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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2012年8月の記事

2012年8月31日 (金)

岩井俊二監督の新作「ヴァンパイア」どす

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これまでにないタイプの、吸血人間ドラマ映画でおます

蒼井優ネーさんも、エライ(!?)目に遭わはりまっせー

http://www.iwaiff.com

http://www.vampire-web.com

セプテンバー9月15日のサタデーから、ポニーキャニオンはんの配給によりまして、東京・シネマライズ、大阪・梅田ガーデンシネマやらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

VAMPIRE Ⓒ2011 Rockwell Eyes, Inc. All Rights Reserved.

アメリカ・カナダ・日本合作の全編英語セリフとなった、ドラマ映画としては何と8年ぶりの岩井俊二監督の新作やー。この8年の間には、岩井監督は市川崑監督、AKB48から、東日本大震災まで、多彩なドキュメンタリーやらを撮ってきはりましたが、映画作家としては、いろんな試行錯誤があったんやろと思います。

本作の原型は、最初は自殺サイトをヒントに、それを利用して殺人事件を起こすような話やったそうどす。ところが、現実にそういう事件が起こってしまい、別の話へと転換することを余儀なくされてしもたんです。

代わりにそこに、吸血鬼人間を登場させるとゆう、突然変異的な苦肉のヒネリを加えることで、本作はかつてない吸血人間ドラマ映画にして、変節したラブ・ストーリー性が、賛否両論を呼ぶ問題作となりよりました。

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自殺サイトを作ってる高校教師の主人公は、サイコチックに二面性をば持ってはります。表はマトモやけど、裏は血が好きやねん。そやから、表の生活部と裏の秘密部が、織り込まれた作りになっとります。

さてはて冒頭から、さっそくその裏の変態ぶりが示されよりま。サイトで募った一緒に死にたいとゆう女の子と、ドライヴしもって死に場所をば探さはりまんねん。モチ、主人公には狙いがありま。自分は死なずに、彼女の血を飲んでまうとゆう悦楽や。

「クジラの島の少女」(2003年製作・ニュージーランド映画)で史上最年少で、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされはった、ケイシャ・キャッスル=ヒューズちゃんが、血を抜かれる彼女(写真2枚目)をはかなげに演じてはります。この静かでショッキングなシーンに対して、主人公やない別の奴が、レイプまがいに女の頸動脈をかぶる、バイオレンスなシーンもござります。

でも、主人公はそうじゃないんやと叫ばはります。紳士的に本人から同意を得て、血を吸わせてもらう。主人公のこだわりでおます。一方で、適さない血を飲んだら、吐くなんてシーンもあります。ケッタイでおましょ?

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ほんで、この主人公。自殺したがってはる留学生役の蒼井優ネーさんに、奇妙なロジックを駆使して、自殺を思いとどまらせようとしはったり、別の女とは血抜きをやめてラブ・ラブ・モードになったりと、全くもって吸血鬼としては一貫性もプライドもない、トンデモヤワな吸血人間なんでおます。

岩井監督的には、吸血鬼ホラーなんかを描くつもりは微塵もないんどすわ。吸血鬼設定はあくまで物語のプロセスとして機能しておまして、着地は切ないラブ・ストーリーなんでおます。

娯楽恋愛ものの「トワイライト」シリーズ(2006年~2012年・アメリカ)の裏バージョンにして、最新吸血鬼ラブ映画の傑作「ぼくのエリ」(2009年・スウェーデン)ともシンクロナイズする作品やと、ボクはジャッジいたします。

2012年8月30日 (木)

これぞ民族音楽ドキュの粋どす「スケッチ・オブ・ミャーク」

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沖縄音楽のイメージを変える、宮古島音楽ドキュメンタリーでおます

神との交信をはかるような“神歌”の、神秘節にヤラレよりまっせ

http://sketchesofmyahk.com

長月9月15日の土曜日から、太秦はんの配給で、東京都写真美術館ホールやら、9月22日から吉祥寺バウスシアターで、全国順グリの上映どす。

関西やったら、大阪・第七藝術劇場や、神戸・元町映画館やらでかかります。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸKoichi Onishi 2011

みなはん、ワールド・ミュージック、民族音楽を捉えたドキュメンタリーやなんて、見はったことはありまっしゃろか。モチ、ドラマ映画にもあるんやけど。音楽ジャンル的にゆうたら、例えば、ボサノバ、ジプシー音楽、キューバ音楽、ハワイアン、中東音楽、レゲエやら。ほんでもって、本作で描かれるオキナワン・ミュージックやー。

みなはん、特に若い方にとっては、沖縄音楽のイメージとゆうと、売れてる日本のポピュラー・ミュージックを思い出さはるかもしれまへん。でも、もっともっと奥深いもんがあるんどす。

沖縄には、古来より沖縄民謡=琉球音楽とゆう、三線(さんしん=三味線のようなカンジやけど、ビミョーに違いよります)やらをバックにした、伝統音楽が綿々と続いております。そして、沖縄の各島でも、島なりにビミョーな違いを見せる歌があるんどす。

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沖縄宮古島(映画タイトルにあるミャーク)では、神との交信をはかるべくの、行事や祭り、ほんで「神歌(かみうた)」や「古謡(アーグ)」やらを、日常的に歌わはるんでおますよ。

最初は80歳から90歳のオバンが、主に歌ってはるようやったんやけど、やがて50代の女の方を始め、三線の弾き語りで歌うオッサンが登場し、ワイシャツ姿のサラリーマンたちも踊って歌い、コドモまで弾き語りを披露しよるんどすえー。

ただ、メインはオバンたちどして、日本語字幕入りのインタビューやらもかなり編集しもって、生活に密着したこれらの歌が、なくてはならないもんやとゆうことをば示してゆかはります。土着性・土俗性・神秘性などの混合型で、民族音楽の肝や粋へと、迫ってゆかはるような作りなんどすわ。ライヴ・シーンも並行して披露されてまいります。

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キューバ音楽を捉えた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年製作・ドイツ&アメリカ&フランス&キューバ合作)のように、ライヴの連続でストレートに、みなはんのココロを直撃するのんもエエんやけど、こういう作りもシブうてオツなもんでおましょう。

さて、日本のミュージシャン・音楽プロデューサーにおいても、メッチャシブどころの久保田麻琴アニキが、原案・監修・出演で本作に深く関わってはります。口伝に伝えられてゆくようなこの種の音楽を、後世に残してゆきたいとゆう久保田アニの想いは、十二分に伝わってまいりました。

チョーマニアックにして、上級編の音楽ドキュやもしれまへんけども、民族音楽ドキュの新しい打ち出し方が、何とも言えへんくらいに、新鮮味がある作品なんどすえ~。

2012年8月29日 (水)

ツアー・ドキュやなくて冒険ドキュやねん!「ドント・ストップ!」

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「イージー☆ライダー」的冒険世界を、ドキュに移植しようとしはった野心作どす

男の友情、仲間・家族のキズナなんかも、ベタやないのんがええねん

http://www.dontstop.jp/

9月8日のサタデーから、ゴー・シネマはんの配給によりまして、東京・新宿武蔵野館やらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、9月15日の土曜日から、大阪・テアトル梅田やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2011『DON'T STOP!』製作委員会

2人がバイクのハーレーに乗って、アメリカ大陸を横断した「イージー☆ライダー」(1969年製作・アメリカ映画)てゆうたら、アメリカン・ニューシネマの代表的傑作どす。ピーター・フォンダが扮したキャプテン・アメリカ(略してCAP)と、デニス・ホッパー演じるビリーの、2人のクールなロードムービーは、ボクらをトリコにしてくれはりました。

そんなCAPに憧れて、自らCAPと称してはったんやけど、事故に遭ってしもて下半身マヒになり、失意の日々を送ってはる方がいてはりました。彼のオカンからのアプローチがあったんやけど、自由ホンポーに生きてはる著名人の高橋歩アニキが、彼の願いをホンマに叶えたろうとしはりましてな、それをば実行に移さはるんどすわ。CAPみたいにハーレーを駆って、アメリカのルート66を走りたいとゆう夢でおます。

車椅子の彼には当然、介護者が必要どすんで、オカンと2人の彼の若い娘はんに加え、高橋アニキの仲間たちが加わらはり、「オーシャンズ11」(2001年・アメリカ)か!?な11人で、この冒険の旅へといざ、出陣どすえー。

旅の途中で、高橋アニキは娘はん2人から、旅の先が見えない不安について抗議を受けはります。でも、アニキは言います。案内人のいるツアーやなくて、コレは冒険なんやと。そう、まさに「イージー☆ライダー」のように。ちょっとカッコよすぎるで~、アニキィ~なんやけど、まさに映画的な作りとしては、「イージー☆ライダー」のドキュメント版を、目指さはったようなとこがござりました。

仮のCAPオヤジと高橋アニの関係は、CAPとビリーのクールなダチ関係とはいかんけども、でも程よい距離を保った友情ぶりどしたし、CAPオヤジをハーレーの後部座席に乗せて、チョイ走るシーンやらも感動的でおました。

アメリカの風景にも目がいきよります。空と地半々で切り取られる、広々とした荒野の風景やら、イエローセピアな朝焼けやら。さらに、蝉が鳴く中での川釣りシーン、500年に1度しか見られへん特殊な満月やら、神秘的な現地の儀式シーンなど、これまでにそない撮られなかったとこへも肉迫しはります。

ほんでもって、「イージー☆ライダー」のオリジナル・ポイントでもあった、サントラ使いはどないでおましょうか。歌ものはラストロールで、GAKU-MCのヒップホップな歌い回しによる8ビート・ロックの、映画タイトル・ナンバーが流れますが、本編のベースとなるのはインストどす。でも、エレキ・ギターを押し出したバンド・サウンド、スカなファンキー、ホンキートンキーな曲、モチ、バンド・ロック・サウンドまで、ロックを意識した作りでノリが良かったどす。

夢を叶えるためにはどないしたらええんか、そのプロセスをば描いた映画でもありました。みなはんも、ぜひ夢を叶えてくだされ。

2012年8月28日 (火)

ピーター・ウィアー監督の新作「ウェイバック 脱出6500km」やー

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前振りは収容所映画でも、ソ連ものは稀少価値がありまっせ

中盤・後半の集団脱走ロードムービー・サバイバルが、壮絶な仕上げどすえー

http://wayback.jp/

セプテンバー9月8日のサタデーから、ショウゲートはんの配給によりまして、東京・銀座シネパトスやらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、オクトーバー10月6日の土曜日から、テアトル梅田で公開どすえ。

本作はアメリカ・アラブ首長国連邦・ポーランド合作による、2010年作品どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2010 Siberian Productions, LLC

本作のイントロは、捕虜収容所映画でおます。第2次世界大戦下の捕虜収容所もの映画は結構ありますが、ソ連の収容所とゆうのんは、そないにありまへん。

スターリン支配下のシベリア強制収容所の1日を、淡々と描いた「イワン・デニーソヴィチの一日」(1971年製作・アメリカ&イギリス合作)やとか、世界1の長尺大作「人間の條件」(1959年~1961年・日本)のラスト・エピソードやら。今年公開作品では、韓国映画「マイウェイ」(今年1月9日付けで分析)なんかで、採り上げられておましたけども、いずれにせよ貴重でおます。

しかも極寒のソ連収容所の過酷ぶりを、容赦なく描いております。「マイウェイ」と同じく、実話をベースにしてるんやけど、こちらの方がリアリティーがモノゴッツーありました。集団で収容所から脱出するには、一体どないしたらええんか、微細に描かれとるんどす。

2薄ブルー・トーンの雪の森中を、逃げた各人のサバイバル演技ぶりが、本作のデッカイ見どころとなっとります。山越えするには何日もかかり、食料が当然足りまへん。魚のいる湖までの行程。その間に、どない食うてゆくんか。市川崑監督作品「野火」(1959年・日本)なんかでは、人肉まで食うてしまうようなことになりましたけども、彼らはそれは絶対やらはりません。

モンゴルに出たら出たで、砂漠の砂嵐のパニックやら、日射病、今でゆうたら熱中症がござります。砂漠をかげろうのように、みんなが走っていくカットなど、CGでは絶対に出せない、現地ロケの凄みちゅうもんがありました。さらに、インドへ出るための、チベット、ヒマラヤ山脈越えとゆう、過酷な運命が待ち受けておるんどすえ~。

そんな中で、ボクが最もリアリティーを覚えたんは、いろんな国の人のその母国語で喋り、英語が分かるもんはそれで通訳して伝えて、コミュニケーションを取るとゆうとこでおました。全編、英語で通してまうとかが多いんで、コレは新鮮やったなー。

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さて、各役者はん。スパイ容疑でタイホされてもうた、写真一番上のジム・スタージェスのアニキ。まあ、みなはん、あんまし知らんやろけど、好感度の高い演技ぶりどす。

最近では「トータル・リコール」(今年8月9日付けで分析)で、凄まじきアクション演技を見せてはった、コリン・ファレルのアニキ。今作では、チームのガンみたいなヒネタ役やけど、そこが逆にええ方向へ向かうやも。

途中から1人、女が加わります。シアーシャ・ローナンちゃん。この子もヒネタ女の子役「つぐない」(2008年・イギリス)やら、女スパイ役「ハンナ」(2011年・アメリカ)やらがあるんやけど、本作では、彼女の過去最高に泣かせてくれはる演技をば披露しはります。大ベテランのエド・ハリスはんもシブいわあ。

さて、本作のピーター・ウィアー監督って、みなはん、知ってはりまっしゃろか。かつての監督作、ハリソン・フォード主演「刑事ジョン・ブック/目撃者」(1985年・アメリカ)、ロビン・ウィリアムズ主演「いまを生きる」(1989年・アメリカ)、ジム・キャリーの最高傑作「トゥルーマン・ショー」(1998年・アメリカ)やらを、見はったことがありまっしゃろ。それらにあった、感動の人間ドラマ性が本作にもござります。期待を裏切らない会心作でおました。

2012年8月27日 (月)

日本ミステリー原作の韓国映画「凍える牙」

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直木賞原作映画化作品としては、初の海外ものでおます

イヌが出てきよるサスペンスとしては「クジョー」を超えたか

http://www.kogoeru-kiba.com

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セプテンバー9月8日のサタデーから、ブロードメディア・スタジオはんの配給によりまして、梅田ブルク7やら、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都やらでロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 CJE&M CORPORATION&UNITED PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.

