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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2012年5月の記事

2012年5月31日 (木)

東日本大震災後を取り込んだ第2弾ドキュ「季節、めぐりそれぞれの居場所」

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要介護の老人たちらと介護側のキズナが、震災後を意識しつつも、癒やし系へと流れゆく作りが何気に良かったどすえ

前作に続く家族のドラマが、サプライズをもって伝えられよりま

http://www.kisetsumeguri.com/

6月9日の「ロックの日」の土曜日から、東風はんの配給によりまして、大阪・第七藝術劇場やらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ大宮映像製作所

介護される側と介護する側の、キズナを描いたドキュメンタリー「ただいま、それぞれの居場所」(2010年製作)の、その後を描かはった続編でおます。

但し、本作を撮ってる最中に、東日本大震災が発生しよりました。そないなりますと、最初の通りの流れで、ドキュとは申せ撮り続けることは、ためらわざるを得まへん。

実は、本作の監督はんの大宮浩一のアニキとしては、大震災による津波の被害と、それでも踏ん張って生き続ける人々を描いた「無常素描」(2011年)が、震災を撮った映画としては一番早く撮られ、ほんで、劇場公開もされたもんでおました。

それだけに、本作をどのようなタッチで撮り上げて、ボクたちの前に提示してくれはるんか、ある意味で期待しておりました。ドキュメンタリーに親しんではらへん人には、確かにその妙味は伝わらへんかもしれまへん。しかし、本作はテレビのドキュなどでは描けない、映画ドキュとしての威厳を示してはります。

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それはどうゆうことかと申しますと…。前作で描かはった、要介護の家族を抱えた人たちの話の、続編的ストーリー部を入れつつも、震災によってどないなっていったんかなどを、緊急に取り込みつつ、しかし、それでもなお癒やし系へと着地してゆくような作りが、スゴイと思いました。

ともすれば、震災部の切り込み部を突出させて、震災と介護の在り方なんてゆう異様な切り口で、オリジンを示すなんて方へ行ってしまいがちのとこを、あえて踏みとどまらはりました。

そのスタイルこそが、本作のオリジナリティーであり、潔いとこでおます。フツーなら、震災の方へ傾いてゆく作りになってしまうし、多くの震災入りドキュはほとんどがそうなんやけど、震災後の岩手と宮城ロケを敢行しつつも、あくまで震災とは無関係のキズナを、大切に撮り下ろしてゆく姿勢に、好感を覚えよりました。

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前作で描かれた姉妹の、要介護オトンと健常者オカンのその後の描写などには、サプライズがありつつも、姉妹のそれでも前向きに生きてゆくんだとゆうカンジとか、青森やら被災地への介護の在り方を、押しつけがましくなく描いてゆかはるとことか、いろんなホームの日常風景をそのまま映していったりと、そこかしこに見える癒やしのポイント描写が、見たあとあとにココロに染み入ってきよります。

切り込むような社会性がないと、不満を覚える人もいてはるかもしれまへんが、こういう作り方をしてゆく映画は、実はハードルの高いもんなんどすえ。殺伐とした今だからこそ、作りにくい素材やとも言えます。大震災を超えても、なおかつ確かに存在する癒やしのモードやキズナに、和んでほしい1本どす。

2012年5月30日 (水)

日韓合作映画「道-白磁の人-」どす

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吉沢悠とペ・スビンの各アニキが、友情を紡ぎますんやけど…

高橋伴明監督はんの実話もんには、イロイロあるんやけど…

http://hakujinohito.com/

6月9日の土曜日から、ティ・ジョイはんの配給によりまして、東京・新宿バルト9やら、スバル座、さらに関西やったら、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ西宮OSやらで、ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2012「道~白磁の人~」フィルムパートナーズ

日韓合作ものてゆうたら、21世紀になった最近は、イロイロ出てまいっておます。しかも、実在の人物の話を描くとゆうのんは、最近の映画界では定番っぽいような、ありきたりなカンジがしとるんやけど、本作はチョイと違っとりました。

1914年から始まり、1945年まで描くとなれば、みなはん、すぐになるほどなーって思わはることでしょう。第一次世界大戦が始まった年から、日本の敗戦の年までやから、その種の戦争映画をトレースしもってやってはるんかなと思いきや、かなり違っておました。

そもそも、戦争を描くとゆう視点では、同じ時代を描いとっても「マイウェイ 12,000キロの真実」(今年1月9日付けで分析)とは、真逆のようなカンジやねん。韓国の林業試験所のユニークさに加えて、そこで一緒に吉沢悠とペ・スビンの各アニキが、そんなにベタやないけどキズナを結ばはります。

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この2人のつながりは、当然ながら、本作のデッカイ肝になっとります。吉沢クンもスビン君も、フツーの自然体の演技をやりもって泣かしてくれはります。わざとらしいとこは、ほとんどござりまへんどした。

但し、この種のタイプでイロイロゆわれるのは、そやからどないやねんでおましょうか。確かに、地味なとこやったり、ぎこちないとこもあるんやけど、面会所での2人の向かい合いなど、ベタにやらないさりげなさで、あとあとグッとココロにクルような演出をば施してはります。

実話ものどすが、監督は実話ものをケッコー作ってきてはる、高橋伴明監督はんどす。

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実話の銀行事件「TATOO(刺青)あり」(1982年)やら、連合赤軍を視野に入れた問題作「光の雨」(2001年)やら、実話ノリの映画では、シビアでヘヴィーなとこをやってきはった高橋バンメイ(トモアキやけどバンメイが関係者の間では流通しとりま)監督なんやけど、本作ではある意味で穏やか路線どした。

西田敏行が扮した菊池寛を採り上げた作品もあったんやけど、ボク的にはあまりココロには刻まれとりまへん。実在の人物描きのスタイルに、出来不出来があるとゆうことなんやけど、本作について言わせてもらうなら、可もなく不可もないでおましょうか。

吉沢クンやスビン君よりも、最近の話題でゆうたらつい、塩谷瞬なんぞに目がいったりしよります。美術評論家役を大マジにやってはるんやけど、でも、韓流入りの映画「パッチギ!」(2004年)よりも、キバッてはるように思たんやけど、どないやろかな。

傑作とは診断できまへんけども、とにもかくにも、みんな、それなりに、楽しめる作品には、なっとるんやないでしょうか。

2012年5月29日 (火)

アメリカ・スペイン合作のロードムービー「星の旅人たち」

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オトンのマーティン・シーンはんが主演し、息子はんが監督しはった作品でおます

正統派ロードムービーのスタイルが、オーソドックスやけど徐々に感動を増していきよりま

http://www.hoshino-tabibito.com/

6月2日から東京でロードショー。ほんで、その後、関西やったら、6月9日からシネ・リーブル梅田、さらに6月16日からシネ・リーブル神戸など、全国順グリの上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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マーティン・シーンはんてゆうたら、ボクらの世代では「地獄の黙示録」(1979年製作・アメリカ映画)やらで、なり切り型のカッコヨサで見られた俳優はんどした。

ほんで、その息子はんには、オトンを抜く人気を得はった、次男チャーリー・シーンがいてはり、映画監督を志さはり本作を監督した、長男エミリオ・エステヴェスのアニキがいてはります。ほんで、本作はオトンとのコラボでは、第3作目となる作品でおます。

オトンとのコラボ作としては、ボクは初めて見ましたが、スペインとの合作ながら、かつてアメリカン・ムービーにあった、ロードムービーとしての映画魂を、ビビッドに強くカンジ入った作品どした。

ロードムービーのルーツは、アメリカ映画にあります。ラブ・ストーリーから、アメリカン・ニューシネマにあった男たちの絆ロード、ほんでもって、家族から仲間たちまで、アメリカとゆう国土が広いだけに、多彩に繰り出せる強みがござりました。

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ただ、本作はアメリカやなく、スペインの巡礼ロードどす。ロードムービー・スタイルとしての持っていき方としては、意図的かつ巧みどした。

4人みんなが、それぞれバラバラに聖地へ歩いてゆきながら、やがて4人が1つとなり、キズナを結んでゆく作りは、渋うてウマかったと思います。時に、わざとらしいとこもありつつも、各人のキャラに合わせた道行の在り方など、深みを持たせるための工夫が施されておったんで、これはこれまでにあった、漫然とロードするようなタイプの映画ではありまへん。

4人それぞれのトラブルやらいがみ合いなども、過不足なく描かれてまいります。そうして目的地へ向かって1つとなり、さらに、その後の強靭なるキズナぶりを示すサプライズなど、抜かりのない作りになっとりました。

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でも、こうすればこうできるなんてゆう、あざとさもカンジられて、すっきりマニュアル通りなとこが、不満足点といえばそうどした。けども、4人がホテルに泊まって、1人1人が集まって飲み合うシーンの自然な演出ぶりなど、キズナを自然体で描くシーンがメッチャ冴えておました。映画テーマの父子のキズナ以上に、仲間たちのキズナ感が際立った心地よい作品どす。

ジェイムズ・テイラーなどの歌ものサントラを流しつつ、ロングショットをメインにした省略カットが、タイトに映されてノリや映画リズムが良かったでおます。そう、例えば、そこには、アメリカン・ニューシネマの「イージー・ライダー」(1969年・アメリカ)のようなリズム感がありました。

ボクの私見としては、ロードムービーの新しめなとこを、さりげのう示してはるケッサクやったと思います。

2012年5月28日 (月)

19度目の映画化となった米英合作「ジェーン・エア」やー

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ヒロインと主人公のラブ・ストーリーを、古典的な正攻法で描かはった作品でおます

ジェーン・オースティン原作ヒロイン映画と、どこかリンクしとるやろか

http://janeeyre.gaga.ne.jp

ジューン6月2日サタデーから、ギャガはんの配給によりまして、全国ロードショーどす。

関西やったら、大阪ステーションシティシネマ、京都・TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸やらで上映でおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸRUBY FILMS(JANE EYRE)LTD/THE BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2011. ALL RIGHTS RESERVED.

何とまあー、19回目となる、シャーロット・ブロンテのネーさんの小説の映画化でおます。妹はんのエミリー・ブロンテはんも作家やってはったけど、妹はんの「嵐が丘」も大概の回数で映画化されておますけども、それをば完全に上回っておます。

共にラブ・ストーリーなんやけど、妹はんがチョイ複雑系をやってはるのに対し、ネーさんはあくまで正攻法どす。そんな素材を、原作にほぼ忠実に描かれたのが本作でおます。

冒頭のヒロインの、どこかから逃げるシーンが、ラスト20分で戻ってきよりますが、基本的には意図したようなカットバックは使わずに、ヒロインの物語はストレートに綴られてまいります。

しかも、19世紀前半の時代考証にこだわって、いかにも古っぽい作りでいってはります。でも、時代感を示すセピアっぽい、フィルターなんかは入れずに撮ってはるんどす。節電もでけへん電気のない時代に合わせ、夜のランプだけで、映画的照明はあんまし入れてはりまへん。

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薄色作りな仕上げで、昼間の自然光をうまく取り込んではります。ホールや部屋内に入る陽光使いも、キラリとした発光的なカンジで取り入れて、グッとシックな感がござります。写真一番下のような、自然描写のロングショットなども多数あり、目に優しゅう入ってまいります。

ヒロイン役は、「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年製作・アメリカ映画)でチャキチャキ少女を演じ、「キッズ・オールライト」(2010年・アメリカ)では思春期のナイーヴ感を表現しはった、ミア・ワシコウスカちゃんどす。

今回では、笑わない系の冷静沈着なヒロインとゆう、これまでに見せてはらへん顔を表現しました。ほんで、今さらながらのシブミを見せはる、大ベテランのジュディ・デンチはんや、「SHAME-シェイム-」(今年3月5日付けで分析)に通じるニヒル感も時おり見せはる、マイケル・ファスベンダーのアニキらと堂々と絡まはります。

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ヒロイン映画としての造形ぶりは、やはりブロンテ姉妹の祖国イギリスの作家ジェーン・オースティンと、シンクロナイズするようなとこがござりました。「いつか晴れた日に」(1995年・アメリカ)や「エマ」(1996年・イギリス)や「プライドと偏見」(2005年・イギリス)やらの、ヒロインのタッチが入っておます。

さらにゆうたら、「眺めのいい部屋」(1986年・イギリス)を始めとしたジェームズ・アイヴォリー監督作品、本作の原作の影響がカンジられる、ヒッチコックの「レベッカ」(1940年・アメリカ)なども、関連作としてはハズせまへん。

過去の18本の作品は、すんまへんけども、全部見れてへんねんけど、最近、オーソン・ウェルズとジョーン・フォンテーン主演の分(1944年・アメリカ・モノクロ)をVHSで見ました。

それに比べると、本作はやや作りは軽くはなりましたけども、でも、当然21世紀のリメイクらしい華やかさがあって、きっと若い方に遡及できるでおましょう。デート・ムービーとしては、最適の仕上がりやと思いますえ~。

2012年5月27日 (日)

連続テレビドラマの映画版「映画 ホタルノヒカリ」窓の雪どす

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「ローマの休日」的シーン(写真1枚目&2枚目)を盛り付けた、イタリア・ロケーションをカンコウ(敢行or観光)しはりました

