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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2010年12月の記事

2010年12月31日 (金)

ドキュメンタリー日本映画「わが心の歌舞伎座」

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海老蔵事件のイメージとは違う、これぞカブキ魂やーに酔いしれる1本でおます

「パリ・オペラ座のすべて」と同じく、歌舞伎座にまつわるイロイロを多彩に魅せてゆかはります

http://www.shochiku.co.jp/kabukiza-movie/

睦月1月の15日土曜日から、東京・東劇、大阪・なんばパークスシネマ、MOVIX京都やらで、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ松竹

海老蔵事件にユレまくった年末どしたわな。それが、どないしたっちゅうねん、関係あれへんわーゆう御仁もおられまっしゃろな。

この時期に公開される映画なだけにでんな、松竹の歌舞伎清浄化委員会のPR映画かいな、なんて思わはる方もおられることでしょう。まあ、ボクチン、それを否定はしよりまへん。仕様がおまへんので、そんな偏見の目で見られても、まあ、よしとしましょう。

でも、最後には、そんなマイナス・イメージが変わるような映画なんどす。

海老蔵のオトン・市川團十郎はんも出てはります。花道を走り抜かはって、中に入って息ゼエゼエ、楽屋まで向かう姿を、長めの移動撮影でカメラが追います。團十郎はんの歌舞伎に懸ける命懸けの思いが、「男はつらいよ」の、サクラな倍賞千恵子ネーさんの穏やかなナレーションで伝えられよります。歌舞伎ファンでなくても、なんとも言えずに、ああ、とため息と共にきよるシーンでおます。

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團十郎はんだけやおまへん。映画とも縁の深い方々が、次々に出てきはります。単純にインタビューを披露するだけやないんどす。その方々の名演技ぶりを、本人の解説、コメンタリーによって、しかも、演技のキモとなるシーンを映さはるんどすえ。これは、ホンマ、たまりまへん。

歌舞伎とゆうもんを知らない人でも、グッとくるはずでおます。カメラが1分くらい歌舞伎座のロビーを動いて、中村勘三郎アニキの述懐が映されま。泣けるエピソードだす。

映画も監督しはったこともある、坂東玉三郎のアニキ。今も若々しいわ。

片岡孝夫として映画によう出てはった、片岡仁左衛門のアニキ。「最後の忠臣蔵」(昨年12月4日付けで分析)にも酔いましたけども、歌舞伎としての泣きの演技、表情演技をば緻密に魅せてくれはります。

でもって、松たか子ネーさんのオトン・松本幸四郎はんの「歌舞伎の伝統に劇性を入れていく」とゆうとこやら、歌舞伎への執念が熱いどす。

上方歌舞伎としてのコメディアンぶりを、示さはる坂田藤十郎はんやらも注目どす。上方歌舞伎と江戸歌舞伎の、ビミョーな対比描写もよろしおま。

「パリ・オペラ座のすべて」(2009年製作・フランス映画)とゆう、劇場とそこで働いてはったり、スタッフや演技しはる人を、描いたドキュメンタリーと同じく、縁の下の力持ちな人々にも焦点を当ててはります。

衣裳係、音楽、舞台転換やらはモチ、建物内部の細か~いとこまで映さはるんどす。まさに、歌舞伎座という建物が主人公でもある映画どした。

2010年12月30日 (木)

フィンランド映画「ヤコブへの手紙」

ヒロイン・ドラマとシニア・ドラマの、見事な調和を示さはる北欧映画の傑作

イングマル・ベルイマン監督作品などと、シンクロしよりまっせ

http://www.alcine-terran.com/tegami/

2011年1月の15日から、お正月第2弾映画として、東京・銀座テアトルシネマやらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、2月5日の土曜から、大阪・テアトル梅田、3月にシネ・リーブル神戸、近日に京都シネマやらで、上映されよりま。

本作を配給しやはるのは、アルシネテランはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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殺人罪でムショに入ってはった写真のヒロインはんが、恩赦で出所しはります。その身請け先は、慈悲深き老牧師はんどす。牧師はんのとこで、いわゆる家政婦的な立場の住み込みで働かはります。

このヒロインと牧師のドラマが、綴られる映画でおます。そこに、郵便配達人が時おり入らはって、物語が展開いたします。

メインの2人に助演が1人とゆう、まさに最小人数による映画でおます。こういう場合は、まがうことなき誤魔化しの効かないストレート・プレイ、いわゆる役者の演技がモロ、作品の出来具合に反映されてきよります。

でもって、見る前にゆうときますと、地味でおます。しかし、その地味こそが本作のキモであり、静かな展開のなかながらも、いろんな滋味を感得できよるのどす。

ヒロイン・ドラマとシニア・ドラマの融合とゆう点では、擬似ながら父娘のキズナ・ドラマを、紡ぐようなとこもござります。

作品は1970年代のフィンランドの田舎が舞台どす。美しき自然描写もあります。でも、ポイントはヒロイン・シニアの人間ドラマ性でおます。

盲目の老牧師のキャラどすが、これまでのシニア映画に見られたような、絶望感はそないありまへん。イングマル・ベルイマン監督作「野いちご」(1957年製作・スウェーデン映画)みたいなとこもありました。

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この老人キャラはええカンジどすえ。絶望にくれた人間(ヒロイン)を癒やしつつ、立ち直らせてゆかはります。自らは絶望に近い状態なんやけど、最後の最後までガンバらはります。

でもって、引退同然の牧師はんどすが、過去のいろんな場面を思い出して、1人結婚式をやらはったり、悩み相談みたいな手紙が日々、郵送されてまいるのどすが、その手紙に真摯に答えてゆく姿勢など、観客の好感度は高いハズやと思います。

一方のヒロイン・ドラマ部も、感動的なとこを用意してはります。この種の映画に多い過去のカットバック・シーンを、いっさい出さずに作ってゆく手法。むしろカットバックするほうが、ドラマティックになるんやけど、あえてはずさはったんでおましょう。

それだけに、演技とセリフが重要になってきますが、むしろ全体として静けさとゆうのんが、本作のポイントになっとるように思います。ピアノ・ソロをメインにしたサントラ使いやら、室内でも遠近感あるカットやら、静けさをいや増す要素がイロイロあります。

シンプルな作りのなかから、浮かび上がる人生の機微。日本では珍しいフィンランドの北欧映画の、なんともいえへん味がココロに残ります。

2010年12月29日 (水)

クロアチア・セルビア合作映画「的中」

クロアチアとセルビア版の変型「ロミオとジュリエット」でおます

ナレーターの名調子に乗せられて、ミステリー色が徐々に増していく仕掛けどす

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http://www.oeff.jp/

日本公開待機作品でおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ウットリのミステリー・ロマンスなんちゅう映画が、果たして東ヨーロッパにあるんやろかと思てはる方は、かなり多いんやないかいなと、ボクは勝手に思とります。

でも、エミール・クストリッツァ監督はんやらが「ライフ・イズ・ミラクル」(2004年製作・フランス&セルビア・モンテネグロ合作)とか、ええカンジの作品を作ってはりまっせ。

でもって本作も、「ライフ・イズ・ミラクル」みたいなコメディ調は余り入っておまへんけども、ミステリアス、ほんでもって、大人な「ロミオとジュリエット」(1936年&1996年・アメリカ、1954年&1968年・イギリス&イタリア)的な、ラブ・ストーリーをば展開しはるのどす。

クロアチアとセルビアは、戦争してはった近過去がござります。戦争終結後も、2国の一般大衆の間で、お互い敵対意識が根強くあるそうです。そんな張り詰めたなかで、クロアチア人とセルビア人の恋を、ミステリー・タッチで撮り上げはったんが本作どす。

しかも、クロアチアとセルビアの、初の合作なんです。コレは北朝鮮と韓国が合作して映画を作ったみたいなカンジの、ある意味では映画史的には、アラマ、ポテチンな事件なんでおますよ。

まずは、物語の語り部とも取れる、ナレーション担当の出演者がなんとも個性的でおます。

ジプシー・サウンドな鼻音を、まるで楽器オカリナ的に奏する男でおまして、この方が女房にはコンサート・ツアーに出るねんと言いながら、内緒でポルノ・ビデオの男優の仕事をやってはる、なんてゆうキャラでおます。シリアスなドラマに時おり、コメディ・リリーフな役柄を担ってはります。

そのポルノ「赤ずきん」に出てる女優を、探してはるんが元兵士の主人公はんどす。共演してた鼻音男を探し、で、女優の居場所を突き止めはります。

女は女優やゆうても、まあ、娼婦まがいな仕事してはるんどす。そのパトロンから、何と主人公は女を買い取らはるんどすえー。

ほんでもって、同棲しはって、キスもナンもしやはらないんです。なんでやねん。まあ、この行動原理は不可解で、なんちゅうてもやっぱナゾですわな。それが見ていくうちにやね、ゆっくり解けてまいります。

「人生は偶然の連続」とか「女とは何ぞや」なんて、名調子の鼻サウンド男のナレーターぶりが、この男と女のドラマをば、ドラマティックに魅せてゆかはるのです。

いわゆる、戦場での出会い系恋愛としては、かなり変わった設定の恋愛でおます。個人的には、戦没者の墓場を遺族に知らせて、謝礼金をもらうなんてゆうのが、大金ビジネスになってるとこなんぞに、驚きがありました。

2010年12月28日 (火)

イギリス・アメリカ合作映画「クレアモントホテル」

かつてない設定で登場しよります、2人のキズナ・ドラマ映画だす

老人ばっかししか泊まってへんホテルっちゅう設定も、これまでにありまへん

http://www.cl-hotel.com/

1月8日のJANUARY'sサタデーから、大阪・梅田ガーデンシネマやら、シネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。

本作の配給会社は、クレストインターナショナルはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2005 MAYQUEEN PRODUCTIONS,LLC All Rights Reserved

キズナ映画なんて言い始めたら、そらモーいっぱいいっぱいござります。

これまで出た映画の約半分以上は、間違いなく、何らかの愛やら人間的キズナやらを描いてはります。

ただし、そんなキズナ映画の人間関係描写のなかで、今までにないようなヤツって、そんなんモーあらへんやろなんやけど、ココにそのサンプルたるもんが出てきよりました。

写真をご覧くだされ。この2人、どないな関係なんやろと、みなさんは想像あそばされますやろか。

恋人、夫婦やろか。その種の恋愛もの映画は、今までにもござります。そやから、答えはブーどす。

母子か、あるいは祖母と孫のキズナか。うーん、だいぶ近づいてきよりました。でも、2人は、血のつながらない赤の他人でおます。

そないなると、残ってくるんは、そうでおます、仮想設定・擬似設定でおますよ。擬似家族ものやらをはじめ、いろんな擬似もの設定のキズナ、友情ものはござります。

そして、本作は、擬似は擬似でも、これまでにはまずなかった、仮想・祖母&孫息子とゆうもんどす。

恋愛ものになりそうでなりまへん。なんでかとゆうと、彼氏には愛し合う彼女がいてはるもん。

仮想オバアが2人の間に入っても、ごくフツーに関係しはります。まあ、ゆうてみたら、男と女の友情ものみたいなカンジもあるんどすえー。

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おばあちゃんが泊まってはる、イギリス・ロンドンのホテルやけど、どうゆうワケか老人ばかりが泊まってはるみたいで、まるで老人ホームかいなとも思わせたりしはります。

老人ホーム系のドラマ映画「旅路の果て」(1939年製作・フランス映画)やらは、シリアスに老後を描いてはったけど、本作はそんなんありまへん。

お気楽モード。ラブ&ピースでおます。「グランド・ホテル」(1932年・アメリカ)みたいな、群像劇を繰り広げはることもござりまへん。

仮想・祖母と孫の、恋愛を抜きにした、人情味あふれるドラマが展開しよるのです。

仮想祖母役のジョーン・プロウライトはんは、ヘレン・ミレンとかジュディ・デンチとか、仮想孫役のルパート・フレンド君は、ジョニー・デップかトム・クルーズかっちゅうノリなんでおます。

路上ミュージシャンやってて、料理もやれる小説家志望の青年とゆうこのキャラは、オモロイ・キャラどす。

原作は女流作家のエリザベス・テイラーやなんて、あの大女優とおんなじ名前やから、ボクチンはえーっってアホみたいに驚きましたがな。そんなんを抜きにしまして、おばあちゃんのホンマの家族が出てきはった時の、仮想孫の対応ぶりは見事でおました。新しいタイプのキズナ映画の誕生でおます。

2010年12月27日 (月)

ベルギー映画「あきれた日常」

毎晩ビール飲んでドンチャン騒ぎファミリーの、トンデルお話やー

ベルギー、オランダで大ヒットをかましたらしい、やなんてホンマですか

http://www.oeff.jp/

日本公開待機作品でおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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長男、次男、3男、末っ子の4人に、長男の幼い息子。そこに、4人のオカン、息子から見たらオバンが入った6人家族の物語やー。

