたい」な、往年のハリウッド恋愛映画にも、通じるものがありました。

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一方においては、韓流テレビドラマをはじめ、韓国の恋愛映画は時に、

日本の1990年代の、トレンディー・ドラマとも、相関すると言われてきましたが、

そこから派生した、日本の恋愛群像劇映画

「大失恋。」(1994年製作)「恋と花火と観覧車」(1997年)「大停電の夜に」(2005年)やらとも、シンクロ。

当時、それらの恋愛ものに、ハマッた日本の世代には、本作はとてもたまらない、仕上げぶりを示しています。

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①除隊して芸能界に復帰した韓流スター(ユ・アイン)と、3年前に彼と恋に落ちた、テレビドラマの女脚本家(イ・ミヨン)。

②その脚本家と仕事する、新米の女テレビドラマ・プロデューサー(イ・ソム)と、耳の聞こえない作曲家(カン・ハヌル)。

③そんな作曲家がよく来る、食堂の店主(キム・ジュヒョク)と、同居する羽目になるキャビン・アテンダント(チェ・ジウ)。

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①は、テレビドラマの内情も示しつつ描かれる、芸能界恋愛もの。

②は、コンテンポラリーな若者の、ロマンチック・ラブ。

③は、チェ・ジウが自身のキャリアの中で、かつてないコメディエンヌぶりを、示したラブ・コメディ。

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3つの話はSNSを活用するという、現代感覚を取り入れて交錯させ、

しかも、全ての話にサプライズを、設定した作りになっています。

そして、仁川空港でのシンクロナイズから、怒涛のようにあれよあれよと、流れていく展開は、圧巻でした。

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個人的には、チェ・ジウの文句たらたら、ツンツン攻撃的なコメディエンヌぶりが、メッチャおかしかった。

カラオケボックスでは、驚きのダンス・アクションまで、披露します。

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ピアノ・バイオリンをフィーチャーした、サントラ使いも巧みで、

特に、カン・ハヌルの正体が分かった時の、イ・ソムのシーンで示される、

ドラマティックな作り込みは、印象深かった。

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ということで、みなさん、韓国版「ラブ・アクチュアリー」(2003年・アメリカ&イギリス)を存分にお楽しみください。

2016年10月21日 (金)

「ダゲレオタイプの女」⇒黒沢清監督作品

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芸術性ある、幻影のラブ・ストーリーだ

黒沢清監督「岸辺の旅」と、対をなす仕上げぶり

http://www.bitters.co.jp/dagereo

10月22日のサタデーから、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸やらで、全国順次のロードショー。

東京では10月15日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテやらで上映中。

本作は、2016年製作の、フランス&ベルギー&日本合作の本編131分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒFILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BALTHAZAR-FRAKAS PRODUCTIONS LFDLPA Japan Film Partners-ARTE France Cinema-2016

日本人監督が、海外資本をメインに、撮り上げた映画の1本です。

タイトル数も、そんなに多くない中において、そんな映画の、

マイ・ベスト&カルト・スリー(各順位通り・監督名を付記)を、披露してみますと…。

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●ベスト⇒①デルス・ウザーラ(1975年製作・ソ連映画・黒澤明)②トラ・トラ・トラ!(1970年・アメリカ/リチャード・フライシャー&舛田利雄&深作欣二)③本作

●カルト⇒①マックス、モン・アムール(1986年・フランス・大島渚)②ザ・リング2(2005年・アメリカ・中田秀夫)③THE JUON/呪怨」(2004年・アメリカ・清水崇)

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●海外で監督するというのは、日本の映画監督の1つの夢でもあります。

特にハリウッド映画からの、オファーなんて、夢のまた夢。

ところが、世界のクロサワ(黒澤明)には、ソ連からのベスト①のほかに、ハリウッドからベスト②でも、お声がかかった。

も、ベスト②では、イロイロあって、監督の自殺未遂にまで、発展する事態になったけど、舛田&深作が、見事にカヴァーした。

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ただ、ハリウッドからの依頼というのは、モチ、エンターテイメントとして、当たり前のように売れるべくの依頼であり、

クロサワなんかは別にして、決して作家性に惚れ込んでの依頼じゃありません。

ハリウッド・リメイク作では、元ネタを撮った監督を、そのまま起用した感があるカルト②③。

共にJホラーであるのが、当時は、少し気にはなりましたが…。

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自らの映画作家性を、遺憾なく発揮できるような作品を、海外作品で披露できた点において、

ボクはカルト①と本作は、ある意味では、双璧をなすような仕上げぶりだったと思います。

ただ、大島渚監督カルト①の場合は、かなりヤケクソなとこがあったようにも思え、

監督の本来の作品性を、大いに逸脱した、ある種の冒険作でもありました。

でも、そういう破天荒な逸脱作もOKだと、ボクは思う。

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対して、こちらの黒沢清のフレンチ映画は、理路整然とし、カンヌ国際映画祭で賞をもらった、前々作「岸辺の旅」(2015年・弊ブログ分析済み)と対をなすような、作品性を示しています。

いわゆる、幻影のラブ・ストーリーのノリでしょうか。

そこへ、父の写真のモデルとゆうか、身体そのものを焼き付ける写真撮影法のため、

長時間にわたり拘束される「ダゲレオタイプ」のモデルをやってる、ヒロイン娘が登場。

その撮影法のために、ヒロインは謎めいているように見えるけど、植物へのこだわりがあり、トゥールーズ植物園へも採用される予定でした。

しかし…とゆうストーリー展開です。

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古っぽい撮影法をやりながら、死んだ妻の幻影を見て、酒浸りの日々が続く父。

そこへ、カメラ助手として入ってくる主人公がいて、父娘とのシンクロナイズが織り込まれ、

さらに、再開発計画で、家と土地を売るかどうかの、現実的な問題も絡んでくる。でもしか…。

時に、ヒッチコック・サスペンス的な、展開も見せつつも、あくまで、幻影の恋愛へと向かう流れこそが、黒沢清節なのでしょう。

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とゆうことで、黒沢清が、フランスの役者を使って、思いっきり自らの作家性を、自由奔放に打ち出した作品です。

日本の監督が、海外作品でここまで、自らのアート作品性とゆうか、映画作家性を表現したのは、初めてではないでしょうか。

その意味でも、本作は、エポックメイクな、画期的な作品になったと思います。

韓国映画の今3⇒「奇跡のピアノ」

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泣かせるために作られたような、泣けるドキュメンタリーだ

盲人の少女ピアニストの、涙なしには語れない物語が展開する

http://www.cinemart.co.jp

10月22日の土曜日から、ツインの配給によりまして、シネマート新宿、シネマート心斎橋などで、全国順グリのロードショー。

本作は2015年製作の韓国映画80分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2015 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

