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新作映画分析

  • 映画・音楽分析研究所 所長 宮城正樹
    1→新作含む公開前映画の批評分析を、1日1本を毎日行います。関西発なので、あえて関西弁にて批評いたします。2009年12月11日よりスタートし、5年連続を突破しましたが、2015年5月中旬より、週3~4作更新といたします。厳選した作品分析を、お楽しみください。 2→不定期となりますが、新作映画の出演者・監督・スタッフらのインタヴューや取材記事、CDアルバムやシングルのレコ評、DVD評に、小説・書籍評、各種の分析批評なんぞをいたします。

音楽・小説分析


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2010年8月の記事

2010年8月31日 (火)

イランのミステリー映画「彼女が消えた浜辺」

「レザボア・ドッグス」の「この中に裏切り者(犯人)がいる」みたいな、群像ミステリーの快作やでー

「十二人の怒れる男」にも迫る、ディスカッション系のノリもおます

http://www.hamabe-movie.jp/

9月セプテンバーのサタデー11日から、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町を皮切りに、全国順繰りのロードショーでおます。京阪神は9月18日の土曜から、大阪・テアトル梅田、秋に京都シネマやら、10月にシネ・リーブル神戸やらで上映やー。本作を配給しはるのは、ロングライドはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2009 Simaye Mehr.

イラン映画でミステリー映画やなんて、イラン映画史上初めてでおましょう。ポップ音楽映画やった「ペルシャ猫を誰も知らない」(8月2日付けで分析済みでおます)と同様、イラン映画のニュー・スタイルをクリエイトしはりました。

しかも、ベルリン国際映画祭で最優秀監督賞をゲットしはりました。

ミステリー映画としての巧妙かつ緻密な作りは、欧米のミステリー映画を凌駕するほどのオリジナリティーがござります。アカデミー賞外国語映画賞をゲットしはった、アルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」(8月10日付けで分析済み)と、優るとも劣らへん仕上がりでおます。ハリウッド・リメイク権を懸けて、争奪戦が起こってもおかしくはござんせん。

ほな、そのミステリー色のオリジナルなとこを見ていきましょか。

おそらく、最初はミステリー映画を、意図的に作ろうとしたわけやないと思います。男4人女4人が一緒にバカンスに来たんやけど、そのうちの1人の女が行方不明となりよります。彼女は一体どこへ行ったんやー、とゆう問題を中心に、7人がディスカッションをし推理してゆくとゆう、基本ラインどす。

いわゆるシチュエーション・ミステリーであり、1人だけが消えるとゆうシンプル・イズ・ベストな設定。それなのに、ハラハラドキドキワクワクソワソワが持続しよります。

群像ミステリーなら、いくらでもあるのどすが、各人が逼迫感あふれる会話劇を繰り返し、陪審員の論争劇やった「十二人の怒れる男」(1957年製作・アメリカ映画)みたいな緊張感を出し、また、この中に裏切り者がいとるみたいな「レザボア・ドッグス」(1991年・アメリカ)チックに、「この中に犯人がいる」系の犯人探しのノリもござります。

加えて、「そして誰もいなくなった」風の、アガサ・クリスティのミステリー小説のような色合いも、そこはかとなくカンジさせよります。

特に、消えた女に男を紹介した、ヒロイン役ゴルシフテェ・ファラハニーおネーさま(写真下の左に映ってはる方)の、観客に不安感を植えつけるような、演技性が強烈でおます。リドリー・スコット監督の「ワールド・オブ・ライズ」(2008年・アメリカ)では、かのレオ様、レオナルド・ディカプリオと共演しはりました。いわば、国際女優の道をば歩みつつある女優はんなんどすえー。

波の音(潮騒)を意図的に効果音として使い続け、短いカットの連続でスリリング、スピードフルに魅せる男たちの救助シーン、海面の揺れと海中を描く臨場感、各人物の動きを2分くらいの長回し撮影の移動撮影で見せていったりと、緊張感を持続させる撮り方にも感心いたしました。

ジャッジしよりますに、心理ミステリー映画として、映画史に残る作品どす。

2010年8月30日 (月)

フランスのコン・ゲームノリ映画「ミックマック」

「アメリ」のあのジャン=ピエール・ジュネ監督が、ユーモアチックなコンゲーム・リベンジ映画を撮らはりました

いろんなチーム犯罪映画でも、原点回帰したようなユニーク感でおます

http://www.micmacs.jp/

セプテンバー9月のサタデー4日から、東京・恵比寿ガーデンシネマやらを皮切りに、関西やったら9月18日サタデーから、大阪・梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで、全国順グリのロードショーでおます。映画の配給は角川映画はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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2009 Ⓒ EPITHELE FILMS - TAPIOCR FILMS - WARNER BROS. PICTURES - FRANCE 2 CINEMA - FRANCE 3 CINEMA

原点回帰したようなユニーク感やなんて、わからない人にはわからへんコトバでおます。ただ、最近の映画の場合は、犯罪映画やリベンジ映画にしても、ストレートに描くものが多いのどすが、かつては犯罪映画でコンゲーム・ノリとゆうのは、えらい愉快に描かれてゆくことが多かったのでおますよ。

「オーシャンズ11」(2001年製作・アメリカ映画)の元ネタとなります「オーシャンと11人の仲間」(1960年・アメリカ)しかり、銀行強盗もの「黄金の七人」(1965年・イタリア)しかり、「スティング」(1973年・アメリカ)しかりでおます。そういうノリが本作にはござりました。

フランス映画でゆうなら、ジャン・ギャバンやアラン・ドロンが出はったシリアスな犯罪映画より、ジャン・ポール・ベルモンドはんが出てはる、ちょっとお遊びしてまっせーなカンジかなー。ヌーヴェル・バーグな「気狂いピエロ」(1965年・フランス)なんかも、何かユーモア入りのボケ演技やったでおましょ? 

最近チョロット問題になっとった「ピンク・パンサー」やけど、その映画シリーズ(1963年~1993年・アメリカ)の軽みも何やら、本作にもカンジられよります。オモシロおかしく見られる、犯罪エンターテインメントなんどす。

主人公とチームを組む7人がいてはって、彼らが演じるミッションならぬ、マトモなリベンジならぬ仕返しミッションぶりが、どこまでもユニーク極まりないのでおますよ。

まず、主人公からして、トンデモ設定のキャラでおます。主人公のオトンは地雷で爆死。主人公は強盗団に銃を撃たれてしもて、その銃弾が頭んなかに残ったまま、生きとるとゆう設定でおます。そんな主人公が、父を殺した地雷の武器製造会社と、自分の頭にある銃弾製造会社が、向かい合ってあることに気づかはって…。まあ、そんなことはそうそうありまへん。でもって、主人公はやがてこの2社にリベンジを挑むべく、オモシロおかしきリベンジ作戦を、偶然出会った7人と共にやらかしはりますのどす。

主人公以外の7人のキャラクターも、大げさなくらいに個性的にキャラづけされておます。人間砲弾として飛んだ飛行距離で、ギネスを認定されたとゆう男とか、どんな狭いとこにも入れる軟体女のキャラとか、廃品物をリサイクルして新しいものに変えるジイさんとか、見ただけで数値が分かる女とか、トンデモないことわざを入れるトークを披露する男とか、まあ、ひと筋ナワではいかへん、変な人がドドーンと出てきはるのです。そんな方々がドカーンと、シマイ(終わり)までコッテリやってくれはりますので、お楽しみあれ! でおます。

でもって最後にひと言。ハンフリー・ボガート主演映画へのオマージュ・シーンが、この監督の映画への思いを語ってはるようでおました。

2010年8月29日 (日)

トム・クルーズ&キャメロン・ディアスの「ナイト&デイ」

アリエネー・アクションと、突然ラブ・モードのオン・パレードでおます

「ミッション:インポッシブル」を、「チャーリーズ・エンジェル」的キャメロン・ディアス付きで、ヤッてしまわはったトム・クルーズ節やでー

http://movies.foxjapan.com/knightandday

オクトーバー10月のサタデー9日から、ニッポン全国各地イッセーのロードショーでおます。大阪やったら、TOHOシネマズ梅田やらで上映どす。本作を配給しはるのは、20世紀フォックス映画はんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 TWENTIETH CENTURY FOX

マット・デイモン主演の「ボーン」シリーズ(2002年~2007年製作・全3作・アメリカ映画)に、押されてたカンジの、このところのトム・クルーズのアニキ。しかし、やってくれはりました。大反撃でおますがな。

「ミッション:インポッシブル」シリーズ(1996年~2006年・全3作・アメリカ)より、チョーどハデなアリエネー・アクションを次々に連発しはります。

しかも、「チャーリーズ・エンジェル」シリーズ(2000年・2003年・アメリカ)で、格闘アクションも披露しはったキャメロン・ディアスのおネーさんを、連れ回しての大立ち回りでおます。

さらに、アクションアクションの合い間には、突然、往年のハリウッド恋愛映画の、クライマックスのようにでんな、2人のアップ・クローズアップが映されよりまして、キスしたりやらナンやカンや、イロイロ交流しはります。

とにかく、「ミッション:インポッシプル」なミッションを男女2人パートナーで、思いっきりやってみはったような仕上がりなんどす。次々にやってきよるアクションに、目まいクラクラになりますでー。

まずは、空港で出会った2人。おんなじヒコーキに乗らはります。2人は話してるうちに、何かええカンジに。で、キャメロンネーさんが、トイレで化粧直しをしてる間に、トムのアニキが、パイロットと乗客たちを全員、銃撃戦と格闘戦で殺してしまわはります。おいおい、どうゆうことやねんと、目を点にしておますと、トイレから出てきたキャメロンネーさんが、いきなりトムとキスしはります。ところが、みんな殺してもうたから、無人飛行やねんと言わはって、さあ、大変やー。トム・アニが操縦して草原に不時着させはります。トム・アニはCIAの人らしいんで、そんなん操縦できまへんで。

それ以降、ドトウのごとく、ウルトラワザの銃撃戦をメインにした、バクレツ・シーンがやってまいります。

カーチェイスで、いろんな車の屋根を伝って、屋根の上からの銃撃アクトを始め、オリエント急行の車内での、敵とトム&キャメロンの格闘バーサス、特に“手を開いてケツで押す”キャメロン・アクトのユニークさ。

でもって、スペインでのクライマックス・アクションは、圧巻どしたえ。2人でバイクに乗らはって車を追うチェイス・シーンなんどすが、スペインらしく闘牛の群れを突然、このチェイスの中に迷い込ませた上で展開しはります。バイクを運転するトム・アニの前へ行って、キャメロンネーが大また開きで、敵を銃撃応戦するとこなんか、どうにもこうにもたまりまへん。

サントラもシーンに合わせて、バンドネオン入りの哀愁感、タイトなオーケストラ・サウンドが流れよりますが、個人的にええなと思たのは、1980年代に大活躍したモダン・ポップのアメリカン・デュオ、ダリル・ホール&ジョン・オーツの「プライベート・アイズ」が、サントラとしてやなく、重要な登場人物(ポール・ダノ君)が愛聴しとる音楽として流れるとこでおます。ホール&オーツはボクチンもダイスキなんで、このシブ~いシークエンスにはハマリました。

2010年8月28日 (土)

バンド音楽日本映画「BECK」

音楽映画、ミュージカル映画史において、史上初の試みが施されよった、ある意味で問題作でおます

水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、中村蒼、向井理の各アニキたちが組むバンド「BECK」のサクセス・ストーリーやー

http://www.beck-movie.jp/

セプテンバー9月のサタデー4日から、全国各地イッセーのロードショー街道でおます。本作を配給しはるのは、松竹はんどす。

文=映画・音楽分析評論家=宮城正樹

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Ⓒ2010「BECK」製作委員会

カブトムシのカットから始まり、UKのバンド・オアシスのナンバーでシメられよる、音楽映画の会心作でおます。

この冒頭とラストロールの意味は、つまり、ビートルズ(カブトムシたち)と、そのビートルズに大きな影響を受けたオアシスとゆう、UKロックの流れにそくした、シブイ作りなんでおます。BECKとゆうアーティストもイギリスに実在してはります。

さらに本編では、UKロックだけやなく、レッド・ホット・チリ・ペッパーズがプレイする、アメリカ西海岸のバクレツ・ロックも流れよります。そうしたロックを背景において、アマチュア5人組バンドの「バンドやろうぜ」から始まり、ライヴ・パフォーマンスのサクセス・ストーリーまでが、濃密に描かれます。

そして、その描き方において、映画史上、おそらく初めてとなる試みをば、仕込まはりました。観客に対して、フェアかアンフェアーかは、それぞれ見た方々の判断にゆだねられるかとは思います。でもって、このシーンは本作の大いなるネタ部になりますんで、余り詳しいことは書けないのでおますけども、一つだけヒントを言いますと、映画的ルーツに回帰するようなアイデアでおます。

さて、バンドの音楽映画となれば、これまでギョーサン(仰山)作られてまいりました。そんななかで、本作のキモは、その本ネタ部以外にもいっぱいござります。

コミック原作で、TVアニメ化を経由しての映画実写版なんやけど、そういうタイプの音楽映画で言いますと、「のだめカンタービレ」(最新作は4月12日付けで分析済み)とかがありますわね。「のだめ」にもあった音楽メイキング・ストーリーが、本作では大きな見どころとなっておるのですよ。

メロコア、グランジな重たいリズム隊(ギター・ベース・ドラム)が奏でるサウンドに、ラップ調をメインにした、ヒップホップ系のボーカルが乗るとゆうスタイルは、現在、全米で大ブレイク続発中のサウンドとマッチしておます。つまり、バンド・サウンド作りでも、現代的な音楽嗜好で進行してゆくんだす。

バイオリンやチェロを流して、バンド・メンバーのそれぞれが、音楽を聴きながらイメージするフラッシュ映像なども、本作のオリジナルな持ち味でおましょう。流れゆく雲、セピアな夕焼け、ブルーな海、雨降るなかの野外コンサート・カットとか、映画的カットにココロをくすぐられよるハズでおます。クライマックスの夏の野外フェスティバル・シーンでは、男たちバンドの熱いハートが伝わってまいります。