オカン兼オバンだけがマットーでおまして、長男と、いろんなワケありで出戻らはった3人は、誰1人としてマトモなんはいてはりまへん。

毎晩、ビール飲みまくって、下品極まりない歌を歌い、バカ騒ぎを繰り返してはりま。そんな4人に、ちっちゃい息子はんもしょっちゅう、いろんなところへ連れ回されます。

物語は、そんな息子が大人になって家を出て、小説家を目指してガンバってはるところから始まりまんねん。いわゆる、現在から過去を振り返る、カットバック手法ってヤツどす。

さらに、そんな家族を小説として描くとゆう、小説創作のメイキング・スタイルってヤツも採ってはります。とにかく、描かれてる内容の、トンデモなさにはビックラこきました。

4男役で出演したベルト・ハルフットのアニキは「本作には原作小説(ディミトリ・ヴェルフルストとゆう作家の作品でおまして、2011年の春頃に日本出版予定どす)がありまして、それは自伝的小説で、そこで起こるいろんな事件は、ある意味で全てあった実話です。でも、本作で演じてる私が、いつもの私だとは思わないでください」と語ってはります。

丸ハダカでの自転車レース(写真)、女装カーニバル、ビール飲みコンテストで勝って、その後飲酒運転して事故ったり、ツールド・フランスに見立ててバーでアルコール飲み勝負をやったり…。フツーに大人しく飲んでるシーンなんぞ、いっこもありまへん。

サントラは別にして、みんなが歌う歌の内容も、公園で大便ができないのは問題やーとか「アソコの歌」とか「オッパイの歌」とかどす。

でも、「プリティ・ウーマン」が有名なシンガー、ロイ・オービソンの復活ライブをTVでみんなで見ながら、家族の幸せをダブラせてゆくシーンなど、正統派のコミカル・シーンも、ふんだんに盛り付けられておますよ。

でもって、最後には家族のキズナを示す、感動的なシーンも用意しておますんどすえー。

4姉妹を描いた「若草物語」(1933年・1949年・1994年製作・アメリカ映画)を野郎バージョンで、思いっきしウラ返りの、逆バージョン形態を施さはったチョー怪作でおます。

チョー変な家族映画としては「ホテル・ニューハンプシャー」(1984年・アメリカ)に優るとも劣りまへんで。

でもって、それほどスゴイのんが、映画小国のベルギーから出てきたことに、ビックラこきよりました。まだまだ世界各国には、死ぬまでに見ときたい映画がいっぱいあるのんを、再認識いたしました。

2010年12月26日 (日)

正統派アメリカン・パニック・ムービー「アンストッパブル」

人為的ミステイクで貨物列車がノンストップやなんて、今どき珍しおます、シンプルな設定のパニックどす

「スピード」「暴走機関車」「サブウェイ・パニック」「カサンドラ・クロス」やらの、全てのスリリングが詰まっておます

http://www.unstoppable.jp/

January1月のFriday7日から、全国各地イッセーのロードショーでおます。

関西やったら、大阪・TOHOシネマズ梅田、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマやらをはじめ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都やら、TOHOシネマズ西宮OS、OSシネマズミント神戸やら、いっぱいいっぱい上映どすえー。

本作を配給しやはるのは、20世紀フォックス映画はんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010 TWENTIETH CENTURY FOX

いきなりなんやけど、このタイトル、どないですかー。まあ、ゆうてみたら、そのままやがなーなんやけど、よう分かりまへんわな。

ほな、ストレートに「止まらない」か、「止められない」やったら、どないやろ。一体、何が止まらないのか、よう分からへんけど、想像くらいやったらできよりま。

でも、変な方向で妄想してまうと、おいおい、待っておくんなはれになってしまわんとも限りまへん。でも、でも、本作は列車パニック映画なんで、もっとええタイトルはないんかいなと思たりもしよります。

「暴走機関車」(1985年製作・書いてへん場合、以下の引用は全てアメリカ映画)とか「暴走特急」(1995年)とか「アンブレイカブル」(2000年)とか「スピード」(1994年)とか。

おいおい、みな、今までに出とるタイトルやおまへんかー。ああ、えらいすんまへん。それだけようあるジャンル映画なんで、ダブリやパクリやらが横行しよりまんねん。みなさん、もっとええタイトルあったら、ゆうておくんなはれ。

とゆうことで、パニック・ムービーの範疇でも、乗り物系列っちゅうのんは、そらものゴッツーな数にのぼりよります。かの映画史上第2位の興行成績挙げてはる「タイタニック」(1997年)にしても、いわゆる船舶パニックやしな。

でもって、列車・電車・地下鉄系も、日本未公開フィルムなんぞも加えたりしたら、かなりのタイトルがござります。見出しにも書きました「カサンドラ・クロス」(1976年・イギリス)とか「サブウェイ・パニック」(1974年)とか「新幹線大爆破」(1975年・日本)とか、思い出し始めたらキリがござりまへん。

しかし、本作はそれらの作品とは決定的に違う点が、約3ポイントばかりござります。

①その列車は無人車クンやー②実話がベースやー③単にブレーキを止めたら停まるんやー…とゆうとこらあたりでおましょうか。

そやから、その無人車に運転士1人をうまいこと乗せれば、それで万事OKやんかってことになりますわな。

ところがどっこい、それがままならんのが、この世の中っちゅうもんでおます。

飛び乗りやら、空からやら、イロイロやらはりまんねんけども…。列車には列車で対応やっちゅうことで、デンゼル・ワシントンのアニキやクリス・パイン君が、さっそうと立ち向かわはります。

パニック・ムービーの基本ラインをきっちり押さえた上で、2人のヒロイズムを魅せてゆかはる作りでおます。その意味では、まさに王道のパニック映画どす。

「駅馬車」(1939年)みたいな乗り移りシーンやら、クライマックスの展開はダイナミックでおますよ。

撮り方もええカンジ。暴走車を、下から、真横から、後ろから追っていったり、空撮で、とゆうように多彩なアングルで見せていって、臨場感をあおる作りやらが効果的やねん。

実のアニキのリドリー・スコットに比べて、実力的には下に見られがちな、弟のトニー・スコット監督やけど、観客みんなをもてなす娯楽エンタ作りの才においては、全くヒケを取らはらへんことを、改めて確認させてもらえた作品でもおました。

2010年12月25日 (土)

デヴィッド・フィンチャー監督の新作「ソーシャル・ネットワーク」

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21世紀的ヒューマン・ドラマを構築し、アカデミー賞作品賞に大手をかけはったかもしれへん快作どすえー

SNS“フェイスブック”成功の実話を、悲喜こもごもの逸話を織り込んで展開しはります

http://www.socialnetwork-movie.jp/

1月15日の土曜から全国公開どす。関西は、梅田ブルク7、TOHOシネマズ梅田、MOVIX京都、神戸国際松竹やらで上映でおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

現在、全米では、アカデミー賞の前哨戦となる各種の賞レースが、繰り広げられておます。

そんななかでも、アカデミー賞にストレートに反映するといわれておす、ゴールデン・グローブ賞がござります。

結果発表は、日本時間2011年の1月17日どす。

本作は、最多7部門にノミネートされはった「英国王のスピーチ」(2月26日公開・後日分析いたします)に続き、6部門ノミニーでおます。

作品賞・監督賞・脚本賞など、作品の仕上がり具合に関する部門賞ははずしてはりまへん。

アカデミー賞作品賞とゆうのんは、人間ドラマ映画が重要視されよります。

作品賞をばゲットしはった「地上最大のショウ」(1952年製作)、「80日間世界一周」(1956年)、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(2003年)やらでさえも、ヒロイズムやヒューマニズムが、それなりに描かれておます。

本作は21世紀的な人間をば、映画史上初めて本格的に描かれるネット・ビジネスの実態とともに、追究しはりました。

さらに、セリフがいかに映画にとって重要かを、膨大なセリフのオン・パレードにて示さはるんどす。

このセリフ量は、ここ最近の映画ではたぶん、最も多いのんと違うやろか。

実話どすが、ソーシャル・ネットワーク・サービスSNSの“フェイスブック”を、ハーバード大学の一介の学生はん、マーク・ザッカーバーグ君が始めました。

このマーク君に、ジェシー・アイゼンバーグ君が扮し、内向的に見えながら、冒頭の彼女との、かみ合わないセリフのやり取りなど、時々、控えめながらも自己喧伝したりするとこなんか、いかにも、ネット世代の人間らしさを演じてはります。

片や、音楽配信事業を始めた実在の方(ショーン・パーカー)を演じはる、ジャスティン・ティンバーレイクのアニキ。

ワケ分からへん、理論だっていないソフィストぶりで、みんなをケムに巻かはるんだす。

全体の構図は、成功したけど、イロイロあって民事裁判ざたになっておます現状と、成功するまでの足跡をカットバックしてゆく作りになっておます。

2人で始めて、どんどん話題を呼んで広がってゆき、やがてジャスティンのアニキと提携して、さらなる広がりを見せてゆく。

ゆうてみたら、そうゆうことなんやけど、誰もが見られてオープンなネット・ビジネスの持つ意外な閉塞感やら、マカ不思議なあたりを、雰囲気的にフワ~ンと見せてゆくようなとこが、自然体でよろしおました。

一部には、新聞王を描いた名作「市民ケーン」(1941年)ばりの仕上がりやとの声も上がっておりま。

ビジネス・ライクに徹する、クール人間を描いた作品群は多いんやけど、やはり、どこかに人間的な、人間臭いとこがあったりします。

本作もその例に漏れへんねんけど、ラストで主人公が見せるあのカンジ、あの表情が、ココロのどこかのツボにきよりました。

今回のアカデミー賞も混戦の気配がしよりますが、個人的には「インセプション」(7月19日付けで分析)を応援しとります。でも、本作やら「英国王のスピーチ」やら、強力作品が目白オシや。突然、スゴイのんが現れたりもするしね。

でも、本作でフィンチャー監督は、間違いなくオスカーに王手をかけてはると、ボクは思います。

2010年12月24日 (金)

フランソワ・オゾン監督作品「リッキー」

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オゾン監督の七色の変化球はホンマ、冴えまくっておりまっせー

赤ん坊もの・天使もの映画やら、ディズニー映画へのアイロニーに満ちておます

http://www.alcine-terran.com/ricky

東京は既に公開されましたが、関西はこれからでおます。2011年のJANUARY's Fourth SATURDAY 、1月22日から、大阪・梅田ガーデンシネマでロードショーでおます。

その後、2月22日から神戸・元町映画館やら、春には京都シネマにも登場だす。

2009年製作フランス・イタリア合作の、本作を配給をばしやはるのは、アルシネテランはんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⒸEurowide&Foz

昨日分析しよりました「しあわせの雨傘」の前年に、フランソワ・オゾン監督が撮らはった作品でおます。

変形家族映画ノリは本作でも絶好調でおまして、主婦ヒロインに焦点を当てた「しあわせの雨傘」とは違い、こちらはベイビーへフォーカス。しかも、空飛ぶ天使でおます。ホンマにビックリさせてくれはりま。

写真に写ってはる、ハイパーなキャメロン・ディアスを抑えめにしはった、みたいなアレクサンドラ・ラミーのネーさんがマミー役でおます。お嬢ちゃんと2人で住んで、最初は母子家庭でおます。

でもって、勤めてはる工場で、写真に写っておます男と知り合わはります。知り合って何とすぐに、工場のトイレで………トイレの全景を映し、男女順に出てくる様子を捉えた、この1分強の長回し撮影は、この変形家族ドラマの方向性をば暗示してはります。いわゆる新種のカットボールでおましょうか。

そもそも冒頭のラミーのネーさんがアップで、何か訴えてはる長回しカットからして、いきなりの変化球でおまして、それもデッドボールすれすれの、シュートでおますよ。

で、この男はんどすが、「ナイト・トーキョー・デイ」(10月7日付けで分析)で菊地凛子ネーさんと、ええことしてはったスペイン男優、セルジ・ロペスのアニキが扮しはりました。

てなわけで、男が母子家庭に入り、めでたく男の赤ちゃんが生まれたとゆうのが、記念写真やおまへんが、2枚目の写真でおます。

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それでもまあ、ここらあたりまでは、マットウな作りとも言えんこともなかったんどすが、いよいよ本番に向けてチビチビ、ドカーンときよりますで。

キズみたいに見えよる、背中に羽根が出掛かっとるのを、妻から夫の不注意やと言われたロペス・アニキが家出しはります。

でも、ベイビーの羽根はスクスクと出てまいります。でも、母子はこれを内緒にし、羽根を分析し、何と部屋内で飛ばさはりまんねん。

この種の赤ちゃん映画に特徴的な、赤ん坊自身のナレーションもなく、またハリウッドの天使映画的なフィクション・ドラマ性を追究せずに、あくまで日常的な視点をば持続させはります。

加えて、ディズニー映画的に、ファンタジックに魅せることもしやはりません。赤ん坊が室内を前触れに、写真3枚目のスーパーマーケットの天井や、遂には空へと飛んでゆくシークエンスなど、ファンタジーではなく、日常に起こった異変として捉えられておるのどす。

