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新作映画分析

  • 映画分析研究所 所長 宮城正樹
    新作含む、公開前映画の批評分析を行います。 映画史を俯瞰するようなスタイルと、小説・演劇ほかではなく、映画評でしかできないところに、肉迫せんとしています。 2009年12月11日よりスタートし、ギネスレコーズ却下後の、2015年5月頃より、週3~4作更新としております。厳選した作品分析を、お楽しみください。

音楽・小説分析

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「記憶にございません!」⇒日曜邦画劇場

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三谷幸喜ブランドな群像コメディだ

中井貴一コミカル演技は最高潮だ

9月13日のフライデーから、全国ロードショー。
文=映画分析研究所 所長 宮城正樹
ⓒ2019 フジテレビ・東宝

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三谷幸喜の群像コメディ映画も、本作で第8弾だ。

その8作の出来具合を、マイ・ベストとして、1位から8位まで披露しようかなと思ったけど、あえてやりません。

監督デビュー作「ラヂオの時間」(1997年)が1位ではあると思う。

しかし、2位以降を順位付けするには、その7作はほとんど差がなく、
どの作品にも、三谷ブランドここにあり!になっているからだ。
 

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そして、毎回コメディとはいえ、ジャンルを変えていることにも気付く。

ラジオ・メイキングや映画メイキングに加え、一軒家建築メイキング、ホテル映画、裁判劇、時代劇、SFなどと続き、

それぞれの映画において、トンデモ・コミカル・オリジナル・ポイントを加えている。
作品名は書かないけど、大たいはピーンとくるでしょう。

いやはや、ケッコー凄いと思う。

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でもって、本作であります。

ジャンル的には、これまでの三谷幸喜作品にはなかった、政治映画。

日本の政治に関する映画ではあるが、モチ、群像コメディである点に変わりはない。

但し、政治コメディ「国会へ行こう!」(1993年)などとは、面白さの質が違う。

時に三谷作品の主人公には、意外性・特殊設定を施されている場合がある。

だから、総理大臣役主人公(中井貴一)は、フツーじゃない。
 

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総理は利権絡みで莫大な献金に執着し、国民に対し開き直るような政治家だった。

支持率はメッチャ低い。

なのに、政権を維持しているのはなぜ?

とゆうとこは、とりあえずスルーして、

そんな総理が、聴衆の1人から石を投げつけられて、記憶喪失になってしまう。

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つまり、記憶喪失をキーワードにしたのだ。

記憶喪失映画を、チョイアイロニカルに逆手に取って、採り入れてみせたのだ。

記憶喪失になった総理は、喪失前とは全く真逆の人間になっていた。

この設定により、周囲の人間たちとの関係が、まったくもって、ひっくり返ることになる。

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誠実になった総理が、政治の在り方を変えていくところは、大きな見どころだ。

加えて、ドラマ映えしやすい、不倫系の三角関係の、ラブストーリーなところもある。

このあたりのシチュエートも、あり得ないくらいに、新しい設定だ。

影武者大統領を描いた「デーヴ」(1993年・アメリカ)以上に、画期的な作りだった。

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コメディアンとしてのイロもあるけど、ボクたちの世代では、シリアス演技がココロに響いた中井貴一が、本作ではオオマジでコメディアンしている。

三谷幸喜のWOWOWのドラマ演出作品「short cut」(2012年4月に弊ブログ分析)でも、コメディ演技を披露していたし、

最近ではシリアスものには、あんまし出ていないけど…。

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だが、本作では、最後には、シリアスを見せる。

とことんのコメディは、中井貴一キイッちゃんには似合わない。

けど、そこがキイッちゃんらしいとこだろう。

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かつてのロッキード事件裁判(現役の田中角栄総理が、収賄容疑で逮捕された事件で、証人尋問での証人の発言「記憶にございません」が、流行語になった)を、

思い出させるタイトル付けに、三谷幸喜監督らしい遊びゴコロが、見え隠れする。

そんなところにも、ボクは密かにグッときた!