ボーカル担当の佐藤健のアニキと、2枚目の写真の忽那汐里(くつなしおり)ちゃんとのラブ・シーンも要チェックだす。

「トリック」シリーズ(最新作は5月1日付けで分析済み)やら「20世紀少年」3部作(2008年・2009年)やらで有名な、堤幸彦監督の新作。またまた、大ヒットしそうでおますよ。

2010年8月27日 (金)

ハリウッド映画「トラブル・イン・ハリウッド」

ロバート・デ・ニーロ&ブルース・ウィリス&ショーン・ペンやなんて、ものゴッツーなウルトラ・ハリウッド映画どすえー

バリー・レヴィンソン監督初の、ハリウッド業界内幕映画でおます

http://www.tih-movie.com

セプテンバー9月のサタデー4日から、東京・渋谷・シネマアンジェリカほか、全国各地順グリのロードショーでおます。この映画を配給しはるのは、フリーマン・オフィスはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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© 2007  2929 Productions  LLC

ハリウッド映画のプロデューサー役ロバート・デ・ニーロ(写真1枚目)が、業界内の映画メイキングやったり、大物俳優との交渉ぶりなどをこなしてゆく映画どす。

映画プロデューサーの人間ドラマ映画は、例えば最近では、フランス映画「あの夏の子供たち」(5月24日付けで分析済み)なんぞがあります。でも、フランス映画界やら日本映画界やらとは、ハリウッドとなりますれば、悩み深さやストレスの度合いはものゴッツーな格差がござることでしょう。その悩み深き日々を、月曜から金曜まで、そして、それから1週間後という日程で描かれました。

本作の監督のバリー・レヴィンソンはんと言えばですな、「ナチュラル」(1984年製作・アメリカ映画)やら「レインマン」(1988年・アメリカ)やら、良質ケッサク印のハリウッド映画をば、量産してはる巨匠監督でおます。そんな監督が遂にでおます、映画監督なら1度は撮りたいジャンルやと、ボクが勝手に思っておますところの、映画業界の内幕もの映画を撮らはりました。

メイキングものを含めましたら、この種の内幕ものは、これまでに仰山(ぎょうさん=たくさん)作られてきておます。でも、本作のオリジナルなところを申しますれば、やはり、プロデューサーに焦点を当てはったとこやろか。監督とかエージェントとかが多いと思うんやけど、プロデューサーに絞ったことによって、多彩なスタッフ・俳優の人間模様が展開し、群像劇としての面白さも付加されてゆきよるのどす。

「第三の男」(1949年・イギリス)のパクリやんとか、ブラピことブラッド・ピットを主演にした「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年・アメリカ)花屋版の企画とか、どないな映画やねんと思いますけども、業界内での映画にまつわる裏話が、イロイロと披露されるのは、もちろんでおますよ。

でもって、本作の映画内映画ポイントといいますか、製作映画にまつわる話が、2本にわたりスッタモンダ、スッタ問題が展開しよります。このツー・ポイントは、この映画のキモでもあり、命でもござります。

ショーン・ペン主演映画「フィアースリー」(映画内映画でおます)で、最後に死んでまうショーンなんやけど、ショーンの飼い犬まで殺すやなんて、問題やろーと、映画会社の女社長キャサリン・キーナーはんが、犬は殺さんといてと、変更を迫らはります。デ・ニーロは監督を説得し(写真2枚目)、何とかエエ方向にいったんやけど…。

今一つの悩み。写真3枚目にあるブルース・ウィリスはんが、ウットリの恋愛映画で、ボウボウのヒゲはまずいんで、デ・ニーロはんはウィリスに剃ってくれへんかと迫らはります。でも、ウィリスは大暴れしてまで抵抗しやはるんどす。ああ、悩みの尽きないデ・ニーロはん。私生活でもイロイロ問題ありきで、もうどないもこないもなところへと追い込まれます。さあ、デ・ニーロはん、どないしやはるのん? 個人的には、デ・ニーロのボク的に最高傑作と思てる「タクシードライバー」(1976年・アメリカ)を、思い出させるシークエンスにシビレがきよりました。

でもって、結論。故ロバート・アルトマン監督の内幕ものの大ケッサク「ザ・プレイヤー」(1992年・アメリカ)に、優るとも劣らへん快作どすえー。

2010年8月26日 (木)

ニッポン映画「nude」の渡辺奈緒子・みひろ・小沼雄一監督インタビュー

「ブギーナイツ」や「プラトニック・セックス」とは違うノリです、とゆわはる小沼雄一監督のアニキ

「私のターニング・ポイント作です」とゆわはる、主演・渡辺奈緒子ちゃん

「AVを変えたいと突き進んだ」とゆわはる、原作者・みひろチャン

http://www.alcine-terran.com/nude/

セプテンバー9月18日サタデーから、東京・シネマート新宿を皮切りに全国順グリのロードショーをやらかしますでー。関西やったら、オクトーバー10月16日サタデーから、大阪・シネマート心斎橋やら、ノーベンバー11月6日サタデーには神戸・元町映画館やらで上映でおます。R-15指定の本作は後日、分析評論いたしますのでお楽しみにしとってくだされ。

取材・文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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写真1枚目。左から、みひろチャン(3枚目も)、奈緒子ちゃん(2枚目も)、小沼(おぬま)監督。

本作について。AV女優やってはった、みひろチャンが、その体験や生き様を小説にしはりました。その小説を原作にしはった作品でおます。

「映画化されてどないなキモチにならはったでしょうか」

みひろチャン「試写会で映画を見て、ホントに映画になったんだなと、嬉しくなりました。本を書いてる時に、夢として、コミックや映画になればいいなと思っていたんだけど、コミックになり映画化もされて、改めて人と人のつながり、これだけ大勢の人たちが関わっているんだ。私は人に恵まれているんだなと感謝しました」

「AV嬢の役。かなりムズカシい役やと思うのどすが、役作りやらはどないやったんでしょう」

奈緒子ちゃん「AV女優役じゃなく、フツーの女の子が自分と向き合いながら生きていくお話だと考えて、女性映画としてオファーを受けました。余りセリフに頼らずに、表情やキモチが入っているかどうかっていう、演技を心がけたつもりです。夢に向かってのキモチ。迷いながらも、キモチだけはブレずに、大切に演じました」

みひろチャン「私の役をやってくれる彼女と会った時、私と違うかなと思ったけど、お互いスッピンで喋った時に、鼻歌なんか歌うし、イロイロ似ているところを発見して、楽しみだなーって思ったんです」

「みひろチャンが演じるちゅう、手もあったかと思われよる本作。また、故飯島愛さん原作の映画化作品『プラトニック・セックス』(2001年製作・日本映画)みたいに、親との関係描写がない点については、監督としてはどないやったのでしょうか」

小沼監督「原作では親は全く登場しないんですよ。親を入れると、親の方を中心にしたドラマ部を、別に作らなければならなくなります。そうなると、結局、中途ハンパな仕上がりになりかねない。あくまで、ヒロイン映画の青春のヒトコマを描くという感じですからね。確かに、みひろチャン自ら主演して演じてみるという選択もあったかもしれません。でも、映画とは虚構でリアルに表現していくものだとするならば、みひろチャン本人が出れば、描けなくなるんじゃないかと考えたんです。みひろチャンには、奈緒子ちゃんの先輩役で出てもらいました。また、あくまで女性映画ですから、AV撮影現場はピンクを排除し、水色・ブルーのトーンでいきました。AVの演出家に話を聞くと、AVを見る人には、煽情的な色じゃないからあり得ない設定だと言われたんですよ。ああ、これはボクの思い通りになったなと、思いました」

「R-15(15歳未満は入場不可)指定になったんどすけども、まあ、それはええとしまして、撮影秘話みたいなんはありましたか」

奈緒子ちゃん「AV撮影現場シーンは2日にわたりましたが、1日目はあんまり覚えてないんですよ。1日目は男優さんと会わないようにして挨拶もせず、で、控え室で出番を待っていて現場へ行ったら、初対面即本番なんて感じだったけど、2日目はプロとしての自覚に目覚めたのかな(笑)。でも、R指定で大幅な削除があったのでしょう。2日目の撮影シーンは、一体どこへ行っちゃったんですか、監督?」

小沼監督、冷や汗フタしずくの苦笑いどす。

「AVのメイキング映画はほとんどないのどすけども、例えば、本作を撮る前にブルー・フィルムのメイキング映画『ブギーナイツ』(1997年・アメリカ)なんぞを参考にしはりましたか」

小沼監督「『ブギーナイツ』は男優の視点なんだけど、もちろん見ていますし、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画作家性も素晴らしいと思います」

その後、「童貞放浪記」(2009年)に続くエロティック・タイトルものとのことで、エロティシズムを今後も追究しはるのん? な問いかけに…

小沼監督「エロづいてるのは、たまたまです(笑)。人が生きる中で、エロもあれば、日常生活的なものもあり、生きていること全てが、映画につながっているのではないでしょうか。題材を選ばずに今後も、監督していきたいと思います」

渡辺奈緒子プロファイリング→1Q84年生まれ。「東京大学物語」(2006年)でデビューしはった後、「リアル鬼ごっこ」(2008年)「少林少女」(2008年)「SILK」(2008年)やらに出演。今年は北野武監督「アウトレイジ」(公開済み)、阪本順治監督の「行きずりの街」が待機しておます。

みひろプロファイリング→1Q82年生まれ。本作の原作小説を2009年に上梓しはり、2010年5月にコミック第1巻が発売やー。2010年にAV女優引退後、映画では「SR サイタマノラッパー」(2009年)、「ランニング・オン・エンプティー」(本ブログでは2月18日付けで分析済みでおます)などで快演技を披露しはりました。

小沼雄一プロファイリング→1995年「チャンス・コール」が今村昌平賞ゲット。商業監督としてのデビュー作は、2003年「自殺マニュアル 2-中級編-」。本作は「結び目」(2010年)に続く監督作品でおます。

ニッポン映画「トイレット」

もたいまさこオバンの、サイレント演技と癒やし系がクセになりよります

「バーバー吉野」「かもめ食堂」「めがね」に続く、荻上直子監督節が全開でおます

http://www.toilet-movie.com

オーガスト8月はサタデー28日から、全国ロードショーやー。関西でおましたら、大阪・梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで上映どす。本作を配給しはるのは、ショウゲートはんと、スールキートスはんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010“トイレット”フィルムパートナーズ

主演もたいまさこ、荻上直子監督によるコラボレート作品も、遂にクライマックスをば迎えたようなカンジがしよりました。

コドモたちを全員おんなじカットで通さはって、涼しい顔をしてはりました散髪屋のおばはん役「バーバー吉野」(2003年製作)、フィンランドに女3人で食堂をば開店しはった「かもめ食堂」(2006年)、登場人物みんなをカキ氷やらで癒やさはった「めがね」(2007年)と、続いておます。

そう、この主演・監督コンビは、どこまでものように、癒やし系映画へと、しつこくアプローチをばしてはります。

でもって、この映画は、カナダ・ロケを敢行しはったのです。荻上監督はかつてこの地ではありませんが、北米で映画を勉強してはりました。その時の思いがあって、カナダを舞台に新作映画を撮らはったのでおます。こういう映画となりますと、監督の思いが過ぎてしもて、つい観客にはオモロナイ作品になりがちどす。しかし、本作はしっかりしておました。

癒やしの荻上節、和みの家族ドラマ性、そして、異国に嫁いだ娘家族のもとへ、日本からビジターとしてやってきはった、もたいまさこバアヤの、なんともいえへん演技でおます。

「今日、ママが死んだ」やなんて、次男のツイッター・セリフで始まります。コレはカミュの小説「異邦人」の冒頭で、「今日、ママンが死んだ」とくるツイッターにつながっておます。

母が死に、その母・もたいまさこオババがカナダに来はった。長男・次男・長女3人の大人になったコドモたちが、バアチャンを迎えはるんどす。でもって、この3人とオバンの交流が、ゆっくりと始まり、始まりでおます。

言葉が通じない中で、一体どうゆう風にその交流ぶりを描いてゆくんか、ボクは映画に集中して見ておましたが、いやあー、コレがなかなかのもんどした。ベストかどうかは分かりませんけども、もたいまさこオバンのサイレントで、みんなと交流するノリが、ある意味クセになりそな仕上がりなんどす。

マゴたちが話すコトバは理解できへんはずやのに、理解しやはるんどす。なんでやねん? は、この際ヨコに置いておきまして、ミシンや裁縫、エアギターやら、具体的なツールを通じて、意思疎通するところが描かれます。なるほど、そういうところから通じてゆくのならば、言葉が通じなくてもいけるんやないか。みなさんを、そういうキモチにさせてゆかはるんどす。

もたいオバンが、ギョーザ作って、ビール飲んで、タバコ吸って、「クール」なんてゆうて、親指立てはるカットなんか、メッチャ、グーでおました。2分や3分の長めの撮影カットでも、マイペースぶりを披露し続けはる、もたいオバンに、すっかりハマってしまう作品どしたえー。

2010年8月25日 (水)

日本映画「悪人」

悪人とは何やねん? その悪質や悪性の本質をばカンジさせはる、ある種すさまじき作品でおます

「フラガール」に続く、李相日(リ・サンイル)監督。「ジョゼと虎と魚たち」とは真逆の、恋愛演技で魅せる妻夫木聡のアニキに、注目どす

しかも、「おくりびと」が受賞した「モントリオール世界映画祭」で、深津絵里のネーさんが最優秀女優賞ゲットでおます(2010年9月7日)

http://www.akunin.jp/

9月セプテンバーの、サタデー11日から、東宝系劇場にて全国一斉のロードショーやらかします。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010「悪人」製作委員会

本作は見出しにも書きました通り、現代における悪人の本質とは何かを追究した、吉田修一の文学作品が原作になっておます。ミステリー的なとこもあるんやけど、本質的には文学小説だす。

妻夫木聡のアニキと、本編の後半で逃避行をしやはる深津絵里のネーさんが、最後にいみじくもツイッターしはります。「(妻夫木君の役柄みたいなのが)悪人と呼ばれるとよね」(九州が舞台でおますんで、九州弁でおます)。