間違いなく、正統派天使映画やディズニー映画へのブラック・アンサーにして、アイロニーが入った作りなんでおますよ。

ラストのサプライズも強烈どす。むしろ、ホラー「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年製作・アメリカ映画)のような意外性がござります。アラマ・ポテチンどした。

2010年12月23日 (木)

フランソワ・オゾン監督作品の2日連続分析の1日目は「しあわせの雨傘」

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フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ大ネーさんへの、敬意が思いっきし捧げられた軽コメディでおます

変形家族ドラマ映画にして、変形夫妻映画にして、変形三角関係恋愛映画にして、変形ヒロイン映画やなんて、一体どんな映画やねん?

http://amagasa.gaga.ne.jp/

2011年のJanuary1月の8日Saturdayから、東京・TOHOシネマズ シャンテや新宿ピカデリーやらで、関西は大阪・梅田ガーデンシネマやら、なんばパークスシネマ、MOVIX京都やら神戸国際松竹で、全国ロードショーでおます。

本作のフランス映画を配給しやはるのんは、ギャガはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⒸMandarin Cinema 2010

フランソワ・オゾン監督の、2009年製作分と2010年製作の本作最新作の2本が、ほぼ同時期に日本公開されよります。そこで、2日連続にて作品を解析いたします。

さてはて、みなはん、オゾン監督って知ってはります? 彼の作品を見はったことはありますか。彼の作品でイチバンのヒットになった「8人の女たち」(2002年製作・フランス映画)は、何とかまあ、見てはるんやないかな。

ミュージカルで犯人当てのミステリー。しかも、ミュージカルでも、往年のハリウッド・ミュージカルの、明朗快活なストレート系やおまへんどした。変化球なんですわ。

それが、カーブかシュートかナックルかフォークかスライダーかマッスラかカット・ボールか新種の変化球か、まあ、イロイロござりましてな、ほんでもって、本作はマッスラどす。まっすぐにくるカンジの、スライダーなんどすえー。

何しろ、まずは、フランスの大女優はんの、カトリーヌ・ドヌーヴの大ネーさんが主演どす。コレはまっすぐそのものだす。

でも、これまでのドヌーヴ・イメージをば、徐々にとゆうか、ある意味においては冒頭から、変えていかはる、つまり、スライドしてゆくような作りになっとりまんねん。

一方で、恋愛ミュージカルの大傑作「シェルブールの雨傘」(1964年・フランス)をはじめとした、ドヌーヴ姉さんが、彼女の黄金時代ともいえる1960年代に出てはった作品キャラクターは、現在どんな風になっとりまんねんな観点がござります。

そやから、見出しにも書きよりましたけども、家族ドラマ、夫妻ドラマ、恋愛ドラマにしても、そんな彼女のかつての役柄のいくつかが、反映されとります作りになっとりま。

しかも、彼女のイメージとは違う、コメディ・ノリでいかはるので、イメージを変えながら進んでゆくとゆう、とんでもない仕掛けでおます。本作の時代背景は、1977年と1978年どす。写真のように、冒頭から出よります、赤ジャージ姿でジョギングする彼女なんて、まあ、これまでは考えられまへんどしたえ。

「終電車」(1981年・フランス)のその後にも見えんこともない、ジェラール・ドパルデューはんとの共演やらも、オモロおます。

フランス映画っぽいポワ~ンとしたサントラから始まり、シメは、ドヌーヴ姉さんがしっとり歌うシャンソン「人生は美しい」どす。

いかにも、ドヌーヴ姉さんバンザイ映画にも見えましたが、「クリスマス・ストーリー」(11月18日付けで分析済み)なんかと比べて見はったら、演出意図のビミョーな違いに、フムフムとうなずけるハズどすえー。

2010年12月22日 (水)

二宮和也&松山ケンイチ主演「GANTZ」(ガンツ)

簡単にゆうたら、人類VS宇宙人なんやけど…

サバイバル・ドラマとか、「ゴースト」みたいに死んでる系とか、さらにアメコミ系まで、イロイロおますんやで~

大ベストセラーのコミック原作が、アニメ化を経ずに、ストレートに実写映画化されよりました

Gantz

http://www.gantz-movie.com/

1月JANUARYの29日SATURDAYから、TOHOシネマズ梅田やらで、全国東宝系イッセーのロードショーでおます。

PG-12指定の本作を配給しやはるのは、東宝はんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

これまでにもぎょうさんござりました、大ベストセラー・コミックス原作の実写映画化作品でおます。

こういう作品の場合は、こんなキャラと違うねん! なんてゆう、コミックスのファンに対して配慮を示しつつも、映画的にどない設計してゆくのんかが、売れるか売れないか、評価されるかされないかの、大きな鍵をば握っておます。

でも、原作がしっかりしておすれば、むしろ映画の方が、原作を超えたかどないやなんちゅー、プレッシャーがかかってきよります。

この原作コミックどすが、2000年から雑誌連載が始まったとゆう経緯がござります。

その2000年以前に発表、もしくは公開された映画の要素が、イロイロ入っております。

そやから、本作もまた、それらの名作の影響ぶりが反映された作品になっておるのどす。

ただし、それだけやなく、そのリスペクトの先、つまり応用させていくとゆう点にも、本作の異色さがござるのです。

今までは、死んでもうて天国、あるいは天国への中継地点や扉から、地上に舞い戻って、心残りなことを達成して昇天するとか、「ゴースト ニューヨークの幻」(1990年製作・アメリカ映画)みたいに地上でさまようとかが多かったけど、そんな死後の世界観的描写がまず、本作では定番をはずしておます。

次に、基本的には、地球侵略宇宙人VS人類から選ばれしヒーローたちとゆう構図で描かれるのに、そのままストレートに対決するスタイルをはずしてはります。

でもって、死んだのに選ばれしヒーローになってしもて、宇宙星人と対決し、サバイバルしてゆくなんて、サバイバル映画のノリも大いにあるんどす。

最近でゆうたら「プレデターズ」(2010年・アメリカ)やら、「インシテミル」(10月8日付けで分析)みたいなカンジかな。

さらに、列挙しよりますと、「スパイダーマン」(2002年・アメリカ)やらのアメコミ系はモチ、仮想シチュエーションもの「マトリックス」(1999年・アメリカ)とか、対決するキャラ設定と勝負の決め方では「メン・イン・ブラック」(1997年・アメリカ)なんぞに、かなり影響を受けてはるんやないかいなと、ボクは思いました。この引用3作は全てシリーズ第1弾。

タイムリミット系の3対決が展開しますけども、個人的には、第3のクライマックス対決が好みどす。

「大魔神」シリーズ(1966年・全3作)みたいな、仏像系モンスターとの対決が次々に展開して、ハラハラドッキリもんどすえー。それまでの2対決もええんやけど、断然オリジナリティーにあふれた対決でおました。

「20世紀少年」シリーズ(2008年~2009年)みたいに、小学校の同級生やった2人、嵐のニノこと二宮和也クンと、松山ケンイチ兄貴の迷パートナーぶり、現実編の吉高由里子嬢のニノへの片思い描写とかも、大いなる見どころやと申せましょうか。大バッテキの夏菜(なつな)チャンも、ええカンジでおます。

新作コミックが2011年1月19日発売で、本作のPART2が4月23日に公開どす。予告編でニノがゆうてる「いつまで戦うんだ?」がイミシンやね。シリーズ化できるんとちゃあうん? そんな楽しみも増す今日この頃でおます。

2010年12月21日 (火)

ポルトガル映画「美女とパパラッチ」(仮題)

「ローマの休日」やら「ノッティングヒルの恋人」やらが、リスボンになったロマンチック・ラブ・ストーリーでおます

3人のお調子者と、ハリウッド女優並みの美女が繰り出す快・快作どす

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http://www.oeff.jp/

「第17回大阪ヨーロッパ映画祭」でのプレミア上映を経まして、日本公開待機作となりよります作品でおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

パパラッチ(女優は彼の正体を知らはりまへん)と美人女優の恋を描く、都会派のロマンチック・ラブ・ストーリーだす。

このシチュエーションで思い出されよりますんは、チョー名作「ローマの休日」(1953年製作・アメリカ映画)があり、「ノッティングヒルの恋人」(1999年・アメリカ)やらがござります。

映画史において、パパラッチを初めて描いた「甘い生活」(1960年・イタリア&フランス)はモチ、そのものズバリの「パパラッチ」(1998年・フランス)なんぞもおます。

それだけやおまへん。スクリューボールやらシチュエーションやら、都会派やらのコメディ・センスでゆうと、エルンスト・ルビッチ監督作品や、その愛弟子のビリー・ワイルダー作品までも、シンクロナイズしよりますで。

また、片方に嘘があるとゆうとこらでは、「トッツィー」(1982年・アメリカ)とかもありよります。「甘い生活」やら「パパラッチ」は違いますけども、主にハリウッド映画へのオマージュ・スタイルなんどす。

本編では役者のセリフとして、マーロン・ブランドやら、スカーレット・オハラに扮した、ヴィヴィアン・リー主演の「風と共に去りぬ」(1939年・アメリカ)やら、「マトリックス」(1999年・アメリカ)まで出てきよるんでおますよ。

ものゴッツーなハリウッドへの傾倒ぶりでおます。しかも、そんな作品が、ポルトガルから出てきたことに、ドでかい驚きがござります。

さてはて、いきなり映画的シンクロをば、披露しよりましたけども、本作のプロデューサーのティノ・ナヴァーロはんは「現代のポルトガルを描いた映画です。主に現在、セレブにプライバシーがなくなっているような状況を描こうとしました。でも、オール・リスボン・ロケにより、リスボンへのラブレターでもあり、世界で一番美しいリスボンという町を見せたかったんですよ」と語らはります。

実は、その通りでおまして、音楽を流しての流れるような短カットの連続で、2人のリスボン・デートやらをば描いてはります。オールド・ムード・ナンバーを流して、歩道で2人が裸足でダンス・シーンなんか、印象的でおます。

それにしても、キャスティングぶりには目を見張りました。主人公を含む主人公の友達2人やら、主演女優の造形ぶり。それらには、ハリウッド的な魅力がおます。

まるでラッセル・クロウみたいな主人公、ジュリア・ロバーツ的な女優ぶりを示さはるヒロイン像。

ホンマ、最近のハリウッド映画でも見られへんような作りに、ビックラこきました。ポルトガル映画のイメージを変えた会心作でおます。

2010年12月20日 (月)

人気ファッション・モデルの実話映画「デザート・フラワー」

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「プリティ・ウーマン」以上に格差ある、シンデレラ・ストーリーでおます

しかも、社会派的問題も入った、ホンマのホンマの話やなんてビックラコンどす

http://www.espace-sarou.co.jp/desert/

December12月の、Saturdayクリスマス25日から、東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田、シネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。

イギリスとソマリアを舞台にした、ドイツ・オーストリア・フランス合作の本作を、配給しやはるのは「エスパース・サロウ」はんと「ショウゲート」はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸDesert Flower Filmproductions GmbH

ボクチン、ファッション業界には、えらいウトくてトロいんでおますが、みんな、世界的なトップ・モデルはんらしい、ワリス・ディリーのネーさんって、知っとるかー。

フランスのファッション雑誌「VOUGE」やらの、表紙モデルをはじめ、世界のコレクションに出まくってはる方どす。エビちゃんや香里奈ネーさんやらより、格はダイブと上らしいどすわ。

そんなネーさんが、自身の半生をば回顧しはった自伝「砂漠の女ディリー」を1999年に出版しはりました。本作はそれを原作にした映画でおます。

親の決めた結婚が嫌で、家出しはったヒロインは、都会へ出てホームレスしてはったけど、親切な友人と知り合い、バーガー店のバイトを、紹介してもうて働いてはりました。でもって、その店の常連やった一流カメラマンの目に留まり、アラマ・ポテチンてゆうてる間に、ファッション界の売れっ子スター街道まっしぐらでおます。

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まあ、ストーリーを簡単にゆうたら、そういうことなんでおますが、コレが日本の田舎から上京して、若者がサクセス・ストーリーを紡いでゆくようなスタイルと同じように見えながら、実は大いに違(ちご)ておます。

故郷アフリカのソマリアからの家出でおまして、砂漠をひたすらハダシで歩いてゆくのでおます。それで、何とか親戚のおばちゃんのとこにたどり着かはって、コネ使(つこ)て、おじさんが勤めてはるロンドンの、ソマリア大使館の仕事を世話してもらわはります。おじさんの任期が終わったら、祖国へ帰らないけまへん。

そやけど、彼女はある理由で帰りたくないんでおます。そやから、こっそり逃げて、ロンドンでホームレスになってはったんどす。不法滞在者ですわな。そやから、ファッション業界で売り出し中の時に、その大きな問題が起こってまいります。彼女は一体、どないすんのん? それだけやおまへん。ほかにも次々に問題が発覚してゆくのです。