最近ようやってんねんけども、いきなりやけど、マイ・ベスト&カルト・スリーをば勝手に披露いたします。今回の括りは、直木賞受賞作品の映画化で、しかもミステリー・サスペンス・ジャンルに限ってやらせてもらいま。

●ベスト⇒①復讐するは我にあり(1979年製作)②理由(2004年)③マークスの山(1995年)

●カルト⇒①背徳のメス(1961年)②追いつめる(1972年)③本作

●6作中、女流作家原作ものが半分どす。直木賞はかつてはミステリーでは、なかなか取りにくいと言われておましたが、1980年代後半以降より、活発になりまして、1990年代にはそのピークを迎えた感がござりました。その90年代に獲ったんが、宮部みゆき原作のベスト②、高村薫のベスト③、ほんで乃南アサの本作やー。

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全員、女流とゆうんは偶然やもしれまへんが、本作が直木賞原作映画でも、初の海外作品になったんは画期的やし、3作の中でも本作は、刑事側から描くミステリーの原点回帰とも言える、オーソドックス・タイプで、しかも刑事相棒もんでも、男女刑事コンビものでおます。

そんな正攻法スタイルでありながら、イヌがメイン・ポイントとして登場する異能ぶりは、本作の最大の特長でおましょうか。イヌが出てくるミステリーてゆうたら、大たいが警察犬ゆうのんが、この種の映画の常套なんやけど、本作は大いに違っておます。

ネタに関わることなんで、あんまし詳しくは言えへんねんけど、スティーヴン・キングの原作やった「クジョー」(1983年・アメリカ映画)の、イヌみたいなカンジやもしれんけど、その使われ方はかつてない設定どした。そのサプライズが、さらなるサプライズを呼び込んでゆくみたいどすんで、お楽しみくだされ。

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さて、2人の刑事のキャラクター作りのユニークさも、原作の特長としてござりましたが、映画ではどないでおましょうか。

男刑事役はソン・ガンホ兄貴どす。「殺人の追憶」(2003年・韓国)で見せた静謐系に加え、くたびれた雰囲気と活劇シーンの躍動感を、バランス良く演技しはる好演ぶりどす。

対して、イ・ナヨンのネーちゃん。どちらかとゆうと、強気なヒロインを演じるにはどうかなと思とったんやけど、何とかキバらはったかと思います。ソン・ガンホより多い、アップ・シーンのタイトな挿入も、彼女の演技リズムを構築してたようどした。

彼女が容疑者の家へ1人で行って以降の、ジョディ・フォスター主演の「羊たちの沈黙」(1991年・アメリカ)的な展開なんかも、メッチャスリリングどしたえ~。ちゅうワケどして、見に行って、決して損のない作品なんやで~。

2012年8月26日 (日)

爆裂日本映画「莫逆家族 バクギャクファミーリア」どす

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トンデモ好戦的やった2組の不良グループたちの、過去完了形に絡んだ現在進行形を描いておます

「ゴッドファーザー」シリーズを意識した仕上げやも…

http://www.bakugyaku.com

長月9月8日の土曜日から、東映はんの配給によりまして、全国各地イッセーのロードショーでおます。PG-12指定映画どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2012「莫逆家族」製作委員会

不良たちを描く映画なんて言い始めたら、日本映画だけに限っても仰山(ぎょうさん=いっぱい)ござります。本作の位置付けについて言いよりますと、かつて1986年から1988年にかけて、ブイブイいわしてた2組の、暴走族不良グループたちの現在をば描いてはります。

過去シーンが、高校不良映画やった「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズ(1985年~1988年製作・全6作)の時代と、妙に符合するとこらを見まするに、そこに出てた彼らの現在形を、捉えたとも解釈できよります。本作と同じくコミック原作でもありますし。

また、暴走族たちの今とゆう点では、SFノリやったけど「狂い咲きサンダーロード」(1980年)も思い出させてくれはりました。さらに、井筒和幸監督作品に見られるようなバイオレンス性が、バージョン・アップしておます。

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そやから、バイオレンス・シーンが、ハンパやありまへん。主人公役・漫才のチュートリアルの徳井義実アニキと、キャリア史上かつてない、異様な狂的バクレツ系の演技を示さはる、村上淳アニキとの1対1対決をクライマックスに、ストレートかつガチな、見ていてホンマこっちまで痛くなるような、ケンカ・シーンが頻出しよります。

ボクのベスト・バトル・シークエンスは、モチ、ヤマ場の2場にわたる、雨中集団乱闘劇と2人バーサスのカット・バックどす。特に、そのシーンへの前振りとして、遠藤ミチロウが歌う「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」が、流れてきたのにはビックラこきましたがな。

重たいバンド・サウンドに乗って、母に語りかけるように歌われるこの曲の使用こそ、この映画のオリジナル・ポイント・ゲッターやと見ました。サントラ的には何度か使われる、1970年代のフォーク・バラード「サルビアの花」のカヴァーもまた、感傷的なシーンで哀愁感をもって流れます。対して、ラストロールで流れる、10-FEETの激16ビート・ロックが、高揚感を煽ってエンド・マークへと向かうんどすえ。

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さてはて、群像劇的にはどないでおましょうか。徳井の息子はん役・林遣都クンのナレーションに乗って、ザラついた過去シーンが振り返られまして、最初の方で、いろんなキャラが太字字幕入りで紹介されるんどす。

人物相関図を頭の中に組み立てるには、チョイややこしゅうなってるようにも思たけど、見ていくうちにやがて分かってまいります。玉山鉄二、阿部サダヲ、中村達也、新井浩文やらの各アニキらが、これまでに演じてきはった役柄にシブく微妙に、自己ヒネリを加えてはるとこらにも注目どす。

ほんでもって、総体として「ゴッドファーザー」シリーズ(1972年・1974年・1990年・全3作・アメリカ映画)のノリを、意識してはるように思いました。殺された元リーダーの北村一輝の、何回忌かに集うファミリーたちが踊ってみたり、ファミリーを映す集合写真などの表象上だけやなく、ファミリー・ゴコロの在り方なども、潜在させる作り込みには感服いたしました。まあ、いっぺん、見に行っておくんなまし。

2012年8月25日 (土)

逃亡者映画のニュー・タイプ「デンジャラス・ラン」やー

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デンゼル・ワシントン兄貴とライアン・レイノルズ君が、相棒になって逃亡者役をヤラはります

「ボーン」シリーズとはまた違った、CIAの暗部どすえー

http://www.D-run.jp

セプテンバー9月7日のフライデーから、東宝東和はんの配給によりまして、TOHOシネマズ梅田やらで全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

本作は、CIA諜報員のCIAからの逃亡を描いた「ボーン」シリーズ(2002年・2004年・2007年製作・3部作・アメリカ映画・全くの新作「ボーン・レガシー」は、後日分析いたします)を、かなり意識しはった作品となりました。

ラフなザラついた映像感やら手持ちカメラでの撮影、短いカットなどに加え、チェイス・シーンのビビッド感も似通っておます。CIAの闇部を突くっちゅう作りもソックリなんやけど、オリジナリティーあるとこも、もちろんござります。

「ボーン」と違うのんは、ボーンが記憶喪失に罹ってたのに対し、こちらはチャンとした目的と意識を持って、逃げはることどす。しかも、2人が嫌々ながらも一緒になって、反発し合いもって逃げるっちゅう、相棒ノリの逃亡系やー。それでもって、変格形の道行ロードどして、敵対して離れたりすることもある、ユニークなカタチになっとりま。

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この2人に、デンゼル・ワシントンのアニキと、日本ではあんまし有名やない、ライアン・レイノルズ君が扮しはりました。

本作は南アフリカが主舞台になっとります。そやから、デンゼルはんにとっては、「遠い夜明け」(1987年・イギリス)以来の南ア舞台映画でおます。あの時より弾けてはるけど、でも、冷静沈着ぶりがメインどすえ。

CIAを裏切った悪の元CIA役なんやけど、新米CIA員のライアン君を、逃げながら正義へと導いてゆくシーンの流れは、絶品の仕上げどした。逃げもって真犯人を探すタイプの「逃亡者」(1990年・アメリカ)の流れを、逆流でやったようなカンジがあります。

CIAが各国各地に展開する、容疑者を尋問するための隠れ家(セーフハウスと言いよりまして、フツーのホテルみたいになっとりま。ほんで、本作の原題でもありま)の存在を、映画で本格的に採り上げた作品なんどすえ。その実態ぶりを見せる騙し系のノリにも、緊張感がありました。埋もれとったオリジナル脚本の特性が、よう出とる映画なんでおます。

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さてはて、逃亡者映画、あるいは追逃走劇映画は、余りにも多くのタイトルがあるんやけど、ここで、脱走逃亡ものやらを外した上ででんな、アメリカ映画に限定したマイ・ベスト&カルト・スリー+ワンをば、勝手に披露いたしよります。

●ベスト⇒①明日に向って撃て!(1969年)②激突!(1971年)③テルマ&ルイーズ(1991年)次点:ノーカントリー(2008年)

●カルト⇒①ミッドナイト・ラン(1988年)②勇気ある追跡(1969年)③キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年)次点:本作

無理矢理に本作を入れてみたように、見えるかもしれへんけど、ボク的には、アメリカ映画的には西部劇に多かった追逃劇が、どのように変遷してきたんかを、ホンマのとこはやりたかったんどすわ。そんな中で1対1の追逃に加え、2人で逃げるタイプ(ベスト①③・カルト①)でも、多種多彩なバージョンが出てまいっとります。本作もそんな1本として、後世に残ってほしい作品でおました。

2012年8月24日 (金)

徳島県・上勝町ロケーション映画「人生、いろどり」

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「愛の亡霊」カップル、藤竜也と吉行和子が同じく地方ロケで復活でっせー

実話の美談やけど、シニア映画としての自然体はよろしおま

http://www.irodori-movie.jp/

長月9月1日の土曜日から、ショウゲートはんの配給によりまして、シネマサンシャイン北島、徳島ホールやらで徳島県先行上映どす。

その後、9月15日から東京・シネスイッチ銀座、関西やったら9月22日の「秋分の日」から、シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012『人生、いろどり』製作委員会

「愛の亡霊」(1978年製作・日本&フランス合作)ちゅう映画をみなはん、見はったことはありますやろか。当時カンヌ国際映画祭で、監督の大島渚はんが監督賞をもろてはるんやけど、その映画に主演してはったんが、本作に出てはる藤竜也はんと吉行和子はんどした。

「愛の亡霊」は不倫やったけど、今回はれっきとした老夫婦役どすえ。しかも、このお2方は、地方ロケ映画にはよう出てはりまして、それぞれに代表作がござります。21世紀の近作でゆうとでんな、和子はんは「佐賀のがばいばあちゃん」(2006年)、竜也はんは、今作と同じく徳島県ロケをした「村の写真集」(2004年)どすか。

いずれにしても、この2人のキャスティングは、地方ロケ映画を渋~く映えさせるための利点が、あるやろかと思いよります。

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さてはて、地方ロケ映画は、地方のフィルムコミッションの充実と、国からの助成金もあって、21世紀以降たくさん出てまいっておます。観光誘致やPRを兼ねたような代物もあるんやけど、本作は実話で「葉っぱ」ビジネスが、成功したとゆう美談を描いてるんどす。