2019年10月13日 (日)

「空の青さを知る人よ」⇒日曜邦画劇場

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音楽ドラマ・アニメを媒介に
 
夢を追いかける素晴らしさを描く
 
 
10月11日の金曜日から、東宝の配給により全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019 SORAAO PROJECT

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長井龍雪監督の、埼玉県秩父市を舞台(聖地)にした、アニメ映画の第3弾。

第1弾略して「あの花」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」(2011年)、

第2弾の実写化もされた「ここさけ」「心が叫びたがってるんだ」(2015年)に続くのだが、

全ては秩父の町を、ほわ~んと表出しながら、ヒロインをポイントゲッターにした青春映画だ。

そこにあるのは、前向きポジティブな世界観である。

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タイムスリップを始めとした、時制の過去・現在を設定したアニメとゆうのは、今では珍しくないが、

但しそこに新しい解釈や設定を加えることにより、多彩な世界観や人間関係ドラマが構築できるようになってきた。

タイムスリップな「時をかける少女」だけじゃない。

大ヒットした、過去を変えるラブストーリー「君の名は。」しかり。

そして、今年も次々にそおゆうアニメが輩出されてきている。

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今年公開された「HELLOW WORLD」などに続き、本作も、過去と現在をモチーフにしている。

過去のどこかで、高校生のまま時間が止まった、人間とヒロインの交流とゆうのが、本作のオリジナル・ポイントだろうか。

空を2人で飛ぶクライマックスなどは、「未来のミライ」(2018年)とシンクロする。

でもって、それらの作品と大いに異なるところは、音楽アニメで
ある点だ。

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夢を持って生きることの素晴らしさがまずあり、たとえ夢破れたとしても、それでも前向きに生きるんだとゆうのが、本作の根幹にあると、ボクは思う。

高校生の頃と大人になった現実との差異。

しかし、日常生活、広い世界でなくてもいい、狭い故郷でも、空の青さは知ることができる。

夢の在り方を、おおらかな癒やし系の視点でとらえたこの映画は、とんでもなく心地いい。

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現実的な音楽としては、ゴダイゴの「ガンダーラ」(1977年)がポイントとなっているみたいだ。

ベーシストの若きヒロインたちは「ガンダーラ」を弾く。

なぜ「ガンダーラ」なんだとゆうセリフもある。

その答えは歌詞にある。

最後に流れる、「あいみょん」のさわやかギターの弾き語り「空の青さを知る人よ」もまた、作品に直結していく。

間違いなく、ポジティブになれる映画だ。
 

2019年10月11日 (金)

野村周平主演「WALKING MAN」

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日本のヒップホップ映画の在り方とは?

アナーキーなアウトサイダー野村周平が魅せる!


10月11日の金曜日から、avex picturesの配給により、全国ロードショー。

文=映画・音楽分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019 映画「WALKING MAN」製作委員会

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ヒップホップ・ミュージシャンのANARCHYが、初監督した作品。

ラップが主のヒップホップは、基本は黒人の音楽、ブラック・ミュージックだ。

日本人がヒップホップをヤルだなんて…、そんなセリフが本作には出てくる。

1980年代にアメリカで生まれたヒップホップだけど、

1990年代には日本の音楽界にも浸透し始め、

今やヒット・ジャンルの1ジャンルにもなったし、ヒップホップ映画も輩出されている。

ラッパー・エミネムの生き方を描いた「8 Mile」(2002年製作・アメリカ映画)など、ヒット作品も生まれた。

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ラップ・ヒップホップは音楽性よりも、ポエトリー・リーディングのように、自らを主張するところにキモがある。

