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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2016年5月の記事

2016年5月31日 (火)

5月に見たマイ年間ベスト候補作

★日本映画

●セトウツミ(池松壮亮・菅田将暉主演/大森立嗣監督/7月2日公開)

http://www.setoutsumi.com

1
★外国映画

●トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(ブライアン・クライストン主演、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン助演、ジェイ・ローチ監督/7月22日公開/アメリカ映画)

http://www.trumbo-movie.jp

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●暗殺(チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ出演/7月16日公開/韓国映画)

http://www.ansatsu.info

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●すれ違いのダイアリーズ(6月18日関西ロードショー/タイ映画)

http://www.moviola.jp/diaries2016/

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■5月はナンチューても、タイ映画「すれ違いのダイアリーズ」が、圧倒的にマイ・ナンバーワンどした。

男女の出会いの瞬間を、ラストシーンにもってきて、人と人の交流を緻密に描いた、ヒューマン・キズナ・ドラマの大傑作。

ラブ・ストーリーとは違う、感動的な男女の交流ものとしては、これまでにないカンジの、稀少な1作やと思います。

同じアジアからは、韓国映画「暗殺」も衝撃的な1作どした。

久々のチョン・ジヒョンの、スナイパーぶりのキレも鋭かった。

日本を、韓国の敵対国として、描いてるんやけど、時代考証もきちんとしてるだけに、不快なカンジよりも、リアリスティックなアクション映画性に、グーンと魅せられました。

日本映画では、「セトウツミ」の、ユルユルのユルリズムに、癒やされてまいました。

一方、アメリカ映画では、ハリウッド赤狩り時代の、実在の脚本家を描いた「トランボ」が秀逸。

そのダルトン・トランボは、「ローマの休日」(1953年製作・アメリカ映画)を書いたらしい。

片や、オードリー・ヘプバーン主演作でも、「ティファニーで朝食を」(1961年・アメリカ)の、原作者を描いた「カポーティ」(2007年・アメリカ)と比べても、

「トランボ」は、甲乙付けがたい仕上がりぶりどした。

全作は、弊ブログで、後日分析いたします。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)

「エンド・オブ・キングダム」公開中

1
USA大統領が危機一髪になる、対テロ・アクション映画

銃撃戦・カーチェイス・大バクハツまで、目が点に!

http://www.end-of-kingdom.com

5月28日のサタデーから、ショウゲートの配給によりまして、全国ロードショー。

本作は2016年製作の、アメリカ・イギリス・ブルガリア合作の本編99分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸLHF Productions, Inc All Rights Reserved.

アメリカ合衆国大統領が、主役になって活劇する映画だす。

USA大統領が活躍するアメリカ映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままに披露いたしますと…。

●ベスト⇒①合衆国最後の日(1977年製作)②JFK(1991年)③リンカーン(2012年)

●カルト⇒①本作シリーズ②エアフォース・ワン(1997年)③インデペンデンス・デイ(1996年)

●大統領の実話ものでは、ベスト③が秀逸。

さらに、大統領暗殺検証を描くベスト②なども、徹底した取材に基づく骨太な傑作。

2
さてはて、大統領が実話ではない、フィクションの中で、大活躍する映画とゆうのは、

ベースがしっかりしていないと、荒唐無稽な話になってまいます。

でもしか、カルト③などは、宇宙人との対決とゆう、ストレートなSF映画性を、打ち出して大ヒット。

一方で、テロとの対決とゆう構図も、ベスト①以来、カルト②など、イロイロ出てきました。

但し、9.11のテロ以降は、相手がある種のところに限定され、しかもパターン化されてしもた。

しかし、本作は違っとります。

4
本作には、前作「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013年・弊ブログ分析済み)があります。

その時は、ホワイトハウスへのテロ攻撃に、対してのものどして、

いわゆる、9.11以降のテロリズムを、想起させるものやったけど、

この第2弾は、今どきのテロリズムとは違う発想から、生まれておます。

イスラム圏やらのテロリストやなく、もっと個人的な怨恨によるもの。

冒頭で、どんな人の怨恨かは示されとりますが、基本的には、ネタバレになるところでもあるんで、言いませんが、

それ以外の新しどころもあります。

アメリカで大統領が襲われるんやなく、イギリス首相の葬儀に、ロンドンを訪れた際に、大テロが発生するとゆう設定どす。

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ヨーロッパでテロが続発しているとゆう、最近の動きに敏感に反応したとこも、あるにはあるけども、

あくまで、アクション映画に徹底した作りこそが、本作のミソでおましょう。

葬儀に参列する、日本の首相を始めとした、各国の首脳が次々に、テロにヤラれてまう中で、

大統領(アーロン・エッカート)とシークレット・サービス(ジェラルド・バトラー)が、イギリスを脱出しようとするものの、

敵の凄まじい攻撃に遭い、遂には、大統領が拘束されて、全世界に向けて、動画で公開処刑されそうに…。

5
カーチェイス・車内からの銃撃戦を経て、

ヘリで脱出をはかったけど、撃墜されてしもて、大統領とSPだけが生き残り、

そして、最後の最後まで、アクションが連続していきまんねん。

前作のホワイトハウスに続き、今作では、バッキンガム宮殿からセント・ポール大聖堂まで、爆破テロに遭うメッチャな展開と流れ。

「ディープ・インパクト」(1998年)や「トータル・フィアーズ」(2002年)では、大統領役をやったモーガン・フリーマンが、

本作では、室内で2人の動向を見守る、副大統領役をやってはります。

2人のアクション場面との「静と動」の意味でも、シブミがありました。

とにかく、理屈抜きに、アクションが楽しめる娯楽作品どす。

ちゅうことで、今すぐ、みんなで見にイコカ~。

2016年5月29日 (日)

「高台家の人々」(こうだいけのひとびと)⇒日曜邦画劇場

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妄想癖の綾瀬はるかと、テレパスポート斎藤工の、

面白おかしく展開する、奥ゆかしき(!?)ラブ・ストーリー

http://www.koudaike-movie.jp

6月4日の土曜日から、東宝の配給で、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2016 フジテレビジョン 東宝 集英社Ⓒ森本梢子/集英社

フツーのOL役の綾瀬はるかネーさんが、名家・高台家の長男御曹司役の斎藤工(たくみ)アニキと、玉の輿結婚をするとゆう、

いかにもありふれたお話が、トンデモナイ・バクレツ・ラブ・ストーリーとなる作品。

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さて、その映画分析をする前に、以前にもやりましたが、

綾瀬はるかネーさんの、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を披露しますと…。

●ベスト⇒①海街ダイアリー(2015年製作・弊ブログ分析済み)②雨鱒の川(2004年)③おっぱいバレー(2009年)

●カルト⇒①本作②劇場版ホタルノヒカリ(2012年・ブログ分析済み)③映画 ひみつのアッコちゃん(2012年・ブログ分析済み)

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●シリアスでマジな演技をベストにしたけど、

元来、はるかネーの持ち味は、すっとぼけた調の、コメディエンヌぶりにあります。

あるいは、大マジ調で、クスッと笑えるような映画。

本作は、その大マジ調にして、キャラクター設定がユニーク。

とゆうか、はるかネーのコメディエンヌ・キャラは、常に異彩を放つもんばっかりなんです。

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今作では、空想癖激しい女役でして、それらの空想・妄想シーンが、

CG・アニメ入りの実写スタイルで、次から次へと展開してまいります。

ココが1つの見どころでもあります。

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そして、人のココロが読め、はるかネーの妄想が見える、テレパスポートな能力を持つ役が、斎藤工のアニキです。

その妄想ぶりの面白さに惚れて、彼は彼女がスキになり、やがてはプロポーズ。

けども、彼女が、彼がテレパスだと、彼の告白で知ったことから、

彼女のココロが揺れ、やがて破局の道を選び…。

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現在の日本映画で、1つのムーブメントとなっている、コミック原作映画らしく、アリエネー設定がイロイロあるけども、

でもしか、前半は確かに、コミック的破天荒がある、ラブ・ストーリー展開だけど、

後半に向かうにつれて、シリアスな流れが生まれてきます。

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そして、ラブ・ストーリーをポイントにした、主演の2人以外の助演陣の、演技にも注目したいところ。

坂口健太郎が好きな、斎藤工の妹役の水原希子ちゃん。

夏帆と間宮祥太朗。

祖父・祖母(大野拓朗とシャーロット・ケイト・フォックス)の恋愛部は、セピア・フィルター入りで、ロマンティックに展開。

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はるかネーをいじる、斎藤工のママ役の大地真央やら、

「まあ、ええやないか」みたいなノリの、パパ役の市村正親やらも、主演の2人の恋物語を盛り上げます。

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西野カナの、キャッチーな主題歌「You & Me」も、最後に流れて、映画の余韻を深めゆき…。

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さてはて、画像の下の4枚は、はるかネーの妄想シーンで出てくるものですが、

剣戟アクション、ボッチャンと下女の昔の恋愛もの、シンデレラ・ストーリーや、ヴァンパイア、ホラーチックなものまで、多彩。

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でもって、クライマックスのネタ部では、

水泳スポ根ドラマ、奇跡の物語へまで、妄想の翼は広がってゆきます。

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いやはや、面白い。

真摯なラブ・ストーリーと、トンデル妄想がミキシングされた、奇作・怪作にして快作でした。

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綾瀬はるかネーさんの、ヒモノオンナを流行語にした「ホタルノヒカリ」以上に、

コメディエンヌ映画の、代表傑作になったと、確信いたします。

2016年5月28日 (土)

「団地」⇒週末日本映画劇場

1
大阪映画の、コメディ・センスを見せる快作でっせー

SF設定もある、夫婦映画のトンデル作品や~

http://www.danchi-movie.com

6月4日の土曜日から、キノフィルムズの配給によりまして、有楽町スバル座、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、TOHOシネマズなんば、ほかで全国ロードショーだす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2016「団地」製作委員会