テレビの2クールドラマを経て、こんなヘンな夫婦映画ができましたで~

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http://www.himono-movie.jp/

6月9日の「ロックの日」の土曜日から、東宝はんの配給によりまして、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012「映画 ホタルノヒカリ」製作委員会

コミック原作に加え、連続テレビドラマの映画版とゆうスタイルの映画でおます。テレビが台頭した1960年代頃のかつては、映画とテレビと申せば、犬猿の仲にありました。

なんでかてゆうたら、テレビの普及で映画が斜陽化してしもたからどす。黒澤明監督などは、「テレビ俳優」を蔑視する発言もやってはりました。でも今や、昔のイガミ今いずこってなカンジで、特に日本では、テレビドラマの劇場版が活発化し、大ヒットするんが定石となっとります。もちろん、その嚆矢はアメリカどすが、今はアメリカ以上にバチバチになっとります。日本に侵攻しとる韓流ドラマでも、そないなことはほとんどやってはりまへん。

ちゅうことで、このテレビドラマの劇場版の、マイ・ベスト&カルト・スリーをば突然炎のごとく、披露させてもらいまっさー。

●ベスト⇒①踊る大捜査線 THE MOVIE(1998年製作・日本映画)②ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間(1992年・アメリカ)③裏切りのサーカス(今年4月19日付けで分析)

●カルト⇒①七人の刑事(1963年・日本)②Xファイル ザ・ムービー(1998年・アメリカ)③本作

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今でゆうたら、アメリカの「セックス・アンド・ザ・シティ」やら、日本のトレンディー・ドラマから恋愛映画などが出てきておますが、この劇場版で最も多いのが、従来は刑事ドラマをメインにした、ミステリーものでおました。日本の最初となるカルト①など、完璧な刑事もんどす。

しかし、今はミステリーもあるんやけど、日本の場合はミステリー以外ものが圧倒的に多くなっとりまして、本作なんかはその好例と言えるんやないやろか。コメディであり、夫婦ものであり、恋愛ものどす。

しかも、海外ロケ、イタリア・ローマ・ロケを、当たり前のようにやってはります。本作は日テレ製作なんやけど、フジテレビやら、海外ロケをドカーンとやってはる映画が、次々に出てまいっとります。でも、ローマに来ても、夫婦の生活スタイルが相変わらず日本と一緒や、とゆうのんも、コメディ・ノリを超えて、インパクトがあったかと思いよりま。

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食って寝てゴロゴロの“干物女”ぶり。縁側で夫妻2人で、缶ビール飲んでのゴロゴロ調子。それをばローマにまで持ち込んで、バカやってはります。まあ、松雪泰子のネーさんのシリアスなとこが、それをば中和しとるんやけど、ヤッパ、干物女役の綾瀬はるかチャンと、大マジの藤木直人のアニキの夫妻が繰り出す、ボケとツッコミの絡み合いは、テレビドラマ以上に健在でおます。

「のだめカンタービレ」の上野樹里と玉木宏の関係を、思い出させはりますし、ついそのコンビ・プレーを比較してみたくなったりしよります。「ぶちょお~」やら「バキュ~ン」やらには、身を退きたくなるようなとこもありますが、コメディエンヌとしての、はるかチャンのバクレツぶりは特注もんやと思いました。

「ローマの休日」(1953年・アメリカ)にトリビュートしたようなシーンとか、ラストで示される「ティファニーで朝食を」(1961年・アメリカ)の主題歌「ムーン・リヴァー」の、昨日分析した「RIVER」との使い方の違いとか、なぜオードリー・ヘプバーンを意識するねんのポイントが、映画的ではなく観光的な視点であったりする点が、少々ムムム…やったけど、これもコメディやから許されるんやろなと、何とか許容範囲でおました。グロリア・ゲイナーの70'sディスコティーク・ナンバーの使い方も、ノレる仕上がりになっとります。

2012年5月26日 (土)

社会派ヒロイン映画の問題作「RIVER」

秋葉原無差別殺傷事件から東日本大震災まで、人災から天災までを採り入れた衝撃にグラグラきよります

それでも、あたしは生きるヒロインに、蓮佛美沙子チャンが悩ましげに扮しはりました

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http://www.river-movie.com/

6月16日の土曜日から、ギャンビットはんとトラヴィスはんの配給によりまして、大阪・第七藝術劇場にて、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2011 ギャンビット

秋葉原無差別殺傷事件の被害者の関係者の、その後を描いた映画どす。彼氏を事件で失った彼女(蓮佛美沙子チャン)は、毎週、埼玉からアキバへと出てきはって、うろつかはります。

いきなりアキバを歩き続けるヒロインの移動撮影をば、13分にわたる長回し撮影にて見せはります。アキバはこの事件が起きる前は、AKB48を輩出したように、開かれたフリーキーな町どした。それが事件以来、様変わりしてしもた。

事件から数年後の様子から始まるんやけど、救急車の音とかの事件の実況的な音を、ヒロインの耳鳴り的に入れて展開したりして、今も続く事件の後遺症を意図的に作ろうとしはります。

監督はヒロイン映画の名手・廣木隆一監督のアニキや。寺島しのぶネーさんや鈴木杏チャンを丸裸にしたり、蒼井優チャンや榮倉奈々チャンやらの、半ばアイドル・ノリのヒロイン映画も作ったりと、まさに硬軟両用でヒロイン映画へとアプローチしてはります。そして、本作では、蓮佛美沙子チャンでおます。

リメイク版「犬神家の一族」(2007年製作)やら、同じくリメイク版「転校生 さよならあなた」(2007年)で、共に同じ監督による、セルフ・リメイク作に出はりましたけども、イマイチボクの印象は稀薄でおました。その理由は、弱々しさやったり、監督の言う通りに演じて、いわばキャラをなぞるような、演技ぶりやったからやないやろか。

でも、本作は全然違いよりました。弱々しさを演じるにしても、自然体とゆうか、恋人を殺されて、何年も傷心の中にいてる人間像を、あくまで目立つことなく演技してはります。1度見ただけでは、よう分からへんかもしれまへん。それほど控えめにやってはるゆえなんやけど、2度見たらクルんやないやろか。リピートして、その悩ましさがカンジられるとゆう、奥の深い演技であり、廣木監督の演出ぶりやと思います。

そして、本作を作っている時に、東日本大震災が起こったんでおましょう。最初の台本通りに撮っていたんを、急遽、大震災を取り込まはりました。たがために、映画のバランス感が崩れて、本編の後半はグラついとります。でも、そのグラグラ感こそが、本編にでっかいアクセントを、刻んではるんも事実としてあります。

アキバの電気屋店頭でヒロインが、テレビに映る大震災の衝撃を見てから以降の展開は、それまでの路上ライブ・ミュージシャンとの交流、ヒロインのメイド・バイト体験などの流れを一気に破壊します。手持ちカメラを持って、大震災の被災地をゆくカットなど、前半と後半が話が分離してるようにも見えよります。つまり、ヒロイン・ドラマから、被災家族がいる主人公のドラマへと、スライドしてゆくようなカンジでおましょうか。

このヒロインと主人公が、強引に船出してゆこうとする決着部は、ハテナ・マークどしたけども、「ティファニーで朝食を」(1961年製作・アメリカ映画)の主題歌「Moon River」の、女性ソロ・アーティストmegによる、癒やしをキモにしたカヴァーに、そのハテナは、いつの間にか消えよりました。

最後に、個人的には、アップもそれなりに多い蓮佛チャンに、グッと魅せられた映画でおましたえ。

2012年5月25日 (金)

ホラー・モキュメンタリーの怪作品やー「グレイヴ・エンカウンターズ」

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悪魔系やなく、日本ホラーに多い人の恨み節でやらはった、アメリカン映画でおます

暗視ビデオ映像やらのザラ付き感が、不安感を倍加しはります

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http://www.graveencounters.jp/

ジューン6月1日のフライデーから、アルバトロス・フィルムはんの配給によりまして、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズやら、シネマサンシャイン池袋やらで、全国ロードショーでおます。

関西やったら、大阪・TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、京都・TOHOシネマズ二条やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 DIGITAL INTERFELENCE PRODUCTIONS INC, and TWIN ENGINE FILMS LTD.

モキュメンタリーとゆうのんは、ドキュメンタリーに見せかけはったドラマ映画でおます。

実は、今年になってからでも、「POV」(今年2月16日付けで分析)「トロール・ハンター」(今年3月21日付け)やらを、ボクは分析・解析しております。ほんでもって、モキュメントで採り上げられる、ジャンルのメインにありますのんは実は、ホラー映画なんどすえ。

とゆうのは、“本当にあったこんな話”には、怖い話がイチバンヤーやからなんどすわ。実話の人間ドラマなら、ドラマ映画そのものでゆうのがセオリーやし、そのほかのパロディやコメディも、ドキュ手法やとオモロサが半減したりしよります。でも、まあ、その種の映画でモキュを目指したら、新たな映画地平が切り拓かれるやもしれまへんが、とにかく、現在の主流はホラーもんどす。

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ほんで、撮影設定どすけども、テレビ番組での取材を強調してはりまして、映画ではないことをゆわはります。このあたりから、意図的どす。わざとらしさも見え隠れするんやけど、いろんな人へのインタビューやらで、ドキュメンタリー度を最初に示して、幽霊が出よるらしい元精神病院の、一夜の泊まり込み取材に撮影クルーが入らはります。

ほんでもって、クルー5人のサバイバル・ムービーの、始まり始まりとなりよります。髪を幽霊に触られるささいなことから、徐々にヒートアップ、エスカレートしてゆくんやけど、みんながパニクッてゆく演出や流れは、少々ありきたりかなとも思たんやけど、建物が仮想メイズになったり、窓なしの空間で時間の流れが遮断されたりと、SF的設定が突如現れたりして、ウーンと唸ることとなりました。

リアル感のない、いろんな人の死もクエスチョンやったけど、この種のネタギレぎみの館ホラーでは、大健闘してはるかと思います。

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しかも、悪魔系のホラーが多いアメリカ映画において、貞子「ザ・リング」(2002年製作・アメリカ映画)のリメイクの先例はあるけども、日本ホラーみたいに、人の恨み節をポイントにして描かれるホラーは、稀少価値があるんやないでしょうか。

スクリーン横倒しの転倒カットやら、ゴタゴタの何が何やら分からへんカットの連続に、不安感が増長してまいります。暗視ビデオ映像の薄グリーンのザラ付いた映像と、手持ちカメラのカラー部をマゼコゼにして、みんなを恐怖の世界へと、何としても引きずり込まんとしはります。写真4枚目が5枚目になるVFX部など、チャッチーそうやけど、この流れでゆくとドッキリ度は高(たこ)うおます。

そして、あるところから、いつの間にか、出演者の撮るカメラ視点が、カメラを撮っていないシーンへと変転していっとります。つまり、ドラマ視点へと変わっとるんどす。

「これで、家に帰れる」とゆう、ブラック・ユーモアに満ちたラストシーンも含めて、モキュメントの新しい方向性を打ち出してはるような、妙に刺激的な1本どした。

2012年5月24日 (木)

こんな高校生スパイ映画「ミッシングID」やでー

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学園ものから突然、アクション映画へと転換してまいります

主人公テイラー・ロートナー君やけど「ミッション:インポッシブル」のトム・クルーズか、はたまた「ボーン」シリーズのマット・デイモンか、どっちやー?