このセリフは、本作のテーマ性とリンクしよります。ああ、この映画では、いっぱい悪人らしき人間が出ておますのに、犯罪を犯しただけで、妻夫木のアニキだけが極悪人イメージとなってまう皮肉を描いてはるのどす。

妻夫木クンが出会い系サイトで知り合った満島ひかりチャンなんか、犯してもいてへんし、助けてやろうかっちゅうのに、あたしを犯したと言って妻夫木を訴えてやるとか、トンデモない悪女ぶりを披露しはります。

岡田将生クンなんか、同乗してる満島チャンがクセーなんて言って、車から蹴り出しはります。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(6月5日付けで分析済み)でも、似通ったシーンがござります。でもって、そんなエピソードをオモシロおかしく、ビール飲みもって、大学の友達たちに披露して喜んではります。

被害者は満島チャンなんやけど、その父役の柄本明はんが、この岡田クンに対して「最近、大事な人がいちょる人間が少なくなったばい」なんて嘆き節を言わはります。どこに、悪質なところがあるんか、分かりにくくなっておます現代の実情を、説明せずに描写していかはります。妻夫木の祖母役の樹木希林はんが遭遇しはる、騙しの薬屋とかマスコミ攻勢とかにも、悪性がそこはかとなくカンジられよりますでー。

そして、現代的なネット問題についても、「誰も守ってくれない」(2009年製作)みたいなとこがござります。「誰も守ってくれない」みたいに加害者家族に焦点を当てずに、加害者側・被害者側・そのどちらかに関わる人たちとゆう風に、分散型で描き、さらに、観客に対して、押し付けて提示するのやなく、あくまで観客に考えさせる方向性を打ち出してはるのどす。

撮り方としては、カメラ目線のストレートなアップは少なく、ヨコ顔やったり、車の窓を通したりと、イロイロあります。車窓に雨がなだれかかる深津絵里ネーのカットやら、料理の魚の目を鏡にして、妻夫木クンの真相告白シークエンスへと移るシーンなんか、エエ感じでおますよ。

その妻夫木クンの演技性でおますが、李相日監督作品では、本作と同じく九州ロケの「69 sixty nine」(2004年)に続く2度目の登板ながら、明るい系を披露した恋愛映画「ジョゼと虎と魚たち」(2003年)とは正反対の、「負」の演技でゆかはりました。消極的・不器用なカンジが、ある意味クセになる演技どす。

妻夫木クンと深津ネーの逃避行劇では、「約束」(1972年)のような見ごたえがござりました。今、見るべき、必見の1本どす。

2010年8月24日 (火)

R-18指定日本映画「花と蛇3」

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小向美奈子ちゃん主演となれば、みなさん、イロイロ想像しはるとこがあるやろうけども…

18歳未満鑑賞厳禁やから、ヤラシー・シーンは多いけど、映画的シーンも多いんやでェー

http://www.dmm.co.jp/hanatohebi3/

オーガスト8月のサタデー28日から、東京・銀座シネパトス、大阪・天六ホクテン座にて、全国ロードショーでおます。この「R-18」指定映画を配給しはるのは、東映ビデオはんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

Ⓒ2010東映ビデオ

東映の「花と蛇」シリーズ(2004年・2005年製作)の第3弾でおます。1962年に発表した団鬼六はんの、男の性的妄想によるヒロイン・ポルノ小説が原作でおます。

なんで、こういうタイプの作品が出てきたんか、その歴史的経緯なんかを話しますと、長くなりますんで、残念ながらはしょらせてもらいます。

1960年代の半ばから出てきたピンク映画、1970年代から出た日活ロマンポルノ、本番をも辞さない武智鉄二監督のハードコア作品など、ヤラシー映画は、永遠かと思えるくらいいっぱいござります。でも、それらの作品は、あくまで映画としての作品性をば追究してはります。

つまり、今やそのへんにゴロゴロ出回っとるAV作品とは、根本的に質が違うのでおます。ちなみに、AVの略は、オーディオ・ビジュアルやアニメ・ビデオの略もありまして、アダルト・ビデオだけやありまへん。でも、現在は、AVてゆうたら、ほとんどがアダルト・ビデオをイメージしはることでおましょう。まあ、そのへんはヨコに置いておきまして、肝心な映画のお話でおます。

この映画を試写室へ見に行った時、試写開始20分前の段階で2人だけしかきてへんかったのどす。ボクチンと浜村淳御大でおました。浜村御大は、ボクに「おう、僕らだけかいな」と冗談半分にゆわはりましたけども、その後オンナのコもきはりましたので、何とか試写の体裁だけは整いよりました。

男限定のやらしそうな映画やと、このシリーズそのものが定着しとるだけに、アレやったのですけども、でも御大と見たカンジでは、決してソレだけやないと確信できたんどす。

なんせ小向美奈子主演やから、一般人のほとんどの方にとっては、その種のアレやコレやでな目線で見てしまいがちどす。しかし、確かに、ホンマに、ヤラシーことはヤラシーのでおますよ。

女友達とのレズ・シーンでは、「あんたはホントにヤラシーネー」なんてセリフも出よります。畳の広間や地下牢や鏡ばりの部屋や食卓でのヤラシー・シーンの連続には、もうどうにもこうにもたまらへんカンジにはなるかもしれまへん。でもって、メインとなります多彩な緊縛シーンなんて、もうええ加減にしときやーやなんて、言いたくなるくらいどす。

でも、Vシネマとかとの違いは、はっきりしておりま。夕景のセピアな湖面や木のシルエットと青空なんかの自然美描写や、絵画的なロングショットを含め、映画的なカットが時おり挿入されて、コレはあくまで映画なんやと主張しはるのどす。日活ロマンポルノには数々の名作がありましたが、本作はそれらの作品と決してヒケを取らない作品やと思いました。

2010年8月23日 (月)

ドキュメンタリー日本映画「チャンドマニ~モンゴル ホーミーの源流へ~」

モンゴルの民族音楽映画のシブミを伝える映画どす

ロードムービー・スタイルと歌演奏がシンクロナイズ

http://www.chandmani.com

8月オーガストの28日サタデーから、大阪・第七藝術劇場で公開後、全国各地へ回る予定だす。本作を配給しはるのは、「FLYING IMAGE」はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2009 FLYING IMAGE

民族音楽のドキュメンタリー映画と申せば、ある程度見る前から予想が付くと言いますか、音楽のライブ・ドキュメンタリー的な作りになるんやないかいなと、ボクは思いました。キューバ音楽が熱いケッサク「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年製作・ドイツ&アメリカ&フランス&キューバ作品)とかの作りでおますか。

でも、本作はかなり定番をはずしてはります。なぜかと言えば、映されるのはモンゴルの音楽どすけども、それらをいろんな人たちが、一つの会場で演奏するような機会とゆうのが、少ないんやろなと思います。

伝統音楽なんやけど、ミニマムでメジャーやない。でも、その音楽の素晴らしさを伝えたいんやーと思う時、製作者側はどういうアプローチをしはるのでおましょうか。その方法論が、試行錯誤の上なのかどうやらは分かりまへんけども、スムーズなカタチで描かれた作品どす。

モンゴルのウランバートルからチャンドマニ村へと到る、ロードムービー・スタイルしかり、印象的な長回し撮影、音楽を披露するシーンとのシンクロナイズぶりなど、ドキュ音楽映画では、ちょっと今までにない作り方をば実践してはります。

長回し撮影でいえば、手振りがユニークな3人が踊りを披露する4分くらいの長回し。主人公と友人が岩肌に座り、風が吹くなかで話し合うカットやら。その風もヒューヒューな音やありまへんで。ブブ・ブブブーってカンジやから、内陸部で吹く風音とはどんなんかを示してはります。この自然描写も、観客のみなさんがケッコーはまるような撮り方をしてはるんどす。

歌われる歌そのものも、川とか山とかの自然入りの歌詞どすし、水色・イエロー・赤・セピア・上部セピアの灰色な、多彩なウランバートルの空描写、下弦の月やら昼間の月。花札の「いのしかちょう」やないけれど、羊・鹿・馬・ビャクダン(白檀)の花とか、野生の動植物の描写も、さりげなく入っておます。空と地を映す場合も、空は必ず入っておますんで、亀井岳監督的には、空というのは映画的には、重要なアクセントであると、考えてはるのでおましょう。

「風が体内を吹き抜けて出てゆく」自然な音楽の在り方やら、それに目覚める人間ドラマ性とか、家族たちのキズナとか、イロイロあって紡ぐ姿勢に、トータル感やらは少し希薄なんやけど、妙にココロに何か引っかかりみたいなんを、残してくれよった作品でおました。

2010年8月22日 (日)

日本映画「東京島」

アラフォー設定の木村多江ネーさんの、集団ロビンソン・クルーソー状態における、孤島漂流物語でおます

「OUT」の桐野夏生原作らしい、女のタクマシサが全編にみなぎっておますよ

http://tokyo-jima.gaga.ne.jp/

オーガスト8月サタデー28日から、全国ロードショーだす。関西やったら、大阪・梅田ブルク7、敷島シネポップ、T・ジョイ京都、神戸国際松竹やらで上映しはります。本作を配給しはるのは、ギャガGAGA★はんどすえー。

文=映画・ミステリー小説分析評論家=宮城正樹

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Ⓒ2010「東京島」フィルムパートナーズ

いきなり、原作者・桐野夏生論でおます。

桐野作品に出てくるヒロイン像は、ほとんどがたくましい骨太のキャラクターでおます。アメリカ探偵作家クラブ賞に、日本人として初めてノミネートされた「OUT」の骨太主婦、直木賞をゲットした「柔らかな頬」の、我が子を執念深く探し続ける母。

ちなみに、この2作は既に映画化されて、共にヒロイン映画のケッサクになっておりま。でもって、この「東京島」もまた、女のたくましさ、母のたくましさが際立った、会心作となっているのでおますよ。

シチュエーションは、「ロビンソン・クルーソー」みたいに、孤島に漂流してサバイバルしてゆくというスタイルだす。けども、紅一点の彼女以外に、男たちが集団で漂着しとるという設定だす。

こんな中で、男たちは彼女を巡って、取り合いみたいなんをしはります。男たちの中に、女が1人という特殊な設定を作って、集団系「ロビンソン・クルーソー」な状況が、どういう展開をもたらしてゆくのかを紡いでいかはるのです。

こういう設定は、おそらく桐野夏生はん的には、ノーベル文学賞を受賞した、イギリスのゴールディングの小説「蝿の王」を、かなり意識してはるんやないかと、ボクは思いました。「蝿の王」は、孤島にコドモたちが集団で漂流したとゆう設定で、その後、コドモたちの間で、どのようなことが起こってゆくのかを描いてはりました。そのスタイルが本作にも見受けられます。

さて本作は、アラフォー世代の木村多江のネーさんが、島に漂着し、ヘビを殺して食うてはるシーンまでを、5分以内で示さはります。このイントロのインパクトから、一体これから、どんなドラマが始まるんかいなと、ソワソワワクワクしよります。

集団漂着男たちの中で、1人浮いてはる人がいます。窪塚洋介のアニキでおます。「GO」(2001年製作)以上にハチャメチャなセリフをば、連発しはります。木村多江ネーさんとは、折り合いがようありまへん。「もう、おばさんなんだよ」なんて言ったりして、多江ネーさんを非難しはります。

でも、そんなこんながあるんやけど、ネーさんのサバイバル術の在り方は、本作の大きな見どころとなっておます。ネーさんのアップも多いし、長回し撮影もあります。限られた孤島が舞台なのに、徐々にヒロインのハランバンジョーものへと、広がってゆくのんは、チョイ驚きました。それだけに、ラストのシークエンスのサプライズが生きてきよりました。

何はともあれ、新しき孤島漂流もの映画が生まれ落ちました。

2010年8月21日 (土)

日本映画「オカンの嫁入り」

宮崎あおいチャンと大竹しのぶオカンの母娘物語やでー

ボクチンが住んでる近所の、京阪電車沿線でロケしてたやなんて、ビックラこきました

http://www.okannoyomeiri.jp/

セプテンバー9月は4日サタデーから、大阪・梅田ブルク7ほか全国ロードショーだす。本作を配給しやはるのは、角川映画はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010「オカンの嫁入り」製作委員会

最初の方でストレンジャー、ビジターが1人入っての家族ドラマのように思わせといて、実は母娘のキズナへと着地させるとゆう、新しいとこを打ち出した快作どす。

例えば、本作と出演者(大竹しのぶと國村隼)がかぶっておました「ダーリンは外国人」(3月26日付けで分析済み)なんぞと比較してみよりますと、随分と作品性が違っておました。なるほどな、「ダーリン…」は外人が変な関西弁もシャベッとったけど、東京が主な舞台やった。一方、こちとらは大阪でおます。

しかも何と、ボクチンの最寄り駅の近く・京阪電車の、急行・特急の停まらへん牧野駅でロケをばしはりました。

さらに、主役の2人、宮崎あおいチャンと大竹しのぶハンが、大阪弁セリフをばシャベらはりました。これが何とまあー、ネイティブより自然でオーソドックスな大阪弁やったんで、ビックリしよりましたがな。

ボクチンがここで書いてる関西弁は、大阪弁・河内弁・京都弁やらをミキシングして、時に大げさにやったりしとるのどすけども、そういう芝居がかったもんより、よっぽどフツーの大阪弁やったんですえー。うん、間違いござんせん。本作こそが、ホンマの大阪弁でおます。

でもって、これまでギョウサン作られてきよった大阪映画にして家族映画の中でも、細かいところでビミョーに、テイストを変えるような作りをば施してはります。

それはどおゆうことかと申しますと、母娘2人だけの生活の中に、母が「おみやげやー」とゆうて連れてきはった、母のフィアンセ桐谷健太クン、2人の住居の管理人役で、久々に多めの出番でシブ~いとこを示さはった絵沢萠子はん、ネイティブの國村隼はんらを入れることで、母娘ドラマにひと味もふた味も違う背景を作ったんでおます。