日本の夫妻・夫婦映画とゆうのは、かなりのタイトル数がござります。

弊ブログでは、マイ・ベスト&カルトを、何度か披露しておますが、

21世紀公開分に限定して、その各スリー(各順不同)をゆうてみますと…。

●ベスト⇒①ぐるりのこと。(2007年製作)②阿弥陀堂だより(2002年)③明日の記憶(2006年)

●カルト⇒①本作②岸辺の旅(2015年)③さよなら渓谷(2014年)

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●夫妻のどちらかが病気になっている、夫妻映画パターンとゆうのは、ドラマ映えしやすいもんがあります。

定番的かもしれへんけど、それらをベストにし、

カルトは夫妻映画として、かつてなく異彩を放つ作品を、ピックアップしとります。

強姦した女と夫妻になるカルト③。死者の夫と生者の妻が、旅をするカルト②。そして、本作は…。

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20世紀作品を引用に出すと、大阪の夫婦映画「夫婦善哉」(1955年)の、コミカル・テイストを維持しつつも、

SFノリを突然のように描いてみて、死んだ我が子への夫妻の想いを、

重たくなく飄々と、描くセンスとゆうのは、かつてないものやないかなと思います。

また、夫役の岸部一徳はんは、夫妻映画にはケッコー出てはりまして、

その代表作の松坂慶子との「死の棘」(1990年)の、シリアスとは違い、本作は対極のコミカル。

ほんで、「夫婦善哉」の森繁久彌に、どこまで迫ったかは別にして、

何とも味わい深い、コメディアンぶりをば示してはります。

5
さてはて、本作は、阪本順治監督と主演女優・藤山直美はんの、

傑作「顔」(1999年)に続く、第2弾となるコラボレート作品でおます。

但し、阪神大震災が発生した時の犯罪逃亡劇で、センセーショナルな仕上げやった「顔」と比較すると、

本作はどないしても、ユルく見られがちどす。

けども、ボク的には、団地を舞台にした点において、かつて流行した、昭和映画のノリがカンジられて、

懐かしく愛おしく、鑑賞することができましたで。

4
今どきのコドモが、ガッチャマンに魅せられてるやろかとか、少しく首かしげもあったけど、

中島みゆきの「時代」を歌うとこなどは、モロ昭和どす。

そして、1960年代末の、ニュータウン・ブームから、始まった団地を、舞台背景に置いたところ。

6
是枝裕和監督の、公開中の作品「海よりもまだ深く」(弊ブログ5月20日付けで分析)も、団地を舞台にしてるけど、

本作の方が、昭和の香りがバチバチ。

団地を背景にする設定付けにも、説得力がありました。

また、夫妻が漢方薬を作るダイジェスト・シーンや、自治会選挙などにも、ほんのり昭和をカンジました。

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その一方で、SF的設定の面白さがあります。

間違った日本語遣いをする、斎藤工(明日分析の「高台家の人々」では主演)の、

謎めいた宇宙人的造形を前触れに、通天閣の上空に円盤が来襲!? 

サプライズあるラスト・シークエンスへと、つながってまいります。

ちゅうことで、コミカルとペーソスが、ほどよくブレンドされた快作です。

2016年5月27日 (金)

「エルヴィス、我が心の歌」⇒アルゼンチン映画

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エルヴィス・プレスリーなり切り型ドラマ

アンチ伝記映画の究極型を示す、コピー人間映画

http://www.pioniwa.com/elvis/

5月28日のサタデーから、パイオニア映画シネマデスクの配給によりまして、ユーロスペースやらで、全国順グリのロードショー。

本作は、2012年製作のアルゼンチン映画91分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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チョー有名人に魅せられて、そんな有名人になり切る、人間を描いた映画どす。

対象者はエルヴィス・プレスリー。

でもしか、エルヴィスとは似ても似つかぬ、メタボな太っちょ男が主人公。

けど、歌と演奏は、エルヴィス並みに上手だす。

それで、アルゼンチンでは、エルヴィスをコピる、クラブ歌手として活躍してはります。

でも、それだけでは生活できないんで、工場勤めをやってはります。

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独身やったら、好きなことやったらエエんやろけど、

残念ながら、主人公には、別居中の妻子がいとりましてな、

ヨメが事故で入院してもうたために、幼い娘はんの面倒を見ることとなり…。

つまり、エルヴィスの傀儡(かいらい)人間ドラマだけやなく、

家族ドラマ、特に、オトンと娘のキズナ・ドラマへと、発展するドラマなんでおます。

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ビリヤード指南や、ギターの弾き語りなど、主人公オトンと娘とのやり取りは、

本作のドラマツルギーの、ミソになっとります。

プレスリーの娘と同じ、リサ・マリーと名付けられてもうた、娘役マルガリータ・ロペスちゃんの、

ぶっきら棒なカワイサが、感情波の激しい子役が多い中で、異彩を放ってますで。

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モチ、オトン役ジョン・マキナニーはんも、快演技ぶりどす。

実生活でも、エルヴィスの歌を、クラブで演奏歌唱してはるそうだす。

建築家でもありまして、本作への映画出演は、おそらく趣味の延長線のものとも思われます。

けども、手抜きなし。とことんエルヴィスになり切って、最後の最後まで、演じ抜かはります。

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いわゆる、どこにでもある伝記映画とは違い、

傀儡ものなんで、真っ当なドラマやなく、変局系になってまう。

けども、映画映えしやすい、素材でもあるんだす。

しかも、主人公は、家族の問題が一段落すると、

かねてより計画していた、ディキシーランドへの、エルヴィス・ツアーに参加するんでおます。

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彼が披露するエルヴィス・ナンバーを始め、

「ゴースト ニューヨークの幻」(1990年・アメリカ)の主題歌になった「アンチェインド・メロディ」など、

ドラマの流れに合わせて、ライブ・シーンが挿入されとります。

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ただ、ラスト・シークエンスが、ボク的には、おいおい、そんな…な展開で、少しく首をひねってしもたけど、

あとでじっくり考えてみると、賛否は当然あるやろけど、

これが本作の狙いであり、テーマやったんやないやろかとも思えてきました。

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決して感動的やない。むしろ悲劇的かもしれへん。

けども、映画の結末的には、決して悪くはない。

いずれにしても、賛否両論で見たあと、みんなと論議できる作品でおましょうか。

タイトルから、個人的には、フォーク・シンガーのロードを描いた「ウディ・ガスリーわが心のふるさと」(1976年・アメリカ)を、想起したけども、

歌への想い入れ度合いは、同じやと見ました。

映画館でご確認くだされ。

2016年5月26日 (木)

「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

1
マイケル・ムーアが、世界9カ国を侵略にゆく!?

丸くなっても、突撃ドキュの在り方を堅持

http://sekai-shinryaku.jp

5月27日のフライデーから、KADOKAWAの配給によりまして、全国順次のロードショー。

本作は、2015年製作のアメリカ映画119分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2015, NORTH END PRODUCTIONS

マイケル・ムーア監督の、新作ドキュメンタリーどす。

彼が撮る社会派ドキュは、アメリカ社会の膿を、えぐり出すスタイルでおましょうか。

銃社会の問題を追及した「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年製作・カナダ映画)は、

監督の突撃的取材精神が波乱を呼ぶ、社会派ドキュ史でも画期的な1本。

アカデミー賞の、長編ドキュメンタリー賞を受賞いたしました。

3
続く「華氏911」(2004年・アメリカ)では、「9.11」テロを採り上げつつも、ブッシュ大統領政権の暗部に迫り、

複合社会派ドキュとも、呼ぶべきスゴミを示し、カンヌ国際映画祭で最高賞の、パルム・ドールをゲットしはりました。

ほんで、今のところ、ドキュ映画史上、最大のヒット作品になっとります。

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その後、アメリカの医療問題、リーマンショックなどの経済問題へと、肉迫する作品を発表。

寡作ながらも、監督の対象に対する、突撃性は健在どした。

そして、本作。

ポイントとしては、監督が9カ国を訪問し、アメリカにないものを祖国に持ち帰る(盗むとゆうか、タイトル的には、侵略することになっとります)こと。それらを描く点にあります。

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でもしか、これまでの監督の作品に比べて、攻撃的な突撃性は、ほとんどありまへん。

いや、むしろ“友好的”を、旨にしてるようなとこがあります。

要するに、各国のアメリカにないものを、探ってゆくとゆうとこに、本作のミソがあるんやけど…。

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イタリアでは、アメリカには1日もない、有給休暇の多さ。

フランスでは、10代への性教育、などと続き、意外性あるとこが、次々に披露されてまいります。

再犯率の問題を見る、ノルウェーの刑務所の実態や、

銀行破綻問題を女性たちが回復させた、アイスランドの例などは、

かなりのインパクトがありました。

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でも、社会派ドキュとは申せ、あくまで、エンタとしてのドキュを見せる姿勢は、

マイケル・ムーア、丸くなったんやないんかいな、の批判もあるかもしれへんけど、ボクは面白く見ました。

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「オズの魔法使」(1939年・アメリカ)を引用し、

8ビートのキャッチーなロックや、ミュージカルチックなシークエンスを盛り付けた、映画のシメ具合は、

さらに、エンタとしての、ドキュの在り方を示してはりました。

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最後の最後に明かされる、いわゆる本作の結論・ネタは、少々納得できへんかったけども、

そのへんも、監督の丸くなった説を、助長するんかもしれまへん。

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社会派ドキュとしての、切っ先鋭さよりも、もっと和んで見られるドキュどした。

監督の穏やかな素顔が、見られるとでも言いましょうか、

シニカルよりはユーモアチック、緊張よりは癒やし。

そんなユルユルリズムが楽しい、社会派ドキュ・エンターテイメントでおます。

2016年5月25日 (水)

「緑はよみがえる」⇒イタリアン戦争映画

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イタリアの巨匠監督エルマンノ・オルミによる戦争映画

サバイバル系の逼迫系で、魅せる傑作

http://www.moviola.jp/midori/

5月21日から、ムヴィオラの配給で、シネ・リーブル梅田やらで、6月4日から京都シネマやらで、全国順グリのロードショー。

本作は、2014年製作のイタリア映画76分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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イタリアの巨匠監督エルマンノ・オルミ監督による、初の戦争映画。