韓国映画でもドキュメンタリー映画が、もちろん作られています。

ボクは数本しか見ていないのですが、その全てが、感動の映画か、泣ける映画でした。

お涙ちょうだい映画なんて言ったら、語弊があるかもしれませんが、

韓国映画には泣ける映画が、パブリック(一般的)・イメージとして、多いように思われがちですが、

そういうタイプのドラマ映画を見ても、ボクはさほど涙腺は潤みませんでした。

ころがどっこい、本作のドキュメンタリーには、素直に泣けました。

チョチョギレに近かった。これまでにボクが見た、韓国映画ではなかった体験でした。

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なぜなんだろう。

そこんところを追求したいとこもあるけども、実はツッコミたくない気持ちもあり、

見てみたら単純な話じゃないかと、言われればそれまでだし…ではある。

泣けるドキュの、マイ・ベストなんかも、披露したいとこだけども、

実はドキュというのは、そもそもシリアス系が多く、

ヒューマン・ドキュでも、ドラマ映画のように、ドラマティックに描き込むことは少なく、

泣けるとこは実は、あんまりないように思うんです。

そして、この事実をそのまま綴るという、ドキュの運命があるにしても、そのままがそのまま、泣かせる流れになり、

ああ、かわいそうだの、ココロの呟きになり、そして泣いてしまう。

全くお涙ちょうだい映画の、セオリー通りじゃないか。

しかし、小細工が一切ない。意図的でもない。全くもって、そのままなんだ。

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生まれつき眼球のない少女(イェウン)。

目がそもそもないから、手術もできない。

そんな女の子を引き取った、養父と養母。

養母は障害者施設を運営し、養父は車椅子生活。

そんな中で、盲目の少女は3歳からピアノを弾き、5歳でショパンの難曲を弾きこなすのです。

このミラクルから、彼女の夢が動き出す。

けども、目が見えないだけに、才能を向上させるには紆余曲折があり、

それが、ドキュとしてのドラマツルギーを作っていきます。

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耳が聞こえなかったベートーベン、目が見えなかったレイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーら。

障害者の音楽家のドラマ映画は、いくつか作られてきましたが、

生活や暮らしぶりに寄り添った描き方は、本作ほどにはありませんでした。

かわいそうな盲目の人の、ドラマもありましたが、本作ほどには泣けなかった。

圧巻だったのは、先生と二人でプレイした「白雪姫と七人の小人たち」のスリリング&サスペンス。

彼女のオリジナル・ナンバーも、サントラとしても流されて、胸にきます。

パク・ユチョンのあったかーいナレーションぶりも、静かに感動を呼びました。

映画で泣きたい人こそ、見に行きたい作品です。

2016年10月20日 (木)

韓国映画の今2⇒「朝鮮魔術師」

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韓国ラブ・ストーリーな純愛映画は、時代を選ばず

「ローマの休日」とは、逆パターンで描いてみた作品だ

http://www.cinemart.co.jp

10月22日の土曜日から、ツインの配給により、シネマート新宿、シネマート心斎橋で、全国順次のロードショー。

本作は2015年製作の韓国映画122分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2015 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

韓国映画の今を、探索・模索する第2弾です。

韓国テレビドラマ「冬のソナタ」から韓流ブームが、日本で巻き起こったことは、

かつていろんな韓国映画の、分析で言ってきましたし、みなさんもよく知っていることですが、

ドラマに比べて韓国映画は、実はさほど、ブレイキンしてなかったんであります。

ただ、「冬ソナ」流れから、韓国映画のラブ・ストーリーも、それなりにヒットしたという経緯があります。

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では、今はどうなのか。

韓流ドラマは下降線をたどり、今やある特定の世代のみが、見ているような状況であり、

片や、韓国映画は、日本全国拡大公開なんて、今は昔の話で、細々と上映しているような現状。

でもしか、今こそ、韓国映画の今を、映画館で感じてほしいのです。

なぜか。

例えば、恋愛映画の場合ですが、21世紀初めに見た、韓国ラブ・ストーリーのスタイルが、

明らかに進化しているところが、うかがえて楽しめるんですよ。

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韓国ドラマは、ラブ・ストーリー、ラブコメ、時代劇などがメインにありました。

片や、映画では、南北問題を取り上げたシリアスなものから、マニアックな芸術映画まで、

映画的スタイルを、映画にこだわったカタチで、展開させてきた側面があった。

一方、それとは別に、新たな地平を切り拓こうとする、映画も出てきています。

そして、本作は韓国映画の王道は、ラブ・ストーリーにあると信じている人にこそ、見てもらいたい作品なんです。

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簡単に言えば、時代劇とラブ・ストーリーをミキシングさせたタイプの映画です。

時代劇ではアクションを、現代劇では泣ける恋愛映画やラブコメを、欲していた口には、

本作は復讐シーンで、活劇シーンはあるけども、アクション部はどちらかと言えば、ファンタジー部になってるカンジではあるけど、

どちらの嗜好者にも、十分に対応できるような、作品にはなっていると思います。

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描かれるのは、公演団の奴婢(ぬひ・最下層の人・奴隷)であることを隠してる、魔術師主人公(ユ・スンホ)と、

中国と政略結婚させられる、羽目になってる、女王様(コ・アラ)との恋です。

身分の差のある恋というのは、これまでにいっぱい出てきてるけど、

本作は、主人公は知らないけど、女王は知っている関係性でして、

女王は知らずに、新聞記者は知っていた「ローマの休日」(1953年製作・アメリカ映画)の、

ちょうど反対バージョンだと言えましょうか。

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公演で見せるマジック・シーンや、ギロチンチックなハットトリックや、水の上を歩くファンタジックなどに加え、

クライマックスでの赤い幕を取り入れた、バーサス・シーンなど、

「燃えよドラゴン」(1973年・アメリカ&香港)の、鏡を使った、1対1の対決シーンなんかを、思い出させてくれました。

時代劇とはいえ、美男・美女の正統系恋愛を、正攻法で描いた本作。

韓国映画の、ラブ・ストーリーへの執念が、ひしひしと感じられた1本でした。

2016年10月19日 (水)

韓国映画の今1⇒「プリースト 悪魔を葬る者」

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そして「エクソシスト」は、世界各国に広がった

名作を応用した、韓国映画の傑作だ

http://www.cinemart.co.jp

10月22日の土曜日から、ツインの配給によりまして、シネマート新宿、シネマート心斎橋やらで、全国順次のロードショー。

本作は、2015年製作の韓国映画108分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2015 ZIP CINEMA ALL RIGHTS RESERVED

今から40数年前のことだ。

ハリウッドから「エクソシスト」(1973年製作・アメリカ映画)という、

今なお全世界歴代映画興行収入の、ベスト30に入り、映画史に残る、ホラー映画が日本に上陸し、

凄まじい大旋風が、吹き荒れた。

悪魔を吹き払う、エクソシストという職業が、大いにクローズド・アップされたのである。

そして、その映画は、各国を震撼させ、その映画に影響を受けた作品が、次々に各国で映画化された。

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さてはて、本作の韓国映画は、そんな「エクソシスト」に多大なる影響を受けた、現代韓国版「エクソシスト」なのだ。