電車に乗れなくなったあおいチャンのトラウマを示すシーンとか、母と娘の会話の長めの撮影シーン、アップ・クローズアップのやり取りなどが、そういう人たちとの絡みの積み重ねシーンによって、映えてくるんでおますよ。

いろんな映画がセリフやら映像で出てきよりますけども、中でも一番グッと胸にきたのは、祖母の「ジェームス・ディーンに会いたい」のコトバに、J・ディーンみたいなカッコをし続けて祖母の回復を待つ、桐谷クンのエピソードどした。

モチ、母娘の感動的なエピソードは、最後の方でドドーンと出てきます。久々に見た大阪映画のケッサクでおました、アラマ・ポテチン。

写真集『ヨーロッパ「ケルト」紀行 ビジュアル版』上巻(島編)・下巻(大陸編)

武部好伸のアニキが、カルトでケルトなウラ紀行をシリーズで書かはりました

そのビジュアル版が、上下巻2冊にて発売中やでー

http://www.s-pn.jp/

彩流社(さいるしゃ)から、各1800円(税抜)で発売中でおます。

文=書籍分析評論家・宮城正樹

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ケルト人の文化とゆうたら、ボクチン的にはブリティッシュ・ロックのルーツとなる、ケルト・ミュージックを思い出しよりました。その源流は、アイルランドでおます。今をときめくU2(ユーツー)を始め、ビートルズ、エリック・クラプトンらも、その流れのなかから出てきはりました。

ところが、どっこいでおます。本書を読み、写真を見よりますと、ケルト文化とゆうのは、アイルランドだけやなく、全ヨーロッパにわたり伝わっておるらしいのです。ゲルマン民族の大移動みたいに、紀元前には古代ケルト人の東方大移住があって、ヨーロッパのいろんなとこに住み着いて、その地で文化を残してはるのどす。

でもって、元読売新聞の記者で、現在映画評論家でありエッセイストでもある、作家の武部好伸(たけべよしのぶ)のアニキが、このケルトに魅了されはりました。何と現地へ行って、ケルト人の残した足跡をたどるとゆう、トンデモネーことをやらはりました。

それを紀行文にし、写真集としてもリリースしはったんどす。主に夏場を中心に、1998年から10年間、取材しはりました。言ってみれば、労作でおますけど、でも、その労作労作したところをカンジさせない、さわやかで分かりやすい写真集になっております。そやから、旅行ガイドとしても、一般大衆向きに作られておるのです。

スコットランドの人口の1パーセントしか住んでいない、内外に分かれたヘブリディーズ諸島、アーサー王伝説が染みとる、イギリスのウェールズ、コンウォールを始めとしたイギリスのイングランド、北アイルランド、世界遺産の墳墓を始め、キリスト教関係の遺産が多いとゆう本場・アイルランド、以下、オーストリア、ドイツ、スイス、フランス、スペイン、イタリア、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、セルビア、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、トルコと巡らはります。

これまでぎょうさん出版されてまいりました、海外旅行のガイド本とは違いよりまして、はずせない観光名所やスポットを、フツーのように紹介するわけやおまへんで。ウラ観光スポットとでもいいますか、「ケルト」探求をベースにしたヨーロッパの旅でおます。地図と写真番号付きやし、それぞれの地への旅の案内も書かれておます。それにやね、ボクたちやワタシたちも、ぜひ行ってみたいと思わせるような美しき写真が次々にやってまいるのです。

さて、その旅の映画的予習としましては、アイルランドの紛争ものはチョイはずして、「わが谷は緑なりき」(1941年製作・アメリカ)、「ライアンの娘」(1970年・イギリス)、「バリー・リンドン」(1975年・アメリカ)、「ブレイブハート」(1995年・アメリカ)やらがよろしおますよ。

2010年8月20日 (金)

アニメ「劇場版メタルファイト ベイブレードVS太陽~灼熱の侵略者ソルブレイズ~」

短編アニメ「劇場版デュエル・マスターズ 炎のキズナXX(ダブルクロス)!!」と2本立てでおます

先着で入場者プレゼントがあるので、早めに見に行かなあきまへんでー

http://www.bey-movie.com/

http://www.dm-movie.com/

オーガスト8月のサタデー21日から、全国東宝系ロードショーでおます。夏休み最後の思い出作りは、この2本の映画でどないですかー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2010 足立たかふみ・劇場版メタルファイト ベイブレード製作委員会

ⒸTEAM DUEL MASTERS

まずは、長編の「メタルファイト」から分析いたします。

回りに回るメタル製のコマとコマが、ぶつかり合ってシノギを削り、ブチのめした方が勝者になるという戦い。しかも、それぞれのコマには、コマを操る人間のブレーダーがいてはります。

そんなコマ対決という単純なゲーム感覚のドラマが、今回はアトランティス王国の復活とか、現代人に向けた古代人のリベンジ・ドラマ、さらに、パニック・ムービーノリから、人類の滅亡を懸けた戦いへ、さらにさらに、宇宙にまで対決の場が広がるとゆう、凄まじいバーサス・アクション・ドラマへと転がってゆきよるのどす。

「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年製作・アメリカ映画)、「ディープ・インパクト」(1998年・アメリカ)、「デイ・アフター・トゥモロー」(2004年・アメリカ)、「アルマゲドン」(1998年・アメリカ)などの映画の要素が仕込まれておりま。

でもって、色使いどすけども、例えば、コマが回り回って出す熱気やエネルギーが、色として描かれるのどすが、この配色は「ポケットモンスター」シリーズ(1998年~2010年・日本)の多彩な光線色よりも、複雑系で配されます。

太陽神のコマは、オレンジの単色ではなく、その濃度をストライプ的に配置したり、イエローも入っておます。主人公・鋼銀河(はがね・ぎんが)が操るギャラクシー・ペガシスは、エナジーの元となる、白馬の天馬の白をベースに、薄ブルーがほんのり入るというカンジ。ほかには、薄グリーンの渦巻きタイプとか、海のブルー・ストライプの竜巻タイプとか、多種多彩でおます。

また、過去シーンでは脱色系の薄い色合いにしたり、夢シーンでは白いモヤがかりな配色にしたり、黒船アジトの怖いくらいのダーク感など、たまりまへん。

7人と1匹のチームとキズナも描かれるんやけど、クライマックスでは、主人公とライバルがタッグを組んで宇宙へ行き、「アルマゲドン」なミッションを遂行しはります。ほんま、ええカンジでエンドマークを迎えられる、快作アニメどすえー。

さて、お次は、写真3枚目の短編「デュエル・マスターズ」どす。こちらは、カード・ゲームのノリが、一大戦争へと発展する作りでおます。主人公・勝舞(しょうぶ)がカードの中へ入って、闇文明と火文明の抗争に関わらはります。

火文明が闇文明に制圧されてしもて、その火文明のトリが、主人公に「助けてッピ」とすがらはったんどす。主人公は仲間の1人と共に、スケダチに向かい、トリとコンビを組むクリーチャーと4人・匹で、闇文明に挑まはるのです。

闇文明のダーク感と、火文明のオレンジのストライプ感の対比に加え、ピンク、グリーンの配色など、目を見張らせます。

ラストのタイトルロールでは、アニメ映画史上初とも思える、NG集映像が披露されよります。コレにはたまげました。

ということで、どちらも色使いの妙が楽しめる作品でおます。

2010年8月19日 (木)

犬猫対決映画「キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争」

犬猫ペット好きには、どうにもたまらへん映画でおます

いろんな名作パロディも入れて、映画ファンへも肉迫するよー

http://www.catsanddogs.jp/

オーガスト8月21日サタデーから、全国イッセーのロードショーやらかします。3D、2D同時公開やで。大阪やったら、梅田ブルク7やらで上映どす。この映画を配給をばしはるのは、ワーナー・ブラザース映画はんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2009 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI) LIMITED

イヌたちとネコたちが対決するアノ「キャッツ&ドッグス」(2001年製作・アメリカ映画)のシリーズでおます。その最新作は、犬好き・猫好きだけやなく、小鳥好きほかのペット好きの人たちにとったら、えらいかわいらしくてたまらへん映画になりました。

何といいましても、犬猫のアップ・シーンが多い上に、ソフトバンクのCMおとうさんの、チョー拡大バージョンと言えよりますシークエンスが、ドトウのごとくやってまいります。

でもって、「あら、かわいい」なんて域を超えまして、これまたチョースピードフルなアクション・シーンも次々にやってまいります。あらま、トンデモ大満足な時が訪れることでおましょう。

しかし、ほな、映画ファンにはどないやねん、なのですが、目のチョー肥えたファンにはどうかとは思いよりますけども、いろんな名作映画のパロディをば入れてはるので、何とか耐えられるかと思います。むしろ、映画ファンとゆうか、ファミリー向けの作りなんどす。

ただし、動物たちが擬人化して活躍する、ディズニー映画とかドリームワークスのアニメものとかとは、ちょっと違(ちご)ておます。愛であるとか勇気であるとか、夢であるとか明るい未来であるとか、少年少女たちに希望を与えるような方向性とは無縁どす。むしろ、エンターテインメントに徹して作られてるところに、爽快感があるのどす。モチ、キズナ描写はござります。でも、ネチネチのベタベタではござんせん。

ピンクの脱毛液で脱毛してしもて、飼い主から見捨てられてしもたワルネコ「キティ・ガロア」がおまして、そいつが今回の悪の主役でおます。犬たちを狂わせる音を発する「野生の呼び声」なるもんを開発して、犬類をフヌケにするだけやなく、人類をも支配しようやなんて、ドアホなことをば考えました。

それに対抗し阻止すべく、イヌ・チームは強靭な4匹チームを組んで、このミッションに当たらはります。2匹のイヌとメスネコとハトでおます。どんな組み合わせやねんでおますけども、その編成ぶりには、キチンとした理由があるところがまた、オモロイのでおますよ。

空中アクション、ネコ砂パニック、船アクション、クライマックスの遊園地アクトなど、目が点になるアクション・シーンは、でっかい見どころだす。

個人的には、アルカトラズのイヌネコ刑務所に入ってる、猿ぐつわをかまされた「羊たちの沈黙」(1991年・アメリカ)ハンニバル・レクター的なネコの存在どした。一体どういう因果かわかりまへんが、4匹が犯人の居場所を尋ねに行くのどすけども、このシーンはホンマに笑えました。第1弾に出てた、悪のペルシャネコの再登場も、サプライズ感がありまっせー。

2010年8月18日 (水)

ニッポン映画「劇場版 怪談レストラン」

「トイレの花子さん」とか「学校の怪談」とか、良質印(!?)の文部科学省推薦チックなホラー映画でおます

ああー、夏休み。この怪談ホラー・コメディを見はったら、家族一同きっと、思い出の夏になることでおましょう

http://www.kaidan-restaurant-movie.com

オーガスト8月は21日サタデーから、全国イッセーのロードショーでおます。関西やったら、大阪は梅田ブルク7、なんばパークスシネマやら、T・ジョイ京都、神戸は三宮シネフェニックスやらで上映。東映はんの配給映画どす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 劇場版「怪談レストラン」製作委員会

コドモたち向けのホラー、そして、ファミリー向けのホラーってなんやねん? そうしたところを、ほぼ100パーセントに近いカタチで作られた作品が本作でおます。

かつてあった日本のモノクロ怪談系の映画なんぞは、今のコドモたちには見せられへんくらいオトロシー作りでおました。ボクチンもコドモの頃に見たんやけど、夢にまで出てきたり、夜中にはもう1人では、決してトイレへ行かれへんような、情けない状況に追いつめられたりしました。

そう思てみますれば、本作なんぞは、かわいらしいもんでおます。何といいますか、ホラー・コメディなんどす。ホラーとコメディは正反対のもんやとボクは思いますが、そやから、どちらかと申せば、コレはコメディなんどすえー。

お岩さんやらが出はる、日本のモノクロ怪談映画とは違いまして、怖がらせるんやなく、笑かしたろやないかいなってゆう、コミカルチックなユーレイが次々に出てきよるのどす。

いっぱいの切断された手足を、武器にしはるユーレイ尼はん。学校の実験室にあるアノ解剖模型を模した模型人間。占いをするカラス人間。料理する閻魔コック大王。コドモたちにも分かりやすい、ユニークなユーレイのオンパレードでおます。お笑いのあのアンガールズの2人が、大いに笑かしてくれはるのです。

そんな大笑いのユーレイたちに対して、大マジメに立ち向かう3人組。ラスト近くでは5人になりますが、彼らの正義感あふれる冒険心やアクションが、勧善懲悪映画としても見られる良質のドラマを際立たせます。

「トイレの花子さん」(1995年製作)「学校の怪談」シリーズ(1995年~1999年・全4作)の学校ものホラー。でもって、レストランなどの館ホラー部なんかでは、大林宣彦監督のデビュー作「HOUSE ハウス」(1977年)なんぞのテイストもござります。

また、ケータイやメールが作品のキモとして、作品の中に取り込まれとるところなんかは、「着信アリ」シリーズ(2003年・2004年・2006年・全3作)やら韓国映画「ボイス」(2002年)やらを思い出させよります。

でもって、ユーレイも個性的なら、ユーレイと戦う3人プラス2人もキャラが立っておりま。

イントロは水彩画っぽいアニメなのどすが、実写部になりますと、キャラはさらに際立ってきよります。ペラペラのアニメ・ユーレイにもならはる、「なんなのよー」が口癖のメガネの剛力彩芽ちゃん、成海璃子ちゃんみたいな工藤綾乃ちゃん扮する、ヒロイン・天野ハルのアイドルチックな演技性、「世にも奇妙な物語」のタモリ的な案内人となる西村雅彦はん。

どれもみな、コドモたちの人気を独占しそうな演技ぶりどす。ホラー映画の名匠・落合正幸監督の、柔軟なフレキシブルな作品性にも感心いたしました。

2010年8月17日 (火)

オランダのドキュメンタリー映画「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」

嗚呼(ああ)、何とゆう、皮肉なタイトルでおましょうか!?