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http://missing-id.gaga.ne.jp/

6月1日のフライデーから、ギャガはんの配給によりまして、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹やらで、全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2011 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

学園映画のノリが突然変異したみたいに、スパイ・アクション映画へと強引に変転してゆく、トンデモあれへん映画でおます。

主演してはんのは、全米で大ヒットした「トワイライト」シリーズ(2007年~2012年製作・アメリカ映画)に、狼人間のメイン・キャストで出てはる、テイラー・ロートナー君でありま。

高校生役なんやけど、スパイのオトンの血を引き継いで、やんごとなくその世界へと入ってゆくことと相なります。ところどころ、「ミッション:インポッシブル」シリーズ(1996年~2011年・アメリカ)のトム・クルーズやったり、「ボーン」シリーズ(2002年~2008年・アメリカ)のマット・デイモンやったりを思い出させはります。

自分が何者なんかを究明する点では「ボーン」やろうし、アクション・シーンやったら、トム・クルーズのタッチがメインやろけど、結局、混合系とゆうようなカンジでありま。

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学園もの映画なノリから始まりまして、そん時には、ハードロックやら歌ものサントラが機嫌よう流れとったんやけど、アクション・シーンになってからはそれが封印され、攻撃的なインスト・サウンドをバックに、次々にアクション・シーンを展開しはります。このあたりの流れは、学園ものからアクション映画へと唐突に変転するスタイルに対して、説得力を持たせ、しかも観客に活劇に集中してもらう意図を持っておます。

アクション・シーンの見どころは、ボク的には約3ポインツどした。

①学園ものからアクションへと切り換わるターニング・ポイント部。主人公のオカンの突然の格闘アクトから、銃撃戦を経て、家が大バクハツしてまう衝撃のシーン。

②列車内アクション・シーン。これまでに腐るほど出てるシークエンスやけど、無難なんてゆうたらアレやけど、スティーブン・セガール映画よりは、人間臭くてリアルやったと思います。

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③クライマックスの、野球スタジアムでのバーサスやー。写真一番下のガラス窓天井滑りの、ジャッキー・チェンまがいのアクトから、走っての追逃走劇に興奮できましたで。

ちゅうことで、脇役陣へと目を転じてみよりますと、ナンチューてもシガニー・ウィーヴァーはんに目がゆきよります。セラピストの精神科医役から入り、カー・アクションで魅せ、ラストでもサプライズを見せてくれはるシガニーはん。久々にドッキリさせてくれはったんやないやろか。

主人公のお相手役ヒロイン、ジェネシスのフィル・コリンズはんの娘はん、リリー・コリンズちゃん。お父ちゃんはボクの大好きなミュージシャンどす。サントラでは使われてへんかったけど、でも、オトンのイメージが全くないリリーちゃんの、清々しい演技にはココロが洗われました。

シリーズ化で見てみたくなるような、そんな映画やったと思います。

2012年5月23日 (水)

記憶喪失系ラブ・ストーリーのアメリカン映画「君への誓い」

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手垢の付きまくった記憶喪失系映画に、果たして未来はあるんやろか~

古典的とも言えるラスト・シークエンスの渋みに、“未来はある”とボクチンは答えよります!

http://www.kimi-chikai.jp/

6月1日のフライデーから、ソニー・ピクチャーズはんの配給によりまして、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、神戸国際松竹、OSシネマズミント神戸やらで、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

記憶喪失系映画とゆうのんは、それなりにいっぱいござります。しかし、それをラブ・ストーリーに限定した場合はどないでしょうか。それでも、サスペンス系やアルツハイマー系よりも、多いように思いよりました。

そこで、チョイ、記憶喪失恋愛もののマイ・ベスト&カルト・スリーをば、唐突に披露いたします。

●ベスト⇒①かくも長き不在(1960年製作・フランス映画)②私の頭の中の消しゴム(2004年・韓国)③心の旅路(1942年・アメリカ)●カルト⇒①本作②アイリス(2001年・イギリス)③きみに読む物語(2004年・アメリカ)ってなカンジやろか。

モチ、ボクチンが見た中でチョイスしとりますんで、未見の分についてケッサクがあるようどしたら、ぜひとも、みなはん、教えてくだされ。

本作をカルトの1位にしたんは、手垢の付きまくっとる記憶喪失もんに、新たな側面を入れてはるとこでおました。そのポイントは約3ポインツやろか。

①カルト②やらのように実話系なんやけど、本作はそれが有名人やなく、フツーの人たちである点。

②夫が記憶を失くした妻に、再びアタックしていくラブ・ストーリー性の斬新さ。愛を取り戻すスタイルとしては、かつてない設定になっとるかと思います。

③この種の映画では珍しく、スローやらもあるけどポップ・ナンバーを中心に、歌ものサントラを次々に流してはります。しかも、ラストロールで流れる、ザ・キュアーのキャッチーなポップロックなど、メッチャ明るうおます。暗みを明るさで覆った上に、ハッピー・エンドへとつなげてゆくような作りは、かつてないカンジなんとちゃうやろか。

本作の監督らは、ヒットした「追憶」(1973年・アメリカ)やら「ある愛の詩」(1970年・アメリカ)やらのアメリカン・ラブ・ストーリーを研究し、本作に反映しようとしはったそうどす。その応用の跡は取りあえずは、うかがえるような作りにはなっとるかとは思います。

でも、ボクチンが最もココロにきたんは、ラストシーン及びラスト・シークエンスどした。恋愛映画の古典的とも言える設定にも関わらず、この種のシーンに感動を覚えるのは、それが普遍的な男女の恋愛の在り方を、示してはるからやろと思います。

手に触れることによって相手が認める、チャップリンの「街の灯」(1931年・アメリカ)やら、地上で見知らぬ2人として再会する「天国から来たチャンピオン」(1978年・アメリカ)やら、友達から始めようとゆう「トッツィー」(1982年・アメリカ)やらみたいに、本作は恋愛映画のシメに、深き余韻を残そうとする想いが、存分に伝わってくるような映画なんどすえ~。

とゆうことで、久々に見た、アメリカン・ラブ・ストーリーの会心作でおました。

2012年5月22日 (火)

アレクサンドル・ソクーロフ監督の新作「ファウスト」どす

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第68回ヴェネチア国際映画祭で、最高賞の金獅子賞をゲットや~

ワケ分からへん、ファウストとメフィストフェレスの絡み合い具合に、気が狂いそうになりましたでー

http://www.cetera.co.jp/faust

ジューン6月2日のサタデーから、セテラ・インターナショナルはんの配給によりまして、東京・シネスイッチ銀座、大阪・梅田ガーデンシネマやらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、その後、7月7日から京都シネマ、7月14日から神戸アートビレッジセンターやらで上映しはります。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 Proline-Film, Stiftung fur Film-und Medienforderung, St. Petersburg, Filmforderung, Russland Alle Rechte sind geschutzt

みなはん、ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督て、知ってはりまっしゃろか。

20世紀の怪人3部作、ヒトラー「モレク神」(1999年製作・ロシア&ドイツ&日本合作)、レーニン「牡牛座 レーニンの肖像」(2001年・ロシア)、昭和天皇「太陽」(2005年・ロシア&日本)を始め、映画史上最長のワンカット長回し映画「エルミタージュ幻想」(2002年・ロシア&ドイツ&日本)やら、映画作家としての才能を遺憾なく発揮してはります。

ほんでもって、本作はゲーテの文学「ファウスト」を原作にしながらも、シンプルな人間関係ドラマやのに、ワケ分からへん理解不能の、哲学的ドラマを紡いではります。文学作家トーマス・マンの最高傑作「魔の山」を読んだ時みたいな、見てると気が狂いそうになるようなとこもござりました。

当然、本作は「魔の山」を視野に入れてはるし、クライマックス部なんか、見ていて嘔吐感を覚えた、ピエロ・パオロ・パゾリーニ監督の「アポロンの地獄」(1967年・イタリア)なんぞを思い出しよりました。

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ああ、一体全体、このグラグラしたカンジの実体は、何なのでおましょうか。まずは、主人公ファウスト博士と助手のワーグナー(あの音楽家やと思てくだされ)の、絡みから始まりま。人体実験やって、人造人間作りをやってる異様なシーンなど、ホームズ&ワトソンのようなコンビ性のようでいながら、この2人のエピソードから変でおます。

ほんで、ファウストと悪魔のメフィストフェレスが出会いよります。この出会いシーンは斜めカットやらユガミ映像やらで幻想感を出してはります。さらに、ヒロインとの絡みによって、博士は何とも言われへんような、三角関係チックなとこへとさまよわはります。さらに、メフィストとのトンデモない絡み合いの連続から、人生がどうのたら、神や悪についての哲学的な話をし続ける、道行へと出はります。

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めまいが起こってきそうな、近接撮影が仕込まれとります。その一方で、男女2人のサイレントなクローズアップの使い方など、往年のハリウッド映画まがいのカットがあったり…。

イントロのダークな配色、その後の白っぽい映像に加え、薄グリーン、薄ブルー・トーン、ひび割れたような荒野感の造形ぶりやらの絵作り感。

さらに、本編に差し障りのないような、オーケストラ・サウンドのサントラ使いが、ラストロールでは大音量でやって盛大に余韻をあおったりと、ビミョーなとこで映画作家性をそれとなくアピールしてはります。

そして、クライマックスでは最大限にワケ分からん感を出して、ボクたちに挑戦してきはります。ソクーロフ監督作品としては、これまでのキャリアで、最も芸術映画性を出さはった作品やと思います。

その?(ハテナ)感に酔えなくても、酔いしれてるフリをして、映画館をあとにしましょうや~。なんてな。

2012年5月21日 (月)

ペドロ・アルモドバル監督とアントニオ・バンデラス主演の「私が、生きる肌」

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異様型のヒッチコック・バージョンとなった、トンデモ・ミステリー映画でおます

「フランケンシュタイン」「他人の顔」「レベッカ」「パラサイト・イヴ」「めまい」「サイコ」やらの要素が入っとりま

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http://www.theskinilivein-movie.jp/

5月26日のサタデーから、ブロードメディア・スタジオはんの配給によりまして、東京・TOHOシネマズ シャンテ、シネマライズやらで、6月2日のサタデーから、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OSやらで全国順グリのロードショーでおます。ほんで、本作は「R-15+」指定映画どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸPhoto by Jose Haro O El Deseo

フランスのミステリー小説が原作となった、スペイン映画でおます。フランスの推理小説てゆうたら、日米のミステリーとは異質なとこがござります。完全犯罪を描いた「わらの女」(1956年発表)を始め、記述ミステリーの元祖「シンデレラの罠」(1962年)やら、トンデモ密室ミステリー「第四の扉」(1984年)やら、クセものが揃っておます。

そやから本作も、トリックも設定もストーリー展開も、これまでのミステリー方程式を、外さはった作りになっとります。ペドロ・アルモドバル監督作品やけど、彼はケッコー、ミステリアスなタッチをビミョーに仕込まはるような映画を、志向してはるように見えよります。過去を見ると、オカンの謎を仕込んだ「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999年製作・スペイン映画)しかり、意識不明状態をポイントにした「トーク・トゥ・ハー」(2002年・スペイン)、ほんで、前作「抱擁のかけら」(2010年1月30日付けで分析)も極上の仕上がりぶりどした。

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一方、映画的にもミステリー映画としては、異能型を示してはります。ヒッチコック監督サスペンスを変形型で応用してゆくとゆう以外に、多彩な作品と変形風にリンクしてゆくような違和感も、カンジさせはる特殊な作りになっとるようどす。

あわてふためきました。とゆうのは、こういう常に不安感をカンジさせはるような映画とゆうのんは、そんなにないんでおますよ。それだけに、映画で異様感やら、何とも言えへんぎこちなさ感を味わいたい方には、ピッタリの映画になっとるかと思います。

見出しに書きよりましたけども、真っ当系のミステリー・サスペンス映画で、リンクする作品は多うござります。書いた中では、「他人の顔」(1966年製作・日本)だけがレンタルDVD化されとりませんどして、みんな見られへんので解説しよりますと、ケロイドで顔がメタメタになってもうた主人公が、仮面を作ってでんな、ほんで顔も変わってんのに、自分の妻とやっちゃうとゆうユニークな設定でおました。結局、ソレって不倫やはな。

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アントニオ・バンデラスのアニキが、タブーとなる遺伝子実験を人でやってはりまして、1人の女を拉致監禁して、好き放題でおます。でもって、エレナ・アナヤのネーさんがやらはる、この女性なんやけど、皮膚色ボディ・ストッキングを付けさせられて、ヌード・シーンだけやなく、セックス・シーンが次々に披露されてまいりますとなれば、男にしてみたらメッチャ嬉しい(!?)とこなんやけど、決してそうともなりまへん。期待してんのに、裏切られるようなことになるやも分かりまへん。

途中から本作の舞台の2012年から、6年前へとシーンが転移していくんやけど、それまでも異様やったんやけど、実はそこからが本作の異様感的キモとなるメイン・シーンの、始まり始まりなんでおますよ。三角関係から始まって、妻娘の悲劇を経た主人公の、トンデモないリベンジ劇が展開してまいります。

この主人公に扮したアントニオ・バンデラスのアニキやけど、キャリア最高の複雑奇怪な演技をばやってはります。この夢にまで出てきそうな演技ぶりには脱帽どした。監督共に、最高傑作となった作品やと思います。

2012年5月20日 (日)

壮絶な実話映画「11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」

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井浦新(ARATA改め)らの、完全無欠のなり切り型演技に、背筋が凍り付きましたがな

昭和映画でもタブーとされたとこを、容赦なく描くノリにガツーンとやられま

http://www.wakamatsukoji.org/

6月2日の土曜日から、若松プロダクションはんとスコーレ株式会社はんの配給によりまして、全国順グリの封切りでおます。関西やったら、テアトル梅田、第七藝術劇場、京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで上映どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ若松プロダクション

三島由紀夫の実話を描くとなれば、ナンチューても、1970年の11月25日に割腹自殺した衝撃の大事件を、採り上げんことにはどもなりまへん。

これまでにも映画化の話はあったんやろけど、コレを描くのは、一種タブー視されとるようなとこがあったように思います。憲法の「戦争の放棄」を無視して、自衛隊を鼓舞し国内テロを推進する三島の方法論は、当時も今もトンデモない話なんでおます。

コレを映画化すればいろんな物議をかもし、問題作にはなるやろけど、どないなんでしょうか。負のポイントは、三島の心理でおましょうか。三島原作・自作自演監督までした「憂国」(1966年製作・東宝ビデオよりDVD発売中)では、この事件のシミュレーションまで見せてはりました。彼の思いはホンマ、ハンパやなかったんでおますよ。その激烈な思いが、痛いほどにボクたちのココロを激しく打ちます。