ちなみに「葉っぱ」ゆうても、アッチの方やのうて、日本料理に添えられる葉・花・山菜のことでおます。主力のミカンが全滅してしもた、徳島県上勝町。後期高齢者の多いこの村やけど、JAの若手(平岡祐太クン)が、ある日その「葉っぱ」に目を付け、コレが商売にならんもんかと、奮闘努力しはります。ほんで、3人の老女を巻き込んでの、成功への道が始まるっちゅう次第どす。

確かにPRのノリもないとは申しまへん。でも、演技陣の自然体の演技やらで、G線内に踏みとどまっておます。

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姥捨てをテーマにした映画などとは違い、シニア映画としての前向き系をクリエイトしてゆかはります。和子はんや竜也はんはモチ、富司純子はんに中尾ミエはんも、普段通りの自然体を、カンジさせてくれはる演技ぶりどした。

そこんとこは、例えば若者たちが見ると、オジンオバン向けに、妙に古っぽいんやないかと思うかもしれまへん。しかし、コレは実話がベースなんで、こういう演技でないとおかしくなってまいます。平岡祐太クンと村川絵梨ちゃんの若者恋愛部もあるんで、2人の演技とシニア・グループの演技を、比較して見るんもオモロイかも分かりまへん。

地方ロケらしい四季折々の美風景は、モチ要チェックやし、ラストロールで流れるサザンオールスターズの原由子ネーさんの、和風ピアノ・ポップス「ヘヴン」も、歌詞に四季を取り込んだ快曲どす。地方映画らしい、癒やしももらえる作品どすえ~。

2012年8月23日 (木)

アメリカ・フランス合作の女アクション「コロンビアーナ」どす

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ヒロイン'sアクション映画の新たな快作の誕生どすえ

リュック・ベッソンはんが製作に関わらはっただけに、期待してもらって充分でおます

http://colombiana.jp/

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セプテンバー9月1日のサタデーから、ショウゲートはんの配給によりまして、大阪・梅田ブルク7やら、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸やらで、全国ロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 EUROPACORP TF1 FILMS PRODUCTION GRIVE PRODUCTIONS

ヒロイン・アクション映画てゆうたら、今や多岐にわたって存在しとります。

本作は女暗殺者にしてリベンジャーとゆう設定どすので、「ニキータ」(1990年製作・フランス映画)と「キル・ビル」シリーズ(2003年・2004年・アメリカ)やらを、程よくブレンドしはったようなテイストがござります。

女スパイもの「エージェント・マロリー」(9月28日公開・後日分析)やらも、本作とシンクロする快作どして、女アクションものは日々、進化しとるとゆうことなんでおましょう。

「ニキータ」やらを始め女アクト映画を、ケッコー撮ってはるリュック・ベッソンはんが、スピルバーグのドリームワークスやらを意識して、ハリウッドに負けないアクション映画をフランスからと、作らはった会社ヨーロッパ・コープ作品でおます。それだけに、これまでにないようなタイプの、アクションが満載どすえ。

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ほんで、ボク的には、久々にストレートでスカッと爽快で、理屈抜きに楽しめるアクション映画を見た思いがありました。印象に残ったシークエンスをば列挙しよりますと…。

①冒頭。コロンビアで家族を殺された少女が、「ボーン・アルティメイタム」(2007年・アメリカ)のボーンばりにやね、敵からアメリカのおじさんのとこまで、逃げ切ってまうシーン。1992年のコロンビアから始まる、インパクトも特注や。

②そして、15年後。おじさんの受けた悪者限定の殺人依頼をこなしていかはる、大人になったヒロインが登場やでー。「アバター」(2009年・アメリカ)にも出てはった、ゾーイ・サルダナのネーさんが、留置所内で緻密なミッションをこなさはるんどす。セクシーちゅうよりは、タイトでしなやかでリリカル。防犯カメラなどを、どないくぐり抜けはるんか見ものどす。

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③用心棒がいっぱいやー。サメをフロアー下のプールに飼ってる大富豪を、どない片付けるんか。そのプールから入り…。特殊設定やのに、キチンと説得力を持って見せはる、アクション演出ぶりが考え抜かれておます。

④ヒロインには彼氏がいまして、彼氏との癒やしのシーンが、アクション・シーンと対比的に描かれるとこもあるんやけども、その彼氏のせいで警察に追い詰められそうにならはります。どないして窮状をクリアーしはるんか、サスペンスフルなハラドキが待っておますんどすえ。

⑤ほんでもって、クライマックスのヒロイン対犯罪集団との対決シーンやー。いきなりドッカーンとやって、スピードフルやけど分かりやすう見せてゆかはります。とゆうことで、みなはん、連続する痛快なアクションをお楽しみくだされ。

2012年8月22日 (水)

トータル5時間30分の3部作大作「カルロス」やー

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革命テロ・ドラマとしては、「チェ・ゲバラ」もんと呼応しますやろか

ユーロ・アラブ各国ロケによる、20年以上にわたる、骨太な大河群像ものどすえ

http://www.carlos-movie.com

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9月1日のサタデーから、マーメイドフィルムはんの配給によりまして、東京・[シアター]イメージフォーラムやら吉祥寺バウスシアターほか。ほんでもって関西では、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで、全国順グリのロードショーでおます。

3部作でありまして、各回入れ替え制での上映どす。

フランス・ドイツ合作映画どして、映画そのもんはフランス映画となります。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸCAROLE BETHUEL / JEAN CLAUDE MOIREAU / PATRICK SWIRC / FILM EN STOCK / CANAL+

第1部101分、第2部107分、第3部118分にわたる映画でおます。この種の長尺の大作は、アメリカやらイギリスでは、古来よりシリーズものとして、機能しておます。

なんでかとゆうと、そない長い時間をばいっぺんに映画館で掛けても、1日に2回くらいしか掛けられず、大作1本を1本料金でいってもうたら、そない儲からへんことになります。そやから、古来よりこの種の映画は、映画館では敬遠されてきよりました。でも、フランスでは、1週間置きに3本を順番に上映しはり、案ジョウやってはります。

さてはて、4時間以上の大作なんやけど、これまでは3時間から4時間までの映画は、それなりに輩出されとるんやけど、4時間以上のヤツは、シリーズものを除き、そないありまへんねん。ボクチンも4時間以上もんは、これまでに10本も見てへんかと思います。それでも、懲りずにやりまっせー。カルトはヤンペして、マイ・ベストの3本をば披露いたします。

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基本的には、「ハリー・ポッター」やら「ロード・オブ・ザ・リング」やら、話としてはつながっとるシリーズもんも外しました。まあ、ビミョーなとこでおますけども。●ベスト⇒①人間の條件(1959年~1961年製作・日本)②1900年(1976年・イタリア&フランス&西ドイツ合作)③本作

●②もそうなんやけど、どうゆうわけかイタリア映画には、このトンデモ長尺ぶりがそれなりにありましてな、家族大河ドラマ「輝ける青春」(2003年・イタリア)なんぞもボクは見ましたが、長くても凝縮されて、飽きずに見れるカチッとした点においては、ベスト3作の後塵をはいしました。

ただ、カルロスが非難してたチェ・ゲバラを描いた、前編「チェ 28歳の革命」後編「チェ 39歳別れの手紙」(2008年・スペイン&フランス&アメリカ)は、本作とビミョーな差でおました。

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さてはて、本作の魅力について語りま。1970年代から1990年過ぎにわたる、カルロスと呼ばれた男の革命・テロをば描かはります。テロの1つ1つを描いてはるけども、各部では、肝となるとこをば、ハリウッドのアクション映画ばりに描いてはるんどすえ。スリリングな短いカットのモンタージュと、手持ちカメラに揺れる画像のオン・ザ・パレードには、ココロにグラグラきよりました。

当時のユーロ・アラブ諸国の状況とテロ対策について、詳細に知らんでも、流れに乗って見はったら、分かりやすい仕上がりになっとります。むしろ、そういうややこしいとこを知らずに見た方が、本作をばハラハラドキドキで見られるやろと思います。

映画史に残る大作「旅芸人の記録」(1975年・ギリシャ)は、4時間以上(232分)にはチョイ足らんかったけど、本作はそのスロー・テンポな作りとは真逆の、ハイ・スピードな展開でおます。ほんで、基本は実話もんやけど、フィクション部も入れて、多彩な群像劇を繰り広げつつ、やがてはカルロスの人間ドラマ性へと収束してまいります。

中でも、第1の妻とのケンカを含むやり取りやらの、共にテロリストやのに夫妻映画部などにも、見どころがありました。写真4枚目にあるような、「俺たちに明日はない」(1967年・アメリカ)みたいな銃撃練習シーンやらの、リラックスしたシーンなど、細部の描写も面白い作品どすえ~。

2012年8月21日 (火)

日本映画的なブラジル映画「汚れた心」

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次第に狂気じみていく伊原剛志アニキ、常盤貴子ネーさんの演技性に大注目どす

日本人俳優が多数出演してはる洋画の、系譜に入る1本

http://www.kegaretakokoro.com

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長月9月1日の土曜日から、アルバトロス・フィルムはんの配給によりまして、大阪・テアトル梅田で公開後、全国順グリの上映どす。シネ・リーブル神戸は9月下旬から。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 Mixer All Rights Reserved.

本作を系譜的に見てまいりますと、まず、太平洋戦争の日本の敗戦直後を、時代背景にしはった作品どす。

樺太の「樺太1945年夏・氷雪の門」(1974年製作)、満州の「赤い月」(2003年)やらの、当時日本領やったとこの、実態を捉えた作品とか、戦場での「太平洋の奇跡」(2011年)などとは違いまして、本作は戦場でも日本でもない、ブラジルをば捉えてはるんどす。

ほんで、見出しにも書きましたが、「ラスト・サムライ」(2003年・アメリカ映画)やら「硫黄島からの手紙」(2006年・アメリカ)やらと同じく、日本人俳優たちがいっぱい出てはる外国映画なんでおます。

さて、お話やけど、日本は絶対に負けないという妄念に取り憑かれた、ブラジル移民の日本人たちの間で、殺し合いが発生しよるんどす。当時ブラジルには、日本の情報は全く入ってこなかったもんどすから、「日本は負けてしもた」なんて一言でもゆうたら、國賊・非国民・裏切り者と見なされてまうんです。ほんで、粛清・抹殺や。

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狂気の沙汰を描く映画の系譜とか、またサイド・ストーリー的には、夫妻映画の側面もあるやろかと思います。

奥田瑛二はんが軍人役どして、裏切り者を殺せと、伊原剛志アニキに日本刀を渡して命じはります。伊原アニは教師やってる常盤貴子ネーさんと夫妻になり、ほんで写真館を営んではるんやけど、剣の達人でも何でもありまへん。

そやけど、奥田はんに感化されてしもて、ご近所の日本人をば、次々に始末していくんどすわ。次第に狂気を帯びてゆく伊原アニの演技は、助演やった「硫黄島からの手紙」以上に、当然狂てはります。

一方で、そんな夫の行動に対し悲しみを覚え、別れようと決意するまでの、常盤ネーさんの演技も、ある種狂的どした。主演した「赤い月」で見せたたくましさは、全くありまへん。沈黙演技、そして表情演技で、沈みゆくココロを表現してはりま。写真に映ってる少女のオカン役の、余貴美子はんの沈み具合も良かったどす。

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ヴィセンテ・アモリン監督のアニキやけど、ドイツ・ナチものやった「善き人」(2008年・ドイツ)に続き、今度は日本もの。でも、本作は祖国ブラジルを舞台にしてはるので、その画面には、ブラジルらしい雰囲気みたいなものを、陽光やらのセピア配色をところどころに施して示してはります。そやから、よりリアリティーを獲得してはる映画やと見ました。

また、弦楽オーケストラ・サントラに加え、特に、哀愁味を帯びた宮本笑里(えみり)ちゃんの、バイオリン演奏が光っておましたえ。

2012年8月20日 (月)

フランス映画の歴史的大ヒット作「最強のふたり」

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年の差・身分の差を超えた、男同士の友情映画でおます

フランス国内で大ヒットした理由とは?

http://saikyo-2.gaga.ne.jp

9月1日のフライデーから、ギャガはんの配給によりまして、全国ロードショーでおます。

関西やったら、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 SPLENDIDO/GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION/TEN FILMS/CHAOCORP

フランス国内で2011年映画興行収入ナンバーワン、歴代フランスの映画興収でもナンバースリー、フランス映画に限定してもナンバーツーになったちゅう映画でおます。ヨーロッパの各国で大ヒットし、ハリウッドでのリメイクも、決定したらしいフランス映画どす。

その大ヒットについて分析しよりますと、キズナを描いている点。それは男と男の友情どして、しかも年の差やら身分差を超えてのもの。加えて、リッチな身障者とプアな介護者とゆう設定なんでおます。世代ギャップが当然ござります。