モチ、「エクソシスト」を1本の柱に据えつつも、多彩な応用フレイバーを取り込んでいる。

基本は、あくまで悪魔祓(ばら)いとしての、エクソシストに焦点を絞って、

悪魔とエクソシストの対決の構図を、大きな柱にはしている。

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12悪魔がいるらしい。

その1悪魔が韓国にいてるらしい。

ある少女に取り憑いた、その悪魔を、いかにして祓うのかが、本作の見どころなんだけど、

「エクソシスト」のように、1人の神父が祓うわけじゃない。

つまり、助手がいるのだ。

薔薇十字団直系の、キム・ユンソク演じる神父が、いろんな助手を使って、祓いをやってきたけど、

祓いのあまりの、エゲツナサに、助手がやめてしまう。

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そして、新しく採用した、カン・ドンウォン演じる大学生と共に、命がけの祓いへと進んでいく。

マッコリを飲みながらの、2人の出会いの酒場でのシーンから、

無頼派のキム・ユンソクと、純情派カン・ドンウォンの、立ち位置・キャラクター付けが描かれる。

そのあたりから、グッとドラマの中へ入っていくのだ。

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モチ、お祓いのシーンが、大いなるクライマックスとなってくる。

その描き込みは見事だった。

2人のエクソシストぶりと、被験少女の悪魔な様子、

で、そこへ街の様子を、カットバックしつつ、

トンデモ対決へとつなげてゆく作りは、圧巻の仕上がりだった。

さらに、そのあとの着地となる展開も、メッチャスリリング。

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「エクソシスト」の頃とは進化した、今どきのVFX、メーキャップに加え、

ワイルドなシンセサイザーと、ピアノをバックにした聖歌の対比で、作品性を示す、

ラストロールのサントラ使いなども、メッチャOK。

ということで、「エクソシスト」応用映画の、最新版傑作だ。

「エクソシスト」をDVDで見てから、本作を見に行くか、その逆で行くかは、あなた次第。

いずれにしても、モノゴッツー楽しめる作品でした。

2016年10月18日 (火)

「金メダル男」⇒人間喜劇の快作

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日本喜劇映画の、伝統に則った傑作コメディだ

「男はつらいよ」のように、昭和から平成を駆け抜けて…

http://www.kinmedao.com

10月22日の土曜日から、ショウゲートの配給により、全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ「金メダル男」製作委員会

コメディアンが監督した映画となれば、実は意外にも良質の作品が多い。

チャップリンやらウッディ・アレンが、コメディアンかどうかは別にして、日本映画においては、北野武、島田紳助らが1980年代末期から動いた。

でもしか、コメディアンだから、コメディ映画というのは、実はそれほど多くない。

笑いを取ってナンボの職業柄の反動からか、その逆のシリアス系のドラマ映画を、志向する向きがあるようだ。

おそらく、北野武監督の成功が、その志向に拍車を掛けたのだろうか。

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でも、内村光良ウッチャンは、監督第1作「ピーナッツ」(2006年製作)から、コメディで勝負した。

第2作の「ボクたちの交換日記」では、漫才界の自らの話を、映画化したようなとこがあって、コメディというよりも、ヒューマン・ドラマになっていた。

けども、監督第3作となる本作では、本格的コメディに回帰。

ヒューマン・ドラマ・コメディという、スタイルを打ち出している。

しかも、東京オリンピックのあった1964年から、21世紀の今までを駆け抜ける男

(青春記の前半は[Hey! Say! JUMP]の知念侑李・後編はウッチャン)の物語という、大河系のノリなのだ。

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日本の喜劇映画の伝統に、則った映画だとボクは思う。

「男はつらいよ」とか「無責任男」シリーズみたいな、個性の強いキャラクターたちが、

例えば、昭和から平成、21世紀へと移り変わる時代の流れの中で、どう変転していくかを、巧妙に捉えた映画だった。

その流れの中では、本作のような喜劇ではないけれども、「フォレスト・ガンプ 一期一会」(1994年・アメリカ映画)で、

時代の波に揉まれながらも、自らの生きるスタンスを変えなかった、トム・ハンクス演じる主人公と、オーバーラップした。

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金メダルはじめ一等賞を、目指し続ける主人公を、サポートする脇役陣の豪華さにも目を奪われた。

妻役となる木村多江の、コメディエンヌぶり。元アイドルで今は芸能事務所のマネージャー。酒癖の悪さで、本音を吐露するとこなどお見事。

しとやか土屋太鳳、いつもの関西節の笑福亭鶴瓶、ちょいユニークな教師役の、大泉洋や長澤まさみ。

チョイ出のユースケ・サンタマリアや、高嶋政宏なども、印象深い演技ぶりだ。

ウッチャンよりも早く、映画監督して名作を撮った、竹中直人の出演に加え、

同じく映画監督経験のある、サザンオールスターズの桑田佳祐までもが、本作に主題歌提供で参加した。

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ラストロールで流れる、桑田佳祐の、ギターの弾き語り系スロー・ナンバー「君への手紙」には、ジーンときて、

本作はコメディながらも、ヒューマン・ドラマとしても機能していることを、強くカンジさせてくれた。

歌は世につれ世は歌につれな、時代時代の日本歌謡曲を、ストーリーのポイントポイントに使い、

「2001年宇宙の旅」(1968年・アメリカ)の音楽的引用(「美しき青きドナウ」)や、

冒頭で字幕で出るチャップリンの「人生はクローズアップで悲劇、ロングショットで喜劇」の映画的名言を、

本作の中で応用してみたりと、映画的作劇術にも注目してみてください。

ということで、久々に見た娯楽喜劇の、日本映画の快作でした。

2016年10月14日 (金)

「永い言い訳」⇒本木雅弘主演・西川美和監督

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変形家族ドラマの、新しいスタイル映画

本木雅弘のかつてない、複雑演技が強烈だ

http://www.nagai-iiwake.com

10月14日の金曜日から、アスミック・エースの配給により、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2016「永い言い訳」製作委員会

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西川美和監督の新作に、本木雅弘モックンが主演しました。

さて、映画における、モックンのマイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、勝手に披露しますと…。

●ベスト⇒①本作②おくりびと(2009年製作)③シコふんじゃった。(1991年)

●カルト⇒①双生児(1999年)②GONIN(1995年)③トキワ荘の青春(1996年)

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●本木モックンの演技の初期は、学生相撲の青春ユーモア映画のベスト③のようなコミカルと、

漫画家志望の青年を、力を抜いた自然体で演じるカルト③のような、役作りしてなくてもOKな作品が、多かったように思います。

でもしか、初期のカルト②などは、逼迫系の演技を、わざとのように作り込んでいました。

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変わったのは、逼迫系の自然体を表現した、カルト①あたりからでしょうか。