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この事件当時は、ピンク映画を撮っていた若松孝二監督はんが、渾身の映画化に挑まはりました。

実話人間ドラマ映画にして、昭和映画でおます。若松監督的には本作は、「実録・連合赤軍」(2008年)、本作にも出てはる寺島しのぶのネーさんを、ベルリン国際映画祭主演女優賞に導いた「キャタピラー」(2010年)と併せて、昭和3部作ちゅう位置付けをしてはります。

若松映画の昭和映画は、これまでいっぱい出てきてる昭和映画とは、一線を画する重厚感がござります。1960年~1970年ものに限定しても、「フラガール」(2006年)やら、当時作られた「家族」(1970年)などと比べても、ズシンとココロにクル重みは格段に違いよりました。

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ほんでもって、ヤッパ凄いのんは、三島になり切った井浦新のアニキの演技ぶりどした。このあと分析予定の「かぞくのくに」でも、今年の邦画主演男優賞級の演技をば披露してはりますが、抑制系の演技を示した「かぞくのくに」に対し、本作は押しのエキセントリックな演技を見せてはります。

聴衆側はニュース映像のみで映さずに、三島の問題の演説シーンを、長回しの撮影で強烈に映したり、モチ、切腹シーンの緊張感などもオトロシーくらいでおました。

そして、そのシーンへ向かうまでの、細部の描写にも抜かりはござりまへん。特に、ボクが印象的やったんは、ライトバンに乗って決行するみんなが「唐獅子牡丹」を歌いもって、現場へ向かうシーンどした。この歌は高倉健が主演し、ワルをヤッツケに行くシーンがキモになっとった「昭和残侠伝」シリーズ(1965年~1972年)の主題歌どした。クライマックスまでの道筋にイロイロある、当時の時代背景描写にも、注目してもらいたい1本でおます。

2012年5月19日 (土)

日本のスパイ映画「外事警察 その男に騙されるな」

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2009年NHKオンエア分の、後編劇場版でおます

個性味あふれる渡部篤郎のアニキを始め、最も難しそうな役柄の真木よう子、フツーっぽい尾野真千子の各ネーさんやらも特注どすえ~

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http://www.gaiji-movie.jp/

6月2日の土曜日から、東映はんとS・D・Pはんの配給で、東映系劇場で全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012「外事警察」製作委員会

NHKで2009年にオンエアされた放送分の、後編が劇場版となって登場したんが本作でおます。なんで後編は映画版なんかは、よう分かりまへん。ただ、後編は東日本大震災後の逼迫した状況での、丁々発止のスパイ戦を描いてはります。

テレビの劇場版はこれまでに多数作られておますが、NHKはんはそれほどかしましゅうはありまへんどしたけども、最近は頻繁にやってはります。これもなんでかはようわかりまへん。

但し、その作りは明らかに、民放の劇場版とは異にしておます。そこにあるのんは、中途半端やなく徹底的ってヤツどす。リーマン・コメディでも時代ものでも、緻密に深く取材されたもんがベースにありま。国民に合わせた良質作っぽいイメージをくつがえすような雰囲気はウ~ン、ええカンジやと思います。

「ハゲタカ」(2009年製作)もそうやったけど、本作はサスペンス映画とゆう範疇に入るもんでおます。でも、民放の二時間ドラマみたいに軽うはありまへん。重とうて、ほんで辛口どす。でも、複雑系やなく、分かりやすうおますえ。

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スパイ映画はみなはん、見はったことはあるやろとは思いますが、本作は日本の警察の実際にある部署の、対外国をメインにした極秘活動をば、リアルに描いてはります。CIAものやら「ミッション:インポッシブル」やら「007」なアクションものやらのイメージとは少し違い、まあ、ゆうてみたら、静謐なスパイ映画「裏切りのサーカス」(今年4月19日付けで分析)みたいなカンジやろか。

演技陣たちが、ハンパやない熱演をばやってはります。主演はミッション部隊のリーダーとなる渡部篤郎のアニキどす。織田裕二のアニキが演じはったフジテレビの黒田外交官役と、つい比較したりして見てもうたりしたんやけど、織田裕二のスマート感とは違い、硬軟を兼ねた、微妙で複雑な演技ぶりをば披露しはります。

しかも、みんなの分からんとこで、いろんな工作や仕掛けをやってまうという、まさにこれぞスパイやん! っちゅう役どころどすえ。いろんなサプライズを見せてくれはりますんで、お楽しみくだされ。

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しかし、ナンチューても、本作の一大ポイント演技は、真木よう子のネーさんにあります。コレは本作に出てはる役者陣の中では、最も難しい演技だと申せましょう。

写真2枚目は冒頭の、韓国サイドのシーンでおます。謎めいたイントロは、ラストの方で種明かしはされますが、よう子ネーさんが、否応ことなしに日本スパイに協力して、イロイロやらはるシーンのドッキリ感は、そらモー手に汗握る緊張感の連続でおました。韓国を標的にした北朝鮮側の田中泯はんとの、クライマックスでのやり取りでは、一時的に泣かせてくれはりました。

その一方で、渡部アニキのアシスタント的役をやらはった、尾野真千子のネーさんにも好感を覚えました。NHKの朝ドラ「カーネーション」のタッチやなく、「クライマーズ・ハイ」(2008年)で見せはった、フツーっぽいけど真面目な女スパイ役は、本作にソフィースケイトされたアクセントを加えてはるようどした。ほんで、よう子ネーさんと真千子ネーさんの、ラスト近くの公園での会話なんか、モノゴッツーなサプライズやったしな~。

前編を見ていなくても、充分なケッサクになっとった不思議な1本どした。

2012年5月18日 (金)

ポップでライトな女性群像劇「ガール」どす

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香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏の各ネーさんのシーンをバランスよく描かはりました

「セックス・アンド・ザ・シティ」のジャパニーズ版とも取れまっせー

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http://www.girl-movie.jp/

皐月5月26日の土曜日から、東宝はんの配給によりまして、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012“GIRL”Movie Project

この種のタイプの映画を分析するのんは、分析するまでもあれへん、今の邦画の方程式に則ったもんでおます。テレビ局(ちなみに本作はTBS)が映画製作に参加するヤツやし、このタイプの今や王道系の東宝配給もんやし。

たぶんヒットするやろな~なんやけど、でも、ボクだけやなく、多彩にいてはる映画評論家のみなはんにしても、ケッコー引っ掛かりやら、つい見逃せへんとこが、随所にあるような作品に、なっとるんやないかなとも思いよります。

ボクの勝手な感想をゆうてみたら、1980年代の斉藤由貴主演の東宝系映画とか、「どっちにするの。」(1989年製作)「いこか・もどろか」(1988年)とかのセンスが濃厚やったと思います。モチ、昨年の東宝映画「モテキ」なんかの、ポップでライトなノリが満載どす。こういう明るく楽しくみんなでパッと見られる映画とゆうのんは、今の日本には欠かせない作品なんやないやろかな。

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各女優陣の演技性に加え、脇役の男性陣、ほんで深川栄洋監督の作品性についても、つい論じてみたくなりました。作品全体に流れる明るさとゆうのんは、はっきりゆうて、本作もコメディやけど、コメディ・シリーズもんよりも際立ち、ある種のオリジンを見せてはります。そこには、「寅さん」も「釣りバカ」もいてへんような、映画風景が紡がれとるんどす。

4人の女性群像スタイルやけど、4人の誰かに偏ることなく、バランス良くエピソードを紡いでまいります。マジ・コメディエンヌっぽいカンジの演技や。役者の個性に合わせはったような演出ぶりの深川監督は、おそらくみんなの自由に任せてはるんやろな。各人の個性が際立つような各人の演技ぶりに、全てが集約されとるようどす。まさに向井理的演技な向井おさむチャ~ンみたいなんを始め、トンデモ2面性で見せはる檀れいのネーさんやらに、ドッキリコンでおます。

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「セックス・アンド・ザ・シティ」(2008年・アメリカ)な女4人の、なんだかんだ系はあるんやけど、本作はもっと日本人の生き方にフォーカスして、日本のみなはんの共感を呼ぶような作りになっとります。

クライマックスは、広告代理店の百貨店イベントに携わる香果奈ネーさんと、商業施設の設計デザインのプレゼンをする、麻生久美子ネーさんのエピソードが、カットバック的に描かれてまいります。女はみんないくつになってもガールなんだという視点は、男が女にコビてるような視点にも見えましたが、あくまで女性側からの視点どす。そして、そういう視点の映画は、少なくとも邦画には、これまでになかったとボクは思うんどす。

女性の自立を描いた映画はソラ、モノゴッツーあるんやけど、コレはそういうテーマ性をグーンと、超えたとこに存在するような映画やと思いました。映画的に素晴らしいかどうかよりも、男としては、21世紀的な日本女性のたくましさと美しさに、魅せられてしもた1本やったです。

2012年5月17日 (木)

オンナたちの韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」

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男たちの「友へ、チング」とは違い、女たちの友情は途中はチョイ暗くても、最後は明るおまっせー

2011年現代(写真上)と1986年高校時代(写真2枚目)が、バランスよく展開しよります

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http://www.sunny-movie.com/

皐月5月19日の土曜日から、CJ Entertainment Japanはんの配給によりまして、東京・Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町やらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、5月26日サタデーから、梅田ブルク7、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

時を越えた女たちの友情を、描かはった韓国映画でおます。ほんでもって、それがまさにストレートな直球勝負で描かれよります。

オカンが入院してる病院で、偶然ヒロインは、かつて高校時代に一緒にグループを組んで、イロイロ悪さやって友情を結んだ女友達と出会わはります。でも、友達は余命いくばくもない末期ガン(本作の設定は2カ月)に罹ってはります。

友は死ぬまでに、かつての仲間たちに会いたいとゆわはりまして、主婦ヒロインがその依頼に応えて、動かはるっちゅう展開どす。しかも、友は独身やけど事業で成功してはって、調査費用やらも出さはります。

そしてでんな、2011年の現在のエピソードと、1986年の学園時代のエピソードがリンクしながら、カットバックされてゆきよります。マイナス・ポイントがありながらも、お話はスムーズか強引かは分からずとも、とりあえず進んでまいります。

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負のポイントは約3ポイントほどありま。

①偶然から始める必要性はどこにもありまへん。

②病系映画の流れの新味を、入れたかどうかは疑問やけど、なぜ死期迫るシチュエートの人間をあえて入れるんか。

③1986年から2011年の間は25年もあります。その間は一体どないやったんかが、全く描かれてへん点。しかも、女チームが卒業後、なんでバラバラになったんかも不明どす。

これらのポイントは、現代と過去をつなぐ映画の難しさを示してはります。もちろん、現代と過去のその間も過不足なく描かれれば、それなりに納得もゆくでおましょう。その間25年。でも、現代と過去は別やとゆう視点もありまへん。つながっているとこを強調しもって、強引にハッピー・エンドへともってゆこうとしはります。

実は、もっと練り込んで作れば、スゴイ作品になった1本なんです。当時と現在のエピソードを、トリッキーにつなげていく作りなんかは見事どすしな。

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男たちの友情を描いた傑作「友へ、チング」(2001年製作・韓国映画)は、コドモ時代も描いて、あくまで年代順に間を入れずに紡いではりました。それだけに、重厚感やリアル感や説得力が、本作とは違ってたかと思います。

でも、ボクチンが本作に目を奪われたのは、高校時代の描写どした。権利の問題もあるんか、ちょっとしか流れへん、シンディ・ローパーのスロー・ナンバー「タイム・アフター・タイム」やら、ミュンヘン・ディスコなセンスがあるボニーMの「サニー」などの、当時を懐かしめる音楽が流れるからやありません。

チグハグなとこもあるんやけど、青春映画のフリーキーさに魅せられました。特に、女チーム2組が、学生と機動隊の争いに合わせて対決する、スロー入りのアクロバティックなシークエンスや。ココは何とも強烈至極どしたえ~。

結論をゆうたら、ゴリゴリの映画ファンにはどうやろかて思たんやけど、韓流ドラマにハマッてはる方には、ハッピー・エンドも含めまして、明るくなれるオモロイ映画になっとるんかもしれまへん。

2012年5月16日 (水)

ゴースト人情コメディ韓国映画「ハロー!?ゴースト」

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チャ・テヒョンのアニキが、取り憑かれてしもた4人4様のなり切り演技をばやらはりました

「猟奇的な彼女」以上に、うっとうしおます4人を果たして祓えるんでおましょうか

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http://www.hello-ghost.com/

ツインはんの配給によりまして、ジューン6月9日サタデーから、東京・新宿武蔵野館やらで、6月30日から、大阪・シネマート心斎橋やらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 Water n Tree Pictures & Next Entertainment World Inc. All Rights Reserved.