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タイトルの意味は「砂漠の花」どす。そのタイトルにふさわしく、冒頭は弦楽オーケストラをゆったり流して、放牧の牧歌的なシーンが綴られよります。ところが、このシーンは、ヒロインが家に帰りたくない、ホンマの理由を描く衝撃のシークエンスと、強烈に対比させてはります。

路上娼婦から玉の輿への「プリティ・ウーマン」(1990年製作・アメリカ映画)はフィクションでおましたけど、ホームレスから花形モデルの本作は実話どす。これらの対比・格差描写は、イロイロやってはります。

過去と現在を交互カットバックとゆうか、ヒロインのキモチ描写に合わせて、過去シーンを随時挿入していくとゆう作りどす。

フツーのシンデレラ・ストーリーやない、社会問題的な“負”の部分が入った本作は、「事実は小説(フィクション)よりも奇なり」の格好の見本でおました。

2010年12月19日 (日)

アメリカ映画「きみがくれた未来」

全米テレビドラマから映画へ進出しはった、若手スターがケッコー出てはります

死んだ人との交流映画から、ラブ・ストーリーへと変転する作りに妙味がありまっせ

http://www.kimi-mirai.jp/

12月23日の天皇誕生日・木曜日から、東京・TOHOシネマズ スカラ座・みゆき座やらで、全国各地イッセーのロードショーでおます。

近畿やったら、大阪・TOHOシネマズ梅田、敷島シネポップやら、京都・TOHOシネマズ二条、兵庫・TOHOシネマズ西宮OSやらで上映どす。

本作の配給会社は東宝東和はんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010 Universal Pictures. All Rights Reserved

アメリカン映画の日本での復権が、なかなかままならへん状況が続いておます。

でも、ハリウッドでは、いろんな新人たちを起用し、アメリカでは大ヒットをかましてはる状況とゆうのんがござります。本作もそんな1本でおましょう。

日本人はほとんど知らないんやけど、アメリカではチョー人気者。いわゆる、国民的ヒットのテレビドラマからデビューしはって、映画界へ進出。大ヒットし、主演俳優はんもブレイクするとゆう流れが、アメリカでは1つの俳優ブレイクの、ワンポイントになっとります。

日本に対応すると、このパターンよりは、テレビ局、もしくはテレビドラマ系主導型が多うおます。テレビ局が映画製作に関わる、もしくは、テレビドラマが劇場版とゆうパターンどす。俳優視点とゆうのは、そんなにありまへん。

テレビ→ハリウッド映画デビューとゆう、簡単にゆうたらでんな、俳優のシンデレラ・ストーリーとゆうもんが、今やこの日本のヒット方程式では、機能せんようになっとるんでおますよ。

ザック・エフロン君やなんて、みんな、知っとるかー、知らんやろ。「キス&キル」(12月1日付けで分析)でも、ボクはこのコトバを発しました。

日本で売れるようにするためには、どないしたらええねんと、洋画の配給会社はんは、今大いに悩んではるんどす。東宝作品ばっかしやん、やないんどす。

でも、やっぱり、映画としての面白さが基本どす。そして、本作は、映画的な仕掛けやら伏線が巧みな快作やと、ボクは思いました。

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死んでしもた人と交流する映画なんてゆうたら、みなさんもそれなりに、思い出さはる映画がおましょう。

本作では、主人公のザック・エフロン君の幼い弟はんどす。交流する死んだ人が弟とゆう設定は、映画史においては初めてなんやないかな。

片や、主人公にはスポーツとしての、ボートへの思いがござりまして、そのボートで世界一周するやなんてゆう無謀な女の子と、仲良うならはります。その女の子との、ラブ・ストーリー部もまた展開されよります。

ああ、そんなん、ようある話やんかーと、思わはる方は多いでおましょう。うーん、なんちゅうたらええやろか、本作と関連するような作品をイロイロ出してみたら、いっぺんにネタバレの興ざめになってまうとゆうか。

そやから、遠慮しときますけど、でも、ひとコトゆわしてくだされ。「シックス・センス」(1999年製作・アメリカ映画)と同じくらいの、サプライズがござる映画どす。

海辺の夕景カットやら、映画的醍醐味シーンの「マジック・アワー」カットを狙ったり、「天国から来たチャンピオン」(1978年・アメリカ)みたいなサプライズ、明るかったりさわやかやったりの、歌ものポップをメインにしたサントラ使いも、本作を軽快に弾ませておますよ。

2010年12月18日 (土)

日本映画「犬とあなたの物語 いぬのえいが」

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松嶋菜々子ネーさんと大森南朋アニキの、イヌ・ラブ夫妻映画がクライマックス・エピソードでおます

「いぬのえいが」に続くんやけど、まだまだイヌ・オムニバス映画のアイデアはナンボでもありまっせー

http://www.inu-eiga.com/

2011年1月睦月の22日土曜日から、全国ロードショーでおます。

関西やったら、大阪はシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマやら、MOVIX京都、神戸国際松竹、シネ・リーブル神戸やらで上映どす。

本作を配給しやはるのは、アスミック・エースはんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010『犬とあなたの物語』製作委員会

犬のエピソードが満載やった「いぬのえいが」(2004年製作)の続編と申しますか、俳優陣もイヌたちも一新しての第2弾でおます。

こういうオムニバス映画とゆうのんは、日本の場合は、「バカヤロー!」シリーズ(1988年・1989年・1990年・1991年)みたいに、どちらかといえばコメディ・タイプが多うござりました。

本作もまた、コメディ・ノリとゆうか、コント・ノリの逸話から入ってはります。けども、これが後半では、シリアスな夫婦ものへと転換し、ラストは北乃きいチャンの癒やしのエピソード(写真中)でシメはります。前作の「いぬのえいが」の宮崎あおいチャンのようなシメ具合どした。

さらに、「いぬのえいが」では、イヌを主人公にしたショート・ストーリーが多かったんどすが、本作では、あくまで人間のキャラクターの面白さへとシフト転換してはりま。しかも、コメディチックとゆうより、コントチック。

冒頭の中尾彬はんが実名で出はり、お笑いオナゴ・コンビのハリセンボンやら、チョイ役で天海祐希が出てはったりと、いきなりの豪華版や。犬ものテレビ番組へのショート・パロディといった括りで、コント・ノリ・ドラマがいくつか披露されよります。

赤川次郎の三毛猫シリーズとか、宮部みゆきの「我らが隣人の犯罪」へのパロディ的視点もある、内野聖陽ことマサアキのアニキが刑事役主演した、誘拐ものユーモア・サスペンスとか、家に愛犬を1人(匹)置いてきてしもた高畑淳子ことアツコネーさんのトンデモ・コメディエンヌぶりとか、イロイロと笑かしてくれはります。

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でもって、クライマックスにやってまいりますのが、写真イチバン上の松嶋菜々子ネーさんと大森南朋アニキの夫婦ドラマどす。

それまでのコメディ・コント・イメージが、ガラリと変わります。まるで、ラブラドールレトリバーのイヌ付きで展開する「明日の記憶」(2005年)でおます。

「忘れてしまうんだ」と言う、大森アニキの1分くらいの嘆きの長めの撮影シーン、何やら多い松嶋ネーさんのアップ、人物は影のように暗いけど窓は白っぽい逆光カット、コドモ時代と結婚後を描く時間軸感、桜の大樹と2人と1匹の、ロングショットの絵画的構図やらが、印象に残ったりしよりま。

イヌ好きに媚びることなく、映画としてのプライドを示さはった、このエピソードの長崎俊一監督は偉かったと思います。

ラストロールではJUJU(ジュジュ)の、Jポップ・バラード「願い」が流れよります。日本の女性ポップ・アーティストの今を、感じさせてくれはります。映画とラストに流れる主題歌が、合ってへんような曲があったりしよりますが、この曲は後半のシリアス・ドラマの余韻を高めてはりました。どすえー。

2010年12月17日 (金)

韓国スパイ・コメディ映画「7級公務員」

シリアスな極北系「シュリ」「JSA」やら、TVドラマ「アイリス」やらとは、180度正反対の陽気な極南系にいとります。

キム・ハヌル姉さんとカン・ジファンのアニキが、アクションのボケとツッコミをやらはりまんねん。

http://www.7kyu.com/

December12月のSaturday18日から、東京・シネマート六本木、大阪・シネマート心斎橋やらで、全国ロードショーでおます。

本作をば配給しやはるのは、エスピーオーはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸDCGPLUS / SPLUS ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED

コメディ入りで、スパイ映画でアクションもの。みはさん、イロイロと思い出さはる映画はありますやろなー。

ストーリーを言いまするに…。恋人同士やったのに、彼女が忙しくて別れてしもた、キム・ハヌルのネーさんとカン・ジファンのアニキ。

数年後、彼女が清掃してた男のトイレで、再会した2人どすが、かつてのキモチがメラメラ再燃しよります。で、再び恋に落ちました。

ところが、この2人は同じ韓国スパイ局に所属してはって、女は国内対策スパイ、片や男は国外対策スパイでおまして、同じ情報局でも部屋が違ってましてな、お互い会えないような設定にしてはりま。

そやけど、任務執行中には、2人はよう会わはるようになっておまして、波紋がオモロオカシク広がってゆくなんて作りになっておます。

夫婦がお互いスパイやのに、お互い知らんと結婚してもうて、知った時にはトンデモネーことになってまう、あのブラピとアンジーの「Mr. & Mrs. スミス」(2005年製作・アメリカ映画)のノリがござります。

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シリアスなスパイ映画に、コメディ・スパイスをふりかけてやってまう場合とゆうのんは、ある意味において危険でおます。

なんでかとゆうと、シリアスものとコメディは水と油なとこがあって、お客さんにしてみたら、「バカバカしい」のひとコトで終わりかねへんやも分からんのどす。

そやけど、ボクはリメイク版「黒い家」(2007年・韓国)でも魅せてくれはった、シン・テラ監督のネチネチした、しつこいくらいの演出ぶりが、本作でも生かされておったんやないかいなーと思とります。

それは、例えばメイン・ソースともいえよる、アクション・シーンでおます。

冒頭からいきなりですわ。花嫁姿で、ですよ、キム・ハヌルネーやんが「フェイス/オフ」(1997年・アメリカ)もかくやみたいな、海上の追走アクションを、派手にカマさはるんですわ。

主人公とのケンカ・シーンやらでは、叫びのコメディエンヌぶりとは何ぞやを、追究してはるしな。

片や、カン・ジファンの兄やんも「映画は映画だ」(2008年・韓国)で魅せはった、泥だらけの格闘シーンに優るとも劣らないバクレツぶりを見せてくれはりま。

そんななかでも、オモチャの銃にホンモノの銃が混じった設定での、敵とのバーサスやら、馬・バイク・ポニーの追逃走劇やらで、コメディ・リリーフ(シリアスの連続を和らげるために、笑えるシーンを挿入しはる手法でおます)的アクション・シーンも笑えますで。

「シュリ」(1999年・韓国)「JSA」(2000年・韓国)、韓国TVドラマ「アイリス」やらを、シビアな極北系とするなら、本作はホンマに陽気でスチャラカ(おバカ)な、いわば極南系でおます。みなさん、そのノリをば、とことん楽しんでおくんなはれ。

2010年12月16日 (木)

日本映画「堀川中立売」(ほりかわなかたちうり)

こんな京都映画やなんて、「鴨川ホルモー」を完全に超えてしもた、オカルト、いやカルト映画やんけー、ですわ。

基本ラインは「セブラーマン」なんやけど、このトンデル・ワケ分からん系は、カルト映画史にサンゼンと輝いたりしよるかもな。

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http://www.horikawanakatachiuri.jp/

東京・ポレポレ東中野、吉祥寺バウスシアターやらでの上映を経まして、2011年の弥生3月に遂に、関西にやってきよりますで。京都シネマ、大阪・シネマート心斎橋で上映どす。4月には神戸アートビレッジセンターやらでも。本作をば配給しやはるのは、シマフィルムはんやでー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2010 SHIMA FILMS  Photo by Shinko Tsujimoto

一体もって、コレはなんやねん。カラダ、ガクガク。アタマ、クラクラ。ハチャメチャのメチャクチャ。何が何やらサッパリ分からへん。

みなさん、きっと驚かはることでおましょう。ボクもビックラこきましたがな。一体、どないなっとんねん。そう、コレがこの映画のキモであり、本質でおます。

このところいっぱい出とる地方映画への、限りなきアイロニー。でもって、地方映画にはかつてないくらいの、カルト映画を作り出したろかいなーとゆう、ある種悪意にも満ちた試み。いやあー、とことんのやりまくりどすえー。

カルト映画とは何ぞやを、改めて考えないかんような、問題作になりましたがな、ホンマ。

「堀川中立売」やなんて、京都の堀川通りと中立売通りが、交錯するとこのエリアでおます。ボクチン、京都の同志社大学で同ヤンやってたから、よう知っておまんねん。

でも、このタイトルのノスタルジックな、ふるさと共生みたいな響きやらとは、本作は540度くらい違っておます。京都を舞台にした映画としては、「鴨川ホルモー」(2009年)やらもケッタイやったんやけど、本作はその頭上をフワ~ンと漂っておますんどすえー。