逼迫節と誠実系と自然体。

役作りにフレキシブルさを見せるのも、この頃からでしょう。

そして、誠実系のブレイク演技がベスト②であり、

本作は誠実系と逼迫系が、複雑にミキシングされた、

おそらく、彼のキャリア史上、最も難しい役に挑んだ作品ではないでしょうか。

でもって、その高いハードルを、クリアーした作品なんです。

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二重人格、三重人格とも取れる、神経質な小説家役。

実在の作家。例えば太宰治などの、作家的無頼性とか、気まぐれや虚無感、自己嫌悪、時にキレたり、攻撃的になったりを演じるかと思えば、

他人のコドモたちと、無邪気に交流を結ぶ優しさも演技し、

そのニ面性が、ある種違和感がありつつも、複雑ビミョーな人間性を、説得力あるように、巧緻に演じ抜いています。

いやはや、この演技は、メッチャ大変だあ~。

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監督は、女性監督の西川美和さんです。

本作で長編5作目ながら、1作ごとに違うタイプの、家族ドラマを披露し、

そして個人的には、謎めいた男の描き方が、うまい監督さんだと思います。

葬式に集まる家族ドラマの、デビュー作「蛇イチゴ」(2003年)、

兄弟の確執を描いたミステリー「ゆれる」(2006年)、

母との何かがある、ニセ医者のヒューマニズム映画「ディア・ドクター」(2009年)、

ワケありナゾありの夫妻映画「夢売るふたり」(2012年・弊ブログ分析済み)。

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家族、兄弟、母子、夫妻ときて、今度は変形家族ドラマになっています。

バス事故でお互いの妻を亡くした、モックンと竹原ピストル。

モックンには妻(深津絵里)との間に、コドモはいなかったけど、竹原ピストルのアニキには、幼い兄妹のコドモが二人。

深夜トラック運転手の仕事で、コドモの面倒が見られない竹原に代わり、

モックンが、兄コドモの言葉にも触発されて、二人のコドモの面倒を見るようになります。

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妻を亡くした男と、妻を亡くした子持ちの男が、家族ドラマ的に交流する映画というのは、これまでにありません。

自己嫌悪や無頼感ある作家が、どうしてコドモの面倒を見ようと思ったのか。

無論モックンの演技ぶりが、とても重要になってきますが、

むしろ、そんなミスマッチなところが、ボク的には不思議快感で面白かったです。

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コドモたちの演技も良かった。

真面目な兄と、無邪気な妹のコンビネーション。

そこに、無頼のモックンが入って、一体どうなるのか。

お楽しみください。

2016年10月13日 (木)

「何者」⇒佐藤健・二階堂ふみ・有村架純・岡田将生・菅田将暉・山田孝之共演

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群像劇の新たなカタチ⇒就活群像劇映画

SNS・ツイッター時代の青春群像劇を、ミステリー仕様で展開

http://www.nanimono-movie.com

10月15日の土曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016 映画「何者」製作委員会

本作は、朝井リョウの直木三十五賞受賞作品の、映画化作品です。

ここで、いっぱいある直木賞映画化作品の中で、ミステリー的フレイバーのある作品に限定して、

マイ・ベスト&カルト・スリー(順不同)を、披露してみますと…。

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●ベスト⇒①復讐するは我にあり(1979年製作)②理由(2004年)③マークスの山(1995年)

●カルト⇒①本作②容疑者Xの献身(2008年)③追いつめる(1972年)

●ベストは、犯人の心理や謎に迫った作品を、

カルトは、直木賞史上、初ものだった作品に、フォーカスいたしました。

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無差別殺人鬼の心理に迫ったベスト①③、マンション・ミステリーにして、居住者の謎に迫ったベスト②。

でも、カルト①②も、その意味では、犯人の謎に食い入った映画でしょうか。

カルト②は、愛する人をかばうために、代わりに犯人になる犯人像。

そして、カルト①本作は、6人の中にいてる、いわゆるイケズな人は誰だ?のノリに加え、

そいつのいわゆる、複雑ビミョーな心理にまで、迫った作品です。

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では、カルトのポイントになった、初ものについては、どうか。

③は、直木賞史上初のハードボイルド。

②は、初の本格ミステリー。

で、本作はSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)やツイッター時代の現代を、初めて取り込んだ作品でしょうか。

つまり、IT時代の問題を、初めて取り入れた、直木賞ゲット原作なんです。

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「就職戦線異状なし」(1991年)以来とも言える、大学生の就活映画なんですが、

その就活を、みんなで相談し合って、作戦を練るノリでして、

一方で、就活とは無縁に、自らの道(本作では演劇)を追求する人たちも描いて、

就活に四苦八苦する学生たちと、対比させていく作りになっています。

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そんな流れの中で、佐藤健が演じる主人公がいます。

在学中は、演劇を志していたけども、演劇まっしぐらの友人を横目に見つつ、結局就活しようと奔走。

演劇部の先輩(山田孝之)や、就活するいろんな学生たちと、相談し合いながら、活動していきます。

一方で、主人公は、同じく就活する女子(有村架純ちゃん)が好きなんだけど、

友達(菅田将暉クン)との三角関係があり、未練がありつつも、身を一歩退いた感じになっています。

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同棲してる、二階堂ふみチャンと、その恋人役・岡田将生クン。

ルームシェアする佐藤健・菅田将暉。

同じマンションに住むこの4人が、ふみチャンと、別のとこで親と同居する有村架純ちゃんが、友達だったことで、

ふみチャンの部屋に定期的に集まって、就活作戦会議をやります。

同じ会社に面接に行って、バッティングする時もあり、そんなイロイロな駆け引きみたいなのも、随時披露されていきます。

そのあたりにも、スリリングな面白いところがありますよ。

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でもって、SNS時代なだけに、各人がイロイロと、SNSやツイッターで書き込んでゆきます。

このツイッターに、ミステリーが仕込まれています。

就活群像劇という新しさに加え、このネットの書き込みが、本作の大きなミソになっています。

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就活学生たち同士の駆け引きをはじめ、これまでの愛とか恋ではなく、

彼ら彼女らの心理や、感情を描いてゆく本作。

群像劇としての妙味もある、21世紀の現代日本の傑作青春映画です。

2016年10月12日 (水)

「シーモアさんと、大人のための人生入門」

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イーサン・ホーク俳優監督初のドキュメンタリー

89歳のピアノ教師を描いた、癒やしのヒューマン・ドキュ

http://www.uplink.co.jp/seymour/

アップリンクの配給により、シネ・リーブル梅田やらで上映中。

10月22日からは、元町映画館、CINEMCTION 豊劇ほかで、全国順次のロードショー。

本作は2014年製作の、アメリカ映画81分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ2015 Risk Love LLC

ハリウッド俳優イーサン・ホークの、映画監督第3弾。

監督第1弾が、「グランド・ホテル」(1932年製作・アメリカ・以下の引用は指定以外はアメリカ映画)を意識した、

ホテルの群像劇「チェルシーホテル」(2000年)。

第2弾が、ラブ・ストーリー「痛いほどきみが好きなのに」(2006年)。

ほんで、第3弾の本作は、なんとドキュメンタリーや~。

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毎回、予想不可能の意外な作品を撮り続ける、イーサンのアニキやけど、