ゴースト映画のマイ・ベスト&カルト・スリーをば、久々にチョイ披露してみますわ。思いつきのままにやってみましたんで、つい見逃しとる作品もあるやも分かりまへんが、ご容赦くだされ。

●ベスト⇒①ゴースト ニューヨークの幻(1990年製作・アメリカ映画)②天国から来たチャンピオン(1978年・アメリカ)③居酒屋ゆうれい(1994年・日本)

●カルト⇒①椿山課長の7日間(2006年・日本)②アダムスファミリー(1991年・アメリカ)③本作③星願・あなたにもういちど(1999年・香港)どすか。

「星願」がロマンス・カルトなら、本作はコメディ・カルトやろと思います。しかも、共にキズナ入りの、感動のサプライズを取り込んではります。そして、ベスト②やカルト①③「星願」のように、死んだ主人公が戻ってくるパターンやら、ベスト①みたいに、死んで現世を生きてるタイプやなく、本作はあくまでベスト③カルト②の幽霊タイプどして、しかも、特定の人に取り憑きモードが入っとります。

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チャ・テヒョンのアニキが、トンデモ・コメディアン演技ぶりをば披露してはります。冒頭からさっそく、クスリ飲んで死のうとしはりますが、死のうとしてもなかなか死ねない男をやってはりま。

ほんで、臨死体験をしたことで、死者4人に取り憑かれはりまして、写真1枚目のようにオンブにダッコな、背後霊状態にならはります。しかも、この4人のそれぞれになった設定での、演技を披露せなあきまへん。ずーっと泣いてる女、アル中の老人、タバコ・スパスパのおっさん、甘いもの好きのガキ。

酒もタバコもやらず、甘いものも好きやないチャ・テヒョンが、ナレートで文句を言いもって、それらをなり切り型で、絶妙に演じ分けはりまんねん。霊媒師に相談したところ、各人のやりたいことを心おきなくやらせれば、彼らは天国へ帰るだろうとの診断に、彼は大マジに取り組まはるんどすえ~。

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そんな1人1人になり切って要望をかなえてやっているうちに、とあるホスピスで、看護師の彼女カン・イェウォンのネーさんと、運命の出会いをしやはるっちゅう展開どす。

「猟奇的な彼女」(2001年・韓国)でのラブ・コメディアンとしての才能が、さらにバージョン・アップしとります。ともすると、やり過ぎなんとちゃあうん? なとこもあったけど、そのやり過ぎ部も含めて、本作のでっかいサプライズの、伏線になっとるんが、えらいうまいやんと思いました。

やり残したことに関し、4人共が、生き残ってる家族と会いたいとは誰も言いよりまへん。ボクは見ていてアレ? なんて思とったんやけど、逆にこういうなんは、まあ、まずないんで新鮮かなと思たんやけど、それがなんとまあー、コレでんがなっちゅうことになりました。

ウルトラ伏線やったんどすえ~。サプライズから感動へとゆう映画は多いんやけど、コレには正直ヤラレました。大げさかもしれへんけど、「シックス・センス」(1999年・アメリカ)のサプライズを思い出したくらいどす。ウ~ン、予想できへんかったんで悔しいおますけど、とにかくオモロイ!

2012年5月15日 (火)

大阪&韓国ロケの地球終末映画「大阪のうさぎたち」

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“世の中しまいやねん”映画は、実は作りやすい素材やけど…

問題は“終”へ持っていくまでのプロセスなんやけど、本作はどないでっしゃろか?

ジューン6月30日サタデーから、和エンタテインメントはんの配給によりまして、大阪のシネ・ヌーヴォやらでロードショーでおます。本作は韓国と日本の合作映画どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

人類・地球が終わってしまうちゅう映画とゆうのんは、ポイント的にはSF映画であり、ブラック・ユーモアな色合いがメインとして、付きまとってくるような素材でおました。

「渚にて」(1959年製作・アメリカ映画)「博士の異常な愛情」(1963年・イギリス)「太陽を盗んだ男」(1979年・日本)などの過去の作品に共通するのは、原爆・水爆により人類滅亡とゆう、戦争兵器によって滅亡パターンが主流やったんですが、最近では異常気象、新型ウイルスなどの終末映画傾向が出てまいっておます。

但し、コレらはパニック映画のように、大作系ハリウッド映画に多かったんですが、ところがどっこい、インディーズ系の映画でも、不条理系ドラマとして機能できるんでおます。

でも、問題はクライマックスやエンディングではなく、どのようにして物語を紡いでゆくか。そのプロセスにこそ、見どころがあるんやないかなと、ボクは勝手に思とります。

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ここ1年の間に見た映画では、兵器系の「アジアの純真」(昨年10月10日付けで分析)、原因不明のウイルスによる「生きてるものはいないのか」(今年2月22日付けで分析)などがオモロかったし、リーダビリティー(観客を引き付けるパワー)も良かったどす。

さて、ほな、本作はどないやったでしょうか。こちらは不条理ものでも、フツーのように展開するので、終末世界観はそれほど逼迫しとりませんが、なんとかイロイロとやってはります。

最初は韓国サイドから始まりますが、その後大阪が主舞台となります。影絵的カット、逆光による版画的カット、寒色の薄ブルー照明を取り入れたクローズアップ、照明を排した夜のシーン作り、後半に展開する暗闇の中の2人のツーショット、「昔の光、今いずこ」と歌われる滝廉太郎「荒城の月」の暗み、黄色い夕景やら痩せた細い三日月など、ダーク感を感じさせるシーンを、意図的に大盛りに取り込んではります。

終わりまでの残り時間数が字幕で出てまいりますが、世界が終わってからの作りも大爆発やない、インディーズ映画らしいアート映画ノリでシメてはります。

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昨年の大阪アジアン映画祭に参加してる最中に、タイトにロケして作り上げたそうどすが、ヤッツケ仕事作りなカンジはありまへんどした。製作者で主演もしてはる杉野希妃のネーさんには、「歓待」(昨年3月15日付け)の時に話を聞き、「マジック&ロス」(昨年3月17日付け)なんかをこれまでに分析してまいりました。

彼女は「インディーズ映画だから」なんて、控えめにゆうてはりましたけども、低予算のインディーズ映画に、こだわりと愛着を持ってはるんでおましょう。ホンマやったら、日本の大手の映画でアイドルチックに、ドカーンとやってもええのになあと思いますけども…。

さてはて、肝心の彼女の演技性はどないなもんでおましょうか。よーく見ましたけども、あくまで自然体で冷静どす。もっと弾けたり、バカやったり、激したりしてもええんやろけど、本作と過去の2作を見ても、そんなにやってはりまへん。でも、案外、コメディエンヌ演技が合ってはったりしてな。ちゅうか、ぜひそういうのんを、ボクは見てみたいなと思いよりました。製作作品も含めまして、もっと遊んで弾けてバクハツして、おバカなことをやっておくんなまし。

2012年5月14日 (月)

社会派ヒロイン・ドラマのイギリス映画の問題作「オレンジと太陽」

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イギリスの児童移民の問題を、映画史上初めて採り上げはりました

ケン・ローチ監督の息子はん、ジム・ローチの初監督作品でおます

http://www.oranges-movie.com/

MAY5月19日SATURDAYから、ムヴィオラはんの配給によりまして、大阪・梅田ガーデンシネマやら京都シネマやらで、全国順グリのロードショーどすえ。

本作はオーストラリアとの合作となったイギリス映画どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸSixteen Midlands(Oranges)Ltd Pty Ltd/See-Saw Films Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation 2010

ソーシャル・ワーカーのヒロインが、社会問題を究明してゆかはるサスペンス・タッチの作品でおます。

その追及される問題とは、1970年頃まであったらしい児童移民の問題どす。政府公認のもと、イギリスは施設に預けられたコドモたちを、親の許可を得ずにでんな、オーストラリアへと送ってはりました。ほんで、現地で労働させられ虐待まで受けてはったんどすえ。メチャクチャやん。

そんなんを1986年になって、そんなコドモが大人になってイギリスに戻り、ヒロインに「私は誰?」と迫らはった結果、ヒロインが調べて、その実態がゆっくりと明らかになってまいるのでおます。

名匠ケン・ローチ監督の息子はんのジム・ローチのアニキが、初メガホンをば執らはりました。でも、初監督なだけに、描き方に少々ぎこちないとこがあります。そのマイナス・ポイントを、あえて言いよりますと…。

①スリリングなサスペンス演出でいくのではなく、どちらかといえば散文的なカンジや。そやから、リーダビリティー(観客を引っ張ってゆくパワー)がイマイチになっとるような気がしました。でも、まあ、社会派ドラマ的には渋滞感は、重みを増すんでエエかとは思いよります。

②「冬の小鳥」(2009年製作・韓国&フランス合作)みたいにコドモ視点で描かはったら、ノリやすかったと思うんやけど、大人のヒロイン視点は、ハリウッド映画に多いその種の作品を想起させ、またそれらの作品以上のパワーがカンジられまへんどした。

それでも、ヒロイン役エミリー・ワトソンのネーさんが、ストレート演技をメインにしながらも、妨害やらトラウマに悩みもって調査するっちゅう、複雑な演技性を出そうと気張ってはります。

また、バイプレーヤーも強力でおました。「マトリックス」3部作シリーズで有名な、イギリス男優ヒューゴ・ウィーヴィングのアニキが「マトリックス」とは全く違う、人間臭い演技を披露。「ロード・オブ・ザ・リング」が出世作となった、オーストラリア男優デイヴィッド・ウェナムのアニキも同様の力演ぶりどした。

③イギリス・サイドとオーストラリア・サイドの描き分けが、少々ファジーやったかも。まあ、これは場面転換の問題やろけど、わざとやってはるようなとこもありました。映画作家性を出す意味において、ある種の実験をやらはったんかも分かりまへん。キレるロングショットやら、クレーンを使ったカットやらも冴えておましたし。

ちゅうことで、出来の巧拙は別にいたしまして、コドモ虐待の話を新視点から捉えはった問題作やと思います。

2012年5月13日 (日)

ディズニーの良質ミュージカル「ザ・マペッツ」

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1970年代に全米テレビで大ブレイクした、マペッツたちが現代に復活したでー

ミュージカル映画史を俯瞰するみたいな、ノリノリのお気楽タッチがたまりまへんで~

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http://www.disney.jp/muppets/

MAY5月19日SATURDAYから、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズやら、大阪・TOHOシネマズなんば、京都・TOHOシネマズ二条、兵庫県・TOHOシネマズ西宮OSやらで、全国ロードショーでおます。

本作の配給は、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンはんどすえ。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2011 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

マペットの複数形マペッツゆうたら、まあ、人形たちどす。しかも、写真のようにでんな、ディズニーらしい動物たちのマペッツが大集合して、歌って踊ってをやらはります。カエル人形のカーミットを始め、1950年代の全米テレビに登場し、その後、1970年代後半にバラエティ番組「マペット・ショー」で大ブレイクしはりました。

本作は、今やショービズ界から身を退いた彼らが、1人のヒト型のマペット少年の熱意で、仲間を探すロードを経て再び集まり、ドカーンとショーやらミュージカルやらを、やらはるっちゅう趣向になっとります。

人形に生まれた少年の兄貴分、ジョイソン・シーゲルのアニキは人間はんどして、そんな弟をサポートしはるんどす。ほんで、兄の彼女のエイミー・アダムスちゃんも、このお気楽な流れにノラはります。そして、かつての殿堂マペット・スタジオを買い占めて、その地下に眠る石油を狙う、石油王役クリス・クーパーはんの野望を、みんなで阻止せんとキバラはるんどすえ。

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ミュージカル映画がイマイチピリッとしない現代においてでんな、俳優はんもやらはるけど、こうした人形たちをメインにミュージカルを展開するやなんて、マジッすかーやったけど、でも、コレがメッチャ本格的なんでアラマ・ポテチン(ビックリ)どした。

しかも、ミュージカル映画史を、ベタやなくそれとなく俯瞰する作りをば、やってはるんも好感を覚えよりました。

マペッツがやる復活ショーでは、1930年代~1940年代のビッグ・バンドチックなアメリカン・ミュージカルのタッチがあったり、特にショーのクライマックスで披露される歌は、「オズの魔法使」(1939年製作・アメリカ映画)で歌われた「オーバー・ザ・レインボー」へのアンサー・ソングになっとりました。映画の最初の方、兄弟で踊って歌ってマペット・ランドへ行くシークエンスは、ポジティブで明るい1950~1960年代のタッチ。例えば、「ハロー・ドーリー!」(1969年・アメリカ)みたいな楽しさがござります。

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四囲を電飾仕様にして、エイミー・アダムスちゃんが歌う「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年・アメリカ)みたいな、70'Sディスコティークなダンサブル・ナンバー。ビルボードNo.1になった、スターシップのキャッチーなノリノリのロック「シスコはロック・シティ」に乗って、マペッツがホールをそうじするタイトなカットやら。

さらに、今年のアカデミー賞で主題歌賞をゲットした、兄弟が歌い合う、人間かマペットかと自分に問いかける、ピアノ・メロディアス・スロー・ナンバーがググッとココロにきよりました。

クリス・クーパーはんもオフィスで、今どきのヒップホップに乗ってダンスを見せはります。マペッツに拉致される、実名で登場のジャック・ブラックのアニキやらも、この映画出演をココロから楽しんではるような雰囲気が、充分に伝わってまいりました。そんなこんなでボク的には、久々にミュージカルの面白さを、堪能できた作品やったと思います。

2012年5月12日 (土)