例えば、音楽の嗜好ぶりやらやけど、共に軽やかにクリアーしはります。クラシックとダンス・ミュージックの対比なんやけど、お互いに相容れないながらも、それぞれその嗜好ぶりを理解しはります。つまり、このギャップ感を自然に超えてしまうとこらなどが、幅広く老若男女にアピールできるポイントやったんやないやろか。でもって、キズナを描くとゆう、普遍性ある感動的なとこらかな。

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個人的な好みを言いよりますと、1970年代フレイバーが感じられた点どすか。70'sディスコティークでファンキーな、アース・ウインド&ファイヤーやクール&ザ・ギャングの曲とか、刑事映画「セルピコ」(1973年製作・アメリカ映画)なんかを会話で比喩に出したりと、エエ按配どした。

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さてはて、男の友情映画てゆうたら、いつもながらに言いますけども、モノゴッツーなタイトル数がござります。そこで、ボクの男の友情もの洋画の、マイ・ベスト&カルト・スリーをば披露させてもらいま。

●ベスト⇒①真夜中のカーボーイ(1969年)②スケアクロウ(1973年)③アンタッチャブル(1987年)

●カルト⇒①暗黒街のふたり(1973年)②八日目(1996年・フランス&ベルギー)③本作

●頭の中で思い付くままなんで、モチ偶然やろけど、ベストはアメリカ映画、カルトはフランス映画ちゅうことになりました。まあ、アメリカは、友情もポイントに描いた、ボクの大好きなアメリカン・ニューシネマ(ベスト①②)があるし、手前流やもしれまへん。

本作はカルトに括ってまいましたが、カルトはユニークな組み合わせ・相棒ぶりを、採り上げたつもりどす。本作のようなキズナもんは、確かにイロイロあるやもしれまへん。けども、世代ギャップを超えてまう以外に、プラスアルファとなるサプライズがありまして、そこがグッときよりました。それに、実話をベースにしているとことかもありま。

日本でヒットするかどうかは未知数どすが、キズナ映画として感動のある映画になっとりますんで、映画に感動を求めてはる方は、ぜひ見に行くべき作品どす。

2012年8月19日 (日)

テクマクマヤコンなアノ「映画 ひみつのアッコちゃん」やー

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綾瀬はるかチャンのコメディエンヌぶりは、本作でピークをば迎えとりまっせ

ほんでもって、ラストのサプライズには驚きよりました!

http://www.akko-chan-movie.com

9月1日の土曜日から、松竹はんの配給によりまして、全国ロードショーどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会

仕上がり具合は取りあえずは、ヨコに置いときまして、ボクとしては、本作は理屈抜きにメッチャ面白く見られた作品でおました。

故・赤塚不二夫はんのコミックを原作にしはり、ほんで1970年代の連続テレビアニメ化を経て、今年30数年ぶりに、実写映画化された作品が本作でおます。この十数年ぶりとゆうのは、今期ロンドン・オリンピックの日本選手たちの活躍ぶりのワン・ポイントと、呼応してるやろかと思います。

ただ、コミックに映えるトンデモ設定のドラマなんで、実写にしてみたらリアリティーなんぞを含め、違和感あるシーンは確かにあるかとは思います。

また、ファンタジーとしてすんなり見ればエエんやろけど、現実的な問題をば取り入れてはりますんで、そういうわけには流れまへんし、いきよりまへん。しかし、この違和感は、本作の大きな隠し味になっておました。

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それが最も機能したのは、クライマックスとなる、化粧品会社の株主総会のシークエンスどした。綾瀬はるかチャン演じる、小学生ゴコロのヒロインが、大逆転をば演技してゆかはります。

超シリアスな「金融腐食列島・呪縛」(1999年製作)とは真逆のノリで描かれる、その演説シーンは本作の、一番のキモでありハイライトやったかと思います。それまでにおかしくてギクシャクしてたシーンの数々が、ココで全て解消されよりました。

ほんでもって、ラストシーンの爽快感を覚えるサプライズどす。チャップリンの「街の灯」(1931年・アメリカ映画)的な感動さえ覚えた、このシーンがあってこその本作やと思います。これがなければ、本作は公開されて数年後には、全く忘れ去られてしまうような恐れのある映画に、なる可能性の高い映画になったことでおましょう。

モチ、現時点では、ボクの勝手な思い込みにすぎまへん。でも、みなはんが映画館で見ていただければ、きっとボクと同じ思いを共有してもらえるはずどす。

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さてはて、本作の個人分析へとまいりましょうか。ナンチューても、綾瀬はるかチャンの演技ぶりでおましょうか。

個人的には「おっぱいバレー」(2009年)なんかの女教師ぶりが、戸惑いぶりも含め、コメディエンヌ演技的には、優等生的演技ぶりで好感度が高いんかもしれへんけど、でも、本作は、はるかチャンのコメディエンヌ演技のピークを示してはるようどした。

「ホタルノヒカリ」(今年5月27日付けで分析)の現実世界のヒモノ女役より、現実と仮想、大人と子供とゆう二面性を演じ分けながら、わたってゆくこの演技ぶりは、はるかチャンの今のとこ、最高の演技やと、ボクはジャッジいたします。岡田将生クンとのラブ・ストーリー部も、サプライズへとつながるとこなんで、重要でおました。

ほんで、コミック原作映画を本作を含め、3連投で作ってきはった川村泰祐監督アニキ。人間的感動をラストで必ず披露しはるその作りは、モチ今作でも健在どした。そして、ボク的には、デート・ムービーとして見にいけば、2人の仲はメッチャエエカンジになる作品やろうと思います。

2012年8月18日 (土)

西川美和監督の新作・松たか子&阿部サダヲ共演「夢売るふたり」どす

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夫妻映画のマニュアルを、どんどん外す作りに啞然呆然として見ておました

「怪盗ルビイ」のコメディ・タイプの、逆バージョン的なシリアスぶりどす

http://yumeuru.asmik-ace.co.jp

9月8日の土曜日から、アスミック・エースはんの配給によりまして、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、神戸国際松竹やらで全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012「夢売るふたり」製作委員会

さてはて、夫妻映画は日本映画に限っても、これまでに多数作られてきておます。コドモやジジババの出る家族映画でも、片親が故人の場合もあるんやけど、当然夫妻・オトンオカンがいてはるし、夫妻ドラマ部は常にあるような状態であるやろかと思います。

唐突ながら、日本の夫婦映画のマイ・ベスト&カルト・スリーをば、思い付くままに披露しよりますと…。ちなみに、夫妻2人だけで生活もんに限定しとります。

●ベスト⇒①夫婦善哉(1955年製作)②HANA-BI(1997年)③ぐるりのこと。(2008年)

●カルト⇒①本作②遠雷(1981年)③愛妻物語(1951年)

●本作がカルトにふさわしいカンジで、ナンバーワンにしたんは、その夫妻の関係描写の描き込みの、異能かつ変格系の新しさでおます。とにかく、フツーの夫妻関係をば、ビミョーにハズして描いてゆかはります。

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ベスト①②③の中では、2人の関係的には①のような、イロイロあってもなんとかなるやろみたいな、夫婦の関係性にも近いかもしれへんけど、違いてゆうたら、2人には共通の目標があり、それを目指して突き進むとゆうとこらでしょうか。但し、結婚サギなんてゆう犯罪によってなんやけど。

ベスト②③カルト③のように、妻がビョーキやらトラウマやらに、なってはるバージョンやありまへん。ほんで、ストレートに夫妻のキズナを描く作品やないのは、2人の心理の間にビミョーな違いがあるからどす。

その違いこそが、本作の裏にある隠しポイントやないでしょうか。そのズレ具合を、松たか子ネーさんと阿部サダヲ兄貴が扮する夫妻役が、巧妙にかつ自然体に見えるようでいながら、複雑に役に入ったような演技ぶりで魅せてくれはります。

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モチ、西川美和監督の演出ぶりも、見逃せへんねんけど、やはり、ナンチューても、ボク的には、松たか子ネーの怪演技的にも見える自然体演技やろか。夫の浮気まがいをヒントに、結婚サギへと向かってゆかはるシーン。サギやってる阿部のシーンに合わせて、それらしき説得力はあるけど、奇妙なナレーションを披露したり…。ほんで、徐々に入り込んでゆくフツーやない演技に、ボクらをドッカーンや…なんてね、と惑わしてくれはります。特に、表情演技の微細な迷宮的なとこは、強烈インパクトどすやろか。

観客に判断や感じ方を、ゆだねるようなカンジの演技性は当然、西川監督の計算の中に入っておるんでおましょう。阿部アニについては、これまでのコミカル演技をば、ほとんど排除してはります。「怪盗ルビイ」(1988年)のシリアス版やと、ボクは勝手に見立てました。

それにしても、家族系の映画を撮ってきてはるんやけど、西川監督のレンジの広さにも驚いた1本どした。家族ドラマ「蛇イチゴ」(2002年)、兄弟の「ゆれる」(2006年)などに続き、本作は夫妻でおます。それぞれの映画において、新味を加えてきはるとこらは、本作でも健在でおました。深く考えずとも、ウーン、ヤッパ、渋いわ~!

2012年8月17日 (金)

藤原竜也と松田龍平共演の「I'M FLASH!」

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豊田利晃監督が、北野武的沖縄ロケ作品を作ってきはりました

日本のロック音楽から、インスパイアーされた作品でもありま

http://www.imflash-movie.com

9月1日の土曜日から、大阪のシネ・リーブル梅田やらTOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで、全国順次のロードショーどす。

本作を配給しやはるのは、ファントム・フィルムはんでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2012「I'M FLASH!」製作委員会

沖縄ロケーション映画てゆうたら、そらモノゴッツーなタイトル数があるんやないやろか。21世紀以降、タイトル数を伸ばして、ロケーション・サービスのフィルム・コミッション制度ができてからは、おそらく地方ロケ映画のナンバーワンの数になっとるんやないでおましょうか。

本作もソレなんどすが、ついでのようですんまへんが、沖縄ロケ映画の、マイベスト・カルトスリーをば披露させてもらいま。衝動的につれづれに思い付いたままを書き殴っとりますんで、いっぱいエエのんが外れとるかも分からへんけど、ご容赦くだされ。また、舞台は沖縄設定やけど、マジ沖縄ロケをやってはらへんのも入れとります。

●ベスト⇒①ナビィの恋(1999年)②青幻記・遠い日の母は美しく(1973年)③ひめゆりの塔(1953年)

●カルト⇒①神々の深き欲望(1968年)②ソナチネ(1993年)③本作

●本作は別に沖縄ロケでなくても、良かったようなカンジどす。誰かから逃げるとゆう意味では、北海道でもええわけどす。沖縄ロケをしなければならない作品やないとゆう意味においては、カルト②や「3-4×10月(さんたいよんえっくすじゅうがつ)」(1990年)の北野武監督作品やらと、同列に括れる映画かもしれまへん。

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確かに、豊田利晃監督は、北野武監督に影響をば受けてはるかもしれまへん。しかし、ボク的には、フランスのヌーヴェル・バーグ的なセンスもカンジとりました。

本作主演の教祖役の藤原竜也アニキやけど、殺人請負人役の松田龍平アニキともども、時々ヌーヴェル・バーグの名作「勝手にしやがれ」(1959年・フランス)「気狂いピエロ」(1965年・フランス&イタリア)のジャン・ポール・ベルモンドはんを、思い出させてくれはるような演技を披露してはります。これはあくまで監督の趣味であり、演出ぶりなんやろけどな。

さてはて、この2人対決へと持っていくまでには、イロイロござります。ドライヴィング・シーンにおける、水原希子チャンと藤原アニキとの関わりなど、ミステリアスなタッチがあったり、新興宗教家族のシビアな関係ぶりなどもまた、見どころとなっとります。

監督はとある曲からインスパイアーされはって、この映画を作ろうと思わはったそうどす。映画タイトルになった歌なんやけど、これが日本のビート・ロックの老舗バンド、シーナ&ロケッツの鮎川誠はんが作ってはります。日本のクセモノたちによる、タイトなドラムをポイントにした、16ビート・バンド・サウンド・ロックが、映画のメイン・イメージを形成してはりました。

クライマックスの藤原VS松田はモチ、デッカイ見どころやー。でも、脇役たちのキャラクターたちの、渋かったり新鮮やったりする演技にも、注目あれ! でおます。

2012年8月16日 (木)

人間ドキュやで~「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」

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昭和の事件を撮り続けはったカメラマンの、過去完了形と現在進行形をば捉えはりました

大杉漣はんの映画弁士的ナレーションが、ココロそそりますで~

http://www.bitters.co.jp/nipponnouso

8月18日の土曜日から、大阪・テアトル梅田やら、8月25日からシネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。

配給はビターズ・エンドはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2012『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』製作委員会

人間ドキュメンタリー映画の1本でおます。写真家を捉えたもんどすが、その種のタイプは、例えば「地雷を踏んだらサヨウナラ」(1999年製作・日本映画)などの、ドラマ映画でもあったかと思います。