カンヌ国際映画祭の最高賞をゲットした「木靴の樹」(1978年製作・フランス映画)では、イタリアの農業ファミリーの大河ドラマ、

そして、少年映画の粋を示す大傑作だった。

オルミ監督は、芸術映画だけやなく、いろんな映画を撮ってはります。

21世紀になってから以降は、丸くなったとゆうのは、語弊はあるけども、

サッカーもの「明日へのチケット」(2006年製作・イタリア&イギリス合作)しかり、

人情もの「ポー川のひかり」(2006年・イタリア)しかり、誰にでも分かりやすい映画を作り続け、

そして、本作では、キャリア史上初となる戦争映画で、第一次世界大戦の戦争映画をば、作ってきはりました。

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戦争映画とくれば、戦闘シーン満載の、アクション・シーン連続の映画を、想起しがちどすが、

本作は、爆発シーンなんかは、それなりにあるけども、あくまで静かに展開するタイプの、戦争映画でおました。

バリバリバチバチの戦争映画こそ、戦争映画の粋と思われがちやけど、

戦争する人の心理に食い込んだ、戦闘アクトなきの戦争映画も、決して侮れまへん。

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アクションのない戦争映画と言えば、パッと思いつくとこでゆうたら、戦争から逃げる「戦場のピアニスト」(2002年・ポーランド&フランス)なんぞがありますが、

本作は、イタリアとオーストリアの戦いを見せながらも、

あくまで、待機する兵士たち、幹部陣の確執なんぞをメインにして、

次第に真綿が締められるような境界へと、進んでゆく映画でおました。

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さてはて、激しい戦闘が繰り返される映画だけが、戦争映画の粋ではありまへん。

第一次世界大戦を描いた映画としては、アカデミー賞作品賞を受賞した「西部戦線異状なし」(1930年・アメリカ)と比較しても、本作は決して遜色はありまへん。

「硫黄島からの手紙」(2008年・アメリカ)のように、脱色したような、モノクロに近いノリを維持しつつ、兵士たちの不安や心理を、描いてゆかはります。

クローズアップを駆使しての、モノローグ・シーンなどは、ドラマティックでもありました。

さらに、美しき自然風景描写の妙どす。

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薄グリーンの雪のシーン、雲ある空のシーン、夕景・朝焼けなど、風景シーンがタイトに挿入されて、

加えて、アコーディオンや、トランペットのサントラ使いなど、

映画文法に則した描き込みに、オルミ監督の、隠し味の妙があるようどした。

戦争映画に、そこはかとない哀愁を、カンジさせる傑作。

アクション戦争映画ファンにこそ、見てもらいたい1作です。

2016年5月24日 (火)

ドイツ映画「君がくれたグッドライフ」

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「海を飛ぶ夢」よりは、明るいとは思うけど…

死を見つめる、ロードムービーって、ことになるんやろか

http://goodlife-movie.com

5月21日のサタデーから、ショウゲートの配給により、全国順次のロードショー。

本作は、2014年製作のドイツ映画95分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2014 Majestic Filmproduktion GmbH / ZDF

フツーにゆうたら、サイクル・ロードムービーどす。

気のいい仲間みんなで、年に1回サイクルロードして楽しむんやけど、

今年はドイツから、イタリアやらへゆくんやなくて、ベルギーへ。

その途中で、主人公の実家に寄って、

主人公がALS(体が硬化して、身動き取れない状態となり、やがて死んでゆく病気)に、

罹っていることが、仲間みんなに分かります。

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彼がベルギーへ行くんは、ベルギーでは安楽死が認められとりまして、

ヨメやオカンと相談して、ベルギーで死のうと思わはったわけであります。

そして、みんなはそんな主人公の覚悟を知って、一緒に最後まで、ロードしようかとゆうお話でおます。

でもしか、かなりのクエスチョンと違和感が、ボクを襲いました。

安楽死したいとゆう、主人公のキモチに沿い、想い出を作ってやろうとするのは、エエんやけど、

それを本当に、積極的に貫けるのかどうかは、疑問だす。

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ロードムービーは今までに多々あれど、こおゆうのんは、あんましありまへん。

ロード中のイロイロなエピソードが、面白くなるはずが、

主人公が安楽死を望む結末が、分かった上では、興ざめにもなりかねへんし、

一つ一つのエピソードが、主人公に気を遣った話となってまい、ハラドキが半減。

しかし、それを敢えて、観客にネタバレさせた上で、どのような展開のドラマが作れるのか。

そこんとこに、果敢に挑戦したドラマにも見えました。

5
さてはて、本作で描かれる病はALSどす。

しかも、ALS絡みで安楽死を望み、死んでゆく話を衝撃的に描いた「海を飛ぶ夢」(2004年製作・スペイン&フランス合作)とゆう作品が、先行して公開され、DVD化されとります。

その作品と比べて、本作はみんなのサポートにもよる、尊厳死とゆう意味で、

かなり、みんなや主人公のキモチ的に、大きな違いが見えました。

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尊厳死は厳粛なるもの。当然です。

それをどのように描くのかは、かなり難しいとこがあるのは、否めまへん。

本作はそのへんがうまくいったとは、必ずしも言えないにしても、

主人公の死後の描写において、新たなとこを加えた点においては、

観客の賛否にゆだねるにしても、ボク的には良かったどす。

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冒頭に展開するネット・オナニーのシーンやら、

女装の仲間が、女とゆきずり的に恋に陥るとことか、話の本筋とは、かけ離れたとこがケッコーあり、

そこらは、悲劇を緩和せんがためやろけど、決して効果的に使われてはおりまへんどした。

けども、キモチは凄く、分かるようにはなっとります。

ラストで流れる、タイトでキャッチーな歌ものナンバーなども、その一環でおましょうか。

賛否両論はモチあるやろけど、最後の最後まで、良質印を狙った作品やったと思います。

ちゅうことで、劇場で体感してくだされませ。

「つむぐもの」⇒渋通日本映画の快作

1
みんな知ってるか~な、キム・コッピと石倉三郎が主演

介護士と要介護人の、言葉を超えたキズナを描く作品

http://www.tsumugumono.com

5月21日の土曜日から、マジックアワーの配給によりまして、第七藝術劇場で全国順次の上映中。以降、京都みなみ会館、神戸元町映画館やらで上映。

本作は2016年製作の、日本映画109分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2016「つむぐもの」製作委員会

みんな、知っとるか~、ナンチュー女優・男優が共演して、キズナを紡ぐ、日本映画のインディペンデント魂を見せる快作どす。

異邦人ないしはビジターが、ある国に来て、その国の人たちとの間で、キズナを深めてゆく映画とゆうのは、これまでにも多数の作品があります。

では、外国人の日本へのビジターものとなれば、どないやろか。

5
ハリウッド作品などのメジャー作品では、「ブラック・レイン」(1989年製作)、「ラスト・サムライ」(2003年)等はヒットもしましたが、

どちらも、マイケル・ダグラス、トム・クルーズのハリウッド・スターが、活躍したものでおました。

また、彼らは英語セリフで、日本語を駆使することは、ほとんどありまへんどした。

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異国の人が日本に来て、日本語を話す場合の映画は、どことなく違和感ある映画になりがちどす。

本作みたいに、女優が出る場合でも、「二十四時間の情事」(1959年・日本&フランス)や、スカーレット・ヨハンソン出演の「ロスト・イン・トランスレーション」(2003年・アメリカ)でも、日本語セリフはありまへんどした。

モチ、たどたどしい日本語は、ドラマの流れを阻害するだけでなく、見ていて興ざめにもなりかねまへん。

3
そおゆう映画は確かに、これまでにもありました。

とゆうか、むしろ逆に、流暢な日本語を、外国人役者が発する場合なんかは、もっと違和感を誘ったりしてまいます。

本作の韓国人女優キム・コッピちゃんは、その種のたどたどしい日本語を通す、従来の自然体スタイルでいってはります。

それは彼女が日本人を看護する中で、言葉の壁を超えて、ゆっくりキズナを深めてゆくドラマに、見合うような形態・演出を採ってはるんだす。

8
わざとらしく思われる方も、いるかもしれません。

でもしか、キム・コッピといえば、代表作「息もできない」(2008年・韓国)の、感情の見えないぶっきら感が、

感情を激しく出すような女優とは違って、異能ぶりを示し、

演技の上手・下手を別にして、ココロに粘り付く何かを残してくれはります。

9
片や、キム・コッピに介護される、日本人主演俳優は、初の映画主演となる石倉三郎はん。

名バイ・プレーヤーとして、テレビや映画で活躍してはるけど、そのたたずまいや、地味な演技性を崩すことなく、

要介護の病気になった和紙職人を、淡々といつものように演じてはるのが、印象的どした。

6
日本酒とマッコリを飲み合い、日本語と朝鮮語でそれぞれ話しながら、コッピちゃんと石倉はんが、通じ合うシーンこそ、本作の最初のポイントだす。

言葉やなく、ココロやとゆうのは、あたりきかもしれへんけど、

素人っぽさを意図的に、意識したような2人の演技は、ぎこちないながらも、静かな感動を伝えてまいります。

7
アイドルチックやった「明烏あけがらす」(2015年・ブログ分析済み)の、吉岡里帆の好感ある看護士役、

「ちはやふる」(2016年・ブログ分析済み)の熱血ぶりを、本作でも示す森永悠希らの、演技にも注目だす。

東尋坊なんかも出てくる、福井県ロケの情趣やら、

ラストロールで流れる、城南海(きずき・みなみ)が歌う、穏やかなフィメール・ポップス「月の砂漠」なども、癒やしをもたらしまっせ。

日本の地方ロケ映画の奥行きや、ふところの広さを示す快作でおました。

2016年5月22日 (日)

「オオカミ少女と黒王子」⇒日曜邦画劇場

1
今や旬の、コミック原作の学園ラブ・ストーリー映画

「黒崎くんの言いなりになんてならない」と相似形

http://www.ookamishojo-movie.jp

5月28日の土曜日から、ワーナー・ブラザース映画の配給によりまして、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