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ヤラレましたがな、ホンマ。この話でおますが、地球を侵略せんとする妖怪グループと、それに応戦せんがために、「宇宙警備隊」を名乗る男とのバーサスがメインにござります。

「宇宙警備隊」男の手下となる2人、さらに何にもしないコドモたちに加え、大人になって出所した少年犯罪者の今を入れた上で、TVニュースやらをタイトに流してゆくとゆう設定なんどす。

フツーにマトモに作ってしもたら、コレはたぶんマットーな「ゼブラーマン」(2003年・2010年製作)やったことでおましょう。ところが、どっこいどす。

そんなフツーな作りにしてもうたら、オモロないっちゅうことで、とことん、どこまでもカルトチックにはずしてまいるのどすえー。何、考えとんのかよう分からへんで、コイツラ。

そもそも、妖怪対警備隊の対決構図やなんて、見終わって、えー、そんなんが描かれとったんかいなと、ビックラこくぐらいでおます。

でもってでんな、これまでの映画には登場せんかったキャラクターをば、思いっきりつぎ込んではるんも、ワケ分からなさを増しよりますんやで~。

理屈っぽい職業ホームレスとか、身体障害者の保護士とか、トンデモ・キャラが脇にウロチョロしておます。

で、そんな流れにおいて、ラストの「お疲れさ~ん」と、ビールで乾杯するシーンやなんて、人を食っておます。タテノリ・ロックから癒やしのアコギへと移るラストロールも、何やらふてぶてしかったでおます。

エエ加減にしときやーな、カルト映画のチョー怪作でおました。ヤリスギー。

2010年12月15日 (水)

日本映画「面影」

ショート・フィルムの醍醐味が詰まった、大阪ロケーション映画やねん

日本語と大阪弁とオランダ語と英語が混じったやなんて、「ブラック・レイン」以来の混成ぶりやでー

http://www.oeff.jp/

2010年第17回大阪ヨーロッパ映画祭でプレミア上映後、公開待機作品となっておます作品やでー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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たったの3日間で、24分の短い映画を撮ってくれへんか。主演男優はベルギーの名優のヤン・デクレールはんや。ロケーションは大阪限定や。どないですかー。

なんて、もしあなたが持ちかけられたとしたら、どないしやはります。スンマヘン、堪忍してーな、やわな。

実は、こんな制約のなかで、映画が作られておる現状とゆうもんがござるのです。それは長編であれ、ショート・ストーリーであれいっしょなんやなー、これが。

お蔵入りする映画、つまり、映画館でも掛からへんし、DVD、ブルーレイにもなれへん映画っちゅうのんは、モノスゴイ数にのぼります。陽の目を見ない映画は、見た映画と同じ数くらいあるんやないやろか。

そんななかでも、日々、映画は作られてゆきます。素晴らしき作品であっても、われわれの目で、その素晴らしさを確認でけへん作品が、ホンマにいっぱいあるんですわー、これが。

本作の万田邦敏監督のアニキは、「小さい作品です。実は、ヤン・デクレールさんを恥ずかしいことに、僕は知らなかったんですが、ヤンさんの深いお芝居によって、作品に深みができました」と語ってはります。

でもってでんな本作をば、ボクは見させてもらいました。まず、大阪ロケでも、大阪・大阪したとこをはずして、かなりミニマムな平野区の街を選択しはりました。モチ、今までの大阪ものにはないとこを出すためには、ええ選択でおましょう。

日本語とゆうか、大阪弁が頻出し、デクレールはんは英語・オランダ語で何とか応じはります。「サンキュー、グッドバイ」は「おおきに、さいなら」でおます。言葉の綾とか雰囲気で、以心伝心するようなとこもござります。

この英語と大阪弁の混合部は「ブラック・レイン」(1989年製作・アメリカ映画)以来とちゃうかなー。日本語の標準語と、大阪弁・関西弁の違いについては、また、別の機会にゆっくり語らせてもらいま。

さて、本作の短編のキモは、父子のキズナでおます。親子のキズナ映画なんて、そら、映画史においては、めまいがするくらい多いわな。でも、24分や。感動的に描けるような、余裕やら時間やらはござりまへん。

そやのに、ここに、胸にクルんやね、コレが…。なんでやねん。

3年前に死んだ息子はんが、作ったとかゆう椅子を見はって、ゆっくりカメラが動くなかで、デクレールはんが渋く述懐するシーンでおましょう。凝縮された24分のなかのハイライト・シーン。ココロ揺さぶられよりました。

2010年12月14日 (火)

台湾のヤクザ映画「モンガに散る」

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台湾の格闘アクション映画やなんて、今までのナイーブな台湾映画を超えはって、本国で大ヒットでおます

香港「男たちの挽歌」、韓国「友へ、チング」、日本「仁義なき戦い」やらに迫る出来どすえー

http://www.monga-chiru.com/

師走12月の、クリスマス・イヴやらお正月を狙わはって、18日土曜日からロードショーだす。

東京では、シネマスクエアとうきゅう、シネマート六本木やらで、大阪やったら、シネマート心斎橋やらで上映でおまして、その後、全国順グリに回りますで。

本作を配給しやはるのは、ブロードメディア・スタジオはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 Green Days Film Co. Ltd. Honto Production All Rights Reserved.

台湾映画興行史上、歴代2位の歴史的大ヒットをば、かまさはった作品でおます。

台湾映画やなんて、みなさん、見はったことはおますでしょうか。見てはらへん方は、どんなイメージをば持ってはりますやろか。

確かに、アジアの洋画では、香港映画やら韓国映画やらと比べてしもたら、そら、マイナーなイメージがあるやも分かりません。

でも、アート映画系やったら、共に中国出身なんやけど、ホウ・シャオシェン監督やら、故エドワード・ヤン監督やらが、気を吐かはりました。台湾映画を知らん人にはよう分からへんかもしれんけど、一部はDVD化されとるんで、ツタヤでチェックしておくんなはれ。

でも、娯楽作品としては、世界で大ヒットしそうなんは、これまではそう作られてまいりまへんどした。

でも、でも、本作はその難題をばクリアーしはった、大娯楽活劇なんでおますよ。いわゆる、日本でゆうたらヤクザ映画、アメリカでゆうたら、生身の体でもって対決する格闘アクションとかになるでおましょう。

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台湾の台北の中心街モンガでは、2組の勢力に分かれて、いわゆる派閥抗争みたいなんを繰り返してはります。

そこへ、高校生の主人公が、ヤング武闘派グループに入って大暴れしはります。でもって、いわゆるフツーの不良映画から、やがてホンマの極道映画ノリのアクションへと発展してまいります。

さらに、仲間たちのキズナを描く義兄弟ものから、香港アクションのジョニー・トー監督的な黒社会ものまで、シューティングしていかはるのです。

最初は高校生のケンカ・ノリやったんが、弦楽オーケストラを流し、スローとフツーの動きを交ぜ合わせて、街を巻き込んでの2派の争いシークエンスから、ドカーンと流れが、大人のケンカ・モードへと変わりよります。

男たちの香港アクションのケッサク「男たちの挽歌」(1986年製作・香港映画)はモチ、男たちのキズナを描いたジョニー・トーの「エグザイル/絆」(2006年・香港&中国)やら「友へ、チング」(2001年・韓国)、さらに、裏切りやらもあるんで「仁義なき戦い」(1973年・日本)などとも、シンクロナイズしよります。

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そんななかで、ラブ・ストーリー部の純情ぶりやら、哀切ぶりも見ものどすえー。

主人公は高校の時に同級生やった女と、恋に落ちはります。その女はイロイロあったんでおましょう、今は娼婦をやってはるんどす。しかも、顔にアザがあって、娼婦やるにはマイナスなんどす。

赤い照明をフィーチャーした、主人公とこの娼婦のいろんなシーンは、しみじみと胸に迫ります。エア・サプライの曲を、2人のキズナの証しにするとこなんか絶品どした。

アクション一辺倒やない、こうしたキズナ描写部が、本作を映画的品格の高い作品にしてはります。いずれにいたしましても、台湾映画のイメージをば、快く変えてくれはった作品どすえー。

2010年12月13日 (月)

大作イタリア映画「シチリア!シチリア!」

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みなはん、監督の名前は知らんでも「ニュー・シネマ・パラダイス」は知っておますやろー

あのカンドーが再びやってまいりましたでー、ホンマどす

http://www.sicilia-sicilia.jp/

December12月18日Saturdayから、東京・シネスイッチ銀座、角川シネマ新宿やら、関西は大阪の梅田ガーデンシネマやらで、ロードショーでおます。

本作を配給しやはるのは、角川映画はんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2009 MEDUSA FILM

イタリア映画てゆうたら、みなはんのイメージはどないなもんでおましょうか。

地中海らしく明るかったりとか、コアな映画ファンでは、ハリウッドがしょっちゅう利用してはる「チネチッタ撮影所」とかを思い出したり、思い出さへんかったりと、イロイロなんやろなー。

ハリウッド映画やらと比べたら、そら、アクションやら大娯楽活劇やらは、そない期待はできまへん。そやけどなー、でおます。

1930年代から1980年代までを描く、家族ドラマ的大河ドラマとなりますれば、その種のヨーロッパ映画をば思い出さはったりして、ウーンとうならはるかもしれまへん。

でも、例えば316分の「1900年」(1976年製作・イタリア&フランス&西ドイツ製作)みたいな、とてつもない重厚感はないし、この間にあった戦争とか政治のややこしいとこなんかは、ヘヴィーやなく軽めにスーっと流すような程度で描き、胃もたれ感はありまへん。

悲劇部を控えめにして、あくまで真ん中の写真の少年が成長し、結婚し、家族を作っていくとゆう、シンプルな家族映画の在り方が、誰にでも分かるように描かれておるんどす。

驚くくらい普遍的でオーソドックスな作りなんやけど、本作のジュゼッペ・トルナトーレ監督の最高傑作「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年・イタリア&フランス)に出てきはった少年の半生を、細かく描き込んでみはったようなノリでもおます。

1人の男にフォーカスした「海の上のピアニスト」(1999年・イタリア&アメリカ)みたいなカンジもござります。

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でもって、映画的なシーンやら、映画へのオマージュ・シーンやらに加え、映画フィルムの断片をコドモらで楽しむシーンとか、映画のコアなファンに向けて、ある意味において計画的に作られたりしておます。

まあ、それらの映画を見ていない方にとっては、分からへん、となるかもしれませんが、まあ、そんなん分からんでも、ええんどす。

主人公を「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいに、映画ダイスキな性格設定にしてはるとゆうことでおます。

配色的には、陽光・家・壁・土地など、砂色と言いますか、セピアな色使いシーンが、ボクが見たところでは、全編の半分以上にわたっておました。

コレがシチリアなんでおましょうか。その色使いの在り方には、風土性をばカンジよりました。

そして、ブログにふさわしき個人的なことをば、最後に告白いたします。

ボクは本作の音楽監督エンニオ・モリコーネ御大の大ファンでおます。「荒野の用心棒」(1964年・イタリア&西ドイツ&スペイン)サントラもええんやけど、ボク的には御大の最高傑作は「アンタッチャブル」(1987年・アメリカ)どす。

登場人物たちを奮いたたせる、あの壮大で雄大なオーケストラ交響曲は、ボクの映画サントラのベスト・スリーに入りますで。

そして、本作でおます。モリコーネ御大の音楽が、ほとんどかかりっぱなしなんどす。

しかもでんな、弦楽オーケストラをベースに、穏やかにゆったりやったり、感動的・躍動的・不安感とか、シーンに合わせて絶妙な使い方をしてはります。

ぜひ映画ともども、チェックして見ておくんなはれ。

2010年12月12日 (日)

ホラー・オムニバス日本映画「オボエテイル」

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「リング」やら「パラサイト・イヴ」以前に発表された小説が原作でおます

香川照之のアニキやらが、トンデモナイ異次元をば体験しはりました

2011年の1月8日の睦月・土曜日から、東京は新宿K's cinemaやら、横浜ニューテアトルやらで、全国順グリのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2005(株)ベルウッド

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125分3話オムニバスによる、ホラー映画でおます。

ジャパニーズ・ホラーとして「リング」(1998年製作)やら「呪怨」(2002年)やらが、ハリウッドでリメイクされるっちゅう時代が到来し、それからもチョイ時が経ておます昨今どすが、コレは、それらの作品の原作小説が世の中に輩出する前に、書かれたもんを原作にしておます。

横溝正史賞に落選してもうたけど、その後出版された、鈴木光司の「リング」のベストセラーによって、作られることになった「日本ホラー小説大賞」ちゅうのんがござります。で、そこから出た「パラサイト・イヴ」とか「バトル・ロワイアル」なんかも、この短編原作の小説よりあとに発表されておます。