東映アニメの最新版「虹色ほたる~永遠の夏休み~」

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現代から1977年へタイムスリップする、夏休みの思い出アニメの快作や~

「サマーウォーズ」「河童のクゥと夏休み」やらとの違いとは?

http://www.nijiirohotaru.com/

皐月5月19日の土曜日から、東映はんの配給によりまして、全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション

東映アニメーションてゆうたら、みなはんのイメージはどないでっしゃろか。オールド世代は“東映春のアニメまつり”とかを思い出さはるやろけど、若い人らはどうやろかな。

ディズニーやスタジオジブリやらは別にして、アニメを映画会社で見はるような人はそないいてはらへんやろな。そやから、「ワンピース」シリーズや「ふたりはプリキュア」シリーズやらが、東映アニメやなんて意識してはらへんでおましょう。いわゆる日本のアニメ映画界では、元祖となる存在なんどすえ。

最近は「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」「ポケットモンスター」やらの東宝配給アニメ作品が幅を利かせてはるけども、東映アニメもお忘れなきよう、なんどすわ。そして、本作は東映アニメが作る少年・少女ものとして、出色の仕上がりになっとります。

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タイムスリップ系、地方色昭和映画のノリ、ほんで夏休み映画とゆうノリ。でもって、少年たちの友情とラブ・ストーリー。少年・少女ものには欠かせないオーソドックスな作りが、ジーンとココロや胸やらにきよります。

近未来タイムスリップなら「時をかける少女」(アニメ版は2006年製作)がござりますが、こちらは現代から昭和の1977年の夏休みへと、少年主人公がスリップしはります。

しかも、地方の美しい風景も挿入されとります。島ものの美風景「ももへの手紙」(今年4月1日付けで分析)に対し、こちらは山ものどす。緑の美風景以外に、夜のホタルのシーンなどが、何度も登場してまいります。それも「火垂るの墓」(1988年)みたいなブルージーな使い方やなく、メッチャ前向きやし、スリップしてへんけど1960年代やった「コクリコ坂から」(2011年)のラブ・ストーリーより、よりファンタジー色が増しております。

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夏休みを描くアニメっちゅうたら、これまでにケッコーござりました。21世紀になってからでさえ、「河童のクゥと夏休み」(2007年)やら「サマーウォーズ」(2009年)やらのケッサクが出現しておます。それらの作品との違いは、河童やデジタル世界とゆう架空のものを取り入れずに、あくまで現実的なホタルをキモにしてはるとこでおましょうか。

古っぽい作りに見えながらも、今だからこそ新鮮やとも思えます。手書きアニメの感触が、ある意味で目に優しゅうおました。粒子の粗さとか、CGにはないぎこちない動きの懐かしさやったり、ほっこりきよります。

写真3枚目の少年2人の別れのシーンやら、二つの死を乗り越えた男女2人の感動的な未来シーンを、ラスト・シーンにもってきたりと、泣きの要素も入っとります。

また、「時をかける少女」の主題歌を思い出させてくれはる、松任谷由実ユーミンのネーさんの、1980年代的なニューミュージック「愛と遠い日の未来へ」も、ラストロールに流れて、余韻を深めてくれはりましたどすえ~。

2012年5月11日 (金)

アメリカを舞台にした韓国映画「レイト・オータム」どす

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韓国俳優ヒョンビンのアニキと、中国女優タン・ウェイちゃんが主演しはったラブ・ストーリーや

期間限定の恋愛仕様は、静かな展開で進みますで~

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http://www.sumomo.co.jp/lateautumn/

5月12日のサタデーから、スプリングハズカムはんの配給によりまして、大阪・第七藝術劇場でロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2009 Boram Entertainment Inc. All Rights Reserved

1970年に製作された、韓国映画「晩秋」のリメイク版でおます。1970年当時といえば、韓国映画は日本には入ってこないとゆう事情がござりました。

ほんでもって、ボクチンは未だに見れていないとゆう現状なんやけど、今回、アメリカと香港の出資を得まして韓国映画としてリメイクされておます。

も、元ネタを海外で見はった斎藤耕一監督が、それをヒントに1972年に「約束」とゆう映画をば撮らはったんどすえ。いわゆる、パクリってヤツなんやけど、萩原健一ショーケンはんと岸恵子はんが主演してはりました。ボクチンはそっちの方は見ておりますんで、本作をそれと比較して見るような次第になりました。

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本作は、韓国のヒョンビンのアニキと、中国のタン・ウェイちゃんが共演しはりました。韓国映画や韓流ドラマに出てはるらしいんやけど、ヒョンビンの演技はボクは初めて見ました。「アメリカン・ジゴロ」(1980年製作・アメリカ映画)のリチャード・ギアみたいな男ホスト役なんやけど、ショーケンみたいなクセのある演技やありまへん。

外見的にはオダギリ ジョー的なとこもあったけど、プレイボーイ的を自然体でこなしているような感じどすか。アメリカ・シアトルを舞台にした、この変型恋愛映画の中では、それはスムーズに見えるやもしれまへん。

一方、タン・ウェイちゃんやけど、当時の岸恵子より若いし、女囚人役やてゆうても、そういうヨゴレな色合いがほとんどござりまへん。セクシャル過ぎてもクールやった「ラスト、コーション」(2007年・中国&香港)の演技性とほとんど変わらへんかと思います。クール・ビューティーの際立った演技をやってはりまして、若いオトコのコのファンを獲得しそうな雰囲気をキープしてはります。

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オリジナルを見てへんので、何とも言えませんが、傑作と言ってもええ「約束」に比べて本作は、ヒネろうとしつつも静かな展開で、シュールなエンディングもあったりと、ストレートさのない中途半端なアート感が、ドラマの流れを削ぐようなとこがあったように思います。

もっと正攻法で分かりやすく作った方が、ポピュラリティーも増すんやろけどな。いかにも外装は韓国チックなラブ・ストーリーのように見えよるけど、韓流ドラマ好きな方には、合わへんような作り方をしてはるやもしれまへん。

期間限定の恋愛ものとしては、つい悪い代表として、キアヌ・リーヴスとシャーリズ・セロン共演の「スウィート・ノベンバー」(2001年・アメリカ)を思い出したりするんやけど、実はそっちもリメイクでおました。そやけど、余韻や疑問を残す恋愛映画としてのサムシングは、「スウィート・ノベンバー」より上やとジャッジいたします。

2012年5月10日 (木)

15分10本の5本2パターン上映の短編映画集「NoNameFilms」

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名前はない(NoName)ちゅうても、全10本にタイトルはちゃんとありまっせー

全ての作品が15分の低予算の中、オリジナリティーを主張する、怪作・奇作・快作・問題作・時にケッサクどすえ~

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http://nonamefilms2011.com/

5月12日サタデーから5月18日フライデーまで、午後8時30分から1日1回、大阪・十三の第七藝術劇場にて、レイトショーをばやらはります。

Aプラン5本、Bプラン5本の、1回上映分は、2パターンのどちらかでの上映どすんで、ご注意あそばせなはれ。上映プランは劇場まで。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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若手の無名の監督たちによる、15分10本のショートショート・フィルム集でおます。無名とゆうコトバはボクは個人的には嫌いどして、みんな名前があるし、各10本の映画にもタイトルはあるし、どおゆうことやねんって思たりもします。

映画の公式ホームページを見よりますと、結局ナンチューの、大ヒットしたり有名な映画とは真逆とゆう意味での無名どした。映画の出来について論じるんやなく、メジャー&インディーズの違いを今さらのように論じても、ボクとしては、未来のない意味のないことやと思います。

もっと各映画についての、映画史上における新しきオリジナリティーなとこをば、ドカーンとゆうてほしいんやけどな。モチ、ボクにそれができるとはとても申しまへんけども、15分の制約でも、金はなくとも、こんな斬新な映画ができるんやでーとゆうとこを、取りあえずいっぺんやってみましょか。文字数も無限批評やないんで、1本あたりは少なめなんやけど。

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●Aプラン

①「日曜大工のすすめ」⇒日曜大工の日常性と、大工道具を使った殺人幻想を混在させはった、ブラックな「サイコ」(1960年製作・アメリカ映画)な1本。

②「遠くはなれて」⇒いきなりのロングショット2分くらいの長回し。紅葉のロングショット・シーンには「第三の男」(1949年・イギリス)のラスト的な、遠近感もカンジよったかな。ああ、大げさや。

③「トビラを開くのは誰?」(写真3枚目)⇒「-×-」(今年5月3日付けで分析)の伊月肇監督作。少年もの映画の幻想作。長編なら「ブリキの太鼓」(1978年・西ドイツ&ポーランド&フランス)にもなったかもな。ホンマかいな。

④「ニューキッズオンザゲリラ」(写真2枚目)⇒タクシードライバー役の柄本佑クン主演やけど、ゲイ・ドラマの新味か。

⑤「バーニングハーツ」(写真4枚目)⇒長回し移動撮影による、1対多人数の乱闘シーンが強烈や。こういうシーンこそ今のハリウッド大作で、取り入れてほしいシーンやと思うんやけどな~。

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●Bプラン

①「ぬくぬくの木」⇒有名俳優も出とるけど、小野ゆり子ちゃんのアイドル性がキラリや。ぬいぐるみの供養は「オテサーネク」(2000年・チェコ)やらの引用やけどな。

②「路上」⇒アメリカン家族の日本への、トンデルビジターぶりをモノクロで描く。「男はつらいよ」な喜劇性を感じた1本や。え~ホンマなん?

③「わたしたちがうたうとき」⇒少女2人のビミョーなキモチや。少女友情ものでも、ラストの長回し2分くらいの設定と演出ぶりは、新しいんやないやろか。

④「閑古鳥が泣いてたら」(写真1枚目)⇒ウエイトレス役の前田亜季チャンと、ユニークなキャラの喫茶店主が絡む変型人情コメ。並木道をチャリンコで、2人乗って遠ざかるラストシーンは印象的どす。

⑤「ふたつのウーテル」(写真5枚目)⇒異母姉弟の交流映画どす。長編でこそ映える素材やけど、ロードムービー部を拡大してやったら、脚本・演出次第ではケッサクになること間違いなしやろと思いまっせー。やなんて、どやろか~。

2012年5月 9日 (水)

幸せ検証ドキュメンタリー「happy しあわせを探すあなたへ」

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世界各国の幸福度合いをイロイロ分析しはります

ある種の癒やし映画とも取れる仕上がり具合どす

http://www.happyrevolution.net/

MAY5月12日SATURDAYから、東京・渋谷アップリンクやらにて、全国順グリのロードショーでおます。

本作のアメリカ映画をば配給しやはるのんは、ユナイテッドピープルはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

5大陸にわたる世界の各国へと取材ロケーションをば、敢行しはりましたドキュメンタリー映画でおます。しかも、群像ドキュ・タッチにして検証ドキュ、ほんで癒やし系の映画へも着地しはるグッド・ドキュどす。

まあ、ゆうてみたら、「ゆきゆきて、神軍」(1987年製作・日本映画)やら「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年・カナダ)やらの、攻撃的なとこは鳴りをひそめはった、それらの作品とは真逆の仕上がりとなっておます。

ほんでもって、具体的な引用とシーンを連続させはって、説得力を構築しはります。モチ、ドキュどすから、取材具合の深みも感心させはる仕上がりとなっとります。世界各国の美風景もまた、癒やし度に貢献しとるやろかと思います。

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世界各国の幸せ度合いをば、映してゆかはります。ある意味では、癒やしドキュの究極型をば示さはります。教授や専門家陣のお話よりも、具体的なところこそ本作のキモでおましょうか。

ルイジアナの自然シーンをバックにした生活具合やら、ブラジルのサーフィン、ブータンの国民幸福量、世界1高い幸せ度を持つデンマーク、幸せ度の低い日本など、いろんな写真やイラストやらインタビューで、じっくりと分析してゆかはります。

さらにでんな、100歳以上の方が世界1多くて、世界1の長寿率を示す沖縄の老人たちの様子(写真3枚目)やら。ナミビアの長老の話とヒーリングの儀式(写真1枚目)やら。お金では幸せにはなれないという、チャップリン映画「ライムライト」(1952年・アメリカ)からの引用なんかも、メッチャシブいやんと思いました。

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そして、さらに癒やし・幸せの方法論はイロイロ出てきよります。愛情や優しいココロを得るために作られた瞑想法やったりとか、インドのマザー・テレサ的な家を引用しもって、ボランティアや親切な行為が幸せ度をアップさせることなど、ああ、なるほどなーなんて納得させてくれはります。

ピアノやギターなどをサントラとして、チビチビ使ってはりますが、ラストロールの癒やしのサウンド使いは、余韻を深める意味においても重要どした。バンド・サウンドからアコーディオンやらの穏やかな楽器を使い、ギター・サウンドへと流れてゆくカンジは良かったどす。

最近は経済学やら不況の実情やらの検証ドキュが多い中において、こういうホッとできるドキュは貴重やと思います。映画に癒やしを求めてはる方にこそ、ぜひとも見てもらいたい1本でおました。

2012年5月 8日 (火)

トンデモ・インド映画「ロボット」でっせー

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ハリウッドのSFロボット映画への、コッテリアイロニー臭にポテチンどす

ピコピコのテクノやらのロボ・ダンスな、ミュージカル・シーンやらもお楽しみやでー

http://www.robot-movie.com/

皐月5月12日のサタデーから、アンプラグドはんの配給によりまして、全国ロードショーでおます。

東京・渋谷TOEIやら、大阪・梅田ブルク7、シネマート心斎橋やらで上映どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 SUN PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.