主張は誰にでもある。だから、誰にでも、自らのオリジナルを歌える音楽なのだ。

で、ANARCHY監督は、主人公に、ヒップホップに似合う、低所得層の若者を設定し、

しかも、吃音とゆうハンデを課すのである。ヒップホップをやるのに、吃音はどう考えてもまずいでしょ。

果たして、主人公はそれを克服できるのか。

本作の大いなる見どころがココにある。

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主人公役には、野村周平が起用された。

野村周平は「ちはやふる」など、広瀬すずとの共演による、さわやか青春系が似合う役者のようだが、

本作では、監督のアーティスト名とシンクロするけど、アナーキーな、はみ出しアウトサイダー系の演技でいってみたぞ。

母(冨樫真)と妹(優希美青)の3人暮らし。不用品回収会社で働き、母が病で入院し、高校生の妹は万引きしたり、風俗で働いたり…。

入院費やらで「自己責任」なるものが、当たり前のように言われる。

そこんところは少し誇張して、描かれているように思ったけど、主人公へのハードル設定としては、これでいいのかな。

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主人公が勤める、会社の先輩役になった柏原収史。

久々に見たけど、主人公を励ます、好感度の高い演技を披露していた。

大げさかもしれないけど、名作「グッド・ウィル・ハンティング」(1997年・アメリカ)の、

ベン・アフレックがマット・デイモンを、励ますようなノリがあった。

おそらくANARCHY監督も、この映画を意識していたと思うよ。

そして、そのANARCHYがラストロールで披露する、ヒップホップナンバーは、メッチャ力強かった。

ココロに残る映画へと誘導する、勇気リンリンになれる歌だった。

2019年10月10日 (木)

「イエスタデイ」⇒音楽映画の傑作

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ビートルズ音楽ドラマ映画の最高傑作だ

ラブ&ピースなラブストーリーも心地いい

 

https://yesterdaymovie.jp/

10月11日のフライデーから、東宝東和の配給で全国ロードショー。

本作は2019年製作のイギリス・アメリカ合作の117分。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒUniversal Pictures

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音楽映画のドラマ映画は、実話系映画を中心に、これまでは展開されてきた。


ビートルズなら、ビートルズのメンバーの話が主軸にあったり、


ビートルズに影響を受けた人たちの話だったりした。


しかし、本作のビートルズ音楽映画は、かつてない設定が施された。


とはいえ、実にシンプルなアイデアだ。


ビートルズの曲がこの世から消え、主人公のミュージシャンの記憶にしかなくなったとしたら、とゆう設定だ。


ビートルズのレコードも当然消えている。


だから、主人公はビートルズの曲を記憶から引き出し、自分の曲として歌っていくのである。

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最初はほとんど誰も注目しなかった。


自分に魅力がないんだなどと、自己卑下する主人公。


しかし、本作に本人として出演する、今大ブレイク中のエド・シーランの耳に止まり、


彼のツアーのオープニングアクトに起用され、さらにメジャー・デビューを果たし大ヒットへ。


ビートルズの曲の素晴らしさに特化した本作は、まさに歌そのものに集中した音楽映画だと言えよう。

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一方で、ラブストーリーも展開する。


冴えないミュージシャンだった主人公(ヒメーシュ・パテル)と、幼なじみの女マネージャー(リリー・ジェームズ)。


だが、全米デビューで主人公は、イギリスからアメリカへわたり、エド・シーランの事務所に所属し、新しい女マネージャーが付いて、2人は離れ離れになる。


さあ、そんな2人の愛の行方は?


音楽映画の新味の中で、披露されるラブストーリーもまた、オーソドックスに見えながらも、フォーエバーな輝きがある。

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アカデミー賞監督ダニー・ボイルと、ラブコメ・群像劇などの名脚本家リチャード・カーティスの初タッグ。

2人の才能が融和し、かつてないユニークな作品が撮り上げられた。

ユニークとはいえど、ボク的には年間ベストテン級の映画だった。

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とゆうことで、ビートルズ映画最高のドラマ映画であり、


音楽映画のセオリーを覆した映画として、永く記憶に残る作品となるだろう。

 

北欧ミステリー「ボーダー 二つの世界」

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異質人間のプライドを描く怪作ミステリー
「エレファント・マン」よりポジティブだ


10月11日のフライデーから、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、京都みなみ会館ほかで、全国ロードショー。

本作は、2018年製作の、スウェーデン・デンマーク合作の110分。
「R-18+」指定映画。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒMera_Spark&Karnfilm_AB_2018

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異質人間を描く映画というのは、実はケッコーある。

「エレファント・マン」(1980年製作・アメリカ&イギリス・モノクロ)や「オペラ座の怪人」(最新は2004年・アメリカ)のような、

後ろ向き消極的孤独人間あり、人間とはチョイ違うような、ドッペルゲンガーな「Us」(2019年・アメリカ・弊ブログ分析済み)なんかがあり、

でもって、本作がある。

特殊変型ものなら、吸血鬼などのモンスターがあり、変身系のヒーローがあったりする。

ベースにあるのは、どのパターンであれ、感情ある人間だということ。
そして、人間にも、考えてみれば、いろんな種がある。白人・黒人・黄色人種といった、肌色の表面上のものだけじゃない。