でもって、肝心の本作の原作をば書かはった、その作家とは高橋克彦はんどす。みんな、知っとるかー。まあ、知らんわな。

チョイ解説しよりますと、「写楽殺人事件」で江戸川乱歩賞を受賞しはり、その後、陳舜臣に続き、日本ミステリー賞の3冠王をば達成しはりました。

かなりマニアックな話になってしまいましたけども、この3つの賞とは、乱歩賞・日本推理作家協会賞・直木三十五賞でおます。その直木賞をば受賞した短編集が、本作で採り上げられたんどすえー。

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ホラー小説とゆうのんは、日本では1980年代頃には、アメリカのスティーヴン・キングみたいに練り上げられたもんなどは余りなく、往年の怪談ものとかが、怖がらせるとゆう意味において、それがホラーなんやと思われとったようなとこがござりました。

確かに「リング」によって、日本のホラー小説が一変したようなとこはあります。でも、そこへ持っていくまでには、ゆるやかやけど細かい流れみたいなもんがあったんどす。その1つが本作の原作どした。

そやから、今、ホラーとして定着しとる、いくつかの素粒子みたいなんが、本作には入っておます。

ザラついたホームビデオ映像を駆使する第1話「遠い記憶」(写真下)は、まさに呪いのビデオをピンポイントにしはった「リング」の前章版どす。

コドモの時の記憶をネタにしたとこやらは、「20世紀少年」シリーズ(2007年~2009年)やら、東野圭吾原作で映画化される「白夜光」(2011年1月29日公開)なんぞへもつながります。

また、中村美玲チャンがヒロインをば演じはる2話「前世の記憶」(写真上)では、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年・アメリカ映画)の、恐ろしさみたいなんを彷彿させはります。

でもって、ラストの「赫(あか)い記憶」(写真中)では、香川照之のアニキが「異人たちとの夏」(1988年)みたいな、ファンタジー・ホラーな世界へとさまよわはるんどすえー。

とゆうことで、今のJホラーの原点をカンジさせる、怖~い作品たちが揃っておます。

2010年12月11日 (土)

蒼井優主演日本映画「洋菓子店コアンドル」

コメディエンヌ蒼井優チャンの、チョー本領発揮でおます

江口洋介アニキやら皆が、往生しまくりの快・怪演技やでー、ホンマ

おいおい、「白夜行」とおんなじ監督の作品やなんて、とても思われまへんでー

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http://www.coin-de-rue-movie.com/

如月(きさらぎ)2月は、11日の金曜日の「建国記念の日」から、全国ロードショーでおます。

関西やったら、大阪・梅田ガーデンシネマやら、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸やらで上映しはります。

本作を配給しやはるのは「アスミック・エース」はんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会

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ホンマのホンマに、やってくれはりましたわ。

「フラガール」(2006年製作)やら「雷桜」(10月9日付けで分析)やらでも、いつなんどきバクハツしてもおかしくない、コメディエンヌな爆弾が、チラホラしとりましたけども、本作ではドッカーンと大サクレツしよりましたで~。

「告白」(5月28日付け)みたいに、「なんてね」は入っておりまへん。心底からヤラレそうな、ホンマもんのバリバリもんどす。

蒼井優チャンてゆうたら、実は天才的なコメディエンヌなんでおます。

いや、そのアクトレスぶりは、テレビや映画の「のだめカンタービレ」でブレイクしはった、アノ上野樹里チャンに比肩するモンがござります。

その樹里チャンとは「亀は意外と速く泳ぐ」(2005年)やらで共演し、叫びのコメディエンヌぶりをば披露しはりました。

でもって、本作どす。消極系ネガ(ネガティブ)入りの「百万円と苦虫女」(2008年)とは違う、ポジ(ポジティブ)入りネアカ系の、いわゆるコメディエンヌ・スタイルでも、レンジの広さをば示さはったんどすえー。

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パティシエとして東京の店に就職しはった、婚約者の彼氏を追って、九州から優チャンが上京してまいりました。

でも、その店には、もう彼氏はとっくの昔にやめてはりました。彼氏を探さなあかんねん。

そこで、それをしもって、その店で一時的に住み込みで働かしてやー、うちはケーキ屋の娘なんやでーと、叫ばはります。モチ、関西弁やなく、薩摩弁、もしくは九州弁どす。

目的がメチャメチャでモラトリアム系なんで、マジメにグルメ道を追究しはる映画、例えば「かもめ食堂」(2005年)やら「しあわせのかおり」(2009年)やらに、大変失礼な態度なんやけど、これが何と、やがては大マジに、パティシエ街道まっしぐらでおます。

店のシェフ役戸田恵子ネーさんが「街頭で売ってるようなクリスマス・ケーキなんて、うちは売らないの」にもメゲズに、店に入り込む強引さ。

「あんたの声を聞くと、頭が痛くなる」なんてゆう返しやら、戸田ネーと優ちゃんのやりとりとか。先輩・後輩となる、江口のりことの掛け合いとか。もう、おかしすぎて、どうにもこうにもたまりまへん。

そこへもってきてでんな、江口的ヒロイズムを確立してはる江口洋介のアニキまでが、たじたじになるやなんて、ちょっと考えられまへんな。

優ちゃんオリジナル・ケーキに対し、江口アニキから零点とジャッジされてもうた優ちゃんが、なんで零点やねんと迫らはる、遠近感ある長めの撮影シーンやらが、ええ味をば出してはります。

監督は34歳の新進気鋭・深川栄洋クンでおます。陰の「白夜行」(12月5日付け)とは、正反対の陽の本作。この幅の広さが、蒼井優チャンの演技性の広さと共に、ココロに残りました。

2010年12月10日 (金)

ウディ・アレン監督の新作「人生万歳!」

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「アニー・ホール」から30余年。あの主人公は、さらにさらに理屈っぽい、ガンコ老人になっとりました

知的格差婚やら、トンデモ父母娘やら、ハチャメチャなNYラブ・ストーリーが展開しよります

http://www.jinsei-banzai.com/

12月11日のDecember's Saturdayから、東京は恵比寿ガーデンシネマやらで、全国順グリのロードショーでおます。

関西やったら、12月25日から大阪・梅田ガーデンシネマとか、京都シネマやら、シネ・リーブル神戸やらで公開どす。

本作を配給しやはるのは、アルバトロス・フィルムはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ウディ・アレン監督作品とゆうのんは、ある種の映画的ブランドでおます。その作風は、コメディであり、ラブ・ストーリーであり、NY舞台の映画でありと、イロイロござります。

とゆうことでおまして、映画ファンの間では、さまざまな深みあるコミュニケーション会話が、繰り出されるくらいの巨匠監督でおましょう。まあ、明日、カレシやカノと見に行く映画を選択する場合においては、欠かせない作品性をば常に持ってはります。

まずは、オスカー作品賞をゲットしはった「アニー・ホール」(1977年製作・アメリカ映画)をば、DVDレンタルでも構いまへんので、ご覧くだされ。

実を申せば、本作はこの時に出てはった人たち、特に主人公の今の姿を、捉えたような作りになっておますねん。

アレン監督はんは、このところNYを出はって、ロンドン・ラブ・ミステリーを作ったり、バルセロナ・ラブ・ストーリーやらを作ってきはりました。でも、ヤッパ、NYがイチバンやーとゆうノリの本作には、アレンの、ここやないとアキマヘンねんな思いをカンジよりまして、ココロ打たれよりましたがな。

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冒頭からいきなり、観客に向かって主人公の老人が、3分以上の固定長回し撮影にて、演説をばブチかまさはります。この向こう側には、オレらを見とるヤツらがいるんやなんて言いもって、ベラベラ喋り続けはるんどすえー。

この観客への語りかけやら訴えは、何シーンかで出てまいります。別に、観客にコビへつらうっちゅうワケやおまへん。むしろ、自分の情けない人生をばグチルようなカンジもおます。

しかも、写真に写っておますピチピチのギャルとは、結婚までしやはります。おまえはアホか、みたいなコトバを掛けられ続けて、彼女はホンマに結婚しようなんて思うんやろか。なんてのを考察する間もなく、でおます。

「アニー・ホール」より以前に本作のアイデアがあったと、アレン監督はゆうてはります。その時には、多分、主人公は老人の設定ではなかったやろと思います。つまりは、「アニー・ホール」の続編的なとこがあったんやないでしょうか。

あの「アニー・ホール」の、30年余りの時を経た続編として本作を見れば、実はすんなりと映画のなかに入り、楽しめるのでおますよ。不思議でおました。

ラブ・ストーリー部では、知的格差結婚とか、父母娘それぞれの、チョイとハチャメチャ系の恋愛模様やらも描かれよるけども、基本は、やはりアレン監督にしか出せへんオリジンがござりました。

スタンダードなデュエット・ナンバーやら、ジャズ的サウンドなども含めまして、アレン監督節満載の作品なんやでー、ホンマ。アラマ・ポテチンどすえー。

2010年12月 9日 (木)

アニメ映画「劇場版イナズマイレブン 最強軍団オーガ襲来」

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ゲーム原作アニメらしい分かりやすさと、サッカー的ケリワザの多彩さに、めまいクラクラどす

「ポケモン」「ベイブレード」やらの多色攻撃系に、正統派スポ根「キャプテン翼」が入ったやなんて、ホンマでっかー

http://www.inazuma-movie.jp/

12月23日の木曜・祝日・天皇誕生日から、全国各地イッセイの、爆裂・熱烈な爆熱ロードショーでおます。3Dも2Dも同時公開どすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸLEVEL-5/FCイナズマイレブン MOVIE 2010

サッカー・アニメでおます。ワールドカップの2022年開催に、敗れてしもたニッポンなんやけど、それとは関係なく、サッカー映画は公開されよります。

サッカー映画では確かに、日本映画の実写版としては、そんなにありまへんけども、今のJリーガーたちが、夢見ていた頃にハマったとゆう、アニメ「キャプテン翼」シリーズ(1985年~1986年製作・全4作)なんぞがござりました。

テレビ・シリーズもあり、東映の劇場版アニメ・シリーズもありーので、ブレイクしよりました。そして、今、サッカー・アニメは、全くもって21世紀的な新次元へと、入ってもうたんでおます。

ゲーム原作のアニメなんやけど、真夜中にヨッパラって、本作のテレビ・アニメを初めて見た時どすが、えー、おい、とビックラこきました。サッカーのケリワザに名前がおまして、それがいっぱいあるんやて。おいおい、ケリて強弱だけとちゃあうん。まあ、ひねったりとかな、回転度やらを変えたりすることはあるやろけども。

本作は、サッカーを戦争と捉えてはりまして、しかも、攻撃=ケリの多様性、まあ、コレはケリ=爆弾と捉えて、いろんな爆弾があるとゆうような設定でおます。対して、ディフェンス。主人公の円堂守クンは、ゴールキーパーでおまして、命懸けのキーパーぶりを示さはるんやけど、ガードにもスゴイいろんなワザがござるのどすえー。

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そんなシチュエーションのなかで、「サッカー、やろうぜ」とゆうた主人公のチームが、中学生の全国大会で優勝しはりました。

それが原因で、未来の世界ではサッカー・ブームで、みんなダメになってしもた。つまり、サッカー的な戦闘性は、戦争的能力とは違うとゆう意味どす。でも、このあたりの強引な設定には、少しウーンやったけど、それがドラマ的味付けにおいては、ケッコー楽しめたんで良かったと思いよります。未来から、そんなマイナスやないマイナス・イメージを変えようと、つまり、歴史を変えようと、刺客チームがハケンされよりのですわ。

人物の分割カットを多投したり、ストップ・モーション・カットやらの挿入やら、かつてのテレビ・アニメの手法をイロイロ使いつつも、その色彩感のあざやかさには見とれました。各ケリワザには太字の字幕入りで、ワザ名を入れてはるんやけど、各ワザの色彩感は、まさにカラフルでおました。

オレンジ色をグラデーションしたような夕景シーン。その夕日に映える家や樹木やらを、ビミョーな白みを加えて表現したり、自然光の桜や青空と雲の描写の鮮やかさやら、細部のキレる配色が映画を支えておりま。

16ビートのポップロックの、アニソンを流しての省略カットもまた、映画をリズミックにしてはります。

そんな映画やら音楽やらの分析をしとるなかにおいてもですな、ボクがイチバンオモロかったんは、主人公が「ユウキと仲間」について語るとこどした。この場合のユウキは勇気なんやけど、野球界の斎藤佑樹が仮にユウキだとして語ったとゆう、あの仲間のコトバ(今年の流行語大賞・特別賞)を思い出してしもて、思わずポテチンどしたえー。

2010年12月 8日 (水)

アニメ「ブレンダンとケルズの秘密」(仮題)

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2010年のアカデミー賞にノミネートされはりました。水彩画系の淡い色合いがええカンジどす

ヨーロッパ・アニメの新鮮さに、胸おどる作品どすえー

http://www.oeff.jp/

2010年11月18日~11月23日に開催された「第17回大阪ヨーロッパ映画祭」で、日本初上映のあと、日本公開待機作となりよります作品どす。本作は、フランス・ベルギー・アイルランド合作でおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ヨーロッパのアニメ映画やなんて、みなさん、見はったことござりますでしょうか。