2
Ⓒ八田鮎子/集英社Ⓒ2016映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会

今や次々に出てくる、コミック原作の日本映画です。

そんな中で、本作のジャンル的には、学園ラブ・ストーリー。

ほんで、21世紀になって以降に、出てきたドS(イケズを、好きな相手にし続ける、主に男。ドはそれが度が過ぎていること)ものは、

まさに、コミック原作ならではのもの。

3
女の男への好きなキモチを、逆手に取って、男が女を奴隷的に、支配するなんてゆうお話は、

ボク的には最も苦手とゆうか、イヤな話です。

けども、これがマンガの世界では、ケッコーあるらしい。

4
そおゆう映画を、ボクは本作を含めて数本見ました。

男子教師と女生徒の間で、展開する「近キョリ恋愛」(2014年・弊ブログ分析済み)、

本作と同じスタイルの「黒崎くんの言いなりになんてならない」(2016年・ブログ分析済み)など。

ただ、どちらの作品も、ドSの対象者役をやったのは、小松菜奈ちゃんでした。

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本作のドS被害者役は、二階堂ふみチャンです。

アレマ・アラマッな感じでして、確かに、彼女はいじめられる・いじられる役は、ケッコーやってるけど、

本作みたいなアイドル系ノリの、学園ものとゆうのは、初めてではないかな。

9
彼女の作品はいっぱい見てきてるけど、「日々ロック」(2014年・ブログ分析済み・分析ページで、二階堂ふみチャンのマイ・ベスト&カルト・スリーを披露)では、

暴力的な性格を除き、アイドル性はそれなりにあったけど、

でもしか、本作が、おそらく初めて彼女が、アイドル演技を意識し、そいつを意識的にやってみた作品ではないかと思います。

6
これまでの二階堂ふみとは違うところが、随所に描かれているんです。

恋愛もの入りでも、「ヒミズ」(2012年・分析済み)や「御園ユニバース」(2015年・分析済み)やらのノリとは、全然違う。

モチ、演技ですが、アイドルに戻って、しおらしくなった彼女の姿が、グーンと胸を焦がす。

そんな作りになっているかと思います。

7
女の人はどう思うかは、分からないけど、ふみチャンを支配する役の山崎賢人クンは、ボク的にはムカツク主人公でした。

それは、最後にふみチャンに対して「好き」と言っても、消えなかったです。

これはボクが男だからかもしれないけど、女の人はどう思うのかな。

「黒崎くんの言いなりになんてならない」の方は、最後に女側が、爽快な一撃を食らわすけども。

8
さてはて、本作は、廣木隆一監督作品です。

1分~3分あたりの長回し撮影が、ケッコーあります。

ロングショット・シーンでは、演技する役者の顔や表情が見えない。

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一方で、ふみチャンや賢人クンの、アップやバストアップ・カットを、ロングショットと、同じ頻度で多投しています。

廣木監督の作品性は、今まで通りにあるわけであります。

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江ノ島ロケに加え、クライマックスとなる、ラスト30分の神戸ロケなんかは、本作の大きな見どころでした。

地方ロケがどうのこうのではなく、監督の作術劇は、あくまで分かりやすさを、旨にしているのがよく分かりました。

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門脇麦、菜々緒らの、助演・サポーター演技にも、注目してほしい1作です。

2016年5月20日 (金)

「海よりもまだ深く」⇒是枝裕和監督の新作

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キズナ・ヒビ入り家族映画の「東京物語」現代版かも

ムスコ阿部寛・オカン樹木希林の、妙演技ぶりにシブミあり

http://gaga.ne.jp/umiyorimo

5月21日の土曜日から、ギャガの配給により、全国ロードショー。

本作は、2016年製作の日本映画117分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro.  ギャガ

是枝裕和監督作品の新作です。

是枝監督はイロイロ撮ってはるけど、作品性・作家性の、基本ラインとしてあるのは、

日本映画に脈々とある、伝統的な家族映画やと、ボクは思います。

そして、本作は、是枝監督が「海街ダイアリー」(2015年製作・弊ブログ分析済み)と、同時期に撮っていた映画どして、

でもしか、テイストは、同じ家族映画でも違ったカンジ、でも、共に日本の家族の今を、捉えた映画として、ココロに突き刺さるもんでおました。

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監督の傑作「歩いても 歩いても」(2008年)の主演男優(阿部寛)と助演女優(樹木希林)が、

息子とオカンの役柄もおんなじに、本作で再演しはったんでおます。

時代を経た、続編的なノリもありますが、設定は違うんで、

それぞれの役柄を、2人は自由に伸び伸びと、演じてはるように見えました。

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「歩いても 歩いても」は、いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」の一節から、映画のタイトル付けをしてはったけど、本作もいっしょだす。

テレサ・テンの、1987年のカヨー曲「別れの予感」の、サビの渋い歌詞「海よりもまだ深く」でおます。

この曲は、離婚した家族3人が、台風の日に、樹木希林はんの団地の部屋に、図らずも集うことになってしもたんやけど、

そんな夜に、阿部寛と樹木の、オカンとエエ大人の息子が、しみじみと2人で話す時に、ラジオから流れてまいります。

2
エエ感じやったです。

ままならない人生、ままならない家族のキズナ。

そおゆうとこは、「歩いても 歩いても」とも通底しておました。

また、ハナレグミの、ラストで流れるフォーク・ナンバーも、余韻を深めておりましたで。

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そして、台風をポイントにした映画としては、相米慎二監督の名作学園ドラマ「台風クラブ」(1984年)やったり、

「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)などを思い出したりしました。

3
そして、本作は渋く練られたセリフによって、魅せてゆくタイプの、家族映画でもあります。

特に、樹木希林はんの、セリフが印象的。

さらに、ダメオヤジ・キャラを、特異なセンスで演じた、阿部寛の妙演技があります。

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純文学の賞を獲って、作家デビューしたけども、今はしがない興信所員になってる阿部寛。

仕事にかこつけて、脅迫まがいのことをやったり、競輪と宝クジに賭ける男でもありま。

そんなぐうたらなカンジを、絶妙に演技してはります。

白熱の演技で魅せた「エヴェレスト」(2016年・ブログ分析済み)とは、真逆の演技どして、

二律背反を見せた点において、今年の邦画男優賞は、ほぼゲットしたかも。

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阿部の姉役・小林聡美、阿部の元妻役・真木よう子なども、

ココロに残る助演シーンがあります。

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さてはて、本作は台風以外に、団地もポイントになっとります。

是枝監督が、かつて住んでいた団地にもロケし、団地生活の日本的風景を描いてはります。

9
今後公開の作品では、阪本順治監督の、そのものズバリの「団地」(6月4日公開・後日分析予定)があり、

本作と見比べてみるんも、オモロイかもしれまへん。

5
間違いなく、今年の日本映画の、ベストテン級の映画でおました。

松竹の家族映画「東京物語」(1953年)の、現代版のノリもあるけども、

でもしか、松竹系とはちょっと違う、安直にはハッピーとはならない、是枝監督的家族ドラマの、粋がある傑作です。

2016年5月19日 (木)

「ガルム・ウォーズ」⇒押井守監督の新作実写映画

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押井守監督とスタジオジブリとの、コラボレート作品

ナイスバディーなヒロインが活躍する

http://www.garmwars-movie.com

5月20日の金曜日から、東宝映像事業部の配給によりまして、全国ロードショー。

本作は、2016年製作の、日本・カナダ合作の93分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

2ⒸIG Films

敵との激しいバーサスのあとに、3人と犬1匹の、ロードムービーへと展開する作品。

ロードムービーは、映画の時代20世紀から、綿々とありますが、

そんな映画の、21世紀の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままに披露いたしますと…。

●ベスト⇒①マッド・マックス 怒りのデス・ロード(2015年製作・アメリカ映画・弊ブログ分析済み)②ノーカントリー(2007年・アメリカ)③レヴェナント(2015年・アメリカ・ブログ分析済み)

●カルト⇒①本作②ロード・オブ・ザ・リング(2001年・アメリカ)③ヴァイブレータ(2003年・日本)

3
●追逃劇としてのロードムービーが、ベスト①②となりましたが、

元々ロードムービーとゆうのは、ロードする途中でいろんなことが発生し、その面白さに酔うとゆうのが、ミソでした。

その意味では、指輪を遠いある場所へ、捨てに行くカルト②や、男と女が、当てのない旅に出るカルト③、

サバイバル系のベスト③などが、従来のスタイルを踏襲した作品だと思うし、

本作もまた、その例に漏れません。

但し、その道行には、オーソドックスなとこがありながらも、波乱万丈感は、ベスト①②ともシンクロナイズする作り。

つまり、クライマックスに、大いなる見どころとなる、とんでもないバーサス・シーンが、仕込まれているんです。

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アニメ作品を作り続けてきた押井守監督が、同じくアニメの殿堂スタジオジブリとの共同製作で、撮り上げた実写映画です。

実写となれば、絵作りだけじゃなく、演出・演技が、大きなポイントになります。

ボク的には、ナイスバディーなアクション・ヒロイン、メラニー・サンピエールのネーさんの、アクションぶりにホレました。

また、男優もケヴィン・デュランドのアニキが、女子ファンに魅せるような、イケメン・アクションぶりを披露し、

そして、「エイリアン2」(1986年・アメリカ)でブレイクした、ランス・ヘンリクセンの、渋い悪役チックな演技ぶりが、

ドラマに、大いなるアクセントを加えています。

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薄色に加え、セピア色をメイン・フィーチュアした、画像作りには、

アニメチックに見えつつも、映画の哀愁感を、そこはかとなく、増しているのではないでしょうか。

CG、VFXもバチバチだけど、でも、特撮以前の映画的感触も感じさせ、

映画のオールド・ファンには、映画的懐かしさも感じさせるのでは。

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さてはて、本作は、ボク的には「猿の惑星」(1967年・アメリカ)を、潜在意識下にある映画として見出しました。

ネタ部になるところではあるんですが、ストレートに言いますと、本作は「猿の惑星」の逆パターンです。

いや、本作がシリーズ化されるならば、また違った答えや着地が、あるのかもしれませんが、

本作を見ただけでは、そういう結論です。

でも、第2弾はほぼ間違いなく作られると思うんで、いろんなサプライズが展開することでしょう。

みなさん、これからも、注目しておいてください。

2016年5月18日 (水)

「ディストラクション・ベイビーズ」⇒バイオレンス日本映画2

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「けんかえれじい」が、とことん進化したスタイルとは?