しかも、今回はドキュとして、オーソドックスな正攻法スタイルで、撮ってはるのも意外やったな。

50歳でピアニストを引退し、その後はピアノ教師として、生きてきはった89歳の、

シーモア・バーンスタインの今を捉えた、人間ドキュメンタリーどす。

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セレブ・ドキュのハデハデしさはなく、地味やけど滋味ある老境の人間を描いた、シニア映画の快作でもあります。

ドラマ映画やけど、「老人と海」(1958年)の執念や、

ベルイマン監督の「野いちご」(1957年・スウェーデン)の孤独の追求やらとは違い、

癒やしと慈しみに、満ちた作品なんでおます。

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さてはて、イーサン自らが、シーモアさんにインタビューするんは、ドキュのスタイルとしては定番やけど、

但し、距離を置いた接し方やなく、むしろシーモアさんを、人生の師として、のめり込んでゆくようなカンジがあり、

その誠実さやひたむきさが、静かに胸にきます。

ほんでもって、現在のシーモアさんの様子が、生徒たちへの教え方や接し方なんぞを含めて、披露されてまいります。

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そんな生徒たちへの、インタビューもモチありまんねん。

例えば、カーネギー・ホールでソロ・リサイタルを開いた、日本人ピアニストの市川純子ネーさん、などへもアプローチ。

シーモアさんの滋味で穏やかな人柄が、ゆっくり胸に刻まれますで。

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シーモアさんによって、音楽に関する話が、ある種抽象的に語られ、説諭的で、感情を説明するようなとこがあるけども、

そんな哲学的なとこも、実はオモロイとこどして、

クラシック・ピアニストの、音楽への想いを、フツーに語る映画とは、一線を画しておます。

でもって、クライマックスは、彼の演奏シーンでおます。

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ピアノの製作会社スタインウェイ社での、ピアノの選定ぶり、静謐の地下空間での、瞑想めいた練習ぶり。

そして、最後には、ブラームスやシューマンなど、美しき癒やしのクラシック・ナンバーを、ガラス張りのホールで披露しはります。

音楽ドキュとしても、十二分に堪能できる、ヒューマン・ドキュメンタリーでおました。

名作「アルジェの戦い」⇒デジタル・リマスター/オリジナル言語版

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モノクロームの熱気が、ほとばしる大傑作

ドッカ~ンなシーンをはじめ、容赦ない描き込みがスゴイ!

http://www.algeri2016.com/

10月8日のサタデーから、コピアポア・フィルムの配給によりまして、新宿K's cinemaほか、全国順次公開中。

本作は1966年製作の、イタリア&アルジェリア合作映画121分・モノクロ映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ1966 Casbah Films, Inc. All rights reserved.

グループの抵抗運動をはじめとした、民衆やら学生やらの抵抗映画とゆうのは、

戦争映画のアクションより、より緊張感とサスペンスに満ちたもんでおましょうか。

実話に基づいた社会性ある映画もある、そんな抵抗映画のマイ・ベスト・ファイブ(順位通り)を言いますと…。

①本作②灰とダイヤモンド(1958年製作・ポーランド映画)③地下水道(1957年・ポーランド)④実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(2008年・日本)⑤ifもしも…(1968年・イギリス)

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●抵抗運動映画のヒューマニズム映画と言えば、

②③のポーランドの、先頃逝去したアンジェイ・ワイダ監督作品などが、圧倒的に強烈なんやけど、それを上回ったのが本作どす。

また、学生運動が変節して、テロリズム映画となった④やら、ブラック・ユーモアある、学生運動映画⑤なども、ディープ・インパクトがあるんやけど、

でもしか、本作のただならぬ熱気には、一歩も二歩も譲るんやないやろか。

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大国(フランス)の植民地支配に抵抗し、最終的にネイティブ(アルジェリア)の人々が、立ち上がる映画という構図は、それなりにあるかもしれへんけど、

ここまでリアリズムに徹して、撮り上げはった映画ちゅうのは、今も昔もあれへんのと違うやろか。

アルジェリアのカスバの、オール・ロケが臨場感を加え、抵抗組織の1人の青年を、主人公のように見せる前半から、

やがて、群像劇とゆうより、フランス軍側と抵抗組織のバーサスの構図へと展開し、

冒頭とリンクする、ラストの衝撃があって、熱くて、熱くて、熱すぎるシーンが、ド・ド・ドカーンと繰り広げられるんでおますよ。

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リアリティーある、容赦のないシーンが、目が点になるくらい続きます。

拷問シーンのダイジェスト・シーン、女たちの爆弾設置のミッションから始まる、爆破シーンの連続、

警官殺しのイロイロから、タイムを設定しての、抵抗行動のイロイロまで、

緊張感に満ちた、サスペンスフルな展開で続いてまいります。

いわば、ドキュメンタリー・タッチと言えば、そうなんやけど、例えば、イタリアン・ネオリアリズムの最高傑作「無防備都市」(1945年・イタリア)のような、リアル感が漂っておるんだす。

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さてはて、巧妙なるサントラ使いも、本作を名作にした一因でおましょうか。

個人的には、ボクの大好きなイタリアの映画音楽家、エンニオ・モリコーネが、本作の音楽監督でおます。

行進曲、いわゆるマーチのような音楽から始まり、スリリングなオーケストラ・サウンド。

そして、リズミックでタイトな、パーカッションとタイコのミキシングまで、シーンに合わせて、計算されたサントラ使いが、お見事でおました。

「荒野の用心棒」(1964年・イタリア&西ドイツ&スペイン)、「アンタッチャブル」(1987年・アメリカ)などの、

名曲モリコーネ・サントラと、勝るとも劣らない仕上げぶり。

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さらに、今回、再見させてもろて、ボクが再発見したのは、モノクロの熱気どした。

今の若い人たちは、モノクロと聞いて、それだけで敬遠するらしいけど、

でもしか、モノクロで表現される、映画的パワーちゅうのは、カラーのカラフルさや、3Dのスマートさとは違う、重厚かつ骨太な感触が、ズシリとあります。

その強烈かつ驚異のパワフルを、ぜひ1度、ご堪能あれ!でおますよ。

2016年10月11日 (火)

上野樹里主演「お父さんと伊藤さん」

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変形家族・共同生活・父娘映画の快作

上野樹里&リリー・フランキー&藤竜也の、アンサンブル演技の妙味

http://www.father-mrito-movie.com

10月8日の土曜日から、ファントム・フィルムの配給によりまして、梅田ブルク7やらでロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ中澤日菜子・講談社/2016映画「お父さんと伊藤さん」製作委員会

オトン(藤竜也)と娘はん(上野樹里)、娘の彼氏(リリー・フランキー)の、3人の共同生活を描いた映画でおます。

変形家族映画、もしくは共同生活映画の括りでも、分析できる映画どすが、

ここでは、家族の中でも、父娘の関係性をメインに描いた、日本映画へフォーカス。

そのマイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、披露いたします。

●ベスト⇒①晩春(1949年製作)②父と暮せば(2004年)③鉄道員<ぽっぽや>(1999年)

●カルト⇒①本作②百日紅(2015年)③毎日が夏休み(1994年)