美術館の内幕ものドキュメンタリーやー。「ダ・ヴィンチ・コード」なミステリー色もあるでー

http://www.ams-museum.com/

オーガスト8月サタデー21日から、東京・渋谷のユーロスペースでロードショーのあと、全国各地へ順グリに回りますで。このスッタモンダ・ドキュメンタリーを配給しはるのは、ユーロスペースはんどすえー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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ⒸPvHFilm 2008

オランダの国立美術館が改装して、バージョン・アップして、オープンしようとしたら、市民側の抗議行動とか、政府側との兼ね合いとかで、いろいろスッタモンダがありよりました。結局、2013年まで閉館状態のままやなんて状況を、取り上げたドキュメンタリー映画どす。

オランダ映画のドキュメンタリーも珍しおましたが、改装するだけやのに、何で延期・延期の連続やねんとゆうところを、撮らはります。

例えば、改築するための建築ドキュメンタリーとか、美術館らしい、展示絵画を取り上げたりのアート・ドキュメンタリーなところとか、この種のタイプで描くべきとこは、それなりに描いてはります。

しかし、本作の最もオモロイところは、なんで改築するだけやのに、それがスムーズにいかへんねんとゆうナゾでおます。日本なら、そんなんまずありまへんやろね。でもって、そんなんが映画になるなんてこともござりまへん。

オーケストラ・サウンドをかけて、何やらおごそかな火の粉散る、改装シーンから始まります。一方で、美術史的なウンチクやらも、披露されよります。つまり、アート・ドキュな部分でおますか。

光と影を取り入れたレンブラントの名画「夜警」の展示の仕方やら、17~18世紀の世界にいるような展示方法とは何ぞやとか、20世紀美術の魅せ方とか、アップで魅せる名画の修復作業シーンなど、イロイロやってくれはります。

日本の彫刻作品が一つもないんで、日本から「金剛力士像」を借りようやなんて逸話もござります。実際に力士像が美術館にきて、学芸員が「エイリアンや~」なんて感想を漏らさはります。一方で、そういう美術作品への愛を描くシーンとは違い、改装にまつわる悶着シーンはシビアに描かれるのです。

館長やら学芸員らへのインタビューを小刻みにはさまはります。「ピラミッドを作るわけじゃない」とか「一番底にたどり着くのは、テッペンにたどり着くより難しい」とか「何かを得れば何かを失う」とか、改装にまつわるコトバで、大げさ極まりない発言が連発しよります。

美術館内を1時間30分にわたる、ワンショットの長回し撮影で見せた「エルミタージュ幻想」(2002年製作・ロシア&ドイツ&日本製作)、絵画のナゾ入りの「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年・アメリカ)など、美術館・絵画を大きなポイントにした映画の中でも、ドラマ映画ではないんやけども、ちょっと新しいところに目を付けはった作品やなー、と思いました。

2010年8月16日 (月)

韓国ミステリー映画「シークレット」

ミステリー&サスペンス&スリラーがゴッタ煮になった映画どすえー

どんでん返しのツルベ打ちに、唖然呆然となる1本やー

http://www.secret-movie.jp/

オーガスト8月21日サタデーから、東京・「シネマスクエアとうきゅう」ほかで、全国ロードショーでおます。本作を配給しはるのは、「CJ Entertainment Japan」はんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ 2009 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved

韓国映画は、このところ、凄いミステリー&サスペンス&スリラー映画が次々に出てきておます。「チェイサー」(2008年製作)「セブンデイズ」(2007年)「パラレルライフ」(2009年)やら、ドトウの勢いだす。

ところで、ミステリーとサスペンスとスリラーの違いって、一体なんやねんとゆう問題がござります。ミステリーとはまずナゾありき、サスペンスとはナゾが観客に分かっていて、それを前提にハラハラドキドキを演出するカンジ。でもって、スリラーとは、そのハラドキにホラーチックな恐怖感を付け加えたようなカンジかな。

3ジャンルともビミョーに違うとゆうことなんやけど、しかし、本作はその3つのフレイバーを、バランス良く配置した、練り上げられた作品となりました。こういう荒ワザ映画は、まさに綱渡りのようなギリギリのところを見せていかはります。

2分弱の長回し撮影を、本編のイントロとアウトロで披露しはります。長回しらしき撮影はこの2シーンだけどす。本編を全部見て、その2シークエンスがまず大いなる伏線になっていて、また見事な対応効果を呼んでおました。

ヤクザの親分の弟が殺される殺人事件があり、主人公の刑事は、現場から自分の妻(ソル・ギョングの妻、美しきソン・ユナのネーさんが演じてはります)の物らしき、怪しい物的証拠を見つけはります。でもモチ、主人公は自分の妻が犯人やなんて、隠し通したいわけで、その証拠物件を隠さはります。

そんななかでヤクザの親分は、何としても警察側より早く、この犯人をば見つけ出して、落とし前を付けてもらおやないかいなーと、動かはるんどす。一方で、主人公に裏切られた過去がある相棒刑事が、捜査を進めてゆくうちに、主人公の妻が何やら怪しいでーと、気づかはります。

さあ、そんな展開のなかで、主人公は妻を守り抜けるんか、また、真犯人がいるやもしれんと、その可能性を必死に探っていかはります。

アクション・シーンの演出も巧みのワザでおました。5秒以内の短いカットの連続と速弾きのバイオリン・サウンドトラックで畳み掛けるような描写。妻が披露するコンサート会場での、ヤクザと主人公&妻の追・逃走劇。もちろん、クライマックスの車逃走シーンのバクレツぶりなど、目が点になりよりました。

でもって、どんでん返しを最後の3シークエンスで、2パターンにて披露してくれはりました。フェアーかアンフェアーか、かなり“G線上のアリア”みたいなところでおますけども、ボクチンは驚きに身をまかせられました。

2010年8月15日 (日)

相武紗季ちゃん主演映画「NECK ネック」

チョー快作「ゾンビランド」と同じく、ホラー・コメディの新しきところをば表現しはった作品どす

「ゴーストバスターズ」や「チャイルド・プレイ」っぽいニュアンスもある、青春チョイおバカ・ホラーでおます

http://www.project-neck.com/

オーガスト8月21日はサタデーから、全国各地イッセーのロードショーやー。関西では、大阪・梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸やらで上映どす。このユニーク作を配給しはるのは、アスミック・エース エンタテインメントはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010『NECK』製作委員会

ホラー・コメディなんでおますが、始まりは、コドモ時代のエピソードから始まります。コドモ時代に、少女が友達の男の子の家へ、泊まりで遊びにいきまして、そこで幽霊が出よりました。

「幽霊が出ると思うから出るんや」という親のコトバに、ビビッときはった少女は、大学生の大人になって、幽霊を頭の中で想像して、それが現実化するにはどないしたらええんかを、研究してはります。

つまり、頭の中で想像してみたら、アレアレ奇妙な幽霊が出てきよりました、アノ「ゴーストバスターズ」(1984年製作・アメリカ映画)の応用系なんでおますよ。でもって、その相武紗季ちゃんが、幽霊が出てきよる装置をば作りました。

言い寄ってきはった後輩の、平岡祐太クンを実験台にしはります。「呪怨」(2002年・日本)ならぬ「呪念」なんてゆうDVDを見せて反応を見るのどすが、さっぱりワヤでおます。こんなイントロ部から始まるのどす。

けども、「人形屋敷」という設定の館ホラーや「チャイルド・プレイ」シリーズ(1988年~1998年・アメリカ)っぼいところなど、いろんなホラー映画のパロディ部をこさえて、なおかつキャラクターを立たせて、オモシロおかしく笑わせ、驚かせ、怖がらせるとゆう作りでいってはります。

ホラーとコメディ、ましてや青春もの、そこに、ラブ・ストーリーなんぞを入れたりしよりますと、メチャメチャムチャクチャハチャメチャ、収拾のつかへんような状況になってしまいかねまへん。時に、それは遊びゴコロやねんで済む場合もあるのですが、どうあっても、怖がらせるホラー部は、余計な産物に見えたりしよります。そのビミョーな部分をどう見せていくのかは、至難のワザでおます。

その稀有なる作品として、「ゾンビランド」(7月23日付けで分析済み)をボクは挙げますけども、本作はその最新型のケッサクには及ばずとも、方向性は同じどす。ゾンビ映画含むホラー映画で、今までに描かれへんかった領域に果敢に入り込む。このチャレンジャー精神ぶりは同じなんでおます。

「ゾンビランド」に出ていた4人は、本作の場合、紗季ちゃん、祐太クン、栗山千明ちゃん、でもって、溝端淳平クンとゆう編成どす。

「ビートキッズ」(2005年)より進化した、関西弁を披露するネイティヴの紗季ちゃん、「スウィングガールズ」(2004年)と同じく、とぼけた味わいぶりで魅せる祐太クン、「鴨川ホルモー」(2009年)と同じく異色・異彩の演技ぶりで魅せる千明ちゃん、青春純情系の演技が持ち味の淳平クン。

この4人のアンサンブルと、演技の掛け合いによるケミストリー(化学反応)ぶりをお楽しみあれ! でおますよ。

2010年8月14日 (土)

アニメ映画「Colorful カラフル」

宮崎あおい、麻生久美子らが絶妙の声優ぶりを披露しはりました

「河童のクゥと夏休み」に続く、原恵一監督作は何と河童が、関西弁シャベリよる少年天使になりましたとさ

http://www.colorful-movie.jp/

オーガスト8月21日サタデーから、全国各地の東宝系劇場でイッセイのロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 森絵都/「カラフル」製作委員会

自殺した少年が、天国への駅の入り口で、関西弁訛りの少年天使に呼び止められよります。地上にもう1度戻れる抽選に当たりましたやなんて、言いよるんです。主人公は天国へ行きたいんやけど、少年天使の強引な説得で、地上に渋々戻らはります。

この天国の入り口描写は薄暗いトーンで、字幕入りのサイレント映画のノリでおます。また、全編を通して、スタジオジブリより薄い色合い、水彩画系の色を出してはります。

天国あるいは、その入り口から戻る映画とゆうのは、これまでにいっぱいござりました。戻るにしても期間限定であるとかが、特に多かったように思うんどすけども、本作には新味がござります。

さらに、学園映画とか家族映画的なところでも、天国から帰ってきた少年がキーを握るとゆう面白さがござります。主人公の少年は少年天使のアドバイスのもと、別の人間・小林真になって生きていかはります。

その別の人間は、どうやら学校でいじめられてたらしい。また、家族とも折り合いがよろしゅうござりまへん。で、写真の2枚目に写ってはります、同じ美術部で同級生の女の子の声を、宮崎あおいちゃんが担当してはります。

どもったり、ささやき、意味のないツイッターなどの、実にビミョーな声を演じはりました。このあおいちゃんのキャラは、本作にとって最も重要なポイントを握ってはります。「小林君は純粋で、世界の悲しみを一身に背負ってる」とか、終わり近くで出るセリフなんやけど、本編で唯一はっきりとした声で「小林君は変わっていない」と主人公に言うシーンは、グッときよりました。

キネマ旬報の年間ベストテンに、初めてランクインした「河童のクゥと夏休み」(2007年製作)に続く、原恵一監督の作品でおますが、色使い的なところを申し上げますと、ボクチンを驚かせてくれたところがいくつもござりました。

冒頭の配色をはじめ、今はなき荒川電鉄の支線を、主人公が友達とたどってゆくシークエンスに、モノクロ写真がカラー・アニメへと変わっていくシーンを入れたり…。難解な緻密さが要求されるであろう、紅葉の森の描写など、余りにも微に入り細にうがったリアリティーを追究していて、目が点になってしもたわ。

ドラマ的にはもちろん、感動的なラストのサプライズにググッときますで。「人は1色じゃない。カラフル人間になってください」の少年天使のセリフ。そして、主人公の「ボクは生きている」のラストシーンのセリフなど、よろしおま。

2010年8月13日 (金)

アメリカ・イギリス合作映画「ヤギと男と男と壁と」

イラク戦争映画と「スター・ウォーズ」な世界が融合やなんて、ホンマかいな

「M★A★S★H★」を超えた、おとぼけブラック・テイストがいっぱいコッテリやー

http://www.yagi-otoko.jp/

お盆は8月14日サタデーから、全国ロードショーでおます。本作を配給しはるのは、日活はんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ Westgate Film Services, LLC. All Rights Reserved.

こんな戦争映画なんて、まあ、見たことおまへんわ。しかも、実話入りやなんて、信じられまへん。ブラック・ユーモアなテイストで、最初から最後までコッテリやられよりますと、もはや「参りました」としか言い様がござりまへんのでおます。

朝鮮戦争の設定でアメリカ兵がブラックな笑いで、笑いとばしたあの「M★A★S★H★」(1970年製作・アメリカ映画)以上に、このトンデル実話系は、ホンマ、トンデモネー代物でおます。原案となる話はあるけど、「事実は小説よりも奇なり」なんてコトバを、久々に思い出しよりました。

基本は、確かに戦争映画なんどす。でも、その戦争映画のテンションを、SF映画でもあくまで、戦争・戦闘・抗争映画でもある「スター・ウォーズ」シリーズ(1977年~2005年・アメリカ)などを、現実的な世界で、プラスアルファしたみたいなカンジなんどす。

さらに、人がヤギを目で殺すエピソードや、ヤギたちの沈黙にまつわる話など、羊たちをヤギたちに変えた「羊たちの沈黙」(1991年・アメリカ)のパロディにもなっていたりしよります、コレが。

「スター・ウォーズ」のジェダイな戦士を目標に、エスパーな能力を啓蒙開発してゆくプログラムを経て、トンデモナイ「新地球軍」なる、兵隊さんたちが誕生しよりました。そんなんあり得へんがなと、みんな、思わはるやろ? それが本作を見ると、大マジやったらしいです。

戦争とラブ&ピース、戦士と僧侶なんてゆう、相反するものを調合してみたら、その化学変化なケミストリーぶりは、一体、どないなるもんかを追究してはるんどす。もう何てゆうたらええやら、とにかく最初からボケまくってはります。

前半はロードムービー・スタイルでお話が進みます。ユアン・マクレガーのアニキが扮するアメリカの記者が、イラク戦争の突撃取材やーと、現地へ行き、そこで、その「新地球軍」なる怪しい部隊にいてはったらしい、ジョージ・クルーニーのアニキと出会い、イラク国内を同行してゆかはります。

目的地はどこやねん。そう、クルーニーのアニキが知ってはるんやけど、なかなか明かさはりまへん。マクレガーのアニキのナレーションと、彼が知らないクルーニーが関わった、トンデモナイ過去が映されてゆきよります。

このクルーニーとマクレガーの、ボケとツッコミの珍道中ぶりは、大いに笑わせてくれはりますよ。ベトナム戦争で開花した戦争思想に基づき、その後、実演し兵士たちに教えてゆき、やがてはアル中のヨレヨレになってゆくジェフ・ブリッジスはん、クルーニーのライバル的なケヴィン・スペイシーやらも、メッチャ怪演技ぶりを披露しはります。

戦争映画のパロディ映画なんてゆう、ひと言では済まされまへん、ディープなインパクトがある映画どした。

2010年8月12日 (木)

ドキュメンタリー「石井輝男映画魂」

映画監督・石井輝男て知っとるかー、どないやねん?