殴り続けてボコボコにした、そのあとには?

http://www.distraction-babies.com

5月21日の土曜日から、東京テアトルの配給によりまして、テアトル新宿やらで、全国順次のロードショー。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

昨日分析の「シマウマ」のとこで、バイオレンス日本映画の、マイ・ベスト&カルトの1作で、採り上げた作品だす。

とにかく、生身の肉体だけによる、ケンカの原点により、ケンカケンカの毎日を、

送る主人公(柳楽優弥)を、ストレートに描いた映画でおます。

そんな素手で殴る蹴るが、サポーターの高校生(菅田将暉)と共にやってるうちに、暴行犯罪になってまい、

遂には、女(小松菜奈)を人質に取って、暴力ロードムービーへと、発展してゆくバイオレンス映画どす。

9
ケンカ映画なんてゆうたら、青春映画のノリでいった「けんかえれじい」(1966年製作・モノクロ)とか、

不良高校生ものでは、「岸和田少年愚連隊」(1996年)や、「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)なんぞがあるけども、

そおゆうそれなりに、戦いに理由がある、正統系の戦いとは違って、ただ殴る蹴るをやって、彼らなりに勝ち抜いてゆくとこを、

自己満足的に、見せてゆく映画とゆうのは、これまでにはあんましありまへん。

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なぜなら、その無意味な戦いそのものが、ドラマ映えしないし、ドラマティックな感動も呼ばないからやろか。

彼らを追う正義の味方側がいる映画ならば、これまでに多数あるんやけども。

また、悪者たちがロードムービーするとゆうタッチは、アメリカン・ニューシネマの「俺たちに明日はない」(1967年)などを始めとして、

傑作がイロイロあるんやけど、本作は、理由なき悪を描く点において、どこか異色の作品でおました。

6
しかも、アクション映画では、御法度とも言える、女やコドモの、定番的には弱い立場の人たちを、

殴る蹴るがあるシーンなどは、不快感を催すやもしれまへん。

それでも、柳楽と菅田のケンカ・ロードは、破滅に向かってのイメージがあり、

アメリカン・ニューシネマなロードムービー名作でも、アメリカ大陸をバイクで横断する、「イージーライダー」(1969年)なとこもなくはないで。

8
けども、自由への希求などとゆう、映画映えするとこもなく、

悪の主人公・柳楽は捕まらず、やがては…とゆうサプライズも最後にあり、

決して心地よい鑑賞後感が、あるような映画やありまへん。

けども、ボクは暴力映画の、新たな方向性や地平みたいなんを、本作にカンジました。

5
どこがどうなん? とは言えへんけども、新しく思ったんは、おそらく役者の演技に、よるとこが大きいのかも。

無表情の柳楽、表情が喜怒を中心に、ハチきれる菅田。

そして、おどおどやけど、クールなとこは自己チュウ的に貫く、小松菜奈の演技性は、

見たあと、不愉快な方向かもしれへんけど、長くココロに残るもんがありました。

4
さてはて、本作は、21世紀のトレンドの1つでもある、地方ロケ映画どして、愛媛県ロケ映画どす。

でもしか、三津ケ浜や松山市の風景が、作品性と合致しない、ミスマッチ感があります。

でも、そんなとこも、計算に入ってると思える、武骨なケンカ映画やと思います。

名作「けんかえれじい」を、進化させた快作です。

2016年5月17日 (火)

「シマウマ」⇒バイオレンス日本映画1

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復讐代行業は、メッチャエグイわ、オトロシイでー

仕置き稼業バイオレンスの、非情なカタチを示す

http://shimauma-movie.com/

5月21日の土曜日から、ファントム・フィルムの配給によりまして、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、T・ジョイ京都やらで、全国順次のロードショー。

シネ・リーブル梅田は6月から。

「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2015 東映ビデオ

「R-15」、「R-18」指定の映画とゆうのは、セックスの露出過激度合いとか、

バイオレンスの残虐度合いの、エグサによって決まります。

ほんでもって、本作は、セックス・シーンよりも、バイオレンス・シーンのエグサが、R指定になってしもた映画でおます。

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さて、ここで、日本のバイオレント映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)なんぞを、披露いたしますと…。

●ベスト⇒①仁義なき戦いシリーズ(1973年~1974年製作・全5作・第1弾は弊ブログ分析済み)②十三人の刺客(2010年・ブログ分析済み)③バトル・ロワイアル(2000年)

●カルト⇒①本作②徳川いれずみ師 責め地獄(1969年)③青春の殺人者(1976年)③ディストラクション・ベイビーズ(2016年・次回分析)

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●深作欣二監督ベスト①③や、三池崇史監督ベスト②など、

バイオレンス映画的に、なるほどと、うなずける監督の作品をベストにしてもうたけど、

カルトは、かなり特異なカンジのバイオレンスを、掘り返してみました。

最初から最後までバイオレンスやなく、ワン・シーンの父親殺しの、インパクトが凄かったカルト③「青春の殺人者」とか、

拷問のスゴサを、追究したカルト②とか。

理由なきケンカを描く、もう一つのカルト③「ディストラクション・ベイビーズ」は、本作に続いて分析いたします。

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そして本作は、誰かに復讐をしたいとゆう、クライアントの依頼を受けて、

代わりに仕返し的復讐を、やってやるとゆう特異な「回収業」を、エグイ度濃厚に描いた映画でおます。

目をそむけたくなるような、シーンが頻出しよります。

ストレートなバイオレンス映画とは違って、やはり異常性的バイオレンスな世界が、全編に漂っておます。

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須賀健太てゆうたら、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)の子役のイメージが、ボク的には、未だに抜けてへんのやけど、

今作の健太クンは、180度の豹変ガラリ演技どす。ビックラこきました。

彼の冷酷非情な演技こそが、本作のキモとゆうか、象徴ともなるとこでおます。

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須賀健太スガケンの演技は、「回収業」をやらされる羽目になる主人公役・竜星涼や、

主人公とのいびつな対決が、見どころになる福士誠治やらの、

メッチャなハチキレ度を、超えた演技どすやろか。

チョットしか出てへんけど、親分役の加藤雅也さえも超えとるやろか。

つまりは、最初から最後まで、大いに狂っておるんでおます。

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さらに、女優陣では、体を燃やされたり、包帯巻きのボロボロにされる、高橋メアリージュンの、被害者役演技の衝撃に加え、

スタンガンを手に、クールに暴行をする日南響子、

マリファナ吸ってエエ気分で犯される、天乃舞衣子の狂的演技など、

R指定バリバリなとこが、連続してまいります。

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「探偵はBARにいる」(2011年・ブログ分析済み)の、橋本一の監督作品だす。

かの作品で示した、アクション・バイオレンス・シーンが、より近接撮影の鋭角で展開しよります。

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温かいはずのセピア・シーンや、過激度を緩和するスロー・モーションも、ほとんど役だっとりまへん。

橋本一キャリア最大の、過激度合い映画やと、ゆうてもエエでおましょう。

ちゅうことで、ココロして、見に行ってくだされませ。

2016年5月13日 (金)

「殿、利息でござる!」⇒金曜日本映画劇場

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人情・キズナものに特化した、剣戟・殺陣のない時代劇映画

阿部サダヲと瑛太らが、大活躍するで~

http://www.tono-gozaru.jp

5月14日の土曜日から、松竹の配給によりまして、全国ロードショー。

本作は2016年製作の2時間9分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2016「殿、利息でござる!」製作委員会

チャンバラがない、日本の時代劇映画。

時代劇の醍醐味は、剣戟アクションであり、乗馬アクション、2派や1対1対決の、必死のパッチやら、真剣勝負にあると、ボクは思うけども、

長屋や股旅ものやらの人情時代劇、室内劇なんぞも、オモロイもんがござります。

かつても披露しましたが、そんな作品の、マイ・ベスト&カルト・スリー(順不同・監督を付記)を、

本作を入れた上で、改めて披露いたしますと…。

3
●ベスト⇒①幕末太陽傳(1957年製作・川島雄三・弊ブログ分析済み)②股旅(1973年・市川崑)③清須会議(2013年・三谷幸喜・ブログ分析済み)

●カルト⇒①本作②武士の家計簿(2012年・森田芳光・ブログ分析済み)③かあちゃん(2001年・市川崑)

●チャンバラなき時代劇てゆうたら、長屋のカルト③とか、股旅ロードムービーなベスト②を、まず想起してまうけど、

ちなみに、共に市川崑作品やけど、監督はチャンバラ時代劇の傑作も、撮ってはります。

幕末やけどベスト①は、この種の時代劇の名作・雛形どすが、

信長・秀吉の時代(戦乱アクション作品が多い)に、室内劇をやったベスト③には、ボクはビックラこきました。

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そして、21世紀になって、出てきたんが、チャンバラなき時代劇を、いろんなユニークな視点で捉えた、本作のような松竹系の作品でおます。

財政係とその一族に、焦点を当てたカルト②を始め、

武士の料理係夫婦の話、女たちを大名ダンナから別れさせる話とか、ホンマ、イロイロあるんやけど、

でもって、本作もまた、コミカルで人情タッチでありつつも、

実話をベースに、庶民的な経済時代劇と、言えるような快作となりました。

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幕府から村に課される、毎年のいろんな難題に対し、資金繰りに悩む村人たちの1人、瑛太が、阿部サダヲと共に、