本作は、そこのところでかつてない種を、創作した作品である。

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臭いを嗅ぐことで、羞恥心や罪悪感などの人間の感情が、見えてしまうなんてゆう女がいる。

その醜女でなんか獣じみた太っちょ女は、スウェーデンの税関で危険・禁止物を見つける仕事をしていて、嗅げば何もかも分かってしまうんだ。

このかつてないイントロから、このヒロインは、自分と同じ特殊人間な男を見つけるのだ。

女は親から引き継ぐ家で男と同居、母は死んだけど、アルツハイマーがちの父は、老人ホームにいる。

こんな設定だが、ヒロインの特殊性が、いろんなところで見せられ、でもって、見ていくにつれ、異様な世界へと導かれてゆくのである。驚いた。

静かな展開から、意外性あるところへといき、そして、なんじゃこらーな世界へと落とし込まれる。

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冒頭から異質感はあった。

それが徐々に増してゆき、いつの間にか、とんでもないところへといってしまうのだ。

サプライズは複合的に訪れる。最後の最後まで、そんなバカな…が持続する。

もうコレは見てもらうしかない。

異様な映画だけど、異様な中に、ある種の感動もある映画。

そのあたりを劇場にてご確認ください。
 

2019年10月 9日 (水)

「牙狼(GARO)-月虹ノ旅人-」

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特撮ヒーロー・シリーズ映画の最新版

「仮面ライダー」以上にヒューマンな作りだ

10月4日の金曜日から、新宿バルト9、梅田ブルク7ほかで上映中。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「月虹ノ旅人」雨宮慶太/東北新社

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テレビシリーズ「牙狼(GARO)」の劇場版だが、劇場版もシリーズ化されてる作品。

特撮系のドラマとなれば、「仮面ライダー」などの変身系を思い出すが、

本作の主人公・ヒロインは、素顔のイケメンにしてイケジョ。

変身するのは、主に敵方となっている。

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とゆうことで、最新劇場版では、主人公「冴島雷牙」役には、中山麻聖(ませい・写真上)、

雷牙と共に戦うヒロイン「マユリ」役には、石橋菜津美(なつみ・写真下)が抜擢された。

中山麻聖は、三田村邦彦と中山麻理の間に生まれた二世俳優だけに、

そのイケメンぶりとヒロイズムなカッコヨサが、大きなポイントになっている。

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そして、今回、敵方にさらわれるヒロインのマユリ。

その軟柔・骨細感を見せながら、敵への抵抗アクトを見せ、ああ、大丈夫か感を募らせてゆく。

そんなマユリを救おうとする、雷牙の戦いぶりは、波瀾万丈の、刺激に満ちたものとなっている。

2人のクローズアップ・シーンの多さにも、胸焦がれる作りだと言えようか。

でも、チャッチーなとこもある。

けども、父親との確執部やキズナ部も含めて、ヒューマニズムなところも、ケッコー魅せてくれていて、

アクション・シーンも、ドラマティックなとこと共に映えるようになっている。

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列車に乗ってのロードムービー・スタイルも、ドラマ映えしやすいし、

モノクロ・カットと過去カットの、タイトな挿入に加え、

アニメ・CGと実写部との複合も、スムーズだった。

過去に出ていた正義側の、渡辺裕之のサポート・サプライズ出演やら、

強敵・敵方の京本政樹の登場など、最後の最後まで戦いの行方は分からない。

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特撮映画の本道とは違うところにあるような、ヒーロー映画の在り方が、ココにあると思う。

雨宮慶太監督のオリジナル作品である。

まだまだこのシリーズは続くだろう。

「仮面ライダー」や「ウルトラマン」では見られない、ヒューマン特撮アクションに酔ってもらいたい。

2019年10月 8日 (火)

「蜜蜂と遠雷」⇒究極のピアノ・コンテスト映画

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コンテストに懸ける、ピアニスト4人の物語

松岡茉優・松坂桃李ら、W松の演技に注目!