カルト映画監督から俯瞰する、ウラ日本映画史やねん

http://www.ishii-teruo-eigatamashii.blogspot.com/

オーガスト8月14日サタデーから、セプテンバー9月10日フライデーまで、大阪は九条のシネ・ヌーヴォで上映どす。また、この期間に「石井輝男の世界」と題し、石井監督作品を次々に上映しはります。本作を配給しはるのは、ワイズ出版はんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 ワイズ出版

2005年に逝去した石井輝男監督はんの、映画作りの実際を捉えたドキュメンタリー作品でおます。決して、死んだ監督に捧げるとか哀悼とかの、テイストではおまへん。

たぶん、若い映画ファンの方々にとっては、誰やねん? と言わはるかもしれませんけども、たぶん、アラフィフ以上の人にとっては、ビビッときやはることでしょう。

映画というのは、大ヒット間違いなしのメイン・ストリーム路線と、ジミでシブいんやけど何とも言われへんような味、あるいは第七芸術としての映画を追究した作品群の、大たい2路線に分かれているかと、ボクは思いよります。

えてして後者のタイプは、大売れしないんやけど、実はこういう作品たちに、映画史に残るような大ケッサクがひそんでおるのどす。で、この石井監督作品たちは、後者に当たるとゆうボクの勝手な括りになるのですが、まあ、日本映画史の中では、いわゆるカルト映画チックな、ウラ映画史を歩いてきはったようなカンジでおます。

映画雑誌の老舗中の老舗「キネマ旬報」をあげさせてもらいますれば、その年間ベストテンにおいて、ベスト20に入ったことはあるんやけど、石井監督作品は1度も入ったことがないんでおます。しかし、でおます。ウラ映画史とは申せ、その時代時代において、それまでの日本映画のセオリーを、くつがえすような作品をいくつも撮ってはるんです。

石井監督作品に関わらはった俳優・スタッフへのインタビューと、作品のシーンやらメイキング・シーンやらをはさみつつ、監督の作品性へと肉迫してゆく作りでおます。現場でセリフを変えられる。石井組と言われれば白い目で見られた。なんてゆう発言があったりしますけども、もちろん、そうゆうマイナス面も見せた上で、石井監督作品のココロをば見せていかはります。

石井監督と、最新作「キャタピラー」の若松孝二監督の類似性や、大林宣彦監督にたとえられたりと、映画ファンのココロをくすぐるだけやありまへん。

字幕での説明シーンがありますが、ボクが特にココロにきたのは、「徳川女刑罰史」(1968年製作)「徳川いれずみ師 責め地獄」(1969年)で、刑罰とSMを融合させた、それまでにない作りやったり、ピンク映画の女優を使って、それまでの東映路線を破壊したとかの発言どした。映画の斜陽化が際立った1960年代に、彼がその斜陽化を止めるべく、どんだけ奮闘努力していたのかが、手に取るように分かりました。

映画監督ドキュ「ある映画監督の生涯-溝口健二の記録」(1975年)には及ばずとも、彼の作品を見たいと思わせるような、仕上がりにはなっとるかと思います。

2010年8月11日 (水)

ディズニー映画「魔法使いの弟子」

「ハリー・ポッター」「ロード・オブ・ザ・リング」「ダレンシャン」やらの世界観を、現代のNYに移植しはったファンタジーでおます

製作ジェリー・ブラッカイマー、監督ジョン・タートルトーブ、主演ニコラス・ケイジによる、トンデモ善悪アクション映画やー

http://www.DESHI-movie.jp/

8月13日お盆のフライデーから、全国イッセーのロードショーでおます。関西やったら、大阪・TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんばやら、京都・TOHOシネマズ二条、兵庫・TOHOシネマズ西宮OSやらで上映しはります。本作を配給しはるのは、「ウォルト デイズニー スタジオ ジャパン」はんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2009 Disney Enterprises,Inc. and Jerry Bruckheimer,Inc. All rights reserved.

「ハリー・ポッター」シリーズ(2001年~2010年製作・アメリカ映画)とか「ロード・オブ・ザ・リング」3部作(2001年~2003年・アメリカ)やら「ダレンシャン」(2010年・アメリカ)とか、異世界における魔法使いやらの、お話なんでおますけども、本作は、それらのフレイバーを21世紀現代のニューヨークで展開させてみたら、一体どないなるんかいなーにチャレンジしはった作品どす。

製作のジェリー・ブラッカイマーはんと主演のニコラス・ケイジはん、でもって監督のジョン・タートルトーブはんとなりますれば、NYも舞台となった「ナショナル・トレジャー」シリーズ(2004年・2007年・アメリカ)やらで、ものごっつーなアクションぶりを披露しはった、信頼のブランドたる3人組でおます。

この現実の世界の中にファンタジーを入れ込むとゆう、難しい設定の映画を、実にスムーズに楽しい娯楽作品に仕上げはりました。

お話のベースは魔法界における、善悪に分かれた何千年にもわたる対決でおます。善玉側が、ニコラス・ケイジはんで、悪玉側がかつては盟友やったところの、アルフレッド・モリナはんでおます。かつての対決で、ニコラスはんは、この悪側のいろんなキャラクターたちを、人形の中に封印しはりました。

でもって、死なはった善の大師匠の遺言によりまして、善の後継者を何千年にもわたり探してきはったのどす。そして、遂にとゆうかようやく、見つけはったのです。それが、何とまあー、か弱き草食人間な少年どした。で、かの人形を少年に預けはります。でも、見つけてからさらに10年の間、自らも好敵手のモリナはんも封印されることになってしもて、その間に少年は大学生になりました。でもって、2人が封印を解かれて出てきはりました。

でもって、人形の封印を解くか解かないかの、スサマジキ争奪戦が始まります。封印を解けば、悪の女王、モニカ・ベルッチのネーさんが扮してはりますが、彼女が出てきて、人類滅亡となるエライことになるらしいんでおます。

この展開の中で、いろんな映画へのオマージュ・シーンが噴出しよります。NYでのモンスターとなれば、映画史的には「キングコング」(1933年・1976年・2005年・アメリカ)どすが、そんなキングコングを思い出させるドラゴンとの対決シーン、色鮮やかな紙フブキが舞う中、NYのチャイナタウンで熱く繰り広げられるいくつかのシーンでは、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(1985年・アメリカ)などを、魔法使い同士のカーチェイスとは何ぞやをクリエイトしたシークエンスやらは、「フレンチ・コネクション」(1971年・アメリカ)などへのリスペクトやー。

ほかには、ディズニーの「ファンタジア」(1940年・アメリカ)はもちろんどすが、「ネバー・エンディング・ストーリー」(1984年・西ドイツ)やら、「ヒックとドラゴン」(8月7日公開・アメリカ)さえもござります。

16ビート・ロック、8ビート・ロック、メランコリーなスロー、キャッチーなミディアム・スローなど、歌ものサントラの使い方も、シーンに合わせて良かったどす。

2010年8月10日 (火)

アルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」

「おくりびと」に続きまして、アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞しはったケッサク印どす

どんでん返しが、ものゴッツーなミステリー映画の快作やー

http://www.hitomi-himitsu.jp/

オーガスト8月14日サタデーから、TOHOシネマズ シャンテやらで、8月21日サタデーから、大阪はシネ・リーブル梅田やら、その後、関西やったら京都シネマ、シネ・リーブル神戸やらで、全国順次のロードショーでおます。この映画を配給しはるのは、ロングライドはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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© 2009 TORNASOL FILMS - HADDOCK FILMS - 100 BARES PRODUCCIONES - EL SECRETO DE SUS OJOS (AIE)

ミステリー映画の新種が、アルゼンチンから出てくるやなんて、そんなん予想もなんもできよりまへん。

ミステリー映画、しかもでんな、本作は刑事ではないけれど、捜査する側から描くミステリーとなれば、何が何と申されようが、これまではアメリカン映画、ヨーロッパ、アジア系、モチ日本もござりましたけども、メインどころでおました。

ところが、本作はスペインとの合作によりますアルゼンチン映画どす。こんなん、予想どころか、アルゼンチン映画を数本しか見てへんボクチンの、情けない状況におきましては、死角も死角、キョーレツ極まりないサプライズでおました。

しかも、「おくりびと」(2008年製作・日本映画)が受賞した翌年の2010年のアカデミー賞で、外国語映画賞をゲットしはりました作品どす。

ビックラコンとはこのことどしたえー。サッカーやらマラドーナはんとかが有名なアルゼンチンどすけども、こんなものゴッツーな本格ミステリー映画を、ハットトリック・シュートしたやなんて。

それだけでもスゴイのんに、それだけやおまへん。写真にありますように、男女の恋愛部が、往年のハリウッド映画かいなーと思えるようなテンションで、サブ・テーマ的に披露されよるんどす。

でも、ボクチン的な驚きは、言うまでもありまへんが、メインとなりますミステリー部にありました。ミステリーはもちろんナゾが基本でおましょうが、キャラ設定の面白さもまたオツなもんでおますよ。

なかでも、裁判所に勤める主人公の、相棒役のキャラ設定は個性的極まりないんどす。職場に電話が掛かってきたら、全然別の会社名を語って相手をケムに巻き、昼間から酒浸り。でもって、ヨッパラッて口論するのが好きやねん、なんてカンジかな。

そんな相棒が見事な推理を披露しはります。犯人は見つからない。顔まで変えたのかもしれへんけど、変えられへんものがあると主張しはります。それは情熱やー、やなんて。ゆうてくれはりました。犯人はサッカー好きで、かなりひいきのチームがあるらしい。阪神タイガース・ファンのボクチンには、モロ、なるへそなーと納得できよりました。

俯瞰撮影からサッカー場の観客席へ降りて、犯人との追・逃走シークエンスを、長回しの近接の移動撮影で魅せてゆくところは、鳥肌が立つくらい印象的どした。

犯人のプライドを刺激するような尋問方法に加え、犯人も分かってるありふれた殺人事件が、やがてはオトロシキどんでん返しの連続へと転がっていったりと、欧米日のミステリー映画でも、なかなか出されへんようなミステリー性を示さはるのどす。

加えて、捜査側の主人公と、主人公の上司に当たる女性との、ラブ・ストーリー部の描写は、往年のハリウッド恋愛映画を思い出させる渋さどした。冒頭のボヤケたカンジの別れの短縮描写シーンが、やがて、拡大されてクローズアップ入りで感動的に描かれますで。

ラストシーンなんか、コレは強烈なミステリー映画なんやけども、ユニークでビミョーかつ繊細な、恋愛映画でもあることを思い出させてくれはりました。

2010年8月 9日 (月)

フィリピン映画「見捨てられた青春」

「恋する惑星」の、フィリピン版とも取れる群像劇映画でおます

いろんな貧しき家族たちのドラマに泣けよります

ニッポン公開待機作品でおます。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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いろんな話が交錯して、やがてそれらの話が部分的につながってゆき、ほんでもって、最後にはっちゅうタイプの群像劇でおます。群像劇と申しますれば、アメリカの故ロバート・アルトマン監督が特に有名でおますが、群像劇において、最も大事なのは、各人の話がトータルとして、どないな感動とか感興を呼ぶのかでおます。

いろんな人たちを描くグランド・ホテル形式とか、パニック・ムービーとかもそうやし、クエンティン・タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」(1994年製作・アメリカ映画)、見出しにも書きよりました、ウォン・カーウァイ監督の「恋する惑星」(1994年・香港)なんぞも、その範疇に入りよります。そして、一体、どういうとこの世界を描く群像劇なんかっちゅうのも、ポイントでおましょう。

フィリピン映画とゆうのは、みなはん、これまで見はったことはあるんかないんか、分かりまへんけども、まあ、かくゆうボクチンもあんまし見てへんねんけども、本作はそんなにフィリピン・フィリピンをカンジさせる映画ではござりまへん。

いちおう、4組の若者を中心とした別々の話が順グリに展開し、最後にはトンでもないサプライズを付けて終わるお話でおます。但し、みんな貧しい人たちばかりだす。サギ師と女子高生がベッドインして、2人が性病に罹ったり、妊娠中の妻がいてる男が、映画館で男とアレして金を得たり、貧民層の苦渋をば、時に、下層階級を示すみたいな、ロー・アングルやら下からのカットを随時挿入して、描いていかはるんだす。

でもって、フィリピンの都会やらスラム街の暑さを示さはる、陽射しのセピアで薄みになった色合いであるとか、暗がりやら影・闇の自然な使い方なんか、ああ、このあたりがフィリピン映画らしき撮り方なんやなと、納得いたしました。

家族ドラマの新しい作り方とも取れよります。母・兄・妹3人の家庭をば物語の芯に据えてはります。そこから、派生する恋愛ドラマであったり、夫婦ドラマであったり、孤独な男の話であったりと、畳み掛けてきはります。

シェークスピア演劇の悲劇をば、意識したんかどうかは分かりませんが、少しネガティブな視点は少々戸惑いをば誘いよります。でも、決してあと味が悪いとゆうことではござんせんので、ご安心くだされ。

2010年8月 8日 (日)

アメリカ映画「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」

奇想天外・アリエネー・トンデモ無縫のアクションが、ドッカ~ン・ドッカ~ン・ドッカ~ンでおますわ

すっきりさわやか、でもって涼しい、余りにも深き涼しー時が訪れよりますでー

http://www.ateam-movie.jp

8月オーガスト14日サタデーに、先行上映しはったあと、フライデーは8月20日から、全国イッセーの拡大ロードショーでおます。大阪やったら、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんばやらで上映どす。このトンデモいかれた・チョー活劇を配給しはるのは、20世紀フォックス映画はんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 Twentieth Century Fox.