千両(約3億円)を、藩から調達するちゅう、トリッキーな方法を発見しはります。

その内容は、下の写真の、竹内結子がお上の、居酒屋での、酒の上での話で、出てきよったんでおます。

その中味・企みの詳細につきましては、実際に映画を見て、ウーンと唸ってくだされ。

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宮城県ロケによる、時代劇にして群像劇。

瑛太の冷静なフツー感と、アベサダのおどおどの、伏し目感やらのコンビネーション。

竹内結子ネーさんの、ユルユルとワメキの二律背反、

ユルリ感を通した、妻夫木聡や松田龍平、

そして、山崎努や草笛光子のシブミ。

各役者陣の演技と絡み具合こそが、映画をドラマティックに推進してゆく原動力になっとります。

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但し、世界ナンバーワンのフィギュア・スケーター、羽生ユズ君のチョイ出演には、おいおい、そんな…がありましたやろか。

でもしか、それもご愛嬌やもしれまへんな。

ミステリー映画をヒットさせ続けた、中村義洋監督の、初の時代劇。

フツーの時代劇にしないところに加え、資金集めにサスペンスあふれる作りを施し、

ハラドキで見られる娯楽作に、仕立て上げてはりますで~。

2016年5月12日 (木)

「ひそひそ星」⇒園子温監督の最新作

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園子温監督のモノクロによる、初の宇宙SF映画や

ロボット役主演の神楽坂恵の、なりきり演技が好感を呼ぶ

http://hisohisoboshi.jp

5月14日の土曜日から、日活の配給によりまして、新宿シネマカリテ、横浜ジャック&ベティ、テアトル梅田、名古屋シネマテーク、KBCシネマやらで、本作の園子温監督を描くドキュメンタリー「園子温という生きもの」と、同時期の全国順次のロードショー。

 本作は2016年製作の、モノクロ(パートカラー)100分。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⒸSION PRODUCTION

園子温監督が、構想25年を経て、撮り上げたSF映画の傑作。

いやはや、これが低予算ながらも、監督の映画作家性を、メッチャ主張したうえに、

ゴリゴリの映画ファンも、納得させるだけやなく、大衆的にも分かりやすくて、ノレル映画になっとります。

2_2
監督のヨメはん・神楽坂恵(かぐらざか・めぐみ)のネーさんが、

ロボット役ヒロインになり、地球だけやなく、いろんな星にいとる人間の荷物を、手元に届けるとゆう、

まあ、それだけの話なんやけど、

これが細部のいろんなとこで、映画的にも、ドラマのツボ的にも、グッとくるとこがありまんねん。

4_2
「2001年宇宙の旅」(1968年製作・アメリカ映画)のコンピHALを意識した、

コドモ声にはなっとるけど、宇宙船内のヒロインを、サポートする、コンピの存在が、まず、1つのドラマ・ポイントになります。

ほんで、ヒロインは、いろんな惑星に降り立ち、荷物を人の元へ届けはります。

ある時は、自転車に乗って、ある時は潰された空き缶を、靴にはさんだまま、歩いていかはりまんねん。

8
エンケンゆうても、俳優やなくミュージシャンの、遠藤憲司がちょっと出てはるんやけど、

その缶付き靴の、そのまま歩きを自らやって、ヒロインに刷り込まはりますねん。

そんな刷り込みを始め、ロボットと人間の違いもまた、神楽坂ネーさんは、絶妙に演じてはります。

7
日本映画の1950年~1960年代にあった、モノクロ・ヒロイン映画のテイストが、本作にはそこはかとなくありました。

それはモノクロやからやなく、ロボット的従順さ・慎ましさなどが、

その種のヒロイン映画と、ボク的には、かぶってきよったんでおます。

5_2
土曜から始まる1週間の物語とゆう構成も、

タイムリミット系の映画やないけども、妙に胸がワクワクしよりました。

さらに、「希望の国」(2012年)に続き、大震災後の福島ロケも敢行して、ある種の世紀末観も出し、

加えて、向こうからヒロインが歩いてくる、遠近感あるロング・ショットの多投が、映画性を増してゆきます。

6_2
神楽坂ネーさんの、1人芝居的なタッチやけど、床そうじやらをする、日常の描写もあり、

また、単に人に荷物を届けるだけやなく、無表情ながらも、その時々の人間との交流部に、胸にクルとこがありまんねん。

3_2
ダンナ監督・ヨメ主演による日本映画(新藤兼人&音羽信子は違うけど)は、これまでに多数出てきとりますが、

でもしか、ボクは久々に見た、そういうタイプの快作やったです。

マイ年間ベストテン候補にもなる傑作。

「園子温という生きもの」

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園子温の企みに迫る、映画監督ドキュメンタリー

監督のマイ・ベスト&カルト・スリーも紹介

http://sonosion-ikimono.jp

5月14日の土曜日から、日活の配給によりまして、新宿シネマカリテ、横浜ジャック&ベティ、テアトル梅田、名古屋シネマテーク、KBCシネマやらで、園子温監督作品「ひそひそ星」と、同時期の全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の97分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2016「園子温という生きもの」製作委員会

映画監督のドキュメンタリーって、みなはん、見はったことはありますやろか。

監督なんかどうでもエエ、肝心なんは作品や!ちゅう人が、確かに大がいやろけど、

でもしか、作品を好きになった上での、その監督の創作の秘密やらは、ヤッパ、メッチャココロをそそります。

さらに、監督の素顔も見えて、ケッコー親近感を覚えて、

ほな、監督作品をチョイ追いかけてみよか、なんてなるんでおますよ。

6
さて、今まで、このブログで紹介したのでは、ウディ・アレン、ロバート・アルトマンなんぞがありますが、日本映画監督では初めてどす。

でもしか、ヤッパ、本作を見る前には、園監督の作品を見た上で、監督の裏事情やメイキングぶりを知りたいわ~となるべきなんで、

ちゅうことで、ボクは園監督の全作は見てへんねんけど、監督作品のマイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、披露いたします。

但し、チラシの一番上に書かれとる、3作の傑作は外します。

3
●ベスト⇒①ひそひそ星(このあと本日分析)②恋の罪(2011年製作)③希望の国(2012年)

●カルト⇒①地獄でなぜ悪い(2013年・弊ブログ分析済み)②ラブ&ピース(2015年・ブログ分析済み)③映画 みんな!エスパーだよ!(2015年・分析済み)

2
●確かに、本作は監督の最新作ベスト①の、宣伝を兼ねたもんかもしれまへんが、

その最新作は、福島ロケのベスト③、ヨメはん神楽坂恵ネーさんの、エロイ度が凄かったベスト②、カルト②③のSFモードを、入れ込んだ、

ある意味で、監督が撮りたかった、素材なんやないやろか。

そして、ベスト①は、ヤクザ映画と八ミリ青春映画を、合体させはったカルト①と共に、

監督が最も、撮りたかったもんやなかったやろかと、ボクは分析いたします。

4
一方で、「ヒミズ」(2012年・分析済み)で共演した、染谷将太と二階堂ふみ、

ヨメはん神楽坂恵、監督の妹はんやらへのインタビューで、

公私にわたって、監督の人間性を、浮き彫りにしていくとこも展開して、興味をそそられました。

5
モチ、監督へのインタビューや話がメインどす。

監督は絵画・イラストやら、ロックにもアプローチしてはって、そんな様子も描かれとります。

また、リスペクトする映画監督にも言及されて、彼の作品性のベースが、見えたりもしてきよります。

「ひそひそ星」を見る前に見ても、見たあとに見ても、

監督の映画への心意気が、メッチャ分かるドキュメンタリーどす。

2016年5月11日 (水)

イギリス映画「マクベス」

1

シェークスピアのクラシック作品に、イギリス映画界が挑んだ

マイケル・ファスベンダーと、マリオン・コティヤールの演技派が共演

http://www.macbeth-movie.jp

5月13日のフライデーから、吉本興業はんの配給によりまして、全国ロードショー。

本作は、2015年製作のイギリス映画113分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸSTUDIOCANAL S.A./CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2015

シェークスピア(今年で没後400年・本作のチラシではシェイクスピアと表記)と言えば、

演劇の発祥国イギリスの、歴史に残る偉大な巨星。

そんなイギリスから、シェークスピア4大悲劇(本作以外は「ハムレット」「リア王」「オセロ」)の1作が、

没後400年に合わせて久々に、シェークの原作映画が作られてまいりました。

さてはて、「マクベス」原作映画の、マイ・ベスト・フォー(順位通り)を記しますと…。

①蜘蛛巣城(くものすじょう・1957年製作・日本作品・黒澤明監督)

②マクベス(1971年・アメリカ:ロマン・ポランスキー監督)

③本作④マクベス(1948年・アメリカ:オーソン・ウェルズ監督)

6
●世界のクロサワの①は、原作通りではあるんやけど、

その日本の時代劇的変換ぶりに加え、役者陣への鬼気迫る演出ぶりに、背筋が凍りついた作品どした。

②はポランスキー監督が、女優の妻が惨殺された直後に、撮り上げた1作で、

自らの混乱極まる心理を表すかのように、狂気に満ちたマクベス像を作り上げて、ディープ・インパクトどした。

上位2作に対し、本作と④は、原作に忠実に作り込まれた作品どす。

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この2作を比べてみると、④が演劇的を反映し、セット撮影がメインやったのに対し、

本作は現代的なCG・VFXを駆使しつつ、室内劇だけやなく、野外ロケ、さらにアクション・シーンもかなりと充実の、1作になっとります。

原作に忠実と申しましたが、オリジナル戯曲の、分かりにくい文学的セリフまで、忠実にやってみはったんどす。

古典劇的英語セリフの違和感は、確かにあるけども、

でもしか、それに合わせて、演技陣も、決して大仰やなく、自然体・クール・落ち着きをば、旨にしてはるように見えました。

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アカデミー賞の演技部門で受賞、ノミネートされてはる2人。

共に演技派の、マイケル・ファスベンダーと、マリオン・コティヤールが、夫婦役、王と王妃役で、共演してはるだけに、

凄まじい狂気の演技を、期待してたんやけど、これが少しく違っとりました。

たぶん、こおゆうハメを外さない演技こそ、シェークスピアが意図してた演技・演出なんやないやろか。

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マクベスの未来を予言する、魔女たちのシーンなどで、表わされるセピア・トーン、