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●母子・母娘・父子・父娘といった、2人の親子の絆系映画でいくと、父娘ものが最もタイトル数が、少ないように思いました。

そやから、ピックアップすんのに、あれこれ考えて思い出して、メッチャ時間を食うてしもたんやけど、

ベストは、死んだ父②死んだ娘③を含めて、正統系の大マジなキズナもの。

カルトは、時代物アニメ②を含め、少しヒネリを加えたものや、ベタベタしてへんキズナものを選択しました。

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ほんでもって、本作はカルト③のような、飄々とした味わいのある快作となりました。

コミカルなとこもあるんやけど、共同生活ものなら、森田芳光監督の「キッチン」(1989年)のような、ヒロインのキモチに沿った仕上げになっとります。

ヒロイン役の娘はんには、上野樹里ネーさんが扮しました。

兄家族のもとを離れたオトンは、50代のバツイチ男と同棲中の、娘はんのとこに、突然転がりこみまんねん。

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このオトン役には、ガンコオヤジ役が板に着いた、藤竜也はんがやってはんねんけど、語尾「なのかな」連発で、娘を煙に巻きます。

さらに、いつも通りの自然体演技の、リリー・フランキーとのやり取りは絶妙で、

ぎこちないとこも含めて、3人の演技アンサンブルは快調でおました。

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女性監督タナダユキの新作。

蒼井優との「百万円と苦虫女」(2008年)など、ワケありのヒロインの描き方が、うまい監督はんやと思います。

本作もその変局ワケあり設定に加え、上野樹里をフワーンと、浮き立たせる演出ぶりやらが、うならせてくれます。

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上野樹里ちゅうたら、シリアスよりもコメディエンヌ演技が、映える女優はん。

ある演技では、その演技性が次作以降に、抜け切らない時期が、あったように思いますが、

本作では、新たな次元へと、進んではるように思いました。

映画冒頭のリリー・フランキーとの絡みでは、コミカルなとこも披露しはるけど、そんなコミカル経由のフワーンに、話が進行するにつれシリアスが加味。

藤竜也とのキズナ演技には、サプライズなラストシーンまで、目が離せまへん。

大マジのブラバン顧問役をやった「青空エール」(2016年・弊ブログ分析済み)ともども、

今後の上野樹里を占う意味でも、ターニング・ポイントな1作。

劇場でご確認くだされ。

2016年10月 7日 (金)

「グッドモーニングショー」⇒週末日本映画劇場

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ワイドショーが衝撃の、生中継ニュースを作る

スリルとサスペンスに満ちた、トンデルコメディや~

http://www.good-morning-show.com

10月8日の土曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016 フジテレビジョン 東宝

テレビ業界を採り上げた映画とゆうのは、つまりはテレビ番組を採り上げるとゆう側面があり、

中でもニュース番組ちゅうのが、この種の映画のメインにあります。

ちなみに、洋画ではあるけど、邦画はテレビドラマのメイキングを、映画化することはありまへん。

映画メイキングもんがあるんなら、そんなんもあっても、エエとは思いますが、

但し番組は番組でも、本作のように、ワイドショーを採り上げるナンチューのは、かつてないのでは…。

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さて、ここで、かつても披露しましたが、改めてテレビ業界もの映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままに、披露いたしますと…。

●ベスト⇒①ネットワーク(1976年製作・米)②クイズ・ショウ(1994年・米)③ブロードキャスト・ニュース(1987年・米)

●カルト⇒①本作②エドtv(1999年・米)③テロ、ライヴ(2012年・韓・弊ブログ分析済み)

●視聴率を取るために、生中継のヤラセに近い、スタジオ殺人を描いたベスト①は、

この種の映画のルーツ作品としては、あまりにも衝撃的どした。

その後の作品が、ベスト①のインパクトを超えられないのんは、事実としてボクはあると思います。

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ただ、視点を変えて、人間ドラマ性を追求する作品は、映画としての出来は、大たいエエやろか。

クイズ番組のベスト②、キャスターたちの恋愛ものベスト③、フツーの人をテレビで映すカルト②など。

でもしか、事件の生中継にこだわる映画は、いくつも輩出されてきとりまして、

その挑戦的作りや冒険には、ココログラグラさせてくれはります。

報道する事件がいつの間にか、スタジオ内まで巻き込むカルト③や、

本作みたいに、メイン・キャスターが、犯人の指名で人質になり、それを生中継する映画とか。

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本作は、今年、公開された洋画では、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが共演した「マネーモンスター」(2016年・米・弊ブログ分析済み)と、比較してみたら、より楽しめるのではないかと思います。

ただ、本作はこの種の映画では珍しい、コメディ映画でおます。

でもしか、緊張感あるスリリングなところも、メイン・ソースとしてあり、

コミカルとサスペンスのブレンド具合の、面白さも楽しめる作品になっとります。

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人質を取る犯人から指名を受けて、イザ現場へ恐る恐る出陣する、キャスター役主人公に、中井貴一のアニキ、キイッちゃんがやってはります。

キイッちゃんは元々、映画ではシリアス、さわやか、感動系などで、魅せはる役者はんなんやけど、

たま~にコミカルなんもやってはって、コメディアン演技としては、

本作は「竜馬と妻とその夫と愛人」(2002年)を抜いて、マイ・ナンバーワンどす。

特に、危機一髪の逼迫系のノリは、メッチャうまい。

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キイッちゃんとのスキャンダルを、生中継でバラしてまう、局アナ役の長澤まさみネーさんなんか、

コメディエンヌの方が、エエんとちゃあうんな演技ぶりやし…。

でもしか、ほかの役者陣は、コミカルとゆうよりも、総じてリアルでシビア。

キイッちゃんのコミカルぶりを際立たせるような、君塚良一監督の演出は冴えておます。

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監督初のコメディ映画やけど、これまでに撮ってきはったシリアス映画なテイストを、随所に挿入した仕上げぶりどす。

ツーのコメディでは味わえない、スリリングとサスペンスもお楽しみくだされませ。

2016年10月 6日 (木)

「ジェイソン・ボーン」⇒ボーン・シリーズ最新作

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「ミッション:インポッシブル」と対をなす、CIAスパイものシリーズ第4弾

マット・デイモンの、メッチャな当たり役でおます

http://www.bourne.jp

10月7日のフライデーから、東宝東和の配給により、全国ロードショー。

本作は、2016年製作のアメリカ映画123分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016 UNIVERSAL STUDIOS

かつてスパイ映画の、マイ・ベスト&カルト・スリーを披露させてもらいましたが、

やはり、CIAスパイものは、イギリスの「007」と対をなす、世界の2大スパイ・ジャンル映画やと言えましょう。

ほかには、戦争スパイや女スパイものなんかがありますが、ヒット・トレンドとしても、この2ジャンルは外せまへん。

そんなCIAものでも、2大と言えば、「ミッション:インポッシブル」(M:I)シリーズと、本作シリーズやと言えましょう。

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しかも、ミッションをこなす、従来のスパイ映画とは、大いに違ったところが、スパイ映画を覆すような流れで展開しはります。