ザ・ムービーなんで、テレビドラマからムービーに昇格したっちゅうのんを示してはりますのやけど、こういうテレビドラマからの映画化は、日本に限らず、今やものゴッツーござります。

で、アメリカでは、ミステリー・SF・サスペンスから、学園もん、女性もんまで多彩にあるのですが、そんな中でも、コレはアクションものの1本どすな。「コンバット」、映画「ミッション:インポッシブル」(1996年製作・アメリカ映画)の元ネタ「スパイ大作戦」、映画化された「チャーリーズ・エンジェル」やらと、おんなじ流れでおます。

かつて、とある映画評で、この手のタイプの映画でこんな評を見よりました。「スカッとしたアクションの連続で、スッキリさわやかになった。納涼にはなったけど、見たあとは、何にも残っていなかった」。でもって、ボクの大先輩はこの感想を読んで、「いや、ホンマ、僕は映画はほとんど見ないんやけど、これはぜひ見たい」と言わはりました。

もしこの評を、ボク流に変えて本作に引用してみると、こないなりよりますかな~。「アリエネー・アクションの連続で、これまでのハリウッド映画アクションの全てを見せられて、目が点になってしもた。もうどうシヨーもネーくらいや。さわやかになるより、ビビッてしもた。冷汗・熱汗がいっぱいや。見たあとも、しつこいくらいに、シーンが夢にまで出そうや。最後の最後のオチまで決まっとりま。ああ、次作が見たいわー」。

大先輩は既にあっちの世界へ行ってしまわはりましたけども、この映画を見たら、きっと「おい、こんなん、映画とちゃうやんけ。こんなんが映画やったら、映画はもうしまいやでー」なんてゆうてはったんやないかな。キモチと真逆のことをゆわはる方どした。つまり、見たくてたまらんくらいアリエネー・スゴサってことやねん。

パラシュート付けた戦車の空中戦とか、今をときめきそうな3D映画から、実際に車が飛び出したりとかの、フツーでは考えられへん、刑務所からの脱走シーンやら、モー、信じられへんアクションのオンパレード。でも、それをとことん追究してはる姿勢に、ハリウッド・アクション映画の大いなるプライドを感じよりまして、ココロにズッド~ンときます。

「ダイ・ハード」(1988年)、「鷲は舞いおりた」(1977年)、「ブルーサンダー」(1982年)、「インデペンデンス・デイ」(1996年)、「ザ・ロック」(1996年)、「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」(1989年)やら、いろんな過去のハリウッド映画を思い出させるアクション・シーンが続発しよります。

さて、最後に…。「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(1999年)やら「96時間」(2008年)やらで、ドッカ~ンとアクションを披露しはった、リーアム・ニーソンはんのタイトな演技やら、ブラッドリー・クーパーのアニキと、ジェシカ・ビールのネーさんの、ソフト・タッチのラブ・シーンやらが映画に、なんか、ええ感じやんか~な、アクセントをば加えてはりますよ。

2010年8月 7日 (土)

恋愛映画「ハナミズキ -君と好きな人が、100年つづきますように-」

テレビのトレンディー・ドラマを超えた、映画的邦画ラブ・ストーリーが遂に作られよりました

歌原作映画の純愛ものとしても、新垣結衣ガッキーと、生田斗真クンの純粋・素朴な演技が胸にきよります

http://www.hanamizuki-movie.com

サタデー・オーガスト8月の21日から、全国東宝系でロードショーでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010映画「ハナミズキ」製作委員会

一青窈(ヒトトヨウ)ちゃんが紅白で歌い続けてはる、あの哀愁系の名バラード「ハナミズキ」(2004年CDリリース)が、映画化されたんやてぇー。ホンマかいな、ああ、そう快なでおます。

しかも、BEGIN作曲・夏川りみ歌唱による、オキナワン・バラード「涙(なだ)そうそう」の歌原作映画「涙そうそう」(2006年製作)に続く、土井裕泰(どいのぶひろ)監督の作品だす。

歌そのものを原作にした映画とゆうのは、これまでの日本映画にはケッコー多いんどす。石原裕次郎主演の「嵐を呼ぶ男」(1957年)や、美空ひばり主演作品など、歌が先か映画が先か、ビミョーなんもあります。

「神田川」(1974年)「赤ちょうちん」(1974年)「妹」(1974年)「なごり雪」(2002年)「22才の別れ」(2007年)など、フォーク系の「かぐや姫」ファミリー(南こうせつ、伊勢正三ら)など、どこかのグループに特化したような作品群、「帰らざる日々」(1978年)みたいに、主題歌に起用されたことによって、映画タイトルが曲名になったようなパターンなども。

でも、本作はかつてないくらい、その歌の世界観を映像化した、マレなる作品になったんやないかいなと、ボクはジャッジいたしました。

土井監督は、映画監督デビュー作「いま、会いにゆきます」(2004年)では夫婦愛と家族愛を、第2弾「涙そうそう」では兄妹愛を、泣ける映画として紡がはりました。でもって映画第3弾の本作では、遂に恋愛映画どすえー。

しかも、ココがスゴイと思うんやけど、この種の恋愛映画に多い、愛し合ってる2人のどちらかが死んでしまうとゆうパターンを避けはりました。

例えば、1990年代に一大ブームを呼んだ、若者たちのラブ・ストーリーをメインにした、テレビのトレンディー・ドラマ的タッチが、いろいろと劇場版とゆうか映画化してはりましたけども、なかなかうまくいかんかったように思います。ちなみに「踊る大捜査線」はラブ・ストーリーではござりまへんので、念のため。ところがどっこいでおました。コレは、遂にきよりましたがな。

しかもでんな、10年間にわたるラブ・ストーリーとゆう展開の中に、これまでのトレンディー・ドラマのスパイスをほぼ、全て取り込んでしまうっちゅう離れワザを披露してはります。北海道の地方ロケーション部しかり、東京サイドしかりでおます。さらに、ニューヨークに加え、カナダ・ロケまで敢行してはるんどすが、映画やドラマも含めまして、これまでのニューヨーク・ロケ入りのドラマものでは、過去最高のスムーズな作りになったんやないかな。

ガッキー新垣結衣ちゃんと生田斗真クンの恋愛なんやけど、その、なんちゅうの、純粋かつ素朴、イチズで真っ直ぐな演技ぶりは、「恋空」(2007年)以上、「人間失格」(2010年)以上でおます。これは「野菊の如き君なりき」(1955年)以来か、あるいは山口百恵・三浦友和映画以来の、ええカンジやおまへんやろか。

さらに付け加えよりますと、ハナミズキの紅葉・セピア・桜色の四季にわたる色合いに加え、2人がキスする灯台での、空と灯のセピアを配色しての構図とか、東京の朝焼け・NYの水色の空・カナダの海辺の夕景など、随所に美風景が挿入されておましてウットリしました。

2010年8月 6日 (金)

戦争ドキュ・ドラマ「日本のいちばん長い夏」

戦争の悲惨さを、アクション抜きの室内劇スタイルで示さはります

過去のいろんな戦争映画が、座談会だけで頭の中に広がってゆきよりました

http://nagainatsu.jp/

広島に原爆が落とされた日の翌日となる、八月七日の土曜日から、東京・新宿バルト9やら、丸の内TOEI②やら、関西やったら、T・ジョイ京都やらでロードショーどす。その後、大阪・梅田ブルク7やらで全国順次、上映しはります。この戦争回顧劇をば配給しはるのは、アマゾンラテルナはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2010 NHK アマゾンラテルナ

終戦の年から18年後の1963年に、第二次世界大戦・太平洋戦争に関わったいろんな人たちに集まってもらい、会食しもって、各人が戦争のいろんな話をするとゆう、座談会が開かれたんでおます。

雑誌「文藝春秋」が企画した座談会ですが、コレを再現してみようやないかいなとゆうのが、本作でおます。

当時、参加された28人の方々の中で、今も生きてはるのは、御年91歳にならはる俳優の、池部良はん始め4人だけだす。そんな28人に、いろんな文化人たち(上記公式HPでご確認くだされ)が扮しはりまして、当時を再現しはるのです。

しかも、コレがドキュメンタリーにプラス、座談会部はドラマでおますが、忠実に話を再現してはるだけに、モロにドキュメンタリーとゆうてもええかもしれません。しかし、そう見た場合、これまでのドキュやドキュ・ドラマとは違う、マカ不思議な雰囲気がござります。

それはおそらく、映画を作る過程を見せてゆく、いわゆるメイキング・スタイル構造でお話が進む点がありましょうか。いろんな人たちの話から、これまでいろいろと見てきた戦争映画が、思い出されてきよるとゆうのが、個人的にはござりました。

座談会に出ていた作家・大岡昇平原作の「野火」(1959年製作)を始め、「ビルマの竪琴」(1956年・1985年)、「ひめゆりの塔」(1953年・1982年・1995年)などから、原爆もの、「人間魚雷回天」(1955年)「ローレライ」(2005年)「男たちの大和」(2005年)なんかが、コトバによって、また、その話し方によって思い出されるんでおます。

特に、「ひめゆり」部隊やなく「しろうめ(白梅)」部隊やったとゆう、看護婦(キムラ緑子)の話は座談会のハイライトだす。

天皇がラジオで敗戦を国民に伝えた、玉音放送の考察会話も、見どころどす。玉音放送へと到る、24時間の政府・軍部の混乱ぶりを描いた「日本のいちばん長い日」(1967年)は、実は、本作の話がベースになっておました。

でも、本作は室内劇がメインでおます。ただし、単なる室内劇ドキュにはしてはりまへん。過去のモノクロ映像を女性ナレーションで伝えたり、また出演者への戦争の記憶をインタビューしたりとゆうドキュメンタリー部。

都々逸(どどいつ)的な、童謡タッチの歌「お山の杉の子」を2回も流したり、ラストには、アン・サリーのブルージーなピアノ・ジャズ・ナンバーを流したりと、サントラ的にもいろいろと工夫してはります。

「東京裁判」(1983年)のような、バリバリのドキュメンタリーでは伝わらないところを、補ってはるといいますか、戦争ドキュでまだ描かれていないところをば、示してはるような映画やと、ボクは思いました。

2010年8月 5日 (木)

アメリカ&メキシコ合作「闇の列車、光の旅」

ホンジュラスからグアテマラ・メキシコを経て、夢のUSAへの移民ロードムービーでおます

不法越境ものロードのなか、家族のキズナ、ラブ・ストーリーが、キメ細かに描かれよります

http://www.yami-hikari.com/

東京では既に公開中でおますけども、関西は8月7日サタデーから、シネ・リーブル梅田やらでロードショー街道だす。その後、映画は全国順次上映どす。この映画を配給しはるのは、日活はんでおます。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ2008 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

ボクチン、昨年の12月10日から新作映画の分析評論をば始めておますが、そんななかでも、ロードムービーの多さには驚かされよります。

そんなロードムービーを、動機・目的・方向性・距離・メンバーやらで分類してみて、ロードムービーとは何ぞやを追究してみたら、えらい長文の学術論文が、できるんやないかいなと思いよりました。

まあ、とりあえず、そいつはヨコに置いておきまして、本作のお話でおます。不法越境・不法入国のそのロードを描く映画だす。

パキスタンからイギリスへの「イン・ディス・ワールド」(2002年製作・イギリス映画)とか、北朝鮮から中国を経て韓国への「クロッシング」(4月1日付けで分析済みでおます)とか、イロイロござります。

ただ、ロードムービーとしては、その道中でどないなドラマチックなことが起こるのか、とゆうのが一つの見どころなんやけど、本作はそんな見どころを、過不足なく取り込んだ作品になったんやないかなと思います。

南米・中米もののロードムービーとしても、「セントラル・ステーション」(1998年・ブラジル)やら「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2003年・イギリス&アメリカ)やらに迫る感動がござります。

南米のホンジュラスに住んでる少女が、オトンとオジと共に、強制送還されてしもたオトンの、家族がいとるアメリカへ行こうとしはります。サルマ・ハエックみたいにええカンジやん、なんてギャングのボスから言われはる少女でおますけども、オトンはアメリカに別の家族をば持っとるとゆうことで、オカンは死んではります。

一方、メキシコでボスに恋人を殺されて、そのリベンジでボスを殺した、チンピラ・ギャング・グループの男がおまして、彼もグループから逃れて、列車の屋根に乗ってはります。そんな少女と彼が出会って、家族のロードムービーが、いつの間にやら、男女の逃避行へとチェンジしてゆくのでおますよ。

列車にしても、屋根に乗っての移動でおますんで、よりそのロードの、前近代的な部分が見え隠れしよります。20世紀の1930年代の「ウディ・ガスリーわが心のふるさと」(1976年・アメリカ)みたいな時代の話やないんです。今の話なんですわ。ただ、列車の屋根で展開するアクションとかは、今らしくない点において、新鮮でもありました。

車窓に映る一瞬のカットとゆうようなイメージでおましょうか、薄いセピアの空と山、山に満月、そのほか、紅葉の美風景、石造りの家が整然と並ぶホンジュラスの街の風景など、時々の美しき風景に、ココロが和みます。

途中では、えらい悲しいシーンもあるんやけど、ラストはさわやか。ああ、よかったなー、とホッとできる快作になっておます。

2010年8月 4日 (水)