インド映画とゆうのんは、最近は日本にはあんまし上陸してけえへんねんけど、本国じゃそらモノゴッツーなくらいに、映画界は繁栄してはります。そのラインはハリウッド級らしいんやけど、本作を見てみますと、それがよう分かるようになっとります。

製作費37億円で、世界興行収入が100億円超えを達成しはりました。サタジット・レイ監督作品など、かつての大河アート映画系のイメージを様変わりさせて、大作娯楽映画としてインド映画が日本に返ってきはったんは、1990年代の後半あたりからどした。

そして、そのほとんどがミュージカル映画にして、大仰なラブ・ストーリーとゆう作りでおました。さらに、休憩タイムを挟まはった、3時間前後の映画とゆうのが基本にありました。

れから、10数年が経ちました。インド映画はハリウッド級アクション性を加えて、なおかつハリウッドへのアイロニカルな視点も付加して、日本に再び戻ってまいりました。

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特に、ロボット映画へのシニカルなとこが強烈どしたえ。例えば、日本映画やったら、今年は「ロボジー」(今年1月6日付けで分析)とゆう映画がありましたが、ユーモア・スタイルでの切り込みよりも、本作はモロ、ハリウッド系のロボ映画をストレートに志向しながら、それを思いっきり反転させはるんどす。

つまり、博士が作ったロボットが、人間的な恋愛感情を植え付けられ、なおかつライバルの博士が凶暴性を仕込んだことによって、ハチャメチャなトンデモない展開をば迎えはります。

しかも、そんなロボがクローン化して、何体も作られてしまうんどすえ。圧巻のアクション・シーンが、次々にドトウのごとくにやってまいります。列車内アクションの1対多人数の、VFXを駆使した凄まじい対決シークエンス。走る列車の横を突っ走って(写真3枚目)ヒロインを拉致した犯人たちを追いかけて、ドカーンとやってまいます。

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クローン的ロボが磁石のようにつながって(写真4枚目)、いろいろと形を変えて銃を乱射するクライマックスは、今のハリウッドには出せへんような、トンデモないオリジナリティー・アクション性がありました。

38歳やのに傑出した美しさを示さはる、ヒロイン役のアイシュワリヤー・ラーイのネーさん。そして、博士とロボ役になるインドの大スター、ラジニカーントや。アクション・シーン以外にも、「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年製作・インド映画)で示さはった、ミュージカル・パワーも遺憾なく発揮してはるんどす。

ピコピコテクノを掛けてロボットたちと2人が歌って踊ったり、セピア照明の中でのヒップホップ・ダンス。ほんでもって、研究所内ではインド的ヒップホップに乗った、ユニーク・ダンスも披露しはります。

何はともあれ、アクションを理屈抜きに楽しめて、さわやかになって映画館を出られるカンジがエエかと思いよります。アッちゅう間の139分をお楽しみくだされ。

2012年5月 7日 (月)

ジェイソン・ステイサム主演のオーストラリア映画「キラー・エリート」

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「トランスポーター」シリーズと同じく、無表情アクションの本領をば見せはります

ロバート・デ・ニーロはんと共に、暗殺ミッションの中へ

http://killer-elite.jp/

メイ5月12日のサタデーから、ショウゲートはんの配給によりまして、大阪・梅田ブルク7、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸やらで、全国ロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

ジェイソン・ステイサムのアニキのアクションが、満開しとる作品でおます。サム・ペキンパー監督の同名作(1975年製作・アメリカ映画)と比べても、こちらの方が21世紀的に進化しとります。

但し、描かれとる時代背景は、1980年から1981年どす。しかも、暗殺者たちのお話でおます。「007」や「ミッション:インポッシブル」シリーズみたいな、極秘指令任務系のスパイやありまへん。

また、本作舞台の80年代に当たる、1985年に発表されたロバート・ラドラムの「暗殺者」を原作にした「ボーン・アイデンティティー」(2002年・アメリカ)も、同じくスパイもんどして、本作とはニュアンスを異にしております。でも、描かれるアクションは、それらの作品と同質のもんなんで、お楽しみ具合にはさほど変わりはござりまへん。

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ただ本作は、トンデモ・アクションがあるにも関わらず、実話がベースのお話になっとるそうどす。さらに、アメリカ映画やなく、オーストラリア映画とゆう意外性がござります。

そもそもジェイソン・ステイサムのアニキの出世作「トランスポーター」シリーズ(第1弾は2002年)からしてフランス映画やったし、ハリウッド映画やなくても、ハリウッドと見まがえるアクション映画は世界各国にありまんねん。

でもって、ジェイソン印とも呼べる、無表情の銃撃戦やらカー・アクト・シーンやら、逃亡シーン・アクトやら、椅子に縛られてもやってもうたり(写真2枚目)、多彩なアクションが次々に炸裂しよります。

クライヴ・オーウェンのアニキとの、近接撮影による病院内格闘アクション・シーンでも、その印象は変わりまへん。涼しい顔でやってまうアクションは、例えば、ロバート・デ・ニーロはんの、年齢の問題もあるやろけど、表情をゆがめての必死のパッチみたいなカンジとは、好対照となっておます。

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ほんで、ハリウッド級の映画並みに、イギリス・ロンドンとオマーンの2場をポイントにして、メキシコ、オーストラリア、フランス・パリへと、ワールドワイドなロケーションをば敢行してはります。

ステイサムはんは冒頭のミッションのトラウマで引退し、オーストラリアで美人の彼女とエエ生活を送ってはったんやけど、かつての盟友デ・ニーロはんの窮地を救うために、再び暗殺依頼の現場へと戻らはりまんねん。

オマーンの首長ファミリー対イギリスの特殊部隊とゆう裏構図の中で、首長側からの暗殺依頼なんでおます。メッチャ厳しい状況下で、2人の仲間の協力を得て、ヤリ続けはるステイサムはんの男の意地には、頭が下がったり、上がったり(!?)なんやけど…。

回想シーンから浮かび上がる、恋人とのシークエンスの明るさが印象的どした。ラストのオチでも、それは威力を発揮しますんで、注目しといてくだされ。

2012年5月 6日 (日)

アメリカン家族ドラマ映画の傑作「ファミリー・ツリー」

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「普通の人々」「アメリカン・ビューティー」やらと並ぶ、家族映画の問題作でおます

ジョージ・クルーニーの初のオトン役やけど、そないベタやありまへん

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http://www.foxmovies.jp/familytree/trailer.html

5月18日のフライデーから、20世紀フォックス映画はんの配給によりまして、全国ロードショーでおます。

関西やったら、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都・TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸やらで上映どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2011 Twentieth Century Fox

アメリカの家族映画どすけども、何らかの負のポイントを取り入れて、進行するっちゅうのんが定番のようにあります。日本の家族映画にもそれはあるんやけど、アメリカの場合は、チョイシビアでピリッときよる視点があるように思います。

そのシビア度も常に変転してるようにも思うんやけど、みなはん、どないでしょうか。あんまし昔のんをゆうてもあれなんで、例えば別居で子育て主夫になる「クレイマー、クレイマー」(1979年製作・アメリカ・以下の引用は全てアメリカ映画)。長男が死んでまう「普通の人々」(1980年)、最終的には核家族の主人が死んでまう「アメリカン・ビューティー」(1999年)やら。

挙げた3作は全部、アカデミーの作品賞をゲットしてはりますけども、3作に共通するんは、①家族の誰かが死ぬような負=マイナス・ポイントがある点。②夫婦の関係性が緻密に描かれる点。③親子の関係性も同じく稠密に描かれる点。④それまでの家族ドラマにないとこが、少なくとも1つはある点。⑤安易なハッピー・エンドへとはいかないところ。そやから、泣かせる系やらストレートな泣きとかは基本的にはありまへん。といったとこでおましょうか。

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ほんでもって、本作はそれらを、まがうことなき21世紀の現代の家族ドラマとして、強烈に展開してゆかはります。それだけやありまへん。これまでの家族映画にないもんを、意識的かつ意図的に取り込んでゆかはります。

それは約5ポインツほどもありましたで。①ハワイを舞台にした家族ドラマの、イメージをくつがえすところ。ハワイ・イメージの楽園的生活じゃないことを、最初の方で、クルーニーのアニキはナレーションでゆわはります。ハワイである点は関係なく、壊れかけの家族ドラマは紡がれよります。

②オカンが浮気してたんやけど、オカンは植物状態の事故に遭い、オトン・クルーニーは娘はんから浮気男の存在を知り、ほんでその男を探ってゆかはります。まあ、これまでにない展開でおましょう。妻が浮気・でも妻は昏睡状態とゆうのんは、夫妻ドラマ・家族ドラマ的にも、稀少な設定やと思います。

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③この流れでは、ハッピー・エンドは望めそうになさそうやけど、それでも、「マディソン郡の橋」(1995年)の裏バージョンみたいなとこから、改めて家族の在り方を見直すような視点があり、ここらあたりはチョィ新しいんやないかな。クルーニーと浮気相手の対峙なんかにも新味をカンジよりました。

④ジョージ・クルーニーのアニキが、これまでの演技性のノリで、オトン役をやってはる点。ラブコメの「素晴らしき日」(1997年)とは違い、演技性を変えないとこは、本作のシリアス度合いを増しはりました。悩ましげや戸惑いやらの表情演技が、渋~いカンジになっとります。

⑤ハワイの風景描写に加え、多彩なCGで示すラストロールのハワイ・イメージやらが、逼迫する家族ドラマに関係なく描かれておます。ギター系・ウクレレ系のハワイアン歌ものがしょっちゅう流れてんのも、ドラマ性にミスマッチをおあっております。

てなカンジで、「サイドウェイ」(2004年)チックな、お得意のロードムービー色も取り入れはった、アレクサンダー・ペイン監督の本作は、おそらく監督のキャリア史上最高傑作となった作品やろとジャッジいたします。

2012年5月 5日 (土)

大人のNYラブ・ストーリー「恋と愛の測り方」

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4角関係恋愛映画の、ソリッドかつシンプルな作りにしはった作品どす

キーラ・ナイトレイのネーさんとサム・ワーシントンのアニキの夫妻が共に不倫しはるんやけど…

http://www.alcine-terran.com/koitoai

MAY5月12日のサタデーから、アルシネテランはんの配給によりまして、東京・新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座やらで全国ロードショーでおます。

関西やったら、梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマやら、MOVIX京都、神戸国際松竹とかで上映どす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2009 Last Night Productions, Inc.

アメリカ映画(本作はフランスとの合作)のNYラブ・ストーリーてゆうたら、そらモー、もの凄い数のタイトルが、これまでに出てまいっておます。

ボクの記憶によれば、その種で最も多いのがラブコメ映画で、次いでロマンティック・ラブかな。ウディ・アレンやマーティン・スコセッシなど、NYにこだわりのある監督の作品群もござります。

ほんでもって、本作は夫妻がそれぞれ浮気するとゆう、ストレートかつシンプルな作りの、大人のラブ・ストーリーとなっとります。

4角関係ものとなりますれば、NY舞台ものでは、カップルが入れ替わる「ワン・ナイト・スタンド」(1997年製作・アメリカ映画)やらがありますが、本作を見てのボクの印象としては、ロンドンを舞台にしはった「クローサー」(2004年・アメリカ)なんぞを思い出しました。

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でも、激しい度合いが物語が進むにつれ増していった「クローサー」と違い、本作はあくまで淡々と36時間が、小細工なしに展開してまいります。

「クローサー」はジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、クライヴ・オーウェンとゆう布陣どした。対して、本作の4人の役者はんのカルテットぶりは、どないなもんでおましょうか。キーラ・ナイトレイのネーさんと、サム・ワーシントンのアニキの夫妻が、まずいてはります。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズが有名なキーラ・ネーやけど、昔の彼氏のギョーム・カネのアニキにココロ揺れながら、恋愛心理をビミョーに演じてはります。片や、「アバター」(2009年・アメリカ)始め、アクション映画が板に着いてはるサム・アニやけど、人間ドラマ性を冷静沈着なスタイルで、やってはるのが良かったどす。

でもって、今1人のエヴァ・メンデスのネーさん。エロエロ度はヤッパ特筆もんどした。もっと弾けてくれても良かったやろけど、作品性に合わせて控えめにしはりました。

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あくまで4人の演技は、エキセントリッキーなきのフツーの自然体が、ベースになっとります。「失楽園」(1997年・日本)的なトコトン系ではなく、浮気をチョイやってみましたみたいなライト感覚なんどす。