10月4日の金曜日から、全国ロードショー。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

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ラブストーリーやら、家族ドラマやら、その片鱗が少しはあるにしても、コンテストに完全特化したピアニスト4人の映画である。

オーディション・ミュージカルだった「コーラスライン」(1985年製作・アメリカ)と同様に、

4人の緻密な演奏、それを冷静に審査する審査員がいてとゆう、

究極にして完全なるコンテスト映画なのである。

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直木賞を受賞した、恩田陸の小説「蜜蜂と遠雷」が原作になっている。

系譜分析紹介的には、直木賞映画化作品とか、ピアニスト映画とか、そのままのコンテスト映画とか、イロイロ分析できるにしても、

本作はカテゴライズされない、
特殊性のある映画だった。

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原作は各ピアニストの演奏における心理を、事細かに描いていたが、

それを映像で示すとなると、演奏を見せるだけでなく、いろんなシーンを組み合わせる必要があるだろう。

しかし、本作の演奏シーンは、ほとんどが演奏に徹した作りで、各人が実際に演奏していなくとも、その演奏パフォーマンスが、大いなる見どころとなっているのだ。

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ピアニストが登場する日本映画としては、「のだめカンタービレ 最終楽章」(2009年・2010年・弊ブログ分析済み)のようなコミカルは全くなく、

「さよならドビュッシー」(2010年)のミステリアスもなく、

「砂の器」(1974年)の、映画的泣かせるドラマティックもない。

一次予選課題曲なしの自由選択、二次予選は課題曲、そして、最終選考がオーケストラとのピアノ協奏曲。

全てがシビアに演奏され、シビアにジャッジされる。

その積み重ねには、時に、息を飲むほどのスリルがあった。

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4人4様のピアニストぶりが、相対的に描かれる。

死んだ母との想いを胸にする、どこか不安定なカンジの松岡茉優。

生活と音楽を目指す、妻子3人家族夫役の松坂桃李。

松岡茉優と幼い頃にピアノを学んだ、本格派のピアニストの森崎ウィン。

対して、自己鍛錬でピアノに目覚めた、新人の鈴鹿央士。

それぞれのキャラクターが、見事なカルテット演技を、奏でる作りになっている。

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対して、審査側のキャラも、重みと威厳がある。

これまでは、ちゃらんぽらんな演技が多かった、斉藤由貴が、オオマジに審査役に関わる。

また、料理の鉄人ばりに、無表情のクールを見せる、鹿賀丈史の演技も見逃せないところ。

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会話における、間合いの使い方など、音楽映画ながら、静かな演出具合にも意表をつかされた。

ミステリー群像劇「愚行録」(2017年・弊ブログ分析済み)で魅せた石川慶監督の、出演者それぞれのキャラ立ち演出ぶりも光る快作だ。

2019年10月 4日 (金)

問題作「ジョーカー」⇒どこが問題なんだ?

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「タクシードライバー」とシンクロナイズ
 
「バットマン」と争う、悪役「ジョーカー」の誕生秘話だ
 
10月4日のフライデーから、ワーナー・ブラザース映画の配給により、日米同時公開。

本作は2019年製作の、アメリカ映画122分。「R-15+」指定映画。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒ2019 Warner Bros.Ent. All Right Reserved TM &ⓒDC Comics

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「バットマン」と対決する、アメコミを代表する悪役「ジョーカー」が、どのように誕生したのかを捉えた作品。

いわゆる、「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーの作り方のような、さかのぼり系のドラマである。

しかも、映画オリジナルとして作られた点は、特筆すべきところだろう。

母との2人暮らしで、コメディアンを目指していたジョーカー(ホアキン・フェニックス)は、

バイト先ではピエロの格好をし、次第にピエロ姿が日常生活でも板に着く。

そして、発作的に笑ってしまう、奇妙なビョーキがあった。

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この発作的笑いは、冒頭の方で、セラピストとの対面の長回し撮影で、異常な癖として披露されるが、

このビョーキのおかげで、コメディアンとしての腕を上げていくのだ。
 
一方で、そんな笑いが災いを誘発する場合もある。

悪役への道が、自らが進まなくとも、敷かれたレールのように、ブラックユーモアチックに開かれてゆく。

大ヒットし、続編も公開されるホラー映画「IT」などは、ピエロが悪役だったが、本作の「ジョーカー」からの影響は大きい。

また、本作では、ジョーカーがピエロチックなチャップリンの、モノクロ・サイレント映画を見るシーンがあるが、

これもまた、彼のキャラクター付けにフックを与えていた。

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さて、本作では、ジョーカーが憧れる、テレビのトーク番組の司会者役に、ロバート・デ・ニーロを起用した。