最大のオリジンなメイン・ソースは、逃亡者スタイルである点やろか。

ミッションせんと、なんで逃げてんのんちゅう、真逆のオモロサ。

ミッションをこなそうとしたけど、記憶喪失になってしもて、オレって一体誰なんや~ってとこから始まり、

ほんで、CIAから追われることになり、逃げる、逃げる、逃げまくる。

ほんで、逃げながら応戦し、アクションを披露してまうとゆう、トンデモ波乱に満ちた仕上げどす。

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本作シリーズが映画化される前に、ロバート・ラドラムの原作小説「暗殺者」(1985年)を読んだんやけど、

その時、記憶喪失のスパイとゆう新しさと、記憶が戻ってから、さあ、どないなるのんとゆう、ハラドキに魅せられたんやけど、

そんな作品がハリウッドで映画化されると、さらにトンデモ・アクション・エンタとしての、重厚ぶりにうならされました。

そして、本作は、主人公ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の記憶も戻り、それでもとことん逃げ続けるとゆう、

原作にはなかった、とゆうか、作者は既に故人なので、

映画オリジナル・ストーリーなとこへと、新たに踏み出したもんなんでおます。

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そして、今回はCIAから逃げながら主人公は、同じくCIAスパイやった主人公の、オトンの死の謎を、追及してゆくとゆうとこを描き、

そのリベンジにアクショナブルに、打って出るちゅうカンジになっとります。

しかも、「M:I」シリーズと同じく、ワールドワイドなスタイルで展開します。

主にユーロとアメリカやけど、それぞれの場所で、トンデモ・アクションを披露させて、アクション映画としての真髄を、魅せてくれはりまんねん。

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現代の監視網テイストを、大胆不敵にも導入。

その監視ぶりと、逃亡アクションをミキシングさせた、冒頭のアテネのオートバイ逃亡アクションは、群衆の抵抗運動ぶりをバックにして、凄まじいもんがあります。

CIA長官(トミー・リー・ジョーンズ)との、丁々発止もあるんやけど、

かつて戦ったCIAスナイパー(ヴァンサン・カッセル)と主人公の、各国での対決ぶりは、ナンチューても、本作の大いなる見どころでおましょう。

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クライマックスは、ラスベガスや。

「ワイルド・スピード」並みのド派手なカーチェイスあり、

必死のパッチの格闘シーンありで、驚愕のアクションが、次々に繰り広げられてまいります。

ほんで、今後、主人公をサポートするんやないかな~な役の、女新人CIA局員役に、

「リリーのすべて」(2016年製作・イギリス映画・弊ブログ分析済み)で、アカデミー賞主演女優賞ゲットの、アリシア・ヴィキャンデルが扮してはります。

クールで野獣なマット・デイモンと、クール・ビューティーなアリシアちゃんの、今作からの“美女と野獣”ぶりもまた、お楽しみくだされませ。

2016年10月 5日 (水)

浅野忠信主演「淵に立つ」

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家族崩壊ドラマ映画の、今年のマイ・ベストワン候補作

「普通の人々」や「アメリカン・ビューティー」に迫る傑作だ

http://www.fuchi-movie.com

10月8日の土曜日から、エレファントハウスとカルチャヴィルの配給によりまして、有楽町スバル座、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都みなみ会館、OSシネマズ神戸ハーバーランドやらで上映。

本作は、2016年製作の、日本&フランス合作の119分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⓒ2016「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS

家族崩壊ドラマ、あるいは変形家族ドラマの、日本映画とゆうのは、

松竹系の正統的家族映画にアンチを示すように、これまでにいくつも輩出されてきました。

そこで、邦画のその種の映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を言いますと…。

●ベスト⇒①本作②家族ゲーム(1983年製作)③東京物語(1953年)

●カルト⇒①犬神家の一族(1976年)②鬼畜(1977年)③血と骨(2004年)

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●カルトは、ミステリー的タッチのあるものをメインに、

ベストは正統系の家族崩壊ドラマとゆうのも、妙な言い方ですが、いかにもなところを採り上げました。

松竹系を松竹系でアンチしたような、名作ベスト③、松本清張ミステリーのカルト②。家族の誰か1人のせいで、崩壊の道をたどるカルト①③。そして、家族の中に赤の他人が入ってくることで、波乱のドラマを呼ぶベスト①②。

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中でも、こおゆう風にして、家族が壊れゆくところを、稠密に描いた本作は、浮気や事件の煽情的なとこがあるとはいえ、日本映画としては、画期的な1本だったと思います。

アカデミー作品賞を受賞した作品と比較すると、

同じ3人家族的には、家族バラバラ感を出した「アメリカン・ビューティー」(1999年・アメリカ)、

崩壊模様を詳細に描いた「普通の人々」(1980年・アメリカ)などと、シンクロナイズするでしょうか。

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1人の男が、3人家族を掻き回す。

そのやり方は、松田優作が演じた家庭教師という、ベスト②のアルバイターのビジターではなく、

一緒に住み込んで、生活するという中で展開します。

浅野忠信が、松田優作と勝るとも劣らない、謎めいた役に扮しています。

そして、浅野の挙動が、最後までミステリアスになった作品で、

むしろそこんところが、謎を残すような余韻ぶりがあり、渋くて深みあるところであります。

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浅野忠信と浮気する、ヨメ役筒井真理子の、何やら危ない演技。後半は、特に狂気をはらんでいます。

対して冷静ながらも、無表情の向こうに見え隠れする、喜怒哀楽演技が巧妙な夫役・古舘寛治。

口をあんぐりと開けたままの、脳性マヒの娘役・真広佳奈の、観客の不意を衝く衝撃性。

浅野・筒井・古舘のアンサンブルの妙演と共に、ココロに残る演技ぶりを披露します。

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さて、本作は今年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門審査員賞をゲット。

スタジオジブリの公開中の「レッドタートル ある島の物語」(弊ブログ分析済み)ももらいましたが、それよりも上の賞でした。

何しろ本作の深田晃司監督(インタビューも掲載中)と言えば、

国際映画祭の常連で、ほとんどの作品で賞をゲットしています。彼の作品はほぼ全て、弊ブログで分析済み。

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そんな映画作家らしさが、今作でも反映されています。

1~2分にわたる、重要シーンの長回し撮影。

特に、浅野忠信の挙動を見せる長回しは、印象的なものが多かった。

そして、アップ・シーンを一切(あるいはほとんど)使わない、映画的広がりや空間を、最大限に引き出したシーン作り。

ピアノやバイオリンのソロを使った、シンプルなサントラ作りも、緊張感あるドラマに、ふさわしかったと思います。

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今年の日本映画の、マイ・ベストワンの候補映画です。

みなさん、家族映画の新次元を、お見逃しなく。

「淵に立つ」深田晃司監督インタビュー

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カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞ゲット

「親であれ子であれ、人間は孤独なんだを描きたかった」

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●「淵に立つ」(監督・脚本・編集:深田晃司/出演:浅野忠信・筒井真理子・古館寛治・三浦貴大・真広佳奈・ほか)⇒10月8日の土曜日から、有楽町スバル座、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋やらで上映。

http://www.fuchi-movie.com

文・インタビュー=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS

深田監督「カンヌで上映後、15カ国の記者の方から、日本映画論みたいなところで、伝統的な家族制度に依存した絆ものやスイートなものが多いけど、本作はビターだ、現代的だと捉えられました。

小津安二郎監督の『東京物語』(1953年製作)なんかはビターですしね。その意味では、そういう捉えられ方は、すごくうれしかったですね。

ホームドラマを意識的に、破壊するような作品性ですが、前半の普通の家族ドラマは、私の高2の時の体験(両親の離婚)が反映されています。

一方で、家族の絆を振りまいてしまう映画には、違和感を覚えていて、家族の絆は善だという、(一部の)ハリウッドの家族映画などには、イラついたりしました。

そうじゃない家族は、どうなるんだという疑問ですね。そういうモデムが排除されるのは、どうだろうかと思います。

本作の“あの男が現れるまで、私たちは家族だった”というコピーは、私はミス・リーディングだと思っています。

ある幸せな家族の悲劇を、描きたいわけではなく、親であれ子であれ、人間は孤独なんだというのが本質であり、

人間は孤独であることを忘れるために、家族という体裁を取ろうとするけれど、結局、家族はバラバラで1人だったんだというところを、捉えたかったんです。

さて、ミステリーとしては、曖昧なままという点についてですが、意図的に曖昧にしようとしました。

現実の社会は、分からないことだらけだと思うんですよね。

私は(アルフレッド)ヒッチコック監督が、すごく好きなんですけども、映画はサプライズではなく、サスペンスだと、ヒッチコックはミステリー映画に対して、否定的な意見を言ってきた方でした。

謎を出して、謎の解明、サプライズを出して驚きを示す。逆に、そこで映画は止まってしまうわけですよ。

全部バラしてしまうことで、サスペンスを作っていく『めまい』(1958年・アメリカ)などは傑作でした。

この世界のリアルを示すために、あえて八坂(浅野忠信)が何をやったのかは、追及しませんでした。別に解明の必要性もなかったし、ミステリーにはしたくなかったんですよ。

役者陣について言いますと…。

8年間のインターバルを、3週間で13キロ体重を増やして臨まれた、筒井真理子さんの、役者のリアリティー役作りはすごい。筒井さんのおかげでこの映画が映えました。

古舘寛治さん。長い付き合いですね。家族を掻き乱す変なおっさん役をやった『歓待』の前半部を抜粋したのが本作で、『歓待』とは真逆の役。

この2人は早い段階で決まり、そこへ誰が入ってくるかで、映画の出来を左右します。

浅野忠信さん。普通に言えば、普通にかっこいいお兄さん。

赤いシャツと真っ白なシャツ。浅野さんのアイデアです。

浅野さんがいなくなった時に、浅野さんの気配を残すようなところなど、素晴らしかったです」

◆本作はすぐ後刻、分析いたします。

●深田晃司プロフィール

1980年生まれ。東京都出身。

2005年、平田オリザ主宰の劇団「青年団」演出部に入団。

2006年、中編「ざくろ屋敷」(パリ第3回KINOTAYO映画祭ソレイルドール新人賞)

2008年、「東京人間喜劇」

2011年、「歓待」(東京国際映画祭日本映画「ある視点」作品賞・プチョン国際映画祭最優秀アジア映画賞)

2014年、「ほとりの朔子」(ナント三大陸映画祭グランプリ&若い審査員賞)

2015年、「さようなら」(マドリード国際映画祭ディアス・デ・シネ最優秀作品賞・10月5日にDVD発売開始)

2016年、「淵に立つ」(カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞)

2016年10月 4日 (火)

「エル・クラン」⇒アルゼンチンの家族映画

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トンデモ家族映画の怪作品や~

実話ちゅうのんも、ホンマかいな!なクラクラ感

http://www.EL-CLAN.JP

10月1日の土曜日から、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ京都やらで上映中。関西では10月22日から、シネ・リーブル神戸で上映。

本作は2015年製作のアルゼンチン映画110分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⓒ2014 Capital Intelectual S.A. / MATANZA CINE / EL DESEO

1982年から1985年くらいの、アルゼンチンの実話ベースの映画でおます。

ナンチューたら、エエんやろか。

いちおう、家族映画仕様なんやけど、そこに、「ゴッドファーザー」(1972年製作・アメリカ映画)やらのノリが、ある映画やと申しましょうか。

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トンデモ家族映画としては、マイ・ベスト・スリーに入る作品どす。

ちなみに、1位は「ホテル・ニューハンプシャー」(1984年・アメリカ)。2位は「木村家の人びと」(1988年・日本)やけど、

本作は3位ながら、定番の家族のキズナとかを逸脱し、破天荒。

でもしか、冷静なとこに帰着する点において、1位・2位と同等の作品性を、持ってると言えるやろか。

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息子はラグビーのスター選手。

かたや、オトンは、民族解放戦線を指導し、電話一本で、ターゲットに、暗殺者を差し向けられる立場。

そんな2人の行動ぶりが、冒頭から示されます。

いきなりの二律背反が、示されるドラマなんどす。

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さらに物語が進めば、例えば、オトンと息子のカットバック・シーンがあり、

息子はセックスをし、一方オトンの指令による、拉致・銃殺シーンが、交互に映されてまいります。

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そして、当たり前のように映される、家族団らんの食卓シーンなど、

皮肉ブラック・ユーモアな諧謔シーンが、フツーに挿入されてきよります。

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何はともあれでんな、どこまでもクールな、オトンの姿がスゴイわ。

突出したキャラのオトンが、フツーの家族の食卓シーンやらで、

フツーのように、振る舞ってはるとこなんか、静かな描き方ながら、強烈なインパクトを残してきよりますで。

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シーンに合わせた、緻密なサントラ使いも、印象的やったわ。歌ものが充実しとった。

ロック・ナンバーから、ファンキー・ソウルやら、ジャジーなピアノ・スローな男女デュエット、ブリティッシュな哀愁ナンバーなど。

「フットルース」(1984年・アメリカ)など、1980年代のアメリカン映画のサントラ使いを、思い出させるノリを感じましたで。

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近接撮影、フレームアウトやらに加え、長回し撮影や、背後からの映し方の多さで、

緊張感・臨場感の出し方が、静かでクールながらも、ココロを徐々に、揺さぶってくれはりました。

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世界三大映画祭の一つ、ヴェネチア国際映画祭で、次点の銀獅子賞(監督賞)をゲット。

実録系の映画にして、アルゼンチン映画どす。

日本への上陸も、稀少なアルゼンチン映画やけど、

ハリウッドでリメイクされ、アカデミー賞外国語映画賞をもろた「瞳の奥の秘密」(2009年・弊ブログ分析済み)と、

同じくらいの静かなるスリリング&サスペンスで、魅了されてしもた作品でおました。

家族ドラマとしての、異能ぶりもお楽しみくだされ。

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