「ハウルの動く城」(2004年製作・日本映画)みたいなとこもある「キリクと魔女」(1998年・フランス)とか、独特の渋い色を使った「ベルヴィル・ランデブー」(2002年・フランス&カナダ&ベルギー)とかどすか。加えて、イロイロと異彩を放つチェコ・アニメとか。

本作はアイルランドの中世を舞台に、とある書物(アイルランドの国宝となっておます「ケルズの書」)の、メイキングを見せてゆくとゆう、オリジナリティーあふれる内容になっておます。

しかも、本作のトム・ムーア監督によれば、「いろんなアイルランドの伝承をブレンドして、自由なカタチで作り上げたオリジナル・ストーリーだけど、基本的には伝統とか真実味ある作品を目指した」らしいんどす。

でも、マニアックに偏らず、誰でも楽しめるポピュラリティーを持ったアニメどす。

例えば、ディズニー・アニメにもある、少年のアドベンチャー・アニメとしても捉えられる作りなんでおます。実写となりますが、例えば、「宝島」(1950年・アメリカ)なんかのセンスもありまんねん。

色合いは、水彩画系の薄イロ・モードでいってはります。まあ、原色系よりは当然、目に優しおます。

写真に写っておます、主人公の少年と、森にいてる女の子フェアリーとの交流シーンなんか、薄緑を基調にしてはるんで、特に目に優しいどす。

薄グリーンの蛇とか、赤黒い炎とか、結晶的に降らせる雪とか、黒い海賊・オオカミとか、中世当時の電気のない時代感を反映した配色ぶりに、なるへそなーと思いよりました。

そして、かつてのテレビアニメやらを思い出させる、手書きアニメの手作り感でおます。

監督は「CGも使ってるんですが、あくまで手書きでいった『ケルズの書』に合わせて、平面的かもしれないけど、手書きというスタイルにこだわって作り上げたんです」と語っている。

確かに、今や当たり前になっておます、3Dに慣れはったみなさんの目には、少々戸惑いがあるやも分かりまへん。

でも、ダイジョウブだす。見ていくうちに、慣れてきよります。

でもって、サントラ使いも水彩画系に合わせはって、耳に優しゅう入ってまいります。ハープ、バイオリン、チェロ、ララバイな子守唄ノリ、しっとりのスロー・ナンバーなど、シーンに合わせて癒やしてくれはりますよ。

2010年12月 7日 (火)

ショート・アニメ映画「くまのがっこう ジャッキーとケイティ」

「チェブラーシカ」と2本立てで上映されよります、クマちゃんアニメの快作どす

「くまのプーさん」より、かわいい仕上がりになっとりま

http://www.cheb-kuma.com/

師走12月の土曜日18日から、「チェブラーシカ」(昨日分析いたしました)との2本立てにて、TOHOシネマズ梅田やらで、全国各地イッセーの公開どすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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ⒸBANDAI/劇場版「くまのがっこう」製作委員会

本作は28分のアニメなんで、まあ、短編でおます。世界各国のショート・ショート・フィルムの特集上映やらは、毎年、日本のどこかで開催されておます。

それらの作品は、監督の作家性が意図的に取り込まれ、いわゆる大人向けのアニメチックな作品が多うござります。そういうアニメを期待して、本作を見てしまうと、だいぶ違うかもと思わはるやもしれまへん。

ナンや、コドモ向けかいなと、思わはるかもしれまへん。ほな、コドモづれで見に行ったらええんやな、とも思わはるやもしれまへん。確かに、原作が絵本やし…。

コレはコドモ向けかもしれへんねんけど、ボクが試写室で見たカンジでは、大人にも充分通じる作品やと思たんどす。

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クマものアニメやから、みなはんはまず、ディズニーの「くまのプーさん」を思い出さはることでおましょう。

しかし、アクロバッティックに言いよりますと、まあ、ディズニー・アニメ色もあるんやけど、宮崎駿アニメの色も入っとるし、特にボクは犯罪映画「オーシャンズ11」(2001年製作・アメリカ映画)のセンスもカンジたんどす。

え~んなアホな、と思わはる方が大がいでおましょう。

宮崎アニメ的には、「プーさん」とは違(ちご)てメスのコグマがヒロインとゆうことで、少女ヒロインものの、いわゆる冒険性アニメものとゆう見方がござります。しかも、その少女コグマは、11人のオス・男コグマたちの、サポートを受けるとゆうスタイルを取ってはるんどす。

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「オーシャンズ11」は「オーシャンと11人の仲間」(1960年・アメリカ)のリメイクどすけども、「オーシャン」はコグマのジャッキーに、なったっちゅうことでおますわ。

加えて、ケイティとの女の子の友情部描写もござります。

28分とゆう短さなんで、それらのキズナ描写が、コドモたちに分かるところあたりまでで、ディープさが足りないとゆう指摘もあるかも分からへんけども、ボクはこの短さで、ようまとめはったと思います。

スタジオジブリ・アニメ、例えば「借りぐらしのアリエッティ」やらよりも、水彩画系の薄色、室内シーンは明るめやけど、癒やし感ある、森や草原のミドリやお花畑、雨のシーンやら目に優しゅうおます。カエルやネズミたちの脇のキャラも、楽しゅうおました。

2010年12月 6日 (月)

パペット人形アニメーション映画「チェブラーシカ」

ロシアの国民的人気アニメが何とまあー、日本でリメイクされよりましたでー

ド元気の「ドラえもん」と真逆のキャラ、嗚呼(ああ)、守ってあげたいチェブラーシカちゃんでおます

http://www.cheb-kuma.com/

December12月のSaturday18日から、「くまのがっこう ジャッキーとケイティ」(明日、分析いたします)と2本立てにて、TOHOシネマズ梅田やら全国東宝系で、全国各地イッセーのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 Cheburashka Movie Partners/Cheburashka Project

旧ソ連時代に、パペット・アニメとして映画化された作品「チェブラーシカ」(1969年~1974年製作・ソ連映画)が、日本でリメイクされよりました。

このオリジナル「チェブラーシカ」は、日本で公開された時には、「こんにちわチェブラーシカ」(1969年)、「ピオネールに入りたい」(1971年)、「チェブラーシカと怪盗おばあさん」(1974年)の3話のショート・ストーリーを、1つにまとめはった64分でおました。

でもって、本作は、そのオリジナルに合わせはったかのように、63分でおます。

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事実関係だけを照らし合わせてみたら、そのままリメイクしたように思わはるかもしれまへんねんけども、本作はリメイクを意識しもって、オリジナルを目指さはった作品になっておます。

でも、オリジナル版のキモになっておます、友情描写は健在どす。オリジナル動物でかわいいキャラのチェブラーシカちゃん、というかオス・男なんでチェブラ君と、動物園で働いてる、ワニ・キャラのゲーナ・アニキとの男の友情は、オリジナルより深めに描かれておすえ。

さらに、日本版オリジナル・キャラを設定しはって、祖父と孫娘のキズナ(写真2枚目)も、同時に描くとゆうサプライズを示さはります。

声優の声としての演技やら、サウンドトラックやらも、日本的な味付けをば施してはるんどす。

まず、ナレーションを担当してはる方どすが、フツーのナレーターぶりやおへん。サイレント映画の弁士的と申しますか、「これから一体どうなるんでしょうか」みたいなとこや、解説とかキャラへの問いかけみたいなんを、喋らはりまんねん。

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それに乗って、チェブラーシカ君の声を担当した大橋のぞみチャン。「ポニョ、ポニョ、ポニョ、サカナのコ~」なんて歌って人気を得た、アノかわいらしい歌声を、ちょっぴり大人になったみたいな、チョイカワ声で披露しはります。

孫娘声役の北乃きいチャンの、初の落ち着いた声優ぶり。祖父声役の藤村俊二はんの渋さなど、よろしおま。

ラストロールに流れよる、木村カエラのネーさんの、8ビート・Jポップ・ロックもキャッチーに決まっておますよ。

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ロシアでは国民的な人気キャラらしいどす。まあ、日本でゆうたら、「ドラえもん」でおましょうか。

ディズニーにも、動物キャラはいっぱいござりますし。ただ、元気極まりない「ドラえもん」とは、180度近く違うユル・キャラ。また、ディズニーやスタジオジブリにはない、人形で描くキャラ。しかも、オリジナル・キャラ。

ボクが思うに、3Dの「トイ・ストーリー3」を楽しんだ方は、間違いなくハマるに違いないキャラどすえー。

2010年12月 5日 (日)

ミステリー日本映画「白夜行」

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かつてボクが映像化不能とジャッジいたしました、東野圭吾ミステリー小説が原作でおます

「永遠の仔」のウラ版らしい、堀北真希ちゃんらの、静かな妙演技ぶりに注目どす

http://byakuyako.gaga.ne.jp/

2011年1月睦月・29日の土曜日から、全国各地イッセイのロードショーでおます。関西やったら、大阪・梅田ブルク7(セブン)、なんばパークスシネマやら、MOVIX京都、神戸国際松竹やらで、ドカーンと上映どすえー。配給はギャガはんどす。

文=映画・ミステリー小説分析評論家 宮城正樹

Ⓒ2011 映画「白夜行」製作委員会

本作原作の東野圭吾のミステリー小説どすが、1999年に発表されておます。その同じ年には、天童荒太が見出しにも記しました「永遠の仔」を上梓しておます。

この2作をボクが読んだ時、テーマは同じやのに、その描き方の180度の違いに驚きよりました。謎は最後まで隠しとっても、あくまでストレートに描く「永遠の仔」に対し、「白夜行」はどこまでも、隠し続けてゆくとゆう、トンデモナイ作りなんどす。

犯人の描写より、犯人の周辺にいてはる人たちを、ずっと描き続けてでっせ、最後にドーンと種明かしすることもなく、雰囲気で読者に事件のカラクリをカンジさせてゆくとゆう、ミステリー小説史においても、かつてあれへん試みをば施さはったんどすえー。

ボクはこれは、文章によってのみ成立するような、映像化不能作品のケッサクと見たんどす。

そやから、ボクは「日経エンタテインメント!」(2001年・9月号)の「必読ミステリー100選」特集記事で、「映像化不能作品」10選のなかに、「白夜行」をチョイスしよりました。

例えば、映像化不能作品やとゆうても、確かに「死の接吻」(1991年製作・アメリカ映画)とか、「ドグラ・マグラ」(1988年・日本)とかは映画化されておます。

でも、無理にでも映画化するとか、あるいは、ミステリー的謎を無視して映画化する、もしくは、全く違うものを撮ってみるとかになるしか、ないんやないかいなと、ボクは思っておました。

しかしでおますわ、本作はボクのそんな思いやらこだわりやらを、ドカーンとくつがえしてくれはったんどすえー。

原作と同じく、隠しとくとこは、まるで綱渡りを見るような具合で隠してはります。まあ、そのために、話のつながりがスムーズにいかへんとこもあるんやけど、これはOKでおましょう。

1980年から1999年までを描かはって、昭和映画と平成映画のユニークなブレンドを、カンジさせてくれはる本作どすが、“銀残し”とゆう編集手法を使(つこ)てはりま。

「フラガール」(2006年)やらで使われた手法どすが、特に前半部の描き方は秀逸もんでおまして、ボク的には「砂の器」(1974年)など、1970年代のミステリー映画な色彩感がよろしおました。

役者陣に目を向けよりますと、テレビの二時間ドラマの常連・船越英一郎はんが刑事役どす。でも、いつもの二時間ドラマのノリとは、180度違(ちご)とりまして、徐々に顔面蒼白、必死のパッチ、ヒッパクしてまいります。

高良健吾クンのヒヤリ・ゾクリとした演技ぶりに加え、ナンチューても堀北真希ちゃんの、静かな悪女ぶりが特注でおます。原作とは違い、最後の30分では事件の真相を映さはりますが、1分くらいの長回しの移動撮影で魅せる、ラスト・シークエンスの真希ちゃんの一言には、凍りつきました。

東野圭吾原作映画では、「容疑者Xの献身」(2008年)の仕上がりを超えた作品やと、ジャッジいたします。

2010年12月 4日 (土)

日本映画「最後の忠臣蔵」

忠臣蔵映画としての最後の作品やなく、全くもって新しき視点による、最初の作品でおます

共に時代劇映画にはよう出てはる、役所広司と佐藤浩市の各アニキが、静かなるシブミ演技で魅せはりまっせー

http://www.chushingura.jp/

師走十二月の土曜十八日から、全国各地一斉の公開でおます。本作を配給しやはるのは、ワーナー・ブラザース映画はんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010「最後の忠臣蔵」製作委員会

「最後の忠臣蔵」やとゆうても、これで見納めとなる、忠臣蔵時代劇映画ではござりまへんのどす。これまでの忠臣蔵映画では、描かれてへんかったところが、撮り上げられました。

え~、これまでさんざん映画化されとんのに、そんなアホな~どすけども、何とまあ~、忠臣蔵事件の赤穂浪士側で、生き残らはった方がいてはったんでおすえー。しかも、2人もおったんやてー。アラマ・ポテチンどす。