これはドラマ的・キャラ的に、計算された起用である。

なぜなら、ジョーカーのキャラ設定が、デ・ニーロの代表傑作「タクシードライバー」(1976年)の、主人公役トラヴィスに、オーバーラップするからだ。

その名作の孤独とゆうキー・ワードはもちろんだが、

拳銃を手に入れる経緯に加え、作品を象徴するところとなった、

拳銃をこめかみに当てプシュッと、デ・ニーロがツイートするシークエンスが、本作でも引用として使われている。

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銃乱射事件が頻発する全米では、本作は公開前から、かなり問題視されていたが、

確かに銃撃・銃殺シーンはあるけども、決して危ない映画じゃないとボクは思う。

ジョーカーが悪に染まっていく、いわゆるアウトローの作り方を描いた映画だ。

コメディアンと殺人鬼。その段差についても、説得力ある描かれ方・演出・演技が施されている。

傑出したアウトローの、ヒューマン・ドラマとして、見てもらいたい作品だ。

「ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)」

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ミュージカルとアニメで大震災を癒やす

 

映画的面白さがゴッタ煮になった快作品だ

http://www.nipponiamovie.com/

10月5日からシネ・ヌーヴォで上映。

文=映画分析評論家・宮城正樹

ⓒラピュタ阿佐ヶ谷

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2011年の東日本大震災への想いを取り込んで、エンタテイメント化した作品。


映画に3.11を入れた作品は、これまでに100作以上のタイトル数にのぼるが、ドキュメンタリーは除いて、ほとんどがシリアスに特化したものであった。


しかし、本作は違う。


哀悼は捧げてることは捧げてる。


けども、哀悼・追悼以上に、遊びに比重が置かれた作品になった。


その遊びも、映画的なパロディやオマージュを多投し、大震災の悲惨さを映画で中和するような作りになっている。

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そのスタイルにあるのは、アニメであり、ミュージカルであり、日本映画名作へのオマージュである。


主人公が隆大介であるところも、大いに本作に連関する。


黒澤明監督「影武者」(1980年製作)の織田信長役で、その尖った演技性を示した彼が、


晩年を迎えて丸くなり、市役所職員として、寺田農の案内・教示のもと、震災のその後のアフターケアと復興に、いそしむなんて話。


「影武者」の仲代達矢のセリフ「地獄の入り口で待ってるぜ」なんてのも引用されて、


隆大介は、ココロそわそわざわざわしてまう。

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「イージーライダー」(1969年)「卒業」(1967年)「真夜中のカーボーイ」(1969年)など、アメリカン・ニューシネマにまつわるセリフや、


「イージーライダー」風に、実際にオートバイ事故に遭ったり…。


アニメ部では、宮沢賢治へのオマージュ&ミュージカル・シーンなどもあるが、


NHKの「ひょっこりひょうたん島」の歌や、「津軽海峡冬景色」の演歌が歌われるシーンがあったりして、

おいおい、遊び過ぎなんちゃうん、なんてとこもあるけれど、むしろミスマッチなところこそが、本作のオリジンを誇示するところだとも言える。


沖縄民謡も許容範囲やろか。でも、ラストロールでは、ヴィヴァルディの「四季・春」も流れ来るんで、あくまで希望が視野にあるわけでありまして…。

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ミュージカル映画的には、宝田明が登場してるのは、特筆事項でおましょう。


かつての東宝ミュージカルの雄の登場ゆえに。


いろんな要素をゴッタ煮にして、楽しんでみた作品。


若い人たちにどう見られるのか、ちょっと不安やけど、理屈抜きに入れば何の問題もないでしょう。


楽しく見られて、ちょっと考えさせる。映画は娯楽だけやない。そんなところが分かるはずだから、ボクはいいと思う。

 

2019年10月 3日 (木)

「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」


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松重豊アニキと北川景子ネーさんの夫妻映画だ
 
かつてない妊娠ハウツー映画になった!