ただ、本作はドキュ・ポイントとしては、カチッとした作りをしておまして、突け入るスキがないような仕上げをばしてはります。現在の本人へのインタビュー、過去の作品にまつわるエピソード、大杉漣はんのナレーションなどをシンクロさせて、人間ドキュのツボを押さえたカタチで、本作を紡いでゆかはります。

前半の映画的流れでは、原爆病患者の役もやらはったことがある大杉はんが、福島はんの原爆病にまつわる取材の話をナレーションしはります。モノクロ写真による紙芝居ならぬ写真芝居のノリで、進行するこのエピソードは、活動映画弁士的センスもあって説得力にあふれたお話どした。

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そして、次々に映される写真作品は、イロンな社会派ドキュ映画の名作と、オーバーラップしてまいります。広島原爆とその後遺症ものとなれば、当然ドラマ映画だけでもいっぱいあるし、原発問題のある祝島、学生運動、三里塚などは、ドキュとしてはピン・ポイントでおましょう。

一方で、1970年代のウーマン・リブやら、自衛隊への隠し撮りによる取材など、映画化されてなかったとこへも肉迫してまいります。

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冒頭でおますが、福島はんが福島へ(シャレやありまへん)写真撮りに行ってはるんやけど、既に写真界の現場からは、身を退いてはるような状況やのに、90歳にしてこの突撃取材ぶりの凄みは、徐々に明らかにされてゆきよります。現在進行形シーンと過去完了形シーンが巧みに束ねられて、人物像を浮き彫りにしてゆくんどす。

そんな中で、やはり、見てからあとで効いてくるんは、ボク的には現在形のシーンの数々やったかな。つまり、こんな写真を撮り続けてきはった人が、今はどないしてはるんかでおます。写真3枚目にありますが、11歳の柴犬と暮らす独居生活。「天皇戦争責任展」なんてゆう写真展を開催してはるなど、国を責めてるから、年金はもらわない主義どして、質素な生活ぶり。ほんで、娘はんを始めとした、関係者の話から浮かび上がる優しい人間性。東日本大震災で動く姿。そして…。

よくあるようでいてそうやない、人間ドキュの深みをば、カンジさせてくれはる作品でおました。

2012年8月15日 (水)

ドキュメンタリー映画どす「ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド」

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はっきりゆうて、音楽ドキュやありまへん

音楽やってはる人間ドキュメンタリーの、渋~い1本どすえ~

http://www.bobmarley-movie.jp

9月1日のサタデーから、角川映画はんの配給によりまして、大阪ステーションシティシネマやらで、全国ロードショーでおます。

アメリカ・イギリス合作による144分どす。

文=映画・音楽分析評論家=宮城正樹

ⒸSHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

ボブ・マーリーって、みなはん、モチ知ってはりますよね? 「ロックの殿堂」入りは当然してはりますし、1960年~1970年代活躍組としては、ビートルズ、ジョン・レノン、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、スティーヴィー・ワンダー、エリック・クラプトンやらと、同格のポジションをば獲得してはる、偉大なるミュージシャンでおます。

ほんで、彼ら何人かの名作ドキュやらと比べてもでんな、遜色のない仕上がりになっとります。過去のライブ・シーンやら、本人のかつてのインタビュー、多彩な関係者へのインタビューを重ねて、ボブ・マーリー像をば浮き彫りにしてまいります。

音楽的ドキュ性よりも、人間ドキュを目指さはったそうでおます。その試みは、それなりに達成されとるように見えますが、なんせ本人が死んではるもんどすから、描き方には綿密なる取材ぶりが、必要になってくるでおましょうか。

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さてはて、ボブ・マーリーがやってたレゲエとゆう音楽についても、本作では言及されとります。ボクチンのことなんやけど、「レゲエでいこか」とゆうオムニバスCD(1995年日本発売・今は廃盤)において、ライナーノーツを書く機会がありましたが、その時にレゲエの波乗り・ヨコノリ系についても言及いたしました。

ボブ・マーリーのバラード・ナンバーも1曲収録されとりました。古来より日本では、レゲエは夏とゆうイメージがありました。でも、夏イメージと違うのんが、ボブの音楽にはあったように思います。本作では、ボブのかつての盟友やったバニー・ウェイラーはんが、レゲエについて、スカ、ファンク、R&B、ソウル、ジャズやらのフレイバーがあると解説してはります。

民族音楽の域を超えた、ブラック・ミュージックとしての視点が、ボクとしてはココロにきました。何せ奴隷として虐げられてきた黒人たちの、逆境跳ね返しのパワーは、音楽界でも顕著どして、今ヒットしてる音楽の大半は、黒人ミュージシャンが生んだものでおましょうか。

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でも、ボブは黒人と白人の混血児として、この世に生まれ落ちてきはりました。彼の名言もインタビューやないけども、披露されてまいります。彼の人生が、彼が作った音楽の披露と共に、生き方と歌詞内容をシンクロさせてゆくとゆう描き方をばしてはります。

彼が歌うその歌詞。「愛は一つ、心は一つ」「闘い続けろ、あきらめるな」などの歌詞がココロを打ちます。多種多彩に映される過去の映像と現在の映像の交錯によりまして、ボブの人間性が浮き上がってきよります。さまざまなエピソードには、感動ある泣ける系の話もござりました。

ボブの人間性にどこまで迫れたんかは微妙なとこどすが、ボブに詳しい人よりも、詳しゅうない人に見てもらいたい作品どした。マニアック的を外して見た方が、面白いように思ったからどす。人間ドキュとして、普遍的な作りになっとる1本どしたえ。

2012年8月14日 (火)

音楽ドキュメンタリー「UVERworld DOCUMENTARY THE SONG」

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ファン向けのドキュかと思いきや、予想外の感動がある映画どした

夢をキーワードにしたMCなんか、現代の忌野清志郎的やんか

http://www.uverworld.com

葉月8月22日の水曜日から、東宝映像事業部はんの配給によりまして、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズやら、大阪・TOHOシネマズ梅田ほかにて、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画・音楽分析評論家=宮城正樹

Ⓒ2012 Sony Music Records Inc. All Rights Reserved

日本の5人組ロック・バンド、UVERworld(ウーバーワールド)の、デビュー7周年も記念したドキュメンタリー映画どす。レコード会社の販促系のノリで描かれた、音楽ドキュメンタリーかと思いきや、コレがメッチャ前向きなキモチをくれる映画やったんで、ボクとしては驚きがありました。

確かに、映画としては甘いとこがあるやも分かりまへん。しかし、なんともいえへん感動がある映画でおました。その点について、チビチビつれづれなるままに語りたいと思いよりま。

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さてはて、日本の音楽ドキュ映画てゆうたら、そない多くありまへん。セル・オンリーの音楽DVDが主軸にあり、映画としては余り機能しないようなとこがありました。でも、最近はコンサート映画などが映画館で上映されるようになっとります。

かつてMr.Chirdrenのドキュ映画なんぞもありましたが、そのドキュのクリップ集なイメージに対して、本作はライヴ・コンサート・シーンやらに加え、音楽人間ドキュとしてのスタイルが、全面に押し出されたケッサクになっとります。

ちなみに個人的なことをば申しますと、彼らと同じくボクは滋賀県の出身どして、東京ドーム・コンサートまでのぼりつめた彼らが、そのルーツとなる滋賀県のライヴハウスへと、回帰するシーンには泣きました。彼らを育てたそのライヴハウスの店長の、しみじみとした述懐なども、ココロを打ちよりま。

彼らのそれぞれが、お世話になった地元の、いろんなとこを訪ねていくシーンもまた、故郷に錦を!の凱旋とゆうイメージやなく、ウサギ追いし~な“ふるさと”感に加え、人とのキズナを確認するようなカンジが良かったわ~。

Sub2
ハコバン(ライヴハウスをメインにライヴをするバンド)への想いを、UVERworldのボーカリストのTAKUYA∞(たくや)クンが語るシーンから、本作は始まるんやけど、いろんなコンサート・シーンやら、みんなで作曲してゆくシーンやらを散りばめつつも、最も印象的なんは、たくやクンのMCやら談話やらにある、夢を追いかけることをば語る、前向きで元気をくれるシーンの数々やったと思います。

前向きポジティブをくれる音楽てゆうたら、日本では1990年代にピークを迎えたと思うけども、彼らがプレイするロック(8ビート、16ビート、ミクスチャー、時にヒップホップもあり)は、その進化型を示してはります。間違いなく、前向きをくれはる音楽なんどす。

しかも、字幕入りの歌詞内容(曲はメンバー全員で作るんやけど、詞は、たくやクンが書いてはります)と、MCと彼らへのインタビューをモンタージュしもって、ポジティブなキモチへとつなげていくセンスが見事でおました。

夢をポイントにした、たくやクンのMCには、思わず泣けてしまいましたがな。ボクもやらないかんと、思わず思てしまいます。ほんでもって実際、ボクは試写中に落涙しとります。単にファン向けやありまへんで。

「みんな、夢を持ってるかい」と観客に語りかけた、故・忌野清志郎のアニキの精神が継承されとるみたいにカンジて、感動したんでおます。

さて、彼らのノリノリでカッコイイロック・ナンバー「THE OVER(ザ・オーバー)」(TBS系金曜ドラマ「黒の女教師」主題歌)は、8月29日にリリースされます。こちらも要チェキどすえ~。

2012年8月13日 (月)

ギリシャ映画のチョー異端派やー「籠の中の乙女」

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カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門グランプリをゲットどす

変型家族ドラマ映画も、かつてない仕上がりでおます

http://kago-otome.ayapro.ne.jp

8月18日のサタデーから、彩プロはんの配給によりまして、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで、全国順グリのロードショーやー。

関西では、9月15日からシネマート心斎橋で公開どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2009 BOO PRODUCTIONS GREEK FILM CENTER YORGOS LANTHIMOS HORSEFLY PRODUCTIONS-CopyrightⒸXXIV All rights reserved

カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門の、グランプリをばもらわはったギリシャ映画作品どす。「ある視点」とは、何でおましょうか。要するに、ユニークな視点での描き方が、なされているかどうかちゅうことでおましょうか。

いちおうは、本作は家族ドラマでおます。でも、フツーやない、トンデモワケ分からへんような作りをばしてはります。簡単にゆうたら、変形家族ドラマとゆうことでおましょうか。設定系家族ドラマなんやけど、これまでの家族映画には、まずなかった作りでおます。

なんでかとゆうと、夫妻と娘2人に息子1人の家族なんやけど、夫妻はコドモたちを家に閉じ込めて生活してはりました。外の世界は歪んどるんで、幼い頃から両親だけで、イロイロ教えこまはり、間違ったコトバの使い方なんぞも、やってきはりました。

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例えば、その間違い具合をば言いますと、イントロからやってはりますが、ゾンビ=黄色い花、プッシー=大きな灯りなど、ワケ分からんとこばかりが、意図的・作為的に続いておます。これまでの家族映画を、最初から破壊してゆくような作りやし、全くもってよう分からへんシーンが、とゆうか、不条理かつ理不尽なシーンが、無謀やと思うくらい、次々に続いてまいります。

単刀直入にゆうたらでんな、全員精神病に罹ってしもた家族が、1つ屋根の下の隔離型で暮らしてるようなイメージやろか。

ほんで、一方で、見ていくにつれて、ますます分からへんようになりまして、その分からなさが、ある意味で超常異能節みたいなカンジで流れてまいりましたえ。ホンマ、どうにもこうにもな展開なんやけど、クセになりそな仕上がりどした。

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ギリシャ映画と申しますれば、最近亡くなられたテオ・アンゲロプロス作品などが、有名になっとりました。その作品は今、日本でもいろんな映画館で特集上映されておます。アンゲロプロス作品のリアリズムは、本作にはありまへん。

むしろ、頭の中だけで作られたような作品みたいなんやけど、また、賛否が分かれる映画やもしれへんねんけど、何はともあれ、アート系映画として、とことんやってまうようなノリにホンマ、はまってしまいよりました。

特に下ネタ系の、あそこをなめてとか、オトンがええ大人になった息子のために、娼婦を家に呼んだりとか、近親相姦もあり、ネコ殺しやら、ネコやイヌみたいに娘・息子たちが吠えたりと、ワケ分からん感はますます増幅しよりまして、ほんで、最後には…。

確かにワケ分からへん映画やけど、アート系の映画とゆうのんはいっぱいありますが、本作は家族ドラマの、ネジレ系アート映画を描いた点において、画期的かつ実験的やったかもしれまへん。また、ギリシャ映画としても、今までにない新鮮味がある映画どした。

2012年8月12日 (日)

韓国映画の時代劇どす「神弓 -KAMIYUMI-」

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伝説の弓を武器に戦う、ヒーローを描く戦争大作やー

「ダイハード」「クリフハンガー」などのセンスがありまっせー

http://kamiyumi.jp/

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オーガスト8月25日のサタデーから、ショウゲートはんの配給によりまして、東京・シネマート新宿、シネマート六本木、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネマート心斎橋やらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2011 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved

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韓国の歴史戦争もの映画でおます。1636年のことどす。「丙子(へいし)の乱」とゆう名の侵略戦争でおました。「ラストエンペラー」(1987年製作・イタリア&イギリス&中国合作)の中国が清の時代。満州から清の大軍が朝鮮に一方的に攻めてきよりまして、50万人もの捕虜をとられたっちゅう、韓国の歴史上最悪の戦争やったんですわ。

そんな話を史実通りに描いたらでんな、娯楽作にはとてもなりまへんし、ヒットもしまへんやろ。そこで、弓の名手とゆうスーパー・ヒーローを設定して、彼が国を救うとゆうフィクションを入れて、大作エンタにしはったんが、本作でおます。

2011年度の韓国映画興行界で、ナンバーワンのヒットになったのも、頷ける仕上がりになっておます。韓国人が見はったら当然、胸がスカッとするやろし、ボクら日本人が見ても、メッチャいけてる、カッコエー出来になっておるんですよ。

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悲劇的な話を前半に展開させはり、そのむごたらしさへのリベンジとして、後半からは爽快な巻き返しアクションが展開しよります。

木に刺さった弓矢やコップの揺れで示す、地震やなく大軍が押し寄せてくるとこらから静かに始まり、そして敵の奇襲攻撃アクション・シーンが怒涛のごとく続きよります。みんな、殺されたり捕まったりしてもうて、満州へと連れていかれます。

でも、主人公のパク・ヘイルのアニキ1人だけは、助からはりました。ほんで、連れ去られた妹を取り返すべく、たった1人っきりの戦いを始めはるとゆう次第どす。一方、妹の婚約者も連れ去られた途中で逆襲に転じまして、主人公と合流し一緒に、妹奪回作戦をば遂行しはるちゅう流れでおます。

このあたりのタッチは西部劇はモチ、「隠し砦の三悪人」(1958年・日本)⇒「スター・ウォーズ」(1977年・アメリカ)と続く、姫奪回の脱出スタイルと似通っておます。

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敵の精鋭陣の追撃に対する迎撃戦は、本作のハイライト・シーンになっとります。「ダイ・ハード」(1988年・アメリカ)のビルを山林に置き換えた、1対グループの弓矢対決がスリリングに繰り広げられます。山中決戦としては、「クリフハンガー」(1993年・アメリカ)なんぞのスパイスも、味わえるちゅう豪華版なんどすえ。また、騎馬戦シーンなどでは、弓矢だけに「ロビンフッド」(最新作は2010年・アメリカ)みたいな、集団戦演出をば施してはりました。

ラストは草原での、トライアングル弓矢対決。このバーサス・シークエンスは、本編でも最高に印象的なものになっとりまっせ。山に出るトラなんかはどないか分かりまへんが、CGは基本的には使ってはらへんそうどす。今、CGなしにこういう時代劇を作ることの意味も、問いかけてきはります。「ダイハード」や「クリフハンガー」のタッチが、濃密にカンジられるんは、そのあたりにもありそうどした。ちゅうことで、韓国エンタ映画の底力を見た思いでおました。

2012年8月11日 (土)

深夜のトンデル小学校アニメ「放課後ミッドナイターズ」

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ジャパニメーションの新型異能タイプが、やってきよりまっせー

都市伝説ホラーへの、ブラック・ユーモアなアンサーが強烈やー

http://www.afterschool-midnighters.com/

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葉月8月25日の土曜日から、テイ・ジョイはんの配給によりまして、東京・新宿バルト9やら、大阪・梅田ブルク7、T・ジョイ京都やらで、全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⒸAFTER SCHOOL MIDNIGHTERS PARTNERSHIP

世界に誇るジャパニメーションのイメージは、日々刻々と変わり、いろんな方向へと進化しておます。これまでのJ-アニメのイメージとは違う、ある種変種とゆわれるタイプが、メイン・ステージとは違う裏街道で、イロイロゴチャゴチャと出てまいっておるんどす。

時にそんな作品の中に、オオッ、コレは! ちゅう作品がござります。スタジオジブリを始め、世界の映画祭で評価される作品は、マットウなスタイル、ほんで普遍的なテーマやらを持っておます。ストレートに人間的な感動系へと向かうものが多いんやけど、本作はそれらの高評価のアニメ群とは、ビミョーに違いよります。

最近マスコミ試写室で見た「アシュラ」(9月29日公開・後日分析いたします)もそうやし、故・今敏監督作品やらのイージー・イメージに加え、SFスパイスをユニークに採り入れた仕上げになっておます。変種では、韓国アニメ「アーチ&シパック」(今年2月6日付けで分析)やら、日本の「紙うさぎロペ」(今年4月27日付け)やらも思い出しました。

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チョーシリアスな「AKIRA」(1988年)などとは違い、ギャグ・コメディ・アニメなSFポイントやし、しかも真夜中の小学校が舞台とゆう、学園ものとしてはかつてない設定をば設けてはります。

とにかくナンチューても、キャラクターがブッ飛んでおります。理科室の人体模型と骨格標本が相棒になりよります。2人の指令を受けてモルモットのウサギたちが、幼稚園児の少女3人(写真2枚目)を、真夜中の小学校パーティーへと連れてきよります。

ところがどっこい、この3人のおコチャマやけど、全く動じてまへん。平然としておます。そして、無邪気・冷静・お嬢ちゃんの3タイプの女の子が、3つのゲームに挑みよりまんねん。都市伝説がどうのこうのとゆうイントロなんやけど、この少女たちのノホホン系と、模型・骨コンビの笑える逼迫系の動きの、噛み合わなさが終始、物語のリズムにあります。

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少女たちがトライする、3つのゲームがこれまた変テコでおます。虫パニックや逆流プールの、水中パニックがある第1ラウンド。薄ブルーを散りばめたデジタル・ルーム・サイドのデジ仕様。そして、バッハやベートーベンやらが、肖像画から飛び出してくるミュージック編。全てにアラマ・ポテチンがありました。

最後の方はチョイひっぱり過ぎの感もありましたけども、そのひっぱりさえもウウーンと唸るようどした。ミュージカルなタッチの骨たちの共演ぶり、マカロニウエスタンなギターとトランペットに乗る、ウサちゃんキャラたちのサントラ使いの妙やらの音楽部。薄色の配色をベースに、モノクロやらダーク感を取り込んだ色使いも、注目ポイントどすえ~。

2012年8月10日 (金)

ハリウッドSF映画「プロメテウス」やでー

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リドリー・スコット監督の、新ブランドが誕生かもしれまへん

サバイバル映画としての衝撃度が、メッチャ高い作品どす

http://www.foxmovies.jp/prometheus/

オーガスト8月24日のフライデーから、20世紀フォックス映画はんの配給によりまして、日本全国各地イッセーのロードショーでおます。3D・2D同時公開どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012 Twentieth Century Fox

リドリー・スコット監督てゆうたら、ハリウッドの巨匠監督でおます。スピルバーグ、ルーカス、キャメロンやらと並ぶ、売れ線映画方程式に則った、世界的ヒットメイカーどす。そんな彼が、自身の傑作「エイリアン」(シリーズ第1弾・1982年製作・アメリカ映画)のブランドを超えるべく作ってきはったんが、本作でおましょうか。

監督はイロイロとジャンルに特定されへん、大作娯楽作を作ってきてはりますが、SF映画に特化したもんやったら、この「エイリアン」と、「ブレードランナー」(1982年・アメリカ)が双璧やと言えましょうか。2大名作のスタイルを踏襲しつつも、本作は新たなSF映画シリーズを作らんとするココロ意気に、魅せられる1本でおました。

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まずは、サバイバル映画としてのキー・ポイントがあります。サバイバル映画の群像ものとなりますれば、ものすごい数の映画がありまっしゃろか。本作は「プレデター」シリーズ(第1弾は1987年製作・アメリカ映画)などの、ハリウッド・サバイバル映画としてのブランドを、濃厚に取り込んだ1本になっとります。

1人1人が死んでゆくのを、それなりにドラマティックに見せてゆかはります。サバイバルの後に残るのんは誰か? やらについても、マニュアル通りをビミョーに外してはりますんで、ご注意あれ~やで~。

ほんでもって、本作では、謎めいた未知の惑星イメージをキープするために、曖昧さをケッコー貫いてはります。当然、シリーズ化を睨んだ作りになっとりますんで、謎はいくつか残しておった方がよろしおますやろか、っちゅうことなんでしょうか。

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演技陣に目を振り向けてみよりますと、監督が目指す新ブランドの点では、「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーヴァーのキャラは、本作のヒロイン役のノオミ・ラパスの姉さんにスライディングしておます。どこのラパス? のクエスチョンもあるやろけど、「ミレニアム」シリーズ(2009年・スウェーデン)やらで男っぽい演技をば、魅せてくれはった女優はんどす。

ほんで、彼女は本作ハリウッド映画では、同じくメリハリの利いた演技を始め、シガニーに比べて小柄やけど、ストレートかつ骨っぽい演技をやり続けてはります。ヒロインが自動手術なるもんで、知らぬ間に妊娠してもうたモンスターを、避妊手術しはるシーンなどは、相当衝撃的でおました。

とゆうか、そのシーンの前後から、異様なシーンが次々にやってまいります。モンスターたちの造形ぶりやら、砂嵐のパニック・シーンなど、3Dでこそのシーンもイロイロあるんでお楽しみに!

2012年8月 9日 (木)

2度目の映画化「トータル・リコール」どすえ

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シュワちゃん版より、確かにグレード・アップしとります

アクション・シーンが圧倒的な仕上げになっとります

http://www.totalrecall.jp/

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オーガスト8月10日のフライデーから、ソニー・ピクチャーズはんの配給によりまして、大阪ステーションシティシネマやらで、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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「トータル・リコール」(1990年製作・アメリカ映画)に続く、2度目の映画化となるSF映画でおます。ちゅうことで、まずは前作・次作とゆうカタチで、比較考察してまいりましょう。

夫妻役はアーノルド・シュワルツェネッガーと、シャロン・ストーンやった前作に対し、次作の本作では、コリン・ファレルのアニキとケイト・ベッキンセールのネーさんがやらはりました。

シュワちゃんが豪快な演技やったんに対し、ファレルはんは時々ビクつきながらも、ワケ分からん任務をまっとうしてゆかはります。片や、あんまし出てけえへんかったシャロンに対し、ケイトのネーさんはほぼ全編にわたって出はります。

しかも、正義系のアクトをやってはる「アンダー・ワールド」シリーズ(2003年~2012年)のアクションを、悪役系として反転させてはるんどす。スパイ映画として、主人公ファレルはんと、相棒になるジェシカ・ビールのネーさんも、ケイトと変わらへんくらいの、アクトぶりで魅せてくれはります。

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ファレルはんは災難に遭う記憶喪失系の演技を、前作以上に追究してはります。自分だけが何者か分からへん状況で、仮想か仮想でないかの世界を渡ってゆかはります。その流れの中では「エンゼル・ハート」(1987年・アメリカ)のようなハラハラがござります。

前作は火星までゆかはりましたが、本作は、フイリップ・K・ディックの原作に、より近いカタチで映画化しはりました。21世紀末の未来の地球設定の基に、物語を展開しはるんどす。この種の映画のルーツとも言える「メトロポリス」(1926年・ドイツ)やら、「フィフス・エレメント」(1997年・アメリカ&フランス)的な未来造形に加え、地球の天地を貫く乗り物なんて、モノゴッツーなとこを作ってはります。ビックラコンでおました。

地球のド真ん中コアの無重力状態で、重力反転やなんてトンデモ設定は、まさに宇宙SFやなく、地球SFのケッサクをものせんとする仕上げどす。加えて、CGシーンも当然入っておますが、あくまでセット撮影にこだわった作り。富裕層街とコロニー・スラム街の対比やら、主人公・労働者階級の部屋の造形などが、リアリスティックどすえ~。

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ほんでもって、ナンチューても、アクション・シーンがバージョン・アップしておました。

冒頭の夢アクト・シーン。電光がチカチカする中での銃撃戦。夫妻のバーサス・追逃走は、フツーの都会での駅のホームまでいった前作に対し、スラム街のオリジナリティーあふれるセットでの、上から屋根を破って降りて逃げるスタイル。車が空中を走る高速道路でのカーチェイス、狭いエレベーター内での、ロボットを巻き込んだビビッドなシーン。

ほんで、ハイライト・アクションは、地球の表から裏へとゆく軍団と、主人公たちの一大決戦やー。「インセプション」(2010年・アメリカ)なども思い出す、無重力対決もオモロイかと思います。今とは進化させはった、ケータイなどの使い方も、興味深いとこでおましょう。とゆうことで、前作とはまた違ったカタチで、ハリウッドの大作娯楽作にしはった1本どした。

2012年8月 8日 (水)