ベタベタベッタリスッポリドップリやありゃしまへん。そやから、泥沼的な拮抗ドラマ好きには、物足りないやも分かりまへん。

まあ、このあたりはイラン出身でオレンジ・カウンティ育ちの女性監督、マッシー・タジェディンのネーさんのイロが出とるかと思います。ラブラドール・レトリバーのイヌの存在など、ドロドロ系への歯止めとなる要素も取り入れて、不倫ドラマ性を中和するような作りでいってはります。

サプライズがないものの、この夫妻が今後どないなってゆくんかを、観客にゆだねるような感じどすか。それがエエのか悪いのかは、みなはんの判断でおましょうか。ボクとしては、飽和状態にあるNYラブ・ストーリーに、こんな視点もあるでよ~を示さはった点において、野心作やったとジャッジいたします。

2012年5月 4日 (金)

ユルユルのイヤシ系映画「レンタネコ」どすえ~

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ネコを通して人間を描く珍しい映画でおすえー

市川実日子ネーさんのヒロイン映画としての、ユルミ具合も好感があるんどす

http://www.rentaneko.com/

皐月5月12日の土曜日から、スールキートスはんの配給によりまして、東京・銀座テアトルシネマ、テアトル新宿やら、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマやら、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸やらで、全国ロードショーでおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2012 レンタネコ製作委員会

ネコ映画とゆうのんは、イヌ映画よりは少なめやけど、これまでにそれなりに出てまいっておます。でも、ネコを通して人間を描く映画は、そんなにありまへん。

ネコ映画を思い付くままに挙げてみますと、「公園通りの猫たち」(1989年製作)「子猫物語」(1986年)「グーグーだって猫である」(2007年)など。アニメもあるし、洋画では「キャッツ&ドッグス」(2001年・アメリカ映画)なんぞがありますが、調教の非常に難しいネコの映画は、ある意味ではシリアスなカチッとした映画には、向いておらんように思います。

でも、癒やし系映画の名手・荻上直子監督のネーさんは、そこを逆手に取って、ネコの動きのままに撮りながら、極上のゆったリズムの快作を撮り上げはりました。「かもめ食堂」(2006年)の癒やしは絶品やったけど、本作では監督のダイスキなネコを採り上げながら、監督と一心同体となるヒロイン・ドラマの、心地よさをも示してはります。

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監督の要望に存分に応えはったのは、市川実日子のネーさんどす。男は寄ってこないけどネコにはなぜか好かれて、野良猫たちが次々に彼女の1人住まいの、一戸建ての家に勝手に入ってくるとゆう、ウソの話から入らはります。

でもって、そんなネコをココロの穴ボコを埋めたい人たちのために、レンタルしはるんどす。リアル感のないウソの話は続くんやけど、この流れの中にある実日子ネーさんの、ユルユルの人間性には、かなりの好感を覚えよりました。

そして、草村礼子はん、光石研のアニキ、レンタカー屋の従業員・山田真歩ネーさん、ほんで同級生やった田中圭のアニキやらと、ネコを通してココロの交流をしていかはるんどす。

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「グーグーだって猫である」の主演・小泉今日子キョンキョンと、リンクするとこもござります。京都を舞台にした「マザーウォーター」(2010年)では共演もしてはりました。ただ、キョンキョンはネコ好き人間として描かれとりましたけども、こちらの実日子ネーさんは、ネコを通して、ヒロインとしての生き方みたいなんも描いてゆかはります。

一段高いところを目指して作ってはることが、見ていくにつれ分かってまいります。かげろうを取り入れた真夏の描写、空を取り込んだ映画的ワイドなカット、日没の海辺のセピアな色合い、都都逸(ドドイツ)な、お気楽調子の歌「東京ドドンパ娘」の使い方など、細部の描写にも癒やし効果を狙うショットが、隠し味的に挿入されとります。ヒロイン・ドラマとしての好感具合、そしてモチ、癒やし系映画としてホッとできる作品どした。

2012年5月 3日 (木)

大阪ロケーション映画「- × - マイナス・カケル・マイナス」やー

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イラク戦突入前の2つの話が、前半と後半で展開しよります

タクシードライバーと中学生ヒロインの、各お話でおます

http://mainasu-kakeru-mainasu.com/

5月5日のゴールデンウイーク「こどもの日」のサタデーから、大阪・第七藝術劇場でロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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日本の地方ロケーションのインディペンデント映画は、大手映画会社や配給ルートに乗る地方ロケ作品以上に量産されておます。そんな中で、映画館で掛けてもらえるような作品は、メッチャ少ないとゆうのんが現実となっとります。

ところが、本作は、東京の単館系映画館を皮切りに、なんとかそれが達成できよりました。お客はんが入るかどうかは別にいたしまして、本作は若き映画監督の才気なるもんをカンジ取るには、十分な作品やったかと思います。

監督は1980年生まれの伊月肇クンどす。多数の名監督を輩出した大阪芸術大学出身なだけに、まずは期待をもって見よりました。大阪ロケ映画どす。大阪を舞台にした映画ちゅうのんは、これまでにあまりにも多くの作品が作られてきておます。

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大阪大阪したナニワナニワっぽい作品が、多数を占める中でもでんな、本作はその大阪節を控えめにしはりました。確かに、大阪の風景を映す以上は、大阪らしさはインサートしてはります。

特に、1970年の大阪万博にまつわるもんが主流どすか。太陽の塔やったり、三波春夫が歌った「世界の国からこんにちわ」の引用やったり、イロイロやってはりますが、あくまで場所に限定されへん、ドラマ映画へとアプローチしてはります。

そこが妙に潔いとゆうか、大阪映画らしくないとこが逆に、ボクはオリジナルなんやないかなと思います。

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前半と後半は話が違いよります。前半は、タクシードライバーの兄ちゃんが息子を亡くした母を乗せたところ、その母がおかしな人でおまして、タクシー代を払てもらうはずやったんが女に持ち合わせがなく、仕方なく女の部屋に入ってでんな、いろんなことをやるような次第になってしまいました。

一方、オトン・オカンが離婚してもうた悩み深き女子中学生の、友達やオトン・オカンとの、今の関わりをば描いてゆかはります。タクシー運転手役の澤田俊輔のアニキは現在、消息不明どして、何やら本作とリンクしてるようなカンジもして、ハッとしよりま。人気アニメ「けいおん!」の声優としても有名な寿美菜子ちゃんが、女子中ヒロインをやってはります。

長回し撮影を多投してはるけど、それもフツーの長回しやないようにせんとする工夫が見られよります。ほんでもって、2つの話は果たして、どないなシンクロ具合を見せてゆくんでおましょうか。そのあたりのとこもぜひ見てほしいとこやと思います。

決してベストな決着やとは言いまへんし、もっとアグレッシブな作りもできたやろけど、イラク戦前を意識した作りはグーやったかな。次は東日本大震災前の大阪の状況を、描いた作品を見てみたいかな。本作の続編でもええねん。もっと鮮烈な1本ができるんやないやろか。期待しときます。密かに…。

2012年5月 2日 (水)

ノルウェー映画の新タイプ「孤島の王」どすえ

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島ものにして非行少年院映画で、ほんで逃亡系サバイバルへと向かう作品でおます

極うすーいブルーの色合いが、最後まで冷え冷えとしたカンジを持続してはります

http://www.alcine-terran.com/kotou/

5月5日のコドモの日から、アルシネテランはんの配給によりまして、大阪・テアトル梅田やらシネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒles films du losange

フランス、スウェーデン、ポーランドの出資を得はった、2010年製作のノルウェー映画でおます。ノルウェー映画となれば、あんまし日本には上陸しまへん稀少価値の高い映画どす。

ボクチンもほとんど見てへんに等しいんやけど、でも、本作はノルウェー的にはチョイ違うようなイメージを、伝えてきてはるように思いました。極薄ブルーの冷えたような配色の、北欧国イメージはあるんやけど、娯楽映画ポイントをば、それなりに外してはらへんとこに驚きがあったかな。

非行少年たちの矯正施設がある島もの映画ちゅう設定は、ある意味でドッキリします。つまり、孤島ものに付きものの密閉ミステリー感に加え、施設内の内情を描く系の映画としても、面白さをば加えはります。少年たち対管理側の対決とゆう構図が、ゆっくりと密やかにやってきよります。

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島ものでゆうたら、本作にもあるけど、脱出を図るスリリングがあった「パピヨン」(1973年製作・フランス&アメリカ合作)とかのある種のダイナミズム、強制する矯正的作りもあるんやけど、「時計じかけのオレンジ」(1971年・イギリス)やったり、内実系では精神病院の「カッコーの巣の上で」(1975年・アメリカ)のノリもあります。ほんで、孤島での少年たちのリアルな絡みでゆうたら、「蠅の王」(1990年・イギリス)の重厚感ある作りもあります。

実話をベースにしてはるけど、1915年のノルウェーを舞台にした過去の話でおます。過去にこんな陰惨なことがあったとゆう映画はいっぱいあるけど、本作の肝は、抑えつけられた少年たちの反乱、抵抗、そして自由への希求を描いてはりますんで、ああ暗い話やなーとゆう鑑賞後感は、それほどにはござりまへん。

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少年たちが反乱してサバイバルして逃げてゆくような映画なんやけど、そこにはリーダーがおります。このリーダーと、静かにキズナを結ぶ少年もおります。

クライマックスは、短カットでイロイロ見せてゆく反乱ぶりから、流れてゆくように畳み掛けられる、少年たちの必死の抵抗と逃亡ぶりどす。ノルウェーの政府側の取り締まり部隊までやってくるこのヤマ場は、弱者がヤラレゆくドラマ映画の、イロイロへとつながってまいります。そして、2人が凍り付いた海を辿って逃げてゆくんやけど…。

タフなクジラの話なんかも冒頭からさっそく出して、主人公が紡ぐ話の中で膨らんでまいりますが、それは象徴的な挿入どした。作品性に合わせたあざとさもないとはいえまへんが、見たあとココロにオリのように残る、エピソードになっとるかと思いよります。ノルウェー映画を初めて見はる方にこそ、ぜひおすすめしたい作品どしたえ~。

2012年5月 1日 (火)

1人芝居的なサスペンス・アメリカン映画「ブレーキ」でおます

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シチュエーションもの映画の、究極のカタチを示さはりました

「CUBE」「SAW」やらとの違いは、たった1人の孤独な戦いどすえー

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http://www.at-e.co.jp/2012/brake

5月19日のサタデーから、アットエンタテインメントはんの配給によりまして、東京・シネマライズやらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2011.Brake,LLC

ある種のワケの分からへんシチュエーションを施して、ミステリー&サスペンス&スリラーチックに、物語を展開してゆくっちゅうタイプの映画でおます。こういうタイプのシチュエートもんは、ケッコーござります。

例えば、見出しにも書きました、何人かがワケ分からへんとこに、いてるとこから始まる「CUBE」(1997年製作・カナダ映画)やったり、2人が繋がれた設定で始まった「SAW」(シリーズ第1弾は2004年・アメリカ)やらどす。但し、本作はそれらの先行作品とは、ビミョーに違う味付けで勝負してはります。

本編1時間半の中で、ラスト10分以外は、クルマのトランクの中に押し込められた1人の男の、閉塞空間でのアレやコレやを紡いでいかはるっちゅう展開なんです。1人芝居的に繰り出されるコレは、1人芝居もの映画の中でも、密室空間の物語としては、かつてない挑戦的な作りをやってはるかと思いよります。

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そもそも、こういう閉ざされた狭い世界での1人芝居もの、しかも1時間を超えるようなんは、これまでに見たことがござりまへん。

「抵抗」(1956年・フランス)なんかでは、1人の男が脱出するために細部の描写を淡々と映したり、実話ベースの「127時間」(2011年・アメリカ)やらでは、事故った1人の男の孤独なサバイバルが、展開したりしよりましたけども、こういう完全密閉ものとゆうのんは、初めてやないでおましょうか。

ある意味では、退屈になりかねないような素材なんやけど、コレがイロンな試練を入れることによって、起伏あるドラマとなっとります。

あえて言わせてもらえるんやったら、「ダイ・ハード」(1988年・アメリカ)の密閉縮小版のような趣きどす。「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスっぽい、スティーブン・ドーフのアニキが主役を張ってはります。

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みなはん、あんまし知らはらへんかもしれへんけど、「ブレイド」(第1弾は1998年・アメリカ)の悪役から、「サムウェア」(2011年・アメリカ)のシブいオトン役までやってはる、ハリウッドの中堅アクターの地位をば、確立してはる役者はんどすえ。

赤い照明に浮かび上がる、ドーフのアニキのシーンからスタート。その後、電気がともって明るくなったり、ハチやら水を入れられるパニックチックなシーン、そして隙間から外界とのコンタクトを取ろうとする、涙ぐましいところ。ほんでもって、ケータイやらでのほかの者との交信。

密室の1人芝居で、1時間以上を持たせるちゅうのんは、ホンマは至難のワザなんやけど、本作はかなり踏ん張りガンバッてはりまっせー。カー・アクションやらのシーンも、トランク内で示さはります。

そんなミニマムな作りにも関わらず、大統領を狙うテロの物語として、話の内容そのもんは、スケールのでかいもんとして提示しはるんどす。ビックラこきました。さらに、残り10分のトンデモ・どんでん返しで、ドカーンと驚いておくんなまし。

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