アーティスト実話映画の傑作「セラフィーヌの庭」

映画的な、余りにも映画的な映画どす。ヒロイン・ドラマ映画の、系譜に入る作品でおます

印象的なラストシーンはじめ、遠近感ある絵画的ショットの数々にシビレよりました

http://www.alcine-terran.com/seraphine

8月7日の土曜日から、東京・岩波ホールで夏休みロードショーでおます。でもって、その後、関西圏やったら、9月上旬から大阪・梅田ガーデンシネマやら、10月から京都シネマやら、秋に神戸元町映画館やらで、全国順グリの公開でおます。フランス・ベルギー・ドイツ合作の本作を配給しはるのは、アルシネテランはんどすえー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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© TS Productions/France 3 Cinéma/Climax Films/RTBF 2008

20世紀前半に、大器晩成みたいなカンジでフランスに登場しはった、女流画家セラフィーヌ・ルイの姿を捉えた、アーティスト・ヒロイン人間ドラマ映画でおます。

彼女セラフィーヌは家政婦の仕事をやりもって、プライベート・タイムにはいろんな自然に触れはって、そんな自然をコツコツと絵に描いてはりました。

もちろん、趣味でやってはったのですけども、それが家政婦をやってるとこの住人はん、写真は一番上の絵画コレクターのヴィルヘルム・ウーデはんと出会い、その絵画がゴッホに匹敵する作品やーと、えらい気に入ってもらわはります。

でも、第一次世界大戦が始まり、ウーデはんは財産を没収され、祖国のドイツへ帰らはりました。

一方、描き続けるようにとのウーデはんの助言に従い、セラフィーヌおばはんは、やはり家政婦の仕事をやりもって、戦時下でもコツコツと、絵を描いていかはるのでおました。

こういうストーリー展開でおますが、本作の素晴らしさは、見出しにも書きよりましたけども、映画的な撮り方を散りばめた点でおましょう。絵画的な構図のロングショットの数々に、ああ、今、ホンマに映画を見てるんやなーとゆう喜びをば噛み締めておました。

「この木、何の木、気になる木」なんてゆうCMみたいな、野原に立つ1本の大木へ、ヒロインが歩いていって木に登るショットとか、鳥の声や風の音を聞きながら、ヒロインが草原に座るショットなど、映画的なキレるショットが満載でおますよ。

ヒロインは何といっても、自然主義とゆうくらい、自然がダイスキなんどす。その自然への深い愛を絵にしはります。

でもって、創作ぶりのユニークさも描写されます。一部セピアを取り込んだ闇の中での創作シーン、酒を飲みながら、大声で歌を歌いながらドシーンと倒れたりとか。画家を描いた映画は数多くござります。でも、その創作する姿を詳細に描写するような映画は少なかったように、ボクは思います。

そして戦後、ヒロインとウーデはんとの再会シーン。いくらでもドラマティックに描こうと思えば描けるんやけど、ベタやなくアッサリ描くところなんか、渋くてココロにきましたわー。

その後のヒロインの行く末もまた、ハランバンジョー、ドラマティックでおます。これまでイロイロあったヒロイン・ドラマ映画の中でも、実話とは申せ、このインパクトはベストワン級やもしれまへん。

3分近い固定の長回し撮影のラストシーンは、きっとみなさんのココロに、いつまでも残ることでおましょう。

2010年8月 3日 (火)

猫ドキュメンタリー映画「ネコを探して」

アニメと実写を織り込んで、ネコをドキュ・エンターテインメント化した快作やー

「吾輩は猫である」とか、「ドラえもん」「子猫物語」「猫の恩返し」やら、猫映画系譜の集大成かもな

http://www.neko-doko.com

サタデー8月7日から、大阪・シネマート心斎橋やら、8月14日サタデーから、東京・渋谷シアター・イメージフォーラムやらで、全国順繰りのロードショーでおます。このフランス映画をば配給しはるのは、ツインはんどす。

文=映画分析評論家・宮城正樹

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Ⓒ La bascule and Ana films

いろんなネコたちが登場しよります。しかも、飼い主の女性がクロネコを探してるとゆうエピソードを中心に、時にアニメをフィーチャーして描かれよります。ワンカットだけアニメ転換、なんてのもあるんどす。

つまり、ドキュメンタリー的な実写と、薄い色の手書きアニメがシンクロナイズしていくとゆう、ドキュメンタリー映画でもアニメ映画でも、かつてない手法で描かれるんでおますよ。

でもって、描かれるのは、ネコの歴史映画みたいなんを装いつつも、いろんな社会問題をそれとなく突つかはったりします。単にネコたちを、かわいらしく撮ってはるような代物とか、動物ドキュメンタリーで大ヒットした「子猫物語」(1986年製作)やらとも、かなり違いよります。

ネコの擬人化なんてのもありまへん。アニメなら「ドラえもん」(第1弾は1980年)「猫の恩返し」(2002年)とか、実写なら擬人化はされてないけど「三毛猫ホームズの推理」(1996年)とか「キャッツ&ドッグス」(2001年・アメリカ製作)とか、ディズニー映画やろか。

また、テレビ番組に多い、猫にヒト語の吹き替えを入れる、なんてのもしてはりまへん。それに、猫を通して人間を描くとゆう、例えば、「公園通りの猫たち」(1989年)とか、「グーグーだって猫である」(2008年)とか、「吾輩は猫である」(1975年)なんかのテイストも、あんましござりまへん。

ほな、どんな映画やねん? なのでおますけども、社会問題もあるんやけど、でも、やっぱりネコとは、フィーリング的に何ぞやでおます。そして、ネコと共に紡ぐ時代の流れと歴史。そのあたりは、見ている間も、見たあとも、コトバにはできなくても、ほんわりとカンジさせてくれよります。

まあ、いろんなタイプのネコたちが登場してきよります。19世紀のフランスのサロン描写や、夏目漱石とネコを探す女との出会いとか、アニメ含めて描きつつ、ネコは自由の象徴やとナレーションされます。

それが、1950年代の日本の水俣へと場面転換し、水俣病を捉えたドキュ「不知火海」(1975年)みたいな衝撃がドカーンですわ。水銀に汚染された魚を食べたネコたちが、次々に狂い死んでゆくモノクロ・カット入りどす。ウーンと眉をしかめて見とりますと、次は和歌山の貴志駅駅長の、福招きネコとしての「たま」ちゃんへスライド。ホッとします。

このように、ハードとソフトの硬軟両用にて、物語を紡いでいかはるんどす。実写とアニメの併用も、その対比効果を呼んでおるんでしょう。

経費削減が続くイギリス鉄道の操車場で、ネズミ獲りをする職人ネコ、個人情報が保護されていないアメリカでの、カメラ「キャットカム」を付けられたネコの話、上野公園のホームレスと野良ネコの逸話、「おくりびと」(2008年)ならぬ介添えネコのオスカー(アカデミー賞を何やら思いださせる名前やー)とか、時代の荒波みたいな中でのネコの姿を、そのまま捉えていかはります。

映画ファンなら、ネコ好きもネコ嫌いもOKでおます。ネコを全面フィーチャーしながらも、映画としての完成度はかなり高いどす。

2010年8月 2日 (月)

イラン映画「ペルシャ猫を誰も知らない」

イランから、音楽ドラマ映画のサプライズな傑作が登場や

民族音楽やありまへんで、何とまあ、ポップ・ミュージックやでー

http://www.persian-neco.com/

http://www.eurospace.co.jp/

オーガスト8月7日サタデーから、東京・渋谷のユーロスペースで、全国順次のロードショーでおます。関西圏の三都やったら、大阪・梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、神戸アートビレッジセンターやらで上映どすえー。この映画を配給しはるのは、ムヴィオラはんどす。

文=映画・音楽分析評論家=宮城正樹

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みなさん、イラン映画と聞いて、どんなイメージを持たはるでしょうか。これまでに、見はったことはありますでしょうか。

カンヌ国際映画祭で1等賞をゲットした、自殺しようかってゆう主人公の人間ドラマ「桜桃の味」(1997年製作)とか、コドモたちが一生懸命ガンバる「運動靴と赤い金魚」(1997年)とか、本作のバフマン・ゴバディ監督が監督しはった「酔っぱらった馬の時間」(2000年)や、「亀も空を飛ぶ」(2004年)など、貧しかったり悩み深い大人やコドモの話を、描いたりしてはるのどすが、本作は180度、そんなイラン映画のイメージを覆えさはった作品どす。

しかも、音楽映画やからね。イランからの音楽映画となれば、イメージ的には、民族音楽であるとか、例えば、キューバ音楽を描く「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年・ドイツ&アメリカ&フランス&キューバ)みたいな、ドキュメンタリーを思い出さはるかもしれまへん。

しかし、コレがジャンル的には、今どきのポップ・ミュージックやら、ロックやらなんでおますよ。イランにそんな音楽があるんかと、ボクはちょっと驚いたのですが、イランでは実は、そういう音楽は演奏禁止とかに、なったりしとるらしいですわ。

最初は男女2人組ユニットやったんやけど、バンド・メンバーを探して、やがてはバンド編成になります。

2人のデモテープを聴いた便利屋が、この2人を売り出さなあかんと、エージェントまがいに、メッチャ必死のパッチにならはるんどす。このエージェント役に扮しはった、ハメッド・ベーダードのアニキの演技は特筆もんどしたえ。メッチャ早口でまくしたてはるんどす。最後はチョイしぼむけど、どこまでもポジティブで、「ノープロブレム」が口グセでおます。このアニキの快演技が、ミュージシャンを目指すみんなを、グ・グ・グイと引っぱっていかはります。

映画もそうやと思いますが、「音楽に国境はない」は昔から言われておますけども、でも「国境はある」という問題部をそれとなく(過激やありません)示しつつも、多彩なポップ・ミュージックが、華やかと思えるくらいに披露されてゆきます。

テヘランの街に女性ブルース、ビートルズの絵にかぶさるように16ビートロック、牛小屋でひそかに演奏されるハードロック、アニキが歌うアラビアンな詠唱、「神よ! 目を覚ませ」なんて、神に歌いかけるラップ・ナンバー、2人組男女がプレイするブリティッシュ・ロック(ちなみにコレは、1980年代前半にブレイクした、ニュー・ウェイヴの要素が入ったロック)、ギターの弾き語りなど、多種多彩。

それらのシークエンスを、短いカットをスピードフルに積み重ねて、まるで欧米のミュージック・ビデオ的な作りにしてはるのには、驚きました。でもって、全体的にアップはほとんどなしで、ロングショット、ミディアム・ショットのオンパレードで、映画的に撮ってゆく作り方に、映画ゴコロをそそられました。

2010年8月 1日 (日)

アメリカン・パニック・ムービー「フローズン」

3人だけのシンプル・イズ・裏ベストな、パニック・ムービーやでー

限定シチュエーションものとして、ホンマのホンマにサブーイ、オトロシサが…

http://www.frozen-movie.jp/

オーガスト8月7日サタデーから、東京・渋谷のシネクイントやらで、まずロードショーでおます。その後、8月28日サタデーに大阪のシネ・リーブル梅田やら、9月4日は福岡ユナイテッドシネマ・キャナルシティ13とか、9月11日はユナイテッドシネマ札幌やらで、全国順グリの上映だす。このフローズン・凍りつく映画を配給しはるのは、ブロードメディア・スタジオはんどす。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

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Ⓒ2009 FROSTBITE FEATURES, INC. All Rights Reserved

かつてのパニック・ムービーと申しますれば、大勢のいろんな人たちが巻き込まれよる、群像大パニックが基本どした。

しかし、本作はその縮図版で少人数の3人だけ、究極にまでそぎ落としたみたいな、単純な設定で展開しよります。

例えば、エレベーター内に閉じ込められたバージョンの、戸外版でおます。サメがおる海で孤立してもうた夫婦設定の「オープン・ウォーター」(2004年製作・アメリカ映画)なんぞも出ました。エレベーター内とか海とゆうのは、いかにも誰にでも設定できよる、シチュエーションのように思えるのどすが、いかがでしょうか。

室内やなく、外でそういう、ガンジガラメな設定を考えようとしてみたら、どないでしょう。スキーのリフトが止まってしもて、3人だけがリフトに取り残されてまう設定。

でも、そんなんやったら、リフトを動かしとるヤツがすぐに気づいて、何とかしよるんと違うのんとか、スキー場を回ってる監視員とかもおるやろし、えらいことにはならんやろと、思わはるかもしれません。でも、コレがそうそう簡単やないんですわ。

金曜から日曜までの3日間だけ営業してはるスキー場でおまして、その日曜の夜の最終スキーヤーとして、リフトに乗らはった3人はんなんどす。ところがどっこい、リフト係がその間に交代してしもて、滑りおりてきた連中を「これで最後や」と勝手に判断し、リフトを止めはるんどす。で、営業終了でおます。3人は単なる故障やと最初は思わはるんどすけども、しかし…なんでおます。

つまり、次の金曜日までの5日間、誰も気づいてくれないやろうとゆう、恐るべき設定がココに生まれよりました。さてさて、3人は一体、どないするんやー。実にシンプルでおましょ? 

でも、コレがメッチャスリリングな、緊張感を呼ぶのでおますよ。3人は幼なじみの男同士と、その1人の男の彼女とゆう設定ですが、この3人のセリフのやり取りなんか、凄く単純極まりない、ありふれたセリフが頻出します。たぶん、この状況やったら、練り上げられたセリフなんか、ようシャベられへんでおましょう。しかも、3人のどうしようもない不安なカンジ、その心理を見せてゆくようなセリフなんどす。

それにやね、限られた空間どす。水色と白雲が散らばる空をバックにやら、薄ダークな夜の描写やらを背景にしても、描写や撮り方が限られてきよるのですが、それが全く退屈するどころか、グングン緊張感が増してゆきよるんだす。

彼女の彼氏がリフトを飛び降りて、骨が出るくらいの両足複雑骨折をし、で、オオカミに襲われてしもて、ああ、もう見てられまへんがな、なシーンがありましてな、で、その後2人は…。

スピルバーグが「激突!」(1971年・アメリカ)を撮った頃の、シンプル・イズ・ベストな衝撃がござります。本作のアダム・グリーン監督は、スピルバーグ監督を敬愛しているとか。リフト上の会話のやり取りに「ジョーズ」(1975年・アメリカ)や「E.T.」(1982年・アメリカ)が出てくるのは、なるほどなと思いました。

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