児童養護施設ドキュメンタリー邦画「隣(とな)る人」でおます

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少年・少女を描く映画の系譜に入る1本でおます

ひたすらあるがままを、撮るのみとゆうスタイルが新鮮どす

http://www.tonaru-hito.com/

葉月8月18日の土曜日から、アジアプレス・インターナショナルはんの配給によりまして、大阪・第七藝術劇場にてロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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養護施設を描いたドラマ映画やドキュメンタリーは、これまでに数多く作られてまいりました。そして、邦画ドキュメンタリーとしては、ボク的には障害児の養護施設を描かはった「ねむの木の詩」(1974年製作・日本映画)が、マイ・ベストワンやったんやけど、ココにそれをば超える作品が現れよりました。

さらに、少年・少女たちを描く映画としても、コンテンポラリーな作りになっとります。ドラマ映画の一部を引用しよりますと、小津安二郎監督の「生れてはみたけれど」(1932年・日本)やら、今井正監督の「キクとイサム」(1959年・日本)やら、名作「禁じられた遊び」(1952年・フランス)「汚れなき悪戯」(1955年・スペイン)などに加え、最新作では少女ヒロインの「冬の小鳥」(2009年・韓国&フランス)なんぞと、シンクロナイズド・シネマとなるでおましょうか。

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児童養護施設「光の子どもの家」で展開する物語でおまして、コドモたちの姿、仮想オカンの保育士とコドモたちの、キズナ模様が描かれるんどすわ。

保育士マリコはんとムツミちゃんの話がメインにありま。ムツミちゃんは実のオカンとは、実は仲が良くなく、ムツミちゃんはマリコはん大好き状態なんどすわ。この三角関係状態的シーンの数々が、ある種のサプライズをもって映されていきよります。ほんでもって、ラストの感動的なエピソードには、思わず泣きましたで。

さらに、約2つのエピソードが織り込まれておます。保育士と少年の話やら、担当代わりで仮ママ・保育士と女の子の一時の別れを、コドモたちのぐずつき系で捉えてはります。ホントの親の愛情を知らない、そういうコドモたちの愛への希求ぶりには、胸を突かれよります。

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これらのシーンを感動的に見せるためにでんな、コレが映画初監督となる刀川和也(たちかわ・かずや)アニキは、イロイロ工夫を施さはりました。その手法は、ドキュの巨匠監督フレデリック・ワイズマンのタッチが顕著でおました。

ナレーションや字幕はなく、サントラとしての音楽を入れず、インタビュー・シーンも、その人の述懐的イメージで捉えるとゆうとこらでおましょうか。保育士が担当する、各コドモたちへの想いを綴るコトバの数々は、まさに自然体にして愛があり、ココロにきよります。

ひたすら撮ることだけに、集中するとゆうスタイルによって、ボクらの前に映像だけがそのまま映されてゆくんどす。写真4枚目の映画的なロングショット、流れのままに撮る1~2分の長回し撮影、ここぞとゆう時のアップなどを織り交ぜつつ、映画的空間をば魅せてくれはります。みなはんがどない思わはるかは分かりまへんけども、ボク的には泣ける映画やったと思います。

2012年8月 7日 (火)

コッポラ監督の新作「Virginia ヴァージニア」どす

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ホラー・ミステリー映画に新味を加えた跡はありま

コッポラ監督復活と言いたいとこやけど、どないなもんやろかな~

http://Virginia-movie.jp/

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8月11日のサタデーから、ヒューマントラストシネマ有楽町やらシネ・リーブル梅田で、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸZoetrope Corp. 2011

フランシス・フォード・コッポラ監督の新作と聞いて、みなさんにはどんな想いがあるでおましょうか。むしろ娘はんのソフィア・コッポラのネーさんの方が、今は有名かもな~、なんてゆわれても、若い映画ファンにしてみたら、そうですかーやろかと思います。

コッポラはもうしまいやとゆわれた時代さえも、今は昔なんやろな~と思います。でも、「ゴッドファーザー」(1972年製作・アメリカ映画)や「地獄の黙示録」(1979年・アメリカ)など、1970年代の活躍ぶりは、ボクたちをメッチャトリコにしてくれはりました。ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグらと並ぶ存在感がありました。

でも、1980年代以降、徐々に精彩を欠き始め、映画史に残るケッサクを輩出できないまま、今に到ってはります。そやから、今作もあんまし期待しないで見に行きました。ところがどっこい、と言いたいところなんやけど…。

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本作をホラー映画として見た場合、完全にスティーブン・キングからの影響が大でおました。「シャイニング」(1980年・アメリカ)みたいに作家を主人公に据えて、物語を展開しはります。

かつて少女集団殺人事件が発生した街に、やって来た主人公のオカルト作家(久々に見たヴァル・キルマーがやってはりま)は、その事件を調査して、新作のネタにしようとしはります。ホラー小説のメイキングを見せてゆくようなんやけど、これが現実と眠って見る夢を、シンクロナイズさせるとゆう構成をば採ってはります。

しかも、何度も出てくるその夢シーンを、部分イロ付きのモノクロ・シーンで映さはりまんねん。黒澤明監督「天国と地獄」(1963年・日本)をルーツとするコレを、思いっきり使うとゆうのは、ある意味で作為的過ぎるようにも見えよりました。でも、わざとらしさに、ついハマッてまうようなとこもござります。

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その夢シーンに出てくるエル・ファニングちゃんやけど、最近映画で見かけへんダコタ・ファニングちゃんの妹はんどして、ソフィア・コッポラが最新作「サムウェア」(2010年・アメリカ)で、主役級の子役で使(つこ)てはりました。コッポラ・ファミリーによる使い回しかとつい思たりもするんやけど、助演ながら少女ホラーとしての存在感は、それなりに演出されておました。

でも、S・キング的を避けるためやったかもしれんけど、エドガー・アラン・ポーを夢シーンに登場させたのは、どないなもんやろかな。賛否はあるやろけど、いずれにしても、サプライズ・エンディングで全てを吹き飛ばしてくれはるかもな。コッポラ大復活とはいかんやろけど、手堅くまとめたホラー・ミステリーやったと、ジャッジいたします。

2012年8月 6日 (月)

ドイツ映画「あの日 あの時 愛の記憶」どす

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2つの時代がカットバックされて、構成に妙がある1本どす

戦争で引き裂かれ系の恋愛映画としては、普遍性あるオーソドックスな仕上がりやー

http://ainokioku.jp/

8月11日の土曜日から、クレストインターナショナルはんの配給によりまして、シネ・リーブル梅田で上映後、シネ・リーブル神戸やら京都シネマやらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 MediaPark Film-und Fernsehproduktions GmbH

これまでに腐るほど出てきたナチ収容所ものにして、戦争によって引き裂かれ系の映画でおます。「ひまわり」(1970年製作・イタリア映画)のように、オーソドックスな引き裂かれ系になっとるんやけど、チビチビと今までにないような、シチュエーションをば披露してはります。

大かたのその種の映画てゆうたら、男が戦場へ行ってるとゆうパターンどした。ところが、本作は収容所で男と女が出会って、恋に落ちるちゅう新型どす。しかも、その組み合わせは珍しおます、女がユダヤ系ドイツ人で、男がポーランド人どす。

ほんで、2人で収容所を脱出しはるんやけど、収容所脱出設定としては、男女カップル・パターンはあんましありまへん。その後、逃走のロードムービー部があり、「戦場のピアニスト」(2002年・ポーランド&フランス合作)みたいに、逃げ切るためのアレコレが描かれてまいります。

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ボクチンが素晴らしくカンジたのは、構成の妙どした。1976年(写真3枚目と4枚目)を現在形としたNYサイドと、1944年(写真1枚目と2枚目)のポーランド・サイドを、カットバックさせるとゆうスタイル。

そして、NYサイドはセピアの照明をメインに、総じて明るい画面設計やけど、対する過去サイドは、夜のダークなカンジやら、ブルー・トーンやらの寒色系の配色を中心に採ってはりまして、その対比効果は映画トーンを、サスペンスフルにしてはったかと思います。

加えて、サスペンス的緊張感は、例えば女と、女との結婚を許さない男のオカンとの間で、静かに展開するシークエンスなどで魅せてくれはります。ほんでもって、「哀愁」(1940年・アメリカ)やら「君の名は」(1953~1954年・日本)みたいな、すれ違い系恋愛映画へと持っていくあたりが絶妙でおます。

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逃げた2人は、その後離れ離れになりまして、お互いに死んだものやと思てはりました。すれ違いの結果が、そういうことになったわけやけど、間違った情報を知らされた男。ほんで、女は赤十字の調査部に依頼して、男の生死を調査してもろとったんやけど、不首尾に終わったとゆう経緯があります。

しかし、別の男と結婚し、大人になってる娘はんまでいてる女は、1976年のNYで、テレビのトーク番組に出てはる男の姿をテレビで見はります。不意に男への想いが蘇った彼女は、再び赤十字へ再調査を依頼しはるんどす。さてはて、その結果は一体、どないなるんか。ハラハラドキドキでお楽しみくだされ。

本作は何と実話がベースになっとります。実話系映画の系譜としても、面白い作品どした。ピアノとバイオリンのサントラとしての使い方も、哀愁感を増す作りでおました。

2012年8月 5日 (日)

高倉健さん主演最新作やー「あなたへ」

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かつての健さんの名作を、いくつも思い出させてくれはる渋い作品どす

オールド・ファンには堪らへん仕上がりになっとりまっせー

http://www.anatae.jp/

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葉月8月25日の土曜から、東宝はんの配給によりまして、全国イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012「あなたへ」製作委員会

高倉健さんてゆうたら、日本映画史に残る役者はんです。しかも、本作は健さんの過去の傑作を、思い出させてくれはるシーンが満載になっとります。ちゅうことで、ボクチンの健さんマイ・ベスト&カルト・スリーをば、勝手に披露いたします。

●ベスト⇒①冬の華(1978年製作)②八甲田山(1977年)③新幹線大爆破(1975年)*次点:幸福の黄色いハンカチ(1977年)

●カルト⇒①網走番外地シリーズ(特に第1弾・1965年~1973年・全18作)②本作③南極物語(1983年)*次点:飢餓海峡(1965年)

●個人的なことを言いますと、1970年代に学生時代を送ったボクにとって、ベストは完全にその時代のものになりました。若い時に見た映画が、その人の映画観を形成するとゆうのは、よく言われますが、ボクも完全にソレでおます。ええ大人になって、マスコミ試写室で見た「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)とか「ホタル」(2001年)もええんやけど、とにかく若い時分に見たケッサクは、その人の人生さえも左右しよります。「ブラック・レイン」(1989年・アメリカ映画)さえも外しとりま。

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でもって、本作のことへ。若い時に健さんにハマッてた方こそ、痺れる映画とゆうことになるんでしょうか。若い人もよく知ってはるビートたけしはんとか、SMAPのツヨポンとか出てるけど、基本は完全無欠なくらい健さんのための映画になっておます。

網走刑務所のカルト①みたいに、富山刑務所のシーンから始まるんやけど、健さんは囚人役かと思たら、刑務官の方やった。しかも、「鉄道員」みたいな帽子もかぶってはります。建さんは、妻(田中裕子はん・部分イロ付きセピア・カットの過去シーンやらがシブいわ)の、死んでからの手紙による遺言に基づいて、妻の遺骨を妻の故郷・長崎の海へと、散骨する旅にクルマに乗って出はります。

富山から長崎までのロードムービーでおます。健さんのその種の映画てゆうたら、北海道巡りのベスト・次点作やら、山巡りのベスト②もありますが、ロードムービーらしさは本作の方が、本格的やもしれまへん。

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いろんな人との出会いも、ロードムービーにはつきものやしお楽しみどす。「夜叉」(1985年)やらで、かつて共演した(田中裕子も)ビートたけしとの再会、サプライズある佐藤浩市との関係性では、佐藤のオトン三国連太郎と、刑事役として絡んだカルト・次点作を、裏読みで勝手に頭の中でリンクさせたりしました。

シリーズものは除き、健さん作品を最も多く撮ってはる降旗(ふるはた)康男監督とのキズナもカンジたし、建さんをたたえつつの演技性を、各演技陣が披露してはるのんが、モノゴッツー伝わってまいりました。

健さんと京都駅前で出会い、大阪で酒飲んで交流し、九州でも関わるツヨポンは、現地でしみじみと関わる余貴美子はんや、綾瀬はるかチャンより、かなりオイシー役でおました。

さてはて、建さんの集大成やなんてあんまし言いたくありまへんけども、少なくとも健さんリスペクトの、集大成やったかも分かりまへん。ともかく、オールド健さんファンには、泣ける映画やったんは間違いござりません。

2012年8月 4日 (土)

全米No1ヒットどす「THE GREY 凍える太陽」

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サバイバル映画でも、原点回帰しはったような作りでおます

ヒコーキ・パニックからの始まりもドッキリどすえ~

http://grey-kogoeru.com/

8月18日のサタデーから、ショウゲートはんの配給によりまして、全国ロードショーでおます。

関西やったら、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、アポロシネマ8、MOVIX京都、神戸国際松竹やらで上映どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2011 The Grey Film Holdings, LLC.