スローを取り込んだ、ダーク・ブルー・トーンの対決シーン、

城が燃える赤色トーンなど、色使いの、シーンに合わせた描き分けにも、注目したい作品どした。

さてはて、最後に、シェークスピア悲劇原作映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を披露しますと…。

●ベスト⇒①ハムレット(1948年・イギリス:ローレンス・オリヴィエ監督・主演)②蜘蛛巣城③ロミオとジュリエット(1968年・イギリス&イタリア:フランコ・ゼフィレッリ)

●カルト⇒①本作②リア王(1971年・ソ連)③ロミオ&ジュリエット(1996年・アメリカ:バズ・ラーマン監督)

5
●4大悲劇やない作品の、ベスト③カルト③は、ラブ・ストーリーなだけに、映画的には大人気やけど、

シェークの悲劇は、やはり王や王族の男の、悲劇がポイント。

シェークの祖国のイギリス作品を、イギリス映画の威厳を示してもらえるように、ベスト①にしましたけども、

カルトながらも本作も、イギリス作品として、シェークの創作時の、原点に立ち返った逸品どした。

まずは、映画館へ、足をお運びくだされ。

2016年5月10日 (火)

「ヘイル,シーザー!」⇒コーエン兄弟監督の新作

1
1950年代ハリウッド映画界を、背景にしたミステリー映画

映画業界映画として、ブラック・ユーモアなテイストだ

http://HailCaesar.jp

5月13日のフライデーから、東宝東和の配給により、全国ロードショー。

本作は2016年製作の、アメリカ・イギリス合作106分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2016 Universal Pictures

映画業界を描いた映画、あるいは、映画メイキング映画。

みなはんも、イロイロ見はったことがあるかと思いますが、

ここで、その種の映画の、マイ・ベスト&カルト・スリー(各順不同)を、思いつくままの気ままに言いますと…。

●ベスト⇒①グッドモーニング・バビロン!(1987年製作・イタリア&フランス&アメリカ合作)②映画に愛をこめて アメリカの夜(1973年・フランス&イタリア)③蒲田行進曲(1982年・日本)

●カルト⇒①本作②ザ・プレイヤー(1992年・アメリカ)③雨に唄えば(1952年・アメリカ)

2
●ハリウッド創生期の大作「イントレランス」(1916年・アメリカ)の、巨大セット建築に参加した、イタリアの兄弟建築技師を描いたベスト①。

1920年代後半の、サイレントからトーキーへと変わる時代を、ミュージカルで捉えたカルト③。

時代順に、ハリウッド映画業界映画をたどって見るならば、次は、1950年代のハリウッド黄金期を、捉えた本作カルト①。

そして、発表年のハリウッド事情を、シニカルなミステリー・タッチで描いたカルト②

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あとの2本は、映画メイキング映画の最高傑作ベスト②。

日本はどうかっちゅうことで、日本の松竹蒲田撮影所を、バックにしたベスト③に加え、

その戦前編を描いた「キネマの天地」(1986年・日本)も、業界の実態を、ドラマティックに描いてはりました。

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さてはて、本作どすが、本作を除く上記5作品の要素が、ある意味過不足なく描かれとりまして、

さらに、社会的時代性も取り込んだ、快作になっとります。

解説いたしますと、まずは、ミステリー性。

史劇大作でジュリアス・シーザー役を、やってはるジョージ・クルーニーはんが、

撮影中に睡眠薬を飲まされてしもて、何者かに誘拐されてしもた。

その行方を探って、業界のトラブルを丸く収める男(ジョシュ・ブローリン)が、調査に乗り出しまんねん。

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次に、多彩な映画のメイキング・シーン、シークエンスどす。

先の史劇を始め、スカーレット・ヨハンソンのネーさんが、プールで大胆に披露する、アクロバティック映画やったり、

チャニング・テイタムのアニキらが披露する、タップ・ステップ満載の、水兵ミュージカルやったり…。

さらに、西部劇アクション・スター(アルデン・エーレンライク)が、セリフ回しが重要な恋愛映画に出て、監督(レイフ・ファインズ)からしごかれたり…。

6
さてはて、クルーニーの誘拐・拉致の背景には、

当時「赤狩り」(共産党員もしくは共産党支援者を、ハリウッドから追放する施作)で、問題視されていた共産党が関わっておます。

共産党員俳優・監督・スタッフは、アメリカの敵国、共産党のソ連のスパイやと、当時思われとったんでおます。

さらに、上記に記したスターたちの誰かが、この事件に大きく関わっとったとゆう流れだす。

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本作は、シリアスとシニカルを描き分ける、コーエン兄弟監督の新作どすが、

おそらく本作は、シニカルの方に入れられるでおましょう。

ブラック・ユーモアも、そこかしこにあるけども、でも、当時のハリウッド業界を、ほぼ正確に描いてはるんやないやろか。

フィクション的なシニカルな中に、突き刺すようなシリアスがあるんで、要注意!

お遊び感覚の映画やと見ていったら、いつの間にかアレアレ!! となる、作品やと思います。

「わたしの自由について~SEALDs 2015~」⇒学生運動ドキュメンタリー

1
社会運動ドキュメンタリーの最新作や

学生運動が、2015年に復活したで~!

http://www.about-my-liberty.com

5月14日の土曜日から、東京・渋谷アップリンク、大阪・第七藝術劇場、京都立誠シネマ、神戸アートビレッジセンターやらで、全国順次のロードショー。

本作は、2016年製作の、日本映画165分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2016 sky-key factory, Takashi NISHIHARA

社会問題ドキュは、映画ドキュメンタリーの中で、一番多いジャンルどすが、

意外と社会運動ドキュは、少ないようなカンジ。

農民だけでなく、学生まで巻き込んだ、成田空港建設反対運動「三里塚」シリーズ(1968年~1977年製作・全7作)が、邦画ドキュの嚆矢やと思うけど、

無論、「三里塚」の前には、1960年代の、学生が中心となった、安保闘争がありました。

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「全共闘世代」を生んだこの闘争は、ドキュメンタリーよりもドラマ映画で、モノゴッツー描かれてきておます。

1970年代前半くらいに、この闘争は下火となり、それ以来、

学生運動には時代を揺るがすような、目立ったものはなく、20世紀を超え、21世紀現在に到っておました。

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でもしか、日本に限っても、社会問題はあとを断たないもんどすから、

社会運動もの・抵抗運動ものもまた、綿々と作られ続けております。

最近なら、沖縄米軍基地問題や、本作でも描かれた、安保法案やらがあります。

しかも、学生たちも抵抗・抗議運動に立ち上がり、その様子がビビッドに、捉えられたんが本作でおます。

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まさに、全共闘世代の安保闘争以来とも、言ってもエエくらい、学生たちが平和への希求を願って、立ち上がったんでおます。

ほんで、その抗議運動ぶりは、徐々に波紋を呼んでいきます。

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主に3人のメンバーによる「SEALDs」(シールズ)どして、

彼らに同調した大学生たちが、週1回の街頭抗議集会に参加し、女子大生も含めて、アジテート(演説)しはります。

本作は、その抗議の模様を中心に、学生たちのパワーを捉えんと、

実話ベースの抵抗映画「アルジェの戦い」(1966年・イタリア&アルジェリア)的な、熱気さえカンジ取れる仕上がりになっとります。

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「子供を守れ」「戦争反対」「安倍(首相)は辞めろ」とゆう、

シンプルな抗議のリフレインが、耳にこびり付いてまいります。

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その抗議集会には、民主党の管直人や共産党の志知委員長、ミュージシャン坂本龍一らが参加し、支援演説をしはりますし、

また、村上春樹と同世代の作家・高橋源一郎が、彼らの会議に参加し、作戦を練るシークエンスもあります。

また、彼らは靖国神社へも行き、靖国問題も考えはります。

チーム・リーダーは、国会の公聴会にまで呼ばれて、意見を言わはります。

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エレキギターとドラムの、シンプルなストレート・サントラに乗って、

彼らの行動ぶりが、タイトにリズミックに描かれてゆきましてな、ボクたちの胸を打ちまっせー。

安保法案反対闘争・抗議運動な話なんやけど、

でも、ボクは彼らの生き生きした青春群像を、捉えた映画として見ました。

スポーツだけやない。熱血の青春は、ココにもあるで。

そんな熱くなれる映画です。

2016年5月 8日 (日)

「世界から猫が消えたなら」⇒日曜邦画劇場

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猫の前には、世界から電話と映画が消えてしまうで~

SF設定も、旬のタイムスリップ系やなく、ドッペルゲンガーでいった快作

http://www.sekaneko.com

5月14日の土曜日から、東宝の配給で全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2016映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会

過去には、「時をかける少女」(1983年製作)なんかがあったけど、

タイムスリップ系SFで、過去や未来を変え、現在の運命も変える映画とゆうのは、実は21世紀になってから、本格的に出てきたもんでおます。

最近の邦画なら、「orange-オレンジ-」(2015年製作・弊ブログ分析済み)やら

「僕だけがいない街」(2016年・ブログ分析済み)やらが、その種の作品に該当するやろか。

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でもしか、本作は主人公(佐藤健)が、自らの死の運命を変えるのに、

自分の好きなものを、この世から消えさせなければならないなんてゆう設定で、お話が展開する、トンデモないもんでおます。

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しかも、自らのドッペルゲンガーが、悪魔と称して主人公の前に現れて、

おまえは明日死ぬけど、1日生き延びたかったら、おまえの好きな何かを、この世から全部消さんといかんねん、なんてゆうんでおます。

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このトンデモ設定やけど、1日1つ消すんやったら、1年365日生きたかったら、365の好きなものを、この世から消すちゅうことやろかと思とったら、

よく見てみたら、どうやら1日だけ消えてるみたいやんか。まず、電話を消すんやけど、でも、後日電話は復活しとるから、

消すものをリフレインできる(この規定は悪魔から言われてない)んやったら、永遠に生きられることを意味しませんか?