 
10月4日の金曜日から、全国ロードショー。

文=映画分析研究所 所長 宮城正樹

ⓒ2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会

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日本映画の夫妻映画は数多くあれど、

妊娠に特化したものは、洋画を含めてもかつてない。

子供を作らないでいようといった夫妻が、妻からの希望で、突然のように子供が欲しくなり、

夫妻がともども子供作りに励んでゆくドラマ。

いかにもこれまでにもありそうな映画だが、

調べてはみたけれど、喜劇映画をベースにしても、そういう映画は
まずない。

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確かに、妊娠して出産する映画ならば、夫妻映画に関わらず、それなりにあった。

しかし、イロイロやってみて、妊娠するか、しないか、そこに焦点を当てられた映画はない。

付け加えるなら、妊娠ノウハウ・ハウツー映画なんてゆうのは、つまりは、かつてない映画なのだ。

いわば、受精・妊娠、フツーにできない場合はどうするのかとゆう、人が誕生するその経緯を細かく伝える映画は、

これまでは、ある種タブー視されていたとも言えるかもしれない。

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妊娠するための、精子の運動率とか、人口受精、顕微受精、試験管ベイビーなど、

妊娠するかしないかまでの過程が、描かれるのだ。

その際、夫はどうすればいいのか、妻はどうすればいいのか、

そのあたりをコミカルに見えながらも、シリアスにリアルに描いてゆく。

そんな史上初とも取れる映画の夫役主演には、映画初主演となった、松重豊が起用された。

人間味豊かに、大マジに精子力を増やすために、いろんな方法にチャレンジする彼の姿は、

日本のプログラムピクチャーのコメディの、かつての主人公以上に、

奮闘努力して、笑い以上の何かを感じさせてくれる。

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そして、妻役になったのは北川景子。

特殊な映画にも関わらず、これまでの演技と変わるところはない。

自然体とゆうのは、プロとして演技していないんじゃないかと、思う方もいるだろうが、

作る演技の方が、場合によっては、嘘っぽく映ったりするものだ。

最新主演したテレビドラマ「家売るオンナの逆襲」では、異能なとこも見せてくれたけど、

ボクは本作の北川景子の方が、絶対好感があると思うよ。

洋楽を流しての婚活ダイジェスト・シーンとか、

最後に流れる、洋楽のさわやかなフィメール・ポップスとか、

心地よいところが、いくつもあった点も評価したいところ。

2019年10月 1日 (火)

10月1日時点の暫定マイ年間ベストテン


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●「イエスタデイ」

(ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ共演/監督:ダニー・ボイル/脚本:リチャード・カーティス/イギリス&アメリカ合作/10月11日公開)
 

●日本映画

①長いお別れ

②宮本から君へ

③町田くんの世界

④半世界

⑤愛がなんだ

⑥盆唄

⑦タロウのバカ

⑧火口のふたり

⑨ワイルドツアー

⑩泣くな赤鬼

●外国映画

①バーニング 劇場版(韓国)

②運び屋(アメリカ)

③イエスタデイ(アメリカ)

④女王陛下のお気にいり(イギリス)

⑤SHADOW 影武者(中国)

⑥ブラック・クランズマン(アメリカ)

⑦存在のない子供たち(レバノン)

⑧アマンダと僕(フランス)

⑧ホームステイ ボクと僕の100日間(タイ・10月6日公開)

⑧アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場(フィンランド)

⑧ジョーカー(アメリカ/ホアキン・フェニックス主演/10月4日・日米同時公開)

⑧ハッピー・デス・デイ(アメリカ)

⑧エンテベ空港の7日間(イギリス・アメリカ/10月4日公開)

⑧希望の灯り(ドイツ)

●暫定年間マイ・ベストテンです。

邦画は9月と変わらず、洋画は下位7作を同率順位にして、7位までをいちおうランキング付けしました。

洋画では2作新たに青文字で入れました。

「イエスタデイ」は、実話系映画が多かった音楽映画の、新機軸を打ち出した傑作。

ビートルズの曲がこの世から消え、主人公の記憶にしかなくなったとしたら、とゆう特殊設定が、メッチャスゴイ。

「ジョーカー」は、DCコミックの悪役キャラクター、ジョーカーの誕生秘話を描くヒューマン・ドラマ。

共に、近々の後日に分析紹介いたします。

(選=映画分析研究所 所長 宮城正樹)


 

 

 

 

 

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