1人は、大石内蔵助(おおいしくらのすけ=大御所・片岡仁左衛門はんが演じてはりま)はんから、わが娘の面倒をみたってくれとゆわれました。もう1人は、討ち入りの実態をば後世に伝えとくんなはれと、ゆわれました。

でもって、前者に役所広司が、後者に佐藤浩市の各アニやんが扮しはりました。

そやから、いつもの忠臣蔵ものやったら、討ち入りをクライマックスに据えはるんやけど、本作は全く作りが違(ちご)ておます。討ち入りから16年後の京都から静かに始まり、事件は過去の回想シーンで、ほんの軽~く描写される程度でおます。

もちろん、下の写真のように、お互い生き延びて、今何をやっとんのか分からへん2人が、セピアな草原で対決するアクション部やらは、あることはありま。しかし、でおます。

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本作の映画的テンポなんぞを見てみますと、間(ま)の多さ、静かな演出ぶりで、全編にわたりスロー・モードを貫いてはります。

また、「十三人の刺客」(9月18日付けで分析)や「どら平太」(1999年製作)なんぞで、ヤンチャぶりを披露しはった役所のアニキも、本作ではホンマ大人しくならはりました。

片や、浩市のアニキも、「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994年)やら「壬生義士伝」(2002年)やらの、派手めの演技をば封印してはります。泣きの表情を見せるアップ・シーンなど、グッときます。

そうでおます、つまりは、これは人情もの時代劇なんでおますよ。藤沢周平原作映画、例えばアカデミーの外国語映画賞にノミニーされた名作「たそがれ清兵衛」(2002年)みたいなノリが、首尾一貫としてござります。

まるで小津安二郎映画、例えば「晩春」(1949年)のような、役所アニキと、ずっと守りをしてきた大石の娘役・桜庭ななみチャンとの関係描写。

さらに、人形浄瑠璃「曽根崎心中」のシーンをタイトに挿入し、結末を暗示するような方向性を、示したりしてはります。

アメリカでも公開されるとのことでおますんで、アカデミー賞へのノミネートも期待できる作品でおましょう。それまでに、ぜひとも劇場にてご体感あれ!

2010年12月 3日 (金)

トルコ・アメリカ合作映画「40」(フォーティー)舞台トーク&映評

街が主人公となった映画やねん。トルコ・イスタンブールの現実を、ロサンゼルス「クラッシュ」みたいに描いた作品やー

監督とプロデューサーの談話込みで分析してみましたでー

http://www.oeff.jp/

「第17回大阪ヨーロッパ映画祭」(11月18日~11月23日)でプレミア上映後、日本公開待機作でおます。2011年の5~6月あたりにDVDリリース予定でおまして、それまでに映画館で上映されるやも分かりまへんので、要チェックどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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写真上がエムレ・シャーヒン製作・監督・脚本

写真下がサラ・ウィーナビー共同製作者

エムレ監督「2人で製作した作品です。大阪ヨーロッパ映画祭で、日本で初めて上映していただきました。(司会者の問いかけに)『翔んでイスタンブール』(庄野真代の歌)は知りませんでした(苦笑)が、急速に変わっていく、クレイジーなイスタンブールの、いろんな側面を捉えることができました」

つまり、街が主人公の映画っちゅうことやね。その狙いっちゅうのんは、どこにあったんやろか。

エムレ監督「これまでたくさんの、イスタンブールをロケした映画がありますが、クリーンなイメージで捉えられたものがほとんどでした。我々がやりたかったのは、我々が見たイスタンブールを、現実的な本当の人々の私生活を、ドキュメント・タッチで撮ることでした。私は10年間にわたり、ドキュメンタリーを作ってきたので、知り合いのタクシードライバーや、いろんな人たちの実生活を取り込んでみたら、どんな風になるんだろうと思っていたんです」

サラ「イスタンブールのスピリチュアルな部分って言うか、何でもありな街の雰囲気を表現したかったんです。(本作で)空から大金が降ってきたり、いいこと悪いこといろいろあり、何があるか分からないような街ですね。自由に撮影できたのも良かったです。ロサンゼルスならこうはいかなかったと思います。手持ちカメラを持って、危ない地域へも入っていって撮影するのは、緊張感もあって面白かったですね」

★ちなみに、トルコ出身のエムレ監督のアニキと、アメリカ出身のサラちゃんは夫妻やねん。2人で映像製作会社を立ち上げはって、ロスとイスタンブールで活躍中。

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でもって、ここからが分析批評でおます。

男2人と女1人の、都合3人の話が、大金の入ったカバンを狂言回しにしはって、イスタンブールの裏社会で展開するとゆうお話どす。

トルコの片田舎から首都に出てきて、裏社会にこってり染まり、ムショとシャバを往復。で、現在はヤバイ物(ブツ)運びの、トランスポーター兼タクシードライバーのアニやん(写真3枚目どす)。

パリへ行ってしもた憧れのネーさんを追って、パリやと騙されて、アフリカからイスタンブールに来てしもた黒人青年。

ゲンが手前勝手にええらしい、40とゆう数字にこだわってはるヒロイン。フォーティーなんてタイトルから、日本的にはアラフォーの話かいなと思たりしたんやけど、タイトルは、このヒロインネーさんの「数秘学」なんちゅう、ワケ分からへん学問からきておます。

世界3大宗教をつまみ食いして、結局「数秘学」に落ち着いたこのネーさんは、既婚でだんなもコドモもいてはんねんけど、何やらけったいなんどすわー。で、現在は看護師してはります。

こんな3人が、どないつながってゆくんかが、スリリングに展開してまいります。

タクシーの運ちゃんが、大金の入ったカバンを失くしてしもて、そのカバンがどう動いてゆくのかが、ドラマのキーを握っておます。

街を舞台に、いろんな人間ドラマが交錯する映画とゆうたら、アカデミー賞作品賞をゲットした、ロスが舞台の「クラッシュ」(2005年製作・アメリカ映画)なんぞを思い出させよります。サラちゃんが「ロスではこうはいかない」と発言してはるんどすが、この作品が頭のなかで散らついとったはずどす。

そのほか「パルプ・フィクション」(1994年・アメリカ)とか、物を狂言回しにした古典的傑作「運命の饗宴」(1946年・アメリカ)なんぞもありま。

さてはて、映画的な撮り方を心得てはります。手持ちカメラによる、揺れや近接撮影がもたらす臨場感描写。街でのうろつき、さまよいシーンでは短いカットを連続的に編集。正面からのアップはほとんどない、人物の不安感を示すアップ、クローズアップ。

室内撮影では照明を入れずに、ダークなカンジを示し続けはります。風景をコラージュしたCGのようなイントロ、版画のようなカット、病院の廊下の移動撮影など、細部の描写が光っておました。

2010年12月 2日 (木)

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「白いリボン」

グランド・ホテル形式を、ひとつの村に置き換えて展開する、怪し~い群像劇でおます

モノクロ映画への郷愁に満ちた、ミステリアスな作品やでー

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http://www.shiroi-ribon.com/

12月4日のDecember's Saturdayから、東京・銀座テアトルシネマやらで、全国順グリのロードショー開始でおます。

関西やったら、12月18日Saturdayから大阪・テアトル梅田で、お正月にもかかってるっちゅうんで、お正月ロードショーだす。モチ、クリスマス・ロードショーっちゅう見立てもござります。その後、シネ・リーブル神戸やら、京都シネマやらでも上映どす。

ドイツ・オーストリア・フランス・イタリアが合作しはった、ドイツ映画の本作をば、配給しやはるのは、「ツイン」はんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

第七芸術性が重要視される、2009年のカンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドール大賞をばゲット。カラー・フィルムで撮影したのに、わざとのようにモノクロ変換した作為のあと。

加えて2時間24分とゆう長さ。何人もの人物が出てきはって、人脈図整理にアタフタとせんならん作品。劇中で登場人物が楽器を弾く場面はあるんやけど、映画としてのサウンドトラックは、いっさい流れまへん。

いやはや、どない考えてもでっせ、クリスマスの聖なる夜とかに、あるいはハッピー・ニュー・イヤーなんて、あいさつしもって、気持ちよーく見てられるような映画には、とても思われまへん。「ヤマト」や「ハリー・ポッター」の方がええねんと、思わはるかもしれまへん。

確かに、家族一同で見にいく映画としては、本作は妥当な選択とは申せないでおましょう。しかし、ゴリゴリの映画ファンでなくてもよろしいんでおます。ホンモノの映画とゆうものを見に行くのであれば、コレがふさわしいとゆうときま。ただし、「ヤマト」「ハリー・ポッター」がニセモンやとゆうことやないんで、念のため。

さて、肝心カナメの本作のことでおます。舞台は、第1次世界大戦がボッパツする前夜の、ドイツの片田舎の村でおます。

そこに住んではる約7家族にプラス、ナレーションも担当してはる男の教師センセーの、ラブ・ストーリーが展開するとゆう作りでおます。

群像劇スタイルやけどコレは、ホテル内でいろんな人物の物語が展開する「グランド・ホテル」(1932年製作・アメリカ映画)形式の、村バージョンでおましょう。

でもって、冒頭から、そないに大したもんやないねんけど、イロイロな小事件が、連続して起こってまいります。それらは一体、誰がやったんやとゆう、観客のミステリー的な興味をば喚起しはります。

そんななかで、いろんな悪意みたいなんをカンジさせるシーンが、それとなくモンタージュされておます。本作と同じくカンヌで賞をもらった「汚れなき悪戯」(1955年・スペイン)の、無垢なイタズラのように、見えんこともないコドモたちの演出。でも、このコドモたちの静謐なる悪意ぶりは、本作のキモにもなっておます。

医者が愛人の助産婦に対して、「おまえは臭い。もう飽きた」なんてゆうシーンには、驚きがござりました。最後の方では、教師が唐突に事件を推理し調査する、探偵まがいのことをばしはります。

全ての事件が解決するとは申しませんが、ミステリーとして見ても楽しめる作品やと思いました。

2010年12月 1日 (水)

アメリカ映画「キス&キル」

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ラブコメのニュー・ヒロインやら、ニュー・アクターやらが大活躍しよります作品でおます

スパイ映画&巻き込まれ型サスペンスを入れて、21世紀タイプのラブコメ映画を創出しはりました

http://kisskill.gaga.ne.jp

December12月のFriday3日から、全国各地イッセーのロードショーでおます。関西やったら、大阪・TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマやら、京都・TOHOシネマズ二条、MOVIX京都やら、OSシネマズミント神戸やらで上映どす。本作の配給はギャガはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

Ⓒ2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

キャメロン・ディアス、メグ・ライアンやら、これまでのハリウッドのラブコメ映画の方程式にはない、若手の俳優を起用しはってやらはった、ラブコメでおます。

共にラブコメやった「幸せになるための27のドレス」(2008年製作・以下の引用は全てアメリカ映画)やら「男と女の不都合な真実」(2009年)に出てはったキャサリン・ハイグルちゃん。みなはん、知ってはりますやろか。まあ、知らんわな。

ボクチンのダイスキな、かつてのラブコメの女王ゴールディ・ホーンのネーさんを思い出させてくれはる、ハート・ドッキリな演技を披露してはります。

また、お相手の主人公役アシュトン・カッチャー君。みんなー、知っとるかー。まあ、あんまし知らんわな。

渋いコメディもんやったら、「ベガスの恋に勝つルール」(2008年)やらに出てはりました。そんな2人が、ユニークなラブコメを演じはります。

まあ、ノリでゆうたら、トム・クルーズとキャメロン・ディアスが共演した「ナイト&デイ」(8月29日付けで分析済みでおます)でおましょうか。

トム・クルーズやマット・デイモン主演やらのスパイ映画のノリに加え、ヒロインがそんな諜報戦に巻き込まれてまうとゆう、かつてのアルフレッド・ヒッチコック映画なスパイスも入っておりま。

チョイ変型スパイものでは、ブラピとアンジーが共演した「Mr. & Ms. スミス」(2005年)とか、「スパイキッズ」シリーズ(2001年・2002年・2003年=2003年分は今の3D映画の先がけ版)へとつながるやろかと思います。

でもって、ボクチン的には、ゴールディ・ホーン姉さんの最高傑作「ファール・プレイ」(1978年)の、センスをばカンジよりました。

ラブコメ・モードとはいえ、アクション・シーンも多彩に繰り出されよるのどすえー。フランスからアメリカまでの、チョイワールドワイドなロケーションぶりを前触れにでんな、銃撃戦は当たり前。海中アクション、カー・アクション、カーとヘリの追っかけアクト、格闘アクションやらが、ここぞとゆう時に出てまいります。

そして、着地部の意外性。なんともゆわれへんような、家族ドラマへと着地しはるのどすえー。アラマ、信じられまへんでおますよ。

でもって、サントラも凝っておるんどすえー。歌ものも流さはるんやけど、なんちゅうても、哀愁のフラメンコチックなサントラ使いに妙味がござりました。

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