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電話の次は、映画を消すんやけど、その時には、主人公の元カノ(宮崎あおい)は、映画館のもぎりではなくなり、

レンタルビデオ屋の店長で大学時代の友人(濱田岳)は、本屋をやってはることに。

ほんでもって、その翌日には元通りに戻るってことやろか。

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意外性ある設定だけに、入りは少し戸惑いがあるかもしれへんけど、

なくなったあとの世界、なくなる前、そして、主人公の過去が、カットバック的にモザイク状に描かれて、

単純そうに見えた話が、タイムスリップ系の物語かと見まがうほど、時空間を超えて、広がりを見せてゆきます。

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その意味でも、本作は、多彩な映画性を持っておます。

間違い電話と、SF映画の嚆矢とも言うべき映画「メトロポリス」(1926年・サイレント・ドイツ映画:DVD化されてる修復版は1984年・アメリカ)が、

交際を始めるきっかけとなった、宮崎あおいとの思い出を、佐藤健は辿るんやけど、

不治の病系ラブ・ストーリーとして、「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)を、想起させるシーンがあったりして、泣かせますで。

また、イグアスの滝など、アルゼンチン・ロケ・シーンもあり、ゲイの愛を描いた「ブエノスアイレス」(1997年・香港&日本)とは違って、日本的情趣な撮り方をしてはりました。

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また、佐藤健のダイスキな猫を、消すか消すまいかのとこらでは、愛しの猫映画のタッチから、

やがては家族(既に死んだオカン役・原田美枝子、オトン役・奥田瑛二)のドラマへと、

スライドしていくあたりの展開も、ドラマティックやったです。

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さてはて、ボクが本作を最も気に入ったところは、ベタな描き方なところもあるけども、

映画愛映画でもあった点だす。

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濱田岳が佐藤健に1日1本名作を貸すんやけど、その選択は名作は名作でも多彩。

チャップリンのマイ最高傑作「ライムライト」(1952年・アメリカ)から、

菅原文太が刑事役やった、カルトな「太陽を盗んだ男」(1979年)まで。

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戦中・戦後ずーっと地下室に、みんなで隠れていた「アンダーグラウンド」(1995年・フランス&ドイツ&ハンガリー)についての、

佐藤健と濱田岳の、会話のやり取りなどは、

映画プロデューサーにして、本作の同名原作小説(小学館文庫)を書いた川村元気氏の、含蓄と趣味をカンジて、思わず唸ってしまいましたがな。

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ちゅうことで、「セカチュウ」に勝るとも劣らない、感動があるハズだす。

2016年5月 6日 (金)

パレスチナ映画「オマールの壁」

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ハリウッド映画方程式を感じる、中東の作品やで~

国家秘密警察バーサス若者抵抗組織な、サスペンス性もあり

http://www.uplink.co.jp/omar/

5月7日のサタデーから、アップリンクの配給により、大阪・テアトル梅田やらで、全国順次のロードショー。

東京・角川シネマ新宿、渋谷アップリンクでは上映中。

本作は、第66回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で、審査員賞をゲットした、2013年製作のパレスチナ映画97分だす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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パレスチナ映画やなんて、本作の監督ハニ・アブ・アサド監督作品を、ボクは少し見た程度どして、ほとんど見てまへん。

ただ、みなさんにとっても、邦画・洋画の全国公開作品などと、見比べてみられますと、

ドラマ方程式や流れなどが、少しく違うかと、意表を衝かれるかもしれまへん。

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逃亡のアクション・シーンもあるし、拷問シーンはかなりエグイけど、バイオレンス・シーンもある。

さらに、サスペンス部、ラブ・ストーリー部もある。

全世界的に公開される、ハリウッド大作と比べても、製作費がドドーンと違うだけで、ストーリー的なとこにおいては、決して遜色はありまへん。

主人公が試練に遭うタイプの、作品でもあるんやけど、それもまた、ハリウッド的ヒーロー映画映えするもんだす。

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国家状況のいびつさの中で、国家や支配者たちに対し、若者たちの抵抗運動も、あるとゆうタイプの映画としては、

ポーランドの、アンジェイ・ワイダ監督作品などを、思い出すけど、

本作には、ワイダ監督の名作「地下水道」(1957年製作・ポーランド映画)、「灰とダイヤモンド」(1958年・ポーランド)などのテイストが、仕込まれておます。

3
イスラエルに支配されたパレスチナ人たちは、ベルリンの壁ならぬ分離壁で、自由を強制的に規制されとりまして、

主人公オマールは、幼なじみの2人(タレクとアムジャド)と、恋するタレクの妹ナディアと会うために、壁を乗り越えて、しょっちゅう壁の向こう側へ行ってはります。

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でもしか、イスラエル軍に見つかると、痛い目に遭います。

また、オマールは、タレクがリーダーの、抵抗組織にも入ってはりまして、ある夜、イスラエル軍を襲撃しはりまんねん。

そして、後日、イスラエルの秘密警察に拘束され、拷問され、誰がやったのかを、白状させられるんやけど、

オマールは一切口を閉ざさはりまして、拘置所に入れられます。

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捜査官はオマールに、期限付きで出所して、タレクの逮捕に協力するなら、釈放するやなんて持ちかけましてな、

ほんでオマールは、仲間を裏切る気もないのに、これに応じまして、

出所するや、恋人ナディアのとこへ会いに行き、タレクにもイスラエル側を逆にハメル、待ち伏せ作戦を持ちかけて…。

5
イスラエル・パレスチナの事情を知らずとも、2派に分かれた構図とその争い、

さらに、意外性あるラブ・ストーリー部など、分かりやすく展開してまいります。

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また、本作は、低予算やからやないけども、

ボクの好きな、アメリカン・ニューシネマなテイストも、そこはかとなくあったように思います。

4
登場人物のセリフで、ハリウッドの名作「ゴッド・ファーザー」(1972年・アメリカ)や、ハリウッド・スター、ブラッド・ピットの名前などが出ますが、

本作のハニ・アブ・アサド監督的には、モチ祖国の現状を描くことは、大事やろけど、

それ以上に、ハリウッド的エンタを、いかに低予算で表現できるかを、意識してはるようにも思いました。

ハリウッド映画では味わえない、中東のハリウッド的を、お楽しみくだされ。

2016年5月 3日 (火)

「64 ロクヨン 前編」

Photo
初めて映画で描かれた、警察署広報部と記者クラブ

迷宮入り誘拐事件捜査を、骨太のノリで展開

http://www.64-movie.jp

5月7日の土曜日から、東宝の配給で、「前編」が全国ロードショー。「後編」は6月11日に公開。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2016映画「64」製作委員会

近年稀に見る、骨太の日本映画になった。

警察映画と誘拐映画が、見事にミキシングされ、

しかも警察映画としては、捜査本部が、古今東西従来より描かれてるけど、

警察広報部をメインにしたのは、映画史上初。

加えて、広報部と記者クラブとの関わりも打ち出した、かつてない画期的な作品だ。

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さて、かつてもやったけど、日本映画の誘拐映画の、マイ・ベスト・ファイブ(順不同・本作以外DVD化されています)を書くと…。

①本作②天国と地獄(1963年製作)③大誘拐(1991年)④誘拐報道(1982年)⑤誘拐(1997年)

●本作以外は、現在進行形の誘拐事件を、ビビッドに描いているが、

本作はあくまで迷宮入りになった誘拐事件を、再捜査していくというスタイル。

しかも、前述した広報部から、ゆっくり事件が掘り返されていくのだ。

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原作は横山秀夫。

地方の新聞社で、長年社会部で活躍した彼の作品は、警察、新聞社をメイン舞台にした傑作揃いだ。

警察の「半落ち」(2003年)しかり、新聞社の「クライマーズ・ハイ」(2008年)しかり。

そして、本作。

但し、原作を読んだ人には、分かるかとは思うけど、

本作は、原作で曖昧になっていた2ポイントを、キチンと描いた上で、後編で描かれる結末を、変えた作品になっている。

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さて、その2ポイントとは、作品のネタバレにはならないと思うので言うと、

まずは、佐藤浩市の家出した娘(芳根京子)の行方。

二つ目は、永瀬正敏の娘を誘拐した犯人は、まんまと身代金を得たのに、なぜ娘を返さずに殺したのか。

二つ目は、本作・前編の冒頭部で、その事実がダイジェスト的に描かれている。

極悪非道とも取れる犯人の心情は、後編の最後の方で披露される。

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さてはて、ストーリー的なイントロを言うと…。

その地方で1989年・昭和64年に発生した誘拐事件(64年発生なのでロクヨン)が、迷宮入りになったことで、佐藤浩市は捜査一課から、広報部へ左遷された。

2002年。その事件が時効を迎える直前、東京の警察庁から長官が、誘拐被害者(永瀬正敏)のとこへ来ることになり、

佐藤ら広報部が、そのお膳立てをするということになったけど、

取材に関し、警察と記者クラブとの、スッタモンダなやり取りがあって…。

9
そのスッタモンダは、誘拐事件とは、何の関係もない事件のことだった。

前編では、この事件の警察と記者クラブとの悶着を、佐藤浩市の絶妙な、記者たちへの説明で、収束されることとなる。

原作でも、読みどころになっていたところが、前編のクライマックスになっている。

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広報官・佐藤浩市のヒロイズムが、遺憾なく発揮された作品になった。

ヨメ(夏川結衣)、娘との家庭での関わり、広報室職場での部下たち(綾野剛・榮倉奈々ら)や、

記者クラブの連中(瑛太・坂口健太郎ら)、警察署内の人間(椎名桔平・奥田瑛二・仲村トオルら)とのイロイロが、バランスよく捉えられていると思う。

8
何はともあれ、佐藤浩市を主人公に、多様に描かれる群像劇のタッチが、骨太のノリで展開していく。

6
その骨太感は、揺るぎのないものだった。

ホントは前編・後編いっぺんに見たいところだが、

前後編のそれぞれで、ヒューマニズムあるシークエンスを、クライマックスに持ってきて、感動のキモの見せどころも、心得た作品だ。

ということで、往年の邦画大作の雰囲気がメッチャあり、大ヒットは間違いないだろう。

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