いつもながら唐突でおますが、サバイバル映画のマイ・ベスト&カルト・スリーをば披露いたします。

●ベスト⇒①エイリアン(1979年製作・アメリカ映画)②バトル・ロワイアル(2000年・日本)③八甲田山(1977年・日本)

●カルト⇒①プレデター(1987年・アメリカ)②十三人の刺客(1963年・日本)③本作③飛べ!フェニックス(1965年・アメリカ)

●最近のサバイバル映画とゆうのは、ベスト②みたいな設定系のゲーム・ノリであったり、ベスト①やカルト①のように、SF映画チックなんぞが多いように思います。ところが、本作は久々に、自然界におけるサバイバル映画へと回帰しはりました。サバイバル映画のルーツとも呼ぶべきこのスタイルは、ベスト③やらカルト③やらとリンクしよります。しかも、そのイントロ部を同率のカルト③のように、ヒコーキ・パニックから始めはります。ただ、砂漠やった「飛べ!」とは違い、本作は雪山や。

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砂漠にとどまりヒコーキをリペアすることに、集中しはった「飛べ!」やら、「生きてこそ」(1993年・アメリカ)みたいに、その場にとどまって救助を待つなんてのに対し、雪山をベスト③のように、ロードムービーしていくとゆうサバイバルどす。その道中では、オオカミとの対決が待っているとゆう、動物パニックも入れてはる凄まじさでおます。

人為的なヒコーキ・パニックから、大自然のオオカミ対決へと転じてゆくカンジやなんて、まあ、そないありまへんでおましょう。そのヒコーキ・パニック・シーンも、逆さまになり音声が途絶えての、リアリスティック極まる作りでいってはります。

撮り方やら細部の描写においても、いろんな新味を付加してはるんどす。近接撮影の臨場感やら、雪山の凄まじい風雪の効果音など3Dチックなビビッド感があったり、生き残った7人のロードムービーとゆうのんは、モチ、黒澤明「七人の侍」(1954年・日本)を嚆矢とする“7”にこだわったカンジ。

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チョイ言いまするに、サバイバル対象者の登場人物全員が、死亡してまうとゆうサバイバル映画は実は、コレまでにはござりません。カルト②もそんなカンジになりそうやったけど、少なくとも1人は生き残らせるとゆうのが、この種のサバイバルものの1つのルールのようになっとります。でもって、本作はどないやろか~。ネタバレは避けたいんやけど、トンデモないサプライズ・エンディングが待っておます。

さて、主人公役のリーアム・ニーソンはんやけど、終始逼迫し緊張感に満ちた演技をやってはります。イントロのリーアムはんの、意味深なナレーションからして、ドラマの中に引きずり込まれます。ほんで、とにもかくにも、ロードムービーの中でイロイロ出てくるアクション・シーン描写は、メッチャスリリングどす。

スコット兄弟の兄やん製作リドリー・スコット、弟はん製作総指揮トニー・スコットてゆうたら、ハリウッド映画の王道路線。ハリウッド映画らしい大作感に、酔える映画でおました。

2012年8月 3日 (金)

認知症描かはるニッポン映画『「わたし」の人生(みち) 我が命のタンゴ』

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オトンと娘はん役の、橋爪功はんと秋吉久美子ネーさんの、キズナ描写がメインどす

アルツハイマー映画で、九州地方ロケ映画でおます

http://www.watashinomichi.com/

葉月8月11日の土曜日から、ファントム・フィルムはんの配給によりまして、東京・シネスイッチ銀座やらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、8月25日土曜から梅田ガーデンシネマやら、109シネマズHAT神戸やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2012「わたし」の人生製作委員会

アルツハイマー映画とゆうのんは、これまでにもイロイロ出てきました。ただ、本作は内実が違っとります。フィクションとしての認知症映画やなくて、実際のエピソードをベースにしてはるだけやなく、ホンマモンのお医者はんの和田秀樹はんが、監督してはるっちゅう点でおましょうか。そやから、リアリティーはバチバチの作りでおます。

ただ、映画は1本監督しはったけど、医者監督なんで、チョイ演出ぶりやドラマ効果に、流れが淀んだりとかスムーズやないとこも確かにありました。でも、それらを演技陣がフォローしてはります。

オカンが死んでしもたシーンから始まるんやけど、教授のオトンはそれ以来、チカン、セクハラやら万引き、暴行をやってもうて、警察の厄介になり、ほんで病院へ行ったら、「前頭側頭型認知症」ちゅう診断を下されよります。

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こういう風に、単にアルツハイマーやなく、詳細な専門用語がリアリティーを作ってまいります。橋爪功はんが決して作らない、フツーのようなカンジでこの演技をばやらはります。不自然に見えるシーンも、自然体でやってまう橋爪はんは、ある意味で見事どす。

娘はんは2人いてはります。姉はん役は秋吉久美子ネーさんで、妹はん役は、タンゴ・シンガーで世界的に有名な冴木杏奈ネーさんどす。秋吉ネーは「透光の樹」(2004年製作)では、最後に記憶喪失になってしもたけど、今作では認知症=記憶喪失者のベタな介護側を、喜怒哀楽をもって演じてはります。写真4枚目の、橋爪はんと抱き合うシーンなど、かつての秋吉ネーのイメージとは違い、丸まって優しゅうおます。ほんで、妹はんの杏奈ネーどす。

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アルゼンチン・タンゴを踊ることが、認知症にええらしいっちゅうことで、タンゴを歌い踊り指導しはる役柄や。アニメ「グスコーブドリの伝記」(今年6月23日付けで分析)では、タンゴのシンボル楽器のバンドネオン(アコーディオンみたいな音色)が、妙にコンテンポラリーやったけど、こちらのタンゴはカヨー曲っぽくて、古っぽいイメージがあったけど、でも、コレはあくまで認知症に合わせた調子なんやろと思います。

ほんでもって、松原智恵子はん(写真2枚目の右・写真3枚目の赤ワンピース着てはる人)の、年老いてもアイドルチック・トーンでいってはるとこなんか、アラマやったかな。でも、最も意外やったんは、本作が北九州市ロケをやらはった点やろか。なんで北九州やったんかはよう分かりまへんが、地方ロケのイメージはそないないけども、普遍的でポピュラーな作品になっとるとこは、評価されるべきやもしれまへん。

2012年8月 2日 (木)

バラエティーなアンソロジー「セブン・デイズ・イン・ハバナ」やー

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キューバのハバナを舞台に、7話のイロンな話が満載でおます

各話のトンデモない映画作家性に、ぜひとも酔ってみておくんなまし

http://www.7dayshavana.com/

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8月4日のサタデーから、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷やら、8月18日からシネ・リーブル梅田、9月8日シネ・リーブル神戸などで、全国順グリのロードショーでおます。配給はアルシネテランはんです。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸFullHouse/MorenaFilms

オムニバス映画とゆうのんは、イロイロござります。テーマを設けずに漫然とやっとるのんもあるんやけど、9.11のテロなど、一つのコンセプトに基づいた話がポイントになっとるかと思いよります。

そんな中でも、一つの場所や都市を舞台にしたものやらもあります。ニューヨーク・東京・パリ・ロンドン・ローマなど、大がいは大都市をバックにしたもんが多いけど、本作はキューバの首都ハバナでおます。

ハバナてゆうたら、ロバート・レッドフォードが主演した、ハリウッドのリゾート・ラブ・ストーリー「ハバナ」(1990年製作・アメリカ映画)とかもあるけど、チェ・ゲバラの革命もんや、キューバ危機もん、それに、キューバ音楽映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年・ドイツ&アメリカ&フランス&キューバ)やらが熱うおました。ただ、本作はストレートな熱気よりも、自らの映画作家性を表現せんとする、各監督の個性があふれた作品集になっとります。

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マニアックな話に見えつつも、でも、まあ、イロンな話がござります。月曜から日曜までの7話でおまして、各作品は各監督が自由に撮ってはりますんで、物語的にシンクロナイズするようなとこはありまへん。

約1作にほかの作品に出てはる人も出るんやけど、あくまで各監督の作品性を見せるような作りになっとります。そやから、ビジターの話もあるんやけど、観光色よりも各作品が、どんなアート性を持ってるんかに、ボク的には目がいきよりました。

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全7作中のマイ・ベストスリーをばゆうてみますと…①エリア・スレイマン監督「初心者の日記」②フリオ・メデム「セシリアの誘惑」③ギャスパー・ノエ「儀式」でおましょうか。

かつてチェ・ゲバラ役もやった、ベニチオ・デル・トロ俳優監督作品は、あんましシマリはよくない作品やったし、傑作輩出度の高いエミール・クストリッツァ監督が、主演してはるドキュメンタリーな作品もエエんやけど、感動はそれほどなかったし、何か物足りない気もしよったな。

①はどうでもええことをどうでもええカンジで、描くセンスが秀逸やったわ。ジャック・タチ監督のセンスとかよりも、ワケ分からん節が妙にクセになる作品や。

②はセックス・シーンなんかも臆せずに出した、三角関係の恋愛映画。短い時間に凝縮された恋愛エンタ性は、格別やったと思います。

ギャスパー・ノエ監督による③は、全7作の中では、最もアート映画性を打ち出した作品やろか。セピアの照明により光と影を打ち出した、ダンス・シーンから呪術的お祓いシーンへの流れなど、その作為的なわざとらしい作りに、芸術的倒錯を垣間見た作品やったでー。

2012年8月 1日 (水)

「映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス/同時上映 おねがいマイメロディ 友&愛(ゆうアンドあい)」

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芦田愛菜ちゃんがプリンセス役声優をやり、主題歌を歌ってはりますぞな

夏休みにオコチャマ連れの家族一同で、見に行くべしアニメだす

http://jpet-movie.com/

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8月11日の土曜日から、東京・TOHOシネマズ渋谷やら、大阪・TOHOシネマズ梅田やらで、全国イッセーのロードショーでおます。

本作を配給しやはるのんは、東宝映像事業部はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ'08,'12 SANRIO/SEGA TOYS

Ⓒサンリオ・セガトイズ/ウィーヴ・映画ジュエルペット製作委員会

U10くらいのコドモ向け映画とゆうのは、実はそれほどござりません。家族一同で見に行っても、コドモたちだけがグズついたり、席を離れて遊んでたりしてる光景があったりしよります。でも、コレはそういう心配が、ほとんどないといってエエくらい、コドモ向けバチバチ、特に女の子に向いとるかと思います。

東宝アニメ・シリーズでゆうても、「ドラえもん」「ポケモン」「名探偵コナン」なんかよりも、コドモ年齢層は若干下やろか。また、洋画でも、ディズニーやドリームワークスには、そない多くないペット的アニメの、かわいらしさチューたら、コドモたちにはたまらんのやないでしょうか。

それに、スウィーツなお菓子で出来てる、国の造形ぶりや。チョコが流れ、ミルク川、キャンディー塔、ケーキ城、砂糖山、セピアな色彩のはちみつ湖…。

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全体的に薄色の配色ながらも、キャンディー・カラフルな色合いで、コドモたちの目に優しいでおましょう。リアル感ある夜のシーンも、柔和な感じは薄らいでおりません。

さてと、テレビ東京のアニメの、土曜朝9時からスタートの劇場版なんやけど、その時間帯からしてまさにピン・ポイントやし、芦田愛菜ちゃんの参加も、コドモたちには嬉しいハズやと思います。

プリンセス役の声を担当して、いつもの愛菜ちゃんそのものの雰囲気。ほんで、愛菜ちゃんが歌った、ポップ・ナンバーとダンス・ナンバーの、2タイプの曲が流れます。特筆すべきは、みんなで踊れるようなシミュレート・タイプの、ダンス・シーンが用意されとる点でおましょうか。

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実際にやったらどうかなとは思うんやけど、映画館で家族みんなで踊ろうやん! な楽しいノリが、そこにはござりますで。

さてはて問題は、大人たちも楽しめるかどうかなんどすけども、コドモには分からない“パワハラ”などのセリフやったりとか、“ぞな”や“だす”のオモロイ方言語尾やら、記憶喪失になってしもた、物を一気にに食べてまう少年ペットの、ナゾめきぶりやとか、イロイロ入っとります。

そして、1時間余の長編の前には、イントロ的に15分の短編「おねがいマイメロディ 友&愛」(写真上から3枚目)が映されよります。マイメロディちゃんとクロミちゃんの友愛的敵対関係を、ストレートに出さずにオブラートに包んだようなカンジで、ユニークに表現しはるとこなんか、大人的な作りやと申せましょうか。夏休みにふさわしいバーベキュー・シーンも、みんなで楽しめまっせ~。

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